(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0014】
まず、本発明の好ましい実施の形態の基板処理装置で好適に使用される原料供給系を説明する。
【0015】
上述のように、液体原料を用いて成膜等の基板処理を行う際には、液体原料を気化させて気体状態とした原料ガスを用いる。液体原料を気化させるには、(1)温度を上げる、(2)圧力を下げる、の2点が重要である。ただし、半導体装置の製造工程においては、装置構成やプロセス条件等による様々な制約があり、例えば、温度を上げすぎては駄目であったり、圧力を下げ切れなかったりということがあり、適切な気化ラインを作ることは困難である。
【0016】
上述のように、液体原料を気化させて気体状態とした原料ガスを用いて半導体ウエハ上に成膜等の処理を行った場合に、ウエハ上にパーティクルが生じるという問題や気化ガスが再液化してしまうという問題等があり、本発明者達は、この問題を鋭意研究した結果、次の知見を得た。
【0017】
図1に示すような、液体原料を気化させる気化器271aから処理室201までのガス供給配管232a中にガスフィルタ272aを設けている基板処理装置では、ガスフィルタ272aは、気化器271aからの気化不良の液滴やパーティクル、ガス供給配管232aからのパーティクルを捕集することができる。なお、気化器271aから処理室201までのガス供給配管232aには、ヒータ150を設けて加熱できるようにしている。
【0018】
しかしながら、気化器271aで気化し難い(蒸気圧が低い)液体原料を使用した場合や、要求される気化流量が多い場合には、ガスフィルタ272aでパーティクルや気化不良の液滴を完全には捕集できない。その状態で成膜を行えば、
図6に示すように、ウエハ200上にはパーティクルが増えてしまう。さらに、ガスフィルタ272aが目詰まりを起こしパーティクル源にもなる。また、目詰まりを起こせばガスフィルタ272aのフィルタを交換しなければならないという問題も生じる。
【0019】
そこで、本発明者達は、
図2に示すように、気化器271aとガスフィルタ272aとの間のガス供給配管232aにミストフィルタ(ミストキラー)300を設けることを案出した。なお、気化器271aから処理室201までのガス供給配管232aには、ヒータ150を設けて、ガス供給配管232aを通過する原料ガスを加熱できるようにしている。
【0020】
図3を参照すれば、ミストフィルタ300は、ミストフィルタ本体350と、ミストフィルタ本体350の外側に設けられ、ミストフィルタ本体350を覆うヒータ360とを備えている。
【0021】
図4、
図5を参照すれば、ミストフィルタ300のミストフィルタ本体350は、両端の端部プレート310、340と、端部プレート310、340間に配置された2種類のプレート320、330とを備えている。上流側の端部プレート310には継手312が取り付けられている。下流側の端部プレート340には継手342が取り付けられている。端部プレート310および継手312内にはガス経路311が形成されている。端部プレート340および継手342内にはガス経路341が形成されている。継手312と継手342(ガス経路311とガス経路341)は、それぞれガス供給配管232aに接続される。
【0022】
2種類のプレート320、330はそれぞれ複数個設けられ、端部プレート310、340間に交互に配置されている。プレート320は平板状のプレート(プレート部)328と、プレート328の外周に設けられた外周部329とを備えている。プレート328には、その外周付近のみに穴322が複数設けられている。プレート330は平板状のプレート(プレート部)338と、プレート338の外周に設けられた外周部339とを備えている。プレート338には、その中心付近のみ(プレート328において穴322が形成される位置とは異なる位置)に穴332が複数設けられている。ミストフィルタ300は、プレート320とプレート330を複数枚組み合せることによって構成される。
【0023】
プレート320とプレート330は、穴322,332の形成位置を除き、同一あるいは略同一形状とされる。平板状のプレート328とプレート338は、平面視円形を呈し、穴322,332の形成位置を除き、同形状あるいは略同形状とされる。複数の穴322は、プレート328の外周側に、同心円を描くように形成される。複数の穴332は、プレート338の中心側に、同心円を描くように形成される。ここで、複数の穴322によって描かれる円と複数の穴332によって描かれる円の半径は相違させられる。具体的には、複数の穴322によって描かれる円の半径の方が、複数の穴332によって描かれる円の半径よりも大きい。換言すれば、プレート328において穴322が形成される領域と、プレート338において穴332が形成される領域は、異なる。それぞれの領域は、プレート320とプレート330を交互に配置(積層、重ね合わせ)したときに、その積層方向において、互い違いとなる位置に設定される。これにより、プレート320、330を交互に配置することによって、ミストフィルタ300の上流側から下流側に向け、穴322と穴332が互い違いに配置される。すなわち、穴322と穴332は、ミストフィルタ300の上流側から下流側に向け、互いに重ならないように配置される。
【0024】
プレート320,330の外周部329,339の厚さは、プレート328,338の厚さよりも大きく設定される。外周部329,339のそれぞれが、隣接するプレートの外周部329,339と接することにより、各プレート328,338の間には空間(後述)が形成される。また、外周部329,339は、プレート328,338に対してオフセットされた位置に形成される。より具体的には、外周部329,339は、その一方の面(プレート320とプレート330の積層方向における一方の面)がプレート328,338の平面から突出するように形成され、他方の面がプレート328,338の縁部上に位置するように形成される。これにより、プレート320とプレート330を積層したときに、プレート320の外周部329がプレート330のプレート338の縁部に嵌め合わされると共に、プレート330の外周部339がプレート320のプレート328の縁部に嵌め合わされ、プレート320,330が互いに位置合わせされる。
【0025】
このようなプレート320、330を交互に配置することによって、入り組んだ複雑なガス経路370となり、気化不良や再液化で発生した液滴が、加熱された壁面(プレート328、338)に衝突する確率を高めることができる。なお、穴322、332の大きさはミストフィルタ本体350内の圧力に依存し、好ましくは、直径1〜3mmである。下限値の根拠は、穴の大きさがあまりに小さいと詰まりが発生するためである。また、プレート330に設けられた穴332においては、中心に設けられた穴をその周辺より小さくしてもよい。
【0026】
液体原料が気化器271a(
