【実施例】
【0111】
(実施例I)
酢酸緩衝液を使用した腫瘍由来エキソソームの単離
【0112】
本実施例では、酢酸緩衝液を使用してエキソソーム、とりわけ腫瘍由来エキソソームなどの細胞外微小小胞体を単離するための有利な方法を示す。
【0113】
A. 材料および方法
以下の材料および方法は、実施例I、実施例IIおよび実施例IIIで報告する結果に関連する。
【0114】
1. 組織培養
K1735Pマウス黒色腫(腫瘍)細胞(I.J. Fidler、M.D. Anderson Cancer Center、Houston、TXにより提供された。ただし、いずれにせよ広く入手可能)を、L−グルタミン(2mM)、ピルビン酸Na(1mM)、ペニシリン(100U/mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL)、非必須アミノ酸およびウシ胎児血清(10%)を補充した最少必須培地(MEM)中で培養した。細胞(15mL培地中約25x10
6個)を上部チャンバーに250mLの培地を含有しているCELLine AD1000フラスコ(Integra Biosciences AG)の下部チャンバーに播種した(Mitchellら、2008年)。ならし培地(約15mL)を下部チャンバーから週1回採取した。コンパートメントを15mLのリン酸緩衝食塩水(PBS)で1回洗浄し、ならし培地と合わせた。次いで、新鮮な培地を下部チャンバーに加えた。上部チャンバーは、約100mLの使用済み培地を新鮮な培地で置き換えることにより週1回補充した。週1回の採取物を酢酸緩衝液沈殿プロトコールに供し、一般的に75〜125μgの精製エキソソーム/mLのならし培地を得た(以下の結果を参照)。
【0115】
2. 腫瘍由来エキソソームの単離
超遠心分離 − 500gで30分間と続く12,000gでさらなる30分間の逐次的遠心分離により、細胞ならし培地から細胞、細胞デブリおよび大きい膜小胞を除去した。エキソソームは、100,000gで1時間の超遠心分離の後に澄明にした上清から収集した。ペレットを約2mLのHEPES−食塩水(HBS;NaCl 150mM、HEPES 20mM、EGTA 2mM、pH7.6)に再懸濁した。エキソソームの量は、BCAタンパク質アッセイにより推定した。
【0116】
酢酸緩衝液沈殿プロトコール(標準) − 逐次的遠心分離により、細胞ならし培地から細胞、細胞デブリおよび大きい膜小胞を除去した。細胞ならし培地を500gで30分間(または250gで10分間)遠心分離し、上清を収集し、次いで12,000g〜13,000gでさらに30分間遠心分離した。これらのステップにより、澄明にしたまたは清澄にした上清が提供される。水中1.0M酢酸ナトリウムの溶液を調製し、氷酢酸でpH4.75まで滴定し、1/10容のこの酢酸Na緩衝液を澄明にした上清と混合し、氷上に30〜60分間放置した。一般的に、混合物を次に37℃にさらに5分間移行させた(これは任意選択であるが)。得られた混濁懸濁液を2,000g〜5,000g、一般的に5,000gで10分間遠心分離し、上清を捨て、得られたペレットを0.1M酢酸Na緩衝液で1回洗浄した。再懸濁したペレットを再び約2,000gで10分間遠心分離し、最終ペレットを、酢酸塩不含有緩衝液の例としての、ヘペス緩衝食塩水(HBS)またはTRIS緩衝食塩水(TBS)で「可溶化」した。任意選択で、任意の残存不溶性物質を約2,000gで10分間の遠心分離により除去することができ、かつ/または追加のラウンドの沈殿によりさらなる精製が達成された。精製エキソソームを4℃で保存した。
【0117】
3. フローサイトメトリー
0.5mLのPBS中の腫瘍エキソソーム(10μgタンパク質)を5μLの4μMアルデヒドで活性化した(aldehyde−activate)ラテックスビーズ(4重量/体積%)(Invitrogen)と4℃で終夜混合した。次いで、0.5mLの1%ウシ血清アルブミン(BSA)を1時間加えた後、0.1mLの100mMグリシンをさらに1時間加えることによってビーズをブロッキングした。次いでビーズを洗浄し、PBSに再懸濁した。抗体は、ウサギ抗alix(sc−99010;Santa Cruz)およびアイソタイプ対照としてのウサギ抗チューブリン(sc−5546;Santa Cruz)と続くCY3標識ロバ抗ウサギIgを含んでいた。一次抗体をビーズとともに氷上で1時間インキュベートし、2回洗浄した後、標識二次抗体(labeled secondary)とともにさらに1時間インキュベートした。ビーズを再び洗浄し、解析した。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)−アネキシン5(BD Biosciences)を製造業者によって記載された通りに使用した。試料は、Ca
2+(1mM)の存在下および非存在下でアネキシン5とともにインキュベートしたBSAでブロッキングしたビーズおよびエキソソーム−ビーズを含んでいた。
【0118】
4. 電子顕微鏡法
Theryら、2006年により記載された手順にわずかに修正を加えた手順を使用して、透過型電子顕微鏡法による検査のために、単離されたエキソソームを調製した。手短かに述べると、25μlのエキソソーム懸濁液をパラフィン上に置き、炭素被覆グリッドを裏向きに懸濁液上に1分間懸垂した。次いで、グリッドを水でそれぞれ1分間、3回逐次的に洗い流すことにより洗浄した。次いで、グリッドを、2%酢酸ウラニルの25μl液滴上に1分間のせることにより染色し、再度上記のように水で洗浄した。過剰の水は、濾紙で吸い取ることにより除去した。次いで、グリッドを数分間風乾した。試料をJEOL 1200EX電子顕微鏡で検査した。
【0119】
5. ゲル電気泳動およびウエスタンブロッティング
エキソソームは、等体積の5%β−メルカプトエタノール含有Laemmli試料緩衝液(Bio−Rad)で95℃で5分間可溶化した。アリコート(20μgタンパク質)を二連「Ready Cast」10%アクリルアミドゲル(Bio−Rad)による電気泳動にかけた。1つのゲルをクーマシーブルーで染色し、二連をPVDF膜に4℃で終夜転写した。膜を1%Tween−20含有TRIS緩衝食塩水(TBS)中5%無脂肪乳でブロッキングした。示した一次抗体(抗alix、抗hsp70;Santa Cruz)を1時間加えた後、TBSで3回洗浄した。抗体結合は、適切なHRPコンジュゲート二次抗体で評価し、高感度ケミルミネッセンス(chemoluminescence)により視覚化した。
【0120】
B. pHおよび濃度範囲
腫瘍細胞培養は、高効率CELLline AD組織培養システム(Mitchellら、2008年)で確立した。上清を下部の細胞含有チャンバーから回収し、500gおよび12,000gでの遠心分離によりそれぞれ完全な細胞および細胞デブリを除去した。次いで、澄明な上清の小(4.5mL)アリコートを、酢酸で表示pHまで滴定した1/10容の漸増10倍酢酸塩濃度のものと混合した。
【0121】
図1Aおよび
