(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
排気ガスで駆動されるタービン翼と吸気を加圧するコンプレッサ翼とこれらを連結した回転軸、及び、これらタービン翼とコンプレッサ翼と回転軸が内蔵されたハウジングとを備えており、前記回転軸は前記ハウジングに設けた潤滑室のオイルで潤滑されており、前記タービン翼の出力が過給圧制御装置で調節される構成であって、
前記過給圧制御装置は、前記タービン翼に向かう排気ガスの流量又は方向を制御する弁装置と、前記弁装置を駆動する油圧式アクチュエータとを備えており、前記油圧式アクチュエータは作動油がドレン通路に流れ続けている構造であって、前記ドレン通路を前記潤滑室に接続することにより、オイルが過給圧制御装置を介して前記潤滑室に導かれている、
排気ターボ過給機。
前記油圧式アクチュエータは軸方向の進退動が電磁ソレノイドで制御されるスプール弁を供えており、前記スプール弁は前記回転軸と平行に配置され、前記電磁ソレノイドは前記スプール弁を挟んで前記タービン翼と反対側に配置されている、
請求項1に記載した排気ターボ過給機。
機関温度が予め設定した基準温度よりも高い場合は、機関の運転停止に伴って油圧式アクチュエータのオイルがドレン通路から流下し、機関温度が前記基準温度以下の場合は、機関の運転停止に伴って油圧式アクチュエータの内部にオイルを保持するように制御される、
請求項1又は2に記載した排気ターボ過給機。
【背景技術】
【0002】
排気ターボ過給機は、一般に、排気ガスをタービン室に通さずに出口に逃がすバイパス通路を備えており、タービン室に向かう排気ガスの量とバイパス通路に逃げる排気ガスの量とを流量制御弁で調節することにより、コンプレッサ翼の駆動トルク(タービン翼の出力)を調節して過給圧を調節している。
【0003】
そして、過給圧制御装置において、流量制御弁の駆動源として吸気の負圧又は正圧を利用したダイアフラム方式が多いが、このダイアフラム方式では、負圧式の場合はバキュームポンプが必要になるためそれだけ構造が複雑化する問題がある一方、正圧式の場合は過給圧が上昇しないと作動しないという問題がある。この点については、駆動源としてステップモータを使用することも行われているが、ステップモータは高価であるためコストが嵩むという問題がある。また、高温に晒される過酷な環境下で高い耐久性を確保できるか、不安も残っている。
【0004】
他方、本願出願人は特許文献1において、過給圧制御装置のアクチュエータを、オイルポンプから送られた圧油で流量制御弁を駆動する油圧式とすることを提案した。この油圧式アクチュエータは、流量制御弁を確実に駆動することができると共に、内燃機関に必須の要素である圧油を利用するものであるため、ステップモータを使用するのに比べてコストも抑制できる利点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は上記の利点を有するが、油圧式アクチュエータにオイルを導くための送油管と、油圧式アクチュエータからオイルを排出するための排油管とを新たに設けなければならないため、配管構造が複雑化してコスト抑制に限度があるという問題があった。
【0007】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、過給圧制御装置に油圧式アクチュエータを使用することは特許文献1を踏襲しつつ、配管構造の簡単化を図ること等を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の排気ターボ過給機は、排気ガスで駆動されるタービン翼と吸気を加圧するコンプレッサ翼とこれらを連結した回転軸、及び、これらタービン翼とコンプレッサ翼と回転軸が内蔵されたハウジングとを備えており、前記回転軸は前記ハウジングに設けた潤滑室のオイルで潤滑されており、前記タービン翼の駆動トルクが過給圧制御装置で調節される基本構成である。
【0009】
そして、請求項1の発明は、前記基本構成において、前記過給圧制御装置は、前記タービン翼に向かう排気ガスの流量又は方向を制御する弁装置と、前記弁装置を駆動する油圧式アクチュエータとを備えており、前記油圧式アクチュエータは作動油がドレン通路に流れ続けている構造であって、前記ドレン通路を前記潤滑室に接続することにより、オイルが過給圧制御装置を介して前記潤滑室に導かれている。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、前記油圧式アクチュエータは軸方向の進退動が電磁ソレノイドで制御されるスプール弁を供えており、前記スプール弁は前記回転軸と平行に配置され、前記電磁ソレノイドは前記スプール弁を挟んで前記タービン翼と反対側に配置されている。