図2参照)で気化して気体状態となった原料ガスおよび気化不良や再液化で生じた液滴は、端部プレート310および継手312内のガス経路311からミストフィルタ本体350内に導入され、1枚目のプレート320の平板状のプレート328の中央部421(穴322が形成されていない部位)に衝突し、その後、プレート328の外周付近に設けられた穴322を通過して、2枚目のプレート330の平板状のプレート338の外周部432(穴332が形成されていない部位)に衝突し、その後、プレート338の中心付近に設けられた穴332を通過して、3枚目のプレート320の平板状のプレート328の中央部422(穴322が形成されていない部位)に衝突し、その後、同様にしてプレート330、320を順次通過して端部プレート340および継手342内のガス経路341を通ってミストフィルタ本体350から導出され、下流のガスフィルタ272a(
図2参照)に送られる。
【0027】
ミストフィルタ本体350は、ヒータ360(
図3参照)によって外側から加熱される。ミストフィルタ本体350は、複数のプレート320とプレート330を備え、プレート320は、平板状のプレート328とプレート328の外周に設けられた外周部329とを備え、プレート330は、平板状のプレート338とプレート338の外周に設けられた外周部339とを備えている。プレート328と外周部329は一体的に構成され、プレート338と外周部339は一体的に構成されているので、ヒータ360によってミストフィルタ本体が外側から加熱されると、熱は効率よく平板状のプレート328、338に伝えられる。なお、プレート328と外周部329は一体的に構成されていなくても、完全に接触している状態であれば、また、プレート338と外周部339は一体的に構成されていなくても、完全に接触している状態であれば、ヒータ360からの熱を同様に十分効率よく、プレート328、338に伝えられる。
【0028】
ミストフィルタ本体350では、上述のように、複数のプレート320とプレート330により入り組んだ複雑なガス経路370を構成しているので、ミストフィルタ本体350内での圧力損失を上げすぎずに、気化して気体状態となった原料ガスおよび気化不良や再液化で生じた液滴の、加熱された平板状のプレート328、338への衝突確率を高めることができる。そして、気化不良や再液化で生じた液滴は、十分な熱量をもったミストフィルタ本体350内で、加熱された平板状のプレート328、338に衝突しながら再加熱され、気化される。
【0029】
ミストフィルタ本体350の材質は、気化器271aや配管232aで使用される材質と同等もしくそれらよりも高い熱伝導率の材質が好ましい。また、耐腐食性を有することも好ましい。一般的な材質としては、ステンレス材(SUS)が挙げられる。
【0030】
次に、数値流体力学解析ソフト(CFdesign)を使用して、ミストフィルタ本体350の解析を行った結果を説明する。解析対象のミストフィルタ本体350の寸法は、外径40mm、全長127mmとした。
【0031】
図7を参照すれば、ミストフィルタ本体350に30℃の窒素(N
2)ガスを20slmで供給しつつ、ミストフィルタ本体350の出口側の圧力を13300Paとなるような条件で解析を行った。圧力損失は1500Pa(
図8参照)であり、30℃のN
2ガスは、4枚目のプレート(1枚目のプレート320、2枚目のプレート330、3枚目のプレート320、そして4枚目のプレート330)で150℃に到達している(
図9参照)。解析においては、実機での条件とは異なるが、実際よりも不利な条件を満足するように行った。
【0032】
気化器271aとガスフィルタ272aとの間のガス供給配管232aにミストフィルタ300を設ける(
図2参照)と、気化し難い液体原料や気化流量が多い場合、気化不良で発生した液滴は、十分に熱量をもったミストフィルタ300内でプレート320の壁面(プレート328)とプレート330の壁面(プレート338)に衝突しながら再加熱され、気化する。そして、処理室201直前のガスフィルタ272aで、わずかに残った気化不良の液滴や気化器271a、ミストフィルタ300内部で発生するパーティクルを捕集する。ミストフィルタ300は気化補助の役割を果たし、気化不良で発生する液滴やパーティクルの無い反応ガスを処理室291内に供給でき、良質な成膜等の処理が行える。また、ミストフィルタ300は、ガスフィルタ272aの補助の役割も果たし、ガスフィルタ272aのフィルタ詰まりを抑制できることで、ガスフィルタ272aをメンテナンスフリーにできたり、またはガスフィルタ272aのフィルタ交換周期を延ばすことができる。
【0033】
上述のように、プレート320は、平板状のプレート328とプレート328の外周に設けられた外周部329とを備え、プレート330は、平板状のプレート338とプレート338の外周に設けられた外周部339とを備えている(
図4、5参照)。また、端部プレート310も平板状のプレート318とプレート318の外周に設けられた外周部319とを備え、端部プレート340も平板状のプレート348とプレート348の外周に設けられた外周部349とを備えている(
図4、5参照)。そして、これら外周部329、339、319、349の内側には、空間323、333、313、343がそれぞれ形成されている(
図4、5、
図10(A)参照)。なお、端部プレート310、端部プレート340、プレート320およびプレート330は、それぞれの外周部319、349、329、339同士が例えば溶接により接合されることにより、気密に接続される。また、上述のミストフィルタ300では、プレート320とプレート330を有するように構成したが、穴の形成位置が異なる3種以上のプレートを有するようにしてもよい。
【0034】
上述の実施の形態では、空間313、323、333、343には何も設けていなかった(
図10(A)参照)。しかしながら、ミストフィルタ本体350全体の圧力損失が許容される範囲であれば、空間313、323、333、343には、焼結金属等を充填してもよい。充填する焼結金属は、ミストフィルタ本体350の外部より加熱した熱を効率的に伝導できる材質であり、空間313、323、333、343に充填可能であれば、形状は、球状、粒状、非線形等、あらゆる形状が当てはまる。以下、上述の実施の形態の変形例を説明する。
【0035】
例えば、
図10(B)に示すように、金属のボールなどの球状の焼結金属314、324、334を空間313、323、333(343)に充填した構成としてもよい。球の大きさと圧力損失には相関関係があるため、目的にあった大きさを選択する。
【0036】
また、
図10(C)に示すように、粒状の焼結金属315、325、335を空間313、323、333(343)に充填した構成としてもよい。粒状は、球状より細かい大きさのものを充填した構成である。
【0037】
また、
図11(A)に示すように、ガスフィルタなどで使用されている焼結金属316、326、336を空間313、323、333(343)に充填した構成としてもよい。
