(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電線の芯線に電気的に接続する接続端子と、前記電線を挿入する電線挿入口、この電線挿入口に連設する電線収容室を有し、前記接続端子が前記電線収容室の基板側に組み付けられるハウジングと、を備える電線接続用コネクタであって、前記ハウジングが前記電線収容室の前記挿入方向前方にスライダ収容室と、このスライダ収容室で前記挿入方向に沿って前後方向に移動可能に収容されたスライダとを備え、 前記接続端子が板状に広がる基部と、この基部から反基板側に切り起こされた切り起こし片とを備え、前記切り起こし片は挿入完了位置にある前記芯線の周面に付勢力をもって当接することで前記芯線に電気的に接続するとともにそれを保持し、前記スライダは前記移動可能な範囲の所定位置で前記付勢力を取り除くか又は弱める作用を有する付勢力解除手段を備え、前記電線を抜去するとき前記スライダを前記付勢力解除位置に合わせて前記電線を抜去し、
前記スライダは前記挿入方向前方へ移動するとき、前記切り起こし片に当接し、前記付勢力解除位置で前記切り起こし片を前記基板側に傾かせる当接部を備え、
前記電線が前記電線収容室に挿入されるとき、前記スライダは前記後方位置に合わせられ、前記芯線が前記切り起こし片の先端部に当たり、前記先端部の切断面が前記芯線の周面に食い込む態様で弾接するところに特徴を有する電線接続用コネクタ。
前記電線が前記電線収容室から抜去されるとき、前記スライダは前記挿入方向前方の前記付勢力解除位置に合わせられ、前記スライダに備わる当接部が前記切り起こし片を傾かせ、前記付勢力を解除するところに特徴を有する請求項1記載の電線接続用コネクタ。
電線の芯線に電気的に接続する接続端子と、前記電線を挿入する電線挿入口、この電線挿入口に連設する電線収容室を有し、前記接続端子が前記電線収容室の基板側に組み付けられるハウジングと、を備える電線接続用コネクタであって、前記ハウジングが前記電線収容室の前記挿入方向前方にスライダ収容室と、このスライダ収容室で前記挿入方向に沿って前後方向に移動可能に収容されたスライダとを備え、 前記接続端子が板状に広がる基部と、この基部から反基板側に切り起こされた切り起こし片とを備え、前記切り起こし片は挿入完了位置にある前記芯線の周面に付勢力をもって当接することで前記芯線に電気的に接続するとともにそれを保持し、前記スライダは前記移動可能な範囲の所定位置で前記付勢力を取り除くか又は弱める作用を有する付勢力解除手段を備え、前記電線を抜去するとき前記スライダを前記付勢力解除位置に合わせて前記電線を抜去し、
前記スライダは前記挿入方向と反対方向へ移動するとき、前記切り起こし片に当接し、前記付勢力解除位置で前記切り起こし片を前記基板側に傾かせる当接部を備え、
前記電線が前記電線収容室に挿入されるとき、前記スライダは前記前方位置に合わせられ、前記芯線が前記切り起こし片の先端部に当たり、前記先端部の切断面が前記芯線の周面に食い込む態様で弾接するところに特徴を有する電線接続用コネクタ。
前記スライダはその一部を前記ハウジングの外周面に露出させ、前記スライダの一部を操作部とするところに特徴を有する請求項1から3のうち一項記載の電線接続用コネクタ。
前記スライダは一つの電線に対して前記挿入方向に沿って筒状に延びる一つの前記芯線収容室を有し、この収容室の基板側の底面に前記切り起こし片が立ち上がり、且つ前記前後方向の移動を可能にするためのスリットを有し、このスリットの前記後方端あるいは前記前方端に前記当接部を備えるところに特徴を有する請求項1から4のうちいずれか一項記載の電線接続用コネクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて、次にあげるうちの少なくとも何れか一つを目的とするものである。ひとつの目的は、電線の抜去作業が容易な電線接続用コネクタを提供することである。