(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
規定量の核酸を核酸含有試料から単離及び/又は精製するための核酸結合相の使用であって、前記核酸結合相が、少なくとも1個のプロトン化可能基を有する複数の核酸結合リガンドを有し、前記核酸結合リガンドが、官能基または前記複数の核酸結合リガンドで官能基化可能な基を含む担体に結合しており、
前記担体に結合した前記核酸結合リガンドは不足状態にあり、前記担体上の前記官能基または前記複数の核酸結合リガンドで官能基化可能な基のうちの50%以下が、複数の核酸結合リガンドで官能基化される
ことを特徴とし、
前記核酸結合リガンドは、モノアミン及びジアミンからなる群から選択され、溶出pHは前記結合pHよりも高く調整され、核酸結合相の量は、前記試料中の前記核酸が、使用される前記核酸結合相の結合能よりも過剰であるように選択される、
核酸結合相の使用。
【背景技術】
【0002】
核酸を精製及び単離するための種々の方法が従来技術で公知である。これらは、フェノール−クロロホルムの使用、塩析技術、イオン交換体及びシリカ粒子の使用を含む。公知の核酸精製方法は、いわゆる「Charge−Switch法」である。これによれば、第1のpHの核酸結合相を核酸含有試料と接触させる。ここで、核酸結合相は正電荷を有する。これは、負に帯電した核酸と相の結合を促進する。核酸の放出/溶出では、Charge−Switch原理によれば、第2のpHが確立され、それは、正電荷を反転させる、すなわち中和するために、核酸結合相のpKs値よりも高い。これは、核酸結合相からの結合核酸の脱離を促進する。
【0003】
多数の分析技術及び生物学的方法では、一定の、すなわち規定の量の核酸を使用する必要がある。異なる出発材料(試料)から単離又は増幅された核酸量は、制御が困難な幾つかの要因に左右され、その結果、収率は方法及び材料に応じて広範に変動し得る。単離された核酸を使用して後続の実験を類似条件下で実施する場合、概して、これは、得られた核酸の定量化、次いで核酸の濃度又は量の指定値への調節、したがって正規化を必要とする。多数の標準化プロセス、特にプロセス自動化では、再現性のある結果を得るために、かかる正規化は必須であることが多い。
【0004】
このため、精製試料中の核酸を定量化するための多数の方法がある。通常の定量化方法の一例は、試料中のDNA量の分光光度測定である。試料の核酸濃度の測定に従って、次いで濃度を均一に調節することができる。核酸を定量化するための別の公知の方法は、挿入染料、例えば、臭化エチジウム、SYBR Green又はPicogreenに基づく。濃度は、測定値を検量線と比較することによって決定することができる。
【0005】
上記分光測定定量化技術又は蛍光に基づく定量化技術に加えて、均一濃度の核酸を異なる出発材料から調製可能とされる種々の精製技術も従来技術で公知である。例は、Promega製MagneSil−Kit又はInvitrogen製SequalPrep−Kitである。
【0006】
Promega製MagneSil−Kitは、例えば、ゲノムDNAを全血から単離するのに使用される。このキットは、カオトロピック塩条件下でのDNAとシリカ被覆常磁性粒子の結合に基づく。その結果、通常、精製ゲノムDNA1μg(±50%)が、低塩緩衝液又は水で溶出後に得られる。最高50%の比較的大きい変動のために、この方法は改善を要する。
【0007】
Invitrogen製SequalPrep−Kitは、DNAとイオン交換体被覆表面の結合に基づく。DNAは酸性pHで結合し、溶出は強アルカリ性緩衝液を使用して実施される。強アルカリ性緩衝液のpHは、イオン交換体のpKs値よりも高い。このキットは、いわゆるCharge−Switch技術に基づく(上記参照)。このキットは、long range(LR)PCRの精製及び正規化に応用され、配列決定用のテンプレート調製にも適切である。製造者は、少なくとも250ngの出発DNAを使用したときに、約25ngの収率で2から3倍の変動であると述べている。これは、ここでも、変動が比較的大きくなり得ることを意味し、その結果、またしても最適化が必要である。
【0008】
したがって、公知の精製技術は、実際には依然として収率に大きな変動がある。特に、異なる量の出発材料又は異なる出発材料を使用したときに難点が生じる。
【0009】
したがって、精製核酸を得ることとは別に、単離中に、規定量の核酸を精製し、かくして試料材料のために、異なる試料間で、濃度において可能な限り最小の変動でほぼ同一濃度の核酸を含む溶出液をそれまでに得ることも望ましい。
【0010】
さらに、精製核酸が更なる応用にすぐに使用できること、すなわち、例えば、更なる再緩衝化などが不要であることが望ましい。これは、従来技術で公知の精製技術に基づくと必ずしも可能ではない。これらは、精製核酸の溶出に高いpH値及び/又は高い塩濃度を必要とすることが多いからである。したがって、精製核酸を前もって沈殿させる、又は例えば、後続の応用(下流の応用)のためにpHを調節する必要のあることが多い。しかし、その結果、溶出液中の濃度は、再度変わり得る。
【0011】
公知技術が核酸の精製及びある条件付きで規定量の核酸の精製に適切である場合でも、既存の方法は改善する必要があり、特に規定量の核酸を異なる試料から、精製核酸濃度のわずかな変動で、精製できるようにする必要がある。
【0012】
したがって、本発明の根底にある問題は、核酸をそれぞれ精製するための既存の方法を改善することである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、規定量の核酸を試料から少ない濃度変動で精製/単離することができる特別な核酸結合相による、核酸の単離及び/又は精製に関する。核酸結合相の設計は、その決め手となる。試料からの核酸を結合させるために、後者は、少なくとも1個のプロトン化可能基を有する核酸結合リガンドを有する。適切なプロトン化可能基、特にアミノ基については、以下で詳述する。核酸の結合は、これらのプロトン化可能基のうちの少なくとも1個のpKs値よりも低いpHで起こる。プロトン化可能基は、1個以上のプロトンを取り込んで、正に帯電する。これは、核酸結合相が、負に帯電した核酸と結合できることを意味する。溶出は、より高いpHで起こり、その結果、プロトン化可能基の正電荷はより小さくなり、核酸結合相に結合した核酸が放出される。一部の実施形態によれば、プロトン化可能基は、溶出中に、中性にさえなることがあり、場合によっては負に帯電することもある。この方法は、核酸を生物学的試料から単離及び/又は精製するのに使用することができる。さらに、この方法は、例えば、既に精製された核酸を正規化し、かくして規定量の核酸を得るために、古典的な核酸精製技術に従って実施することができる。
