【実施例1】
【0027】
本発明の塗装システム塗装システムの実施例について図面を参照して説明すると、
図1は、本実施例の塗装システムの全体構成を説明するための図であり、図において1が本実施例の塗装システムで、本実施例の塗装システムでは、携帯電話の筐体を塗装するための塗装システムとしている。但し、本発明における塗装対象は携帯電話の筐体には限定されず、いずれでもよい。
【0028】
そして、本実施例の塗装システム1では、ワークを搬送するための搬送ラインを具備しており、この搬送ラインはチェーンコンベアにより構成されている。即ち、図において2が搬送ラインであり、また図において3がチェーンコンベアであり、前記チェーンコンベア3は無端状のチェーンとし、本実施例において前記チェーンコンベア3は、図において矢印で示す方向へ移動することとしている。
【0029】
また、図において6はワーク供給テーブルであり、本実施例の塗装システム1では、前記チェーンコンベア3にワーク供給テーブル6を装着しており、このワーク供給テーブル6に、被塗装物としてのワークを固定することとし、これによって、ワーク供給テーブル6を介して、搬送ライン2上でワークを搬送可能としている。
【0030】
そして、前記搬送ライン2の任意の箇所には、隣り合う配置で、ワークのロードエリア4とアンロードエリア5とを設置しており、ロードエリア4において、前記ワーク供給テーブル6にワークを固定し、アンロードエリア5においては、前記ワーク供給テーブル6に固定した塗装処理済みのワークを取り外すこととしている。但し、前記ワークのロードエリア4及びアンロードエリア5の設置箇所は得に限定されない。
【0031】
次に、本実施例における前記ワーク供給テーブル6について説明すると、
図5は前記ワーク供給テーブル6を説明するための概略斜視図であり、本実施例において前記ワーク供給テーブル6は、主軸601と、この主軸601の上端近傍に備えられたテーブル本体602とを備えており、テーブル本体602は、前記主軸601に連結された内側本体部603と、連結部605によって前記内側本体部603の外周側に連結された外側本体部604とにより構成され、外側本体部604には、先端部近傍にワークを装着可能な複数本の取付冶具606を放射状に備えており、この取付冶具606を介して、前記外側本体部604に複数個のワークを固定可能としている。
【0032】
そしてこのワーク供給テーブル6は、前記チェーンコンベア3に間隔を置いて装着されている。即ち、主軸601の下方部分が前記コンベア3に回動自在に連結されるとともに、モータ等の駆動手段に連結されたベルト等に連結されることにより、回転駆動可能としている。そしてこれにより、回転しながら、チェーンコンベア3により搬送される。
【0033】
なお、本発明においてワーク供給テーブル6は、ワークを固定可能であるとともに前記コンベア3に装着可能であればいずれの構成としてもよく、必ずしも
図5に示す構成には限定されない。
【0034】
次に、図において7は塗装エリア、8は乾燥エリアである。即ち、本実施例の塗装システムでは、3個の塗装エリア7を備え、一つのワークについて3回の塗装を行う複数コートの塗装システムとしている。そして、それぞれの塗装エリア7におけるコンベアの移動方向に見た前方側には乾燥エリア8を備えており、塗装エリア7内でワークの塗装を行った後に、乾燥エリア8において塗料の乾燥を行うこととしている。なお、本発明において前記塗料の乾燥方法は特に限定されず、熱風による乾燥、誘導加熱による乾燥等、いずれの方法を採用しても良い。
【0035】
ここで、
図2を参照して前記塗装エリア7について説明すると、各塗装エリア7はそれぞれ、ワークの塗装を行う塗装ブースを有している。そして、前記コンベア3の移動方向に見て前記塗装ブースの手前側には、コンベア3によって搬送されてくる未塗装のワークを塗装のために待機させる塗装待ちエリアが配置されており、前記コンベア3の移動方向に見て前記塗装ブースの前方側には、塗装済みのワークを搬送のために待機させる搬送待ちエリアが配置されている。
【0036】
