特許第6156870号(P6156870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日曹エンジニアリング株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人山梨大学の特許一覧

<>
  • 特許6156870-有機廃棄物のガス化方法 図000002
  • 特許6156870-有機廃棄物のガス化方法 図000003
  • 特許6156870-有機廃棄物のガス化方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6156870
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】有機廃棄物のガス化方法
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/00 20060101AFI20170626BHJP
   C10J 3/72 20060101ALI20170626BHJP
   C10J 3/78 20060101ALI20170626BHJP
   C02F 11/08 20060101ALI20170626BHJP
   C08J 11/14 20060101ALI20170626BHJP
   C08J 11/24 20060101ALI20170626BHJP
   C08J 11/26 20060101ALI20170626BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20170626BHJP
   B01J 25/02 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   C10J3/00 AZAB
   C10J3/72 A
   C10J3/72 H
   C10J3/78
   C02F11/08
   C08J11/14
   C08J11/24
   C08J11/26
   B09B3/00 304P
   B09B3/00 304N
   B09B3/00 304Z
   B01J25/02 M
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-145922(P2013-145922)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2015-17197(P2015-17197A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年5月16日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、研究成果最適展開支援プログラム、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000227087
【氏名又は名称】日曹エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【弁理士】
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 政晴
(72)【発明者】
【氏名】石川 高広
(72)【発明者】
【氏名】小林 英一郎
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−084631(JP,A)
【文献】 特開2004−352756(JP,A)
【文献】 特開昭61−159489(JP,A)
【文献】 特公昭49−022313(JP,B1)
【文献】 特開2003−201486(JP,A)
【文献】 ISRN Chemical Engineering,2012年,Vol. 2012, Article ID 591587
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3、
B01J 25、
B09B 3、
C02F 11、
C08J 11、
C10J 3
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機廃棄物と水とを含む被処理物を加圧および加熱して、圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて触媒に接触させずに水熱反応を開始させる工程(1)
加圧および加熱された被処理物を嵩密度が1〜8g/cm3で、多孔質粒状で且つ金属を含有する触媒に圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて有機廃棄物を分解させる工程(3)、および