また別の目的は、簡単な機構によって前記目的を達成する電線接続用コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の電線接続用コネクタは、(1)電線の芯線に電気的に接続する接続端子と、前記電線を挿入する電線挿入口、この電線挿入口に連設する電線収容室を有し、前記接続端子が前記電線収容室の基板側に組み付けられるハウジングと、を備える電線接続用コネクタであって、前記ハウジングが前記電線収容室の前記挿入方向前方にスライダ収容室と、このスライダ収容室で前記挿入方向に沿って前後方向に移動可能に収容されたスライダとを備え、 前記接続端子が板状に広がる基部と、この基部から反基板側に切り起こされた切り起こし片とを備え、前記切り起こし片は挿入完了位置にある前記芯線の周面に付勢力をもって当接することで前記芯線に電気的に接続するとともにそれを保持し、前記スライダは前記移動可能な範囲の所定位置で前記付勢力を取り除くか又は弱める作用を有する付勢力解除手段を備え、前記電線を抜去するとき前記スライダを前記付勢力解除位置に合わせて前記電線を抜去し、
前記スライダは前記挿入方向前方へ移動するとき、前記切り起こし片に当接し、前記付勢力解除位置で前記切り起こし片を前記基板側に傾かせる当接部を備え、
前記電線が前記電線収容室に挿入されるとき、前記スライダは前記後方位置に合わせられ、前記芯線が前記切り起こし片の先端部に当たり、前記先端部の切断面が前記芯線の周面に食い込む態様で弾接するところに特徴を有するものである。
【0007】
この発明によれば、電線接続用コネクタは、スライダを付勢力解除位置以外の位置に合わせることによって、切り起こし片が芯線を保持し電気的接続をすることができ、スライダを付勢力解除位置に合わせ、付勢力解除手段を作用させることで、別途治具を準備することなく電線を抜去できる。これにより、簡易な構造で抜去作業が容易に行なえる電線接続コネクタが得られる。
【0008】
スライダは、ハウジングと同様に合成樹脂からなる射出成形品であってよく、ハウジングと同じ合成樹脂を使用するものであってよい。スライダは移動可能範囲以外への移動がハウジングで規制されていてもよく、移動可能範囲の一方端が付勢力解除位置であって他方端が電線保持位置(芯線保持位置)であってよい。
付勢力解除手段は、切り起こし片に直接作用して付勢力を解除するものであってよく、切り起こし片が切り起こしの基部を起点にしておこなう弾性的円弧運動を利用するものであってよい。また付勢力解除手段は、切り起こし片に間接的に作用して付勢力を解除するものであってよい。
【0009】
切り起こし片は、芯線の挿入方向に沿って切り起こされていてよく、この場合、挿入方向の前方が可動端となるように切り起こされるのが好ましい。また切り起こし角度は、90度よりも小さく90度に近い角度を持っているのが好ましい。この角度範囲にあると、電線の抜け方向に対して鋭角的に当接して咬み込む態様で係合できる。望ましくは60度以上90度未満であり、より望ましくは70度以上90度未満であり、最も望ましくは75度以上90度未満である。切り起こし角度が小さすぎると必要な付勢力が得られず、大きすぎて90度を越えるとスライダが思うように作動しないおそれが生じる。
【0011】
この発明によれば、スライダは付勢力解除位置で直接当接部によって切り起こし片を傾かせることができる。これにより、簡易な構造で電線の抜去作業が容易に行なえる電線接続コネクタが得られる。
【0013】
この発明によれば、スライダは後方位置で電線を迎え入れるので、スライダの位置合わせを確実に行なうことができ、そのとき、芯線と切り起こし片との接続は、切り起こし片の先端部の切断面が芯線の周面に食い込む態様である。これにより、切り起こし片の芯線を保持する力が高められるとともに、電気的な接続の信頼性も高められる。
【0014】
さらに好ましくは、本発明の電線接続用コネクタは、
(2)前記電線が前記電線収容室から抜去されるとき、前記スライダは前記挿入方向前方の前記付勢力解除位置に合わせられ、前記スライダに備わる当接部が前記切り起こし片を傾かせ、前記付勢力を解除するところに特徴を有する
(1)記載のものである。
【0015】
この発明によれば、スライダは前方位置に付勢力解除位置があるので、スライダを操作するだけで電線をスムーズに抜去できるとともに、電線抜去時のスライダの位置合わせを確実に行なうことができる。
【0016】
さらに好ましくは、本発明の電線接続用コネクタは、(3)