また、本実施例の塗装システムでは、前記塗装待ちエリア内に未塗装のワークを連続して順次搬送するための連続送り用モータと、前記塗装ブース内で塗装が完了した複数個のワークをまとめて前記搬送待ちエリア内に搬送するためのタクト送り用モータを具備している。
【0037】
即ち、図において9が塗装ブースであり、本実施例において前記塗装ブース9は、搬送ライン2の途中において、前記チェーンコンベア3が通過可能な配置で備えられており、これにより、ワークを固定したワーク供給テーブル6は、チェーンコンベア3によって塗装ブース9内に搬送され、塗装ブース9内で塗装された後に、再びチェーンコンベア3によって搬送されて、塗装ブース9から出されることとしている。
【0038】
そして、前記塗装ブース9内には支持用レール10が備えられており、この支持用レール10には、ロボットアーム11が取り付けられている。また、前記ロボットアーム11には、支持アーム13が連結され、この支持アーム13には複数個のスプレーガン14が装着され、支持アーム13と、この支持アーム13に取り付けたスプレーガン14によって、塗料噴射手段12が構成されている。そして、各スプレーガン14には、図示しない塗料供給手段が連結され、これにより、スプレーガン14から塗料を噴射可能としている。
【0039】
なお、本実施例においては、図にも示されるように、8個のスプレーガン14を有しており、一方、前記塗装ブース9は、8個のワーク供給テーブル6を同時に収容可能なスペースを有しており、これにより、塗装ブース9内において、8個のワーク供給テーブル6を同時に収容し、それぞれのワーク供給テーブル6を回転しながら、それぞれのワーク供給テーブル6に固定したワークに向けて、8個のスプレーガン14から塗料を噴射可能としているが、スプレーガンの数は特に限定されず、塗装ブース9内に収容可能なワーク供給テーブルの数も8個には限定されない。また、本発明の塗装システムでは、必ずしもロボットアームを用いる必要はなく、床置き型の塗装ロボット等を用いてもよい。
【0040】
次に、前記塗装待ちエリア及び搬送待ちエリアについて説明すると、図において15が塗装待ちエリア、16が搬送待ちエリアであり、塗装待ちエリア15はコンベア3によって搬送されてくる未塗装のワークを塗装のために待機させるためのエリアとしており、搬送待ちエリア16は、塗装済みのワークを搬送のために待機させる搬送待ちエリアとしている。
【0041】
また、図において17は前記連続送り用モータ、18は前記タクト送り用モータであり、前述したように、連続送り用モータ17は、前記塗装待ちエリア内に未塗装のワークを連続して順次搬送するために用いられ、一方、タクト送り用モータ18は、前記塗装ブース内で塗装が完了した複数個のワークをまとめて前記搬送待ちエリア内に搬送するために用いられている。
【0042】
即ち、本実施例の塗装システム1では、前記塗装待ちエリア15における入口近傍に前記連続送り用モータ17を配置し、チェーンコンベア3を連続して移動させることで、未塗装のワークを連続して順次、塗装待ちエリア15内に搬送することとしている。
【0043】
一方、前記タクト送り用モータ18は、前記搬送待ちエリア16の入り口近傍に配置され、前記塗装ブース9内でワークの塗装が行われている間は駆動せず、前記塗装ブース9内におけるワークの塗装が完了した後に駆動し、塗装ブース9内のワーク供給テーブルを塗装ブース9の外に出すことが可能な距離だけチェーンコンベア3を連続して移動することとしている。そしてこれにより、塗装ブース9内においてワークの塗装が完了した後に、塗装が完了したワークを装着したワーク供給テーブルを搬送待ちエリア16にまとめて搬送するとともに、未塗装のワークを装着した8個のワーク供給テーブル6を、塗装のために、まとめて塗装ブース7内に搬送することとしている。
【0044】
従って、本実施例の塗装システムでは、塗装ブース9内においてワークの塗装が行われている間は、タクト送り用モータ18が駆動を停止しているために、塗装ブース7内においてはチェーンコンベア3のチェーンを移動せず、塗装ブース9内におけるワークの塗装が終了した後に、塗装ブース9内にある8個のワーク供給テーブルを塗装ブース9から外に出すことができる距離だけチェーンコンベア3が連続して移動し、その後は、チェーンコンベアの移動と停止を繰り返すこととしている。
