(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6156803
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】固体処理物の撹拌装置
(51)【国際特許分類】
B01F 7/04 20060101AFI20170626BHJP
E02F 7/00 20060101ALI20170626BHJP
B02C 13/06 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
B01F7/04 A
E02F7/00 D
B02C13/06
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-247929(P2014-247929)
(22)【出願日】2014年12月8日
(65)【公開番号】特開2016-107214(P2016-107214A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】305028121
【氏名又は名称】株式会社切川物産
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(74)【代理人】
【識別番号】100166659
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 和也
(72)【発明者】
【氏名】切川 勇
(72)【発明者】
【氏名】足立 勝
【審査官】
中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−336355(JP,A)
【文献】
実開昭59−166823(JP,U)
【文献】
特開昭51−150162(JP,A)
【文献】
特開2004−290792(JP,A)
【文献】
特開2014−097466(JP,A)
【文献】
米国特許第06099159(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 7/
B02C 13/06
E02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理物(W)を搬入して排出させる円筒状のドラムケース(4)内に同軸方向に回転軸(7)を軸支し、該回転軸(7)の外周に、正転により処理物を送り方向に搬送し撹拌するように先端を変形させた多数の搬送爪(9a)をらせん状に配列させて放射状に配置し、上記爪配列中に回転軸(7)の正転により処理物を滞留させ又は逆送り方向に搬送し撹拌するように先端を搬送爪(9a)とは逆向きに変形させたバック爪(9b)を配置し、該バック爪(9b)を爪配列の始端部側と終端部側に近接させて振り分け且つバック爪(9b)の処理物搬送方向の前後に搬送爪(9a)が配置される配列で設け、上記爪配列中に、側面方向への湾曲又は捩り変形がなく主として処理物(W)の粉砕機能を有する平爪(9c)を介設してなる固体処理物の撹拌装置。
【請求項2】
バック爪(9b)を爪配列中の複数本の搬送爪(9a)の間に1本又は2本隣接させて設けてなる請求項1に記載の固体処理物の撹拌装置。
【請求項3】
1〜3本の平爪(9c)をバック爪(9b)の搬送上流側であって搬送爪(9a)の下流側に隣接させて設置してなる請求項1又は2に記載の固体処理物の撹拌装置。
【請求項4】
平爪(9c)が平板状で縦長のプレートからなる請求項1〜3のいずれかに記載の固体処理物の撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として山やトンネル,道路,宅地造成等の掘削工事や、採石,採土等の作業現場他から排出される微細粒子の掘削土並びに土砂類からなる建設残土,粘土,建設汚泥等の混合調製、その他各種の粒状又は粉状の処理物からなる混合調整材料を粉砕混合し撹拌処理をすることができる粒状・粉状・塊状の処理物の粉砕撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、改良土を製造するための改良土製造機は、例えば特許文献1で示されるような混合機械が使用され既に公知である。この混合機械は横長円筒状のドラム内で支持される回転軸に複数の羽根(爪)をらせん状に配列して突設した回転処理体を回転し、供給口から供給された土を細粒化しながら混合調製用材料を撹拌混合し、処理済の製品土を排出口から排出する構成となっている。また、この発明では多数の爪の途中に逆向きの爪を配置して、搬送中の慮利物を途中で停滞させて撹拌・粉砕する機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4424612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の発明は本発明者等によって開発され提案されたものであり、粉砕性能や搬送性能を高めることができたが、ここに示される装置は当初主に建設工事用の土の調製を目的に開発されたものである。しかしこの種の撹拌装置は製品化後にその処理対象物が多種類に広がり、例えば各種有機廃棄物や各種焼却灰の処理,セメントスラリーへの骨材の混合等にも用いられて来ており、その他の広汎な用途が予想される。
