(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
ここでいう「電池パック10」とは、複数の電池ユニットを有している組電池のことをいう。また、「電池ユニット」とは、少なくとも一つ以上の電池セル100を有しているものをいう。さらに、「電池ユニット」に含まれる電池セル100は、正極および負極等を有する複数の単電池を有していてもよい。また、複数の「電池ユニット」は、それぞれ異なる数量の電池セル100を有していてもよい。以下では、「電池パック10」に含まれる「電池ユニット」は、並列に接続された二つの単電池を有する電池セル100である場合を説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1を用い、第1の実施形態に係る電池パック10について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る電池パック10および電子機器60の構成を示す回路図である。この電池パック10は、複数の電池セル100と、温度測定手段(温度測定部300および温度センサー)と、電池制御手段(電池制御部400)とを備えている。複数の電池セル100は、直列に接続している。温度測定部300は、二つ以上の電池セル100の温度を測定する。電池制御部400は、温度測定部300が測定した温度に基づいて、電池セル100の充電および放電を制御する。また、電池制御部400は、電池セル100に充電を行っている場合または電池セル100が放電を行っている場合に、温度測定部300が測定した温度に基づいて、温度が最低である温度最低セルと、温度が最高である温度最高セルを特定する。また、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTを演算処理で求め、温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件を満たさないとき、充電または放電をそのまま継続させる。一方、温度差ΔTが第1条件を満たすとき、電池制御部400は、第1信号を出力する。以下、詳細を説明する。
【0016】
図1のように、電池パック10は、複数の電池セル100を備えている。ここでは、電池パック10は、たとえば、N個の電池セル100を備えている。また、上述のように電池セル100は、二つの単電池を有している。具体的には、電池セル100は、Liイオン二次電池である。また、電池セル100は、たとえば、ラミネートフィルムを外装材に用いたラミネート型電池である。第1の実施形態における電池パック10では、複数の電池セル100が、それぞれ外装体(不図示)に収納され、一列に積載された状態で電池パック10にパッケージされている。なお、電池セル100のパッケージ様態は、任意で良く、例えば複数の電池セル100をその厚さ方向に1列に積層した状態や、積層した電池セル100を複数列に隣合せに配置した状態であってもよい。このようなパッケージなどであっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0017】
第1の実施形態における各々の電池セル100は、たとえば、満充電容量が等しい。このような電池パック10において、各々の電池セル100の温度によって、電池セル100の電圧にバラつきが生じてしまった場合に、特に有効である。なお、原理的には、各々の電池セル100の満充電容量が異なる場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0018】
第1の実施形態における電池パック10は、電池セル100のほかに、制御回路20を有している。制御回路20は、電圧電流測定部200、温度測定部300、電池制御部400およびスイッチ500を備えている。
【0019】
また、制御回路20は、直列に接続された電池セル100に接続されている。制御回路20は、内部正極端子160、内部負極端子180、外部正極端子710および外部負極端子720を有している。内部正極端子160は、直列に接続された一方の電池セル100の正極端子120に接続している。また、内部負極端子180は、直列に接続された他方の電池セル100の負極端子140に接続している。
【0020】
内部正極端子160は、制御回路20内の配線(符号不図示)およびスイッチ500を介して、当該電池パック10を使用する外部機器に接続するための外部正極端子710に接続している。また、内部負極端子180も同様に、外部負極端子720に接続している。
【0021】
内部正極端子160と外部正極端子710との間には、充電または放電を停止するためのスイッチ500が設けられている。スイッチ500は、たとえば、電池セル100側の内部正極端子160と外部正極端子710との間に設けられている。この場合、スイッチ500は、たとえば、PチャネルのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。スイッチ500内には、二つのPチャネルのMOSFETが設けられている。これにより、片方のMOSFETが充電を制御するために用いられる。一方、他方のMOSFETが放電を制御するために用いられる。また、スイッチ500における各々のMOSFETは、電圧電流測定部200に接続している。
【0022】
なお、スイッチ500がNチャネルのMOSFETである場合は、スイッチ500は、内部負極端子180と外部負極端子720との間に配置される。その他、スイッチ500は、たとえば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)、リレーまたはブレーカーであってもよい。
【0023】
制御回路20には、温度測定部300が設けられている。温度測定部300は、二つ以上の電池セル100の温度を測定する。温度測定部300は、少なくとも二つ以上の温度センサー(321、322、323)を有している。温度センサーは、たとえば、熱電対である。
【0024】
温度測定部300の温度センサーは、たとえば、最も外側に配置された少なくとも一つの電池セル100と、少なくとも一つの電池セル100よりも内側に位置する電池セル100と、の温度を測定するように設けられている。電池パック10が通電されている場合、電池パック10内の電池セル100のうち、最も外側に配置された電池セル100は、外側に放熱されやすいため、温まりにくい。一方、この場合、電池パック10内の内側に配置された電池セル100は、電池セル100の内部抵抗による発熱により温まりやすい。このため、たとえば、上記したように温度センサーが配置されていることにより、最も温度差の大きい二つの電池セル100の温度を測定することができる。
【0025】
ここでは、たとえば、温度センサー321、温度センサー322および温度センサー323が、各々異なる電池セル100に接するように設けられている。そのうち、温度センサー321は、最も外側に配置された電池セル100(図中Cell1)に接して設けられている。また、温度センサー322は、電池パック10の中心付近の電池セル100(図中Cell3)に接して設けられている。また、温度センサー323は、温度センサー321と反対側の外側に配置された電池セル100(図中CellN)に接して設けられている。なお、各々の温度センサーは、たとえば、電池セル100を収容する外装体(不図示)に貼り付けられている。
【0026】
また、温度センサーは、さらに電池パック10の外側付近に設けられていてもよい。これにより、温度測定部300は、外気温度を測定することができる。
【0027】
また、温度測定部300は、上記した温度センサーで生じる熱起電力等の信号を受けて温度を算出する。温度測定部300は、電池制御部400に接続している。これにより、電池制御部400は、温度測定部300が測定した温度の信号を受信する。なお、電池制御部400が、温度センサーの信号を受けて温度を算出してもよい。
【0028】
また、
図1のように、制御回路20には、電圧電流測定部200が設けられていてもよい。電圧電流測定部200は、複数の電池セル100のそれぞれの電圧および電流を測定する。電圧電流測定部200は、配線(符号不図示)を介して、電池セル100の間に接続されている。また、電圧電流測定部200は、直列に接続された複数の電池セル100の合計電圧を測定するために、内部正極端子160および内部負極端子180の両端の電圧を測定してもよい。
【0029】
また、内部負極端子180と外部負極端子720との間には、抵抗値が既知の抵抗220が設けられている。電圧電流測定部200は、抵抗220の両端に接続している。このように、抵抗220にかかる電圧値を測定することにより、電圧電流測定部200は、上記抵抗値で割った値を電池セル100に流れる電流値として算出する。
【0030】
電池制御部400は、温度測定部300および電圧電流測定部200に接続している。電池制御部400は、温度測定部300が測定した温度、および電圧電流測定部200が測定した電圧および電流に基づいて、各々の電池セル100の充電および放電を制御する。電池制御部400は、上記した温度、電圧および電流に基づいて、演算処理を行う演算部(不図示)を有している。たとえば、電池制御部400は、温度測定部300が測定した温度に基づいて、温度センサーが設けられた電池セル100のなかから、温度が最低である温度最低セルと、温度が最高である温度最高セルを特定する。その他、電池制御部400は、計測した温度、電圧および電流、または各種設定値を保存する記憶部(不図示)を備えていても良い。記憶部とは、言い換えればメモリ領域のことである。
【0031】
ここで、「温度最高セル」「温度最低セル」とは、たとえば、温度センサーが設けられ、温度測定部300が測定している電池セル100のうち、温度が最高である電池セル100と、温度が最低である電池セル100である。したがって、当該「温度最高セル」「温度最低セル」が、必ずしも電池パック10のなかで、温度が最も高い電池セル100または温度が最も低い電池セル100である必要はない。反対に、「温度最高セル」「温度最低セル」とは、たとえば、予め温度分布を測定された予想温度マップに基づいて、電池パック10のN個の電池セル100のなかから、温度が最高である電池セル100と、温度が最低である電池セル100を特定してもよい。言い換えれば、温度センサーが設けられた電池セル100の温度分布に基づいて、温度センサーが設けられていないその他の電池セル100も含めたN個の電池セル100の中から、「温度最高セル」「温度最低セル」を特定してもよい。なお、当該予想温度マップは、電池制御部400の記憶部に保存しておく。
【0032】
また、電池制御部400は、電池制御部400からの信号を電子機器60に送信し、または電子機器60からの信号を受信するための通信部(不図示)を有している。電池制御部400は、電子機器60に信号を送受信するための通信端子730に接続している。
【0033】
ここで、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTを演算処理により求め、温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件を満たさないとき、充電または放電をそのまま継続させる。一方、温度差ΔTが第1条件を満たすとき、電池制御部400は、第1信号を出力する。電池制御部400は、たとえば、当該第1信号を、通信端子730を介して、電子機器60の負荷制御部640に送信する。なお、この制御方法については、詳細を後述する。
【0034】
また、「第1信号」は、たとえば、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差を示す電圧差信号を含んでいてもよい。これにより、当該電圧差信号を含む第1信号を受信した電子機器60の負荷制御部640は、電圧差信号に基づいて、負荷を制御することができる。
【0035】
また、「第1信号」は、たとえば、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTを示す温度差信号を含んでいてもよい。これにより、当該温度差信号を含む第1信号を受信した電子機器60の負荷制御部640は、温度差信号に基づいて、負荷を制御することができる。
【0036】
また、「第1信号」は、たとえば、温度最低セルおよび温度最高セルのうち、少なくとも一つの電池セル100の温度を示す温度信号を含んでいてもよい。これにより、当該温度信号を含む第1信号を受信した電子機器60の負荷制御部640は、温度信号に基づいて、負荷を制御することができる。
【0037】
さらに、「第1信号」は、たとえば、外気温度を示す外気温度信号を含んでいてもよい。これにより、当該温度信号を含む第1信号を受信した電子機器60の負荷制御部640は、当該外気温度信号に基づいて、後述する温度差ΔTの基準値T
1を設定し、負荷を制御することができる。
【0038】
また、電圧電流測定部200、電池制御部400およびスイッチ500は、安全性、充放電のサイクル寿命を向上させるため、保護回路として機能する。電圧電流測定部200、電池制御部400およびスイッチ500は、電池セル100に対して、過放電検出電圧値V
OD以下まで放電された場合、当該放電を強制終了させる。一方、過充電検出電圧値V
OC以上まで充電された場合、当該充電を強制終了させる。その他、電池制御部400の記憶部は、温度差ΔTの基準値T
1等を記憶している。
【0039】
このように、第1の実施形態では、複数の電池セル100および制御回路20を含み、電池パック10としてパッケージされている。
【0040】
次に、第1の実施形態の電池パック10に接続された電子機器60について、説明する。この電子機器60は、負荷600と、負荷制御手段(負荷制御部640)とを備えている。電子機器60の負荷600は、電池パック10からの放電による電力を消費する。負荷制御部640は、電池制御部400に接続して、第1信号を受信し、且つ、負荷600を制御する。また、負荷制御部640は、電池制御部400から第1信号を受信したとき、放電における電流を減少させる。以下詳細を説明する。
【0041】
図1は、電子機器60を模式的に示している。そのうち、負荷600は、電池パック10からの放電による電力を消費する。
図1において、負荷600は、電力を消費する総称として可変抵抗を示している。
【0042】
ここで、電子機器60は、たとえば、表示装置である。具体的には、電子機器60は、液晶表示装置である。したがって、電子機器60は、負荷600として、表示部、発光部、チューナー部、操作部等を備えている(以上不図示)。負荷600は、少なくとも一つ以上の発光部(不図示)を含んでいる。発光部は、たとえば、液晶表示装置のバックライトである。
【0043】
負荷600は、配線(不図示)を介して、正極端子810および負極端子820に接続している。電子機器60の正極端子810および負極端子820は、たとえば、配線(符号不図示)を介して、電池パック10の外部正極端子710および外部負極端子720に接続している。これにより、電子機器60は、電池パック10の放電による電力を受けることができる。
【0044】