【0045】
そのため、本実施例の塗装システム1では、ワークの塗装中は、塗装ブース9内のワーク供給テーブル6の位置が固定しているために塗料噴射手段12を移動する必要がないので、塗装ブース9は、塗装ブース9内で塗装を行う塗料噴射手段12を収容可能なスペースのみを有していればよく、スプレーガン追従方式と比較して、スプレーガンの数を増やした場合でも、塗装ブースが大型化することがなく、空調エネルギーの増加を抑えることが可能である。
【0046】
なお、前述したように、本実施例においては、連続送り用モータ17を塗装待ちエリア15内に配置し、タクト送り用モータ18を搬送待ちエリア16内に配置しているが、必ずしもその必要はなく、連続送り用モータ17は、前記塗装待ちエリア15内に未塗装のワークを連続して順次搬送可能な箇所に配置してあればよく、また、タクト送り用モータ18は、前記塗装ブース9内で塗装が完了した複数個のワークをまとめて前記搬送待ちエリア16内に搬送可能な箇所に配置してあればよい。
【0047】
次に、図において19aは第1テンション手段である。即ち、本実施例において前記塗装待ちエリア15には第1テンション手段19aを配置しており、この第1テンション手段19aによって、塗装待ちエリア15内においてチェーンコンベア3のチェーンを常に緊張させてチェーンの弛みを防止し、塗装ブース9内においてワークの塗装が行われている間は、塗装ブース9内にチェーンが移動しないようにしている。
【0048】
即ち、本実施例の塗装システム1では、塗装ブース9内でワークの塗装を行っている間は塗装ブース9内ではチェーンコンベア3を停止しているが、その一方、連続送り用モータ17によって、常にチェーンコンベア3を駆動しているために、何らの手当てもしない場合には、チェーンコンベア3によって、未塗装のワークが装着されたワーク供給テーブル6が塗装ブース9内に順次搬送されてきてしまい、それによって、塗装ブース9内に収容可能数を超えたワーク供給テーブル6が搬送されてしまいワークの塗装に支障が生じてしまうとともに、塗装ブース9内において、チェーンコンベア3に弛みが発生してしまう。
【0049】
そこで、本実施例の塗装システム1では、コンベア3の移動方向に見た前記塗装ブース9の手前側に塗装待ちエリア15を配置して、塗装ブース9内においてワークの塗装が行われている間は、塗装ブース7内にワークが搬送されないようにしている。
【0050】
即ち、本実施例においては、チェーンコンベア3のチェーンが係止しているスプロケットを前記第1テンション手段19aとし、このスプロケット19aを、駆動手段としてのエアシリンダー20によって、常に、一定方向へ、より詳しくは矢印に示す方向(「延伸方向」という。)へ所定の力によって引いており、これにより、スプロケット19aを、延伸方向への移動及び元の位置への復元を自在としている。
【0051】
そのため、連続送り用モータ17の駆動によって塗装待ちエリア15まで移動してきたチェーンは、塗装ブース9の手前において、エアシリンダー20の張力によって延伸方向へ引かれているスプロケット19aとともに延伸方向へ伸びていき、それによって、チェーンコンベア3のチェーンの緊張が維持されて弛みの発生を防止可能としている。
【0052】
この作用を
図2〜
図4を参照して説明すると、
図3では、塗装待ちエリア15内に3個のワーク供給テーブル6が待機しており、塗装待ちエリア15内に位置するチェーンが短いために、スプロケット19aは、延伸方向へ移動することができずに、エアシリンダー20による延伸方向への張力に対抗して下方に位置している。
【0053】
一方、この後、コンベアのチェーンが塗装待ちエリア15内に移動してくると、
図2、
図4に示すように、エアシリンダー20によって延伸方向へ引かれているスプロケット19aは、塗装ブース9内ではチェーンコンベアを停止しているために塗装待ちエリア15内に位置するチェーンが徐々に長くなるに従って、チェーンが長くなった分だけ、エアシリンダー20の力によって延伸方向へ移動していく。
【0054】