【0016】
本発明の本質的な一特徴は、核酸結合相の表面である。本発明によれば、これは、低電荷密度を有する。この特別な表面は、試料中の核酸量が、使用される量の核酸結合相の結合能を超えるという特徴と組み合わせて、驚くべきことに、規定量の核酸を試料から単離することができ、核酸濃度変動が従来技術に比べてはるかに小さいという効果を有する。
【0017】
従来技術とは対照的に、本発明によれば、特に多量の核酸の結合を可能にする表面を得る試みはない。むしろ、表面の電荷密度、したがって核酸結合相の核酸結合能は、意図的に低減される。したがって、限られた量の核酸ではあるが、特定の試料に対して常に同一の、すなわち規定された量の核酸しか、結合、したがって溶出することができない。したがって、特定の生物学的試料材料について、有利には、核酸結合相の結合能は一度だけ決定されなければならない。更なる定量化ステップは省略することができ、指定量の核酸結合相のみが、規定の、したがって常に同一の量の核酸に結合することができる。その結果、有利なことには、さもなくば試料すべてを同じ濃度の精製核酸に調節するのに必要である、精製試料の濃縮又は希釈などの加工ステップを省略することができる。
【0018】
「規定量」という用語は、特に、規定の、すなわち狭い変動範囲内である核酸濃度を指す。後者が特定の試料や試料材料に対して未知であるときには、変動範囲を(実験的に)決定することができる。好ましくは、本発明による方法によって得られる核酸の量又は濃度は狭い範囲にあり、その結果、試料材料に応じて、変動は±30%未満、好ましくは±20%未満、特に±15%の領域、特に好ましくは±10%である。
【0019】
試料材料中の核酸の量/濃度に関連した核酸結合相の量は、好ましくは、核酸結合相の核酸結合能の常にプラトー領域、したがって飽和領域にあるように選択されるべきである。したがって、核酸結合相の量(例えば、核酸結合リガンドで被覆された粒子量又は担体表面サイズ)は、試料中の核酸が、使用される核酸結合相の量の核酸結合能よりも過剰になるように選択される。本発明による核酸結合相の核酸結合能が小さいために、本発明による方法は、核酸結合能の高い核酸結合相/粒子(例えば、シリカ粒子、又は従来法によりポリアミンで被覆された粒子)の使用よりも明確な利点がある。従来技術では、核酸収率の大きな変動が容認されなければならず、又はかかる少量の核酸結合相/粒子を使用しなければならず、その結果、特に自動化プロセスの状況において、取扱いが困難になる。例えば、従来技術で公知の粒子を使用するときには、使用量は、自動化プロセスにおける取扱いが困難であるような程度に希釈されなければならない。これは、核酸結合能の高い粒子の損失がわずかでも、核酸収率の著しい変動を招くので、間違いの元である。したがって、これらの態様でも、本発明による方法は従来技術よりも優れている。
【0020】
規定量の核酸の精製、したがって核酸濃度の正規化のために、本発明によれば、核酸結合相は、使用される核酸結合相の核酸結合能が使い尽くされるような多量の核酸が供給される。核酸の残りの非結合分は、精製中に廃棄される。場合によっては、核酸が結合した核酸結合相を溶出前に洗浄することができる。溶出ステップでは、核酸は、核酸結合相表面から溶出溶液に移行する。その結果、所与の試料材料の場合、常に同じ、すなわち規定量の核酸が精製中に得られる。
【0021】
好ましくは、低電荷密度の表面は、以下の特徴の1つ以上によって得られる。
【0022】
a.担体に結合した核酸結合リガンドは、各場合において核酸の結合のための1個以下又は2個のプロトン化可能基を有する、及び/又は
b.核酸結合リガンドは、モノアミン及びジアミンの群から選択される、及び/又は
c.担体は、複数の核酸結合リガンドと複数の希釈基との混合物で被覆される、及び/又は
d.担体に結合した核酸結合リガンドは不足状態にある。
【0023】
本発明によれば、上述のように、低電荷密度の表面を有する核酸結合相が使用される。このため、核酸結合リガンドは、好ましくは、各場合において、核酸結合のための1個以下又は2個のプロトン化可能基、例えばアミノ基を有する。それに応じて、核酸結合リガンドは、好ましくは、モノアミン及びジアミンの群から選択される。スペルミン、スペルミジンなどのポリアミンによる従来のコーティングとは対照的に、モノ及び/又はジアミンは、核酸濃度を正規化するのに極めて適切であることが見いだされた。従来法によりポリアミンで被覆された担体は、明らかに、表面電荷密度が高過ぎて正規化に適していない。したがって、それは、より多量の核酸と結合する。かかる表面が核酸含有試料と接触した場合、結合能は核酸濃度に大きく依存することが判明した。典型的には、調査した範囲において、DNAの供給量と溶出量には比例関係がある。
図1に、ポリアミンのスペルミンで被覆されたポリマー粒子の例の場合のこの挙動を示す。これは、精製核酸量の上記変動を招き、その結果、精製中の正規化は不可能である。好ましく使用されるモノ及び/又はジアミンは、個々に又は混合物として適用することができる。
【0024】
好ましくはモノ及び/又はジアミンを担体のコーティングに使用することによって、対照的に、限られてはいるが規定量の電荷担体、したがって核酸結合基が、表面に生成される。核酸の結合のための得られた電荷担体密度は、ポリアミン、例えばスペルミン、さらにはポリエチレンイミンによる対応したコーティングよりもはるかに低い。特に、N−プロピル−1,3−プロパンジアミンで改変されたポリマー粒子は、既に精製中の核酸濃度を正規化するのに、したがって規定量の核酸を試料から単離するのに、極めて適切である。核酸結合相の調製のためにモノアミン又はジアミンで被覆された担体の利点は、特に、限られた量の核酸のみが結合するが、小さい変動範囲内で、前記量が特定の試料についても同じであることである。担体材料の調製及び担体表面のアミノ官能基化(Aminofunktionalisierung)における高い再現性によって、変動性の狭い電荷担体密度、したがって核酸結合能が得られる。その結果、核酸濃度の望ましくない変動が精製中に回避される。上記利点は、ポリアミンに関してのみ実証され得るのではなく、特に通常使用されるシリカ粒子に関しても見いだされる。シリカ粒子の場合、表面の高い核酸結合能のために、最高50%の変動が同じ試料材料からの核酸の単離中に生じる。