該分解生成物を含む被処理物を減圧または冷却して気液分離する工程(4)
を有
さらに、工程(1)、(3)および(4)を行う前または行った後の前記触媒に低級アルコール水溶液または低級カルボン酸水溶液を圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて前記触媒を賦活する工程を有する
有機廃棄物のガス化方法。
【請求項2】
有機廃棄物と水とを含む被処理物を加圧および加熱して、圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて触媒および活性炭に接触させずに水熱反応を開始させる工程(1)
加圧および加熱された被処理物を活性炭に圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて有機廃棄物を低分子量化する工程(2)
低分子量化された有機廃棄物を含む被処理物を嵩密度が1〜8g/cm3で、多孔質粒状で且つ金属を含有する触媒に圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて有機廃棄物を分解させる工程(3)、および
該分解生成物を含む被処理物を減圧または冷却して気液分離する工程(4)
を有
さらに、工程(1)、(2)、(3)および(4)を行う前または行った後の前記触媒に低級アルコール水溶液または低級カルボン酸水溶液を圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて前記触媒を賦活する工程を有する
有機廃棄物のガス化方法。
【請求項3】
被処理物に低級アルコールまたは低級カルボン酸を添加する工程をさらに有する、請求項1または2に記載の有機廃棄物のガス化方法。
【請求項4】
嵩密度が1〜8g/cm3で、多孔質粒状で且つ金属を含有する
圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃の水中にて有機廃棄物の分解を促進させるために請求項1または2に記載の方法に用いられる触媒。
【請求項5】
金属がニッケルである請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
有機廃棄物と水とを含む被処理物を加圧および加熱して、圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて水熱反応を開始させるための何も充填されていない第一反応層、
加圧および加熱された被処理物を嵩密度が1〜8g/cm3で、多孔質粒状で且つ金属を含有する触媒に圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて有機廃棄物を分解させるための前記触媒の充填された分解反応層
分解生成物を含む被処理物を減圧または冷却して気液分離するための分離器、および
工程(1)、(3)および(4)を行う前または行った後の前記触媒に低級アルコール水溶液または低級カルボン酸水溶液を圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて前記触媒を賦活するために低級アルコール水溶液または低級カルボン酸水溶液を供給するための配管を有する
請求項1に記載の方法に用いられる有機廃棄物のガス化装置。
【請求項7】
有機廃棄物と水とを含む被処理物を加圧および加熱して、圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて水熱反応を開始させるための何も充填されていない第一反応層、
加圧および加熱された被処理物を活性炭に圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて有機廃棄物を低分子量化するための活性炭の充填された第二反応層、
低分子量化された有機廃棄物を含む被処理物を嵩密度が1〜8g/cm3で、多孔質粒状で且つ金属を含有する触媒に圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて有機廃棄物を分解させるための前記触媒の充填された分解反応層
分解生成物を含む被処理物を減圧または冷却して気液分離するための分離器、および
工程(1)、(2)、(3)および(4)を行う前または行った後の前記触媒に低級アルコール水溶液または低級カルボン酸水溶液を圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて触媒を賦活するために低級アルコール水溶液または低級カルボン酸水溶液を供給するための配管を有する