図1Bは、酢酸緩衝液のこの範囲にわたる腫瘍由来エキソソームの有効な単離を示している。全範囲の塩およびpH条件が腫瘍エキソソームを沈殿させるのに有効であり、意味のあるレベルのタンパク質がすべての試験条件で回収されたことを確認することができる。本試験が広範囲の比較データを容易に提供するように設計されたものであって、収率を最適化しようとして設計されたものではないことも注意すべできある。有効な条件の範囲では、沈殿は、本質的に瞬間的であり、明らかに目に見えるものであった(例えば、pH4.75と0.1M酢酸塩を使用した場合の
図1Cに示す通り)。
【0122】
データポイントに曲線を当てはめることにより、
図1AからpH3.75〜pH5.75および0.05M〜0.5Mを含む、塩およびpH条件の全範囲にわたる酢酸緩衝液が腫瘍エキソソームを沈殿させるのに有効であることがわかる。実際のデータポイントは、0.05M〜0.5Mの濃度の全範囲にわたって、有効な沈殿がpH4.14、pH4.39、pH4.64、pH4.89、pH5.14およびpH5.64(
図1A)で起こったことを示している。有効な沈殿は、試験した各濃度、すなわち0.05M、0.1M、0.233M、0.367Mおよび0.5M(
図1A)でも起こった。データポイントに曲線を当てはめることにより、各濃度について最適なpHを次のように決定することができる:0.05MでpH4.65;0.1MでpH4.75;0.233MでpH4.80;0.367MでpH4.77;および0.5MでpH4.78(
図1B)。
【0123】
しかし、pHおよび濃度の全範囲にわたる酢酸緩衝液が有効であるにもかかわらず、この「塩析」または沈殿法は、pHと塩濃度の両方による影響を受けた。
図1Aは、約pH4.14と約pH5.25の間または約pH4.25と約pH5.25の間、さらにとりわけ約pH4.5と約pH5.0の間の範囲、および約0.05Mと0.25Mの間、さらにとりわけ約0.05Mと0.1Mの間の濃度の酢酸塩が最も有効であることを示している。これらの同じデータの空間充填(または3D)モデルを使用して、約pH4.14と約pH5.25の間、約pH4.14と約pH5.0の間、約pH4.39と約pH5.4の間、約pH4.39と約pH5.25の間および約pH4.39と約pH5.14の間の範囲、ならびに約0.05Mと0.25Mの間、約0.05Mと0.233Mの間および約0.05Mと0.15Mの間の濃度、さらにとりわけ、約pH4.5と約pH5.4の間、約pH4.5と約pH5.25の間および約pH4.5と約pH5.0の間、ならびに約0.05Mと0.233Mの間、約0.05Mと0.15Mの間および約0.05Mと0.1Mの間の濃度が最も有効である。
【0124】
図1Aおよび同じデータの空間充填モデルから、好ましい範囲は、約pH4.5と約pH5.25の間、または約pH4.5と約pH5.0の間、および約0.05Mと0.15Mの間、または約0.05Mと0.1Mの間の濃度である。これらの有効範囲内では、0.1M酢酸塩を用いたこれらの試験における最大沈殿は、約pH4.75で起こった。したがって、これを、以下のものを含む、さらなる試験の好都合な標準条件として選択し、後の実施例で報告した。
【0125】
C. 収量
約25x10
6個のK1735P細胞から開始して、ならし培地の最初の採取の前の2週間上記の条件下で培養し、上記のように(およびpH4.75の0.1M酢酸ナトリウムを使用して)酢酸塩による沈殿を実施し、1mLのならし培地当たり約75〜125μgの収量の精製エキソソームを得る。これらの細胞を培養で維持し、上記のように使用済み培地を新鮮な培地で補充し、いわゆる「十分に飽和した」細胞ならし培地(その時は未知数の細胞からであるが)の一定の供給源を用意し、それから酢酸緩衝液沈殿プロトコールを使用して約75〜125μg/mL、一般的に約100〜125μg/mLの精製エキソソームを週1回得ることができる。
【0126】
記載したように、
図1Aおよび
図1Bにおけるデータは、条件の比較を示すために小試料から得られたものであって、一般的な収量を示すことを目的とするものではない。より低い濃縮度の小試料とは対照的に、十分に飽和した培地を使用した場合に収率(%)が増加することが認められた。
【0127】
(実施例II)
腫瘍エキソソームの単離のさらなる特徴付け
【0128】
この実施例では、疾患関連の、エキソソームなどの細胞外微小小胞体の単離方法論をさらに特徴付けし、腫瘍エキソソームに関する技術における酢酸緩衝液の重要性を強調する。
【0129】
A. 温度非依存性
本試験では、腫瘍エキソソームの沈殿が本質的に温度非依存性であることを示す。しかし、温度の効果を解析したところ、濁りの発生が温度依存性であることが示された。
【0130】
酢酸塩の添加により、濁度の即時の温度依存的増加が起こり、これがその後横ばいの状態になり始めた。継続的インキュベーションで、0℃と20℃の間では速度のわずか約2倍の増加を示した。しかし、温度を20℃から37℃に上昇させたときに速度の有意な差は認められなかった(
図2A)。興味深いことに、反応が0℃で一旦プラトーになると、温度を37℃に上昇させることにより、37℃で全期間インキュベートした試料の濁度に近いレベルに濁度が即時に増加した(
図2A)。逆に、37℃でインキュベートした試料の温度を低下させても効果はなかった(
図2A)。
【0131】
濁度に関係なく、ペレット化沈殿物において回収されたタンパク質の量は、本質的に同じであった(
図2B)ことから、腫瘍エキソソームの沈殿が温度非依存性であり、より高い温度でより大きい凝集体が形成されることが示された。
【0132】
B. pH依存性
腫瘍由来エキソソームの沈殿のpH依存性をさらに評価するために、同じIntegraフラスコからの使用済み培地および澄明にした細胞上清を0.1M酢酸Na緩衝液中で1時間インキュベートした。濁度を600nmで評価し、沈殿したタンパク質(エキソソーム)をブラッドフォードアッセイにより評価した。
【0133】
図3Aおよび
図3Bに示すように、上清についてはpH依存性濁度(
図3A)および沈殿タンパク質(
図3B)が得られたのに対して、対照培地については本質的に濁りまたは沈殿物は認められなかった。有効pH範囲内では、本試験における上清からの最大の濁度および沈殿タンパク質は、約pH4.75で再び得られた。
【0134】
C. 沈殿は酢酸塩に依存し、pHに依存しない
腫瘍由来エキソソームを沈殿させるうえで、pH自体よりも酢酸塩が重要であることをこれらの酸性化試験で示す。グリシンHClまたはクエン酸塩により酸性化した上清で沈殿が発生しなかったことから、沈殿は、酢酸塩の存在に依存するのであって、単に酸性化に依存するのではないことがわかった(
図4A)。
【0135】
D. 沈殿は酢酸塩に依存し、対イオンに依存しない
腫瘍エキソソームの沈殿は、酢酸塩の存在に依存するが、標準的酢酸ナトリウムは、酢酸カリウムまたは酢酸アンモニウムなどの、他の酢酸緩衝液で置き換えることができる。対イオンが無関係であることは、酢酸カリウムによる沈殿が酢酸ナトリウムによる沈殿と同等であることが示されているこれらの対照試験によって示されている。
【0136】
