(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された考案には、次のような課題があった。すなわち、特許文献1に係るスプリンクラーを継続的に使用していると、装置内部に水垢などの異物が溜まってしまい、これが噴水口を詰まらせて水の流れが妨げられ、充分に散水できなくなるおそれがあった。
【0009】
この対策として、定期的に装置内部の異物を手作業で取り除くことも考えられるが、茶畑に設置されるスプリンクラーは、1ヘクタール約100個(一反あたり約10個)であり、これらすべてのスプリンクラーを解体し、内部の異物を取り除く作業は、高齢化が進む農業従事者にとって大きな負担である。また、上記茶葉の霜害については、そもそも一度の目詰まりで散水が止まることにより甚大な被害が生じてしまうので、このような対策では不充分なのはいうまでもない。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、継続通水では水垢などの異物を濾し取り、濾し取った異物を通水の再開のタイミングごとに洗浄排出することによって濾過部が閉塞しない状態を維持でき、異物が濾過部を塞ぐことにより噴水が弱まることや不意の停止を防止できるようにした、濾過装置、それを備えた散布装置、および濾過方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の濾過装置は、流液が流入する導液口が形成され、該導液口から流入した前記流液が流れ込む複数の通液孔が設けられた制御盤と、前記流液の流入時には同流液の流れに誘導されながら、いずれか一つの前記通液孔に到達し、同通液孔を塞ぐ初動栓体を有する通液室と、前記通液室に連設され、前記通液孔と対応して設けられると共に、同流液を外部へ排出する排液口がそれぞれに形成された複数の分室と、前記流液の流入時には同流液の流れに誘導されながら、前記排液口に到達し、同排液口を塞ぐ追動栓体を有する排液室と、該排液室に連設され、前記流液を噴射する噴射手段を接続する接続手段を有すると共に、同排液室との間に、前記複数の分室のそれぞれと連通し、同分室から流入した前記流液を濾過する濾過部とを有する、環流室を備える。
【0012】
ここで、流液が流入する導液口が形成されていることによって、外部から濾過装置内部へ流液を流入させることができる。
【0013】
また、流液が流入する導液口が形成され、流液が流入する前の状態では導液口を塞ぐ初動栓体を有することによって、流液の流入開始時に、流入する流液によって直接初動栓体を押し上げることができる。
【0014】
ここで、導液口10の数は必ずしも一個とは限られるものではなく、複数個設けてもよい。
【0015】
また、流液の流入時には流液の流れに誘導されながら、いずれか一つの通液孔に到達し、通液孔を塞ぐ初動栓体と、流液の流入時には流液の流れに誘導されながら、排液口に到達し、排液口を塞ぐ追動栓体によって、初動栓体によって塞がれた通液孔に対応する分室内の追動栓体は誘導されることなく、通液孔付近に留まり、初動栓体によって塞がれた通液孔以外の通液孔と対応する分室内の追動栓体は、流液の流れに誘導されて浮遊することができる。
【0016】
また、流液が流入する導液口が形成され、導液口から流入した流液が流れ込む複数の通液孔が設けられた制御盤と、流液の流入時には流液の流れに誘導されながら、いずれか一つの通液孔に到達し、通液孔を塞ぐ初動栓体を有する通液室において、初動栓体はいずれか一つの通液孔を無作為に塞ぐことができる。
【0017】
また、前記通液室に連設される排液室によって、通液室に流入した流液を排液室に流入させることができる。
【0018】
また、流液を外部へ排出する排液口によって、排液室内に溜まった流液を排出することができる。
【0019】
また、導液口から流入した流液が流れ込む複数の通液孔が設けられた制御盤と、流液の流入時には流液の流れに誘導されながら、いずれか一つの通液孔に到達し、通液孔を塞ぐ初動栓体と、通液孔と対応して設けられると共に、流液を外部へ排出する排液口がそれぞれに形成された複数の分室によって、初動栓体によって塞がれた通液孔に対応する分室には通液室内の流液はほぼ流入できなくなり、初動栓体によって通液孔が塞がれた分室以外の分室には、通液室内の流液を通液孔から流入させることができる。
【0020】
また、導液口から流入した流液が流れ込む複数の通液孔が設けられた制御盤と、流液の流入時には流液の流れに誘導されながら、いずれか一つの通液孔に到達し、通液孔を塞ぐ初動栓体と、流体の流入時には流液の流れに誘導されながら、排液口に到達し、排液口を塞ぐ追動栓体によって、初動栓体で塞がれた通液孔以外の通液孔と対応する分室に収容された追動栓体は、通液孔から流入する流液によって押し上げられ、分室内を浮遊して排液口を塞ぐことができる。