請求項2に記載の方法に用いられる有機廃棄物のガス化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機廃棄物のガス化方法に関する。より詳細に、本発明は、少量でまたは間欠的に発生することがある有機廃棄物を、低コスト且つ高効率で、触媒の活性を長く維持して、ガス化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックス、廃ゴム、シュレッダーダスト、家畜糞尿、生ごみ、ビール粕、酒粕、醤油粕、焼酎粕、血液混入廃液、下水汚泥、抗原抗体培養廃液などの有機廃棄物を処分する方法として、焼却処理や生物処理などが知られている。焼却処理では、焼却前に脱水処理や固形分凝集などを行う必要がある。また、不完全燃焼によりダイオキシン類が発生することもある。生物処理は、処理に長い時間を要し、処理後に発生する活性汚泥が新たな廃棄物となる。
【0003】
亜臨界水、過熱水蒸気、超臨界水等の熱水中で有機廃棄物を分解処理する方法が知られている。例えば、特許文献1や2は、反応圧力5〜50MPa、反応温度200〜800℃で水素活性化金属からなる金属触媒及び酸化剤またはアルカリ性触媒の存在下において、亜臨界水又は超臨界水と接触させることを特徴とする有機物のガス化方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−201486号公報
【特許文献2】特開2009− 30071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や2に記載の方法では、触媒活性が短時間のうちに低下して、長期間の運転が困難であり、触媒の再充填などのためにコストが高くなることがある。
本発明の課題は、少量でまたは間欠的に発生することがある有機廃棄物を、低コスト且つ高効率で、触媒の活性を長く維持して、ガス化する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の形態を包含する本発明を完成するに至った。
【0007】
〔1〕有機廃棄物と水とを含む被処理物を加圧および加熱して、圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて水熱反応を開始させる工程、
加圧および加熱された被処理物を嵩密度が1〜8g/cm3で、多孔質粒状で且つ金属を含有する触媒に圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて有機廃棄物を分解させる工程、および
該分解生成物を含む被処理物を減圧または冷却して気液分離する工程
を有する有機廃棄物のガス化方法。
【0008】
〔2〕有機廃棄物と水とを含む被処理物を加圧および加熱して、圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて水熱反応を開始させる工程、
加圧および加熱された被処理物を活性炭に圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて有機廃棄物を低分子量化する工程、
低分子量化された有機廃棄物を含む被処理物を嵩密度が1〜8g/cm3で、多孔質粒状で且つ金属を含有する触媒に圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて有機廃棄物を分解させる工程、および
該分解生成物を含む被処理物を減圧または冷却して気液分離する工程
を有する有機廃棄物のガス化方法。
【0009】
〔3〕被処理物に低級アルコールまたは低級カルボン酸を添加する工程をさらに有する、〔1〕または〔2〕に記載の有機廃棄物のガス化方法。
【0010】
〔4〕嵩密度が1〜8g/cm3で、多孔質粒状で且つ金属を含有する
圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃の水中にて有機廃棄物の分解を促進させるための触媒。
〔5〕金属がニッケルである〔4〕に記載の触媒。
〔6〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれかひとつに記載のガス化方法を行う前または後に、低級アルコール水溶液または低級カルボン酸水溶液を圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて触媒に接触させる工程を有する触媒の賦活方法。
【0011】
〔7〕有機廃棄物と水とを含む被処理物を加圧および加熱して、圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて水熱反応を開始させるための第一反応層、
加圧および加熱された被処理物を嵩密度が1〜8g/cm3で、多孔質粒状で且つ金属を含有する触媒に圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて有機廃棄物を分解させるための分解反応層、および