負荷制御部640は、負荷600に接続している。負荷制御部640は、負荷600を制御している。これにより、負荷制御部640は、負荷600による電力消費量を制御している。具体的には、たとえば、負荷600がバックライトを含んでいる場合、負荷制御部640は、当該バックライトの輝度を制御している。
【0045】
また、負荷制御部640は、通信端子830に接続している。電子機器60側の通信端子830は、たとえば、配線(不図示)を介して、電池パック10側の通信端子730に接続している。これにより、負荷制御部640は、電池制御部400に接続して、第1信号を受信することができる。
【0046】
その他、負荷制御部640は、演算部(不図示)を備えていてもよい。演算部は、電池制御部400からの第1信号等に応じて演算処理を行い、負荷600に対して、その時点で最も適した制御を行うことができる。
【0047】
負荷制御部640は、電池制御部400から第1信号を受信したとき、電流を減少させる。負荷制御部640は、たとえば、電流を単調減少させる。このとき、たとえば、負荷600がバックライトを含んでいる場合、負荷制御部640は、発光部の輝度を落とすことにより、当該電流を減少させる。これにより、温度によって、各々の電池セル100の電圧にバラつきが生じることを抑制することができる。
【0048】
次に、
図2から
図5を用いて、上記した電池パック10の制御方法について説明する。
図2および
図3は、第1の実施形態に係る制御方法について説明するためのフローチャートである。
図4および
図5は、第1の実施形態に係る制御方法を説明するための図である。第1の実施形態に係る制御方法は、以下のステップを備えている。まず、電池セル100が放電を行っている場合に、電池制御部400は、温度測定部300が測定した温度に基づいて、温度が最低である温度最低セルと、温度が最高である温度最高セルを特定する(S120)。次いで、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件を判定する(S130)。次いで、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件を満たさないとき(S130No)、放電をそのまま継続させる。一方、温度差ΔTが第1条件を満たすとき(S130Yes)、電池制御部400は、第1信号を出力する(S140)。以下、詳細を説明する。
【0049】
ここで、各々の電池セル100は、満充電まで充電されている状態とする。すなわち、初期段階における各々の電池セル100の放電における電圧は、たとえば、V
Cである。また、各々の電池セル100の残容量は、満充電容量である。
【0050】
まず、
図2のフローチャートにおいて、複数の電池セル100からの放電を開始する。具体的には、電子機器60の正極端子810および負極端子820を電池パック10の外部正極端子710および外部負極端子720にそれぞれ接続する。これと同時に、温度測定部300は、温度センサーが設けられた電池セル100の温度を測定し始める。また、電圧電流測定部200は、直列に接続された複数の電池セル100の電圧および電流を測定し始める(S110)。
【0051】
ここで、この電池パック10の放電による電力は、電子機器60の負荷600によって消費される。また、負荷600は、負荷制御部640が制御することにより、仮に、定電流で動作しているものとする。なお、ここでは、スイッチ500には、内部抵抗は、無視できるほど小さいものとして考える。
【0052】
また、電池セル100が通電しているとき、電池セル100の内部抵抗などにより、ジュール熱が放出される。当該ジュール熱により、原則として、各々の電池セル100の温度は上昇していく。ただし、電池セル100の位置、外気温などの電子機器60の使用環境、電池セル100自身の比熱、電池パック10のパッケージ態様、外部への放熱、または電子機器60の放電電流などの要因により、各々の電池セル100の温度は均等に上昇していくとは限らない。
【0053】
次いで、電池制御部400は、温度測定部300が測定した温度に基づいて、温度が最低である温度最低セルと、温度が最高である温度最高セルを特定する(S120)。ここでは、たとえば、放電の初期段階では、最も外側に配置された電池セル100(
図1におけるCell1)が、熱が逃げやすいため、温度最低セルとなる。一方、電池パック10の中心付近の電池セル100(
図1におけるCell3)が、熱が逃げにくいため、温度最高セルとなる。
【0054】
図4(a)は、第1の実施形態における放電開始時刻からの時間と、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTとの関係を示している。
【0055】
図4(a)のように、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、時刻t
1未満の放電の初期段階のとき、単調に増加していく。なお、初期段階において、温度の差が小さく、温度最高セルと温度最低セルを特定し難い場合は、随時、温度最高セルと温度最低セルを更新していけばよい。
【0056】
また、
図4(b)は、第1の実施形態における放電開始時刻からの時間と、温度最低セルの電圧V
aおよび温度最高セルの電圧V
bとの関係を示している。また、第1の実施形態における放電開始時刻からの時間と、温度最高セルの電圧V
bおよび温度最低セルの電圧V
aとの電圧差ΔVとの関係を示している。なお、温度最低セルを太実線で、温度最高セルを細実線で示している。また、
図4(c)は、第1の実施形態における放電開始時刻からの時間と電池セル100の電流との関係を示している。
【0057】
図4(c)において、負荷600は、負荷制御部640によって、定電流で動作しているとする。このため、時刻t
1までの放電は、定電流放電である。また、温度最低セルおよび温度最高セルを含め、全ての電池セル100は、直列に接続されている。したがって、全ての電池セル100の電流は、定電流値I
D1で一定である。なお、ここでは説明の簡略化のために定電流を仮定しただけであり、電流が変化している場合であっても、第1の実施形態の効果を得ることができる。
【0058】
ここで、
図5(a)は、電池セル100における温度と、電池セル100の内部抵抗との関係を示している。電池セル100における温度が低いほど、電池セル100の内部抵抗は大きくなる。特に、低温ほど顕著に内部抵抗が上昇する傾向にある。このため、温度最低セルの内部抵抗の方が、温度最高セルの内部抵抗よりも大きい。したがって、同じ電流が流れている場合であっても、当該内部抵抗の違いによって、電圧降下の大きさが異なる。このため、各々の電池セル100における電圧がバラついてしまう。
【0059】
図4(b)のように、時刻t
1未満のとき、内部抵抗の差によって、温度最低セルの電圧V
aは、温度最高セルの電圧V
bよりも速く降下する。その差分(V
b−V
a)は、内部抵抗の差に、I
D1をかけたものに等しい。
【0060】
次いで、電池制御部400は、「温度差ΔTの基準値T
1」を設定する(S125)。ここでいう「温度差ΔTの基準値T
1」とは、後述するように、電池制御部400が第1信号を出力するための温度差ΔTの閾値である。言い換えれば、「温度差ΔTの基準値T
1」は、温度による電池セル100の電圧のバラつきを抑制するための制御を開始するための閾値である。なお、「温度差ΔTの基準値T
1」は、予め定められたものであってもよい。その場合、当該ステップは省略することができる。
【0061】
ここで、
図5(a)のように、電池セル100の内部抵抗は、低温ほど急峻に高くなる傾向にある。このため、温度最低セルの電圧降下は、他の電池セル100の電圧降下よりも速くなる。したがって、電池セル100の温度が低いほど、電池セル100間の僅かな温度差で、各々の電池セル100間の電圧の差が急峻に大きくなる傾向にある。
【0062】
そこで、電池制御部400は、第1条件における「温度差ΔTの基準値T
1」を、電池セル100の温度に基づいて変化させる。「温度差ΔTの基準値T
1」は、たとえば、温度最低セルまたは温度最高セルの温度が低いほど急峻に小さい値とする。
【0063】
つまり、たとえば、電池制御部400は、電池セル100の温度Tに対する「温度差ΔTの基準値T
1」を
図5(b)のように変化させればよい。なお、
図5(b)は、電池セル100における温度と、「温度差ΔTの基準値T
1」との関係を示している。電池セル100の温度が低い場合、「温度差ΔTの基準値T
1」を低くしておくことにより、電池セル100間の僅かな温度差でも、各々の電池セル100間の電圧のバラつきに合わせて、電池制御部400は、各々の電池セル100間の電圧差を縮小するための制御を行うことができる。ここでは、たとえば、温度最低セルの温度に基づいて、
図5(b)から「温度差ΔTの基準値T
1」を設定する。なお、温度差ΔTの基準値T
1を予め定めておき、記憶部に保存しておいてもよい。
【0064】
なお、電池セル100の温度に対する「温度差ΔTの基準値T
1」は、テーブル形式、または関数として、電池制御部400の記憶部に記憶されている。
【0065】
また、電池制御部400は、当該テーブルや関数を、電子機器60が使用される環境などに応じて変化させてもよい。
【0066】
次いで、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件を判定する(S130)。
【0067】
温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件を満たさないとき(S130No)、電池制御部400は放電をそのまま継続させる。
【0068】
一方、温度差ΔTが第1条件を満たすとき(S130Yes)、電池制御部400は、第1信号を出力する(S140)。この第1信号は、電池パック10の通信端子730および電子機器60の通信端子830を介して、電子機器60の負荷制御部640に送信される。
【0069】
ここでいう「第1信号」とは、電池制御部400が、負荷600側の電流を減少させるために出力する信号のことをいう。「第1信号」は、接続される電子機器60に応じて変化させることができる。具体的には、「第1信号」は、たとえば、負荷600のONまたはOFFを切り替える1ビット信号であってもよい。また、「第1信号」は、たとえば、パルス信号であってもよい。このとき、「第1信号」の変調方式は、たとえば、パルス幅変調方式(PWM:Pulse Width Modulation)やパルス振幅変調方式(PAM:Pulse Amplitude Modulation)であってもよい。
【0070】
また、「第1信号」は、たとえば、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVを示す電圧差信号を含んでいてもよい。これにより、負荷制御部640は、当該電圧差信号を含む第1信号を受信したとき、電圧差信号に基づいて、電流を減少させる。負荷制御部640が電流を減少させることにより、全ての電池セル100において、内部抵抗による電圧降下を小さくすることができる。したがって、通電時の各々の電池セル100間の電圧差を小さくすることができる。
【0071】
また、「第1信号」は、たとえば、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTを示す温度差信号を含んでいてもよい。負荷制御部640は、当該温度差信号を含む第1信号を受信したとき、温度差が大きいほど、電流が大きく減少するように制御する。上述のように、温度差ΔTが大きいほど、各々の電池セル100間の内部抵抗の差が大きくなる。このため、負荷制御部640が電流を減少させることにより、全ての電池セル100において、内部抵抗による電圧降下を小さくすることができる。したがって、通電時の各々の電池セル100間の電圧差を小さくすることができる。
【0072】
また、「第1信号」は、たとえば、温度最低セルおよび温度最高セルのうち、少なくとも一つの電池セル100の温度を示す温度信号を含んでいてもよい。負荷制御部640は、当該温度信号を含む第1信号を受信したとき、当該温度が低いほど電流が減少するように制御する。上述のように、電池セル100の温度が低いほど、各々の電池セル100間の内部抵抗の差が大きくなる傾向にある。このため、負荷制御部640が電流を減少させることにより、各々の電池セル100間の内部抵抗の差が大きい場合であっても、全ての電池セル100において、内部抵抗による電圧降下を小さくすることができる。したがって、通電時の各々の電池セル100間の電圧差を小さくすることができる。
【0073】
さらに、「第1信号」は、たとえば、外気温度を示す外気温度信号を含んでいてもよい。負荷制御部640は、当該外気温度信号を含む第1信号を受信したとき、当該外気温度が低いほど電流が減少するように制御する。外気温度が低い場合、たとえば、最も外側に配置された温度最低セルの温度は、より低くなっていく可能性がある。そのため、負荷制御部640が電流を減少させることにより、外気温度に影響されて、通電時の電池セル100の電圧にバラつきが生じることを抑制することができる。
【0074】
上記に加えて、「第1信号」は、たとえば、現在の温度最低セル等の電圧値に対応する信号であってもよい。また、「第1信号」は、現在の電池パック10の電流値に対応する信号を含んでいてもよい。
【0075】
ここで、
図4(a)、
図4(b)および
図4(c)において、第1条件を満たすとき(S130Yes)とは、時刻t
1のときである。
図4(a)のように、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、基準値T
1となっている。したがって、当該温度差ΔTは、第1条件を満たしている状態である。
【0076】
また、
図4(b)のように、時刻t
1のとき、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差がV
g0まで大きくなっている。
【0077】
ここで、電池制御部400および負荷制御部640は、以下のようにして温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVに基づく制御を行う(S400)。
【0078】
図3は、電圧差ΔVに基づく制御の詳細を示したフローチャートである。負荷制御部640は、時刻t
1において、電池制御部400から第1信号を受信したとき、電流を減少させる(S410)。これにより、負荷制御部640は、通電時の各々の電池セル100間の電圧差を小さくすることができる。なお、このとき、負荷制御部640は、電流を少なくとも負荷600が駆動可能な電流値以上に制御する。
【0079】
第1の実施形態では、負荷600は、発光手段(バックライトなどの発光部)を含んでいる。この場合、負荷制御部640は、発光部の輝度を落とすことにより、当該電流を減少させる。
【0080】
図4(c)のように、時刻t
1以降、負荷制御部640は、定電流値I
Dから、たとえば、線形に電流を減少させていく。具体的には、負荷制御部640は、発光部に流れる電流を減少させていき、輝度を落としていく。
【0081】