【0005】
このため建設工事用の土の粉砕混合のみを想定した従来の機構では、処理物の性状により粉砕や混合が不十分であったり、ドラムケース内で送り(搬送)性能が不均一である等の障害が発生して来ている。
【0006】
この発明は上記のような課題に対応し、できるだけ広汎な処理対象物に適切に対応できる、より汎用性の高い固形処理物の撹拌装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、第1に、処理物Wを搬入して排出させる円筒状のドラムケース4内に同軸方向に回転軸7を軸支し、該回転軸7の外周に、正転により処理物を送り方向に搬送し撹拌するように先端を変形させた多数の搬送爪9aをらせん状に配列させて放射状に配置し、上記爪配列中に回転軸7の正転により処理物を滞留させ又は逆送り方向に搬送し撹拌するように先端を搬送爪9aとは逆向きに変形させたバック爪9bを配置し、該バック爪9bを爪配列の始端部側と終端部側に近接させて振り分け且つバック爪9bの処理物搬送方向の前後に搬送爪9aが配置される配列で設け
、上記爪配列中に、側面方向への湾曲又は捩り変形がなく主として処理物Wの粉砕機能を有する平爪9cを介設してなることを特徴としている。
【0008】
第2に、バック爪9bを爪配列中の複数本の搬送爪9aの間に1本又は2本隣接させて設けてなることを特徴としている。
【0009】
第
3に、1〜3本の平爪9cをバック爪9bの搬送上流側であって搬送爪9aの下流側に隣接させて設置してなることを特徴としている。
【0010】
第
4に、平爪9cが平板状で縦長のプレートからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
以上のように構成される本発明の装置によれば、ドラムケース内の処理物の搬送始端部側と搬送終端部側に近接させてバック爪が配置されているので、すべての処理物が始端部側で一旦滞留して予め前処理的に撹拌・粉砕された後に排出側に送られ、その途中では搬送爪によって搬送されながら本来の撹拌・粉砕がスムースに行われる。
【0012】
そして搬送終端部側ではさらにもう一度バック爪によって滞留させられながらここで最終的に仕上げ処理として再粉砕,再撹拌される結果、各種の処理物の撹拌・粉砕が確実且つ均等に行われる利点がある。
【0013】
バック爪は特許文献1に示す標準的な仕様では搬送爪間に1個又は2個が最も効果的であり、これ以上増やすと搬送の停滞が生じるので望ましくない。また爪配列中に平爪を設けることにより大きい塊がある場合の粉砕性能が向上し、結果として撹拌・混合性能も向上するほか、バック爪の搬入側(上流側)に1〜3枚程度設けることが望ましく、3枚以上設けると搬送性能を妨げることが多くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明装置の内部構造の一部を示す底面図である。
【
図2】ドラムケースと爪の設置状態を示すA−A横断面図である。
【
図3】(A)は本発明装置の回転撹拌部の爪配列の一例を示す説明用正面図、(B)はその爪配列対応したドラム内での処理物の挙動を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図示する実施態様につき詳述すると、
図1〜3はこの発明の1実施例を示し、装置の回転撹拌部以外の機構は前記特許文献1のものと共通なので簡単に説明する。
【0016】
図1において床面に設置される固定フレーム1上には、一(左)端を支点軸2によって傾動調節可能に支持される可動フレーム3が設置され、該可動フレーム3上には左右方向に長さL=3m、内径550mm程度のドラムケース4が設置されている。ドラムケース4の両端中心には軸受部6を介して回転軸7が回転自在に軸支され、回転軸7の右端にはモーター8が連結され、例えば90〜180rpm程度の範囲で調節可能に回転駆動する機構である。
【0017】
回転軸7の外周には後述する三種類の爪9a,9b,9cがらせん状に且つ左右方向の爪間隔L
3を介して多数配列されて放射状に突設される回転処理体11が構成される。この例では上記爪配列は回転軸7の周りに右ねじ方向のらせんを形成し、回転軸が右回転することにより投入されていた処理物Wを爪9a〜9cにより撹拌しながら左方向に搬送するように主たる爪(搬送爪)9aの先端はトラクターや耕耘機の耕耘爪と同様に片面方向に変形し且つ偏平状に広がっている。10は爪9a〜9cを差込んで交換可能に取付固定するために回転軸7の外周の突設された角筒状のホルダーである。