該分解生成物を含む被処理物を減圧または冷却して気液分離するための分離器を有する有機廃棄物のガス化装置。
【0012】
〔8〕有機廃棄物と水とを含む被処理物を加圧および加熱して、圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて水熱反応を開始させるための第一反応層、
加圧および加熱された被処理物を活性炭に圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて有機廃棄物を低分子量化するための第二反応層、
低分子量化された有機廃棄物を含む被処理物を嵩密度が1〜8g/cm3で、多孔質粒状で且つ金属を含有する触媒に圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて有機廃棄物を分解させるための分解反応層、および
該分解生成物を含む被処理物を減圧または冷却して気液分離するための分離器を有する有機廃棄物のガス化装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によると、少量でまたは間欠的に発生することがある有機廃棄物を、低コスト且つ高効率で、ガス化することができる。また、本発明の方法によると、触媒寿命が長くなり、触媒の再充填などのために生じるコストを抑えることができる。また、本発明の触媒賦活法によって、触媒寿命を更に延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る有機廃棄物のガス化装置を示す図である。
図2】本発明に使用する反応器の一実施形態を示す図である。
図3】実施例および比較例で行ったガス化で発生した気体量の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照しながら本発明を説明する。但し、本発明の技術的範囲は以下に説明する形態に限定されず、本発明の主旨から逸脱しない限りその構成を修正、追加および省略したものも本発明の技術的範囲に包含される。
【0016】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る有機廃棄物のガス化方法は、有機廃棄物と水とを含む被処理物を加圧および加熱して、圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて触媒に接触させずに水熱反応を開始させる工程、加圧および加熱された被処理物を嵩密度が1〜8g/cm3で、多孔質粒状で且つ金属を含有する触媒に圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて有機廃棄物を分解させる工程、および該分解生成物を含む被処理物を減圧または冷却して気液分離する工程を有する。
【0017】
有機廃棄物としては、例えば、廃プラスチックス、廃ゴム、シュレッダーダスト、家畜糞尿、生ごみ、ビール粕、酒粕、醤油粕、焼酎粕、血液混入廃液、下水汚泥、抗原抗体培養廃液などが用いられる。大きな固体の有機廃棄物は、必要に応じて、適当な大きさに破砕される。本発明の一実施形態に係るガス化方法またはガス化装置に供するために、有機廃棄物を水に分散、懸濁、乳化または溶解させて、有機廃棄物と水とを含む被処理物を得ることができる。得られた被処理物は、例えば、タンク4に貯蔵される。タンク4から抜き出された被処理物は加圧ポンプ2で加圧される。加えられる圧力は1.5MPa〜50MPa、好ましくは5MPa〜30MPa、より好ましくは10MPa〜25MPaである。尚、水の臨界圧力は22.06MPaである。
【0018】
加圧ポンプで加圧された被処理物は、反応器1の第一反応ゾーン(または第一反応層)1a内に供給される。図1に示す第一反応ゾーン1aは内部に空洞を有し何も充填されていない。第一反応ゾーン1aにおける液は、加圧および加熱によって、圧力が1.5MPa〜50MPaに、温度が200〜500℃、好ましくは300〜450℃、より好ましくは340〜400℃になっている。なお、水の臨界温度は274.1℃である。このような圧力および温度にすることによって、第一反応ゾーン1a内の水は亜臨界水または超臨界水になる。亜臨界水または超臨界水との接触によって有機廃棄物の水熱反応が開始する。第一反応ゾーンにおいて、有機廃棄物の一部が分解して低分子量化する。
【0019】