【0038】
また、
図11(B)に示すように、ガスフィルタなどで使用されている焼結金属326を空間323にのみ充填し、空間313、333、343には何も充填しない構成としてもよい。ガスフィルタで使用する焼結金属は、その捕集するパーティクルのサイズで焼結前の金属粒径、繊維形状が決まる。より細かいパーティクルを捕集できる形状は緻密であり、圧力損失も大きくなる。よって、全ての空間313、323、333、343に充填するのではなく、空間の313、323、333、343のうちの一部の空間に選択的に充填することが効果的で好ましい場合もある。
【0039】
また、
図11(C)に示すように、プレート320の平板状のプレート328には、プレート328の外周の一方の側(外周側の一部の部位)にのみに穴322を設け、プレート330の平板状のプレート338には、プレート338の外周の他方の側(外周側の一部の部位であって、穴322とは重ならない位置)にのみに穴332を設けることにより、プレート328の外周付近に穴322を設け、プレート338の中心付近に穴332を設けた上述の実施の形態よりもガス経路370を長くすることができる。なお、本実施の形態においては、プレート320とプレート330は同一のものを使用し、穴が重ならないように積層してもよい。
【0040】
また、
図12(A)に示すように、ミストフィルタ本体350が円筒状の外側容器380と、内側部材385と、外側容器380と内側部材385との間に形成されるガス経路382内に充填された焼結金属等の充填部材386とを備えている。外側容器380と内側部材385との間に形成されるガス経路382を焼結金属等の充填部材386で充填することにより、ミストフィルタ本体350全体を一体の形状とし、内側部材385まで熱を効果的に伝導させることができる。外側容器380と内側部材385は、好適には金属部材、より好適には、ステンレス材(SUS)が用いられる。
【0041】
また、
図12(B)に示すように、ミストフィルタ本体350が円筒状の外側容器380と、内側部材385と、外側容器380と内側部材385との間に形成されるガス経路382内に充填された焼結金属等の充填部材386とを備えている。
図12(A)に示した構造のものは、外側容器380と内側部材385との間に形成されるガス経路382全体を焼結金属等の充填部材386で充填していたが、
図12(B)に示す構造のものは、外側容器380と内側部材385との間に形成されるガス経路382のうち、円筒状の外側容器380の側面389と内側部材385との間を充填部材386で充填するが、円筒状の外側容器380の上面、下面と内側部材385との間は、充填部材386で充填していない。この場合も、ミストフィルタ本体350全体を一体の形状とし、内側部材385まで熱を効果的に伝導させることができる。外側容器380と内側部材385は、好適には金属部材、より好適には、ステンレス材(SUS)が用いられる。
【0042】
上述の実施の形態の変形例において、空間313、323、333、343やガス経路382に充填する焼結金属としては、好適には、ステンレス材(SUS)が用いられる。その他にニッケル(Ni)も好適に用いられる。また、焼結金属に代えてテフロン(登録商標)系やセラミックスも使用可能である。
【0043】
また、
図2に示すように、気化器271aとミストフィルタ300との間に配管232aを設け、気化器271aとミストフィルタ300とを分離して設けている。処理室201が減圧であり、ミストフィルタ300が気化器271aよりも処理室201側に設けられているので、ミストフィルタ300の方が気化器271aよりも圧力が低い側に設けられている。ガスは圧力が低い方へ流れるため、気化器271aとミストフィルタ300とが分離していることで、気化器271aからミストフィルタ300に向かってガスの助走期間を持つことができる。その結果、ミストフィルタ300内で、ガスをより大きい流速で、プレート320、プレート330に衝突させることができるようになる。
【0044】
また、
図2に示すように、気化器271aの下流側にミストフィルタ300を設け、その下流側にガスフィルタ272aを設け、配管232aを介してガスフィルタ272aを処理室201に接続している。ミストフィルタ300とガスフィルタ272aは、できるだけ処理室201に近い位置に設置されることが好ましい。その理由は、気化器271aから処理室201までの配管232aの圧力損失との関係により、処理室201に近い位置に設置することでよりミストフィルタ300内の圧力を下げることができるからである。ミストフィルタ300内の圧力をより低圧力とすることで、気化しやすくすることができ、気化不良を抑制することができる。
【0045】
以下、本発明の好ましい実施の形態の基板処理装置について図面を参照しながら説明する。この基板処理装置は、一例として、半導体装置(半導体デバイス)としてのIC(Integrated Circuit)の製造方法における基板処理工程としての成膜工程を実施する半導体製造装置として構成されている。尚、以下の説明では、基板処理装置として基板に対して酸化、窒化、拡散処理やCVD処理などを行うバッチ式縦型装置(以下、単に処理装置という場合もある)を用いた場合について述べる。
【0046】
図13は、本実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面で示し、
図14は、本実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を横断面で示す。
図15は、
図13に示す基板処理装置が有するコントローラの構成を示す。
【0047】
図13に示されているように、処理炉202は、加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が設けられる。
【0048】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は反応管203の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側にはボートを回転させる回転機構267が設けられている。回転機構267の回転軸255はシールキャップを貫通して、後述するボート217に接続されており、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は反応管203の外部に設けられた昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート217を処理室201内に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0049】