【0021】
また、導液口から流入した流液が流れ込む複数の通液孔が設けられた制御盤と、流液の流入時には流液の流れに誘導されながら、いずれか一つの通液孔に到達し、通液孔を塞ぐ初動栓体と、流体の流入時には流液の流れに誘導されながら、排液口に到達し、排液口を塞ぐ追動栓体によって、初動栓体が通液孔を無作為に塞ぐので、各通液孔が塞がれる確率は、ほぼ同率となる。
【0022】
また、排液室に連設された環流室があることによって、排液室に流入した流液を環流室に流入させることができる。
【0023】
また、流液を噴射する噴射手段を接続する接続手段を有する環流室によって、ノズルなどの噴射手段を接続することができる。
【0024】
また、排液室との間に、複数の分室のそれぞれと連通し、分室から流入した流液を濾過する濾過部によって、流液中に含まれる異物を取り除くことができる。
【0025】
次に上記作用を有することによる濾過装置の作動の流れについて説明する。
初動栓体が導液口を塞ぎ、各追動栓体が各分室内において制御盤の各通液孔を塞いだ初期状態から導液口に流液が導入されると、まず初動栓体が流液によって浮き上がり、通液室内において各通液孔に向かう何れか一つの流れに誘導されて無作為(ランダム)に通液孔を塞ぐ。
【0026】
初動栓体で塞がれた通液孔以外の通液孔を通り、その通液孔に対応する分室内に流液が流入し、追動栓体は浮き上がり、排液口に向かう流れに誘導されて排液口を塞ぐ。これにより、流液は排液室の上記分室内を通り、その分室に対応する濾過部で濾過されて環流室に流入する。
【0027】
環流室には、通常使用ではノズルなどの噴射手段が装着されるので、環流室への流液の流入により、噴射手段につながる環流室内の液圧は一気に上がる。一方、初動栓体が塞いでいる通液孔に対応する分室の排液口は、まだ追動栓体が動いていないため開口しており、環流室内の液圧は、環流室からこの分室に対応する濾過部を通り排液口に向かう流れとして逃げやすくなっている。
【0028】
これにより、環流室からこの分室に対応する濾過部を通り排液口に向かう液の流れが生じて、以前の通水により濾過部で濾し取られて付着していた異物を分室内に剥離させ、流液と共に排液口から外部へ排出する。
【0029】
このときの分室内へ流入した流液により、初動栓体で塞がれた通液孔に対応する分室内の追動栓体が浮き上がり、排液口へ向かう流液に誘導されて排液口を塞ぐ。なお、上記した導液口からの流液の流入からここまでの動きは瞬間的に、またはごく短時間のうちに行われる。
【0030】
そして、導液口から継続して導入される流液の液圧によって、制御盤の通液孔に対する初動栓体の接着状態と、各排液口に対する各追動栓体の接着状態が維持され、初動栓体で塞がれた通液孔以外の通液孔に対応する分室を通る流液は、濾過部を通り濾過され、噴射手段側へ流れる。
【0031】
なお、初動栓体により塞がれる通液孔は無作為に選ばれるので、各通液孔が塞がれる確率は、ほぼ同率となり、複数設けられている分室に対応する濾過部では、定期的な通液の開始のタイミングで順次濾過部からの異物の剥離が成される。これにより、濾過された異物により濾過部の閉塞が進むことを防止でき、濾過部の閉塞により噴水が弱まることや不意の噴水停止などが起こらないようにすることができる。
【0032】
また、初動栓体が通液状態を一部確保しつつ通液孔を塞ぐ場合には、初動栓体によって塞がれた通液孔からでも流液を流入させることができる。
【0033】
また、初動栓体が追動栓体より軽量に設けられた場合には、追動栓体よりも早く、初動栓体を誘導させることができる。
【0034】
また、上記課題を解決するために、本発明の濾過装置は、いずれか一つが無作為に塞がれる、流液が流れ込む複数の通液孔と対応して設けられると共に、同流液を外部へ排出する排液口がそれぞれに形成された複数の分室と、前記流液の流入時には同流液の流れに誘導されながら、前記排液口に到達し、同排液口を塞ぐ栓体を有する排液室と、
該排液室に連設され、前記流液を噴射する噴射手段を接続する接続手段を有すると共に、同排液室との間に、前記複数の分室のそれぞれと連通し、同分室から流入した前記流液を濾過する濾過部を有する、環流室を備える。
【0035】
また、いずれか一つが無作為に塞がれる、流液が流れ込む複数の通液孔と対応して設けられる分室によって、各分室に流水が流れ込む確率をほぼ同率にすることができる。
【0036】