また、
図4(a)のように、時刻t
1以降、下記の二つの理由により、温度差ΔTの上昇が緩やかになっていき、次いで温度差ΔTは減少していく。一つ目の理由は、負荷制御部640が第1信号を受信したとき電流を減少させることにより、電池パック10全体の発熱が抑制されるからである。二つ目の理由は、電池セル100の配置によって、温度最低セルのジュール熱が温度最高セルのジュール熱よりも大きくなるからである。第1の実施形態では、たとえば、温度最高セルは電池パック10の内側に配置されている電池セル100であり、一方で温度最低セルは電池パック10の外側に配置されている電池セル100である。このため、電池パック10が通電されているとき、温度最低セルの内部抵抗は、温度最高セルの内部抵抗よりも高い。すなわち、温度最低セルの内部抵抗による発熱量は、温度最高セルよりも大きくなっていく。したがって、温度最低セルの温度上昇は、温度最高セルよりも速くなっていく。このようにして、時刻t
1以降、温度差ΔTの上昇は緩やかになっていき、次いで温度差ΔTは減少していく。
【0082】
また、
図4(b)のように、時刻t
1まで、温度最低セルの電圧V
aは、温度最高セルの電圧V
bよりも大きく降下していた。時刻t
1以降、負荷制御部640が電流を減少させることにより、内部抵抗による電圧降下成分が小さくなっている。第1の実施形態では、時刻t
1以降、たとえば、各々の電池セル100の電圧は上記した内部抵抗による電圧降下成分が減少した分だけ上昇する。さらに、温度最低セルの電圧V
aは、温度最高セルの電圧V
bに近づいていく。
【0083】
次いで、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVが第1基準電圧値V
g1以下であるかを判定する(S420)。第1基準電圧値V
g1は、第1信号を出力した直後の温度最高セルと温度最低セルとの電位差V
g0より小さい電圧値と定めることができる。第1の実施形態では、V
g1はV
g0の2/3の値と定めている。
【0084】
時刻t
1以降、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVが第1基準電圧値V
g1より高いとき(S420No)、負荷制御部640は、電流を減少させる制御を継続させる(S410)。
【0085】
図4(a)のように、時刻t
1以降、温度差ΔTの上昇は緩やかになっており、時刻t
2において、温度差ΔTは最大値T
Mとなる。さらに、時刻t
2以降、放電における電流の減少に伴って、温度差ΔTは、緩やかに降下していく。
【0086】
図4(b)のように、さらに負荷制御部640は電流を減少させる制御を行うことにより、時刻t
2のとき、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVが第1基準電圧値V
g1以下となる。
【0087】
時刻t
2のときのように、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVが第1基準電圧値V
g1以下であるとき(S420Yes)、電池制御部400は第1信号を停止する(S430)。
【0088】
それに伴って、負荷制御部640は、電流を急峻に減少させる制御を停止する。なお、「第1信号」が出力される期間は、上述したように、温度最高セルと温度最低セルとの電位差に基づいて決められることが望ましいが、状況に応じて変化させても良い。「第1信号」が出力される期間は、たとえば、上記第1条件を満たしている間の継続した期間であってもよい。また、当該期間は、たとえば、上記第1条件となってから一定時間としてもよい。さらに、当該期間は、温度差ΔTの時間変化率に基づき定めるとしても良い。つまり、電池制御部が温度差ΔTの時間変化率を演算処理で求めておき、該時間変化率が「第1信号」出力直後の時間変化率より小さくなるまでの期間(例えば、時間変化率が1/2や0になるまでの期間)に「第1信号」を出力するとしても良い。
【0089】
さらに、負荷制御部640は、第1信号が停止したとき、たとえば、現在の電流値(I
D2)以下となるように制御する(S440)。ここでは、負荷制御部640は、第1信号が停止したとき、たとえば、現在の電流値(I
D2)で一定となるように制御する。これにより、負荷制御部640は、温度差ΔTが減少するまで、または温度差ΔTが平衡状態となるまで、電圧差ΔVを大きくすることなく、待機することができる。
【0090】
図4(c)のように、時刻t
2以降、たとえば、負荷制御部640は、電流を、一定の電流値I
D2として一定となるように制御する。
【0091】
図4(a)のように、時刻t
2以降、温度差ΔTは緩やかに上昇し、時刻t
3のとき、温度差ΔTは最大値T
Mとなる。時刻t
3以降、温度差ΔTは徐々に減少していく。
【0092】
図4(b)のように、時刻t
3以降、残容量の減少に伴って、温度最低セルおよび温度最高セルの電圧は降下していく。また、上記した温度差ΔTの減少に伴って、温度最高セルと温度最低セルとの内部抵抗は近くなっていく。これにより、時刻t
2以降も、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVはさらに減少していく。
【0093】
次いで、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVが第1基準電圧値V
g1よりも低い第2基準電圧値V
g2以下であるかを判定する(S450)。第1の実施形態での「第2基準電圧値V
g2」は、第1基準電圧値V
g1の1/2としている。ただし、「第2基準電圧値V
g2」が第1基準電圧値V
g1よりも低ければ、他の値であっても同様の効果を得ることができる。たとえば、「第2基準電圧値V
g2」は、0や、電圧電流測定部200での電圧分解能に相当する電圧値、などとすることができる。電圧差ΔVが第2基準電圧値V
g2より大きいとき(S450No)、負荷制御部640はS440の制御を継続する。
【0094】
時刻t
4のとき、温度差ΔVは、第1基準電圧値V
g1よりも低い第2基準電圧値V
g2まで減少している。電池制御部400は、温度差ΔVが第2基準電圧値V
g2以下であるとき(S450Yes)、第1信号と異なる第2信号を出力する(S460)。ここでいう「第2信号」とは、電池制御部400が負荷600側の電流制御を解除するために出力する信号のことをいう。負荷制御部640は、第2信号を受信したとき、電流を増加させることを可能とする。言い換えれば、負荷制御部640は、第2信号を受信したとき、電流が一定値以下となるような制御(S440)を解除することができる。このように、電圧差ΔVがたとえば第2基準電圧値V
g2以下となることにより、負荷制御部640は、温度分布が平衡状態となったと判断して、電流を増加させることができる。なお、負荷制御部640が第1信号と異なる信号であると認識できれば、第2信号の変調方式は同一であってもよい。また、第2信号は、第1信号と同様に、電圧差信号等を含んでいてもよい。
【0095】
次いで、電池パック10の放電を継続させるかについて判定する(S180)。このとき、各々の電池セル100の電圧が過放電検出電圧V
OD以上であるかを判定し、V
OD以上であるとき放電を継続させるとしてもよい。放電を継続させる場合は(S180Yes)、電池制御部400は、再度、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTに基づいて、電池パック10を制御していく。負荷600の使用環境が変化するなどして、温度差ΔTが大きくなる場合は、上記した同様の制御を行う。
【0096】
一方、電池パック10の放電を継続させない場合は(S180No)、電子機器60の使用を終了させ、電池パック10の放電を終了させる(S190)。
【0097】
このように、電池制御部400および負荷制御部640は、電池セル100の電圧差が減少するように制御することができる。すなわち、電池セル100の電圧バラつきを抑制することができる。また、全ての電池セル100が残容量を残したまま、温度最低セルが過放電となることを抑制することができる。以上のようにして、第1の実施形態に係る電池パック10を制御する。
【0098】
次に、
図6を比較例として用い、第1の実施形態の効果について説明する。
図6は、第1の実施形態の効果について説明するための比較例の図である。
【0099】
図6は、第1の実施形態とは異なり、電池制御部400は、電池セル100の温度に基づいて制御を行わない比較例の場合を示している。なお、第1の実施形態と同様に、各々の電池セル100の満充電容量が等しい状態から放電を開始したとする。
【0100】
図6(a)は、比較例における放電開始時刻からの時間と、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTとの関係を示している。
図6(b)は、比較例における放電開始時刻からの時間と、温度最低セルの電圧V
aおよび温度最高セルの電圧V
bとの関係を示している。また、比較例における放電開始時刻からの時間と、温度最高セルの電圧V
bおよび温度最低セルの電圧V
aとの電圧差ΔVとの関係を示している。なお、図中の点線は、第1の実施形態の電圧差ΔVを示している。また、
図6(c)は、比較例における放電開始時刻からの時間と電池セル100の電流との関係を示している。なお、
図6の横軸の間隔は、
図4の横軸の間隔と同一であるとする。
【0101】
図6(c)のように、負荷600は、負荷制御部640によって、定電流で動作している。すなわち、電流は、常に定電流値I
D1で一定であるとする。
【0102】
図6(a)のように、比較例においても、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、時刻t
1未満の放電の初期段階のとき、単調に増加していく。
【0103】
図6(a)において、時刻t
1のとき、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、基準値T
1となっている。時刻t
1以降において、温度差ΔTはさらに上昇する。上述のように、当該温度差ΔTによって、温度最高セルと温度最低セルとの抵抗差が生じる。また、温度最低セルの内部抵抗による発熱量は、温度最高セルよりも大きくなっていく。このため、時間経過とともに、温度差ΔTの上昇は緩やかになっていく。比較例の温度差ΔTは、時刻t
2よりも遅い時刻t
5のとき、第1の実施形態の最大値T
Mより大きい最大値T
M2となる。時刻t
5以降では、温度差ΔTは減少していく。
【0104】
図6(b)のように、放電開始から、温度差ΔTの上昇に伴って、温度最高セルと温度最低セルとの内部抵抗の差は大きくなっていく。このため、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVは、大きくなっていく。さらに、時刻t
1から時刻t
5の間、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVはさらに大きくなっていく。比較例の電圧差ΔVは、時刻t
5のとき、第1の実施形態における最大値V
g0よりも大きい最大値V
g4となる。
【0105】
さらに放電を継続させると、時刻t
6のとき、温度最低セルの電圧V
aは、過放電検出電圧値V
OD以下となる。このとき、電池パック10は放電を強制終了させる。
【0106】
このように、比較例では、各々の電池セル100の満充電容量が等しい場合であっても、温度差ΔTに起因した内部抵抗差により、各々の電池セル100の電圧がバラつく。また、比較例では、上記した温度差ΔTが第1の実施形態の最大値T
Mより大きい最大値T
M2となる。このため、温度差ΔTに依存して、各々の電池セル100の電圧は大きくバラつく可能性がある。また、比較例では、放電を継続させた場合、全ての電池セル100が残容量を残したまま、温度最低セルは過放電となる可能性がある。リチウムイオン二次電池である電池セル100が過放電状態になると、正極材料が溶出したり、負極の集電体が溶出したりといった現象が生じ、二次電池として機能しなくなってしまう。特に、電池パック10が低温環境下にあり、且つ、放電時の電流が大きい場合に、温度最低セルが過放電となってしまう可能性が高い。
【0107】
このように、比較例においては、電池セル100間の温度差によって、電池パック10を安定して放電させることができない可能性がある。
【0108】
一方、第1の実施形態によれば、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件をみたすとき、第1信号を出力する。電子機器60は、第1信号を受信したとき、放電における電流を減少させる制御を行うことができる。第1の実施形態において、上記制御を行うことにより、下記のような効果を得ることができる。
【0109】
第1の実施形態によれば、負荷制御部640が放電における電流を減少させることにより、各々の電池セル100の内部抵抗による電圧降下成分を小さくすることができる。これにより、各々の電池セル100間の電圧差を小さくすることができる。
【0110】
また、第1の実施形態によれば、温度最低セルが過放電になることを抑制することができる。上記比較例のように、温度差ΔTを起因として電圧差ΔVが生じた場合、放電をそのまま継続させると、温度最低セルだけが過放電となってしまう。この場合、全ての電池セル100は、残容量を残したまま、放電することができなくなる可能性がある。一方、第1の実施形態によれば、電池制御部400は、第1信号を出力することにより、温度差ΔTが大きくなっていることを電子機器60に伝達することができる。これにより、温度最低セルが過放電となることを未然に抑制し、電池パック10の放電を長く持続させることができる。
【0111】
また、第1の実施形態によれば、特に電池パック10が低温環境下にある場合に、各々の電池セル100の内部抵抗の差が大きくなることを抑制することができる。
図4で示したように、電池セル100の内部抵抗は、低温ほど急峻に大きくなる傾向にある。そのため、電池セル100間に僅かな温度差が生じた場合であっても、大きな電圧差となってしまう可能性がある。このような場合に、当該制御を行うことにより、適切に電圧バラつきを抑制することができる。
【0112】
以上のように、第1の実施形態によれば、電池パック10を安定的に放電させることができる。
【0113】
以上、第1の実施形態では、電子機器60が液晶表示装置である場合を説明したが、有機EL素子などの発光部を画素として複数備えた表示装置であってもよい。この場合、負荷制御部640が第1信号を受信したとき、たとえば、全ての発光部に流れる電流を減少させることができる。
【0114】
また、第1の実施形態では、負荷制御部640は、「第1信号」に基づいて負荷600側の電流を減少させるとしたが、電圧差ΔVに基づいて電流を制御してもよい。この場合、電池制御部400および負荷制御部640は、さらに以下のような制御をすることができる。
【0115】
第1信号は、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVを示す電圧差信号を含んでいる。負荷制御部640は、第1基準電圧値V
