特許第6156989号(P6156989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6156989
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】内燃機関の配管装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/12 20160101AFI20170626BHJP
【FI】
   F02M26/12
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-150864(P2013-150864)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2015-21442(P2015-21442A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】河野 直久
(72)【発明者】
【氏名】西川 啓太
(72)【発明者】
【氏名】篠原 健治郎
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−190417(JP,U)
【文献】 実開平05−089829(JP,U)
【文献】 特開2005−048849(JP,A)
【文献】 実開昭60−108875(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/00−26/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が支持部材に固定された金属製パイプ材と、前記パイプ材が負荷によって倒れることを抑制するため前記支持部材に固定された金属製の補強部材とを備えており、
前記パイプ材の一端部は前記支持部材の表面から略直立していて、前記パイプ材の一端部に、機関が運転を開始すると部材の熱膨張によって一方方向に倒そうとする負荷が作用して、機関が運転を停止すると部材の熱収縮によって他方方向に倒そうとする負荷が作用しており、このため前記パイプ材の一端部は、機関の運転開始と停止に伴って一方方向と他方方向とに往復回動するようになっている一方、
前記補強部材は、前記支持部材から立ち上がった脚部と、前記脚部の先端に一体に設けられていて前記パイプ材に固定された接合部とを有しており、前記パイプ材の回動による前記接合部移動ストロークを前記補強部材の弾性変形の許容限度を超えた大きさに設定することにより、前記機関の運転開始と停止に伴う前記パイプ材の往復回動によって前記補強部材が弾性変形と塑性変形とを繰り返すようになっている構成であって、
前記補強部材は、前記パイプ材の一端部の軸心方向から見て、当該一端部を挟んで前記他方方向の側に配置されていて、前記接合部を挟んだ左右両側に前記脚部が形成されており、従って、前記パイプ材の一端部は、機関が運転を開始すると引っ張られて機関が運転を停止すると押されるようになっており、かつ、前記補強部材は、前記パイプ材の一端部の軸心方向から見て、全体として当該パイプ材の一端部に向けて凸の状態に曲がっている、
内燃機関の配管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、内燃機関において、例えばEGR装置の一部を構成するEGR導入管路(EGRガス導入管路)のような配管装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用内燃機関において、燃費向上等のために排気ガスを吸気系に還流させることは広く行われており、EGRガスが流れるEGR導入管路にEGRクーラを設けることも広く行われている。
【0003】
EGR導入管路の始端は排気系部材に接続されて、EGR導入管路の終端はシリンダヘッドのような吸気側部材に接続されており、その配管構造として特許文献1には、EGR導入管路の始端を排気マニホールドの集合部に接続して、終端をシリンダヘッドに接続することが記載されており、特許文献2には、EGR導入管路の始端を触媒ケースの先窄まり状終端部に接続し、終端を排気マニホールドのフランジに固定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−122061号公報
【特許文献2】特開2004−278342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、EGR導入管路には排気系部材の熱膨張による外力や自身の熱膨張による負荷等が作用するものであり、このため、例えばシリンダヘッドに固定されている終端部が一定方向に倒れる傾向を呈することがある。しかるに、特許文献1,2はこのような倒れに対する配慮は成されておらず、このため、排気マニホールドのフランジ等に対する接合部が弱くなるおそれがある。
【0006】