4T1乳癌細胞をCELLline AD組織培養システムで培養した。上清を下部の細胞含有チャンバーから回収し、透析膜により下部セルチャンバーから分離されている、上部チャンバーから培地を得た。下部チャンバーからの上清および上部チャンバーからの培地の等体積の試料を1/10容の約pH4.75の10倍酢酸ナトリウムまたは10倍酢酸カリウムと別個に混合し、30分間放置した。
【0137】
図4Bは酢酸カリウムの使用が酢酸ナトリウムの使用と区別できないことを示している。これらの2種の酢酸緩衝液を使用した場合、下部チャンバーからの上清からのエキソソームの沈殿は、明らかに目に見え、同等であった。予想通り、エキソソームが下部セルチャンバーに保持されており、大きすぎて透析膜を通過することができないので、いずれの酢酸緩衝液を用いても上部チャンバーからの培地からの沈殿は認められなかった。明らかに目に見える混濁懸濁液を遠心分離したところ、酢酸カリウムと酢酸ナトリウムとで肉眼で区別できないエキソソームのペレットが得られた。
【0138】
(実施例III)
形態学的に検証された腫瘍エキソソームの同等の収量
【0139】
本実施例では、酢酸緩衝液を使用して単離した疾患関連の、エキソソームなどの細胞外微小小胞体の収量は、該酢酸塩法がより容易で、より迅速であるにしても、一般的な超遠心分離法によるものと同等であることを示す。腫瘍エキソソームにより例示される、酢酸塩精製エキソソームは、伝統的な超遠心分離により調製されたものと形態学的に区別できず、抗原的に完全であることも示されている。
【0140】
A. 同等の収量
酢酸塩による単離および従来の100,000g超遠心分離で得られた腫瘍エキソソームの相対収量を両集団におけるalixおよびPSを評価することによって定量した。Cy3標識alix抗体によるalix(
図5A)およびFITC標識アネキシン5によるPS(
図5B)のフローサイトメトリー解析により、両方法で同様なエキソソームの量が得られることが示唆された。
【0141】
酢酸塩による単離および従来の100,000g超遠心分離で得られたタンパク質の収量を直接比較するに際して、K1735上清の同じアリコートを両方法によって単離した。さらに、100,000g超遠心分離および酢酸塩プロトコールによる上清をそれぞれ酢酸塩pH4.75および超遠心分離(溶液をpH7.5にした後)によるさらなるラウンドの単離にかけた。
【0142】
酢酸塩プロトコールによるタンパク質の収量は、超遠心分離法より約2倍高かった(167.0μg/ml対88.1μg/ml)。中和された酢酸塩上清の超遠心分離後にさらなるタンパク質は回収することができず、事実上すべてのエキソソームが酢酸塩により沈殿したことが示唆された。他方で、100,000g超遠心分離上清の酢酸塩処理によってさらに533μgのタンパク質(39.5μg/ml)が回収され、酢酸塩が非エキソソームタンパク質を非特異的に沈殿させた可能性があることが示唆された。酢酸塩による沈殿および100,000g沈殿により回収されたエキソソームのSDS−PAGEでは、酢酸塩レーンの上部におけるさらなるバンドを除いて、同様のタンパク質パターンが示された。質量分析では、酢酸塩試料におけるこの上部バンド(約160kDa)が、一部の黒色腫細胞により分泌されることが公知のタンパク質であるα2−マクログロブリン(Morganら、1984年)であることが示された。
【0143】
B16黒色腫またはTRAMP前立腺癌細胞からのエキソソームを精製するために酢酸塩による沈殿を使用した別個の試験では、α2−マクログロブリンは、得られたエキソソームに検出されなかった(実施例IV)。
【0144】
エキソソームの沈殿と関係のない酸依存性共沈の結果である可能性がある、K1735細胞からの酢酸塩による沈殿エキソソーム(acetate-precipitated exosome)におけるより高い濃度のα2−マクログロブリンに関しては、これは、100,000gで1回、中和した酢酸塩による沈殿エキソソームを洗浄することによって容易に除去することができる。実際、洗浄済みエキソソームのSDS−PAGEにより、α2−マクログロブリンの大部分が除去されたことが明らかにされた。
【0145】
B. 形態学的に区別できないエキソソーム
酢酸塩および伝統的な超遠心分離により精製された腫瘍エキソソームを、電子顕微鏡法により、また特徴的なエキソソーム関連マーカーについてウエスタンブロッティングにより解析した。酢酸塩により回収されたエキソソームが超遠心分離により収集されたエキソソームと形態学的に区別できないと判定された。両集団は、同じサイズの小胞を含有し、内腔空間を取り囲む典型的な二重層膜を有していた(
図6)。
【0146】
ウエスタンブロット解析により、両調製物は、エキソソームマーカーであるalixおよびhsp70を含有していたことが確認された。したがって、ウエスタンブロットにおける抗体への結合は、単離されたエキソソームが抗原的に完全であることを示すものである。
【0147】
(実施例IV)
寄託腫瘍細胞株からのエキソソームの単離
【0148】
この実施例では、酢酸塩による沈殿を使用して、さらなる腫瘍細胞株からの疾患関連細胞外微小胞、とりわけ腫瘍エキソソームを精製した。これらは、American Type Culture Collection(ATCC(登録商標))に対して寄託されており、したがって、比較試験のための標準として容易に入手できる腫瘍細胞株を含む。
【0149】
4T1乳癌細胞は、ATCCからCRL−2539(商標)として入手できる。B16黒色腫細胞は、ATCCからB16−F0(ATCC(登録商標)CRL−6322(商標))、B16−F1(CRL−6323(商標))およびB16−F10(CRL−6475(商標))として入手できる。トランスジェニックマウス前立腺癌細胞である、TRAMP細胞は、ATCCからCRL−2730(商標)、CRL−2731(商標)およびCRL−2732(商標)として入手できる。C4細胞は、LNCaP細胞株からのアンドロゲン感受性ヒト前立腺腺癌細胞(Wuら、1994年)であり、広く入手できる。
【0150】
それぞれATCCから得られた、4T1細胞、B16細胞およびTRAMP細胞、ならびにC4細胞をL−グルタミン(2mM)、ピルビン酸Na(1mM)、ペニシリン(100U/mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL)、非必須アミノ酸およびウシ胎児血清(10%)を補充した最少必須培地(MEM)中で別個に培養した。15mLの培地中約25x10
6個の各細胞型(4T1、B16、TRAMPおよびC4)を、上部チャンバーに250mLの培地を含有しているCELLine AD1000フラスコ(Integra Biosciences AG)の下部チャンバーに播種した(0日目)(Mitchellら、2008年)。播種の2週間後に開始して、ならし培地(約15mL)を下部チャンバーから採取し、採取は、その後は週1回継続した。毎回、コンパートメントを15mLのリン酸緩衝食塩水(PBS)で1回洗浄し、ならし培地と合わせた。次いで、新鮮な培地を下部チャンバーに加えた。上部チャンバーは、100mLの使用済み培地を新鮮な培地で置き換えることにより週1回補充した。
【0151】