次に加圧および加熱された液は、反応器1の分解反応ゾーン(または分解反応層)1c内に供給される。図1に示す分解反応ゾーン1cは内部に空洞を有し且つ触媒が充填されている。充填される触媒は、嵩密度が1〜8g/cm3であることが好ましく、2〜5g/cm3であることがより好ましい。なお、かさ密度は既知質量の触媒をメスシリンダーに入れてその見掛け体積を測定して算出される見掛け密度である。また、当該触媒は多孔質粒状であることが好ましい。多孔度は、水置換法により測定される値として、好ましくは20〜90%、より好ましくは35〜85%、さらに好ましくは50〜80%である。さらに当該触媒は金属を含有するものである。金属としては、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、錫、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、レニウム、銅、金、銀、白金、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、タングステン、モリブデン、マンガン、クロムなどが挙げられる。これらのうち、ニッケルを含有するものが好ましい。そのような触媒の具体例として、ラネーニッケル触媒を挙げることができる。ラネーニッケル触媒は、ニッケルとその他の金属とからなる合金(ラネーニッケル合金)からニッケル以外の金属の全部または一部を溶解除去して成るものである。他の金属成分の含有量は、ラネーニッケル触媒中のニッケルに対して、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜30重量%である。また、ラネーニッケル触媒は、10オングストロームから100オングストロームの大きさの結晶粒子で構成されていることが好ましい。また、本発明に用いられる触媒はBET比表面積が10m2 /g〜100m2 /gであることが好ましい。本発明に用いられる触媒は、担体に担持したものであってもよい。担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニアなどが挙げられる。これらのうち、担体は水熱条件において溶出しないものが好ましい。触媒の大きさは反応器への充填の容易さなどの観点から適宜設定される。分解反応ゾーンにおける圧力は1.5MPa〜50MPa、好ましくは5MPa〜30MPa、より好ましくは10MPa〜25MPaであり、温度は200〜500℃、好ましくは300〜450℃、より好ましくは340〜400℃である。分解反応ゾーンにおいて、有機廃棄物の分解がさらに一層進み、H2、CO2、CH4などの低分子化合物が生成する。
【0020】
第一反応ゾーンおよび分解反応ゾーンの容量や滞留時間は、有機廃棄物の種類や、圧力および温度に応じて適宜設定することができる。
なお、図1に示すガス化装置では、反応器1の下流に保圧弁3が設けられている。保圧弁によって反応器1内の圧力を所定値に維持することができる。反応器1から排出された被処理物は冷却または減圧される。冷却または減圧によって分解生成物が気化する。気液分離器5にて気体と液体に分ける。分けられた気体は配管7を通って次工程に供給される。配管7を通る気体にはH2やCH4などの可燃性ガスが含まれているので、燃料として利用することができる。一方、分けられた液体は配管6を通って次工程に供給される。配管6を通る液体は、ほぼ無色透明な水である。この水は、タンク4に戻して有機廃棄物と混ぜる水として再利用することができる。
【0021】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る有機廃棄物のガス化方法は有機廃棄物と水とを含む被処理物を加圧および加熱して、圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて触媒または活性炭に接触させずに水熱反応を開始させる工程、加圧および加熱された被処理物を活性炭に圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて有機廃棄物を低分子量化する工程、低分子量化された有機廃棄物を含む被処理物を嵩密度が1〜8g/cm3で、多孔質粒状で且つ金属を含有する触媒に圧力1.5MPa〜50MPaおよび温度200〜500℃にて接触させて有機廃棄物を分解させる工程、および該分解生成物を含む被処理物を減圧または冷却して気液分離する工程を有する。
【0022】
実施形態2が実施形態1に対して相違する点は、第二反応ゾーン(第二反応層)1bを有することである。すなわち、図2に示すように、第一反応ゾーン1aの後で且つ分解反応ゾーン1cの前に、第二反応ゾーン(第二反応層)1bが設けられている。第二反応ゾーン1bは内部に空洞を有し且つ活性炭が充填されている。活性炭は、その嵩密度が0.5〜8g/cm3であることが好ましい。活性炭の比表面積は好ましくは10〜5000m2/gである。第二反応ゾーンにおける圧力は1.5MPa〜50MPa、好ましくは5MPa〜30MPa、より好ましくは10MPa〜25MPaであり、温度は200〜500℃、好ましくは300〜450℃、より好ましくは340〜400℃である。第二反応ゾーンにおいて、ラジカルを捕捉し、有機廃棄物の分解が進みさらに低分子量化する。
