特許第6156987号(P6156987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6156987
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】車両用内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/28 20160101AFI20170626BHJP
   F02M 26/15 20160101ALI20170626BHJP
【FI】
   F02M26/28
   F02M26/15
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-150861(P2013-150861)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2015-21439(P2015-21439A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】窪田 隆
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/054711(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/056885(WO,A1)
【文献】 特開2008−163783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00−99/00
F01P 1/00−11/20
F02B 47/08−47/10、61/00−79/00
F02M 26/00−26/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に排気マニホールドが固定された機関本体を、前記一面が車両の前進方向に向いた前面になるようにして配置しており、前記排気マニホールドには、排気系の一部を構成する触媒ケースが軸線を上下長手にした姿勢で接続されており、前記触媒ケースの右側又は左側に、前記排気系から分岐した上下長手のEGR導入管路を、前記触媒ケースとの間に間隔を空けた状態で配置している構成であって、
前記触媒ケースの下部は、下方に向けて窄まった下テーパ部になっている一方、
前記EGR導入管路は、当該EGR導入管路を外側から覆う水冷式のEGRクーラを備えており、前記EGRクーラに、金属製の冷却水導入管と冷却水排出管とが、冷却水導入管が下で冷却水排出管が上に位置する状態で接続されていて、前記EGRクーラと冷却水導入管との接続部は前記触媒ケースの下テーパ部よりも上に位置しており、
かつ、前記冷却水導入管は、前記EGRクーラとの接続部からいったん下がってから前記触媒ケースにおける下テーパ部の裏を通り、それから上向きに姿勢を変えて前記EGRクーラから遠ざかっている、
車両用内燃機関。
【請求項2】
前記EGRクーラは、上に行くに従って前記機関本体に近づくように鉛直線に対して後傾しており、前記冷却水排出管を、前記EGRクーラの上端部でかつ手前側の部分に接続している、
請求項1に記載した車両用内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、車両(自動車)に搭載されるEGR装置付き内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用内燃機関において、燃費向上等のために排気ガスを吸気系に還流させることは広く行われている。この場合、高温の排気ガスをダイレクトに還流させると、充填効率が低下する等の不具合があるため、EGR管路(EGR通路)に水冷式のEGRクーラを設けて、機関の冷却水をEGRクーラに通水していることも多い。
【0003】
EGR装置に関しては、例えばEGR管路の配置やEGRクーラの配置、或いは排気系からEGR管路を分岐させる形態など、様々な提案が成されている。例えば、EGR管路を排気系から分岐させる構造の一例として特許文献1には、EGR管路を触媒ケース(触媒コンバータ)の下端から分岐させて、EGRクーラと平行な姿勢で上向きに延ばしてから、方向を略水平状に変えてシリンダヘッドに接続する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−278342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、EGR管路は車両の走行風で冷却することを予定しており、冷却効率を高めるため、EGR管路のうち触媒ケースと平行に延びる上下長手の部分に、表面積を大きくするコルゲート状部を設けている。
