(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、地中に沈設されたケーソンに作用する地下水の浮力に抗してケーソンを地中に留めることのできる、ケーソンの浮き防止部材、及び当該ケーソンの浮き防止部材の設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の浮き防止部材は、ケーソンの側壁に設けられた内外を連通する連通部に固定され、孔部を有する支持部材と、前記支持部材の孔部に基端側の接合部が支持され、先端側が前記側壁の外側の土中に突出する荷重伝達部材とを備えることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、土中に突出させられた荷重伝達部材の先端側に土のせん断抵抗が作用することから、前記荷重伝達部材の基端側の接合部を支持する支持部材を介して、ケーソンに作用する浮力に抗することが可能となる。したがって、ケーソンが土中から浮き上がることを防止することができる。
【0021】
本発明の第2の態様の浮き防止部材は、第1の態様において、前記荷重伝達部材は、前記接合部が前記孔部の内側と面接触して該孔部に支持されていることを特徴とする。
本態様によれば、荷重伝達部材の接合部と前記支持部材の孔部とが面接触することから、前記荷重伝達部材は支持部材に強固に支持されている。このため、前記荷重伝達部材は前記支持部材に対して片持ち梁状態で支持される。これにより、前記荷重伝達部材に作用する土のせん断抵抗を減衰させることなく支持部材を介してケーソンに作用させることができる。
【0022】
本発明の第3の態様の浮き防止部材は、第1の態様または第2の態様において、前記荷重伝達部材は同一径に形成されていることを特徴とする。
本態様によれば、前記荷重伝達部材を同一径で形成することから、加工費を低減することができ、コストダウンを図ることができる。また、前記荷重伝達部材の構成を簡素化することができる。
【0023】
本発明の第4の態様の浮き防止部材は、第1の態様または第2の態様において、前記接合部はテーパー形状に形成され、前記孔部は前記テーパー形状に対応する逆テーパー形状に形成されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、接合部をテーパー形状とすることにより前記接合部を円筒状に形成した場合よりも前記接合部の断面を大きくすることができる。これにより、接合部を円筒状に形成する場合よりも荷重伝達部材が耐え得るせん断抵抗の大きさを大きくすることができる。すなわち、同じ大きさのせん断抵抗を受ける場合、断面がテーパー形状に形成された荷重伝達部材は、断面が円筒状に形成された荷重伝達部材より直径を小さくすることができる。
【0025】
本発明の第5の態様の浮き防止部材は、第1の態様または第2の態様において、前記荷重伝達部材は、前記孔部と螺合して前記荷重伝達部材の軸線方向への変位が規制されることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、荷重伝達部材と支持部材とを螺合させることにより、支持部材に対して前記荷重伝達部材を確実に固定することができる。このため、荷重伝達部材の軸線直角方向断面に土水圧による荷重により地山側からケーソン躯体に向かう力が作用する際、荷重伝達部材の軸線方向への変位を確実に規制することができる。
【0027】
本発明の第6の態様の浮き防止部材は、第1の態様または第2の態様において、前記荷重伝達部材は、前記孔部と嵌合して前記荷重伝達部材の軸線方向への変位が規制されることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、荷重伝達部材と支持部材とを嵌合させることにより、支持部材に対して前記荷重伝達部材を確実に固定することができる。このため、荷重伝達部材の軸線直角方向断面に土水圧による荷重により地山側からケーソン躯体に向かう力が作用する際、荷重伝達部材の軸線方向への変位を確実に規制することができる。
【0029】
本発明の第7の態様の浮き防止部材は、第1から第4のいずれか一の態様において、前記荷重伝達部材の先端に掘削部材を備えていることを特徴とする。
本態様によれば、荷重伝達部材に掘削部材を設けることにより、浮き防止部材の設置工程を減らすことができる。尚、掘削部材には、ビット、チップ等が含まれる。