EGR導入管路の倒れに対してはこれを阻止する補強部材を設けたらよいと云えるが、本願発明者たちが研究したところ、触媒ケースの熱膨張は相当の大きさであってEGR導入管路の引っ張りストロークもかなりの長さになるため、頑丈な補強部材を設けただけでは、こんどは補強部材とEGR導入管路との当接部に応力が集中してEGR導入管路が破断したり変形したりするおそれがあることが判明した。
【0007】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、パイプ材が負荷によって大きく回動しても、応力を分散した状態で補強部材で的確に補強できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、一端部が支持部材に固定された金属製パイプ材と、前記パイプ材が負荷によって倒れることを抑制するため前記支持部材に固定された金属製の補強部材とを備えており、
前記パイプ材の一端部は前記支持部材の表面から略直立していて、前記パイプ材の一端部に、機関が運転を開始すると部材の熱膨張によって一方方向に倒そうとする負荷が作用して、機関が運転を停止すると部材の熱収縮によって他方方向に倒そうとする負荷が作用しており、このため前記パイプ材の一端部は、機関の運転開始と停止に伴って一方方向と他方方向とに往復回動するようになっている一方、
前記補強部材は、前記支持部材から立ち上がった脚部と、前記脚部の先端に一体に設けられていて前記パイプ材に固定された接合部とを有しており、前記パイプ材の回動による前記接合部の移動ストロークを前記補強部材の弾性変形の許容限度を超えた大きさに設定することにより、前記機関の運転開始と停止に伴う前記パイプ材の往復回動によって、前記補強部材が弾性変形と塑性変形とを繰り返すようになっている、という基本構成になっている。
【0009】
そして、前記補強部材は、前記パイプ材の一端部の軸心方向から見て、当該一端部を挟んで前記他方方向の側に配置されていて、前記接合部を挟んだ左右両側に前記脚部が形成されており、従って、前記パイプ材の一端部は、機関が運転を開始すると引っ張られて機関が運転を停止すると押されるようになっており、かつ、前記補強部材は、前記パイプ材の一端部の軸心方向から見て、全体として当該パイプ材の一端部に向けて凸の状態に曲がっている。
【0010】
パイプ材の一端部を一方方向に倒そうとする負荷と他方方向に倒そうとする負荷には様々な場合が想定されるが、例えばEGR導入管路を例にとると、排気管(例えば触媒ケース)の熱膨張による引っ張りと、その引っ張りによる倒れを抑制するように予めEGR導入管路に掛けておくプリテンションとが挙げられる。荷重の作用点が移動して交番荷重が作用する場合にも適用できる。
【発明の効果】
【0011】
本願発明でも補強部材は弾性変形するため、パイプ材の回動に対しては、補強部材の弾性変形と塑性変形との両方が抵抗として作用する。そして、補強部材自体が塑性変形するため、パイプ材の一端部がある程度回動することは許容しつつこれを支えるものであり、パイプ材に作用した負荷はパイプ材自身と補強部材とで分散して支持される。このため、パイプ材の一端部が大きく回動しても特定部分に応力が集中することを防止して、高い補強機能を確保できる。
【0012】
特に、補強部材が塑性変形しながらパイプ材の倒れを阻止するため、高い補強機能を発揮すると云える。また、パイプ材に対する負荷の作用方向が変化することで補強部材は元の状態に復元するため、経時的な補強機能の低下は生じない。
【0013】
EGR導入管路に関しては、上記のように予め排気管の熱膨張による引っ張りを緩和するようにEGR導入管路をプリテンションを掛けておくことで、EGR導入管路の変形量を抑制できるが、この場合は、プリテンションの負荷は排気管の熱膨張による負荷と反対方向に作用するので、本願発明を適用することにより、EGR導入管路を的確に補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)は実施形態の正面図、(B)はステーを表示した状態での(A)のB−B視断面図である。
図2】側面図である。
図3】(A)は平面図、(B)は部分的な側面図、(C)は図2のIIIC-IIIC 視断面図である。
図4】(A)は要部の正面図、(B)は要部の破断正面図、(C)(B)のC−C視断面図、(D)は(B)の矢印Dの方向から見た補強部材の図、(E)は分離斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は車両用内燃機関に適用している。以下の説明では方向を特定するため上下・左右・前後の文言を使用するが、上下は鉛直線の方向であり、前後はクランク軸及びシリンダボアに対して直交した方向であり、左右はクランク軸の長手方向である。前後・左右は運転者を基準にした方向でもある。
【0016】
(1).概要