【0006】
しかし、車両の停止状態で機関が運転していることは多いため、走行風による冷却ではEGRガスの冷却が十分とは言い難く、また、走行風はEGR管の前面にしか当たらないため、車両の走行中においても冷却が不完全になりやすい。この点、従来から広く知られている水冷式のEGRクーラを適用すると、EGRクーラをコンパクトに配置してスペースを有効利用しつつ、EGRガスの冷却性能を格段に向上できると云える。
【0007】
しかるに、EGRクーラには冷却水導入管と冷却水排出管とを接続せねばならず、EGRクーラを上下長手の姿勢にすると、EGRクーラの下端部に接続した管はかなり下方に位置するため、車両の走行中に車輪で跳ね上げられた小石がエンジンルームに飛び込んで下側に位置した管に当たる確率も高くなるが、冷却水導入管や冷却水排出管は細いため、小石が当たって損傷する可能性がないとも云えない。
【0008】
また、機関の組み立て時やメンテナンス時に、工具が冷却水用の管に触れて管を変形又は損傷させてしまうこともあり得る。また、冷却水導入管や冷却水排出管には、可撓性のホースが接続されるのが普通であるが、ホースを排気マニホールドや排気管の手前に配置すると、輻射熱で劣化しやすくなるおそれもある。
【0009】
更に、EGRクーラを上下長手(縦長)の姿勢に配置すると、EGRクーラの上端部に空気が溜まる現象が発生することがあり、すると、冷却が不完全になったり、キャビテーションが発生したりするおそれがある。
【0010】
本願発明は、このような現状を背景にして成されたものであり、EGRクーラを上下長手の姿勢で配置することを、より改善された態様で実現せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は車両用内燃機関に関し、この内燃機関は、一面に排気マニホールドが固定された機関本体を、前記一面が車両の前進方向に向いた前面になるようにして配置しており、前記排気マニホールドには、排気系の一部を構成する触媒ケースが軸線を上下長手にした姿勢で接続されており、前記触媒ケースの右側又は左側に、前記排気系から分岐した上下長手のEGR導入管路を、前記触媒ケースとの間に間隔を空けた状態で配置している、という基本構成である。
【0012】
そして、前記触媒ケースの下部は、下方に向けて窄まった下テーパ部になっている一方、
前記EGR導入管路は、当該EGR導入管路を外側から覆う水冷式のEGRクーラを備えており、前記EGRクーラに、金属製の冷却水導入管と冷却水排出管とが、冷却水導入管が下で冷却水排出管が上に位置する状態で接続されていて、前記EGRクーラと冷却水導入管との接続部は前記触媒ケースの下テーパ部よりも上に位置しており、
かつ、前記冷却水導入管は、前記EGRクーラとの接続部からいったん下がってから前記触媒ケースにおける下テーパ部の裏を通り、それから上向きに姿勢を変えて前記EGRクーラから遠ざかっている。
【0013】
本願発明は好適な態様として請求項2の発明も含んでおり、この発明では、前記EGRクーラは、上に行くに従って前記機関本体に近づくように鉛直線に対して後傾しており、前記冷却水排出管を、前記EGRクーラの上端部でかつ手前側の部分に接続している。
【発明の効果】
【0014】
EGRクーラはかなり大きな容積があるが、本願発明では、冷却水導入管が内蔵されたEGRクーラは排気系の触媒ケースと並んだ状態に配置されているため、排気系とのぶつかりを無くしつつ狭いスペースに配置できる。このためスペースを有効利用でき、延いては内燃機関のコンパクト化にも貢献できる。また、冷却水は重力に逆らってEGRクーラの内部を下から上に流れるため、冷却水の内部に残留している気泡がEGRクーラ内に留まることを防止できる。
【0015】
さて、車両のエンジンルームは底が開口しているタイプも多くあり、この場合は、車輪で跳ね上げた小石がエンジンルームに飛び込むことが有り得るが、この場合、小石は前から後ろに向けて飛んでくる。
【0016】
この点、本願発明では、冷却水導入管はEGRクーラの下端部に接続されているので、小石が冷却水導入管に向けて飛んで来たとしても、冷却水導入管は触媒ケースの裏(後ろ)を通っているため、触媒ケースがカバーの役割を果たして、小石が冷却水導入管に衝突する確率を著しく低下させることができる。従って、冷却水導入管に小石が衝突する確率を著しく小さくした状態で、EGRクーラを上下長手の姿勢にして排気系の触媒ケースと並べて配置できる。