シールキャップ219には断熱部材としての石英キャップ218を介して基板保持手段(支持具)としてのボート217が立設されている。石英キャップ218は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料で構成され断熱部として機能すると共にボートを保持する保持体となっている。ボート217は例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料で構成され複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて管軸方向に多段に支持されるように構成されている。
【0050】
処理室201内であって反応管203の下部には、ノズル249a、ノズル249b、が反応管203を貫通するように設けられている。ノズル249a、ノズル249bにはガス供給管232a、ガス供給管232bがそれぞれ接続されている。このように、反応管203には2本のノズル249a、249bと、2本のガス供給管232a、232bが設けられており、処理室201内へ複数の種類のガスを供給することができるように構成されている。また、後述のように、ガス供給管232a、ガス供給管232bには、それぞれ不活性ガス供給管232c、232e等が接続されている。
【0051】
ガス供給管232aには上流方向から順に、気化装置(気化手段)であり液体原料を気化して原料ガスとしての気化ガスを生成する気化器271a、ミストフィルタ300、ガスフィルタ272a、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a、及び開閉弁であるバルブ243aが設けられている。バルブ243aを開けることにより、気化器271a内にて生成された気化ガスがノズル249aを介して処理室201内へ供給されるように構成されている。ガス供給管232aにはマスフローコントローラ241aとバルブ243aの間に、後述の排気管231に接続されたベントライン232dが接続されている。このベントライン232dには開閉弁であるバルブ243dが設けられており、後述の原料ガスを処理室201に供給しない場合は、バルブ243dを介して原料ガスをベントライン232dへ供給する。バルブ243aを閉め、バルブ243dを開けることにより、気化器271aにおける気化ガスの生成を継続したまま、処理室201内への気化ガスの供給を停止することが可能なように構成されている。気化ガスを安定して生成するには所定の時間を要するが、バルブ243aとバルブ243dの切り替え動作によって、処理室201内への気化ガスの供給・停止をごく短時間で切り替えることが可能なように構成されている。さらにガス供給管232aには、バルブ243aの下流側に不活性ガス供給管232cが接続されている。この不活性ガス供給管232cには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241c、及び開閉弁であるバルブ243cが設けられている。ガス供給管232a、不活性ガス供給管232c、ベントライン232dにはヒータ150を取り付けて、再液化を防止している。
【0052】
ガス供給管232aの先端部には、上述のノズル249aが接続されている。ノズル249aは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル249aはL字型のロングのノズルとして構成されている。ノズル249aの側面にはガスを供給するガス供給孔250aが設けられている。ガス供給孔250aは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0053】
主に、ガス供給管232a、ベントライン232d、バルブ243a、243d、マスフローコントローラ241a、気化器271a、ミストフィルタ300、ガスフィルタ272a、ノズル249aにより第1のガス供給系が構成される。また主に、不活性ガス供給管232c、マスフローコントローラ241c、バルブ243cにより第1の不活性ガス供給系が構成される。
【0054】
ガス供給管232bには、上流方向から順に、オゾン(O
3)ガスを生成する装置であるオゾナイザ500、バルブ243f、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241b及び開閉弁であるバルブ243bが設けられている。ガス供給管232bの上流側は、酸素(O
2)ガスを供給する図示しない酸素ガス供給源に接続されている。オゾナイザ500に供給されたO
2ガスは、オゾナイザ500にてO
3ガスとなり、処理室201内に供給されるように構成されている。ガス供給管232bにはオゾナイザ500とバルブ243fの間に、後述の排気管231に接続されたベントライン232gが接続されている。このベントライン232gには開閉弁であるバルブ243gが設けられており、後述のO
3ガスを処理室201に供給しない場合は、バルブ243gを介して原料ガスをベントライン232gへ供給する。バルブ243fを閉め、バルブ243gを開けることにより、オゾナイザ500によるO
3ガスの生成を継続したまま、処理室201内へのO
3ガスの供給を停止することが可能なように構成されている。O
3ガスを安定して精製するには所定の時間を要するが、バルブ243f、バルブ243gの切り替え動作によって、処理室201内へのO
3ガスの供給・停止をごく短時間で切り替えることが可能なように構成されている。さらにガス供給管232bには、バルブ243bの下流側に不活性ガス供給管232eが接続されている。この不活性ガス供給管232eには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241e、及び開閉弁であるバルブ243eが設けられている。
【0055】
ガス供給管232bの先端部には、上述のノズル249bが接続されている。ノズル249bは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル249bはL字型のロングのノズルとして構成されている。ノズル249bの側面にはガスを供給するガス供給孔250bが設けられている。ガス供給孔250bは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0056】
主に、ガス供給管232b、ベントライン232g、オゾナイザ500、バルブ243f、243g、243b、マスフローコントローラ241b、ノズル249bにより第2のガス供給系が構成される。また主に、不活性ガス供給管232e、マスフローコントローラ241e、バルブ243eにより第2の不活性ガス供給系が構成される。
【0057】
ガス供給管232aからは、例えば、ジルコニウム原料ガス、すなわちジルコニウム(Zr)を含むガス(ジルコニウム含有ガス)が第1の原料ガスとして、気化器271a、ミストフィルタ300、ガスフィルタ272a、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。ジルコニウム含有ガスとしては、例えばテトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZ)を用いることができる。テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZ)は、常温常圧で液体である。