電線の芯線に電気的に接続する接続端子と、前記電線を挿入する電線挿入口、この電線挿入口に連設する電線収容室を有し、前記接続端子が前記電線収容室の基板側に組み付けられるハウジングと、を備える電線接続用コネクタであって、前記ハウジングが前記電線収容室の前記挿入方向前方にスライダ収容室と、このスライダ収容室で前記挿入方向に沿って前後方向に移動可能に収容されたスライダとを備え、 前記接続端子が板状に広がる基部と、この基部から反基板側に切り起こされた切り起こし片とを備え、前記切り起こし片は挿入完了位置にある前記芯線の周面に付勢力をもって当接することで前記芯線に電気的に接続するとともにそれを保持し、前記スライダは前記移動可能な範囲の所定位置で前記付勢力を取り除くか又は弱める作用を有する付勢力解除手段を備え、前記電線を抜去するとき前記スライダを前記付勢力解除位置に合わせて前記電線を抜去し、前記スライダは前記挿入方向と反対方向へ移動するとき、前記切り起こし片に当接し、前記付勢力解除位置で前記切り起こし片を前記基板側に傾かせる当接部備えるところに特徴を有するものである。
前記電線が前記電線収容室に挿入されるとき、前記スライダは前記前方位置に合わせられ、前記芯線が前記切り起こし片の先端部に当たり、前記先端部の切断面が前記芯線の周面に食い込む態様で弾接するところに特徴を有する電線接続用コネクタ。
【0017】
この発明によれば、スライダを電線挿入方向と反対方向に移動させることによって切り起こし片を傾かせることができる。これにより、簡易な構造で電線の抜去作業が容易に行なえる電線接続コネクタが得られる。
【0019】
この発明によれば、スライダは前方位置で電線を迎え入れるので、スライダの位置合わせを確実に行なうことができ、そのとき、芯線と切り起こし片との接続は、切り起こし片の先端部の切断面が芯線の周面に食い込む態様である。これにより、切り起こし片の芯線を保持する力が高められるとともに、電気的な接続の信頼性も高められる。
【0020】
さらに好ましくは、本発明の電線接続用コネクタは、
(5)前記スライダはその一部を前記ハウジングの外周面に露出させ、前記スライダの一部を操作部とするところに特徴を有する
(1)から(4)のうちいずれか一項記載のものである。
【0021】
この発明によれば、スライダは、その一部がハウジングの外周面に露出しているので、スライダを操作するときの操作性がよくなる。
【0022】
さらに好ましくは、
(5)前記スライダは一つの電線に対して前記挿入方向に沿って筒状に延びる一つの前記芯線収容室を有し、この収容室の基板側の底面に前記切り起こし片が立ち上がり、且つ前記前後方向の移動を可能にするためのスリットを有し、このスリットの前記後方端に前記当接部を備えるところに特徴を有する
(1)から(4)のうちいずれか一項記載のものである。
【0023】
この発明によれば、スライダは、切り起こし片が移動可能なスリットを備え、その端部に当接部を備えている。これにより、低背形の電線接続用コネクタが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で実施することができる。
図1は本発明の実施形態に係る電線接続用コネクタを前方から見た外観斜視図である。
図2は本発明の実施形態に係る電線接続用コネクタを後方から見た外観斜視図である。
図3は本発明の実施形態に係る電線接続用コネクタと電線とを分解した分解斜視図である。なお、説明中の指示方向は、断りのない限り図面中で定義する方向指示に従う。また、特許請求の範囲で使用した接続端子は、以下説明で使用する弾性接続片を含むものである。
【0026】
〈電線接続用コネクタの概要〉
本発明の電線接続用コネクタ1は、
図1、
図2に示されるように、低背形の表面実装タイプのコネクタで扁平箱状のハウジング10と、このハウジング10にスライド可能に収容されるスライダ20とを備える。ハウジング10は、プリント配線基板Pに接する底面に実装部330を露出させ、他方で電線Wの芯線W1に電気的に接続する接続部320を備えた弾性接続片30を底壁102で保持している。
【0027】
電線接続用コネクタ1は、
図3に示されるように、電線Wが後面から挿抜される。電線Wと弾性接続片30との接続は、芯線W1が露出した電線Wを、電線挿入口111からその奥にある電線収容室112まで挿入して行なわれる。電線Wの接続解除にともなう抜去は、電線Wを電線挿入口111からスライダ20を操作して引き抜くことで行なわれる。電線Wを接続するときはスライダ20を後方の芯線接続位置に合わせ、電線Wを抜去するときはスライダ20を前方の付勢力解除位置に合わせることで、容易に電線Wの抜去が行なえるものである。なお、芯線W1は比較的太さのある単線であってもよく、細い複数の線の撚り線であってもよい。