g1を保存する記憶部(不図示)と、電圧差信号と第1基準電圧値V
g1とを比較する演算部(不図示)とを備えている。
【0116】
負荷制御部640は、第1信号を受信したとき、電圧差信号に基づいて、電圧差ΔVが第1基準電圧値V
g1以下となるまで電流を減少させる。また、負荷制御部640は、電圧差ΔVが大きいほど、電流が大きく減少するように制御してもよい。一方、電池制御部400は、第1信号を出力した後、電圧差ΔVが第1基準電圧値V
g1以下になったとき、第1信号の出力を停止する。
【0117】
このように、負荷制御部640は、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVを電池パック10内の各々の電池セル100間の電圧バラつきの指標として用い、電流を減少させる制御を行うことができる。すなわち、温度差ΔTだけでなく、実際に生じている電圧差ΔVの大きさに応じて、電池セル100間の電圧バラつきを抑制することができる。これにより、温度最低セルだけが突出して電圧降下が大きくなることを抑制することができる。したがって、全ての電池セル100が残容量を残したまま、温度最低セルが過放電となって放電が終了してしまうことを防止することができる。
【0118】
(第2の実施形態)
図7および
図8を用い、第2の実施形態について説明する。
図7は、第2の実施形態に係る制御方法を示すフローチャートである。また、
図8は、第2の実施形態に係る制御方法を説明するための図である。第2の実施形態は、電圧差に基づく制御を行わない点を除いて、第1の実施形態と同様である。以下、詳細を説明する。なお、
図8の横軸は、
図3に対して独立であるとする。
【0119】
第1の実施形態では、電池制御部400が第1信号を送信した後、電池制御部400および負荷制御部640は、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVに基づいて制御を行う場合について説明した。しかし、第2の実施形態として以下で説明するように、電池制御部400は温度差ΔTのみに基づいて制御を行うことも可能である。
【0120】
また、第2の実施形態では、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが経時的に大きくなっていく場合について説明する。具体的には、電池パック10が多くの電池セル100を備えており、低温環境下で使用されている場合である。すなわち、電池パック10内の内側の電池セル100は発熱すると熱が逃げにくく、一方、電池パック10の外側の電池セル100は外部に放熱しやすい状況である。
【0121】
まず、
図7のフローチャートにおいて、複数の電池セル100からの放電を開始する。これと同時に、温度測定部300による温度測定と、電圧電流測定部200による電圧および電流測定とを開始する(S110)。
【0122】
次いで、電池制御部400は、温度測定部300が測定した温度に基づいて、温度が最低である温度最低セルと、温度が最高である温度最高セルを特定する(S120)。具体的には、たとえば、最も外側に配置された電池セル100(
図1におけるCell1)が温度最低セルとなる。一方、電池パック10の中心付近の電池セル100(
図1におけるCell3)が温度最高セルとなる。
【0123】
ここで、電池セル100の内部抵抗などにより、ジュール熱が放出される。当該ジュール熱により、各々の電池セル100の温度は上昇していく。
【0124】
図8(a)は、第1の実施形態における放電開始時刻からの時間と、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTとの関係を示している。ここでは、たとえば、温度最高セルの温度上昇は速い。一方、温度最低セルの温度上昇は遅い。温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、たとえば、放電開始と同時に、単調に増加していく。
【0125】
図8(c)において、負荷600は、負荷制御部640によって、定電流で動作しているとする。このため、時刻t
1までの放電は、定電流放電である。したがって、全ての電池セル100の電流は、定電流値I
D1で一定である。
【0126】
また、上述のように、温度最高セルの温度上昇は速く、温度最低セルの温度上昇は遅いと仮定する。このため、温度最高セルと温度最低セルとの内部抵抗の差は、経時的にも大きくなっていく。
【0127】
図8(b)のように、内部抵抗の差によって、温度最低セルの電圧V
aは、温度最高セルの電圧V
bよりも速く降下する。また、上記した経時的な内部抵抗の変化によって、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVは大きくなっていく。
【0128】
次いで、電池制御部400は、「温度差ΔTの基準値T
1」を設定する(S125)。ここでは、たとえば、第1の実施形態と同様にして、温度最低セルの温度に基づいて、「温度差ΔTの基準値T
1」を設定する。
【0129】
次いで、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件を判定する(S130)。
【0130】
電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件を満たさないとき(S130No)、放電をそのまま継続させる。
【0131】
一方、温度差ΔTが第1条件を満たすとき(S130Yes)、電池制御部400は、第1信号を出力する(S140)。
【0132】
ここで、
図8(a)、
図8(b)および
図8(c)において、第1条件を満たすとき(S130Yes)とは、時刻t
1のときである。
図8(a)のように、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、基準値T
1となっている。したがって、当該温度差ΔTは、第1条件を満たしている状態である。
【0133】
また、
図3(b)のように、時刻t
1のとき、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVがV
g6まで大きくなっている。
【0134】
ここで、電池制御部400および負荷制御部640は、以下のようにして温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTのみに基づく制御を行う。
【0135】
負荷制御部640は、時刻t
1において、電池制御部400から第1信号を受信したとき、電流を減少させる(S510)。
【0136】
図8(c)のように、時刻t
1以降、負荷制御部640は、たとえば、定電流値I
D1から線形に電流を減少させていく。なお、負荷制御部640による電流減少量は、任意であっても同様の効果を得ることができる。
【0137】
また、
図8(a)のように、時刻t
1直後では、温度最高セルは、放電による発熱によって温度が高い状態を維持している。そのため、S510において負荷制御部640が電流を減少させてから、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、すぐには下がらない。一方で、負荷制御部640によって電流は減少しているため、時刻t
1以降、温度差ΔTの上昇は緩やかになっていく。
【0138】
また、
図8(b)のように、時刻t
1まで、温度最低セルの電圧V
aは、温度最高セルの電圧V
bよりも大きく降下していた。時刻t
1以降、負荷制御部640が電流を減少させたことにより、内部抵抗による電圧降下成分が小さくなっている。すなわち、時刻t
1以降、温度最低セルの電圧V
aは、温度最高セルの電圧V
bに近づいていく。
【0139】
次いで、電池制御部400は、第1信号を出力した後、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件を再度判定する(S520)。
【0140】
時刻t
1以降、温度差ΔTが第1条件を満たすとき(S520Yes)、負荷制御部640は、電流をさらに減少させる制御を継続させる(S510)。
【0141】
図8(a)のように、時刻t
1以降、負荷制御部640が第1信号を受信したとき電流を減少させることにより、電池パック10全体の発熱が抑制される。これにより、温度差ΔTの上昇を緩やかにすることができる。時刻t
2において、温度差ΔTは最大値T
M3となる。さらに、時刻t
2以降、放電における電流がさらに減少することに伴って、温度差ΔTは、緩やかに降下していく。
【0142】
図8(c)のように、時刻t
2以降も、負荷制御部640は、電流を減少させる制御を継続させる。
【0143】
図8(b)のように、時刻t
2以降も、温度最低セルの電圧V
aは、徐々に温度最高セルの電圧V
bに近づいていく。
【0144】
図8(a)のように、さらに負荷制御部640は電流を減少させる制御を行うことにより、時刻t
3のとき、温度差ΔTが基準値T
1未満となる。すなわち、温度差ΔTが第1条件を満たさなくなる。
【0145】
時刻t
3のときのように、電池制御部400は、第1信号を出力した後、温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件を満たさなくなったとき(S520No)、第1信号を停止する(S530)。それに伴って、負荷制御部640は、負荷600を制御することにより、電流を減少させる制御を停止する。
【0146】
図8(c)のように、時刻t
3以降、たとえば、負荷制御部640は、電流を、一定の電流値I
D3として一定となるように制御する。
【0147】
図8(b)のように、時刻t
3以降、温度最低セルおよび温度最高セルの電圧は、残容量の減少に伴って、降下していく。これにより、時刻t
3以降も、電圧差ΔVが大きくなることを抑制することができる。
【0148】
次いで、電池パック10の放電を継続させるかについて判定する(S180)。放電を継続させる場合は(S180Yes)、電池制御部400は、再度、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTに基づいて、電池パック10を制御していく。
【0149】
一方、電池パック10の放電を継続させない場合は(S180No)、電子機器60の使用を終了させ、電池パック10の放電を終了させる(S190)。
【0150】
以上のようにして、第2の実施形態に係る電池パック10を制御する。
【0151】
次に、
図9を比較例として用い、第2の実施形態の効果について説明する。
図9は、第2の実施形態の効果について説明するための比較例の図である。
【0152】
図9は、第2の実施形態とは異なり、電池制御部400は、電池セル100の温度に基づいて制御を行わない比較例の場合を示している。なお、第2の実施形態と同様に、各々の電池セル100の満充電容量が等しい状態から放電を開始したとする。
【0153】
図9(a)は、比較例における放電開始時刻からの時間と、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTとの関係を示している。
図9(b)は、比較例における放電開始時刻からの時間と、温度最低セルの電圧V
aおよび温度最高セルの電圧V
bとの関係を示している。また、比較例における放電開始時刻からの時間と、温度最高セルの電圧V
bおよび温度最低セルの電圧V
aとの電圧差ΔVとの関係を示している。また、
図9(c)は、比較例における放電開始時刻からの時間と電池セル100の電流との関係を示している。なお、
図9の横軸の間隔は、
図8の横軸の間隔と同一であるとする。
【0154】
図9(c)のように、負荷600は、負荷制御部640によって、定電流で動作している。すなわち、電流は、常に定電流値I
Dで一定であるとする。
【0155】
図9(a)のように、比較例においても、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、放電開始と同時に、単調に増加していくと仮定する。
【0156】
図9(a)において、時刻t
1のとき、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、基準値T
1となっている。また、上述のように、温度最高セルの温度上昇は速く、温度最低セルの温度上昇は遅い。このため、時刻t
1以降においても、温度差ΔTはさらに上昇し続ける。比較例の温度差ΔTは、第2の実施形態における最大値T
M3をさらに超えていく。
【0157】
図9(b)のように、放電開始から、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVは、大きくなっていく。さらに、時刻t
1以降も、温度最高セルと温度最低セルとの内部抵抗の差は大きくなっていく。このため、経時的にも、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVは大きくなっていく。
【0158】
さらに放電を継続させると、
図9(b)において、時刻t
4のとき、温度最低セルの電圧V
aは、過放電検出電圧値V
OD以下となる。すなわち、温度最低セルは、過放電となってしまう。このとき、電圧差ΔVは、第2の実施形態の最大値V
g5よりも大きい最大値V
g7まで拡大している。
【0159】
このように、電池パック10の使用環境によっては温度差ΔTが経時的に大きくなっていく可能性もある。このため、比較例では、各々の電池セル100の満充電容量が等しい場合であっても、各々の電池セル100間の電圧差は経時的に大きくなっていく可能性がある。したがって、比較例では、放電を継続させた場合、全ての電池セル100が残容量を残したまま、温度最低セルは過放電となる可能性がある。
【0160】
一方、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに第2の実施形態によれば、電池制御部400および負荷制御部640は温度差ΔTのみに基づいて制御を行うことができる。第2の実施形態は、たとえば温度差ΔTが経時的に大きくなっていく場合などに特に有効である。また、第2の実施形態は、電池セル100のうち、初期の満充電容量の差がある場合にも適用することができる。
【0161】
さらに第2の実施形態によれば、負荷制御部640が放電における電流を減少させることにより、各々の電池セル100間の温度差ΔTを減少させることができる。すなわち、温度差ΔTを原因として、各々の電池セル100間の内部抵抗の差が大きくなることを抑制することができる。
【0162】
(第3の実施形態)
図10は、第3の実施形態に係る電子機器60の構成を示す模式図である。第3の実施形態は、負荷600が複数ある点を除いて、第1の実施形態と同様である。以下、詳細を説明する。
【0163】
ここで、
図10のように、第3の実施形態に係る電子機器60は、たとえば、電波の送受信により通話またはパケット通信を行う携帯通信端末である。
【0164】