そうすると、このスプロケット19aに係止しているチェーンもまた延伸方向へ伸びていき、これによって、塗装待ちエリア15内において、チェーンコンベア3のチェーンの緊張が維持されて弛みの発生を防止することができ、未塗装のワークが装着されたワーク供給テーブル6が塗装ブース9内に搬送されてしまうことを防止することができる。
【0055】
従って、本実施例の塗装システム1では、塗装ブース9内でチェーンが停止している場合に、連続送り用モータ17の駆動によってチェーンが塗装待ちエリア15内に移動してきたときに、エアシリンダー20の張力によってスプロケット19aが延伸方向に引かれるため、このスプロケット19aに係止されているチェーンも延伸方向に引かれ、これにより、コンベアチェーンの弛みを吸収しつつ、チェーンコンベアにより搬送されてくる未塗装のワークを塗装待ちエリア15に待機させることができる。
【0056】
また、前記第1テンション手段としてのスプロケット19aは、延伸方向への移動及び元の位置への復元を自在としているために、タクト送り用モータ12の駆動によって、塗装待ちエリア15内のワーク供給テーブルが所定数だけ塗装ブース9内に搬送されていき、塗装待ちエリア15内のチェーンが短くなると、チェーンに引かれながら反延伸方向へ移動していき、これによりスムーズな搬送を可能にしている。
【0057】
次に、図において19bは第2テンション手段である。即ち、本実施例において前記搬送待ちエリア16に第2テンション手段19bを配置し、この第2テンション手段19bによって、搬送待ちエリア16内においてチェーンコンベア3のチェーンを常に緊張させてチェーンの弛みを防止し、タクト送り用モータ18の駆動によってチェーンを移動して塗装ブース9内の塗装済みのワークを塗装ブース9の外に移動した際に、前記チェーンの移動方向に見た塗装ブース9の前方側においてチェーンが弛んでしまうことを防止して、塗装済みのワークを搬送のために待機させることとしている。
【0058】
即ち、本実施例の塗装システム1では、塗装ブース9内におけるワークの塗装が終了した後に、タクト送り用モータ18の駆動によって、塗装ブース9内のワーク供給テーブルを塗装ブース9の外に出すことが可能な距離だけチェーンコンベア3を連続して移動し、未塗装のワークを装着した8個のワーク供給テーブル6を塗装ブース9内に搬送するとともに、塗装の終了したワークを装着した8個のワーク供給テーブル6を塗装ブース9内から塗装ブース9の外に移動することとしているが、塗装ブース9の前方側においては、次の塗装エリアにおける連続送り用モータ17によってチェーンが移動しており、連続送り用モータ17は、8個のワーク供給テーブルを一度にまとめて移動させるためのタクト送り用モータ18の駆動速度よりも遅い速度で駆動するため、何らの手当てもしない場合には、タクト送り用モータ12の前方側においては、チェーンに弛みが発生してしまう。
【0059】
そこで、本実施例の塗装システム1では、前記チェーンコンベア3の移動方向に見た前記タクト送り用モータ18の前方側に搬送待ちエリア16を配設しており、タクト送り用モータ18の駆動によって塗装ブース9内から同時に塗装ブース9の外側に移動された8個のワーク供給テーブルを、搬送待ちエリア16に待機させることとしている。
【0060】
即ち、本実施例においては、チェーンコンベア3のチェーンが係止しているスプロケットを前記第2テンション手段19bとし、このスプロケット19bを、駆動手段としてのエアシリンダー20によって、常に、一定方向(「延伸方向」)へ所定の力によって引いており、これにより、スプロケット19bを、延伸方向への移動及び元の位置への復元を自在としている。
【0061】
そのため、タクト送り用モータ18の駆動によって塗装ブース9の外側に移動してきたワーク供給テーブル8個分を固定する距離のチェーンは、タクト送り用モータ18の前方において、エアシリンダー20の張力によって延伸方向へ引かれているスプロケット19bとともに延伸方向へ伸びていき、それによって、チェーンコンベア3のチェーンの緊張を維持して弛みの発生を防止可能としている。この作用は前述の塗装待ちエリア15の場合と同様である。