【0025】
驚くべきことに、担体表面のより低い電荷密度も達成できることも判明した。例えば、ポリアミンが核酸結合リガンドとして使用される場合、担体が少量のポリアミンのみで被覆されて、核酸結合材料表面の所望の低電荷密度が得られる。一実施形態によれば、核酸結合リガンドは、したがって、担体材料上で互いにある距離で配置され、又は希釈される。核酸結合リガンドのかかる配置を得るために、一実施形態によれば、担体を少量の核酸結合リガンド、例えば、ポリアミン又は好ましくはモノ及び/又はジアミンのみで被覆することができる。好ましくは、核酸結合リガンドによる官能基化は、したがって、特に担体材料表面の結合能に関して不足状態で起こる。その結果、いわば、担体上の核酸結合リガンドが希釈されて、より少数のプロトン化可能基が利用可能になる。例えば、担体材料上の官能基、又は核酸結合リガンドで官能基化可能な基のわずか50%以下、25%以下、15%以下、10%以下又はわずか5%以下が、核酸結合リガンドで官能基化される。またしても、低電荷密度の核酸結合相が表面で得られる。
【0026】
さらに、担体は、核酸結合リガンドといわゆる希釈リガンド(Verduennungsligand)の混合物で被覆することができる。「希釈リガンド」という用語は、核酸結合リガンドに関する機能を表すのに本明細書では使用する。その機能は、担体上の核酸結合リガンド量を変化させ、かくしてより低い電荷密度が核酸結合相表面で確立できるように調節することである。核酸結合リガンドに対する希釈リガンドの割合が高いほど、より少数の核酸結合リガンドが担体上に適用され、核酸結合能が低下する。希釈リガンドは、負、正に帯電することができるか、もしくは中性であり、又はイオン化可能基を有することができる。一実施形態によれば、希釈リガンドは、どの核酸にも結合しないか、又は核酸結合リガンドよりも低親和性で核酸に結合する。希釈リガンドが核酸に結合する場合、それらは一実施形態によれば核酸結合リガンドの親和性よりも少なくとも20%、少なくとも50%又は少なくとも75%低い親和性でそれに結合する。希釈基に対する核酸結合リガンドの割合は、例えば、50%以下、25%以下、15%以下、10%以下又はわずか5%以下とすることができる。適切な希釈リガンドは、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン及びアンモニア、又は式R、−OH若しくは−ORの基を有する希釈リガンドである。式中、Rは線状又は分枝アルキル残基である。適切な希釈リガンドの別の例はエタノールアミンであろう。好ましい一実施形態によれば、核酸結合リガンドと希釈リガンドの混合物が担体のコーティングに使用される。
【0027】
核酸結合相の結合能は、一実施形態によれば、1から500μg核酸/mg核酸結合相の範囲であり、1から300μg、1から200μg、10から100μg核酸(特にDNA)/mg核酸結合相のより小さい結合能も可能である。好ましい一実施形態によれば、核酸結合相の結合能は、0.01から100μg、0.025から100μg、0.05から100μg又は0.1から100μg核酸/mg核酸結合相、好ましくは0.01から50μg、0.025から50μg、0.05から50μg又は0.1から50μg核酸/mg核酸結合相、特に好ましくは0.01から10μg、0.025から10μg、0.05から10μg又は0.1から10μg核酸/mg核酸結合相である。これらの核酸結合相は、特に更に少量の核酸を正規化するのに、とりわけ小体積が扱われているときに、適切である。
【0028】
核酸を穏やかに溶出させるために、溶出は、結合pHよりも高いが、プロトン化可能基のうちの少なくとも1個、好ましくは全プロトン化可能基のpKs値よりも少なくとも1pH単位、好ましくは少なくとも2pH単位低い、pHで好ましくは実施される。これは、溶出を穏やかな条件で実施することもできるかなりの利点を有する。したがって、本発明は、プロトン化可能基のpKs値よりも低いpHで溶出させることができる。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、核酸の結合はpH3から8で起こる。この記述は、結合中、したがって試料中のpHに関する。本発明による方法は、固相の形態に応じて、極めて穏やかな条件で実施することもでき、その結果、核酸の結合はpH4から7.5、好ましくは5から7.5、特に好ましくは5から7、極めて特に好ましくは6.5から7、したがってほぼ中性領域で実施することもできる。プロトン化可能基は、好ましくは9から12、より好ましくは10から12、さらには比較的中性pHにおけるpKs値を有するので、これらは、十分に正に帯電して、核酸の有効な結合を可能にする。したがって、結合は極めて穏やかな条件下で起こり、核酸の損傷を回避することができる。
【0030】
さらに、結合は低塩濃度で実施されるのが有利であることが判明した。したがって、一実施形態によれば、核酸と核酸結合相の結合中の塩濃度は1M以下である。塩濃度は、好ましくは、0.5M以下、0.25M以下、さらには0.1M以下である。低塩濃度は、核酸と固相の結合を最適化するのに好ましい。過剰に高いイオン濃度は、核酸及び核酸結合相のイオン相互作用に悪影響を及ぼし得る。結合緩衝液は、ある量の有機物質、例えば、炭水化物、アルコール(例えば、エタノール、メタノール)、アセトン、アセトニトリル又はその混合物を含むこともできることが見いだされた。これらは、結合に対して有害作用を持たない。
【0031】
本方法の別の重要な一ステップは、核酸の溶出である。上述したように、核酸放出は、結合pHよりも高いpHで起こる。その結果、溶出中に、プロトン化可能基は正に帯電することが少なくなり、核酸の放出に好都合である。さらに、溶出中のpHは、好ましくは、核酸結合相のプロトン化可能基のうち少なくとも1個のpKs値よりも少なくとも1pH単位低い。上で説明したように、その結果、溶出を特に穏やかな条件下で実施することができる。
【0032】
使用する核酸結合リガンド又は核酸結合相に応じて、溶出は、pH7.5から11、7.5から10、好ましくはpH8から9、それぞれ8.2から8.8で好ましくは起こる。特に有利な結果は、これらのpH値において得られ、核酸の放出が特に穏やかである。