この電子機器60は、たとえば、音声出力手段(音声出力部601)、発光手段(発光部)を含む表示部602、操作手段(操作部603)、音声入力手段(音声入力部604)、通信手段(通信部605)、演算処理手段(プロセッサ部606)、記憶手段(記憶部607)および負荷制御手段(負荷制御部640)を備えている。演算処理手段(プロセッサ部606)とは、電子機器60の演算処理を行うものである。
【0165】
音声出力部601は、通話の音声を出力するスピーカーである。また、音声入力部604は、通話の音声を入力するマイクロフォンである。また、発光部を含む表示部602は、電話番号やメール等の文字、画像を表示する液晶表示装置である。また、プロセッサ部606は、通話による音声信号やパケット通信によるデータなどの信号を演算処理する。記憶部607は、電話番号やメールなどのデータを保存している。通信部605は、音声信号やパケットなどの信号を電波で送受信する。このように、第3の実施形態の電子機器60は、負荷600を複数有している。
【0166】
負荷制御部640は、図示されていない領域において、第1の実施形態と同様の電池パック10に接続している。また、負荷制御部640は、上記した各々の負荷600に接続している。これにより、負荷制御部640は、各々の負荷600の電力消費量を制御することができる。
【0167】
なお、各々の負荷600に電力を供給する配線(不図示)は、必ずしも負荷制御部640を介して、各々の負荷600に接続していなくてもよい。
【0168】
ここで、
図2のS140の状態であると仮定する。すなわち、電池パック10における温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件を満たし、電池制御部400が第1信号を負荷制御部640に送信した状態である。
【0169】
このまま全ての負荷600を使用しつづければ、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差は、さらに大きくなってしまう。また、温度最低セルは、過放電となる可能性もある。そこで、負荷制御部640は、電池制御部400から第1信号を受信したとき、以下のようにして、負荷600の電流を減少させる。
【0170】
たとえば、第1の実施形態と同様にして、負荷制御部640は、発光手段(表示部602の発光部)の輝度を徐々に落としていく。このように、負荷制御部640は、負荷600で消費する電流を徐々に減少させる。
【0171】
また、たとえば、負荷制御部640は、演算処理手段(プロセッサ部606)の処理速度を落とす。「プロセッサ部606の処理速度を落とす」とは、プロセッサ部606のクロック周波数を落とすことである。このように、クロック周波数を落とすことにより、プロセッサ部606で消費される電流を減少させることができる。
【0172】
また、たとえば、負荷制御部640は、通話を制限し、パケット通信のみを行うように通信手段(通信部605)を制御する。通話による音声信号の送受信は、パケット通信によるデータ信号の送受信よりも、通信部605で消費される電力が大きい。このように、負荷制御部640は、比較的、消費電力の小さい負荷600のみを使用するように制限していくことができる。
【0173】
上記のように、負荷制御部640は、現在、電力を消費している負荷600の数を減少させていってもよい。これにより、負荷600単位で、電流を減少させていくことができる。
【0174】
第3の実施形態によれば、電子機器60は、複数の負荷600を有している。このような場合に、負荷制御部640は、電池制御部400から第1信号を受信したとき、適宜、電流を減少させる方法を選択することができる。負荷制御部640は、現在、電力を消費している負荷600の数を減少させていってもよい。これにより、負荷600単位で、電流を減少させていくことができる。したがって、電子機器60が複数の負荷600を有している場合であっても、各々の電池ユニット間の温度差による電圧差が生じることを抑制することができる。
【0175】
(第4の実施形態)
図11は、第4の実施形態に係る電子機器60の構成を示す模式図である。第4の実施形態は、電子機器60がハイブリッドカーまたは電気自動車の動力制御機器である点を除いて、第1の実施形態と同様である。以下、詳細を説明する。
【0176】
ここで、
図11のように、第4の実施形態に係る電子機器60は、たとえば、ハイブリッドカーなどの動力制御機器である。第1の実施形態と同様の電池パック10は、当該ハイブリッドカーに搭載され、電子機器60に接続している。
【0177】
この電子機器60は、電気駆動手段(モーター部608)、燃料駆動手段(エンジン部609)、負荷制御手段(負荷制御部640)およびインバータ660を備えている。負荷制御部640は、図示されていない領域で、電池パック10の電池制御部400に接続している。また、インバータ660は、図示されていない領域で、電池パック10の外部正極端子710および外部負極端子720に接続している。なお、電気駆動手段(モーター部608)とは、電気エネルギーを力学的エネルギーに変換するものであり、燃料駆動手段(エンジン部609)とは、燃料による燃焼エネルギーを力学的エネルギーに変換するものである。
【0178】
モーター部608は、たとえば、電池パック10からの電力を自動車の動力に変える。また、モーター部608は、インバータ660によって、自動車の動力を電力に変換して、電池パック10に供給することもできる。
【0179】
エンジン部609は、たとえば、ガソリンを燃焼させることにより、自動車に動力を与える。負荷制御部640は、モーター部608およびエンジン部609に接続している。これにより、負荷制御部640は、各々の負荷600が自動車の動力に寄与している割合を制御している。
【0180】
なお、モーター部608に電力を供給する配線(不図示)は、必ずしも負荷制御部640を介して、接続していなくてもよい。
【0181】
ここで、ハイブリッドカーは、モーター部608で駆動しており、
図2のS140の状態になっていると仮定する。すなわち、電池パック10における温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件を満たし、電池制御部400が第1信号を負荷制御部640に送信した状態である。
【0182】
このままモーター部608のみの駆動を続ければ、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差は、さらに大きくなってしまう。また、温度最低セルは、過放電となる可能性もある。そこで、負荷制御部640は、電池制御部400から第1信号を受信したとき、以下のようにして、制御を行う。
【0183】
たとえば、負荷制御部640は、電池パック10から電気駆動手段(モーター部608)への電力供給量を減少させ、燃料駆動手段(エンジン部609)で駆動する割合を増加させる。言い換えれば、負荷制御部640は、動力に寄与している割合を、徐々にエンジン部609の方が大きくなるように制御する。なお、モーター部608からエンジン部609への駆動に切り替えてもよい。これにより、モーター部608で消費される電流を減少させることができる。このように、徐々に他のエネルギーを使用した負荷600(エンジン部609)に切り替えていくことができる。
【0184】
第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0185】
以上、第4の実施形態では、ハイブリッドカーである場合を説明したが、電気自動車であってもよい。この場合、負荷制御部640は、電池制御部400から第1信号を受信したとき、モーター部608へ供給する電力を減少させることにより、電流を減少させる。なお、この場合は、動力源が1つしかないため、負荷制御部640は、徐々に電流を減少させていくことが好ましい。
【0186】
また、第4の実施形態では、ハイブリッドカーである場合を説明したが、電動アシスト自転車であってもよい。上述のように、温度最低セルが過放電となったとき、電池パック10は放電を強制終了させる可能性がある。そこで、負荷制御部640は、電池制御部400から第1信号を受信したとき、モーター部608へ供給する電力を徐々に減少させる。すなわち、負荷制御部640は、モーター部608によるアシスト力を弱めていく。これにより、ユーザーが感じる負荷の変化が少なく、長くモーター部608を使用することができる。
【0187】
(第5の実施形態)
図12は、第5の実施形態に係る電子機器60の構成を示す模式図である。第5の実施形態は、電子機器60が電池パック10以外の少なくとも一つ以上の他の電力供給手段(電力供給部12)と接続している点を除いて、第1の実施形態と同様である。以下、詳細を説明する。
【0188】
ここで、
図12のように、第5の実施形態に係る電子機器60は、たとえば、複数の電力供給源からの電力を制御する電力制御機器である。
【0189】
第1の実施形態と同様の電池パック10は、太陽電池92に接続している。太陽電池92は、太陽光の光エネルギーを電力に変換する。太陽電池92から光起電力が供給された場合、電池パック10は、当該電力によって充電される。
【0190】
また、電子機器60は、コンバータ部670および負荷制御部640を備えている。コンバータ部670は、電池パック10から供給される直流電流を交流電流に変換する。また、コンバータ部670は、電池パック10から送信された第1信号を伝送する機能を有している。なお、電池パック10から直接負荷制御部640に第1信号を送信する配線(不図示)が接続していてもよい。また、電池パック10は、電子機器60のコンバータ部670に接続している。
【0191】
負荷制御部640は、他の電力供給部12に接続している。電力供給部12は、たとえば、電力会社から供給される電力の配電盤である。たとえば、電力供給部12から、交流電流が供給される。
【0192】
負荷制御部640は、複数の家庭用の電源コンセント610に接続している。電源コンセント610には、ユーザーによって、様々な負荷600が接続される。
【0193】
ここで、電源コンセント610には、電池パック10から電力が供給されているとする。また、電池パック10は、
図2のS140の状態になっていると仮定する。すなわち、電池パック10における温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件を満たし、電池制御部400が第1信号を負荷制御部640に送信した状態である。
【0194】
このまま電池パック10のみから電力を消費し続けた場合、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差は、さらに大きくなってしまう。また、温度最低セルは、過放電となる可能性もある。
【0195】
そこで、負荷制御部640は、電池制御部400から第1信号を受信したとき、電池パック10から電源コンセント610への電力供給量を減少させ、他の電力供給部12から電源コンセント610への電力供給量を増加させる。
【0196】
なお、電池パック10から他の電力供給部12に不連続に切り替えるのではなく、徐々に他の電力供給部12が寄与する割合を増やしていってもよい。
【0197】
第5の実施形態によれば、電子機器60は、電池パック10以外の少なくとも一つ以上の他の電力供給部12と接続している。たとえば、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差が大きくなり、温度最低セルが過放電となったとき、電池パック10は放電を強制終了させる可能性がある。このため、たとえば、ユーザーが電池パック10からの電力供給を受けていたときに、瞬時に停電してしまう。したがって、負荷制御部640は、第1信号を受信したとき、電池パック10から電源コンセント610への電力供給量を減少させ、他の電力供給部12から電源コンセント610への電力供給量を増加させる。これにより、電池パック10の温度最低セルが過放電となることを防ぐことができる。また、電池パックからの放電を持続させることができ、負荷600側に対して、電力を連続的に供給することができる。
【0198】
(第6の実施形態)
図13は、第6の実施形態に係る電池パック10および電子機器60の構成を示す回路図である。第6の実施形態は、第1の実施形態における電池パック10の制御回路20が電子機器60に含まれている点を除いて、第1の実施形態と同様である。以下、詳細を説明する。
【0199】
図13のように、第6の実施形態の電池パック10には、制御回路20が設けられていない。すなわち、この電池パック10は、直列に接続された複数の電池セル100のみを有している。電池パック10のCell1側には、正極端子160が設けられている。一方、電池パック10のCellN側には、負極端子180が設けられている。また、それぞれの電池セル100の間において、電池セル端子130が設けられている。
【0200】
第6の実施形態の電子機器60は、負荷600、負荷制御部640のほかに、電圧電流測定部200、温度測定部300、電池制御部400およびスイッチ500を備えている。電子機器60の電池パック10側には、測定端子760が設けられている。
【0201】
また、電子機器60の電池パック10側には、正極端子740および負極端子750が設けられている。電子機器60の正極端子740および負極端子750は、それぞれ、電池パック10の正極端子160および負極端子180に接続している。これにより、電子機器60は、電池パック10の電力の供給を受けることができる。
【0202】
温度測定部300の温度センサー321、温度センサー322および温度センサー323は、電池パック10の外装体(不図示)に設けられた開口(不図示)から挿入され、各々の電池セル100に取り付けられている。
【0203】
また、電圧電流測定部200は、測定端子760に接続している。電子機器60の測定端子760は、配線(符号不図示)を介して、電池パック10の電池セル端子130に接続している。これにより、電圧電流測定部200は、各々の電池セル100の電圧を測定することができる。
【0204】
第6の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに第6の実施形態によれば、交換の多い電池パック10を簡素化した構成とすることができる。
【0205】
(第7の実施形態)
図14を用い、第7の実施形態に係る電池パック10について説明する。
図14は、第7の実施形態に係る電池パック10および充電機器90の構成を示す回路図である。第7の実施形態は、電池パック10に充電機器90が接続されている点を除いて、第1の実施形態と同様である。以下、詳細を説明する。
【0206】
電池制御部400は、電圧電流測定部200に接続している。電池制御部400は、温度測定部300が測定した温度等に基づいて、各々の電池セル100の充電を制御する。
【0207】
次に、第7の実施形態の電池パック10に接続された充電機器90について説明する。この電子機器60は、充電制御手段(充電制御部940)を備えている。充電制御部940は、電池制御部400に接続して、第1信号を受信し、且つ、充電における電圧および電流を制御する。また、充電制御部940は、電池制御部400から第1信号を受信したとき、充電における電流を減少させる。以下詳細を説明する。