採取したならし培地(PBS洗浄液と合わせた場合、合計約30mL)から逐次的遠心分離によって細胞、細胞デブリおよび大きい膜小胞を除去した。すなわち、細胞ならし培地を最初に500gで30分間(または250gで10分間)遠心分離し、上清を収集し、次いで、当上清を12,000g〜13,000gでさらに30分間遠心分離した。これらのステップにより、澄明にしたまたは清澄にした上清が提供される。
【0152】
約25x10
6個の4T1細胞、B16細胞、TRAMP細胞、C4(またはK1735P)細胞を上記の条件下で培養し、約2週間の培養の後、および/またはその後は週1回の間隔で合計約30mLのならし培地(PBS洗浄液と合わせた場合)を採取し、氷上で1/10容の酢酸ナトリウム緩衝液(1.0M;pH4.75)と約30〜60分間混合することによって澄明にした上清を沈殿させ、2,000g〜5,000gで10分間1回または2回遠心分離することにより、本発明は、約75〜125μg/mLのタンパク質濃度を有する実質的に精製されたエキソソーム集団を提供する。
【0153】
このプロトコールは、K1735P腫瘍細胞、4T1腫瘍細胞、B16腫瘍細胞、TRAMP腫瘍細胞およびC4腫瘍細胞に対して使用して成功を収めた。そのような細胞から精製された腫瘍エキソソームをFACSによっても解析したところ、実施例VIIおよび実施例IXで詳細に記載するように、ホスファチジルセリンについて陽性であることが示された。
【0154】
少なくとも4T1細胞、B16細胞およびTRAMP細胞がATCCに対して寄託されているので、したがって、これらの細胞を、記載したプロトコールを使用する比較試験のための標準として使用することができる。B16細胞およびTRAMP細胞からの腫瘍エキソソームを精製するために酢酸塩による沈殿を使用した際に、α2−マクログロブリンは、得られたエキソソームに検出されなかった(K1735細胞と対照的に)。B16細胞およびTRAMP細胞がATCCに対して寄託され、酢酸塩による沈殿法の使用が異質の入タンパク質または混入タンパク質を本質的に含まない精製エキソソームをもたらすので、B16およびTRAMP細胞は、本発明の酢酸塩による沈殿法を使用する比較試験のための参照例または標準としてとりわけ有用であると考えられる。
【0155】
(実施例V)
ヒト腫瘍エキソソームの単離
【0156】
この実施例は、酢酸緩衝液の使用が、ヒトの疾患関連の、エキソソームなどの細胞外微小小胞体、とりわけヒト患者からの腫瘍由来エキソソームを単離するのに有効であることを確認するためのデータを提供する。
【0157】
A. 組織培養からのヒト腫瘍エキソソーム
エキソソームは、ヒト腫瘍細胞から得られた組織培養上清から単離した。腹水から単離したヒト卵巣癌細胞をCELLine AD1000フラスコの下部セルチャンバー内で培養した。下部の細胞含有コンパートメントからのならし培地を週1回採取した。それぞれ500gおよび12,000gでの逐次的遠心分離によってエキソソーム含有培地から細胞、細胞デブリおよび大きい膜小胞を除去した。1/10容の酢酸Na緩衝液(1.0M;pH4.75)を澄明にした上清と混合し、氷上に30〜60分間放置し、次いで37℃にさらに5分間移行させた。混濁懸濁液を5,000gで10分間遠心分離し、得られたペレットを0.1M酢酸Na緩衝液で1回洗浄した。懸濁液を再び遠心分離し、ペレットをpH7.5の2mM EGTAを含有するヘペス緩衝食塩水で「可溶化」した。精製エキソソームは、4℃で保存した。
【0158】
B. 患者からのヒト腫瘍エキソソーム
エキソソームは、卵巣癌を有するヒト患者から得られた腹水からも単離した。腹水(約500mLまで)を500gおよび12,000gで遠心分離して、細胞および細胞デブリを除去した。1/10容の酢酸Na緩衝液(1.0M;pH4.75)を氷冷した澄明化腹水に30分間〜1時間加えた。沈殿エキソソームを遠心分離(5,000gで15分間)により収集した。ドナーによって、収量は、30〜50μg/mL体液の範囲にあった。
【0159】
(実施例VI)
血液試料からの腫瘍エキソソーム単離
【0160】
本実施例では、酢酸緩衝液の使用は、腫瘍エキソソームを単離することにより例示される、ヒト全血からの疾患関連の、エキソソームなどの細胞外微小小胞体の単離にも適用することができることを示す。
【0161】
EDTA中に採取した2.5mLのヒト全血を0.5mLの1.0mg/mL精製腫瘍エキソソーム(合計0.5mg)と混合した。次いで、血液を遠心分離し、血漿を収集した。血漿の半分を氷上に保持し、他の半分を56℃で3分間加熱して、フィブリノゲンを沈殿させた。両試料を500gで10分間遠心分離し、上清を収集した。1/10容の酢酸Na緩衝液(pH4.75で1.0M)を加えた。試料を0℃で60分間インキュベートした後、試料を500gで15分間遠心分離し、ペレット中のエキソソームをpH7.5の2mM EGTAを含有するヘペス緩衝食塩水で可溶化し、タンパク質を定量した。
【0162】
500μgの腫瘍エキソソームをドープした全血からのエキソソームの回収の本試験では、全血漿からの総タンパク質の回収量は、340μgであり、これは、腫瘍エキソソームおよび酢酸塩による沈殿フィブリノゲンを含む。加熱した、フィブリノゲンを含まない血漿からの総タンパク質の回収量は、201μgであり、これは、補正された総腫瘍エキソソーム回収量を表す。これは、腫瘍エキソソームの約40%が回収されている(500μgのドープされたエキソソームから201μg)ことを示す。
【0163】
別の試験では、精製エキソソームを細胞不含有血漿に直接添加して上記のプロトコールを繰り返したが、260μgの精製腫瘍エキソソームを添加した。全血漿からのタンパク質の回収量は、405μgであり、これは、腫瘍エキソソームおよび酢酸塩による沈殿フィブリノゲンを含む。加熱した、フィブリノゲンを含まない血漿からのタンパク質の回収では、本質的に100%の腫瘍エキソソームの回収率が示された(実際の値は、288μgのタンパク質であり、これは、この最初の試験の実験誤差の範囲内にあり、かつ/またはさらなる血漿タンパク質の沈殿を示し得る)。
【0164】
これらの試験から、回収されたタンパク質の差が血漿試料中のフィブリノゲンの沈殿に主として起因することがわかる。実際、プレインキュベーションステップ(56℃で3分間;Millarら、1971年;Marxら、2008年)によるフィブリノゲンの除去により、酢酸塩による沈殿試料中の異質なタンパク質のレベルが、エキソソームの損失を本質的に伴わない、血清試料について得られたものと同等のレベルにまで減少した。α2−マクログロブリンに関して実施例IIIで考察したように、腫瘍エキソソーム調製物中の任意の異質なタンパク質は、体積が酢酸塩により、操作可能な体積に減少したならば、超遠心分離によって容易に除去することができる。
【0165】
(実施例VII)
腫瘍由来エキソソームの選択的単離
【0166】
この実施例では、正常細胞からのエキソソームと対照的に、腫瘍由来エキソソームによって例示されるように、疾患関連の、エキソソームなどの細胞外微小小胞体を沈殿させる酢酸緩衝液の特異性を示す。これは、実験技術における、ならびに診断検査およびキットに重要な新たな用途を提供する。