【0033】
溶出溶液中、好ましくは溶出緩衝液中で、単離された核酸を直接に更に加工するために、これは、好ましくは、低塩濃度を有する。したがって、一実施形態によれば、塩濃度は、1M以下、好ましくは0.5M以下、0.25M以下、0.1M以下、特に好ましくは50mM以下、25mM以下、さらには10mM以下である。適切な塩は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属又はアンモニウムのハロゲン化物、特に塩化物、鉱酸の他の塩、酢酸塩、ホウ酸塩、並びにTris、Bis−Tris及び有機緩衝剤、例えば、MES、CHAPS、HEPESなどに基づくなどの化合物である。溶出に適切な物質は、さらに、従来技術からも知られる。
【0034】
特に、核酸の減圧に基づく溶出又は遠心分離に基づく溶出においては、例えば、核酸結合膜を使用するとき、又は粒子の障壁として役立つ膜と組み合わせて核酸結合粒子を使用するときには、小さな変動で同じ溶出体積が各場合において、特に複数のバッチ、例えば48ウェル又は96ウェルプレートで処理するときにやはり確実に得られるように、追加の対策が取られる場合には、特に小溶出体積で、有利であり得る。したがって、少なくとも1種類の炭化水素を溶出溶液に添加することが有利である。このようにして、有利には、より均一な溶出液体積が得られる。これは、恐らく、炭化水素の積層が、膜を通した溶出溶液の完全な浸透を促進するからであり、その結果、より均一な溶出液体積が得られる。炭化水素及び/又は炭化水素混合物は、以下の特徴の1つ以上を有することができる。
【0035】
a)炭化水素は非置換又は置換アルカンである。
【0036】
b)炭化水素は水非混和性アルカンである。
【0037】
c)炭化水素は非環式アルカンである。
【0038】
d)炭化水素は非分枝非環式アルカンである。
【0039】
e)炭化水素は分枝非環式アルカンである。
【0041】
g)炭化水素は6から16個の炭素原子を有するアルカンである。
【0042】
h)炭化水素は8から12個の炭素原子を有するアルカンである。
【0043】
i)炭化水素は、基n−オクタン、n−ノナン、n−デカン及びn−ドデカンから選択されるアルカンである。及び/又は、
j)炭化水素は、好ましくは鉱油である。
【0044】
精製を促進するために、好ましくは少なくとも1回の洗浄ステップが、核酸の結合後かつ溶出前に実施される。低塩濃度の水溶液、しかしまた水も、洗浄に好ましい。塩が洗浄緩衝液又は洗浄溶液に含まれる場合、それは、好ましくは、400mM以下、特に好ましくは200mM以下、100mM以下、50mM以下及び/又はさらには25mM以下の濃度である。有機構成要素、例えば、アルコール、ポリオール、ポリエチレングリコール、アセトン、アセトニトリル、炭水化物又はその混合物が、洗浄緩衝液中に存在してもよい。しかし、洗浄緩衝液又は洗浄溶液は、阻害量の対応する有機構成要素を含まないこともでき、その結果、それに続く応用、例えば、酵素プロセシング、増幅反応など(「下流の」応用)が阻害されない。
【0045】
核酸結合リガンドは、静電、極性又は疎水性相互作用によって担体と共有結合又は非共有結合する。好ましくは、これは、コーティング操作に関連して起こる。担体材料が、核酸結合リガンドの結合に適切な官能基を持たない場合、担体材料の官能基化が最初に起こり、適切な官能基、特にカルボキシル基を付与することができる。不足状態の核酸結合リガンドによる担体材料のコーティングの対応するプロファイルは、それに応じてより少数の核酸結合リガンド結合用官能基を有する担体材料を提供することによって得ることもできる。適切なコーティング技術は、従来技術で公知であり、したがって、より詳細な説明を必要としない。核酸結合リガンドと担体、特に担体の官能基との結合は、様々な様式で起こり得る。核酸結合リガンドは、例えば、ジ又はポリアミンの場合には、アミノ基を介して結合することができる。しかし、核酸結合リガンドは、担体との結合に利用される官能基を有することもできる。適切な官能基は従来技術で公知である。さらに、核酸結合リガンドを担体表面、好ましくはポリマー担体表面に直接結合させることも可能である。これは、例えば、炭素骨格を介して直接起こり得る。
【0046】
核酸の結合に適切であることが判明した好ましいプロトン化可能基は、アミノ基であり、第一級、第二級及び第三級アミノ基が好ましい。特にアミノ基などのプロトン化可能基は、好ましくは少なくとも8のpKs値を有する。pKs値は、好ましくは9から12、より好ましくは10から12である。核酸結合リガンドは、好ましくは、1から2個のアミノ基を有する。好ましい核酸結合リガンドは、例えば、第一級、第二級及び第三級モノアミン及びジアミンである。これらは、置換されていても、いなくてもよい。
【0047】
核酸結合リガンドの好ましい例は、特に次式:
(a)R
3N
(b)R
2NH
(c)RNH
2及び/又は
(d)X−(CH
2)
n−Y ただし、X=R
2N、RNH又はNH
2、及びY=R
2N又はRNH又はNH
2
の第一級、第二級及び第三級アミンであり、式中、
R=互いに無関係に、線状、分枝又は環式のアルキル、アルケニル、アルキニル又は芳香族置換基であって、最後のものは1個以上のヘテロ原子を含むこともできる。
【0048】
n=0から20
N−プロピル−1,3−プロパンジアミンは、核酸結合リガンドとして好ましく使用される。
【0049】
さらに、環式アミン、芳香族アミン、又はアミノ官能基化した複素環を使用することもできる。アミンは、置換基、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル又は芳香族置換基を有することができ、さらに炭化水素鎖は閉じて、環を形成することもできる。炭化水素鎖は、酸素、窒素、硫黄若しくはケイ素などのヘテロ原子、又は枝分れを有することもできる。アミンのアミノ基のpKs値は、好ましくは9から12、特に好ましくは10から12である。
【0050】
更に適切な核酸結合リガンドは、1、2又は3個のアミノ基を有するポリオキシアルキレンアミンである。これらは、例えば、「Jeffamine」の名称で入手することができるポリオキシルアルキレンアミンである。Jeffamineは、ポリエーテル骨格末端に結合した第一級アミノ基を含む。ポリエーテル骨格は、プロピレンオキシド、エチレンオキシド又はその混合物に基づくことができ、別の骨格セグメントの使用も考えられる。