【0208】
充電機器90は、電力供給源900を備えている。ここでいう電力供給源900は、電池パック10を充電するための電力源である。充電機器90の正極端子810および負極端子820は、電力供給源900に接続している。なお、電力供給源900が交流である場合は、充電機器90は、交流電流を直流電流に変換するコンバータ部(不図示)を備えていてもよい。
【0209】
充電機器90の電池パック10側には、正極端子810および負極端子820が設けられている。充電機器90の正極端子810および負極端子820は、それぞれ、電池パック10の外部正極端子710および外部負極端子720に接続している。これにより、充電機器90は、電池パック10に充電することができる。
【0210】
充電制御部940は、電力供給源900に接続している。これにより、充電制御部940は、電力供給源900の電圧および電流を制御している。
【0211】
また、充電制御部940は、通信端子830に接続している。充電機器90側の通信端子830は、たとえば、配線(不図示)を介して、電池パック10側の通信端子730に接続している。これにより、充電制御部940は、電池制御部400に接続して、第1信号を受信することができる。
【0212】
充電制御部940は、電池制御部400から第1信号を受信したとき、充電における電流を減少させることができる。この充電制御方法については、詳細を後述する。
【0213】
次に、
図2、
図3および
図15を用いて、上記した電池パック10の制御方法について説明する。なお、
図3における「負荷制御部」は、「充電制御部」と置き換えて適用する。
図15は、第7の実施形態に係る充電制御方法を説明するための図である。なお、
図15の時刻t等は、上述の実施形態の時刻t等とは独立である。第7の実施形態に係る充電制御方法は、第1の実施形態における放電を充電に置き換えるだけで、同様のステップを備えている。以下、詳細を説明する。
【0214】
ここで、電池パック10の全ての電池セル100の残容量は無くなっている状態であるとする。初期段階における全ての電池セル100の電圧は、放電終止電圧V
0に近い値となっている。
【0215】
まず、
図2において、充電機器90の正極端子810および負極端子820を、電池パック10の外部正極端子710および外部負極端子720にそれぞれ接続する。これにより、電池セル100への充電を開始する(S110)。
【0216】
この充電は、定電流定電圧法により行われる。ここでいう「定電流定電圧充電法」とは、電池パック10全体の電圧が特定の充電電圧に達するまでは一定の充電電流で充電を行い、特定の充電電圧に達した後は印加する電圧を当該充電電圧に固定する充電方法である。ここでは、たとえば、電池セル100の電圧が充電基準電圧値V
Cとなるように、上記した「充電電圧」をNV
Cとする。また、「充電電流」をI
C1とする。
【0217】
次いで、電池制御部400は、温度最低セルおよび温度最高セルを特定する(S120)。さらに、電池制御部400は、温度差ΔTの基準値T
1を設定する(S125)。
【0218】
ここで、
図15(a)は、第7の実施形態における充電開始時刻からの時間と、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTとの関係を示している。
図15(b)は、第7の実施形態における充電開始時刻からの時間と、温度最低セルの電圧V
aおよび温度最高セルの電圧V
bとの関係を示している。また、第1の実施形態における放電開始時刻からの時間と、温度最高セルの電圧V
bおよび温度最低セルの電圧V
aとの電圧差ΔVとの関係を示している。また、
図15(c)は、第7の実施形態における充電開始時刻からの時間と電池セル100の電流および残容量との関係を示している。なお、電池セル100の残容量の差は無視できるほど小さいものとする。
【0219】
図15(c)のように、時刻t
1まで、充電制御部940によって、定電流で充電している。すなわち、全ての電池セル100の電流は、定電流値I
C1で一定である。
【0220】
図15(a)のように、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、時刻t
1未満の充電の初期段階のとき、単調に増加していく。
【0221】
図15(b)のように、時刻t
1未満のとき、内部抵抗の差によって、温度最低セルの電圧V
aは、温度最高セルの電圧V
bよりも速く上昇する。
【0222】
ここで、
図15(a)において、時刻t
1のとき、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、基準値T
1となっている。このように、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件を満たすとき(S130Yes)、電池制御部400は、第1信号を出力する(S140)。なお、第1信号は、第1の実施形態と同様に、たとえば、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差を示す電圧差信号を含んでいる。
【0223】
また、
図15(b)のように、時刻t
1のとき、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差がV
g0まで大きくなっている。
【0224】
次いで、電池制御部400および充電制御部940は、以下のようにして温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVに基づく制御を行う(S400)。
図3のように、第1信号を受信した充電制御部940は、時刻t
1において、電池制御部400から第1信号を受信したとき、電流を減少させる(S410)。このとき、充電制御部940は、第1信号を受信したとき、たとえば、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVを示す電圧差信号に基づいて、電圧差ΔVが第1基準電圧値V
g1以下となるまで電流を減少させる。また、充電制御部940は、たとえば、電圧差ΔVが大きいほど、電流が大きく減少するように制御する。これにより、充電制御部940は、通電時の各々の電池セル100間の電圧差を小さくすることができる。なお、このとき、充電制御部940は、電流を少なくとも充電可能な電流値以上(0より大きい値)に制御する。
【0225】
図15(c)において、時刻t
1以降、充電制御部940が電流を減少させる。たとえば、第1の実施形態と同様に、充電制御部940は、電流を線形に減少させる。
【0226】
また、
図15(a)のように、時刻t
1以降、下記の二つの理由により、温度差ΔTの上昇が緩やかになっていき、次いで温度差ΔTは減少していく。一つ目の理由は、充電制御部940が第1信号を受信したとき電流を減少させることにより、電池パック10全体の発熱が抑制されるからである。二つ目の理由は、電池セル100の配置によって、温度最低セルのジュール熱が温度最高セルのジュール熱よりも大きくなるからである。温度最低セルの内部抵抗による発熱量は、温度最高セルよりも大きくなっていく。したがって、温度最低セルの温度上昇は、温度最高セルよりも速くなっていく。このようにして、時刻t
1以降、温度差ΔTの上昇は緩やかになっていき、次いで温度差ΔTは減少していく。
【0227】
図15(b)において、時刻t
1以降、充電制御部940が電流を減少させたことにより、内部抵抗による成分が小さくなっている。第7の実施形態では、時刻t
1以降、たとえば、各々の電池セル100の電圧は、上記した内部抵抗による電圧降下成分が減少した分だけ降下する。さらに、温度最低セルの電圧V
aは、温度最高セルの電圧V
bに近づいていく。
【0228】
図15(c)において、時刻t
1以降、充電制御部940が電流を減少させたことにより、残容量の増加は緩やかになる。
【0229】
次いで、電池制御部400は、第1信号を出力した後、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVが第1基準電圧値V
g1以下であるかを判定する(S420)
【0230】
時刻t
1以降、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVが第1基準電圧値V
g1より高いとき(S420No)、負荷制御部640は、電流を減少させる制御を継続させる(S410)。
【0231】
図15(a)のように、さらに充電制御部940は電流を減少させる制御を行うことにより、時刻t
2のとき、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVが第1基準電圧値V
g1以下となる。
【0232】
時刻t
2のときのように、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVが第1基準電圧値V
g1以下であるとき(S420Yes)、電池制御部400は第1信号を停止する(S430)。
【0233】
それに伴って、充電制御部940は、電流を減少させる制御を停止する。さらに、充電制御部940は、第1信号が停止したとき、たとえば、現在の電流値(I
D2)以下となるように制御する(S440)。ここでは、充電制御部940は、第1信号が停止したとき、たとえば、現在の電流値(I
D2)で一定となるように制御する。これにより、充電制御部940は、温度差ΔTが減少するまで、または温度差ΔTが平衡状態となるまで、電圧差ΔVを大きくすることなく、待機することができる。
【0234】
図15(c)のように、時刻t
2以降、たとえば、充電制御部940は、電流を、一定の電流値I
C2として一定となるように制御する。
【0235】
図15(a)のように、時刻t
2以降、温度差ΔTは緩やかに上昇し、時刻t
3のとき、温度差ΔTは最大値T
Mとなる。時刻t
3以降、温度差ΔTは徐々に減少していく。
【0236】
図15(b)のように、時刻t
3以降、温度最低セルおよび温度最高セルの電圧は、残容量の増加に伴って、上昇していく。また、上記した温度差ΔTの減少に伴って、温度最高セルと温度最低セルとの内部抵抗は近くなっていく。これにより、時刻t
2以降も、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVはさらに減少していく。
【0237】
次いで、電池制御部400は、第1信号を停止した後、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVが第2基準電圧値V
g2以下であるかを判定する(S420)電圧差ΔVが第2基準電圧値V
g2より大きいとき(S420No)、充電制御部940はS440の制御を継続する。
【0238】
時刻t4のとき、温度差ΔVは、第1基準電圧値Vg1よりも低い第2基準電圧値Vg2まで減少している。電池制御部400は、温度差ΔVが第2基準電圧値Vg2以下であるとき(S450Yes)、たとえば、第1信号と異なる第2信号を出力する(S460)。
充電制御部940は、第2信号を受信したとき、たとえば、電流を増加させることを可能とする。言い換えれば、充電制御部940は、第2信号を受信したとき、電流が一定値以下となるような制御(S440)を解除することができる。このように、電圧差ΔVがたとえば第2基準電圧値Vg2以下となることにより、充電制御部940は、温度差ΔTが平衡状態となったと判断して、電流を増加させることができる。
【0239】
次いで、電池パック10の充電を継続させるかについて判定する(S180)。このとき、各々の電池セル100の電圧が過充電検出電圧V
OC以上であるかを判定してもよい。充電を継続させる場合は(S180Yes)、電池制御部400は、再度、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTに基づいて、電池パック10を制御していく。電池パック10の使用環境が変化するなどして、温度差ΔTが大きくなる場合は、上記した同様の制御を行う。
【0240】
図15(b)において、さらに充電を行うことにより、電池セル100の電圧は上昇していく。時刻t
5のとき、充電制御部940は、定電流充電から定電圧充電に切り替える。
【0241】
図15(c)において、時刻t
5以降、充電制御部940は、充電電流をI
C1から徐々に減少させていく。時刻t
6のとき、全てのセルの残容量は、満充電容量値C
Raになる。また、時刻t
6のとき、電圧最大セルの電流は、充電終止電流値I
0となる。ここでいう「充電終止電流値I
0」とは、電池セル100が満充電に近づいたとき、一定の値に収束したときの電流値のことである。したがって、時刻t
6のとき、充電制御部940は、充電を終了させる(S190)。
【0242】
以上のようにして、第7の実施形態に係る電池パック10を制御する。
【0243】
次に、
図16を比較例として用い、第7の実施形態の効果について説明する。
図16は、第7の実施形態の効果について説明するための比較例の図である。
【0244】
図16は、第7の実施形態とは異なり、電池制御部400は温度に基づいて制御を行わない比較例の場合を示している。
図16(a)は、比較例における充電開始時刻からの時間と電池セル100の電圧との関係を示している。また、
図16(b)は、比較例における充電開始時刻からの時間と電池セル100の電流および残容量との関係を示している。なお、
図16の時刻tは、
図15の時刻tと同一であるとする。
【0245】
図16(c)のように、充電制御部940は、定電流で充電している。すなわち、電流は、常に定電流値I
C1で一定であるとする。
【0246】
図16(a)のように、比較例においても、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、時刻t
1未満の充電の初期段階のとき、単調に増加していく。
【0247】
図16(a)において、時刻t
1のとき、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、基準値T
1となっている。時刻t
1以降において、温度差ΔTはさらに上昇する。上述のように、当該温度差ΔTによって、温度最高セルと温度最低セルとの抵抗差が生じる。また、温度最低セルの内部抵抗による発熱量は、温度最高セルよりも大きくなっていく。このため、時間経過とともに、温度差ΔTの上昇は緩やかになっていく。比較例の温度差ΔTは、時刻t
2よりも遅い時刻t
7のとき、第1の実施形態の最大値T
Mより大きい最大値T
M2となる。時刻t
7以降では、温度差ΔTは減少していく。
【0248】
図16(b)のように、充電開始から、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVは、大きくなっていく。さらに、時刻t
1から時刻t
2の間、温度差ΔTの上昇に伴って、温度最高セルと温度最低セルとの内部抵抗の差は大きくなっていく。このため、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVはさらに大きくなっていく。比較例の電圧差ΔVは、時刻t