本実施形態の内燃機関は、シリンダブロック1とその上面に固定されたシリンダヘッド2とを有する機関本体を備えており、機関本体は、クランク軸(図示せず)を左右長手の姿勢にした横向きで車両に搭載されている。本実施形態の内燃機関は3気筒であり、シリンダヘッド2の前面2aに、3つの排気ポート3が左右に並んで開口していると共に、排気ポート3に連通した排気マニホールド4が固定されている。敢えて述べる必要はないが、シリンダヘッド2の後面には、吸気ポートが開口していると共に吸気マニホールドが固定されている。
【0017】
内燃機関は3気筒であるので、排気マニホールド4は3つの枝管5とこれらに連通した集合管6とを有している。集合管6は下向きに開口しており、これに触媒ケース7が溶接されている。また、排気マニホールド4は各枝管5の入口部に繋がったフランジ8を備えており、フランジ8がボルト(図示せず)でシリンダヘッド1に固定されている。図1に示す符号9は、ボルトが挿通される取り付け穴である。集合管6は図1において排気マニホールド4の左右中間位置から右側にずらして配置しているが、左側にずらしてもよいし、左右中間部に設けてもよい。
【0018】
触媒ケース7は排気系の一部を構成するものであり、その内部には三元触媒が配置されている。また、触媒ケース7は、上端部を段付き状縮径部7aと成して下端部を下窄まりの下テーパ部7bと成した円筒形態であり、下テーパ部7bに下向きの継手管10を溶接し、継手管10の上下中途部に金属板製の支持ブラケット11を溶接で固定している。継手管10には排気管12が下方から接続されている。排気管12も排気系を構成している。排気マニホールド4の集合管6には、センサ取り付け座13を設けている。
【0019】
支持ブラケット11は継手管10を横切る形態で水平に近い状態で広がっており、その一端(図1で左側の端)に、正面視では触媒ケース7と反対側に傾斜して側面視では後傾した立ち上がり部11aを曲げ形成している。立ち上がり部11aは、シリンダブロック1にボルトで固定されたステー14に固定されている。
【0020】
従って、触媒ケース7は支持ブラケット11及びステー14を介してシリンダブロック1で支持されている。支持ブラケット11の固定手段としては、ステー14に前向き突設したスタッドボルト15にナット16をねじ込んでいるが、頭付きボルトとナットとを使用したり、ボルトをステー14にねじ込むなどしてもよい。
【0021】
触媒ケース7は排気系部材の一例であり、この触媒ケース7における下テーパ部7bのうち支持ブラケット11の立ち上がり部11aと反対側の外周面に、EGRメインパイプ18を内蔵したEGRクーラ17が、L形パイプ19及びボス体20を介して接続されている。ボス体20とL形パイプ19とEGRメインパイプ18とは、いずれもEGR導入管路を構成している。
【0022】
EGRメインパイプ18の上端には、シリンダヘッド2の方向に向いておおまかには前後方向に長いジョイント管21が接続されており、ジョイント管21は、フランジ板22を介してシリンダヘッド2の前面2aにボルト(図示せず)で固定されている。
【0023】
ジョイント管21もEGR導入管路の一部であり、ジョイント管21がEGR導入管路の下流部を構成している。更に、ジョイント管21は、請求項に記載したパイプ材の一例である。フランジ板22は、EGR導入管路の終端の接合部を構成している。フランジ板22は上下方向に長い形態であり、上端部と下端部とがボルト(図示せず)でシリンダヘッド2に固定されている。
【0024】
ジョイント管21のうちフランジ板22に固定された先端部21bは、フランジ板22にロウ付けで固定された補強部材23で上から押え保持されている。従って、補強部材23は、全体としてジョイント管21の先端部21bの上側に配置されている。図示は省略するが、シリンダヘッド2の右端部にはジョイント管21に連通したEGR通路が形成されており、EGR通路に流入した排気ガスは、EGRバルブ(図示せず)を介して吸気系に還流する。
【0025】
(2).EGR装置関連要素の全体構成
上記のとおり、EGRクーラ17及びEGRメインパイプ18は、図1の状態で触媒ケース7の右に位置しており、正面視では触媒ケース7と略平行で側面視では少し後傾した姿勢になっている。また、触媒ケース7に対する取り付け位置は、図3に示すように、触媒ケース7の軸心を通ってシリンダヘッド2の前面2aと平行な線Xよりも手前に位置している。すなわち、触媒ケース7の真横の部分よりも少し手前の位置に接合されている。
【0026】
排気マニホールド4と触媒ケース7とは、インシュレータ(図示せず)で手前側から覆われるようになっている。そこで、排気マニホールド4の上端の2カ所と触媒ケース7の1カ所とEGRクーラ17の後面の2カ所とに、インシュレータを固定するための取り付け片25を溶接で固定している。インシュレータの右端は、触媒ケース7とEGRクーラ17との間の空間に向けて延びている。
【0027】