【0058】
ガス供給管232bには、酸素(O)を含むガス(酸素含有ガス)であって例えばO
2ガスが供給され、オゾナイザ500にてO
3ガスとなり、酸化ガス(酸化剤)として、バルブ243f、マスフローコントローラ241b、バルブ243bを介して処理室201内へ供給される。また、オゾナイザ500にてO
3ガスを生成せずに酸化ガスとしてO
2ガスを処理室201内へ供給することも可能である。
【0059】
不活性ガス供給管232c、232eからは、例えば窒素(N
2)ガスが、それぞれマスフローコントローラ241c、241e、バルブ243c、243e、ガス供給管232a、232b、ノズル249a、249bを介して処理室201内に供給される。
【0060】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245及び圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して真空排気装置としての真空ポンプが接続されており、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。尚、APCバルブ244は弁を開閉して処理室201内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能となっている開閉弁である。主に、排気管231、APCバルブ244、真空ポンプ246、圧力センサ245により排気系が構成される。
【0061】
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル249a、249bと同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0062】
制御部(制御手段)であるコントローラ121は、
図15に示すように、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random
Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バスを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
また、コントローラ121には、後述するプログラムを記憶した外部記憶装置(記憶媒体)123が接続可能とされる。
【0063】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。また、外部記憶装置123に制御プログラムやプロセスレシピ等を記憶させ、当該外部記憶装置123をコントローラ121に接続することにより、制御プログラムやプロセスレシピ等を記憶装置121Cに格納させることもできる。なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0064】
I/Oポート121dは、マスフローコントローラ241a、241b、241c、241e、バルブ243a、243b、243c、243d、243e、243f、243g、気化器271a、ミストフィルタ300、オゾナイザ500、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ150、207、温度センサ263、ボート回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0065】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU121aは、読み出したプロセスレシピに従って、マスフローコントローラ241a、241b、241c、241eによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a、243b、243c、243d、243e、243f、243gの開閉動作、APCバルブ244の開閉及び圧力センサ245に基づく圧力調整動作、ヒータ150の温度調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、気化器271a、ミストフィルタ300(ヒータ360)、オゾナイザ500の制御、真空ポンプ246の起動・停止、ボート回転機構267の回転速度調節動作、ボートエレベータ115の昇降動作等の制御等が行われる。
【0066】
次に、上述の基板処理装置の処理炉を用いて半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に絶縁膜を成膜するシーケンス例について、
図16、
図17を参照して説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0067】
CVD(Chemical Vapor Deposition)法では、例えば、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガスを同時に供給する。また、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガスを交互に供給する成膜方法もある。
【0068】
まず、複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると(
図16、ステップS101参照)、
図13に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される(
図16、ステップS102参照)。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0069】
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力に基づきAPCバルブ244が、フィードバック制御される(圧力調整)(
図16、ステップS103参照)。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)(
図16、ステップS103参照)。続いて、回転機構267により、ボート217が回転されることで、ウエハ200が回転される。
【0070】
次に、TEMAZガスとO
3ガスを処理室202内に供給することにより絶縁膜であるZrO膜を成膜する絶縁膜形成工程(
図16、ステップS104参照)を行う。絶縁膜形成工程では次の4つのステップを順次実行する。
【0071】
(絶縁膜形成工程)
<ステップS105>
ステップS105(
図16、