7のとき、第1の実施形態における最大値V
g0よりも大きい最大値V
g4となる。
【0249】
さらに充電を継続させると、時刻t
8のとき、温度最低セルの電圧V
aは、過充電検出電圧値V
OCとなる。なお、ここでいう「過充電検出電圧値V
OC」とは、たとえば、リチウムイオン二次電池などにおいて、発煙、発火または破裂などの不良が生じないようにするための電圧の上限値のことである。このとき、電池パック10の電池制御部400は充電を強制終了させる。
【0250】
図16(c)のように、時刻t
8のとき、全ての電池セル100の残容量Cは、満充電容量値C
Raに至っていない。
【0251】
このように、比較例では、各々の電池セル100の満充電容量が等しい場合であっても、温度差ΔTに起因した内部抵抗差により、各々の電池セル100の電圧がバラつく。また、比較例では、上記した温度差ΔTが第1の実施形態の最大値T
Mより大きい最大値T
M2となる。このため、温度差ΔTに依存して、各々の電池セル100の電圧は大きくバラつく可能性がある。また、比較例では、充電を継続させた場合、全ての電池セル100が満充電となる前に、温度最低セルは過充電となる可能性がある。
【0252】
一方、第7の実施形態によれば、電池制御部400は、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件をみたすとき、第1信号を出力する。充電機器90は、第1信号を受信したとき、充電における電流を減少させる制御を行うことができる。これにより、第7の実施形態では、充電においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、温度最低セルが過充電になることを抑制することができる。したがって、第7の実施形態によれば、電池パック10を安定的に充電することができる。
【0253】
(第8の実施形態)
図7および
図17を用い、第8の実施形態に係る電池パック10について説明する。第8の実施形態は、電圧差に基づく制御を行わない点を除いて、第7の実施形態と同様である。なお、
図7における「負荷制御部」は、「充電制御部」と置き換えて適用する。また、
図15の時刻t等は、上述の実施形態の時刻t等とは独立である。以下、詳細を説明する。
【0254】
第7の実施形態では、電池制御部400が第1信号を送信した後、電池制御部400および充電制御部940は、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVに基づいて制御を行う場合について説明した。しかし、第8の実施形態として以下で説明するように、電池制御部400は温度差ΔTのみに基づいて制御を行うことも可能である。
【0255】
また、第8の実施形態では、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが経時的に大きくなっていく場合について説明する。具体的には、電池パック10が多くの電池セル100を備えており、低温環境下で使用されている場合である。すなわち、電池パック10内の内側の電池セル100は発熱すると熱が逃げにくく、一方、電池パック10の外側の電池セル100は外部に放熱しやすい状況である。
【0256】
まず、
図7のフローチャートにおいて、電池セル100への充電を開始する(S110)。次いで、電池制御部400は、温度測定部300が測定した温度に基づいて、温度が最低である温度最低セルと、温度が最高である温度最高セルを特定する(S120)。
【0257】
ここで、
図17(a)は、第8の実施形態における充電開始時刻からの時間と、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTとの関係を示している。
図17(b)は、第8の実施形態における充電開始時刻からの時間と、温度最低セルの電圧V
aおよび温度最高セルの電圧V
bとの関係を示している。また、第8の実施形態における放電開始時刻からの時間と、温度最高セルの電圧V
bおよび温度最低セルの電圧V
aとの電圧差ΔVとの関係を示している。また、
図17(c)は、第8の実施形態における充電開始時刻からの時間と電池セル100の電流および残容量との関係を示している。
【0258】
図17(c)のように、時刻t
1まで、充電制御部940によって、定電流で充電している。すなわち、全ての電池セル100の電流は、定電流値I
C1で一定である。
【0259】
図17(a)のように、たとえば、温度最高セルの温度上昇は速い。一方、温度最低セルの温度上昇は遅い。温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、たとえば、充電開始と同時に、単調に増加していく。
【0260】
図17(b)のように、充電開始から、内部抵抗の差によって、温度最低セルの電圧V
aは、温度最高セルの電圧V
bよりも速く上昇する。このため、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVは大きくなっていく。
【0261】
ここで、
図17(a)において、時刻t
1のとき、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、基準値T
1となっている。このように、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件を満たすとき(S130Yes)、電池制御部400は、第1信号を出力する(S140)。
【0262】
また、
図17(b)のように、時刻t
1のとき、温度最高セルと温度最低セルとの電圧差ΔVがV
g5まで大きくなっている。
【0263】
ここで、電池制御部400および充電制御部940は、以下のようにして温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTのみに基づく制御を行う。
【0264】
充電制御部940は、時刻t
1において、電池制御部400から第1信号を受信したとき、電流を減少させる(S510)。
【0265】
図17(c)において、時刻t
1以降、充電制御部940が電流を減少させる。たとえば、第1の実施形態と同様に、充電制御部940は、たとえば、電流を線形に減少させる。なお、充電制御部940による電流減少量は、任意であっても同様の効果を得ることができる。
【0266】
また、
図17(a)のように、時刻t
1直後では、温度最高セルは、充電による発熱によって温度が高い状態を維持している。そのため、S510において充電制御部940が電流を減少させてから、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTは、すぐには下がらない。一方で、充電制御部940によって電流は減少しているため、時刻t
1以降、温度差ΔTの上昇は緩やかになっていく。
【0267】
図17(b)において、時刻t
1以降、充電制御部940が電流を減少させたことにより、内部抵抗による成分が小さくなっている。すなわち、時刻t
1以降、温度最低セルの電圧V
aは、温度最高セルの電圧V
bに近づいていく。
【0268】
次いで、電池制御部400は、第1信号を出力した後、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件を再度判定する(S520)。
【0269】
時刻t
1以降、温度差ΔTが第1条件を満たすとき(S520Yes)、負荷制御部640は、電流を減少させる制御を継続させる(S510)。
【0270】
図17(a)のように、さらに充電制御部940は電流を減少させる制御を行うことにより、電池パック10全体の発熱が抑制される。これにより、温度差ΔTの上昇を緩やかにすることができる。時刻t
2において、温度差ΔTは最大値T
M3となる。さらに、時刻t
2以降、放電における電流がさらに減少することに伴って、温度差ΔTは、緩やかに降下していく。
【0271】
図17(c)のように、時刻t
2以降も、負荷制御部640は、電流を減少させる制御を継続させる。
【0272】
図17(b)のように、時刻t
2以降も、温度最低セルの電圧V
aは、徐々に温度最高セルの電圧V
bに近づいていく。
【0273】
図17(a)のように、さらに負荷制御部640は電流を減少させる制御を行うことにより、時刻t
3のとき、温度差ΔTが基準値T
1未満となる。すなわち、温度差ΔTが第1条件を満たさなくなる。
【0274】
次いで、時刻t
3のときのように、電池制御部400は、第1信号を出力した後、温度差ΔTが基準値T
1以上であるとする第1条件を満たさなくなったとき(S520No)、第1信号を停止する(S530)。それに伴って、充電制御部940は、電流を減少させる制御を停止する。
【0275】
図17(c)のように、時刻t
3以降、たとえば、充電制御部940は、電流を、たとえば、一定の電流値I
C3として一定となるように制御する。
【0276】
図17(b)のように、時刻t
3以降、温度最低セルおよび温度最高セルの電圧は、残容量の増加に伴って、上昇していく。
【0277】
次いで、電池パック10の充電を継続させるかについて判定する(S180)。充電を継続させる場合は(S180Yes)、電池制御部400は、再度、温度最高セルと温度最低セルとの温度差ΔTに基づいて、電池パック10を制御していく。電池パック10の使用環境が変化するなどして、温度差ΔTが大きくなる場合は、上記した同様の制御を行う。
【0278】
図17(b)において、さらに充電を行うことにより、電池セル100の電圧は上昇していく。時刻t
4のとき、充電制御部940は、定電流充電から定電圧充電に切り替える。
【0279】
図17(c)において、時刻t
4以降、充電制御部940は、充電電流をI
C3から徐々に減少させていく。時刻t
5のとき、全てのセルの残容量は、満充電容量値C
Raになる。また、時刻t
5のとき、電圧最大セルの電流は、充電終止電流値I
0となる。したがって、時刻t
5のとき、充電制御部940は、充電を終了させる(S190)。
【0280】
以上のようにして、第7の実施形態に係る電池パック10を制御する。
【0281】
第8の実施形態によれば、充電においても、第1、2または7の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに第8の実施形態によれば、電池制御部400および負荷制御部640は温度差ΔTのみに基づいて制御を行うことができる。第8の実施形態は、たとえば温度差ΔTが経時的に大きくなっていく場合などに特に有効である。また、第8の実施形態は、電池セル100のうち、初期の満充電容量の差がある場合にも適用することができる。
【0282】
さらに第8の実施形態によれば、負荷制御部640が放電における電流を減少させることにより、各々の電池セル100間の温度差ΔTを減少させることができる。すなわち、温度差ΔTを原因として、各々の電池セル100間の内部抵抗の差が大きくなることを抑制することができる。
【0283】
(第9の実施形態)
図18は、第9の実施形態に係る電池パック10および充電機器90の構成を示す回路図である。第9の実施形態は、第7の実施形態における電池パック10の制御回路20が充電機器90に含まれている点を除いて、第7の実施形態と同様である。以下、詳細を説明する。
【0284】
図18のように、第9の実施形態の電池パック10には、制御回路20が設けられていない。すなわち、この電池パック10は、直列に接続された複数の電池セル100のみを有している。電池パック10のCell1側には、正極端子160が設けられている。一方、電池パック10のCellN側には、負極端子180が設けられている。また、それぞれの電池セル100の間において、電池セル端子130が設けられている。
【0285】
第9の実施形態の充電機器90は、充電制御部940のほかに、電圧電流測定部200、温度測定部300、電池制御部400およびスイッチ500を備えている。充電機器90の電池パック10側には、測定端子760が設けられている。
【0286】
また、充電機器90の電池パック10側には、正極端子740および負極端子750が設けられている。充電機器90の正極端子740および負極端子750は、それぞれ、電池パック10の正極端子160および負極端子180に接続している。これにより、充電機器90は、電池パック10を充電することができる。
【0287】
温度測定部300の温度センサー321、温度センサー322および温度センサー323は、電池パック10の外装体(不図示)に設けられた開口(不図示)から挿入され、各々の電池セル100に取り付けられている。
【0288】
また、電圧電流測定部200は、測定端子760に接続している。充電機器90の測定端子760は、配線(符号不図示)を介して、電池パック10の電池セル端子130に接続している。これにより、電圧電流測定部200は、各々の電池セル100の電圧を測定することができる。
【0289】
第9の実施形態によれば、第7の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに第9の実施形態によれば、交換の多い電池パック10を簡素化した構成とすることができる。
【0290】
以上の実施形態において、電池制御部400は、電池セル100が放電を行っている場合および電池セル100に充電を行っている場合の両方に対応して、第1信号を出力してもよい。
【0291】
以上の実施形態において、電池制御部400は、電圧電流測定部200を介して、スイッチ500に対して信号を送信する場合を説明したが、電池制御部400は、直接、スイッチ500に信号を送信する形態であってもよい。
【0292】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。たとえば、上記実施形態では電池セル100がラミネート型電池である場合を説明したが、電池セル100が円筒型や角型などの他の形態の電池である場合も、同様に本発明の効果を得ることができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
直列に接続された複数の電池ユニットのうち、二つ以上の前記電池ユニットの温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記電池ユニットの充電および放電を制御する電池制御手段と、
を備え、
前記電池制御手段は、
前記電池ユニットに前記充電を行っている場合または前記電池ユニットが前記放電を行っている場合に、前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記温度が最低である温度最低ユニットと、前記温度が最高である温度最高ユニットとを特定し、
前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの温度差が基準値以上であるとする第1条件を満たさないとき、前記充電または前記放電をそのまま継続させ、
前記温度差が前記第1条件を満たすとき、第1信号を出力する電池制御システム。
2.