【0017】
特に、実施形態のように、冷却水導入管をEGRクーラの後面(裏面、背面)に接続すると共に、冷却水導入管を触媒ケースの後ろに回り込ませると、EGRクーラも冷却水導入管に対する保護機能を発揮するのみならず、かなりの大きさの触媒ケースが高い防護機能を発揮するため、小石の衝突防止機能はより一層高くなる利点がある。
【0018】
また、冷却水導入管のいったん下がってから触媒ケースの下テーパ部の後ろを通っているので、EGR導入管路を触媒ケースの本体部の後面(背面)から後ろにはみ出ない状態に保持できる。このため、触媒ケースやEGRクーラからなるユニットを台等に置くにおいて、冷却水導入管が台に当たって変形するといった不具合が発生しない。
た、機関の組立時やメンテナンス時に工具類が冷却水導入管に触れる可能性は著しく低減する。このため、組立時やメンテナンス時に誤って冷却水導入管を変形させる事故が発生する確率も著しく低減できる。
【0019】
また、冷却水導入管を触媒ケースの裏側に通すと、冷却水導入管の先端は必然的に触媒ケースを挟んでEGRクーラと反対側に位置するので、冷却水のホースを触媒ケースの裏側に配置する必要はなくなる。このため、ホースが触媒ケースの輻射熱を受けることを防止又は著しく抑制できる。その結果、ホースの取り回しも容易になるのであり、これにより、設計の自由性を向上できる。
【0020】
請求項2の構成を採用すると、EGRクーラは上端部のうち手前側の部分が最も高さが高くなり、この最も高さが高い部分に冷却水排出管が接続されるため、空気溜まりが発生する余地を無くすことができる。従って、空気溜まりに起因した冷却の不完全性やキャビテーションを防止できる。EGRクーラを後傾させると、EGRクーラの下端はその後端が最も低くなるが、冷却水導入管はEGRクーラの下端部のうち最も低い後面の箇所に接続されているため、EGRクーラに冷却水のよどみが発生することも防止できる。これによっても、冷却性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(A)は実施形態の正面図、(B)はステーを表示した状態での(A)のB−B視断面図である。
図2】(A)は側面図、(B)はEGRクーラの部分断面図である。
図3】(A)は平面図、(B)は部分的な側面図で、(C)は図2(A)のIIIC-IIIC 視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では方向を特定するため上下・左右・前後の文言を使用するが、上下は鉛直線の方向であり、前後方向はクランク軸及びシリンダボアに対して直交した方向であり、左右はクランク軸の長手方向である。また、内燃機関は車両に搭載されるものであり、前後・左右は運転者から見た方向での前後・左右と同じである。
【0023】
(1).概要
本実施形態の内燃機関は、シリンダブロック1とその上面に固定されたシリンダヘッド2とを有する機関本体を備えており、機関本体は、クランク軸(図示せず)を左右長手の姿勢にした横向きで車両に搭載されている。本実施形態の内燃機関は3気筒であり、シリンダヘッド2のうち車両の前進方向を向いた前面2aに、3つの排気ポート3が左右に並んで開口していると共に、排気ポート3に連通した排気マニホールド4が固定されている。敢えて述べる必要はないが、シリンダヘッド2の後面には、吸気ポートが開口していると共に吸気マニホールドが固定されている。
【0024】
内燃機関は3気筒であるので、排気マニホールド4は3つの枝管5とこれらに連通した集合管6とを有している。集合管6は下向きに開口しており、この集合管6に、排気系の一部を構成する上下長手の触媒ケース(触媒コンバータ)7が固定されている。また、排気マニホールド4は各枝管5の入口部に繋がったフランジ8を備えており、フランジ8がボルト(図示せず)でシリンダヘッド1に固定されている。
【0025】
図1に示す符号9は、ボルトが挿通される取り付け穴である。集合管6は図1において排気マニホールド4の左右中間位置から右側(運転者から見ると左側)にずらして配置しているが、左側にずらしてもよいし、左右中間部に設けてもよい。また、排気マニホールド4はブロック状に構成してシリンダヘッド2と一体化することも可能である。
【0026】