また、流液を外部へ排出する排液口がそれぞれに形成された複数の分室と、流液の流入時には流液の流れに誘導されながら、排液口に到達し、排液口を塞ぐ栓体によって、流液が通液孔から流入する時には排液口からの流液の流出を防ぐことができ、通液孔から流液が流入する前の状態では、分室内の流液を排液口から流出させることができる。
【0037】
また、排液室に連設される環流室によって、排液室に流入した流液を環流室に流通させることができる。
【0038】
また、流液を噴射する噴射手段を接続する接続手段を有する環流室によって、ノズルなどの噴射手段を濾過装置に接続することができる。
【0039】
また、排液室に連設され、排液室との間に、複数の分室のそれぞれと連通し、分室から流入した流液を濾過する濾過部を有する環流室によって、排液室から流入した流液中に含まれる異物を取り除くことができる。
【0040】
また、上記課題を解決するために、本発明の散布装置は、流液が流入する導液口が形成され、該導液口から流入した前記流液が流れ込む複数の通液孔が設けられた制御盤と、前記流液の流入時には同流液の流れに誘導されながら、いずれか一つの前記通液孔に到達し、同通液孔を塞ぐ初動栓体を有する通液室と、前記通液室に連設され、前記通液孔と対応して設けられると共に、同流液を外部へ排出する排液口がそれぞれに形成された複数の分室と、前記流液の流入時には同流液の流れに誘導されながら、前記排液口に到達し、同排液口を塞ぐ追動栓体を有する排液室と、該排液室に連設され、前記流液を噴射する噴射手段を接続する接続手段を有すると共に、同排液室との間に、前記複数の分室のそれぞれと連通し、同分室から流入した前記流液を濾過する濾過部とを有する、環流室と、該環流室と液密に接続され、噴射孔を有する噴射部を備える。
【0041】
また、環流室と液密に接続され、噴射孔を有する噴射部によって、環流室から流入する流液を噴射孔から噴射することができる。
【0042】
また、上記課題を解決するために、本発明の濾過方法は、複数の中から無作為に選ばれた通液孔を塞ぎ、該塞がれた通液孔と対応し濾過部が洗浄される分室への流液の流入を妨げる工程と、前記濾過部が洗浄される分室以外の他の分室に流れ込んだ前記流液を、同他の分室に設けられた濾過部で濾過する工程と、前記他の分室を流通した流液の液圧により前記濾過部が洗浄される分室の濾過部を通して、同濾過部が洗浄される分室内に前記流液を流入させて、同濾過部から脱落した濾過物を、前記濾過部が洗浄される分室の排液口から、前記流液と共に外部へ排出する工程とを備える。
【0043】
また、複数の中から無作為に選ばれた通液孔を塞ぐ工程によって、ほぼ同率で各分室に流液を流入させることができる。
【0044】
また、塞がれた通液孔と対応し濾過部が洗浄される分室への流液の流入を妨げる工程によって、濾過部が洗浄される分室以外の他の分室へ流液を流入させることができる。
【0045】
また、複数の中から無作為に選ばれた通液孔を塞ぎ、塞がれた通液孔と対応し濾過部が洗浄される分室への流液の流入を妨げる工程と、濾過部が洗浄される分室以外の他の分室に流れ込んだ流液を、他の分室に設けられた濾過部で濾過する工程によって、濾過部が洗浄される分室以外の他の分室に流入した流液に含まれる異物を取り除くことができる。
【0046】
また、複数の中から無作為に選ばれた通液孔を塞ぎ、塞がれた通液孔と対応し濾過部が洗浄される分室への流液の流入を妨げる工程と、他の分室を流通した流液の液圧により濾過部が洗浄される分室の濾過部を通して、濾過部が洗浄される分室内に流液を流入させて、濾過部から脱落した濾過物を、濾過部が洗浄される分室の排液口から、流液と共に外部へ排出する工程によって、ほぼ同率で各分室の濾過部を洗浄することができる。
【0047】
また、複数の中から無作為に選ばれた通液孔を塞ぎ、塞がれた通液孔と対応し濾過部が洗浄される分室への流液の流入を妨げる工程と、他の分室を流通した流液の液圧により濾過部が洗浄される分室の濾過部を通して、濾過部が洗浄される分室内に流液を流入させて、濾過部から脱落した濾過物を、濾過部が洗浄される分室の排液口から、流液と共に外部へ排出する工程によって、ほぼ同率で各分室の濾過部を洗浄するので、濾過部が目詰まりすることを防ぐことができる。
【0048】