【0167】
ヒト患者から得られた卵巣癌(腫瘍)細胞および同じ患者からの正常中皮細胞を組織培養で維持した。この最初の試験では、エキソソームは、100,000gで1時間の1ステップの超遠心分離によって各組織培養上清から回収した。超遠心分離ペレットは、遠心沈殿エキソソームおよび残留組織培養培地を含有していた。
【0168】
超遠心分離ペレットを食塩水に再懸濁し、ブラッドフォードアッセイによりタンパク質を定量した。特異的ホスファチジルセリン(PS)マーカーである、FITC標識アネキシン5を用いたFACS解析によりエキソソーム表面上のPSの存在を評価するために、再懸濁材料のそれぞれからのアリコートを残しておいた。再懸濁材料のそれぞれからの別個のアリコートを酢酸緩衝液(0.1M、pH4.75)で0℃で1時間処理した。酢酸塩による沈殿ペレットを食塩水に再懸濁して、最初の体積とし、ブラッドフォードアッセイによりタンパク質を再び定量した。結果を表1に示す。
【0169】
【表1】
【0170】
表1に示すように、酢酸緩衝液は、卵巣癌細胞からの腫瘍由来エキソソームを特異的に沈殿させ、正常細胞からのエキソソームは、事実上回収されない。1回の超遠心分離ステップのみをこの最初の試験で使用したため、エキソソーム懸濁液は残留組織培地を含有していたことも注意すべきである。酢酸塩による沈殿プロトコールは、腫瘍エキソソーム特異的であるので、卵巣癌細胞について引用した回収率(%)は、過小評価である。
【0171】
残しておいたアリコートを使用して、正常中皮細胞および卵巣癌細胞からの上清の超遠心分離によって得られたエキソソームをFITC−アネキシンVラテックスビーズに結合させ、FACS解析にかけて、エキソソーム表面上のPSの存在を評価した。予想通り、腫瘍由来エキソソームは、それらの表面上にPSを有していた。これは、
図7Aにおいて左方にシフトしている赤線(正常中皮細胞由来エキソソーム)と比較して、青線(卵巣癌由来エキソソーム)が右方にシフトしていることによって示されている。
【0172】
関連試験では、酢酸塩による沈殿を使用して4T1乳癌細胞およびB16黒色腫細胞から精製されたエキソソームもFACS解析にかけて、表面PSを検出した。それぞれ
図7Bおよび
図7Cに示すように、4T1細胞およびB16細胞の両方からの精製エキソソームが実際にPS陽性である。
【0173】
したがって、本試験は、腫瘍由来エキソソームがそれらに由来するPS陽性腫瘍細胞を反映していることから、酢酸緩衝液が、該腫瘍由来エキソソームの表面上に存在する、負に荷電したPSに関与する電荷の中和によって作用するという本発明者らの理論を確認するものである。正常細胞では、PSは、原形質膜の内部リーフレットに保持されており、そのため、PSは正常細胞に由来するエキソソームの表面に大部分存在しない。
【0174】
(実施例VIII)
PS陽性エキソソームの選択的単離
【0175】
本実施例では、疾患関連および腫瘍由来細胞外微小小胞体およびエキソソームなどの、PS陽性細胞外微小小胞体およびエキソソームを沈殿させることに関する酢酸緩衝液の特異性が、エキソソームには適用されるが、PS陽性リポソームには適用されないことを示す。
【0176】
第1の試験では、腫瘍由来エキソソームについて使用して成功を収めた、酢酸塩による単離法を純粋なホスファチジルセリンおよびホスファチジルコリンから生成させたPS陽性リポソームに適用した。上記の実施例に示したように、酢酸緩衝液は、表面上にPSを有する腫瘍由来エキソソームを沈殿させるのに有効である。対照的に、表面上にPSを有するリポソームの同等の試料に同じ方法論を適用した場合、肉眼的に検出できる沈殿は生じなかった。
【0177】
第2の試験では、PS陰性およびPS陽性リポソーム集団を蛍光脂質で標識し、沈殿したリポソームの量を定量することを可能にした。本試験では、酢酸緩衝液が、意味のある量のリン脂質リポソームを、これらがPS陽性であった場合でさえ、沈殿させないことが確認された。
【0178】
この第2の試験では、蛍光リポソームの次の2つの集団を調製した。1つは、ホスファチジルコリン(PC)からのものであり、もう1つは、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルセリンの混合物(PC/PS)からのものであった。PCリポソームは、1mgのホスファチジルコリンを0.1μgの蛍光成分であるN−ローダミン−ホスファチジルエタノールアミン(N−rho−PE)とCHCl
3中で混合することによって調製した。溶媒を蒸発させ、乾燥脂質を1.0mLのPBS中で20℃で30分間再水和した。水和脂質混合物をボルテックスし、次いで超音波処理して、小単層小胞を得た。PC/PSリポソームは、CHCl
3中0.66mgのPCおよび0.33mgのジオレオイルホスファチジルセリン(32mol%)を0.1μgのN−rho−PEと混合した出発材料を除いて、同じ技術により調製した。
【0179】
別個のPCおよびPC/PSリポソーム調製物を5,000gで5分間遠心分離して、任意の大きい沈殿性リポソームを除去した。上清を取り出し、各調製物からの0.4mLを2つのチューブに分割して加えた。0.5mLのPBSを各チューブに加えた後、0.1mLのPBSまたは酢酸緩衝液(1.0M;pH5.7)をそれぞれ加えた。チューブを混合し、氷上で1時間インキュベートし、ボルテックスし、0.1mLのアリコートを取り出して、総蛍光を決定した。次いで、各チューブを5,000gで5分間遠心分離し、上清からの0.1mLのアリコートを取り出して、残留(非沈殿)蛍光を決定した。
【0180】
結果を
図8に示す。
図8により、酢酸緩衝液は、かなりの量のPSを含有する場合でさえも、リン脂質リポソームを沈殿させないことが示されている。
【0181】
総合すると、本実施例のデータから、酢酸緩衝液がリン脂質小胞を沈殿させるためにPSが必要であるが、十分ではないことが示され、PS陽性微小小胞体およびエキソソーム、とりわけ疾患関連および腫瘍由来微小小胞体およびエキソソームを単離することに関する特異性は、酢酸緩衝液と、PSが非脂質膜成分、とりわけ膜タンパク質と結合して表面上に発現する特有の微小小胞体/エキソソームの構造(composition)との相互作用に起因することが示唆される。これは、微小小胞体およびエキソソームが、細胞由来および/または細胞分泌微小小胞体であって、合成脂質小胞ではないという理解を裏付けるものである。
【0182】
(実施例IX)
混合物からのPS陽性腫瘍エキソソームの分離
【0183】
この実施例では、細胞外微小小胞体およびエキソソームの混合物を含有する試料から、腫瘍由来エキソソームよって例示される、PS陽性の、エキソソームなどの細胞外微小小胞体を選択的に単離する、酢酸塩による沈殿法の能力を強調する。腫瘍由来エキソソームを沈殿させる酢酸緩衝液の特異性が、エキソソーム膜外部リーフレット上のPSの発現に依存することも示す。
【0184】
PS陽性エキソソームは、PS発現4T1乳癌細胞から、PS陰性エキソソームは、対応する細胞から得た。エキソソームは、遠心分離により精製し、FITC−アネキシンを用いたFACS解析によりPS陽性またはPS陰性であることを確認した(