第一反応ゾーン、第二反応ゾーンおよび分解反応ゾーンの容量や滞留時間は、有機廃棄物の種類や、圧力および温度に応じて適宜設定することができる。
【0023】
〔ガス化装置の運転停止および始動〕
有機廃棄物は常時発生する場合もあるが、少量でまたは間欠的に発生することがある。
図1に示すタンク8には、低級アルコール水溶液または低級カルボン酸水溶液が貯留されている。タンク4中の有機廃棄物がすべて無くなった場合や、業務上の都合などでガス化装置を停止する場合には、切替弁9を回して、タンク4に繋がる配管の口を閉じ、タンク8に繋がる配管の口を開き、タンク8から低級アルコール水溶液または低級カルボン酸水溶液を反応器1に供給する。このときの、反応器1の圧力は1.5MPa〜50MPa、好ましくは5MPa〜30MPa、より好ましくは10MPa〜25MPaであり、反応器1の温度は200〜500℃、好ましくは300〜450℃、より好ましくは340〜400℃である。反応器1に供給された低級アルコール水溶液または低級カルボン酸水溶液によって、反応器1の内面や活性炭または触媒の表面に付着した、水熱反応で生成したタール状物質や低分子量化し切れなかった有機廃棄物を取り除くことができる。また、水熱反応によって触媒の表面が幾分か酸化した状態になる。低級アルコール水溶液または低級カルボン酸水溶液をタンク6から反応器1に供給すると低級アルコール水溶液または低級カルボン酸水溶液が分解して水素が生成する。この水素の還元作用によって触媒が効果的に賦活される。次いで、タンク8からの低級アルコール水溶液または低級カルボン酸水溶液の供給を継続したままで反応器11内を減圧および冷却して水熱反応が起きない状態にまで圧力および温度を下げる。このようにして本発明に係るガス化装置の運転を停止すると触媒の劣化を抑制でき、触媒寿命を延ばすことができる。
【0024】
ガス化装置を始動させる場合には、先ず、タンク8から低級アルコール水溶液または低級カルボン酸水溶液を反応器1に供給し、反応器1の圧力および温度を上げていき、反応器1の圧力を1.5MPa〜50MPa、好ましくは5MPa〜30MPa、より好ましくは10MPa〜25MPaに、反応器1の温度を200〜500℃、好ましくは300〜450℃、より好ましくは340〜400℃にする。そして、切替弁9を回して、タンク8に繋がる配管の口を閉じ、タンク4に繋がる配管の口を開き、タンク4から有機廃棄物と水を含む被処理物を反応器1に供給する。このようにして本発明に係るガス化装置の運転を開始すると、有機廃棄物の加熱分解物が反応器1の入り口付近に堆積するのを抑制でき、さらに触媒の劣化を抑制でき、触媒寿命を延ばすことができる。
タンク8に貯留される低級アルコール水溶液または低級カルボン酸水溶液の濃度は特に制限されないが、例えば、低級アルコールまたは低級カルボン酸の濃度を0.1〜10体積%にすることができる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノールなどが挙げられる。低級カルボン酸としては、蟻酸、酢酸などが挙げられる。
【0025】
〔触媒の賦活〕
本発明においては、タンク4にてまたは反応器1の入口より上流にて、低級アルコールまたは低級カルボン酸を被処理物に添加することが好ましい。低級アルコールまたは低級カルボン酸を被処理物とともに反応器1に供給すると反応器1内で水素が生成する。この水素が触媒の表面を還元して触媒を賦活させ、触媒の寿命を大幅に延ばすことができる。被処理物に添加される低級アルコールまたは低級カルボン酸の量は特に制限されないが、例えば、低級アルコールまたは低級カルボン酸の濃度を0.1〜10体積%にすることができる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を示して本発明をより詳細に説明する。
【0027】
比較例1
長さ150mm、内径8.5mm、耐圧30MPaの管型反応器の内腔にニッケル触媒を充填し、長さ150mmの触媒層を形成させた。
純水を22.5MPaに加圧して反応器に超臨界状態において触媒層平均滞留時間が0.36分になるように供給した。反応器において純水を400℃に加熱して超臨界状態にした。反応器の圧力および温度を維持したまま、弁を切替えて、純水の代わりに焼酎粕10質量%の水分散液を反応器に超臨界状態において触媒層平均滞留時間が0.36分になるように供給し、該水分散液を超臨界状態にした。供給した水分散液は白く濁った液であった。反応器出口から排出される超臨界水を冷却および減圧して分離器で気体と液体とに分離した。気体の生成量を測定した。得られた液体は無色透明であった。水分散液供給開始時の気体生成量は約45ml/分(25℃、1atm)であった。水分散液供給開始から12時間経過時の気体生成量は約3ml/分であった。図3に気体生成量の推移を示す。水分散液供給開始から12時間経過時に、反応器の圧力および温度を維持したまま、弁を切替えて、焼酎粕の水分散液に代えて純水を供給した。純水を供給したまま温度および圧力を下げて、水熱状態を脱した時点で、純水の供給を停めた。反応器を開いて内部の様子を観察した。焼酎粕の加熱変性物が反応器の入り口に堆積して、反応器入り口を塞いでいた。ニッケル触媒の表面は酸化されていた。