【0028】
〈ハウジング〉
ハウジング10について図面に基づいて説明する。
図4は
図1のIV−IV線に沿って切断した断面図である。
図6は本発明の実施形態に係る電線接続用コネクタのハウジングの外観斜視図である。
図7は同ハウジングの上面図である。
図8は同ハウジングの後面図である。
図9は同ハウジングの前面図である。
【0029】
ハウジング10は、
図6に示されるように、内部に中空部分を有する箱体の本体110と、その左右側面にスライド部130とを備える、合成樹脂の射出成形品である。ハウジング本体110は、上壁101、底壁102、左右側壁103、104、前壁105、及
び後壁106からなる箱体である。上壁101、底壁102、左右側壁103、104は平坦で、左右側壁103、104には中央から前端にかけてスライド部130、130が備わる。また、後壁106には円形の電線挿入口111、111が備わり、前壁105には矩形のスライダ挿入口113が備わる。電線挿入口111の奥(前方)には、
図4に示されるように、電線収容室112があり、スライダ挿入口113の奥(後方)にはスライダ収容室114がある。電線収容室112と、スライダ収容室114との間には縦壁107があり、この縦壁107には芯線W1を通すための芯線通過孔115が穿設されている。
【0030】
電線収容室112は、
図4、
図8に示されるように、電線挿入口111に連設される断面円形の筒状空間である。電線収容室112の前方の突き当りには縦壁107が備わる。電線挿入口111から挿入された電線Wは、その切断面(端面)を縦壁107の後面に当てて正規挿入位置を得る。このとき電線Wの中心から前方に延びる芯線W1は、縦壁107に前後方向に穿設された芯線通過孔115に通され、スライダ収容室114に進入している。このように芯線W1の必要挿入量は、電線Wの端面が縦壁107の後面に突き当たるまで押し切ることによって得られる。
【0031】
電線収容室112は、
図4に示されるように、断面円形の筒状でその直径は電線Wの直径に比べてクリアランス分だけ僅かに大きい。また電線Wは電線収容室112内でその周面に僅かなクリアランスを有し不動状態で電線収容室112内に収まる。縦壁107に穿設された芯線通過孔115は芯線W1の直径に比べて大きく、芯線W1の通過を妨げない。
【0032】
スライダ収容室114は、
図4、
図9に示されるように、スライダ挿入口113に連接される断面矩形の筒状空間であり、間に仕切壁108が備わる。スライダ収容室114の後方の突き当りには縦壁107が備わる。縦壁107は、スライダ20の後方への動きを規制する。スライダ収容室114は、スライダ20の外形に比べて僅かに大きく、スライダ20はスライダ収容室114の内周面に案内されるようにしてスライダ収容室114内を前後方向にスライドする。縦壁107に穿設された芯線通過孔115は、スライダ収容室114に連通する。
【0033】
スライド部130は、
図6、
図8、
図9に示されるように、ハウジング本体110の左右側面の中央から前端にかけて備わる、断面コの字のブロックである。スライド部130は、外に開口部を向け前後方向に亘るスライド溝131を備えている。スライド部130はスライダ20の操作部220を案内し、スライダ20の動きを規制するとともに、その操作を容易化する。
【0034】
〈スライダ〉
スライダ20について図面に基づいて説明する。
図10は本発明の実施形態に係る電線用コネクタのスライダの外観斜視図である。
図11は同スライダの底面図である。
図12は同スライダの後面図である。
図13は同スライダの前面図である。
【0035】
スライダ20は、
図10に示されるように、扁平箱状の本体210と、その左右両側に離間して備わる操作部220とを備えている。本体210と操作部220とは、本体210前面にあるフランジ230で連なる。本体210は、筒状の単体210aを離間して備える。単体210aは、上壁201、底壁202、左右側壁203、204、前壁205、及び後壁206からなり、上壁201、底壁202、及び左右側壁203、204は平坦である。後壁206には芯線挿入口211が備わり、芯線挿入口211の奥(前方)には、