図9A)。
【0185】
図9Aの左パネルはアルデヒドで活性化したラテックスビーズに共有結合させたアネキシン5(陽性対照)およびBSAでブロッキングしたラテックスビーズ(陰性対照)の形態の陽性および陰性対照を示している。
図9Aの右パネルに示すように、異なるエキソソーム集団をラテックスビーズに結合させ、FITC−アネキシン5で標識した場合、4T1乳癌細胞からのPS陽性エキソソームは、アネキシン5ビーズの陽性対照を反映するのに対して、PS陰性エキソソームは、BSA対照のプロファイルを反映し、それらが実際にPS陰性であることを示す。
【0186】
さらなる超遠心分離の後、PS陰性エキソソーム集団をN−ローダミン−ホスファチジルエタノールアミン(N−Rho−PE、赤色蛍光)で標識し、PS陽性エキソソーム集団をN−NBD−ホスファチジルエタノールアミン(N−NBD PE、緑色蛍光)で標識した。両集団を遠心分離して、組み込まれていない残留プローブを除去し、試料をFACS解析のために残しておいた。
【0187】
次いで、各エキソソーム集団を別個に、ならびにPS陰性およびPS陽性エキソソームの両方の混合集団を1/10容の1M酢酸塩(pH4.75)とともに氷上で1時間インキュベートした。懸濁液を2,000gで5分間遠心分離し、リン酸緩衝食塩水で再可溶化し、FACS解析のためにアルデヒドラテックスビーズに結合させた(
図9B)。
【0188】
図9Bは酢酸塩処理前の個別集団および混合集団の強い蛍光強度を示している(上部横列)。すなわち、PS陰性エキソソームは、強い赤色蛍光を示し(上部左パネルの左上隅)、PS陽性エキソソームは、強い緑色蛍光を示し(上部中央パネルの右下隅)、エキソソームの混合集団は、ダブルポジティブであり、赤色および緑色蛍光の両方のシフトを有する(上部右パネルの右上隅)。しかし、酢酸塩による沈殿の後には、PS陽性エキソソーム集団のみが回収された(
図9B、下部横列)。赤色のPS陰性集団は、沈殿後に存在しなかった、すなわち、酢酸塩で沈殿しなかった(下部左パネルにおける赤色蛍光はなし)のに対して、緑色のPS集団は、酢酸塩による沈殿物から回収された(下部中央パネルにおける強い緑色蛍光)ことがわかる。非常に重要なことに、PS陽性エキソソームのみが混合調製物から回収された(下部右パネルにおける強い緑色蛍光、対応する上部右パネルで認められた赤色蛍光はなし)。
【0189】
したがって、これらのデータは、腫瘍エキソソームの酢酸塩媒介沈殿がエキソソーム表面におけるPSの発現に依存することを明確に示している。
【0190】
(実施例X)
ウイルスにおけるホスファチジルセリンの発現および重要性
【0191】
上記の実施例で、ホスファチジルセリン(PS)の存在は、正常細胞とは対照的に、腫瘍由来細胞外微小小胞体およびエキソソームを選択的に単離するための酢酸緩衝液の使用における重要な識別因子であることが示されている。本実施例では、正常細胞の表面には存在しないPSがウイルス感染細胞およびウイルス上に露出した状態になり、ウイルス感染において重要な役割を有することを実証する本発明者らおよび同僚によるデータをまとめる。
【0192】
ビリオンおよびウイルス感染細胞の表面上のPSの存在を実証するのに使用した方法は、フローサイトメトリー/FACS解析、ELISA、ビーズによる枯渇、免疫金標識、PCR(RT−PCRおよびQ RT−PCRを含む)および免疫蛍光顕微鏡法であった(表2Aおよび表2B)。これらの方法は、以下で記載するように実施した。
【0193】
PSに結合するまたはPSを標的とする抗体(以下で「PSを標的とする抗体」と呼ぶ)を使用する際に、次の2つのカテゴリーの抗体が利用できる:PSに直接結合するもの(例えば、Ranら、2002年の9D2抗体)およびPSに間接的に、すなわち、β
2−糖タンパク質Iなどの血清タンパク質を介して結合するもの(例えば、Huangら、2005年の3G4抗体)、この場合、抗体、血清タンパク質およびPSが一緒に強固に結合した複合体を形成する。以下の試験では、すべての結合するステップは、間接結合抗体を含む、両方の種類のPSを標的とする抗体の有効な結合を保証するために血清(または血清タンパク質も使用することができる)の存在下で実施した。
【0194】
A. フローサイトメトリー/FACS解析
許容細胞にウイルスを感染させ、感染後所定の時点に細胞をPSを標的とする抗体(一次抗体)とともに、続いて一次抗体(抗マウスまたは抗ヒト)を検出するための二次抗体とともにインキュベートした。この場合、二次抗体をFITCまたはTexas Redなどの蛍光体とコンジュゲートさせた。次いで細胞をホルムアルデヒドで固定し、フローサイトメーターにより解析して、感染細胞への一次抗体の結合に起因する蛍光事象を検出した。ウイルスに感染しなかった細胞を陰性対照として使用して、ウイルス感染に関連しないバックグラウンドPS外在化を決定した。
【0195】
B. ELISA(エボラ以外)
PSを標的とする抗体(一次抗体)をポリスチレンマイクロタイタープレート上に被覆した。次いで、プレートを洗浄し、ウシ血清アルブミンまたは非熱不活性化ヒト血清のいずれかでブロッキングして、プレート上の非特異的結合部位をブロックし、次いで十分に洗浄した。ウイルスの希釈物をプレートに加え、室温で3時間結合させた。次いで、プレートを洗浄し、ビオチンコンジュゲートウイルスタンパク質特異抗体を加え、洗浄した後、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼを加えることによって抗体被覆プレートに付着したウイルスを検出した。ウイルスタンパク質のレベルに対応するペルオキシダーゼ活性の定量は、分光光度計を利用して比色法により実施し、対照標準と比較した。
【0196】
C. ELISA(エボラ)
生エボラザイールウイルス(ME718株;EBOV)をポリスチレンマイクロプレート上に被覆した。PSを標的とする抗体(ヒトIgG)の希釈物をEBOV被覆プレートに加え、37℃で1〜2時間結合させた。次いで、HRPコンジュゲートヤギ抗ヒトIgGを加えることによって結合した、PSを標的とする抗体を検出した。結合した、PSを標的とする抗体のレベルに対応するペルオキシダーゼ活性の定量は、分光光度計を利用して比色法により実施し、アイソタイプ適合対照抗体と比較した。
【0197】
D. ビーズによる枯渇
抗マウス抗体または抗ヒト抗体を被覆した磁気ビーズを洗浄し、次いで、それぞれマウスまたはヒトのPSを標的とする抗体とともにインキュベートした。次いで、被覆磁気ビーズを精製ウイルスとともにインキュベートした。磁気ビーズを除去し、許容細胞における標準プラークアッセイ手順によって溶液中の残存プラーク形成単位を決定した。
【0198】
E. 免疫金標識
感染細胞の上清からのビリオンをポリエチレングリコール(PEG)沈殿によって沈殿させ、スクロースクッションによる超遠心分離により単離した。PSを標的とする抗体による固定化ウイルスへの結合は、粒子を、6nm金粒子にコンジュゲートした、PSを標的とする抗体および10nm金粒子にコンジュゲートしたウイルス特異抗体とともにインキュベートすることによって決定した。透過型電子顕微鏡法のために試料を処理して、両サイズの金粒子に対して陽性のウイルス粒子を視覚化した。