EGRメインパイプ18はEGRクーラ17に内蔵されている。従って、形式的にはEGRメインパイプ18はEGRクーラ17の一部のような外観を呈している。図3(C)に示すように、EGRメインパイプ18は、横断面花びら状のフィン管18aを鞘管18bで覆った形態を成しており、鞘管18bとEGRクーラ17との間の空間に冷却水が通る。L形パイプ19とジョイント管21とは、鞘管18bの縮径部18b′に接続されている。
【0028】
EGRクーラ17は水冷方式であり、そこで、例えば図1のとおり、EGRクーラ17には、冷却水導入管26と冷却水排出管27とが接続されている。本実施形態では、冷却水導入管26はEGRクーラ17の下端部背面に接続して、冷却水排出管27はEGRクーラ17の上端部前面に接続している。
【0029】
冷却水導入管26及び冷却水排出管27の先端部には、軟質材製チューブ(ホース)28が外から嵌め込まれる。冷却水導入管26はその長さが長いので、先端側の上向き傾斜部26aに固定片29を溶接又はロウ付けで固定し、固定片29を支持ブラケット11の立ち上がり部11aにボルト30で固定している。図2に示すように、冷却水導入管26の付け根部は、EGRクーラ17に溶接で固定した吊支ブラケット30′で下方から支持されている。
【0030】
(3).シリンダヘッドに対する取り付け構造
次に、フランジ板22を使用した接合構造を、主として図4を参照して説明する。フランジ板22は概ね上下長手の形態であり、上端部と下端部とにボルトが嵌まる取り付け穴30が左右にずれた状態で空いており、上下中間部には、ジョイント管21の終端部21aが嵌まる支持穴31が空いている。フランジ板22は請求項に記載した支持部材の一例である。
【0031】
図3(A)のとおり、ジョイント管21の上部は、大まかには平面視で排気マニホールド4に向けて凹のく字形に曲がっているが、フランジ板22に嵌まっている終端21aはシリンダヘッド3の前面2aと直交していることから、補強部材23の近傍に位置した終端部21b(請求項に記載した一端部)は、平面視で排気マニホールド4に向けて凸のく字形に曲がっている。図4(C)のとおり、ジョイント管21のうちフランジ板22に嵌まっている終端は拡径されており、フランジ板22にはロウ付けされている。
【0032】
補強部材23はステンレス板のような金属板製であり、ジョイント管21の終端部21bにほぼ上から重なる接合部32と、接合部32に繋がった左右の脚部33,34とを有しており、門形を成している。正確には、接合部32はその左右中間部がジョイント管21に当たるように左右方向の広がりを持っており、その左右両端に脚部33,34が一体に繋がっている。
【0033】
接合部32はジョイント管21の終端部21bに数十度の角度範囲で重なっており、従って、左右中間部はジョイント管21に向けて凹の状態の円弧になっている。また、接合部32の左右中間部は、平面視では手前に向けて突出した山形になっている。接合部32を山形に形成しているのは、終端部21bのなるべく手前を支えて上向きの倒れを阻止するためである。接合部32は、その全体がジョイント管21の終端部21bにロウ付けされている。接合部32には上下に貫通した小穴35を空いており、この小穴35の箇所でもロウ付けしている。
【0034】
脚部33,34は、正面視では、接合部32から離れるに従って互いの間隔が拡がる逆ハ字形を成しており、このため、補強部材23は正面視で略W字形になっており、図4(B)のとおり、全体的には終端部21bに向けて凸の状態に曲がっている。左右の脚部33,34は、上下の取り付け穴30の中心を結ぶ線35に対しては概ね左右対称の形状になっているが、EGRクーラ17の軸心と平行な線(ほぼ鉛直線)36に対しては、左側の脚部33との角度θ1が右側の脚部34との角度θ2より大きくなっている。θ2は0に近い角度になっている。いずれにしても、左右脚部33,34は単純な板状の形態であるので、上向きの曲がりも下向きの曲がりも同じ割合で弾性変形及び塑性変形し得る。 22 支持部材の一例としてのフランジ板
23 補強部材
31 支持穴
32 接合部
33,34 脚部
36 段落ち凹所
【0035】
左右脚部33,34の基端には、フランジ板22に重なる重合片33a,34aを設けており、重合片33a,34aがフランジ板22にロウ付けされている。この場合、フランジ板22に、重合片33a,34aが入り込む段落ち凹所36を形成し、重合片33a,34aは段落ち凹所36の底面にロウ付けしている。このように構成すると、ロウ付けに際して、溶けたロウが重合片33a,34aの外側やフランジ板22の外側に流れ出ることを防止できる。重合片33a,34aは、脚部33,34の下端から下側(ジョイント管21の先端21aの側)に延びている。
【0036】
触媒ケース7は最も高温になるため熱膨張の量も大きく、このため、図2図3(B)等に白抜き矢印F1で示すように、触媒ケース7の熱膨張によってEGRクーラ17が下向きに引っ張られる。そこで、例えば図3(B)に誇張して示すように、シリンダヘッド2の前面の2aのうちフランジ板22が固定されている部分2a′を僅かに前傾させている。
【0037】