また、濾過部が洗浄される分室の排液口を塞いで、流液を各分室と各濾過部を通して通水する工程を備える場合には、噴射される流液の液圧が高くなるので、勢いよく噴射させることができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明は、継続通水では水垢などの異物を濾し取り、濾し取った異物を通水の再開のタイミングごとに洗浄排出することによって濾過部が閉塞しない状態を維持でき、異物が濾過部を塞ぐことにより噴水が弱まることや不意の停止を防止できるようにした、濾過装置、それを使用した散布装置、および濾過方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施の形態について
図1ないし
図5を参照しながら詳細に説明し、本発明の理解に供する。
【0052】
〔第1の実施の形態〕
本発明の第1の実施の形態に係る濾過装置Aを
図1に示す。
濾過装置Aは、水源から、流液の一例である流水を取り入れる通液室1、通液室1から流入する流水を、制御盤11を介して取り入れる排液室2、及び排液室2からフィルター30を介して流水を取り入れる環流室3を備えている。
【0053】
即ち、導液口10から流入した流水は、通液室1、排液室2、環流室3の順に通過し、
図2に示すように、環流室3に、噴射手段の一例であるノズルNを接続した場合、ノズルNから噴射される。
【0054】
通液室1、排液室2及び環流室3は、各種金属など液密な素材でつくられた、径が異なる部分がある、ほぼ円筒形状のケーシングC内に形成されている。なお、本発明の濾過装置の構造を説明するために、ケーシングCを、通液室1を取囲む周壁C1、排液室2を取囲む周壁C2、及び環流室3を取囲む周壁C3に便宜上分けるが、周壁C1ないし周壁C3は一体に設けられており、全体としてケーシングCを構成している。
【0055】
(通液室1)
通液室1は、導水管14につながる導液口10、導液口10に向かって下り傾斜した漏斗(じょうご)状の底壁13、通液室1を取囲む周壁C1、通液孔110及び通液孔111を有する制御盤11、及び内部に収容された球形状の初動栓体12を備えている。
【0056】
通液室1の底壁13の略中央には、水源から流れ込む流水が流入する、上部に向けて開口した、平面視略円形の導液口10が形成されている。通液室1の底壁13は、導液口10へ向けて所要角度で下り傾斜して設けられている。
【0057】
底壁13の周縁から立ち上がるように、円筒形の周壁C1が設けられており、周壁C1の上端の開口付近を覆うように制御盤11が位置する。
【0058】
制御盤11は、導液口10と対向する位置であって、かつ、後述する排液室2との間に設けられている。制御盤11は円形の盤であり、ケーシングC内の通液室1と排液室2の間に、ケーシングCの内側の面にほぼ内接するようにして固定されている。制御盤11の直径線上において、中心を挟む二箇所には、中心から等距離に円形の通液孔110、111が上下方向に貫通して形成されている。
【0059】
導液口10は通液室1の底壁13を貫通し導水管14と連通しているので、流水は導液口10を通って、通液室1の内部に流入する。
【0060】
通液室1内には、球形状の初動栓体12が収容されている。初動栓体12の直径は、導液口10の内径より径大に形成されているので、初期状態で、初動栓体12が通液孔110及び通液孔111と同じ距離、対称方向の位置にあることで、通液孔110及び通液孔111とは、初動栓体12に対する条件が実質的に同じになり、結果的に、通液孔110と通液孔111は、ほぼ同じ確率で初動栓体12により塞がれることになる。
【0061】
流水が通液室1内に流入すると、初動栓体12は押し上げられ、制御盤11に設けられた通液孔110及び通液孔111のいずれか一つに到達し、これを塞ぐ。
【0062】
通液孔110及び通液孔111は、初動栓体12よりも径小に形成されており、通液孔110が初動栓体12により塞がれると、後述する分室20への流水の流入が妨げられ、通液孔111が初動栓体12により塞がれると、後述する分室21への流水の流入が妨げられる。
【0063】
ここで、底壁13の傾斜角度は特に限定するものではなく、また傾斜を設けない形状も考えられる。要は、通水を停止したときに、初動栓体12が自動的に底壁13の中心にある導液口10を塞ぐ位置に移動できるような構造であればよい。
【0064】
また、初動栓体12は、一個に限られるものではない。初動栓体によって塞がれる通液孔以外に、初動栓体によって塞がれない通液孔が存在すればよく、複数個設けてもよい。
【0065】
なお、二個以上の初動栓体によって一個の通液孔が塞がれてもよい。また、二個以上の初動栓体よりも通液孔が多く(即ち、三個以上)設けられた場合には、二個以上の初動栓体がそれぞれ、通液孔を一個ずつ塞ぐことも採用することができる。
【0066】
また、通液孔は二個に限られるものではない。初動栓体によって塞がれる通液孔以外に、初動栓体によって塞がれない通液孔が存在すればよく、三個以上設けてもよい。