1.に記載の電池制御システムにおいて、
前記電池ユニットの電圧を測定する電圧測定手段をさらに備え、
前記電池制御手段は、
前記第1信号を出力した後、前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの電圧差が第1基準電圧値以下になったとき、前記第1信号の出力を停止する電池制御システム。
3.
2.に記載の電池制御システムにおいて、
前記第1信号は、前記電圧差を示す電圧差信号を含む電池制御システム。
4.
2.または3.に記載の電池制御システムにおいて、
前記電池制御手段は、
前記第1信号を停止した後、前記電圧差が前記第1基準電圧値よりも低い第2基準電圧値以下になったとき、前記第1信号と異なる第2信号を出力する電池制御システム。
5.
1.〜4.のいずれか一つに記載の電池制御システムにおいて、
前記電池制御手段は、
前記第1条件における前記温度差の前記基準値を、前記電池ユニットの前記温度に基づいて変化させる電池制御システム。
6.
5.に記載の電池制御システムにおいて、
前記温度差の前記基準値は、前記温度最低ユニットまたは前記温度最高ユニットの前記温度が低いほど小さい値である電池制御システム。
7.
1.〜6.のいずれか一つに記載の電池制御システムにおいて、
前記第1信号は、前記温度差を示す温度差信号を含む電池制御システム。
8.
1.〜7.のいずれか一つに記載の電池制御システムにおいて、
前記第1信号は、前記温度最低ユニットおよび前記温度最高ユニットのうち、少なくとも一つの前記電池ユニットの前記温度を示す温度信号を含む電池制御システム。
9.
1.〜8.のいずれか一つに記載の電池制御システムにおいて、
前記温度測定手段は、外気温度をさらに測定し、
前記第1信号は、当該外気温度を示す外気温度信号を含む電池制御システム。
10.
1.〜9.のいずれか一つに記載の電池制御システムにおいて、
前記電池制御手段は、
前記第1信号を出力した後、前記温度差が前記第1条件を満たさなくなったとき、前記第1信号の出力を停止する電池制御システム。
11.
1.〜10.のいずれか一つに記載の電池制御システムにおいて、
前記温度測定手段は、
最も外側に配置された少なくとも一つの前記電池ユニットと、
少なくとも一つの前記電池ユニットよりも内側に位置する前記電池ユニットと、
の前記温度を測定する電池制御システム。
12.
1.〜11.のいずれか一つに記載の電池制御システムにおいて、
前記電池制御手段に接続して、前記第1信号を受信し、且つ、前記放電の電力を消費する負荷を制御する負荷制御手段をさらに備え、
前記負荷制御手段は、
前記電池制御手段から前記第1信号を受信したとき、前記放電における電流を減少させる電池制御システム。
13.
12.に記載の電池制御システムにおいて、
前記電池ユニットの電圧を測定する電圧測定手段をさらに備え、
前記第1信号は、前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの電圧差を示す電圧差信号を含み、
前記負荷制御手段は、
前記第1信号を受信したとき、前記電圧差信号に基づいて、前記電圧差が前記第1基準電圧値以下となるまで前記電流を減少させ、
前記電池制御手段は、
前記第1信号を出力した後、前記電圧差が第1基準電圧値以下になったとき、前記第1信号の出力を停止する電池制御システム。
14.
13.に記載の電池制御システムにおいて、
前記電池制御手段は、
前記第1信号を停止した後、前記電圧差が前記第1基準電圧値よりも低い第2基準電圧値以下になったとき、前記第1信号と異なる第2信号を出力し、
前記負荷制御手段は、
前記第2信号を受信したとき、前記電流を増加させることを可能とする電池制御システム。
15.
12.〜14.のいずれか一つに記載の電池制御システムにおいて、
前記第1信号は、前記温度差を示す温度差信号を含み、
前記負荷制御手段は、
前記第1信号を受信したとき、前記温度差信号に基づいて、前記温度差が大きいほど前記電流が減少するように制御する電池制御システム。
16.
12.〜15.のいずれか一つに記載の電池制御システムにおいて、
前記第1信号は、前記温度最低ユニットおよび前記温度最高ユニットのうち、少なくとも一つの前記電池ユニットの前記温度を示す温度信号を含み、
前記負荷制御手段は、
前記第1信号を受信したとき、前記温度が低いほど前記電流が減少するように制御する電池制御システム。
17.
12.〜16.のいずれか一つに記載の電池制御システムにおいて、
前記温度測定手段は、外気温度をさらに測定し、
前記第1信号は、当該外気温度を示す外気温度信号を含み、
前記負荷制御手段は、
前記第1信号を受信したとき、前記外気温度が低いほど前記電流が減少するように制御する電池制御システム。
18.
12.〜17に記載の電池制御システムにおいて、
前記負荷制御手段は、
前記第1信号が停止したとき、前記電流が現在の電流値以下となるように制御する電池制御システム。
19.
1.〜18.のいずれか一つに記載の電池制御システムにおいて、
前記電池ユニットは、リチウムイオン二次電池を含む電池制御システム。
20.
直列に接続された複数の電池ユニットと、
二つ以上の前記電池ユニットの温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記電池ユニットの充電および放電を制御する電池制御手段と、
を備え、
前記電池制御手段は、
前記電池ユニットに前記充電を行っている場合または前記電池ユニットが前記放電を行っている場合に、前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記温度が最低である温度最低ユニットと、前記温度が最高である温度最高ユニットとを特定し、
前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの温度差が基準値以上であるとする第1条件を満たさないとき、前記充電または前記放電をそのまま継続させ、
前記温度差が前記第1条件を満たすとき、第1信号を出力する電池パック。
21.
直列に接続された複数の電池ユニットを含む電池パックと、
二つ以上の前記電池ユニットの温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記電池ユニットの放電を制御する電池制御手段と、
前記電池パックからの前記放電による電力を消費する負荷と、
前記電池制御手段に接続し、且つ、前記負荷を制御する負荷制御手段と、
を備え、
前記電池制御手段は、
前記電池ユニットが前記放電を行っている場合に、前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記温度が最低である温度最低ユニットと、前記温度が最高である温度最高ユニットとを特定し、
前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの温度差が基準値以上であるとする第1条件を満たさないとき、前記充電または前記放電をそのまま継続させ、
前記温度差が前記第1条件を満たすとき、第1信号を出力し、
前記負荷制御手段は、
前記電池制御手段から前記第1信号を受信したとき、前記放電における電流を減少させる電子機器。
22.
21.に記載の電子機器において、
前記電池ユニットの電圧を測定する電圧測定手段をさらに備え、
前記電池制御手段は、
前記第1信号を出力した後、前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの電圧差が第1基準電圧値以下になったとき、前記第1信号の出力を停止する電子機器。
23.
21.または22.に記載の電子機器において、
前記負荷は、少なくとも一つ以上の発光手段を含み、
前記負荷制御手段は、
前記電池制御手段から前記第1信号を受信したとき、前記発光手段の輝度を落とすことにより、前記電流を減少させる電子機器。
24.
21.または22.に記載の電子機器において、
前記負荷は、少なくとも一つ以上の演算処理手段を含み、
前記負荷制御手段は、
前記電池制御手段から前記第1信号を受信したとき、前記演算処理手段の処理速度を落とすことにより、前記電流を減少させる電子機器。
25.
21.または22.に記載の電子機器において、
当該電子機器は、通話またはパケット通信を行う携帯通信端末であって、
前記負荷は、前記通信を行う通信手段を含み、
前記負荷制御手段は、
前記電池制御手段から前記第1信号を受信したとき、前記通話を制限し、前記パケット通信のみを行うように前記通信手段を制御することにより、前記電流を減少させる電子機器。
26.
21.または22.に記載の電子機器において、
前記負荷は、少なくとも一つ以上の電気駆動手段を含み、
前記負荷制御手段は、
前記電池制御手段から前記第1信号を受信したとき、前記電気駆動手段へ供給する前記電力を減少させることにより、前記電流を減少させる電子機器。
27.
21.または22.に記載の電子機器において、
燃料で駆動する燃料駆動手段をさらに備え、
前記負荷は、少なくとも一つ以上の電気駆動手段であり、
前記負荷制御手段は、
前記電池制御手段から前記第1信号を受信したとき、前記電池パックから前記電気駆動手段への電力供給量を減少させ、前記燃料駆動手段で駆動する割合を増加させることにより、前記電流を減少させる電子機器。
28.
21.または22.に記載の電子機器において、
前記電池パック以外の少なくとも一つ以上の他の電力供給手段と接続し、
前記負荷制御手段は、
前記電池制御手段から前記第1信号を受信したとき、前記電池パックから前記負荷への電力供給量を減少させ、前記他の電力供給手段から前記負荷への前記電力供給量を増加させる電子機器。
29.
21.〜28.のいずれか一つに記載の電子機器において、
前記負荷制御手段は、
前記電池制御手段から前記第1信号を受信したとき、前記負荷で消費する前記電流を単調減少させる電子機器。
30.
21.〜29.のいずれか一つに記載の電子機器において、
複数の前記負荷を備え、
前記負荷制御手段は、
前記電池制御手段から前記第1信号を受信したとき、現在、前記電力を消費している前記負荷の数を減少させていく電子機器。
31.
直列に接続された複数の電池ユニットのうち、二つ以上の前記電池ユニットの温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記電池ユニットの充電を制御する電池制御手段と、
前記電池制御手段に接続し、且つ、前記充電における電圧および電流を制御する充電制御手段と、
を備え、
前記電池制御手段は、
前記電池ユニットに前記充電を行っている場合に、前記温度測定手段が測定した前記温度に基づいて、前記温度が最低である温度最低ユニットと、前記温度が最高である温度最高ユニットとを特定し、
前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの温度差が基準値以上であるとする第1条件を満たさないとき、前記充電または前記放電をそのまま継続させ、
前記温度差が前記第1条件を満たすとき、第1信号を出力し、
前記充電制御手段は、
前記電池制御手段から前記第1信号を受信したとき、前記充電における前記電流を減少させる充電機器。
32.
31.に記載の充電機器において、
前記電池ユニットの電圧を測定する電圧測定手段をさらに備え、
前記電池制御手段は、
前記第1信号を出力した後、前記温度最高ユニットと前記温度最低ユニットとの電圧差が第1基準電圧値以下になったとき、前記第1信号の出力を停止する充電機器。
【0293】
この出願は、2012年2月29日に出願された日本出願特願2012−44629号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。