図17参照、第1の工程)では、まずTEMAZガスを流す。ガス供給管232aのバルブ243aを開き、ベントライン232dのバルブ243dを閉じることで、気化器271a、ミストフィルタ300およびガスフィルタ272aを介してガス供給管232a内にTEMAZガスを流す。ガス供給管232a内を流れたTEMAZガスは、マスフローコントローラ241aにより流量調整される。流量調整されたTEMAZガスはノズル249aのガス供給孔250aから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。このとき、同時にバルブ243cを開き、不活性ガス供給管232c内にN
2ガス等の不活性ガスを流す。不活性ガス供給管232g内を流れたN
2ガスは、マスフローコントローラ241cにより流量調整される。流量調整されたN
2ガスはTEMAZガスと一緒に処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。TEMAZガスを処理室201内に供給することでウエハ200と反応し、ウエハ200上にジルコニウム含有層が形成される。尚、ステップS105の実行に先立ち、ミストフィルタ300のヒータ360の動作が制御され、ミストフィルタ本体350の温度が所望の温度に維持される。
【0072】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば50〜400Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241aで制御するTEMAZガスの供給流量は、例えば0.1〜0.5g/分の範囲内の流量とする。TEMAZガスをウエハ200に晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば30〜240秒間の範囲内の時間とする。このときヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば150〜250℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。
【0073】
<ステップS106>
ステップS106(
図16、
図17参照、第2の工程)では、ジルコニウム含有層が形成された後、バルブ243aを閉じ、バルブ243dを開けて処理室201内へのTEMAZガスの供給を停止し、TEMAZガスをベントライン232dへ流す。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはジルコニウム含有層形成に寄与した後のTEMAZガスを処理室201内から排除する。尚、この時バルブ243cは開いたままとして、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはジルコニウム含有層形成に寄与した後のTEMAZガスを処理室201内から排除する効果を高める。不活性ガスとしては、N
2ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0074】
<ステップS107>
ステップS107(
図16、
図17参照、第3の工程)では、処理室201内の残留ガスを除去した後、ガス供給管232b内にO
2ガスを流す。ガス供給管232b内を流れたO
2ガスは、オゾナイザ500によりO
3ガスとなる。ガス供給管232bのバルブ243f及びバルブ243bを開き、ベントライン232gのバルブ243gを閉めることで、ガス供給管232b内を流れたO
3ガスは、マスフローコントローラ241bにより流量調整され、ノズル249bのガス供給孔250bから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。この時同時にバルブ243eを開き、不活性ガス供給管232e内にN
2ガスを流す。N
2ガスはO
3ガスと一緒に処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。O
3ガスを処理室201内に供給することにより、ウエハ200上に形成されたジルコニウム含有層とO
3ガスが反応してZrO層が形成される。
【0075】
O
3ガスを流すときは、APCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば50〜400Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241bで制御するO
3ガスの供給流量は、例えば10〜20slmの範囲内の流量とする。O
3ガスにウエハ200を晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば60〜300秒間の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、ステップ105と同様、ウエハ200の温度が150〜250℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。
【0076】
<ステップS108>
ステップS108(
図16、
図17参照、第4の工程)では、ガス供給管232bのバルブ243bを閉じ、バルブ243gを開けて処理室201内へのO
3ガスの供給を停止し、O
3ガスをベントライン232gへ流す。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは酸化に寄与した後のO
3ガスを処理室201内から排除する。尚、この時バルブ243eは開いたままとして、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは酸化に寄与した後のO
3ガスを処理室201内から排除する効果を高める。酸素含有ガスとしては、O
3ガス以外に、O
2ガス等を用いてもよい。
【0077】
上述したステップS105〜S108を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う(ステップS109)ことにより、ウエハ200上に所定膜厚のジルコニウムおよび酸素を含む絶縁膜、すなわち、ZrO膜を成膜することができる。尚、上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。これにより、ウエハ200上にZrO膜の積層膜が形成される。
【0078】
ZrO膜を形成後、ガス供給管232aのバルブ243aを閉じ、ガス供給管232bのバルブ243bを閉じ、不活性ガス供給管232cの243cを開き、不活性ガス供給管232eの243eを開いて、処理室201内にN
2ガスを流す。N
2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスが処理室201内から除去される(パージ、ステップS110)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰、ステップS111)。
【0079】