【0067】
(排液室2)
排液室2は、通液孔110及び通液孔111を有する制御盤11、排液室2を取囲む周壁C2、周壁C2を内外方向に貫通して設けられた排液口22及び排液口23、制御盤11と対向する位置に設けられ、流水中の異物を取り除くフィルター30、及び制御盤11と周壁C2とフィルター30により囲まれた空間を隔壁26により区画することで形成された分室20及び分室21を備えている。なお、フィルター30には金属製のメッシュ素材が用いられており、目の大きさは、約1mm(メッシュ型番としては14〜18)である。なお、フィルタ−30は、金属製のメッシュ素材のものに限られない。例えばプラスチック製のメッシュ素材、各種繊維製のメッシュ素材を採用することもできる。
【0068】
追動栓体24の直径は、通液孔110の内径より径大に形成され、追動栓体24により通液孔110をほぼ塞ぐことができる。通液孔110が追動栓体24によって塞がれた状態においては、通液孔110から流水が漏れ出にくくなるので、分室20は流水を排液口22の口底部を上限水位として貯水することができるようになっている。
【0069】
追動栓体25の直径は、通液孔111の内径より径大に形成され、追動栓体25により通液孔111を塞ぐことができる。通液孔111が追動栓体25によって塞がれた状態においては、通液孔111から流水が漏れ出にくくなるので、分室21は流水を排液口22の口底部を上限水位として貯水することができるようになっている。
【0070】
通液室1に流入することにより押し上げられた初動栓体12が通液孔110を塞いだ場合には、追動栓体24は流水によりそれほど大きく押し上げられることはなく、通液孔110付近にとどまる。これにより、通液孔110は、下部を初動栓体12により塞がれ、上部を追動栓体24により塞がれているので、分室20内への流水の流入は妨げられる。
【0071】
このとき、通液室1を通過した流水が通液孔111から流入し追動栓体25を押し上げ、追動栓体25は分室21内を浮遊する。これにより、分室21内へ流水が流入する。
【0072】
分室21を構成する周壁C2の上部寄りには、円形の排液口23が内外方向に貫通して設けられている。分室21内へ流入した流水の一部は排液口23から外部へ排出され、この流水と共に押し上げられた追動栓体25も排液口23へ到達し、その後排液口23を塞ぐ。
【0073】
排液口23が追動栓体25によって塞がれると、流水は分室21内を勢いよく通過し、フィルター30で濾過されながら、後述する環流室3へ流入する。
【0074】
なお、通液室1に流入することにより押し上げられた初動栓体12が通液孔111を塞いだ場合には、追動栓体25は流水によりそれほど大きく押し上げられることはなく、通液孔111付近にとどまる。これにより、分室21内への流水の流入は妨げられる。
【0075】
このとき、通液孔110から通液室1を通過した流水が流入し追動栓体24を押し上げ、追動栓体24は分室20内を浮遊する。これにより、分室20内へ流水が流入する。
【0076】
分室20を構成する周壁C2の上部寄りには、円形の排液口22が内外方向に貫通して設けられている。分室20内へ流入した流水の一部は排液口22から外部へ排出され、この流水と共に押し上げられた追動栓体24も排液口22へ到達し、その後排液口22を塞ぐ。
【0077】
排液口22が追動栓体24によって塞がれると、流水は分室20内を勢いよく通過し、フィルター30で濾過されながら、後述する環流室3へ流入する。
【0078】
ここで、分室は二つに限られるものでない。制御盤の通液孔に対応した部屋数があればよく、3つ以上であってもよい。
【0079】
また、追動栓体は二個に限られるものではない。分室の数に対応した数があればよく、3つ以上であってもよい。
【0080】
(環流室3)
環流室3は、排液室2から流入する流水が濾過されながら通過するフィルター30、フィルター30と対向する位置に形成された開口部31、噴射手段の一例であるノズルNを螺合するための雌ネジ部32、及びノズルNと液密に接続される周壁C3を備えている。
【0081】
図2を参照し、散布装置であるスプリンクラーSについて説明する。
スプリンクラーSは、濾過装置AとノズルNを備えている。
ノズルNは、各種金属など液密な素材でつくられ、下部が開口した略円筒形の通水管N2を有する。ノズルNは、濾過装置Aの環流室3に接続される。
【0082】