触媒ケース7は排気系の一部を構成するものであり、その内部には三元触媒が配置されている。また、触媒ケース7は、上端部を段付き状縮径部7aと成して下端部を下窄まりの下テーパ部7bと成した円筒形態であり、下テーパ部7bに継手管10を一体に設けて、継手管10の上下中途部に金属板製の支持ブラケット11を溶接で固定している。継手管10には排気管12が下方から接続されている。排気管12も排気系を構成している。排気マニホールド4の集合管6には、酸素濃度等を検出するセンサが固定されるセンサ取り付け座13を設けている。
【0027】
支持ブラケット11は継手管10を横切る形態で水平に近い状態で広がっており、その一端(図1で左側の端)に、正面視では触媒ケース7と反対側に傾斜して側面視では後傾した立ち上がり部11aを曲げ形成している。立ち上がり部11aは、シリンダブロック1にボルトで固定されたステー14に固定されている。
【0028】
従って、触媒ケース7は、支持ブラケット11及びステー14を介してシリンダブロック1で支持されている。支持ブラケット11の固定手段としては、ステー14に前向き突設したスタッドボルト15にナット16をねじ込んでいるが、頭付きボルトとナットとを使用したり、ボルトをステー14にねじ込むなどしてもよい。
【0029】
排気マニホールド4の集合管6に排気ターボ過給機の入口管を固定して、排気ターボ過給機の出口管に触媒ケース7を接続する場合もある。
【0030】
触媒ケース7における下テーパ部7bのうち、支持ブラケット11の立ち上がり部11aと反対側の外周面には、EGRクーラ17を有する上下長手のEGR導入管路18が、継手パイプ19及びボス体20を介して接続されている。従って、支持ブラケット11の立ち上がり部11aとEGRクーラ17付きEGR導入管路18とは、触媒ケース7を挟んだ左右両側に位置している。
【0031】
EGR導入管路18の上端には、シリンダヘッド2の方向に向いたジョイント管21が接続されている。ジョイント管21は屈曲はしているもののおおまかには前後方向に長い形態であり、その先端にフランジ板22がロウ付け又は溶接で固定されている。フランジ板22は上下方向に長い形態であり、上端部と下端部とにボルトが嵌まる取り付け穴22aが空いており、ボルトでシリンダヘッド2の前面に固定されている。
【0032】
ジョイント管21のうちフランジ板22に固定された先端部は、フランジ板22にロウ付けで固定された押え部材23で上から押え保持されている。図示は省略するが、シリンダヘッド2の右端部にはジョイント管21に連通した前後長手のEGR通路が貫通しており、EGR通路に流入した排気ガスは、EGRバルブ(図示せず)を介して吸気系(例えばサージタンク)に還流する。
【0033】
(2).EGR装置関連要素の全体構成
上記のとおり、EGRクーラ17付きEGR導入管路18は図1の状態で触媒ケース7の右に位置しており、EGRクーラ17付きEGR導入管路18は、正面視では触媒ケース7と略平行で、側面視では、図2(B)に表示するように、鉛直線Vに対してある程度の角度θで後傾した姿勢になっている。
【0034】
また、触媒ケース7に対する取り付け位置は、図4に示すように、触媒ケース7の軸心を通ってシリンダヘッド2の前面2aと平行な線Xよりも手前に位置している。すなわち、触媒ケース7の真横の部分よりも少し手前の位置に接合されている。従って、触媒ケース7とEGRクーラ17との外面間の間隔は図1の状態よりは大きくなっており、上に行くに従って間隔が狭まっている。
【0035】
排気マニホールド4と触媒ケース7とは、薄板製のインシュレータ(図示せず)で手前側から覆われるようになっている。そこで、排気マニホールド4の上端の2カ所と触媒ケース7の1カ所とEGRクーラ17の後面の上下2カ所とに、インシュレータを固定するための取り付け片25を溶接で固定している。インシュレータの右端は、触媒ケース7とEGRクーラ17との間の空間に向けて延びている。
【0036】
EGR導入管路18はEGRクーラ17に内蔵されている。従って、形式的にはEGR導入管路18はEGRクーラ17の一部のような外観を呈している。図3(C)に示すように、EGR導入管路18は、横断面花びら状のフィン管18aを鞘管18bで覆った形態を成しており、鞘管18bとEGRクーラ17との間の空間に冷却水が通る。
【0037】
(3).EGRクーラへの配管構造
EGRクーラ17は水冷方式であり、そこで、例えば図1のとおり、EGRクーラ17には、冷却水導入管26と冷却水排出管27とが接続されている。冷却水導入管26はEGRクーラ17の下端部背面に接続され、冷却水排出管27はEGRクーラ17の上端部前面に接続されている。