【0051】
さらに、対応する核酸結合リガンドの混合物を、本発明によって使用することができ、又は担体に適用することができる。
【0052】
好ましくは、核酸結合リガンドのアミノ基は、電子密度低減基(Elektronendichte verringernden Gruppe)、例えば、カルボキシル基、カルボニル基、C−C二重結合を有する基、β−ヒドロキシエチル基と共役しておらず、その結果、そのpKs値は好ましくは9から12である。電子密度低減基との共役は、アミノ官能基及び対応する電子密度低減基がわずか3個、2個又はそれよりも少ない炭素原子を介して結合するときに、存在すると考えられている。
【0053】
核酸結合リガンド用の可能な担体は、例えば、ポリスチレン及びその誘導体、ポリアクリラート及びポリメタクリラート及びその誘導体、又はポリウレタン、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン及びこれらの材料のコポリマーなどの有機ポリマーである。さらに、これらの核酸結合リガンドは、多糖、特にアガロース、セルロース、デキストラン、Sephadex、Sephacryl、キトサンなどのヒドロゲルに結合することもできる。さらに、核酸結合リガンドは、例えば、ガラス又は更なる金属酸化物及びメタロイド酸化物(特に、式MeOの酸化物(式中、Meは、Al、Ti、Zr、Si、Bを含む群から好ましくは選択される)、特にAl
2O
3、TiO
2、シリカ及び酸化ホウ素)、金属表面、例えば金などの無機担体に結合することもできる。好ましくは、担体材料は、それ自体の核酸結合能を持たない。
【0054】
磁性粒子は、操作に特に有利である。したがって、核酸結合相は、好ましくは、磁性であり、常磁性、フェリ磁性、強磁性又は超常磁性とすることができる。超常磁性又は常磁性粒子が好ましい。磁性粒子の操作の個々のステップ及び実施形態は、本発明によって好ましく使用され、従来技術で周知であり、したがって詳細な説明を必要としない。
【0055】
核酸結合リガンドは、これらの担体に直接、又はスペーサーを介して、結合することができる。それらは、より大きい分子の一部とすることもできる。スペーサーの例は、炭化水素鎖、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール、及び官能性シランである。これらのスペーサーは、線状又は分枝とすることができる。
【0056】
カルボジイミド化学反応によって活性化された、酸アミド又は酸無水物、エポキシド、トシル基、ホルミル基、塩化スルホニル、マレイミド又はカルボキシラート基は、核酸結合リガンドの結合のための化学官能基として使用することができる。本発明に関連して、核酸結合リガンド、例えばアミンの非共有結合は、例えばイオン相互作用又は吸着プロセスによっても可能である。核酸結合リガンドは、例えば金表面に、チオールを介して結合することもできる。核酸結合リガンドとカルボキシル化表面の結合が好ましい。
【0057】
核酸結合リガンドの結合に適切な担体材料の更なる実施形態は、非磁性及び磁性粒子、カラム材料、膜、並びに表面コーティングを含む。本発明者らは、さらに、チューブ、膜、フリース、紙、PCR容器などの反応器、Eppendorfチューブ、マルチプレート、チップ、マイクロアレイなどの担体を挙げることができる。これらの担体は、上述したように核酸結合リガンドで被覆して、本発明による核酸結合相を得ることができる。核酸結合リガンドで被覆された前記担体材料の密度及び面積サイズによって、またしても、規定量の核酸結合相が精製に利用可能になる。例えば、核酸結合相を得るために、マイクロタイタープレート、マルチプレート、又は試料を加工するための対応する装置の個々の又はすべての反応領域(ウェル)を完全に又は部分的に核酸結合リガンドで被覆することができる。
【0058】
核酸結合相からの結合核酸の効率的溶出、したがって脱離は、核酸精製効率に特に決定的である。驚くべきことに、核酸結合リガンドのプロトン化可能基のpKs値だけが決定的ではないことが見いだされた。核酸結合相の構造及び別の官能基の存在も、中性又は弱アルカリ性範囲のpHにおける溶出の促進及び改善に寄与する。
【0059】
一実施形態によれば、核酸結合相は、さらに、例えば溶出pHにおいて反発作用を発揮することによって、溶出pHにおいて核酸の溶出を促進する官能基を有する。したがって、好ましくは、これらの官能基は溶出中に負に帯電する。これらの基のpKs値は、例えば0から7、好ましくは1から5の範囲とすることができる。例えば、イオン交換体、特に陽イオン交換体、好ましくは酸性基、例えばカルボキシル基が適切である。別の適切な基は、ベタイン、スルホナート、ホスホナート及びホスファートである。例えば、固体担体をカルボキシル基で官能基化して、核酸結合リガンドを結合させることができる。核酸結合リガンドの結合中に、その濃度は、カルボキシル基の一部が遊離し、したがって核酸結合リガンドで官能基化されないように選択することができる。低pH値では、これらは、核酸の結合を阻害しない。しかし、より高いpHでは、これらは、好ましくは負に帯電し、したがって核酸結合リガンドからの核酸の脱離を促進する。この相互作用は、核酸結合リガンドのプロトン化可能基と陰イオン化可能な基、例えばカルボキシル基との間の長さ又は距離の選択によって更に促進することができる。有利なことには、これは低pHにおける溶出を促進し、その結果収率が増加する。核酸に対して溶出pHにおいて反発作用を発揮する官能基の選択、強度及び長さは、選択される核酸結合基、したがって、特に、核酸結合基1個当たりのプロトン化可能基数、及び溶出促進官能基からのその距離に応じて変わる。一実施形態によれば、溶出促進官能基は、希釈リガンドとして機能する。
【0060】
特に溶出促進官能基、希釈リガンド、及び核酸結合リガンドによる希釈又は混合についての、上記パラメータの選択/組合せによって、核酸結合相のpHを溶出条件に対して最適化することができる。核酸結合相の溶出プロファイル、特に溶出pHをそれに応じて制御又は調節することができる。
【0061】