図4に示されるように、芯線収容室212が連設されている。芯線挿入口211は、芯線通過孔115を通過した芯線W1がスライダ20内部の芯線収容室212に進入する
ための入口である。
【0036】
芯線収容室212は、
図4に示されるように、芯線通過孔115を通過した芯線W1を収容するための空間であり、芯線W1を収容するための大きさを備えている。芯線収容室212の上面(上壁201の下面)は芯線W1の形状に対応した曲面で、芯線W1の進入を妨げないだけのクリアランスが、芯線W1との間に備わる。また上壁201の下面は、芯線W1を接続保持する際一方の挟持片の機能も有し、そのために、クリアランスは必要最小限に設けるのが好ましい。
【0037】
底壁202には、
図11に示されるように、前後方向に延びるスリット213が備わり、スリット213の後端を画成する底壁202には弾性接続片30に当接しこれを変形させるための当接部214が備わる。スリット213は、芯線収容室212の底面(下面)に連通し、フランジ230(前壁205)の壁面まで延びている。スリット213は、組み付け時、弾性接続片30の切り起こし片322が移動するための空間であり、そのために必要な幅と長さを備えている。スリット213の後端を画成する当接部214は、スライダ20の操作時、切り起こし片322に当接するところである。フランジ230には、
図13に示されるように、芯線収容室212に連通する開口部231が備わる。開口部231の下端は、スリット213に連通している。組み付け時この開口部231を通して弾性接続片30が組み付けられる。
【0038】
〈弾性接続片〉
弾性接続片30について図面に基づいて説明する。
図5は
図4に示される弾性接触片の外観斜視図である。
弾性接続片30は、
図5に示されるように、剛性を備えた板状金属の折り曲げ加工品で、芯線W1に付勢力を持って接続するものである。弾性接続片30は、前後方向に延びる基部310、その前端及び後端から延びる実装部330、基部310の中央部から切り起こされた接続部320を備えている。接続部320は、基部310と同じ平面上に広がる支持部321と、その前端から上方に立ち上がる切り起こし片322とを備えている。さらに基部310の左右側部にはハウジング10に圧入固定される固定部311を備えている。
【0039】
切り起こし片322は、90度よりも小さいが90度近い角度を持って切り起こされている。切り起こし片322の先端は切断面で角部を含む接続保持部323が形成されている。切り起こし片322は、電線Wの抜け方向に対して鋭角的に当接し、電線Wの抜けを抑制する。切り起こし片322は、切り起こし線322aを支点(線)にして円弧状に弾性的に変位可能である。実装部330は、基部310に対して一段低い位置で広がるように連結部に段差が設けられている。実装部310は、その下面でプリント配線基板Pに接しパッドに対して半田で接続される。
【0040】
弾性接続片30は、
図4に示されるように、ハウジング10の底壁102に備わる圧入部で固定部311が保持され、切り起こし片322が上方に向く姿勢で固定される。このとき実装部330は、ハウジング10の底壁102の前端部及び後端部にあり、やや基板側に張り出した状態で位置している。本実施形態では、実装部330は接続強度のバランスを考慮してハウジング10の前端及び後端に備わる。
【0041】
〈組み付け〉
電線接続用コネクタ1の組み付けについて図面に基づいて説明する。
図14は本発明の実施形態に係る電線接続用コネクタの組み付け図である。
スライダ20は、
図14に示されるように、ハウジング10の前面にあるスライダ挿入口113からスライダ収容室114に組み付けられる。スライダ20は、芯線挿入口21
1をハウジング10に向けて組み付けられる。スライダ20は、スライダ収容室114内を前後方向にスライド可能にクリアランスをもって組み付けられる。スライダ20は、不用意な力が作用してもハウジング10から抜けないように、ハウジング10との間に抜け止めが備わる。
【0042】
弾性接触片30は、