ノズルNの下端部分には雄ネジ(符号省略)が設けられており、周壁C3の内面に設けられた雌ネジ部32と螺合することで、ノズルNは濾過装置Aに液密に接続される。なお、ノズルNと濾過装置Aの接続方法は、上記のネジ以外にも、ゴム製のパッキングなどを採用することができるが、これらに限られるものではない。
【0083】
ノズルNの先端には、ノズルヘッドHが設けられており、ノズルヘッドHには板状の散水板H1が、噴射口N1の近傍に位置するよう設けられている。ノズルヘッドHは回転軸H2を中心として周方向に往復運動することで、噴射口N1から噴射される流水が散水板H1によって跳ね返されて散らされる。
【0084】
ノズルNの下端は、環流室3のフィルター30付近まで深く接続されるので、容易に離脱することがなく、また、排液室2を通過してフィルター30で濾過された流水は、そのままノズルNの通水管N2に流入させることができる。
【0085】
初動栓体12が通液孔110を塞いだ場合には、通液孔111から流れ込む流水によって追動栓体25が押し上げられ、排液口23を塞ぎ、通液室1内の流水は分室21を通り抜け、フィルター30の一部である、分室21の上部を塞ぐ濾過部300で濾過されながら、環流室3に流入する。
【0086】
このとき、環流室3内では、分室21から流入した流水がノズルNの通水管N2へ流れ込もうとするが、ノズルNの噴射口N1が狭小に形成されているため、通水管N2へ流れ込む量に比べて噴射口N1から噴射される流水の量が極めて少ないので、通水管N2及び分室21内の液圧は高くなる。
【0087】
一方、分室20内では通液孔110からの流水の流入がほとんどないため通水管N2及び分室21に比べると流水による液圧は低くなる。このため、通水管N2内の流水は、ノズルNの噴射口N1の方向へ進みにくいので、方向を変えて分室20内へ押し込まれるように流入する。
【0088】
このとき、以前の通水で、流水が分室20を通ったときにフィルター30の一部である、分室20の上部を塞ぐ濾過部300で濾過された異物(濾過物)が付着しており、流水が、濾過部300を環流室3の側から分室20内へ流入する際、付着した異物を剥離しながら濾過部300を通過し、排液口22から異物と共に排出される。
【0089】
一方、初動栓体12が通液孔111を塞いだ場合には、通液孔110から流れ込む流水によって追動栓体24が押し上げられ、排液口22を塞ぎ、通液室1内の流水は分室20を通り抜け、フィルター30の一部である、分室20の上部を塞ぐ濾過部300で濾過されながら、環流室3に流入する。
【0090】
このとき、環流室3内では、分室20から流入した流水がノズルNの通水管N2へ流れ込もうとするが、ノズルNの噴射口N1が狭小に形成されているため、通水管N2へ流れ込む量に比べて噴射口N1から噴射される流水の量が極めて少ないので、通水管N2及び分室20内の液圧は高くなる。
【0091】
一方、分室21内では通液孔111からの流水の流入がほとんどないため通水管N2及び分室20に比べると流水による液圧は低くなる。このため、通水管N2内の流水は、ノズルNの噴射口N1の方向へ進みにくいので、方向を変えて分室21内へ押し込まれるように流入する。
【0092】
このとき、以前の通水で、流水が分室21を通った際にフィルター30の一部である、分室21の上部を塞ぐ濾過部301で濾過された異物(濾過物)が付着しており、流水が、濾過部301を環流室3の側から分室21内へ通過する際、付着した異物を剥離しながら濾過部301を通過し、排液口23から異物と共に排出される。
【0093】
分室20内に収容された、球形状の追動栓体24、及び分室21内に収容された球形状の追動栓体25は、初動栓体12と比較すると、重く形成されている。
【0094】
これにより、初動栓体12が通液孔110を塞いだ場合は、追動栓体25は、初動栓体12に遅れて押し上げられて、排液口23を塞ぐ。同様に、初動栓体12が通液孔111を塞いだ場合は、追動栓体24は、初動栓体12に遅れて押し上げられて、排液口22を塞ぐ。
【0095】
即ち、追動栓体24及び追動栓体25が初動栓体12よりも早く動き出してしまうことで、排液口22及び排液口23がほぼ同時に塞がれてしまうことを防ぐことができる。
【0096】
なお、初動栓体は、必ずしも追動栓体よりも軽く作られるものに限られず、追動栓体が排液口を塞ぐ前に初動栓体が通液孔110若しくは通液孔111を防ぐことができるような効果が発揮されればよい。例えば、大きさや形状などを変えることで、上記の効果が発揮されるようにすることもできる。
【0097】
(作用)
以下、さらに濾過装置A〜と散布装置であるスプリンクラーSの作用について詳細に説明する。
なお、以下の説明では、流水を