【0038】
冷却水導入管26及び冷却水排出管27の材料にはステンレス管を使用しており、先端部には軟質材製ホース(チューブ)28a,28bが外から嵌め込まれる。敢えて述べるまでもないが、冷却水導入管26及び冷却水排出管27は、EGR導入管路18よりも遥かに小径である。
【0039】
冷却水排出管27はブラケット類で支持されていないが、長さは10cmに満たないため、ホース28bを差し込むに際して曲がり変形することはない。また、冷却水排出管27はインシュレータの外側に配置されているので、冷却水排出管27及びこれに接続されたホース28bは、排気マニホールド4及び触媒ケース7の輻射熱に晒されることはない。
【0040】
また、EGRクーラ17は、その下端は排気ガスの熱によってかなり高温になっているが、上端は冷却されてよってさほど高温にはなっていない。従って、冷却水排出管27もさほどの高温になることはなく、従って、ホース28bが軟質材製であっても劣化が早まるこはない。
【0041】
更に、冷却水排出管27は、図2のとおり、上に行くに従ってシリンダヘッド2に近づくように後傾しているが、冷却水排出管27の上には特段の障害物はないので、ホース28bの嵌脱は支障なく行える。また、冷却水排出管27の上端は排気マニホールド4の上にはみ出ていないので、組み立て前の運搬や保管に際して冷却水排出管27が物に当たって変形する不具合を防止できる。また、冷却水排出管27は、触媒ケース7の手前にもはみ出てはない。従って、物が冷却水排出管27に当たる不具合も防止できる。
【0042】
他方、冷却水導入管26は、EGRクーラ17を出てからいったん下方に下がって、EGRクーラ17における下テーパ部7bの後ろを略水平姿勢で通ってから再び上向きに姿勢を変えている。上向きに立ち上がった部分26aは、正面視では、上に行くに従って触媒ケース7から離れるにように傾斜し(図1参照)、側面視では、上に行くに従って後ろに行くように後傾している(図2参照)。
【0043】
冷却水導入管26の水平部26cは触媒ケース7の下テーパ部7bの後ろを通っているので、水平部26cが触媒ケース7の本体部の後面(背面)から後ろにはみ出ない状態に保持できる。このため、触媒ケース7やEGRクーラ17からなるユニットを台等に置くにおいて、冷却水導入管26が台に当たって変形するといった不具合は発生しない。
【0044】
図2に示すように、冷却水導入管26の付け根部は、EGRクーラ17に溶接で固定した吊支ブラケット31で下方から支持されている。従って、運搬や保管等に際して、物が当たる等して冷却水導入管26の水平部26cに前向きの外力が作用しても、冷却水導入管26の付け根がEGRクーラ17から外れるようなことはない。
【0045】
冷却水導入管26はかなりの長さがあるので、先端側の上向き立ち上がり部26aに固定片29を溶接又はロウ付けで固定し、固定片29を支持ブラケット11の立ち上がり部11aにボルト30で固定している。支持ブラケット11の立ち上がり部11aにはボルト30が螺合するタップ穴を設けているが、ナットを溶接したり、スタッドボルトを固定してこれにナットをねじ込んだりしてもよい。
【0046】
冷却水導入管26のうちボルト30による固定箇所よりも先の先端部26bは、図1のとおり正面視では立ち上がり部26aと同様に上に行くに従って触媒ケース7から離れるように傾斜し、側面視では、図2のとおり、上に行くに従ってシリンダブロック1から離れるように前傾している。従って、ホース28bの嵌脱を容易に行える(触媒ケース7等が作業の邪魔にならない。)。
【0047】
冷却水導入管26の先端部は支持ブラケット11にしっかりと固定されているため、ホース28aの嵌め込みを容易に行える。また、冷却水導入管26は長くても触媒ケース7の後ろに巻かれているため、機関のメンテナンス等において工具が当たるような不具合を抑制できる。また、インシュレータの邪魔にもならない。冷却水導入管26が振動で振れ動くような問題も皆無である。
【0048】
冷却水導入管26の先端はインシュレータの左端の外側にはみ出ているので、ホース28aの嵌脱はインシュレータを取り付けたままで行える。冷却水排出管27の先端部もインシュレータの上にはみ出ている。従って、冷却水排出管27へのホース28aの嵌脱も、インシュレータを固定したままで行える。
【0049】