本発明による方法を使用して精製することができる核酸は、血液、尿、便、唾液、痰などの体液中又は他の体液中、組織、細胞、特に動物細胞、ヒト細胞、植物細胞、細菌細胞など、肝臓、腎臓若しくは肺などの器官などの生物学的供給源などに存在し得る。そのため、核酸は、スワブ若しくはPapSmearなどの担体材料、及びPreServCyt、Surepathなどの安定化媒体から、又は他の液体、例えば、汁、水性試料又は食品一般からも得ることができる。さらに、核酸は、植物材料、溶菌液、パラフィン包埋組織、水溶液又はゲルから得ることができる。
【0062】
核酸が細胞材料中に存在する場合、従来技術で公知のように、核酸を放出させるために、細胞材料を破壊することができ、特に溶解することができる。対応する細胞破壊技術又は溶解技術は、従来技術で公知であり、したがって更なる記述を必要としない。
【0063】
本発明による方法では、水系緩衝液を使用することができ、危険な化学物質は使用されていないという事実のため、下流の応用、例えば、PCR、制限酵素による消化、トランスフェクション又は配列決定反応に不利な物質を好ましくは含まない、極めて清浄な溶出液が得られる。さらに、本発明による方法では、極めて穏やかな条件下、例えばpH6.5〜7で核酸を結合させることができ、8.5などのほんのわずかにアルカリ性のpH及び極めて低い塩濃度、例えば25mmol Trisにおいて溶出を行うことができ、その結果、更なる調査及び使用(下流の応用)のための希釈又は中和は不要である。
【0064】
本発明による標準化又は正規化された核酸濃度は、好ましくは、例えば、核酸増幅、修飾反応又は配列決定反応などの酵素反応に使用することができる。本発明によって精製され、したがって正規化された核酸は、やはり規定量の核酸を使用する、例えばショートタンデムリピート(STR)の分析及びトランスフェクションにも適切である。
【0065】
さらに、本発明は、規定量の核酸を試料から精製するための、したがって核酸濃度の正規化のための、上述した核酸結合相の使用にも関する。核酸結合相は、少なくとも1個のプロトン化可能基を有する核酸結合リガンドを有し、存在する核酸結合リガンドは担体に結合しており、核酸結合相は低電荷密度の表面を有し、結合pHよりも高い溶出pHが確立され、試料中の核酸は、使用される量の核酸結合相の結合能よりも過剰に存在する。
【0066】
低電荷密度は、好ましくは、以下の特徴の1つ以上によって得られる。
【0067】
a)担体に結合した核酸結合リガンドは、各場合において核酸の結合のための1個以下又は2個のプロトン化可能基を有する、及び/又は
b)核酸結合基は、モノアミン及びジアミンの群から選択される、及び/又は
c)担体は、核酸結合基と希釈基との混合物で被覆される、及び/又は
d)担体に結合した核酸結合リガンドは不足状態にある。
【0068】
本発明によって使用される核酸結合相は、特に、pKs値が少なくとも8、好ましくは9から12である、少なくとも1個のプロトン化可能基を有する核酸結合リガンドを有する。好ましい実施形態は、上で詳述されており(上記開示参照)、特に以下の特徴の1つ以上によって特徴づけられる。
【0069】
a.プロトン化可能基(単数又は複数)のpKs値は9から12、好ましくは10から12である、及び/又は
b.プロトン化可能基は、アミノ基であり、電子密度低減基と共役しない、及び/又は
c.核酸結合相は、溶出pHにおいて核酸の放出/溶出を促進する複数の官能基、好ましくは陽イオン交換体、特にカルボキシル基を有する、及び/又は
d.担体は、核酸結合リガンドは別として、それ自体の核酸結合特性を持たない、
e.担体は、ポリスチレン及びその誘導体、ポリアクリラート及びポリメタクリラート及びその誘導体、ポリウレタン、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン及びこれらの材料のコポリマーなどの有機ポリマー、アガロース、セルロース、デキストラン、Sephadex、Sephacryl、キトサンなどの多糖及びヒドロゲル、無機担体、ガラス又は更なる金属酸化物及びメタロイド酸化物(特に、式MeOの酸化物(式中、Meは、好ましくは、Al、Ti、Zr、Siを含む群から選択される)、特にAl
2O
3、TiO
2、シリカ)、金属表面を有する担体、例えば、金、磁性粒子又はその混合物からなる群より選択される、及び/又は
f.核酸結合リガンドは、次式:
(a)R
3N
(b)R
2NH
(c)RNH
2及び/又は
(d)X−(CH
2)
n−Y、ただしX=R
2N、RNH又はNH
2、及びY=R
2N又はRNH又はNH
2
の第一級、第二級及び第三級アミンからなる群より選択され、式中、
R=互いに無関係に、線状、分枝又は環式のアルキル、アルケニル、アルキニル又は芳香族置換基であって、最後のものは1個以上のヘテロ原子を含むこともできる。
【0070】
n=0から20
好ましくはモノアミン及びジアミンである。これらは、置換されていても、いなくてもよい。
【0071】
さらに、本発明は、本発明による核酸結合相を使用する、規定量の核酸を精製するためのキットを提供する。核酸結合相の詳細、及び正規化に関する利点は、上で詳述されており、本発明によるキットに関連しても当てはまる。上記開示を参照されたい。
【0072】
本発明によるキットは、好ましくは、以下の特徴の少なくとも1つを有する。
【0073】
a.核酸結合相のプロトン化可能基のうちの少なくとも1個のpKs値よりも少なくとも1pH単位低いpHを有する結合緩衝液若しくは結合溶液、及び/又は試料中で前記pHを確立することができる結合緩衝液、及び/又は
b.核酸結合相のプロトン化可能基のうちの少なくとも1個のpKs値よりも1pH単位低いpHを有する溶出緩衝液若しくは溶出溶液、及び/又は試料中で前記pHを確立することができる溶出緩衝液。
【0074】
一実施形態によれば、キットは、以下の特徴の少なくとも1つを有する結合緩衝液又は結合溶液を含む。
【0075】
i.pH3から8、及び/又は
ii.pH4から7.5、及び/又は
iii.pH4.5から7、及び/又は
iv.pH5.5から7、及び/又は
v.pH6.5から7、及び/又は
vi.塩濃度1M以下、0.5M以下、0.25M以下又は0.1M以下。
【0076】
さらに、キットは、以下の特徴の少なくとも1つを有する溶出緩衝液又は溶出溶液を含むことができる。
【0077】
i.pH7.5から10、及び/又は
ii.pH8から9、及び/又は
iii.pH8.2から8.8、及び/又は
iv.塩濃度1M以下、0.5M以下、0.25M以下、0.1M以下、25mM以下、15mM以下若しくは10mM以下、及び/又は
v.それが、水、生物学的緩衝液及び有機緩衝液からなる群より選択される。