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200がボート217に保持された状態でマニホールド209の下端からプロセスチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード、ステップS112)される。その後、処理済みのウエハ200はボート217より取り出される(ウエハディスチャージ、ステップS112)。
【実施例1】
【0080】
上述の実施の形態の基板処理炉を使用して、ZrO膜の成膜を行った。また、比較のために、ミストフィルタ300を設けないでZrO膜の成膜を行った。ミストフィルタ300を設けない構成では、気化原料TEMAZを0.45g、供給時間300sec、75cycleでおこなった。成膜におけるステップカバレージが81%であった。これに対して、ミストフィルタ300を設けた構成では、気化流量を増加でき、気化原料TEMAZを3g、供給時間60sec、75cycleで成膜を行うと、ステップカバレージが91%になり、ステップカバレージ改善効果にもつながった。また、パーティクルも抑制できた。
【0081】
以上、詳細に説明したように、本発明の好ましい実施の形態では、気化し難い液体原料を使用する場合や気化流量を多く必要とする場合に気化不良を抑制できる。その結果、次の効果が得られる。(1)ガスフィルタ詰まりを抑制でき、メンテナンスフリー、またはフィルタ交換周期を延ばせる。(2)パーティクルレスまたはパーティクルを抑制した成膜が行える。(3)パターンウェーハにおけるステップカバレージの改善になる。
【0082】
上述の実施の形態では、ZrO膜の成膜を行ったが、ミストフィルタ300を用いる技術は、ZrO、HfO等のHigh−k(高誘電率)膜や、気化器(特に気化不良を起こしやすいガス、または大流量を必要とする膜種)を使用する膜種等、他の膜種にも適用可能である。特に、ミストフィルタ300を用いる技術は、蒸気圧の低い液体原料を用いる膜種に好適に適用可能である。
【0083】
ミストフィルタ300を用いる技術としては、例えば、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)等の金属元素を1以上含む金属炭化膜や金属窒化膜、もしくはこれらにシリコン(Si)を加えたシリサイド膜を形成する場合にも好適に適用可能である。その際、Ti含有原料としては塩化チタン(TiCl
4ガ)、テトラキスジメチルアミノチタン(TDMAT、Ti[N(CH
3)
2]
4)、テトラキスジエチルアミノチタン(TDEAT、Ti[N(CH
2CH
3)
2]
4)等を用いることができ、Ta含有原料としては塩化タンタル(TaCl
4)等を用いることができ、Co含有原料としてはCo amd[(tBu)NC(CH
3)N(tBu)
2Co]等を用いることができ、W含有原料としてはフッ化タングステン(WF
6)等を用いることができ、Mo含有原料としては塩化モリブデン(MoCl
3もしくはMoCl
5)等を用いることができ、Ru含有原料としては2,4−ジメチルペンタジエニル(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム((Ru(EtCp)(C
7H
11))等を用いることができ、Y含有原料としてはトリスエチルシクロペンタジエニルイットリウム(Y(C
2H
5C
5H
4)
3)等を用いることができ、La含有原料としてはトリスイソプロピルシクロペンタジエニルランタン(La(i−C
3H
7C
5H
4)
3)等を用いることができ、Zr含有原料としてはテトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(Zr(N(CH
3(C
2H
5))
4)等を用いることができ、Hf含有原料としてはテトラキスエチルメチルアミノハフニウム(Hf(N(CH
3(C
2H
5))
4)等を用いることができ、Ni含有原料としてはニッケルアミジナート(NiAMD)、シクロペンタジエニルアリルニッケル(C
5H
5NiC
3H
5)、メチルシクロペンタジエニルアリルニッケル((CH
3)C
5H
4NiC
3H
5)、エチルシクロペンタジエニルアリルニッケル((C
2H
5)C
5H
4NiC
3H
5)、Ni(PF
3)
4等を用いることができ、Si含有原料としてはテトラクロロシラン(SiCl
4)、ヘキサクロロジシラン(Si
2Cl
6)、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)、トリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH
3)
2)
3)、ビスターシャルブチルアミノシラン(H
2Si(HNC(CH
3)
2)
2)等を用いることができる。
【0084】
Tiを含む金属炭化膜としては、TiCNやTiAlC等を用いることができる。TiCNの原料としては、例えば、TiCl
4とHf[C
5H
4(CH
3)]
2(CH
3)
2とNH
3とを用いることができる。また、TiAlCの原料としては、例えば、TiCl
4とトリメチルアルミニウム(TMA、(CH
3)
3Al)を用いることができる。また、TiAlCの原料として、TiCl
4とTMAとプロピレン(C
3H
6)とを用いてもよい。また、Tiを含む金属窒化膜としては、TiAlN等を用いることができる。TiAlNの原料としては、例えば、TiCl
4とTMAとNH
3とを用いることができる。
【0085】
(本発明の好ましい態様)
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0086】
(付記1)
処理室に基板を搬入する工程と、
液体原料を、気化器、異なる位置に穴を有する少なくとも2種のプレートを複数枚組み合わせて構成されるミストフィルタに順に流すことにより気化させて前記処理室に供給して前記基板を処理する工程と、
前記処理室から基板を搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【0087】
(付記2)
前記ミストフィルタは、外周付近に穴が複数設けられた第1のプレートと、中心付近に穴が複数設けられた第2のプレートとを交互に配置した構成とされ、
前記基板を処理する工程において、前記気化器を通過した原料を前記第1のプレートの穴と前記第2のプレートの穴に交互に通過させることにより気化させる付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0088】
(付記3)
前記基板を処理する工程では、前記液体原料を、前記気化器、前記ミストフィルタ、ガスフィルタの順に流すことにより気化させて前記処理室に供給して前記基板を処理する付記1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【0089】
(付記4)
処理室に基板を搬入する工程と、