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、機関温度が予め設定した基準温度よりも高い場合は、機関の運転停止に伴って油圧式アクチュエータのオイルがドレン通路から流下し、機関温度が前記基準温度以下の場合は、機関の運転停止に伴って油圧式アクチュエータの内部にオイルを保持するように制御される。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によると、過給圧制御装置のためのオイルが回転軸の潤滑に供されるため、油圧式アクチュエータのための配管と回転軸の潤滑のための配管とを一体化することができる。すなわち、一系統の送油管・排油管により、過給圧の制御と回転軸の潤滑とを行える。このため、過給圧の制御と回転軸の潤滑とを確実に行える排気ターボ過給機を備えた内燃機関でありながら、配管構造を簡単化してコストを抑制することができる。
【0013】
排気ターボ過給機のハウジングは複雑な内部構造になっており、このため、タービン翼を覆うタービンハウジングとコンプレッサ翼を覆うコンプレッサハウジング、及び、タービンハウジングとコンプレッサハウジングとの間に配置したセンターハウジングとの三者で構成されていることが多いが、この場合は、回転軸を潤滑する潤滑室はセンターハウジングに設けることになる一方、請求項2では油圧式アクチュエータがセンターハウジングに設けることになるため、例えば、油圧式アクチュエータのケーシングに設けたドレン通路をセンターハウジングに設けた注油穴に直接連通させることも可能になり、このため、更なる構造の簡素化・コンパクト化を図ることができる。
【0014】
また、請求項2では、アクチュエータはタービンハウジングから遠い側に配置されるため、アクチュエータがタービンハウジングの輻射熱を受けることは殆どなく、このため、熱害を防止してアクチュエータの耐久性を向上できる。
【0015】
さて、オイルは機関の各部位を循環しているため、機関の温度に比例してオイルの温度も上昇する。そして、排気ターボ過給機のタービン室は排気ガスに晒されるため、潤滑室や油圧式アクチュエータにも熱が伝わって、これらも機関の温度に比例して温度が上昇していく。
【0016】
そして、排気ターボ過給機の潤滑室は機関が停止するとオイルが抜け落ちるように設計されているのが普通であるが、油圧式アクチュエータが高温の状態でその内部にオイルが溜まったままになっていると、油圧式アクチュエータの内部に溜まっているオイルが油圧式アクチュエータの構成部材より受熱して劣化し、機関全体の潤滑に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0017】
この点、請求項3の構成を採用すると、オイルの劣化のおそれがある程に機関の温度が高いと、機関の停止によって油圧式アクチュエータのオイルが抜け落ちるため、機関停止によるオイルの劣化を防止することができる。従って、アイドリング時に運転を停止する方式の内燃機関の場合に特に有益である。機関を停止してもオイルの劣化が生じるおそれがない場合は、油圧式アクチュエータにはオイルは溜まったままであるため、次の始動時に弁装置を速やかに駆動することができて、応答性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1).構造の基本構成
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に概略を示すように、排気ターボ過給機は、同心に配置されたタービン翼1とコンプレッサ翼2とを備えている。タービン翼1はタービン室2に配置され、コンプレッサ翼2はコンプレッサ室4に配置されている。タービン室3及びコンプレッサ室4は断面積が徐々に変化するスクロール室になっている。タービン翼1とコンプレッサ翼2とは回転軸5で連結されている。
【0020】
排気ターボ過給機は、センターハウジング6とその一方の側に重ねて固定したタービンハウジング7、及び、センターハウジング6の他方の側に重ねて固定したコンプレッサハウジング8とを備えており、センターハウジング6とタービンハウジング7との合わせ面にタービン室3が形成され、センターハウジング6とコンプレッサハウジング8との合わせ面にコンプレッサ室4が形成されている。
【0021】
敢えて述べるまでもないが、タービンハウジング6は排気系に介挿される。例えば、排気ガス導入口9は、排気マニホールドの集合管のように、排気系のできるだけ上流部(触媒コンバータよりも上流側)に接続される。
【0022】