図14に示されるように、ハウジング10の前面から組み付けられる。基部310の側面から連なる固定部311がハウジング10の底壁102に備わる固定部に係合することで固定される。切り起こし片322は、上方に立ち上がり、実装部330、330は、底壁102から露出する。弾性接触片30の組み付けの際、切り起こし片322は、すでに組み付けられているスライダ20の底壁202にあるスリット213を通して組み付けられる。
このようにして、ハウジング10、スライダ20、及び弾性接触片30が一体的に組み付けられて電線接続用コネクタ1が得られる。
【0043】
〈作用〉
スライダ20の作用について説明する。
図15は本発明の実施形態に係る電線接続用コネクタのスライダの作用を示す断面図であり、(A)は電線挿入前、(B)は電線挿入時、(C)は電線抜去時である。
【0044】
電線接続用コネクタ1に電線Wを接続するときは、
図15の(A)に示されるように、端部の芯線W1が露出した状態の電線Wを電線接続用コネクタ1後面の電線挿入口111から挿入する。このとき、スライダ20の位置は、後方への押し切り位置(芯線接続位置)にあり、フランジ230或いはスライダ20の後壁206がハウジング10の前壁105或いは縦壁107に当接している。スライダ20が芯線接続位置にあるとき、スライダ20底壁202のスリット213を通して弾性接続片30の切り起こし片322が立ち上がる。このとき切り起こし片322は、当初の切り起こし角度である90度近い角度のまま立ち上がる。
【0045】
電線Wをさらに奥まで挿入し続けると、
図15の(B)に示されるように、その途中で、芯線W1の先端が切り起こし片322の後面に当たる。この位置から挿入作業に切り起こし片322による挿入抵抗がかかるようになる。このとき芯線W1は、切り起こし片から上向きの力を受けてスライド20上壁201に摺接しながら進む。これにより、これが支えになって倒れ込みが防がれている。切り起こし片322の傾きが増すように電線Wをさらに挿入し続けると、切り起こし片322の先端の接続保持部323が芯線W1の周面に係りはじめる。その状態のまま電線Wを押し切り位置まで挿入し続ける。
【0046】
電線Wの正規挿入位置で、接続保持部323は、切断面の鋭利な角部を芯線W1周面に係合させるので、切り起こし片322の弾性的変形による付勢力が係合部に集中する。これにより、電線Wが抜ける方向の力に対して接続保持部323は芯線W1を咬み込む態様で保持する。このようにスライダ20の芯線保持位置で、切り起こし片322は電線Wの抜けを防ぐように芯線W1を保持するとともに、芯線W1に電気的に接続する。
【0047】
電線接続用コネクタ1から電線Wを抜去するときは、
図15の(C)に示されるように、スライダ20をスライド可能範囲の前端にある付勢力解除位置に合わせる。このスライダ20の操作によって、そのスライド過程で、芯線W1に係合していた切り起こし片322が復元力を蓄えながら徐々に倒れこみ、スライダ20が付勢力解除位置近くになると、ついには係合が解かれる。これにより、電線Wを保持する力はなくなるので電線Wは容易に抜去できるようになる。
【0048】
電線Wが抜去された電線接続用コネクタ1は、スライダ20が芯線接続位置に合わせら
れる。これにより、切り起こし片322は、蓄積された復元力を開放し元の立ち上がった姿勢に戻り、再び電線Wの挿入を待ち受ける態勢をとる。
【0049】
〈使用例〉
本実施形態に係る電線接続用コネクタの使用例を
図16に示す。
図16は本発明の実施形態に係る電線接続用コネクタが基板に実装されている外観図である。
細長いプリント配線基板Pには、LEDが整列配置され、端部に本実施形態に係る電線接続用コネクタ1が搭載されている。電線Wはプリント配線基板P面に平行に挿抜され、プリント配線基板Pの延びる方向に沿って行なわれる。電線挿抜操作は狭い場所での作業が強いられるので、スライダ20の操作だけで電線Wを容易に挿抜できる本実施形態に係る電線接続用コネクタ1は作業性向上に貢献する。さらに、スライダ操作による芯線接続位置及び付勢力解除位置ともにスライダの可動範囲の両端部に位置するので、視認作業が困難な環境においても電線の挿抜操作が比較的容易に行なえる。
【0050】
〈効果〉本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