【0062】
従って、本実施例の塗装システム1では、塗装ブース9内におけるワークの塗装が終了し、タクト送り用モータ18の駆動によって、塗装ブース9内の8個のワーク供給テーブルが塗装ブース9の外側に移動してきたときに、エアシリンダー20の張力によってスプロケット19bが延伸方向に引かれ、このスプロケット19bに係止されているチェーンも延伸方向に引かれるために、コンベアの弛みを吸収しつつ、コンベアにより搬送されてくる塗装済みのワークを、搬送待ちエリア16に待機させることができる。この、タクト送り用モータ12の駆動によって8個のワーク供給テーブルが搬送待ちエリア16内に移動してきた直後の状態が
図3の状態である。
【0063】
また、前記第2テンション手段としてのスプロケット19bは、延伸方向への移動及び元の位置への復元を自在としているために、搬送待ちエリア16よりも前方に位置する塗装エリアにおける連続送り用モータ17の駆動によって、搬送待ちエリア16内のワーク供給テーブルが搬送待ちエリア16の外へ搬送されていき搬送待ちエリア16内のチェーンが短くなるに従って、短くなっていくチェーンに引かれながら反延伸方向へ移動していき、これによりスムーズな搬送を可能にしている。連続送り用モータ17の駆動によって搬送待ちエリア16内のワーク供給テーブル6が順次搬送待ちエリア16の外へ搬送されていった状態が
図2、
図4の状態である。
【0064】
次に、図において21aは第1検出手段、21bは第2検出手段である。即ち、本実施例においては、前記塗装待ちエリア15及び搬送待ちエリア16内のそれぞれにおいて、スプロケット19a、19bの絶対位置を検出するための検出手段19a、19bを具備している。
【0065】
即ち、前述したように、塗装システムにおいてワークの塗装を行っている場合において、何らかの原因でコンベアのチェーンの脱落が発生してラインが止まってしまった場合には、塗装待ちエリア及び搬送待ちエリアにおいてチェーンの弛みが生じることがある。そして、かかる場合には、チェーンの弛みをなおすためにテンション手段としてのスプロケットの位置を補正する必要があるが、塗装ブース、塗装待ちエリア、及び搬送待ちエリアが複数個存在する大きな塗装ラインの場合には、一つのスプロケットの位置を補正しただけではコンベア全体の弛み等を治すことはできず、すべてのスプロケットの位置を順番に補正していく必要がある。
【0066】
しかしながら、従来からこのテンション手段の位置の補正は、作業者が各テンション手段の位置を目視で確認しながら行っている一方、大きな塗装システムの場合には、各塗装エリアは部屋に仕切られていることが一般的であり、各テンションの位置を容易に知ることができない。そのために、従来の塗装システムにおいては、ラインが止まってしまった場合には、ラインの復旧が容易ではなく、時間がかかっていた。
【0067】
そこで、本実施例の塗装システムでは、前記塗装待ちエリア15及び搬送待ちエリア16内のそれぞれにおいて、スプロケット19a、19bの絶対位置を検出するための検出手段19a、19bを具備し、これにより、各スプロケット19a、19bの位置を把握可能とすることで、ラインが止まってしまったときの復旧作業を容易にしている。
【0068】
即ち、本実施例の塗装システムにおいては、システム全体の作動を制御する制御部を備えており、この制御部には前記第1検出手段21a、第2検出手段21bが接続されるとともに、前記連続送り用モータ17及びタクト送り用モータ18の駆動を制御部で制御可能としている。そして、何らかの原因でコンベアのチェーンの脱落等が発生してラインが止まってしまった場合には、前記第1検出手段21a、第2検出手段21bからの信号によって、制御部によってスプロケット19a、19bの位置を検出しながら、前記連続送り用モータ17あるいはタクト送り用モータ18を駆動させ、それにより、各スプロケット19a、19bの位置を補正していくこととしている。
【0069】