液体原料を、気化器、異なる位置に穴を有する少なくとも2種のプレートを複数枚組み合わせて構成されるミストフィルタに順に流すことにより気化させて前記処理室に供給して前記基板を処理する工程と、
前記処理室から基板を搬出する工程と、
を有する基板処理方法。
【0090】
(付記5)
前記ミストフィルタは、外周付近に穴が複数設けられた第1のプレートと、中心付近に穴が複数設けられた第2のプレートとを交互に配置した構成とされ、
前記基板を処理する工程において、前記気化器を通過した原料を前記第1のプレートの穴と前記第2のプレートの穴に交互に通過させることにより気化させる付記4に記載の基板処理方法。
【0091】
(付記6)
前記基板を処理する工程では、前記液体原料を、前記気化器、前記ミストフィルタ、ガスフィルタの順に流すことにより気化させて前記処理室に供給して前記基板を処理する付記4または5に記載の基板処理方法。
【0092】
(付記7)
処理室に基板を搬入する手順と、
液体原料を、気化器、異なる位置に穴を有する少なくとも2種のプレートを複数枚組み合わせて構成されるミストフィルタに順に流すことにより気化させて前記処理室に供給して前記基板を処理する手順と、
前記処理室から基板を搬出する手順と、
を制御部に実行させるプログラム。
【0093】
(付記8)
前記ミストフィルタは、外周付近に穴が複数設けられた第1のプレートと、中心付近に穴が複数設けられた第2のプレートとを交互に配置した構成とされ、
前記基板を処理する手順は、前記気化器を通過した原料を前記第1のプレートの穴と前記第2のプレートの穴に交互に流すことにより気化させて前記処理室に供給して前記基板を処理する手順である付記7に記載のプログラム。
【0094】
(付記9)
前記基板を処理する手順は、前記液体原料を、前記気化器、前記ミストフィルタ、ガスフィルタの順に流すことにより気化させて前記処理室に供給して前記基板を処理する手順である付記7に記載のプログラム。
【0095】
(付記10)
処理室に基板を搬入する手順と、
液体原料を、気化器、異なる位置に穴を有する少なくとも2種のプレートを複数枚組み合わせて構成されるミストフィルタに順に流すことにより気化させて前記処理室に供給して前記基板を処理する手順と、
前記処理室から基板を搬出する手順と、
を制御部に実行させるプログラムが記録された記録媒体。
【0096】
(付記11)
前記ミストフィルタは、外周付近に穴が複数設けられた第1のプレートと、中心付近に穴が複数設けられた第2のプレートとを交互に配置した構成とされ、
前記基板を処理する手順は、前記気化器を通過した原料を前記第1のプレートの穴と前記第2のプレートの穴に交互に流すことにより気化させて前記処理室に供給して前記基板を処理する手順である付記10に記載の記録媒体。
【0097】
(付記12)
前記基板を処理する手順は、前記液体原料を、前記気化器、前記ミストフィルタ、ガスフィルタの順に流すことにより気化させて前記処理室に供給して前記基板を処理する手順である付記10に記載の記録媒体。
【0098】
(付記13)
基板を収容する処理室と、
前記処理室に処理ガスを供給する処理ガス供給系と、
前記処理室を排気する排気系と、
を備え、
前記処理ガス供給系は、
液体原料が供給される気化器と、
前記気化器の下流に配置されたミストフィルタと、
を有し、
前記ミストフィルタは、異なる位置に穴を有する少なくとも2種のプレートを複数枚組み合わせて構成される基板処理装置。
【0099】
(付記14)
前記ミストフィルタは、外周付近に穴が複数設けられた第1のプレートと、中心付近に穴が複数設けられた第2のプレートとを交互に配置した構成とされる付記13に記載の基板処理装置。
【0100】
(付記15)
前記処理ガス供給系は、
前記ミストフィルタの下流に配置されたガスフィルタを有する付記13または14に記載の基板処理装置。
【0101】
(付記16)
前記気化器、前記ミストフィルタ、前記ガスフィルタは、夫々分離して構成される付記15に記載の基板処理装置。
【0102】
(付記17)
前記ミストフィルタは、前記少なくとも2種のプレートを加熱するヒータを備える付記13から16のいずれかに記載の基板処理装置。
【0103】
(付記18)
前記少なくとも2種のプレートは金属から構成される付記13から17のいずれかに記載の基板処理装置。
【0104】
(付記19)
前記少なくとも2種のプレートは、前記穴を除いて同一あるいは略同一形状に構成される付記13から18に記載の基板処理装置。
【0105】
(付記20)
前記少なくとも2種のプレートは、前記穴が形成されるプレート部と、前記プレート部の外周に形成された外周部とを有し、前記外周部の厚さは前記プレート部の厚さよりも大きく設定され、前記外周部同士が接することによって前記少なくとも2種のプレートのプレート部間に空間が形成される付記13から19のいずれかに記載の基板処理装置。
【0106】
(付記21)
前記外周部は、前記プレート部の外周において前記プレート部に対してオフセットされた位置に形成される付記13から20のいずれかに記載の基板処理装置。
【0107】
(付記22)
前記少なくとも2種のプレート間には焼結金属が充填される付記13から21のいずれかに記載の基板処理装置。
【0108】
(付記23)
前記処理ガスは、ジルコニウム含有原料である付記13から22のいずれかに記載の基板処理装置。
【0109】
(付記24)
液体原料が供給される気化器と、
前記気化器の下流に配置されたミストフィルタと、
を有し、
前記ミストフィルタは、異なる位置に穴を有する少なくとも2種のプレートを複数枚組み合わせて構成される気化システム。
【0110】
(付記25)
前記ミストフィルタは、外周付近に穴が複数設けられた第1のプレートと、中心付近に穴が複数設けられた第2のプレートとを交互に配置した構成とされる付記24に記載の気化システム。
【0111】
(付記26)
さらに、前記ミストフィルタの下流に配置されたガスフィルタを有する付記24または25に記載の気化システム。
【0112】
(付記27)
前記気化器、前記ミストフィルタ、前記ガスフィルタは、夫々分離して構成される付記26に記載の気化システム。
【0113】
(付記28)
前記ミストフィルタは、前記少なくとも2種のプレートを加熱するヒータを備える付記24から27のいずれかに記載の気化システム。
【0114】
(付記29)
異なる位置に穴を有する少なくとも2種のプレートを複数枚組み合わせて構成されるミストフィルタ。
【0115】
(付記30)
前記ミストフィルタは、外周付近に穴が複数設けられた第1のプレートと、中心付近に穴が複数設けられた第2のプレートとを交互に配置した構成とされる付記29に記載のミストフィルタ。
【0116】
(付記31)
さらに、前記少なくとも2種のプレートを加熱するヒータを備える付記29から30のいずれかに記載のミストフィルタ。
【0117】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。