タービンハウジング7には、タービン室2に排気ガスを流入させる排気ガス導入口9と、タービン室2を通過した排気ガスを排出させる排気ガス出口10とを設けている。本実施形態では、排気ガス導入口9はタービン翼1の回転軸と直交して上に向いており、排気ガス出口10はタービン翼1の軸方向(水平方向)に向いている。
【0023】
排気ガス導入口9と排気ガス出口10とは、排気ガスがタービン室2を通らずに逃げ得るようにバイパス通路11で接続されており、排気ガス導入口9に、過給圧制御装置を構成する弁装置の一例として、当該排気ガス導入口9を通る排気ガスの流量を調節する流量制御弁12を、中心軸13の軸心回りに平面視で回動するように配置している。
【0024】
流量制御弁12は、排気ガス導入口9の内面部のうちバイパス通路11に寄った部位でかつ、排気ガスの流れ方向に向かってバイパス通路11の前端縁に近接した部位に、水平状(前後長手)の中心軸13で取り付けられており、中心軸13を油圧式アクチュエータ14で回転させて流量制御弁12を回動させることにより、排気ガス導入口9を全開してバイパス通路11を全閉した状態から、排気ガス導入口9を全閉してバイパス通路11を全開した状態まで無段階に調節できる(なお、全開・全閉の2段階調節方式も採用可能である。)。本実施形態では、流量制御弁12と油圧式アクチュエータ14とで過給圧制御装置が構成されている。
【0025】
なお、流量制御弁12は四角形になっており、このため、排気ガス導入口9のうち流量制御弁12が動くエリアも断面角形になっている。流量制御弁12はバイパス通路11に配置してもよい。或いは、排気ガス導入口9とバイパス通路11とに連通した弁室を設けて、この弁室に流量制御弁を設けることも可能である。
【0026】
コンプレッサハウジング8には、吸気(新気)が流入する円筒状の吸気入口15と、加圧された吸気が排出される円筒状の吸気出口16とを設けている。吸気入口15はコンプレッサ翼2の回転軸心の方向(水平方向)に向いており、吸気出口17はコンプレッサ翼2の回転軸心と直交して下方(接線方向)に向いている。コンプレッサハウジング8の姿勢(軸線方向から見た姿勢)は任意に設定できる。
【0027】
図2のとおり、センターハウジング5には回転軸5の一部が浸漬する潤滑室18を設けており、この潤滑室18に、回転軸5の一部が嵌まったフローティングメタル19を回転不能に配置されている。潤滑室18とフローティングメタル19との間、及び、フローティングメタル19と回転軸5との間にはオイル層(隙間)が形成されている。従って、回転軸5は、潤滑室18で遊動するフローティングメタル19にオイルを介して保持されており、軸心が僅かながら自由に動く状態で回転自在に保持されている。
【0028】
潤滑室18の両側には、回転軸5に設けたフランジ5a,5bが配置されており、オイルは、両フランジ5a,5bとフローティングメタル19との間からセンターハウジング6のキャビティ(図示せず)に流れ込む。なお、コンプレッサ翼2の側のフランジ5bは、回転軸5とは別の部材で製造されている。センターハウジング6のうち、潤滑室18の正面部(
図1で手前側に位置した部分)にはオイルが流入する入口穴20を開口させており、入口穴20からセンターハウジング6に流下したオイルは、センターハウジング6のイキャビティから戻り管路23を介してオイルパン24に戻る。
図2では、便宜的に入口穴20を上向きに開口させているが、実際には、
図1(A)に示すように手前に向いて開口している。
【0029】
(2).油圧式アクチュエータ
油圧式アクチュエータ14は、センターハウジング5の前面にブラケット25を介して固定されたケーシング26と、ケーシング26に水平動自在に装着された駆動ロッド27、及び、軸方向に進退動自在なスプール弁28を備えており、スプール弁28は、電磁ソレノイド29により、中立位置を挟んだ両側に進退動する。これら駆動ロッド27とスプール弁28とは回転軸5と平行に配置されており、かつ、スプール弁28が回転軸5の手前に配置されて、スプール弁28の上に駆動ロッド27が配置されている。スプール弁28は回転軸5よりもやや高い位置に配置されている。
【0030】
駆動ロッド27は、ケーシング26のシリンダ室30に収納されたピストン31を備えており、ピストン31の一端とシリンダ室30の一端とはばね32で連結されている。ばね32は、自由長を中心にして圧縮と伸びとの両方が行われるものであり、ピストン31がシリンダ室30の中間部に位置している中立位置にあるとき、ばね32は自由長になっている。従って、ピストン31はばね32によって中立位置に付勢されている。また、駆動ロッド27はピストン31を挟んだ両側にフロントストッパー33とリアストッパー部34とを設けており、これらストッパー33,34がシリンダ室30の端面に当たることで駆動ロッド27のストロークSが規制されている。