【0030】
本発明の第8の態様の浮き防止部材は、第7の態様において、前記掘削部材は、該掘削部材が作る刃先円の直径が前記荷重伝達部材の先端側の外径より大きく形成されていることを特徴とする。
【0031】
本態様によれば、掘削部材が作る刃先円の直径が前記荷重伝達部材の先端側の外径より大きくなることから、荷重伝達部材の外周面と該荷重伝達部材の外周面の周囲の地山との摩擦力を低減することができ、前記荷重伝達部材の掘進に必要な力を低減することができる。
【0032】
本発明の第9の態様の浮き防止部材は、第1、第2または第4の態様において、前記荷重伝達部材の先端に掘削部材を備え、前記荷重伝達部材の外周に撹拌手段を備えていることを特徴とする。
【0033】
本態様によれば、掘削した孔に荷重伝達部材を配置し、前記掘削孔にグラウト材を注入しながら、あるいは注入した後、撹拌手段によりグラウト材を撹拌することにより荷重伝達部材の周囲の地山の土とグラウト材を混合撹拌することができ、荷重伝達部材の周囲に固化させたグラウト材の層を当該荷重伝達部材と一体化させることができる。これにより、浮き防止部材の径を大きくすることができ、荷重伝達部材に作用するせん断抵抗を大きくすることができる。その結果、荷重伝達部材ひいては浮き防止部材の数を減らすことができる。
【0034】
本発明の第10の態様の浮き防止部材は、第9の態様において、前記撹拌手段は固定された突起であって該突起が作る刃先円の直径は、前記孔部の内径よりも小さいことを特徴とする。
本態様によれば、第9の態様と同様の作用効果に加え、前記荷重伝達部材の先端側を孔部よりも細くすることができ、低コスト化を図ることができる。
【0035】
本発明の第11の態様の浮き防止部材は、第9の態様において、前記掘削部材は倒立可能であり、倒れた状態で作る外径は前記孔部の内径より小さいことを特徴とする。
本態様によれば、掘削部材が倒立可能に構成されていることから、倒した状態で孔部を通した後に掘削部材を立てることにより孔部の内径よりも大きい径の孔を土中に掘削することができる。これにより掘削後にグラウト材を注入固化させることにより荷重伝達部材の周囲に孔部の内径よりも大きいグラウト材の層を形成することができ、荷重伝達部材に作用するせん断抵抗を大きくすることができる。
【0036】
本発明の第12の態様の浮き防止部材は、第11の態様において、前記撹拌手段は倒立可能であり、倒れた状態で作る外径は前記孔部の内径より小さいことを特徴とする。
本態様によれば、第11の態様と同様の作用効果に加え、撹拌手段を立てた状態でグラウト材を撹拌することにより荷重伝達部材の周囲の地山の土とグラウト材を混合撹拌することができ、荷重伝達部材の周囲に固化させたグラウト材の層を当該荷重伝達部材と一体化させることができる。これにより、浮き防止部材の径を大きくすることができ、荷重伝達部材に作用するせん断抵抗を大きくすることができる。その結果、荷重伝達部材の数を減らすことができる。また、セグメントに開口する孔部の大きさを小さくすることができることから、開口するセグメントの孔部周辺の補強を小規模にすることができる。
【0037】
本発明の第13の態様の浮き防止部材は、第1から第4のいずれか一の態様において、前記荷重伝達部材は円筒体であり、該荷重伝達部材が突出するために前記土中に形成される孔は円筒状であることを特徴とする。
【0038】
本態様によれば、前記荷重伝達部材を地中に突出させるために掘削する土の量を低減することができるため、掘削時間を短縮することができるとともに周囲の地山への影響を最小限にすることができる。
【0039】
本発明の第14の態様の浮き防止部材は、第1から第13のいずれか一の態様において、前記側壁の内側に結合手段により固定される蓋体を備え、前記蓋体は、前記荷重伝達部材の軸線方向への変位を規制することを特徴とする。
本態様によれば、蓋体をケーソンの側壁の内側に取り付けることにより、荷重伝達部材の軸線方向への変位を確実に規制することができる。
【0040】
本発明の第15の態様の浮き防止部材は、第1から第14のいずれか一の態様において、前記支持部材の前記孔部には該孔部の軸線方向に沿って延びる排泥溝が形成されていることを特徴とする。
【0041】