なお、本実施例において前記第1検出手段21a、第2検出手段21bはリニアエンコーダを用いており、このリニアエンコーダを前記エアシリンダー20に連結し、これにより、各スプロケットの絶対位置を検出することとしているが、本発明の塗装システムでは、検出手段として必ずしもリニアエンコーダを用いる必要はなく、スプロケットの位置を検出可能な手段であればいずれを用いても良い。
【0070】
次に、このように構成される本実施例の塗装システム1を用いた本発明の塗装方法の実施例について説明すると、前述の塗装システム1を用いてワークの塗装を行う場合には、各連続送り用モータ17を駆動してコンベアチェーンを移動していくとともに、ロードエリア4において、コンベアチェーンの移動とともに搬送されてくる、ワークを装着していない空のワーク供給テーブルに、未塗装のワークを固定していく。また、各塗装エリア7における第1検出手段21a、第2検出手段21bによって、各塗装待ちエリア15、搬送待ちエリア16におけるスプロケット19a、19bの位置を検出するとともにこの検出を継続する。
【0071】
そして、未塗装のワークが固定された最初のワーク供給テーブル6が塗装待ちエリア15に搬送されてくるまでは、タクト送り用モータ18もまた連続送り用モータ17と同スピードで連続駆動し、すべてのコンベアチェーンが均等に移動するようにしておく。
【0072】
そして、未塗装のワークが固定された最初のワーク供給テーブル6が塗装待ちエリア15まで搬送されてきた時点で、タクト送り用モータ18の駆動を停止して、塗装待ちエリア15まで搬送されてきてワーク供給テーブル6を順次、塗装待ちエリア15に待機させておく。そのため、コンベアの駆動する際には、搬送待ちエリア16内においては、8個以上のワーク供給テーブルが待機する状態にしておき、タクト送り用モータ18の駆動を停止したときに、チェーンの連続移動に支障が生じないようにしておくとよい(
図3の状態)。
【0073】
そして、塗装待ちエリア15のワーク供給テーブル6が増えていくとともに搬送エリア16内のワーク供給テーブルが減っていき(
図2の状態)、塗装待ちエリア15に8個以上のワーク供給テーブル6が待機された後に(
図4の状態)、連続送り用モータ17の駆動を継続して塗装待ちエリア15内に未塗装のワークを搬送しながら、タクト送り用モータ18を駆動して、塗装待ちエリア15内に待機しているワーク供給テーブルの中の8個を、同時に、塗装ブース9内に搬送し、8個のワーク供給テーブル6の塗装ブース9内への搬送が終了した時点で再び、タクト送り用モータ18の駆動を停止する。
【0074】
なお、タクト送り用モータ18を駆動するときに塗装待ちエリア15に待機しているワーク供給テーブル6の数は限定されず、タクト送り用モータ18を駆動して、塗装ブース9内で塗装可能な数のワーク供給テーブルを同時に塗装ブース内へ搬送可能な数であればよい。従って、タクト送り用モータ18を駆動する際には、塗装待ちエリア15には、塗装ブース9内で塗装可能な数のワーク供給テーブルが待機されてあればよい。
【0075】
また、塗装待ちエリア15内のワークを塗装ブース9内に移動する際のタクト送り用モータ18の回転速度は、連続送り用モータ17の回転速度よりも早くし、連続送り用モータ17の駆動により、ワーク供給テーブルが1乃至2つ程度前のワーク供給テーブルの位置まで移動する時間前後で、塗装ブース9内に移動しなければならない数のワーク供給テーブルを同時に塗装ブース9内に移動可能な速度にすると良い。
【0076】
次に、未塗装のワークを装着した8個のワーク供給テーブルを塗装ブース9内に搬送した後に、塗装ブース9内に搬送したワーク供給テーブル6に装着したワークへ向けて、スプレーガン14から塗料を噴射してワークの塗装を行い、このワークの塗装を行っている間は、前記タクト送り用モータ18を停止し、前記塗装ブース9内においてはコンベアチェーンを移動しない。
【0077】
一方、塗装待ちエリア15においては、前述したような機構で、前記第1テンション手段としてのスプロケット19aによってコンベアチェーンの弛みを吸収しつつ、チェーンコンベアにより搬送されてくるワーク供給テーブル6を塗装待ちエリア15に待機させて、これにより、未塗装のワークを前記塗装待ちエリア15に待機させる。
【0078】