【0031】
駆動ロッド27の一端部はケーシング26の外側に突出しており、流量制御弁12の中心軸13に第1リンク35aの一端を固定し、第1リンク35aが、第2リンク35bと第3リンク35cとを介して駆動ロッド27に連結されている。第3リンク35cはその一端35c′を中心にして回動するようにブラケット25に連結されており、第3リンク35cの中間部に駆動ロッド27の先端がピンで連結されており、第3リンク35cの他端と第1リンク35aの他端とが第2リンク35bで相対回動自在に連結されている。
【0032】
ピストン31(駆動ロッド27)が中立位置にある状態では流量制御弁12は半分開いており、ピストン31(駆動ロッド27が)中立位置から前進すると、第1リンク35aが図において半時計回りに回動して、流量制御弁12は排気ガス導入口9を閉じる方向に回動する。逆に、ピストン31(駆動ロッド27が)中立位置から後退すると、第1リンク35aが図において時計回りに回動して、流量制御弁12は排気ガス導入口9を開く方向に回動する。
【0033】
なお、実施形態では流量制御弁12の半開き状態を原点(中立位置)にしているが、排気ガス導入口9の全閉状態又は全開状態を原点とすることも可能である。また、ピストン31(駆動ロッド27)のストロークSと流量制御弁12の回動ストロークとの関係は、例えば、第3リンク35cに対する駆動ロッド27の連結位置を変えることで任意に調節できる。第3リンク35cの回動を許容するため、駆動ロッド27を連結するためのピン穴は長穴になっている。
【0034】
油圧式アクチュエータ14は、スプール弁28がスライド自在に挿入されたガイド筒37を備えており、ガイド筒37は、タービン翼1と反対側からケーシング26に嵌め入れられている。ガイド筒37には、タービン翼1と反対側においてケーシング26の外側に露出したソレノイド室38を設けており、ソレノイド室38の内部に電磁ソレノイド29配置し、電磁ソレノイド29の内側に、スプール弁28に設けたプランジャ(可動鉄心)40を配置している。電磁ソレノイド29への通電を制御することで、スプール弁28を中立位置と前進位置と後退位置とに変更することができる。
【0035】
スプール弁28には、センター切欠き41と、これを挟んだ先端側に位置したフロント切欠き42と、センター切欠き41を挟んだ電磁ソレノイドの側に位置したリア切欠き43とが形成されており、ガイド筒37及びケーシング26には、送油ポート44と、送油ポート44を挟んで先端側に位置したフロントドレン通路45と、送油ポート44を挟んで電磁ソレノイドの側に位置したリアドレン通路46とが空けられている。
【0036】
フロントドレン通路45とリアドレン通路46とは、排出通路47を介して潤滑室18の入口穴20に接続されている。送油ポート44には、オイルポンプ48の吐出通路に接続された送油管49が接続されている。なお、排出通路47はパイプやチューブで構成してもよいが、センターハウジング5に一体形成すると構造が簡単なる。
【0037】
また、ガイド筒37とケーシング26とには、スプール弁28を挟んで送油ポート44及びドレン通路45,46を挟んだ上側に、シリンダ室30の前部に連通したフロント通路50と、シリンダ室30の後部に連通したリア通路51とが空けられている。
【0038】
図2では、便宜的に送油ポート44とドレン通路45,46とを下向きに並べて配置しているが、実際には、
図1(B)に示すように、ドレン通路45,46はセンターハウジング6に向いて開口しており、センターハウジング6の入口穴20に連通している。この場合は、入口穴20を2つのドレン通路45,46に対応して2つ設けてもよいし、2つのドレン通路45,46を1つに纏めて、1つの入口穴20に連通させてもよい。
【0039】
(3).まとめ
以上の構成において、
図2の状態ではスプール弁28はばね(図示せず)で中立位置にあり、この状態では、圧油はセンター切欠き41で停止していて、いずれの通路50,51にも流入していない。従って、駆動ロッド27はばね32で中立位置に保持されており、これに基づき、流量制御弁12は排気ガス導入口9及びパイパス通路11を半開した姿勢になっている。
【0040】
そして、この中立状態では、センター切欠き41とフロント切欠き42及びリア切欠き43は若干の断面積で連通しており、このため、オイルはフロント切欠き42及びリア切欠き43を介して排出通路47に流入し、ここから潤滑室18に流入し、回転軸5を潤滑してから戻り管路23を介してオイルパン24にリターンする。つまり、オイルは駆動ロッド27を駆動するのに必要な量より多い量が常に供給されており、オーバーフローしたオイルが常に潤滑室18に流入しているのである。従って、回転軸5の潤滑は支障なく行われている。