【0078】
核酸結合相並びに結合及び溶出条件に関する詳細は、上で詳述されており、本発明によるキットに関しても当てはまり、その中で使用される構成要素/緩衝剤の特性を表す。上記開示を参照されたい。さらに、キットは、更なる通常の構成要素、例えば、溶解試薬、洗浄試薬及び/又は中和試薬、又は緩衝剤を含むことができる。
【0079】
対応するキットは、特に、本発明による方法に関連して使用することができ、特に正規化に適切である。したがって、本発明によるキットは、特に自動化システムにおいて使用することができる。
【0080】
本方法、キット及び核酸結合固相は、特に分子生物学、分子診断学、法医学、食品分析及び応用試験の分野で使用することができる。それらは、特に自動化用途に適切である。
【0081】
溶出された核酸は、好ましくは、更に直接加工することができ、したがって、例えば、酵素反応、例えば、PCR、RT−PCR、制限酵素による消化、配列決定又は転写などの分子生物学的応用に関連して、使用される。溶出緩衝液が上述したように設計され、好ましくは低塩濃度を有する限り、更なる精製は不要である。
【0082】
精製が可能な核酸としては、DNA及びRNA、特にゲノムDNA、プラスミドDNA、及びPCR断片、cDNA、miRNA、siRNA、並びにオリゴヌクレオチド及び修飾核酸、例えばPMA又はLMAが挙げられる。ウイルス又は細菌のRNA及びDNA、又はヒト、動物若しくは植物供給源の核酸も精製することができる。さらに、DNA/RNAハイブリッドも本発明による精製を考慮して、ほんの数例を挙げることができる。
【0083】
本発明を以下に幾つかの実施例によって説明する。これらは限定的なものではなく、本発明の好ましい実施形態である。さらに、本明細書に記載の参考文献すべては、本開示の一部を形成する。
【実施例】
【0084】
Long range(LR)PCR断片(8から11kb)を実験においてモデルシステムとして使用した。試験を以下の仕様に基づいて実施した。
【0085】
図1は、スペルミンで被覆されたポリマービーズを使用した、DNAの出発量に対する溶出DNA(LR PCR断片)量の依存を示す。ポリアミンで被覆された粒子に供給されるDNAが多いほど、結合し、次いで再度溶出することができるDNAが多い。しかし、試料中の核酸量がより多い場合でも、核酸結合能のプラトーには到達せず、様々な出発DNA量を使用したときでも正規化は起きなかった。
【0086】
A)磁性ポリマーとアミンの反応
材料
Estapor、Dynal、Seradyn又はAdemtech粒子を含めて、種々の材料を磁性ポリマーとして使用することができる
アミン:N−プロピル−1,3−プロパンジアミン(Aldrich、カタログNo.308153) 。
【0087】
調製の説明
カルボキシル化磁性粒子500mgをMES緩衝液10mlに再懸濁させ、次いで50mg/ml N−ヒドロキシスクシンイミド溶液10mlを添加する。Minishakerを使用して混合し、次いで50μmol/l 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド溶液10mlを添加し、再度ボルテックス撹拌する。次いで、オーバーヘッド振とう機上で30分間反応させ、次いで上清を除去する。MES緩衝液50ml中に再懸濁させる。懸濁液を磁気的に分離させ、上清を廃棄する。次いで、MES緩衝液5ml中に取り、1,4−ジアミノブタン水溶液10ml(MES中100mg/ml、pH8.5)を添加し、徹底的にボルテックス撹拌し、オーバーヘッド振とう機上で1時間反応させる。次に、MES緩衝液各50mlで2回洗浄し、上清を磁気的に分離させ、廃棄する。次いで、粒子をMES緩衝液10mlに再懸濁させる。
【0088】
B)LR−PCR断片の正規化
1)同一試料の異なる量の出発DNAの正規化 。
【0089】
ビーズの洗浄:
4バッチ:各場合において、ビーズ2μlを50mM TrisHCl pH6.5 2×100μlで洗浄する
ビーズを各場合において少なくとも30秒間磁石で濃縮した後、上清を除去する。
【0090】
DNAの結合:
ビーズを洗浄緩衝液(上記参照)100μl+3M NaAc2μl pH5.3に懸濁させる
1 +4μl DNA LR−PCR06(8kb断片)
2 +3μl DNA LR−PCR06 +1μl LR−PCR緩衝液1×
3 +2μl DNA LR−PCR06 +2μl LR−PCR緩衝液1×
4 +1μl DNA LR−PCR06 +3μl LR−PCR緩衝液1×
RTで10分間振とうする 。
【0091】
洗浄:
水100μlで2×洗浄 。
【0092】
溶出:
+20μl 50mM Tris−HCl pH8.5、50mM NaCl
5分間RT
上清を新しい容器に移す
正規化の結果を
図2及び3に示す。
【0093】
2)8から11kbの種々のDNA断片の正規化
12個の異なるlong range PCR試料を1)のプロトコールに従って精製し、正規化した。
図4は、Pico−Green測定後の溶出液中のDNA量を示す。
【0094】
次いで、12個の試料を組み合わせ、平均濃度をOD
260nm測定によって調べた。これは、平均値580ng/PCR断片を与え、Picogreen測定の平均値533ngに匹敵する。結果を
図5に示す。レーン12及びレーン13のより弱いバンドは、非特異的増幅に起因する高いDNAバックグラウンドによって説明することができる。
【0095】
類似サイズ(8〜11kb)及び異なるサイズ(例えば、1kb、5kb、10kb;結果示さず)の断片は、10%未満の小さい変動で正規化できることが種々の試験において示された。したがって、本明細書に記載の方法は、その収率の変動がかなり大きくそれぞれ50%又は2〜3倍である既存の公知の正規化方法よりも明確な改善を示す。
【0096】
本方法をPCR断片の正規化に使用すると、断片長の知識から、DNA質量の正規化に加えて、断片量(モル濃度)の正規化も次式によって可能である
体積[μl]=MW[μg/μmol]/濃度[μg/μl] 。
【0097】
したがって、本発明による方法は、従来技術よりもかなりの利点を有する。したがって、溶出液20μl中のビーズ2μl当たり500ngの極めて良好な収率が、わずか±10%の変動で得られる。本発明による方法は、自動化することができ、磁選機、ピペット及び振とう機と一緒に使用することができる。さらに、96個の試料を自動化プロセスで20分以内に精製することができるので、特に時間効率が良い。これは、同じ試料量の精製が時折60分以上かかる従来技術に比べてかなりの利点である。