本態様によれば、支持部材に排泥溝を設けることにより掘削時に発生する掘削された土砂を排泥溝を介して排出することができ、掘削作業の作業性を向上させることができる。また、支持部材に接合部を支持させるために接触させる際、支持部材の付着泥土を排泥溝を介して支持部材と接合部との接触面から除去できることから支持部材と接合部とを密着させることができる。
【0042】
本発明の第16の態様の浮き防止部材は、第1の態様において、前記荷重伝達部材の外周に雄ねじが形成され、前記孔部に雌ねじが形成され、前記荷重伝達部材の先端に掘削部材を備え、前記荷重伝達部材を前記孔部に対して螺進させて、前記掘削部材により前記土を掘削して、前記荷重伝達部材を前記土中に突出させることを特徴とする。
【0043】
本態様によれば、荷重伝達部材を突出させるための掘削孔を予め掘削する必要が無く、荷重伝達部材を支持部材に対して螺進させるだけで、地中に荷重伝達部材を配置することができる。このため、本態様では、削孔水を必要としないため荷重伝達部材の周辺の地山を乱すことがない。このため、本態様の荷重伝達部材は地山にしっかり食い込むことができ、荷重伝達力を増すことができる。
【0044】
本発明の第17の態様の浮き防止部材は、第16の態様において、前記掘削部材は掘削した土を前記荷重伝達部材の内部に導くように構成されていることを特徴とする。
本態様によれば、荷重伝達部材の内部に掘削した土を収容することから、掘削土を外部に排出する必要が無い。このため、施工のための装置を大掛かりにする必要が無く、施工費用を低減することができる。
【0045】
本発明の第18の態様の浮き防止部材は、第16の態様または第17の態様において、前記接合部には前記側壁の内側から前記荷重伝達部材の内部に向けてグラウト材を注入可能な弁を備えることを特徴とする。
本態様によれば、荷重伝達部材内部に掘削した土を収容し、グラウト材を注入・固化させることにより荷重伝達部材の強度を向上させることができる。
【0046】
本発明の第19の態様の浮き防止部材の設置方法は、ケーソンの側壁に設けられた内外を連通する連通部に固定された、孔部を有する支持部材の該孔部を介して前記側壁から該側壁の外側の地中に向かって荷重伝達部材を突出させるための孔を土中に掘削する工程と、
前記荷重伝達部材を前記掘削された土中の孔に挿入する工程と、前記孔部に前記荷重伝達部材の前記接合部を支持させて固定する工程とを含むことを特徴とする。
【0047】
本態様によれば、ケーソン側壁に荷重伝達部材を土中に突出させた状態で設けていることから、前記荷重伝達部材は土砂のせん断抵抗を受ける。したがって、前記せん断抵抗は、ケーソンに作用する浮力に抗して該ケーソンを所定の深さに維持することができる。
【0048】
本発明の第20の態様の浮き防止部材の設置方法は、ケーソンの側壁に設けられた内外を連通する連通部に固定された、孔部を有する支持部材の該孔部を介して前記側壁から該側壁の外側の地中に向かって荷重伝達部材を突出させるための孔を土中に掘削するとともに前記荷重伝達部材を前記掘削された土中の孔に突出する工程と、前記孔部に前記荷重伝達部材の前記接合部を支持させて固定する工程とを含むことを特徴とする。
【0049】
本態様によれば、荷重伝達部材の先端に掘削部材を設けることにより、予め荷重伝達部材を突出させるための孔を掘削する必要が無く、孔を掘削する工程と荷重伝達部材を突出させる工程とを一工程で行うことができる。これにより施工の工期を短縮することができる。
【0050】
本発明の第21の態様の浮き防止部材の設置方法は、第19または第20の態様において、前記荷重伝達部材を介して前記掘削された孔にグラウト材を注入する工程を含むことを特徴とする。
本態様によれば、荷重伝達部材が配置された掘削孔内部にグラウト材を注入することにより、該グラウト材が前記掘削孔内で固化することにより前記荷重伝達部材の地山への固定を確実なものとすることができる。
【0051】
本発明の第22の態様の浮き防止部材の設置方法は、第21の態様において、前記荷重伝達部材を回転させて、前記注入されたグラウト材と前記荷重伝達部材の周囲の地山の土とを混合撹拌する工程と、前記撹拌されたグラウト材を固化させる工程とを含むことを特徴とする。
【0052】
本態様によれば、注入されたグラウト材を前記荷重伝達部材の周囲の地山の土と混合撹拌することにより、前記荷重伝達部材の周囲に形成されるグラウト層の強度を向上させるとともに前記荷重伝達部材の地山への固定を確実なものとすることができる。