【0199】
F. PCR、RT−PCR、Q RT−PCR
PSを標的とする抗体をポリスチレンマイクロタイタープレート上に被覆した。次いで、プレートを洗浄し、ウシ血清アルブミンおよび非熱不活性化ヒト血清を加えて、プレート上の非特異的結合部位をブロックし、次いで十分に洗浄した。ウイルスの希釈物を加え、室温で3時間結合させた。次いで、プレートを洗浄し、抗体被覆プレートに付着したウイルスからのウイルス核酸(DNAまたはRNA)を単離し、精製した。ウイルスゲノムの定量は、ウイルス特異的配列プライマーを使用してPCR/RT−PCR、Q RT−PCRにより実施した。
【0200】
G. 免疫蛍光顕微鏡法
カバーガラスに付着している細胞にウイルスを感染させ、生細胞をPSを標的とする抗体または対照抗体とともにインキュベートした後、緩衝液で洗浄することにより非結合抗体を除去することによって、感染細胞へのPSを標的とする抗体または対照抗体の結合を行った。PSを標的とする抗体または対照抗体の局在化は、ビオチンコンジュゲート二次抗体とのインキュベーションの後のFITCコンジュゲートストレプトアビジンとのインキュベーションにより決定した。次いで、細胞をTriton X−100により透過性にし、Alexa−594(赤色)をコンジュゲートしたウイルス特異抗体によりウイルスを検出した。カバーガラスを核染色液(DAPI)でマウントし、スライドを、各蛍光シグナルについて共焦点顕微鏡法により調べた。
【0201】
上記の方法を使用して、表2Aおよび表2Bに示すように、広範囲のウイルス科のウイルスおよびウイルス感染細胞の表面上にPSが存在することを実証した。さらに、ウイルスおよびウイルス感染細胞上のそのようなPSの露出が単に偶発的なものでなく、ウイルス感染における重要な役割を有することを実証するために、本発明者らおよび同僚によるデータを表2Cおよび表2Dに示す。これは、in vitroおよびin vivoの両方での様々なウイルス科による感染を阻害するためのPSを標的とする抗体の使用によって示される。
【0202】
【表2A】
【表2B】
【表2C】
【表2D】
【0203】
(実施例XI)
酢酸緩衝液を使用したウイルス微小小胞体の単離
【0204】
本実施例では、酢酸緩衝液を使用してエキソソームなどの細胞外微小小胞体を単離するための方法が、ウイルス感染細胞およびウイルス培養物からのエキソソームなどの細胞外微小小胞体を沈殿させるのにも有効であることを示す。
【0205】
約2.5x10
8個のベロ細胞をウイルス感染培地(DMEM、抗生物質および抗真菌剤を含む2%ウシ胎児血清)中で培養し、3つの集団に均等に分割した(集団ごとに合計1000ml培地、集団ごとに約25個のT225フラスコ中に分散させた)。2日で約2倍加後に、第1の細胞集団を陰性対照として偽感染させ、第2の細胞集団をサル空胞形成ウイルス40(SV40)Pa−57株、LN L1412Aに0.1感染多重度(MOI)で感染させ、第3の細胞集団を単純ヘルペスウイルス−1(HSV−1)F株、LN H1411Bに0.05MOIで感染させた。SV40は、Polyomaviridae科の非エンベロープウイルスであり、HSV−1は、Herpesviridae科のエンベロープウイルスである。
【0206】
偽感染体、SV40感染体およびHSV−1感染体をそれぞれ感染後4、7および3日目に採取した。細胞および細胞デブリを低速遠心分離(1,000gで30分間)により最初に除去し、大きい粒子を12,000gで30分間のさらなる遠心分離によりそれらの上清から除去した。感染体のそれぞれからの上清のアリコートを感染性ウイルスを定量するために残しておいた。
【0207】
偽感染体、SV40感染体およびHSV−1感染体からの澄明にした上清のそれぞれを1/10容の酢酸ナトリウム(1.0M;pH4.75)と別個に混合し、氷上で60分間放置し、次いで12,000gで30分間遠心分離した。上記偽、SV40およびHSV−1上清をそれぞれ別個に保持し、1M NaOHで中和した。偽感染体、SV40感染体およびHSV−1感染体からの酢酸塩による沈殿ペレットを約2mlの最終体積の再懸濁緩衝液(10mM Tris、pH7.5、115mM NaCl、1mM EGTA)に、酸性が完全に中和されるように注意を払いながら(必要な場合、さらなる懸濁および遠心分離ステップによることを含む)、別個に再懸濁した。これらの酢酸塩による沈殿による上清および再懸濁ペレットのアリコートを感染性ウイルスを定量するために残しておいた。
【0208】
偽感染体、SV40感染体およびHSV−1感染体に適用した酢酸塩による沈殿からの視覚的結果をそれぞれ
図10A、
図10Bおよび
図10Cに示す。わかるように、偽感染体(
図10A)からは肉眼で見えるペレットはほとんど存在しないが、酢酸塩による沈殿プロトコールは、SV40感染体(
図10B)およびHSV−1感染体(
図10C)の両方からのかなり大きい、肉眼で見えるペレットをもたらした。
【0209】
(実施例XII)
単離したウイルス微小小胞体はウイルスをほとんど含まない
【0210】
この実施例では、ウイルス感染細胞およびウイルス培養物から酢酸塩による沈殿によって得られたエキソソームなどの細胞外微小小胞体が感染性ウイルスを本質的に含まないことを示す。
【0211】
上記の実施例の試験では、酢酸塩による沈殿の前の感染性SV40およびHSV−1ウイルスの量、ならびに酢酸塩による沈殿の後の上清およびペレット中に残存している感染性ウイルスの量は、感染能を試験するTCID
50アッセイを使用して定量した。TCID
50は、感染性ウイルス力価の尺度である。このエンドポイント希釈アッセイは、接種した組織培養細胞(この場合、ベロ細胞)の50%に細胞変性効果をもたらすのに必要なウイルスの量を定量するものである。TCID
50とプラーク形成単位(PFU)との理論的関係は、1TCID
50が0.69PFUに等しいことである。結果を表3に示す。
【0212】
【表3】
【0213】
表3に示すように、1000mlのSV40含有培地は、合計5.8x10
11IUのウイルスを有していたことがわかる。酢酸塩による沈殿にかけた後、上清とペレットを合わせたものにおけるウイルスの量が2.15x10
9であったことから、5.7785x10
11IUのSV40ウイルスがその手順中に除去され、かつ/または不活性化したことが示された。したがって、感染性SV40ウイルスの99.63%が酢酸塩による沈殿中に除去され、かつ/または不活性化した。酢酸塩による沈殿の後に残存している0.37%の感染性SV40ウイルスのうち、92.5%が上清に存在し、そのため、最初の出発材料のうち、0.028%の感染性SV40ウイルスのみがペレットに存在していた。
【0214】
同様に、HSV−1について表3に示すように、1000mlのHSV−1含有培地は、合計5.8x10
10IUのウイルスを有していた。酢酸塩による沈殿にかけた後、上清とペレットを合わせたものにおけるウイルスの量が1.063x10
9であったことから、5.694x10