・本実施形態に係る電線接続用コネクタ1は、付勢力解除手段を備えたスライダ20を備える。これによりスライダ20の操作によって容易に電線Wの抜去がおこなえる。
・本実施形態に係る電線接続用コネクタ1は、スライダ20に操作部220が備わる。これにより、スライダ20の操作が容易におこなえる。
・本実施形態に係る電線接続用コネクタ1は、電線Wの直径と略同じ高さからなるスライダ20を電線W挿入方向に備える。これにより、スライダ20はコネクタ1の低背化を妨げない。
【0051】
・本実施形態に係る電線接続用コネクタ1は、芯線W1の電気的接続、及び保持を弾性接続片30の切り起こし片322によっておこなう。これにより、簡易な構造で電線Wの接続構造が得られる。
・本実施形態に係る電線接続用コネクタ1は、小型低背形なので、LEDが搭載されたプリント配線基板Pに射光の妨げにならないように実装することができる。
・本実施形態に係る電線接続用コネクタ1は、電線Wの正規挿入位置で、接続保持部323は、切断面の鋭利な角部を芯線W1周面に係合させるので、切り起こし片322の弾性的変形による付勢力が係合部に集中する。これにより、電線Wが抜ける方向の力に対して接続保持部323は芯線W1を咬み込む態様で保持することができる。
【0052】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、発明思想の範囲内で種々の変更が可能である。別の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図17は別の実施形態に係る電線接続用コネクタの分解図である。
図18は別の実施形態に係る電線接続用コネクタの要部拡大図である。
図19は別の実施形態に係る電線接続用コネクタのスライダの作用を示す断面図であり、(A)は電線挿入前、(B)は電線挿入時、(C)は電線抜去時である。なお、先に説明した実施形態と同じ構造のものには同じ符号を付し、変更がある構造には新たな符号を付す。また、重複する説明を避けるために、別の実施形態の特徴部分のみ説明を加える。
【0053】
〈別の実施形態〉
ハウジング1010は、
図17、
図18に示されるように、下方から弾性接続片1030が組まれ、後方からスライダ1020が組まれる。ハウジング1010は、左右の電線収容室1112及びスライダ収容室1114が仕切壁1108で仕切られている。電線Wは後壁1106の電線挿入口1111から挿入される。電線収容室1112には、弾性接続片1030の切り起こし片1322が電線挿入方向と略直交する方向に臨んでいる。スライダ1020は、左右側壁1103、1104外面、および上壁1101外面に内周面を摺接させながら前後方向に沿ってスライドする。
【0054】
弾性接続片1030は、水平方向に広がる基部1310の前方に実装部1330を備え、後方に接続部1320を備える。接続部1320は、湾曲して前方に延び、基部1310の上方で切り起こし片1322を90度近い角度で立ち上げる。切り起こし片1322の先端は、切断面からなる接続保持部1323を備えている。接続保持部1323は鋭利な角部を有し、この角部で芯線W1を接続保持する。切り起こし片1322は、左右に切り起こし補助片1322bを備える。切り起こし補助片1322bは、先端に湾曲部を備えた当たり代で、スライダ1020に備わる当接部1214と当接するところである。当接の有無によって切り起こし片1322を上下に変位させる。
【0055】
スライダ1020は、ハウジング1010内を前後方向に沿ってスライド可能である。スライダ1020は前方位置が電線保持位置であり、後方位置が付勢力解除位置である。前方位置にあるとき、
図18に示されるように、当接部1214は切り起こし補助片1322bの手前に位置し、切り起こし片1322は上方に立ち上がった状態である。後方位置にあるとき、当接部1214は切り起こし補助片1322bに当たり、これを沈み込ませる。これにより、切り起こし片1322は下方に変位する。
【0056】
電線Wの挿抜は、
図19に示されるように、電線Wを挿入するとき、スライダ1020を前方の電線保持位置に合わせ、電線Wを抜去するとき、スライダ1020を後方の付勢力解除位置に合わせる。このようにスライダ1020を操作することによって電線Wを無理なく挿抜できる。
このように構成した場合も、上述した効果が概ね得られる。