【0053】
本発明の第23の態様の浮き防止部材の設置方法は、ケーソンの側壁に設けられた内外を連通する連通部に固定された、孔部を有する支持部材の該孔部を介し、前記荷重伝達部材の内側に配置され、先端に掘削部材を備える内管部材を前記荷重伝達部材とともに前記側壁の外側の土中に向かって掘進させて前記荷重伝達部材を突出させる工程と、前記内管部材を突出させた状態の前記荷重伝達部材から引き抜く工程と、前記孔部に前記荷重伝達部材の前記接合部を支持させて固定する工程とを含むことを特徴とする。
【0054】
本態様によれば、荷重伝達部材を突出させる孔を土中に掘削する工程と荷重伝達部材を前記孔に突出させる工程とを一工程とすることができる。また、前記孔は円筒状の孔として掘削することから掘削する土砂の量を少なくすることができ、掘削時間を短縮することができる。さらに、荷重伝達部材の外側の余堀りを少なくすることができることから荷重伝達部材の周囲の地山を乱すことを小さくすることができる。
【0055】
本発明の第24の態様の浮き防止部材の設置方法は、第23の態様において、前記荷重伝達部材を介して前記掘削された孔にグラウト材を注入する工程と、前記注入されたグラウト材を固化させる工程とを含むことを特徴とする。
本態様によれば、グラウト材を注入固化させることにより荷重伝達部材と該荷重伝達部材の周囲の地山との結合性を高めることができる。
【0056】
本発明の第25の態様の浮き防止部材の設置方法は、第1から第24のいずれか一の態様において、前記側壁の内側に結合手段を用いて蓋体を取り付ける工程を含むことを特徴とする。
本態様によれば、蓋体により荷重伝達部材の接合部の位置をケーソン側壁の内側に対して規定することができることから、荷重伝達部材の軸線方向への変位を規制することができる。さらに蓋体によりケーソン外側からの圧力による地下水の侵入を防止することができる。また、蓋体により荷重伝達部材の接合部の端面が外気に触れることを防止し、該接合部の端面の腐食を防止することができる。
【0057】
本発明の第26の態様の浮き防止部材の設置方法は、ケーソンの側壁に設けられた内外を連通する連通部に固定された、孔部を有する支持部材の該孔部を介し、荷重伝達部材を前記孔部に対して螺進させて土中を掘削する工程と、掘削した土を前記荷重伝達部材の内部に導いて前記荷重伝達部材を土中に突出させる工程とを含むことを特徴とする。
【0058】
本態様によれば、荷重伝達部材を支持部材に対して螺進させるだけで、荷重伝達部材を突出させる孔を土中に掘削する工程と前記孔に荷重伝達部材を突出させる工程とを一工程とすることができるとともに施工に止水装置を必要としないことから施工コストを低減することができる。
【0059】
本発明の第27の態様の浮き防止部材の設置方法は、第26の態様において、前記荷重伝達部材の内部にグラウト材を注入する工程と、前記注入されたグラウト材を固化させる工程とを含むことを特徴とする。
本態様によれば、グラウト材を荷重伝達部材の内部に注入することにより、前記荷重伝達部材の内部に収容された掘削土と混合して固化することにより、前記荷重伝達部材の強度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施例において同一の構成については、同一の符号を付し、最初の実施例においてのみ説明し、以後の実施例においてはその構成の説明を省略する。
【0062】
<ケーソンの構造について>
図1を参照するに、本発明に係る浮き防止部材10を備えるケーソン12が示されている。ケーソン12は、地表面14から地中に沈設されるケーソン本体16と、該ケーソン本体の側壁18からケーソン本体16の外側の地中に向かって突出する複数の浮き防止部材10と、ケーソン本体16の底部に設けられた底版20とを備えて構成されている。
【0063】
ケーソン本体16は、
図2に示すように複数の躯体22を積み重ねて構成されている。躯体22は、本実施例では、後述する複数のセグメント24を接合してリング状部材として構成されている。
【0064】
ケーソン12は、躯体22沈設完了後に底版20(水中コンクリート)(
図1参照)を打設し、ケーソン本体16内の水を汲み上げた後、ケーソン本体16内からケーソン本体16と外側の地山との間にセグメント24に設けた図示しないグラウト孔から、図示しないモルタルをグラウトすることにより躯体22と地山との空隙を充填して、地盤に躯体22を密着させるとともに地盤沈下を防止することができる。