図3に示された矢印を参照して説明するが、特に流水の瞬間的な流れの説明では、必ずしも経路を流れているばかりではなく、経路中にある水が流水に押されて作用している場合もある。
【0098】
図3(a)に示すように、濾過装置Aは、基本的に環流室3を上方にしてケーシングCを鉛直方向に向けた状態で使用する。また、茶葉の霜害を防止するために使用する場合のように、定期的に散水と散水停止が繰り返されている状況下では、散水を始める前の初期状態でも、通常は、排液室2の領域の一部(排液孔22、23より下側)、および通液室1の領域の大部分または全部に水が入っている。
【0099】
通液室1に収容された初動栓体12は、流水が流入する前においては、自身の重さで最も深い位置にある導液口10を塞ぐように位置している。分室20に収容された追動栓体24は通液孔110を塞ぎ、分室21に収容された追動栓体25は通液孔111を塞いでいる。
【0100】
なお、初動栓体12が導液口10を塞ぐ位置にあることで、初期状態において初動栓体12が通液孔110、および通液孔111と同じ距離にあり、条件を同じにすることにより、初動栓体12を偶然にまかせて動作させても、通液孔110と通液孔111が結果的にほぼ同率で塞がれるようにしている。
【0101】
図3(b)に示すように、流水が導液口10を通って通液室1の内部へ流入することにより、初動栓体12は流水に押し上げられ通液室1内を浮遊し始める。通液室1内には、初動栓体12を通液孔110に液圧により押し付ける流れw1と、通液孔111を通る流れw2がある。
【0102】
これにより、流水は、通液孔110から分室20へほぼ流入できなくなる。なお、このときの初動栓体12の通液孔110を塞ぐまでの動きは瞬間的であるので、追動栓体24及び追動栓体25が大きく動くことはない。
【0103】
また、通液室1内では、初動栓体12が通液孔110に押し付けられた状態が維持されながら、流水は流れw2により通液孔111を通って分室21へ流れ込む。このとき、初動栓体12による通液孔110の閉塞は完全ではなく、若干の通水が確保されている。
【0104】
図3(c)に示すように、流れw2により追動栓体25は押し上げられ、分室21内を浮遊する。流水は流れw2によりフィルター30に到達し、大半の流水は、濾過されながらフィルター30を通り抜け環流室3に流入する。
【0105】
一方、一部の流水はフィルター30に押し戻されるなどしながら、排液口23から流れ出ようとする流れw3を生じさせ、排液口23から外部へ流れ出る。また、流れw3により、追動栓体25は排液口23に到達し、排液口23を塞ぐ。これにより、流水は、排液口23から外部へほとんど流出しなくなる。
【0106】
追動栓体25によって排液孔23が塞がれると、流れw2による流水は勢いを増して、濾過部301を通り抜ける際濾過されながら、環流室3へ流入する。
【0107】
環流室3へ流入した流水は、勢いを保ったままノズルN側へ流入し、ノズルNの噴射口N1から外部へ流出しようとするが、噴射口N1が狭小に形成されているので、ノズルNの通水管N2及び環流室3内部は、流水による液圧が高まる。
【0108】
一方、分室20は初動栓体12により通液孔110が若干の通水は確保されているが実質的に塞がれているので、流水の流入する量は分室21に比べると極めて少なく、流水による分室20内の液圧は、ノズルN内部及び環流室3内部の液圧よりも低い。このため、
図3(d)に示すように、ノズルN内部及び環流室3から分室20へ向かう流れw4が生じ、ノズルN内部及び環流室3内部の流水の一部は、濾過部300を通り分室20内へ流れ込む。
【0109】
このとき、分室20と接する濾過部300の分室20側の面には、以前の通水で、流水が分室20を通ったときにフィルター30で濾過された異物(濾過物)が付着しており、この異物は、流れw4による流水の分室20内への流入により、分室20内部へ向けて剥離され、排液口22から外部へ流水と共に排出される。なお、ここまでの動きも、導水口10からの通水開始後、瞬間的に行われる。
【0110】
この時点で、追動栓体24は、初動栓体12と通液孔110の隙間を、通液室1から分室20へ向けて流れる流れw5により浮遊を始める。なお、初動栓体12の通液孔110への接着と、追動栓体25の排液口23への接着は維持されている。
【0111】
図3(e)に示すように、分室20内では、流れw4及び流れw5の他、濾過部300を通り抜け追動栓体24の表面に沿って下降するが、制御盤11に当たって押し返され上昇する流れw6が生じている。
【0112】