10IUのHSV−1ウイルスがその手順中に除去され、かつ/または不活性化したことが示された。この場合、感染性HSV−1ウイルスの98.17%が酢酸塩による沈殿中に除去され、かつ/または不活性化した。酢酸塩による沈殿の後に残存している1.83%の感染性HSV−1ウイルスのうち、93.7%が上清に存在し、そのため、最初の出発材料のうち、0.11%の感染性HSV−1ウイルスのみがペレットに存在する。
【0215】
目的が酢酸塩による沈殿法によりウイルス由来エキソソームおよび/または微小小胞体を調製することであり、したがって、
図10Bおよび
図10Cで観察される大きいペレットの両方が感染性ウイルスを本質的に含まないことが有利である。
【0216】
(実施例XIII)
単離したウイルス微小小胞体のさらなる特徴付け
【0217】
本実施例では、酢酸塩による沈殿を使用して単離したウイルス由来細胞外微小小胞体およびエキソソームの予備的特徴付けの結果を報告する。
【0218】
A. 勾配精製
異なる用語法を使用しているが、SzilagyiおよびCunningham(1991年)は、今やウイルス由来エキソソームまたは微小小胞体と称する非感染性HSV−1膜封入粒子の存在を報告した。HSV−1の5〜15%Ficoll(登録商標)勾配精製を使用して、彼らは、2つのバンド:鋭い下側のバンドおよびより広がった上側のバンド、の粒子を観察した(SzilagyiおよびCunningham、1991年における
図1を参照)。下側のバンド(重い粒子またはH粒子と呼ぶ)は、ほぼもっぱらHSV−1ビリオンを含有すると報告されたが、上側のバンドは、0.1〜0.5%の感染性H粒子による交差汚染があるが、主として非感染性膜封入粒子(軽い粒子またはL粒子と呼ぶ)を含有すると言われた(SzilagyiおよびCunningham、1991年における表1を参照)。L粒子は、外観がビリオンに類似しているが、ウイルスヌクレオキャプシドを欠き、感染性ではないと報告された。今やウイルス由来微小小胞体またはエキソソームと称するのは、これらの「L粒子」である。
【0219】
SzilagyiおよびCunningham(1991年)技術に一般的に従って、HSV−1感染体の酢酸塩による沈殿からの再懸濁ペレットの試料を5〜15%Ficoll(登録商標)勾配に適用した。再懸濁ペレット材料を、改変培地中に懸濁した5〜15%Ficoll(登録商標)400の35mlプレフォーム勾配上に重層し、26,000gで4℃で2時間遠心分離した。5%Ficollフラクション(F5)の上部の1つのバンドの存在が15%フラクション(F15)の上部の1つのバンドとともに認められ、両方が肉眼で見えた。本試験におけるF15バンドがより広がっていたことを除いて、これらは、SzilagyiおよびCunningham(1991年)によって報告された軽いバンド(F5)および重いバンド(F15)に類似している。
【0220】
2つのバンドにおける物質は、注射器の針でチューブの側面を刺すことによって別個に取り出した。上記と同じTCID
50アッセイを使用して感染性ウイルスを定量するためにアリコートを採取した。Ficoll(登録商標)勾配上に加えた感染性ウイルスのうち、約0.2%のみが軽いF5フラクションから回収された。
【0221】
B. FACS解析
偽感染体およびSV40感染体の酢酸塩による沈殿からの再懸濁ペレット、ならびにHSV−1酢酸塩による沈殿のFicoll(登録商標)分離からの2つのフラクション(F5およびF15)の試料を次にFACS解析にかけた。異なるフラクション(それぞれ15μgタンパク質)をラテックスビーズに結合させ、以下の検出剤を使用してFACSにより解析した。
【0222】
SV40ウイルス抗原については、主要キャプシドタンパク質であるSV40 VP1に対するウサギポリクローナル抗体を使用し、HSV−1ウイルス抗原については、ビリオン(H)およびいわゆるL粒子の両方に存在することが公知である表面糖タンパク質であるHSV gBに対するマウスモノクローナル抗体を使用した。蛍光プローブであるアロフィコシアニン(APC)にコンジュゲートした抗ウサギおよび抗マウス抗体をそれぞれSV40抗体およびHSV−1抗体を検出するために使用した。フィコエリスリン(PE)にコンジュゲートした抗CD63抗体を微小小胞体またはエキソソームを検出するために使用した。その理由は、CD63がエキソソームに存在する膜結合タンパク質であるからである。FITCにコンジュゲートしたアネキシンVをPSを検出するために使用した。陰性対照には、BSAラテックスビーズおよびPEまたはAPCにコンジュゲートしたアイソタイプ対照抗体を含めた。
【0223】
偽感染体(標識ベロ)、SV40感染体ならびにHSV−1感染体からのF5およびF15フラクションからの酢酸塩ペレットのFACS解析による比較結果を
図11A、
図11Bおよび
図11Cに示す。
図11Aから、酢酸塩による沈殿試料がそれぞれのウイルス抗原(HSV gBおよびSV40 VP1)について陽性のままであることがわかる。偽感染体から決定したバックグラウンドと比較して、SV40およびHSV−1酢酸塩による沈殿物のそれぞれが、エキソソームマーカーCD63(
図11B)およびアネキシンV結合(
図11C)について示されたPSについても陽性である。重いバンド(F15)および軽いバンド(F5)にさらに分画したHSV−1再懸濁酢酸塩ペレットについては、CD63およびPSの両方は、F5フラクションにおいて同定され、これは、文献(SzilagyiおよびCunningham、1991年)に報告されているL粒子と一致している。
【0224】
総合すると、したがって、これらのデータは、エンベロープウイルスおよび非エンベロープウイルスの両方に感染した細胞からの本質的に非感染性のPS陽性細胞外微小小胞体およびエキソソームの単離と一致している。
【0225】
本明細書で開示し、請求する組成物および方法のすべては、本開示に照らして、過度の実験なしに作製し、実施することができる。本発明の組成物および方法を好ましい実施形態に関して記載したが、その変形形態は、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、組成物および方法ならびに本明細書で記載した方法のステップまたは一連のステップに適用することができることは、当業者には明らかである。より具体的には、化学的および生理学的の両方に関連するある特定の作用物質は、同じまたは類似の結果が得られる限りでは、本明細書に記載した作用物質の代わりに用いることができることは、明らかである。当業者に明らかなすべてのそのような類似の代用および修正は、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の精神、範囲および概念の範囲内にあるとみなされる。
【0226】
参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書に記載するものを補足する例としての手順または他の詳細を提供している限り、参照により本明細書に特に組み込む。
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