【0028】
実施例1
長さ650mm、内径8.5mm、耐圧30MPaの管型反応器の内腔に嵩密度4.1g/cm3の多孔質粒状ラネーニッケル触媒を充填し、長さ150mmの触媒層を反応器の出口側に形成させ、触媒層の入り口側を鉄網で仕切り、入り口側500mmを空洞にした。
【0029】
(始動操作)
メタノール3体積%水溶液を22.5MPaに加圧して反応器に超臨界状態において触媒層平均滞留時間が0.36分になるように供給した。反応器においてメタノール水溶液を400℃に加熱して超臨界状態にした。反応器の圧力および温度を維持したまま、弁を切替えて、メタノール水溶液に代えて焼酎粕10質量%の水分散液を反応器に超臨界状態において触媒層平均滞留時間が0.36分になるように供給し、該水分散液を超臨界状態にした。反応器出口から排出される超臨界水を冷却および減圧して分離器で気体と液体とに分離した。気体の生成量を測定した。得られた液体は無色透明であった。
【0030】
(停止操作)
水分散液供給開始から12時間経過時に、反応器の圧力および温度を維持したまま、弁を切替えて、焼酎粕の水分散液に代えてメタノール3体積%水溶液を供給した。該水溶液を供給したまま温度および圧力を下げて、水熱状態を脱した時点で、水溶液の供給を停めた。
水分散液の供給停止から10時間経過後、上記の始動操作および停止操作を繰り返し行った。
【0031】
実運転開始(1回目の水分散液供給開始)時の気体生成量は約68ml/分(25℃、1atm)、実運転12時間経過時の気体生成量は約30ml/分、実運転24時間経過時の気体生成量は約25ml/分、実運転100時間経過時の気体生成量は約10ml/分であった。図3に気体生成量の推移を示す。実運転100時間経過時に運転を停止して反応器を開いた。触媒の表面が若干酸化していたが、焼酎粕の加熱変性物はほとんど認められなかった。
【0032】
実施例2
長さ650mm、内径8.5mm、耐圧30MPaの管型反応器の内腔に嵩密度4.1g/cm3の多孔質粒状ラネーニッケル触媒を充填し、長さ150mmの触媒層を反応器の出口側に形成させ、触媒層の入り口側を鉄網で仕切った。次いで、嵩密度0.27g/cm3活性炭を充填し、長さ150mmの活性炭層を触媒層の入り口側に形成させ、活性炭層の入り口側を鉄網で仕切り、入り口側350mmを空洞にした。
実施例1で使用した管型反応器に代えて上記管型反応器を用いた以外は実施例1と同じ方法で、焼酎粕のガス化を行い、気体の生成量を測定した。得られた液体は無色透明であった。実運転開始時の気体生成量は約50ml/分(25℃、1atm)であった。実運転120時間経過時の気体生成量は約10ml/分、実運転160時間経過時の気体生成量は約8ml/分であった。図3に気体生成量の推移を示す。運転を停止して反応器を開いた。触媒の表面が若干酸化していた。焼酎粕の加熱変性物は認められなかった。触媒寿命が実施例1に比べて若干延びた。
【0033】
実施例3
長さ930mm、内径8.5mm、耐圧30MPaの管型反応器の内腔に嵩密度4.1g/cm3の多孔質粒状ラネーニッケル触媒を充填し、長さ150mmの触媒層を反応器の出口側に形成させ、触媒層の入り口側を鉄網で仕切った。次いで、嵩密度0.27g/cm3の活性炭を充填し、長さ180mmの活性炭層を触媒層の入り口側に形成され、活性炭層の入り口側を鉄網で仕切り、入り口側600mmを空洞にした。
実施例1で使用した管型反応器に代えて上記管型反応器を用い、且つ焼酎粕10質量%の水分散液に代えて焼酎粕10質量%とメタノール3体積%を含む水分散液を用いた以外は実施例1と同じ方法で、焼酎粕のガス化を行い、気体の生成量を測定した。得られた液体は無色透明であった。実運転開始時の気体生成量は約50ml/分(25℃、1atm)であった。実運転100時間経過時の気体生成量は約30ml/分、実運転180時間経過時の気体生成量は約30ml/分であった。図3に気体生成量の推移を示す。運転を停止して反応器を開いた。触媒の表面はほとんど酸化していなかった。焼酎粕の加熱変性物は認められなかった。触媒寿命が格段に長くなった。
【符号の説明】
【0034】
1:反応器
1a:空洞部
1b:活性炭充填部
1c:金属触媒充填部
2:加圧ポンプ
3:リリーフバルブ(保圧弁)
4:有機廃棄物タンク
5:気液分離器
6:処理済み液
7:分解ガス
8:低級アルコール水溶液または低級カルボン酸水溶液のタンク
9:チェンジバルブ(流路切換弁)
図1
図2
図3