すると、ジョイント管21は下向き動不能の状態で上から押された状態になるため、図4に矢印F2に示すように、ジョイント管21の終端部21bは上向き移動しようとしており、従って、ジョイント管21の終端部21bには上向きに倒そうとする負荷が掛かっている。つまり、ジョイント管21の終端部21bには、終端21aを支点にして上向き回動させられるようなプリテンションがかかっている。
【0038】
そして、触媒ケース7が熱膨張するとEGRクーラ17も下向きに引っ張られ、これに伴ってジョイント管21には矢印F3で示すように下向きの力が作用するため、ジョイント管21の終端部21bは図4(A)にeで示すストロークだけ下降動するが(厳密には下降量は触媒ケース7の温度に比例する。)、補強部材23が弾性変形して接合部32が下降動するストロークをeより小さい寸法に設定している。つまり、接合部32が補強部材23の弾性変形限度を超えて上下動するように設定している。
【0039】
従って、機関の運転開始後は、触媒ケース7の熱膨張により、ジョイント管21の終端部21bは当初は高さはたいして変化せずに上向きに押される力F2が徐々に低下して、やがて、F2が0になると終端部21bは自由状態になり、次いで、終端部21bは補強部材23を弾性変形させながら下向き回動に転じていき、補強部材23の弾性限度を超えると、補強部材23(特に脚部33,34)を塑性変形させながら下向き回動していく。
【0040】
そして、機関の運転停止に伴って触媒ケース7の温度が下がって行くと、触媒ケース7の収縮によってジョイント管21の終端部21bは補強部材23を弾性変形させながら上向きに押されていき、補強部材23が弾性限度を超えると塑性変形させながら更に上向き回動していく。
【0041】
この終端部21bの上向き回動は、ジョイント管21に作用しているプリテンションの力が加算された状態で行われ、触媒ケース7が冷え切ると、触媒ケース7による押し上げ力はゼロになって、プリテンションによる押し上げ力のみが残る。この状態では、補強部材23は、下向き引っ張りに伴う下向きの曲がりによる塑性変形と上向き押し上げに伴う上向きの曲がりによる塑性変形とが相殺されて、元のニュートラル状態に戻っている。
【0042】
機関を運転・運転停止するたびに上記の作用が生じて、補強部材23は、弾性変形→塑性変形→弾性変形→塑性変形、というサイクルが繰り返される。従って、ジョイント管21の補強機能には経時的な変化はない。また、補強部材23を過度に頑丈な構造にするのではなく、補強部材23自体も塑性変形させるものであるため、応力を補強部材23とジョイント管21とに分散させて、ジョイント管21及び補強部材23の破断を防止できるのである。
【0043】
実施形態のように補強部材23の脚部33,34を板状の構造にすると、適度の弾性変形と塑性変形とを確保できて好適である。また、ジョイント管21の上側に配置するだけで足りるため、コンパクト化できる利点もある。
【0044】
更に、ジョイント管21の終端部21bが補強部材23における左右脚部33,34の間において接合部32に固定されているため、ジョイント管21の終端部21bに対する負荷F2,F3は左右の脚部33,34の間(ほぼ左右中間部)で終端部21bと補強部材23とに作用している。このため、負荷F2,F3によって左右の脚部33,34にかかる力を均等化して、高い耐久性を確保できる。
【0045】
補強部材23の接合部32はジョイント管21の終端部21bにロウ付けしたが、例えば補強部材23の接合部32を正面U形に形成しておいてから、かしめることでジョイント管21の終端部21bに接合することも可能である。或いは、バンドなどの固定具で一体化することも可能である。
【0046】
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、EGR導入管路に適用する場合、EGR導入管路の始端の接合対象は触媒ケースである必然性はなく、単なる排気管や排気マニホールドに接続することも可能である。排気ターボ過給機に接続することも可能である。また、本願発明は、排気系や吸気系、冷却系配管などの他の配管装置に適用することも可能である。また、本願発明は交番荷重がかかるパイプ材に広く適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本願発明は、内燃機関に実際に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0048】
2 シリンダヘッド
2a シリンダヘッドの前面
4 排気マニホールド
7 排気系部材の一例としての触媒ケース
17 EGRクーラ
18 EGR導入管路を構成するEGRメインパイプ
21 EGR導入管路の下流部を構成してパイプ材の一例であるジョイント管
21a ジョイント管の終端
21b ジョイント管の終端部
22 支持部材の一例としてのフランジ板
23 補強部材
31 支持穴
32 接合部
33,34 脚部
36 段落ち凹所
図1
図2
図3
図4