【0098】
C)血液由来のgDNAの正規化
1)8名の異なるドナーの血液からのgDNAの単離
材料
試料:EDTAで安定化された、8名の異なるドナーの新しい全血
ビーズ:N−プロピル−1,3−プロパンジアミンで被覆された磁気ビーズ1mg(上記参照)
溶解緩衝液:10mM Tris、Triton X−100、pH9.0
結合緩衝液:1.5M酢酸カリウムpH4.0
洗浄緩衝液=水
溶出緩衝液:10mM Tris*HCl pH8.5 。
【0099】
手順:
精製を以下の試験指示に従って実施した:
溶解緩衝液1mlとプロテイナーゼK10μlを混合する。ビーズ1mg及び水3.4μlを結合緩衝液200μl中に懸濁させる。Eppendorf容器中で、溶解緩衝液/プロテイナーゼ混合物を血液100μlに添加し、よく混合する。室温で10分間インキュベートする。ビーズを結合緩衝液中に慎重に再懸濁させる。その240μlを溶解血液に添加する。ピペット操作を繰り返して徹底的に混合する。室温で1分間インキュベートする。ビーズを磁気的に分離させる。上清を慎重に除去する。洗浄のために、洗浄緩衝液1mlを添加する。ピペット操作を繰り返して徹底的に混合する。再度磁気的に分離させ、上清を廃棄する。溶解緩衝液1ml及び結合緩衝液50μlを添加し、徹底的に混合し、RTで1分間インキュベートする。磁気的に分離させる。次いで、洗浄緩衝液1mlでもう一回洗浄し、磁気的に分離させる。
【0100】
精製DNAの溶出のために、溶出緩衝液150μlをビーズに添加する。ピペット操作を繰り返してビーズを再懸濁させる。ビーズを磁気的に分離させ、上清を除去し、DNAを測光法で定量化する。
【0101】
結果:
結果を
図6に示す。データによれば、使用した出発材料は、極めて複雑であり、異なる量の核酸を含み得るが、正規化された量のDNAは、本発明による方法によって精製することができ、ほんのわずかな変動しか受けなかった。
【0102】
2)DNAの出発量の意図的な変動を有する単離
本発明による方法が、極めて異なる量のDNAを含む複雑な試料でもDNA正規化を達成できるかどうか試験するために、以下の試験を実施した。
【0103】
材料
試料:EDTAで安定化された新しい全血。
【0104】
ビーズ:N−プロピル−1,3−プロパンジアミンで被覆された磁気ビーズ600μg
溶解緩衝液:10mM TRIS、Triton X−100、pH9.0
結合緩衝液:1.5M酢酸カリウムpH4.0
洗浄緩衝液=水
溶出緩衝液:10mM TRIS*HCl pH8.5
gDNAの理論出発量を白血球を数えて(WBC数=白血球数)決定した。DNA6.6pgを細胞1個当たりに使用した。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
手順:
精製を以下の試験指示に従って実施した:
各場合において、上記量の溶解緩衝液とプロテイナーゼKを混合する。各場合において、ビーズ600μg(=16.9μl)及び水23.1μlを結合緩衝液200μl中に懸濁させる。各場合において、溶解緩衝液/プロテイナーゼ混合物をEppendorf容器中の上記量の血液に添加し、よく混合する。RTで10分間インキュベートする。ビーズを結合緩衝液中に慎重に再懸濁させる。その240μlを溶解血液に添加する。ピペット操作を繰り返して徹底的に混合する。室温で1分間インキュベートする。ビーズを磁気的に分離させる。上清を慎重に除去する。洗浄のために、洗浄緩衝液1mlを添加する。ピペット操作を繰り返して徹底的に混合する。再度磁気的に分離させ、上清を廃棄する。溶解緩衝液1ml及び結合緩衝液50μlを添加し、徹底的に混合し、RTで1分間インキュベートする。磁気的に分離させる。次いで、洗浄緩衝液1mlでもう一回洗浄し、磁気的に分離させる。
【0108】
精製DNAを溶出させるために、溶出緩衝液150μlをビーズに添加する。ピペット操作を繰り返してビーズを再懸濁させる。ビーズを磁気的に分離させ、上清を除去し、DNAを測光法で定量化する。
【0109】
結果:
結果を
図7及び以下の表に示す。データによれば、使用した出発材料は極めて異なる量の核酸を含んだが、正規化された量のDNAは、本発明による方法によって精製することができ、出発材料よりもはるかに小さい変動を受けた。
【0110】
【表3】
【0111】
D.)RNAの正規化
材料:
試料:RNA Boehringer Mannheim 16s−及び23s−リボソームβ=4μgRNA/μl
ビーズ:N−プロピル−1,3−プロパンジアミンで被覆された磁気ビーズ38μg
ビーズ洗浄緩衝液:50mM TRIS*HCl pH6.5(RNaseを含まない)
結合緩衝液:3M酢酸ナトリウムpH5.3(RNaseを含まない)
洗浄緩衝液=水(RNaseを含まない)
溶出緩衝液:50mM TRIS*HCl/50mM NaCl pH8.5(RNaseを含まない)
添加RNA量:1〜8μg(0.5μgステップ)
添加RNA体積:4μl(体積差は、RNaseを含まない水で補われた) 。
【0112】
手順:
精製を以下の試験指示に従って実施した:
ビーズを慎重に再懸濁させ、38μgをマイクロタイタープレートに入れる。磁化し、緩衝液を除去し、ビーズ洗浄緩衝液100μlにビーズを取る。このステップをもう一回繰り返す。次いで、結合緩衝液2μl及び種々のRNA溶液4μlを添加する。ピペット操作を繰り返して徹底的に混合する。プレートを1000rpm及び室温(RT)で10分間振とうする。ビーズを磁気的に分離させる。上清を慎重に除去する。
【0113】
洗浄のために、洗浄緩衝液100μlを添加する。ピペット操作を繰り返して徹底的に混合する。再度磁気的に分離させ、上清を廃棄する。洗浄ステップをもう一回繰り返す。
【0114】
RNAの溶出のために、溶出緩衝液20μlをビーズに添加する。ピペット操作を繰り返してビーズを再懸濁させ、1000rpm及びRTで5分間振とうする。ビーズを磁気的に分離させ、上清を除去し、RNAを測光法で定量化する。
【0115】
結果:
結果を
図8及び以下の表に示す。データによれば、使用した出発材料は極めて異なる量の核酸を含んだが、正規化された量のRNAは、本発明による方法によって精製することができ、出発材料よりもはるかに小さい変動を受けた。
【0116】
【表4】