ドラムケース4の右端(始端部)上方にはホッパー12が設置され、このホッパー12より粉砕、撹拌等の対象となる一種類又は複数種類の処理物Wが投入される。
【0018】
またドラムケース4の左端(終端部)下方には筒状の排出口13が設けられ、撹拌・搬送された処理物Wは排出口13より次の工程に送られる。またドラムケース4の上部にはドラムケース4の一部となる半円筒形の蓋14が着脱可能に設けられ、内部のメンテナンスや回転処理体11の取付を容易にしている。
【0019】
本発明の装置を用いて、例えば土木工事用に建設残土を用いる場合に、その使用目的に応じて残土に粘土や砂又は砕石等を混入して調製する際、これらの塊部分の粉砕をしながら均一に混合する必要がある。
【0020】
このため回転軸7に取付けられる爪には、主として土の塊を粉砕して撹拌しながら投入側から排出側へ搬送する搬送爪9aが多数設けられる。この搬送爪9aは
図1,
図2,
図3(A)に示されるように一般的にトラクターや耕耘機のロータリーに取付けられるロータリー(耕耘)爪と同様に回転方向に山型に湾曲するナタ爪として構成される。
【0021】
即ち搬送爪9aは基端部が平板状で先端に向かって徐々に偏平状に広がり且つロータリー1の回転により一方向に土を押し寄せるように片側に湾曲させて形成されており、本発明の回転処理体11ではこの搬送爪9aが大半を占めている。
【0022】
これに対し、回転軸7の搬入側(上流側)端部と排出側(下流側)端部の内側寄りの位置の爪配列中に、上記搬送爪9aとは回転軸方向で逆向きに湾曲変形したバック爪9bが設けられている。このバック爪9bは回転処理体11が正転すると処理物が後方側に送られる(実際には前後の搬送爪9aの搬送作用が強いため搬送物が一時的に滞留するか搬送速度が弱められて緩速搬送される)ように、搬送爪9aとは先端部が前後逆向きに湾曲され、左右対称形状(側面視では同一形状)に形成されている。
【0023】
またもう一種類の爪である平爪9cは、上記バック爪9bの上流(投入)側に隣接して配置されるもので、バック爪9bによって逆方向に戻され又は滞留した搬送物を主として回転によって粉砕する爪である。この平爪9cはプレート状又は短冊状の平板からなり、前後両側端は土塊等の切断が行われ易いようにエッジを形成している。
【0024】
爪9a〜9cの先端は略同心円状に揃えられており、これによって構成される回転処理体11の外周とドラムケース4の内周との間には一定の隙間Sが形成され、回転処理体11による粉砕撹拌時に爪9a〜9cに弾かれた石材その他の粒状物により、ドラムケース4内の内周に付着した土等を除去する。
【0025】
次に本発明における上記爪9a〜9cの配列を
図3(A)に基いて説明する。図示する例ではバック爪9bは回転処理体11の始端部の搬送爪9aからの長さL
1=1000mmの位置に少なくとも2本隣接させてバック爪9bが設けられ、該バック爪9bの後方には1本又は2〜3本の平爪9cが隣接して設けられている。他方回転処理体11の終端の搬送爪9aからの長さL
2=800mmの位置にも同様にバック爪9bが設けられその上流側にも1本又は2〜3本隣接して平爪9cが設けられている。
【0026】
上記のように始端部側と終端部側にそれぞれバック爪9bを設けることにより、それぞれの位置で撹拌搬送中に土等の処理物が先ず始端部側で滞留して前処理的・予備的に粉砕、撹拌される予備処理域M
1を形成し、その下流側の搬送爪域部分でより効果的に処理され、さらに下流側の仕上処理域M
2はの滞留域で仕上処理され、さらに下流側の搬送爪9aによって撹拌搬送され排出口13より排出される。
【0027】
この作用により、比較的短い長さのドラムケースや回転処理体であってものケーキ状の脱水土や大粒の土塊等を含む処理物が確実に粉砕されて均一に撹拌混合処理される。またカッティングが必要な土塊等を含まない処理物では必ずしも平爪9cを設けない場合もある他、爪配列中のバック爪9bや平爪9cの組合わせや数量、設置位置等は、処理物の性質や処理量等に応じて適宜付け換え変更して調節できるが、予備処理域M
1と仕上処理域M
2は始端部側のホッパー12の下方より下流位置と、終端部側の排出口13より上流位置に分けて配置し且つ処理物の搬送を確実にするため、少なくともバック爪9bや平爪9cの前後にはできるだけ複数本の搬送爪9aを配置することが望ましい。
【符号の説明】
【0028】
1 固定フレーム
4 ドラムケース
7 回転軸
8 モーター
9a 搬送爪
9b バック爪
9c 平爪
10 ホルダー
11 回転処理体
12 ホッパー
13 排出口
M
1 予備処理域
M
2 仕上処理域