なお、EGRクーラ17に対する配管の回路は様々に設定できるが、例えば、冷却水導入管26aに接続したホース28aはウォータポンプの吐出口に接続し、冷却水排出管27に接続したホースはシリンダヘッド2に設けたサーモ弁の箇所に接続できる。サーモ弁はラジェータへの通水を制御するもので、冷却水がラジェータに流れていない場合は、冷却水はEGRクーラ17にも流れない。
【0050】
継手パイプ19、EGRクーラ17及びEGR導入管路18、ジョイント管21、冷却水の導入・排出管26,27はEGR装置を構成するものであり、そこで、これらはEGR関連配管と呼ぶことができる。
【0051】
ボス体20は、触媒ケース7の下テーパ部に7bに溶接で固定されている。また、継手パイプ19は水平部と起立部とを備えたL型になっており、水平部をボス体20に部分的に差し込んで、溶接にてボス体20に一体に固定している。
【0052】
他方、継手パイプ19の起立部19bはEGR導入管路18及びEGRクーラ17に接続されているが、EGR導入管路18の鞘管18bは継手パイプ19よりも大径であるため、鞘管18bの下端に縮径部18b′を形成し、縮径部18b′に継手パイプ19の起立部を挿入してロウ付け(又は溶接)が固定している。
【0053】
ジョイント管21もEGR導入管路18の鞘管18bより小径である。そこで、EGR導入管路18の上端とEGRクーラ17の上端にも上窄まりの縮径部18b′を設けて、縮径部18b′にジョイント管21を挿入してロウ付けしている。
【0054】
(3).まとめ・他
以上の構成において、冷却水導入管26はEGRクーラ17の後面に接続されていてしかも触媒ケース7の後ろを通っているため、車両の走行時に車輪で小石が跳ね上げられてこれがエンジンルームに飛び込んできて冷却水導入管26に向かっても、EGRクーラ17及び触媒ケース7がカバーの役割を果たすことで、小石が冷却水導入管26に当たる確率を著しく低下させることができる。
【0055】
また、冷却水導入管26は長さが長いことから、EGRクーラ17の下部が高温になっていてもその熱が先端まで及ぶことはないため、ホース28aが熱害を受けることはない。そして、ウォータポンプはシリンダブロック1のうち図1において左側(触媒ケース7及びシリンダブロック1と反対側)の側面部に配置しているため、ホース28aは触媒ケース7及び排気マニホールド4から離れる方向に取り回されており、従って、ホース28aが排気マニホールド4及び触媒ケース7の輻射熱を受けることもない。このため、ホース28aの配置の自由性を確保できる。
【0056】
本実施形態のようにEGRクーラ17を後傾させると、図2(B)から明瞭に理解できるように、EGRクーラ17の前部上端が最も高くて下部後端が最も低くなるため、実施形態のように、上端部前面に冷却水排出管27を接続することで空気溜まりの発生を防止できると共に、下部後面に冷却水導入管26を接続することで、下端部での冷却水の淀みを無くして冷却を確実ならしめることができる。
【0057】
なお、実施形態ように、触媒ケース7を排気マニホールド4の一端の側にずらすと共に、EGRクーラ17を触媒ケース7にできるだけ近付けると、EGRクーラ17をシリンダヘッド2の一端部に設けたEGR通路(図示せず)にできるだけ近付けながら、触媒ケース7とEGRクーラ17とをできるだけ近付けてスペースを有効利用できる。従って、内燃機関のコンパクト化に貢献できる。
【0058】
特に、実施形態のようにEGRクーラ17を触媒ケース7の真横でなく少し手前に配置すると、触媒ケース7とEGRクーラ17とは、外面間にある程度の間隔は保持しつつ正面視での左右間隔を狭めることができるため、コンパクト化に一層貢献できる。
【0059】
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、EGR導入管路の接続対象は触媒ケースには限らないのであり、単なる排気管に接続することも可能である。EGR導入管路の内部構造及びEGRクーラの構造も任意に設定できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本願発明は、内燃機関に実際に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 シリンダブロック
2 シリンダヘッド
4 排気マニホールド
排気系の一部である触媒ケース
11 支持ブラケット
17 EGRクーラ
18 EGR導入管路
18a フィン管
18b 鞘管
19 継手パイプ
20 ボス体
21 ジョイント管
26 冷却水導入管
27 冷却水排出管
28a,28b 可撓性のホース
図1
図2
図3