そして、塗装ブース9内におけるワークの塗装が終了した後に、タクト送り用モータ18を駆動して、塗装ブース9内の塗装済みのワークを装着した8個のワーク供給テーブル6を塗装ブース9外へ移動可能な距離だけコンベアチェーンを移動して、前記第2テンション手段としてのスプロケット19bによってコンベアチェーンの弛みを吸収しつつ、塗装済みのワークを装着したワーク供給テーブル6を塗装ブース9から搬送待ちエリア16に移動する。
【0079】
また、それとともに、タクト送り用モータ18の前記駆動によって、前記塗装待ちエリア15で待機させていた8個のワーク供給テーブル6を塗装ブース9内に搬送して、搬送が完了した後は、塗装ブース9内においては、コンベアを搬送することなく、新たに搬送したワーク供給テーブルに装着した未塗装のワークへ向けてスプレーガン14から塗料を噴射してワークの塗装を行う。塗装済のワークを搬送待ちエリア16に移動する直前の状態が
図4に示す状態で、移動した直後の状態が
図3に示す状態である。
【0080】
一方、前記搬送待ちエリア16に移動したワーク供給テーブルは、連続送り用モータ17の駆動に伴うチェーンの移動に従って、順次、乾燥エリア8まで搬送され、その後は、次の塗装エリア7又は搬出エリア5まで搬送される。
【0081】
そして以後は、塗装ブース9内におけるワークの塗装が終了するごとのタクト送り用モータ18の駆動を繰り返して、コンベアチェーンの緊張を維持して弛みの発生を防止しつつ、塗装ブース9内において、チェーンを移動することなく8個のワーク供給テーブルに装着したワークの塗装を行い、それとともに、連続送り用モータ17の駆動によって、未塗装のワークを装着したワーク供給テーブルの塗装待ちエリア15への搬送、搬送待ちエリア16に待機させている塗装済みのワークを装着したワーク供給テーブルのアンロードエリア5までの搬送を繰り返す。
【0082】
一方、このようなワークの塗装において、何らかの原因でコンベアチェーンの脱落等によってラインが停止した場合には、コンベアチェーンの脱落を復元するとともに、前記第1検出手段21a、第2検出手段21bからの信号によって各スプロケット19a、19bの絶対位置を検出しながら、前記連続送り用モータ17又はタクト送り用モータ18を駆動させることで、各スプロケット19a、19bの位置を本来のあるべき位置に補正して、それにより、ラインの復旧を行う。
【0083】
このように、本実施例の塗装システムでは、塗装待ちエリア15のそれぞれと搬送待ちエリア15のそれぞれに、テンション手段としてのスプロケットの位置を検出するための検出手段を具備しているために、コンベアのチェーンの脱落等によってラインが停止した際には、各スプロケットの位置を容易に把握することができるので、ラインの復旧を早急に行うことが可能である。そしてこのとき、本実施例の塗装システムにおいては、システム全体の作動を制御する制御部に前記第1検出手段21a、第2検出手段21bを接続するとともに、前記連続送り用モータ17及びタクト送り用モータ18の駆動を制御部で制御可能とし、制御部によってスプロケット19a、19bの位置を検出しながら、連続送り用モータ17あるいはタクト送り用モータ18を駆動させて各スプロケット19a、19bの位置を補正することを可能にしているために、容易にラインの復旧を行うことができる。
【0084】
なお、前述の説明では、スプレーガンの数を8個に設定し、塗装ブース内において8個のワーク供給テーブルに装着したワークを同時に塗装したが、本発明においては、スプレーガンの数は特に限定されず、9個以上でもよく、あるいは、8個未満にしても良い。
【0085】
また、前述の説明では、第1、第2テンション手段としてスプロケットを用いて、このスプロケットをエアシリンダーで一定方向へ引くことでコンベアチェーンの緊張を維持して弛みを防止したが、本発明では必ずしもこの方法には限定されず、コンベアチェーンの緊張を維持して弛みを防止可能な方法であればいずれを採用してもよい。
【0086】
更に前述の説明では、第1、第2の検出手段としてリニアエンコーダを用いた場合を説明したが、スプロケットの位置の検出手段はリニアエンコーダには限定されず、その他の手段を用いても良い。