これら三つの流れw4、w5及びw6により、追動栓体24は押し上げられ、分室20内を浮遊し、排液口22へ向かう流れに誘導されて排液口22に到達し、排液口22を塞ぐ。
【0113】
そして、
図3(f)に示すように、初動栓体12が通液孔110のほとんどを塞ぎ、追動栓体25が排液口23のほとんどを塞ぎ、更に追動栓体24が排液口22のほとんどを塞ぐ状態となる。また、導液口10からの流水の流入による液圧により、この状態が維持され、通液室1から排液室2及び環流室3を経てノズルNまで継続的に通水可能となり、噴射口N1から連続して噴射が行われる。
【0114】
このとき、流水に含まれる異物は分室21側の濾過部301で濾過されるので、ノズルNに異物が流入することを防ぐことができ、噴射口N1に異物が詰まることなく、継続的に流水の噴射を行って、周囲に散水することができる。
【0115】
所要時間経過後、流水の流入を止めると、導液口10からの流入がないため、初動栓体12を圧し続けていた流れw1が消える。これにより、初動栓体12は自重により沈降し始め、底壁13の斜面に沿って転がるなどしながら、導液口10を塞ぐように位置する。
【0116】
同様に、流水の流入を止めると、追動栓体24若しくは追動栓体25についても、対応する分室20若しくは分室21内の液圧が下がる。これにより追動栓体24若しくは追動栓体25は、排液口22若しくは排液口23から離脱し、自重により沈降し始め、対応する通液孔110若しくは通液孔111を塞ぐように位置する。
【0117】
以上より、濾過装置A内のすべての流れが消え、流液が流入する前の状態に戻る。
【0118】
そして、次に通水を開始する時に、初動栓体12が通液孔110ではなく通液孔111を塞いだ場合、上記で述べたのとは逆に、分室21に接する濾過部301の分室21側の面に付着した異物が剥離されることでフィルター30は洗浄され、排液口23から流水と共に排出される。
【0119】
なお、初動栓体12が通液孔110を塞ぐか、通液孔111を塞ぐかは無作為になされるものであるため、通液孔110及び通液孔111が塞がれる確率は、ほぼ等しくなる。このため、フィルター30の濾過部300、301はほぼ均等に繰り返し洗浄されるので、フィルター30全体の目詰まりを継続的に防止することができる。
【0120】
また、このフィルター30の目詰まりが原因でノズルからの噴射量が減ったり、あるいは噴射が止まったりすることを防ぐことができる。
【0121】
〔第2の実施の形態〕
本発明の第2の実施の形態に係る濾過装置Aを備えた散水装置S'を
図4(a)〜(c)に示す。
図4(a)に示すように、濾過装置Aは、水源から、流水を取り入れる通液室1、通液室1から流入する流水を、制御盤11を介して取り入れる排液室2、及び排液室2からフィルター30を介して流水を取り入れ、後述するノズル4と接続可能な環流室3を備えている。
【0122】
ノズル4は、略円筒形状の形状をしており、上部に狭小な噴射孔40が設けられている。ノズル4は、基本的に噴射孔40を上方に向けた姿勢で、環流室3に嵌合させて使用する。
【0123】
ノズル4の外径は環流室3の内径にほぼ一致しており、ノズル4の下部を環流室3に嵌合すると、環流室3とノズル4は液密に接合される。
【0124】
水源からの流水は導液口10から通液室1内に流入する。流水が通液室1に流入する前は
図4(a)に示すように、初動栓体12は導液口10を塞ぎ、追動栓体24及び追動栓体25は通液孔110及び通液孔111をそれぞれ塞ぐ。
【0125】
図4(b)に示すように、導液口10から流入した流水は初動栓体12を押し上げ、初動栓体12は通液孔110を塞ぎ、次いで追動栓体25が押し上げられ、排液口23を塞ぐ。流水は分室21を通り抜け、環流室3へ流入すると同時に、分室20へ流れ込み、異物と共に排液口22より排出される。
【0126】
その後、
図4(c)に示すように、追動栓体24も排液口22を塞ぎ、排液口22からの流出は止まり、流水は、環流室3に嵌合されたノズル4の噴射孔40から勢いよく噴射される。
【0127】
ノズル4は環流室3に嵌合されているので、濾過装置Aが故障したときは濾過装置Aのみを交換すれば、スプリンクラーS'として使用し続けることができる。
【0128】
なお、ノズル4と環流室3を嵌合する手段として、ゴム製のパッキングなどを用いることもできるが、ねじ込み式にすることもできる。
【0129】
このように、濾過装置Aおよび散布装置は、継続通水では水垢などの異物を濾し取り、濾し取った異物を通水の再開のタイミングごとに洗浄排出することによって濾過部が閉塞しない状態を維持でき、異物が濾過部や噴出口を塞ぐことによる噴水の停止を防止することができる。