【0041】
図2の状態からスプール弁28が黒抜き矢印の方向に後退すると、圧油は送油ポート44からセンター切欠き41を経由してリア通路51に流れてシリンダ室30の後部に流入すると共に、フロント通路50とフロント切欠き42とフロントドレン通路45とが連通することで、シリンダ室30の前部に溜まっていたオイルは潤滑室18に逃げる。これにより、流量制御弁12は半開き状態から、排気ガス導入口9を開いてバイパス通路11を閉じていく方向に回動していく。
【0042】
スプール弁28が後退してから中立位置に戻ると、シリンダ室30の前後いずれからもオイルは逃げ不能になるため、ピストン31(駆動ロッド27)は前後動不能に保持されて、流量制御弁12の姿勢も保持される。流量制御弁12が排気ガス導入口9を開く方向に回動する時間はスプール弁28の後退時間に比例しており、スプール弁28が所定時間以上後退状態を維持すると、流量制御弁12は排気ガス導入口9を全開させてバイパス通路11を全閉した状態に移行し、その状態で安定する。
【0043】
図2の状態からスプール弁28が白抜き矢印の方向に前進すると、圧油は送油ポート44からセンター切欠き41を経由してフロント通路50に流れてシリンダ室30の前部に流入すると共に、リア通路51とリア切欠き43とリアドレン通路46とが連通することで、シリンダ室30の後部に溜まっていたオイルは潤滑室18に逃げる。これにより、流量制御弁12は半開き状態から、排気ガス導入口9を閉じてバイパス通路11を開く方向に回動していく。
【0044】
流量制御弁12の開き時間はスプール弁28の前進時間に比例する。従って、スプール弁28が所定時間以上前進し続けていると、流量制御弁12は排気ガス導入口9を全閉させてバイパス通路11を全開させた状態に移行する。スプール弁28が若干だけ前進して中立位置に戻ると、流量制御弁12は回動させられた姿勢で停止する。
【0045】
このように、スプール弁28の前進と後退と中立位置への戻りとを制御することにより、流量制御弁12の開度を任意に調節して、過給圧を無段階に調節することができる。
【0046】
機関が基準温度を超えた高温になっている場合、アイドリングストップ等で機関が停止すると、スプール弁28を前進し切ることで、ケーシング26及びガイド筒37の内部からオイルを抜いてオイルパンに向けて戻すように設定している。これにより、高温のケーシング26及びガイド筒37にオイルが滞留して劣化することを防止できる(オイルポンプ48が停止すると、送油管49はドレン管として機能するため、ケーシング26のオイルは送油管49からも抜け落ちる。)。
【0047】
機関の温度検知手段として、シリンダブロックやシリンダヘッドの温度を直接に検知することも可能であるが、冷却水の温度は機関温度に比例しているので、本実施形態では水温センサを機関温度センサに代替している。従って、本実施形態では、水温センサ、機関の運転停止を検知するセンサ、これらのセンサからの信号に基づいて電磁ソレノイド29を制御する制御装置を備えている。
【0048】
水温センサは通常の内燃機関では備えているので、新設する必要なはい。また、機関の進展停止もキーの動きから検知されるので、新たにセンサを新設する必要はない。制御装置はECU(エンジン・コントロール・ユニット)に組み込んだらよく、従って、制御装置も新設する必要はなく、必要な制御マップを組み込むだけでよい。
【0049】
上記の実施形態の油圧式アクチュエータ14は、3ポート・3切欠き・2通路の方式を採用しているが、本願発明では1通路方式も採用可能であり、この場合は、2ポート・2切欠き式で足りる。
【0050】
上記実施形態のピストン31に連通孔を設け、フロント側シリンダ室とリア側シリンダ室とを連通させることで、オーバーフローするオイルの量を増加させてもよい。
【0051】
なお、前記連通孔には、ストッパー33又は34がシリンダ室30の端面に当たった後、シリンダ室30内の油圧が所定以上になると開く圧力弁を設けることで、駆動ロッド27の応答速度確保とオーバーフローオイル量の確保とが実現できる。
【0052】
また、スプール弁等のオイル制御手段の駆動装置は電磁ソレノイドには限らないのであり、電動モータなども使用できる。また、オイル制御手段はスプール弁方式には限らず、ロータリー式やニードル式なども使用できる。タービン翼の出力を制御する手段としては、タービン室に流入する排気ガスの量を調節することに代えて(又はこれに加えて)、タービン翼に向かう排気ガスの方向を調節することも採用可能である。