【0065】
また、
図1に示すようにケーソン本体16の底部に底版20を打設後、ケーソン本体16において該ケーソン本体16の側壁18から該側壁18の外側の土中に向かって複数の浮き防止部材10が突出される。
【0066】
図3は、ケーソン本体16の底部近傍を示している。ケーソン本体16の底部近傍の複数段の躯体22には、複数の浮き防止部材10が躯体22から該躯体22の外側の地中に向かって突出するように設けられている。図示の例では、浮き防止部材10は、後述する
セグメント24に設けられた支持部材26の孔部28を介してセグメント24の外側に向かって延びている。さらに、浮き防止部材10は、ケーソン本体16の沈設方向に沿って複数段の躯体22に千鳥状に配置されている。
【0067】
ここで、
図3に示すように、地中に沈設されたケーソン本体16には、該ケーソン本体16が沈設された土壌中に含まれる地下水からケーソン本体16を浮き上がらせようと浮力σが底版20(
図1参照)に作用している。このため、ケーソン本体16には、該ケーソン本体を浮力σに抗して所定の深さに保持すべく、複数の浮き防止部材10を介して反力Fが作用している。
【0068】
図4、
図5(A)及び
図5(B)を参照して、浮力σに抗してケーソン本体16を所定の深さに保持する反力Fについて詳細に説明する。反力Fは、以下詳細に説明するが土砂のせん断抵抗τに基づく。
【0069】
ここで、
図4は浮き防止部材10が地中に存在する場合における該浮き防止部材及びケーソン本体16に作用する浮力と土砂のせん断抵抗τとの関係を示した模式図である。
図4において、浮き防止部材10には、Z方向下方から浮力σが作用している。浮力σに抗して浮き防止部材10には、Z軸方向に対して斜め上方から土砂のせん断抵抗τが作用している。土砂のせん断抵抗τは、
図5(A)及び
図5(B)を参照して、以下の式(1)から求められる。
【0071】
ここでτは土砂のせん断抵抗(KN/m
2)、Cは粘着力(KN/m
2)、θはせん断抵抗角または内部摩擦角度、tanθは摩擦係数を示している。
【0072】
すなわち、土砂のせん断抵抗τは、
図4、
図5(A)及び
図5(B)に示すように、Z軸方向に対して角度θで傾斜して浮き防止部材10から該浮き防止部材10の上方に延びる4つの傾斜面30のそれぞれにおいて該浮き防止部材10に作用する力である。したがって、この力は、浮き防止部材10に作用する浮力σに抗するように浮き防止部材10に作用し、浮き防止部材10が浮力σにより浮き上がることを防止する。
【0073】
また、再度
図3を参照して、浮き防止部材10は、ケーソン本体16の側壁18に設けられた、後述する支持部材26を介して固定されている。このため、ケーソン本体16の側壁18から突出する各浮き防止部材10には、浮き防止部材10の両側に位置する2面と、浮き防止部材10の先端側に位置する1面との合計3つの傾斜面30でせん断抵抗τが作用している。
【0074】
したがって、ケーソン本体16には、1つの浮き防止部材10に作用するせん断抵抗τにケーソン本体16に設けられた浮き防止部材10の数nを掛け合わせた合計のせん断抵抗nτ(KN/m
2)が作用することとなる。
図3の例では、図示されている浮き防止部材10の数は、9つであることから、ケーソン本体16には少なくとも9τ(KN/m
2)のせん断抵抗が作用している。
【0075】
また、各浮き防止部材10には、ケーソン本体16の沈設方向すなわち−Z方向にτ(KN/m
2)の大きさの力が作用している。したがって、ケーソン本体16には、nτ(KN/m
2)の大きさの反力Fが作用している。また、反力Fは、ケーソン本体16に設ける浮き防止部材10の数nを増減することにより、その大きさを調整することが可能である。このため、ケーソン12は、浮力σに抗する反力Fを浮き防止部材10の数nにより調整することからケーソン本体16の自重を重くする必要がない。そのため、浮き防止部材10の数nを増やすことにより躯体22の自重を軽くすることができ、コストダウンを図ることができる。
【0076】
また、後述するように浮き防止部材10はケーソン本体16の底版20設置後に設けられることから、浮き防止部材10の設置作業が容易であり、ケーソン本体16に設けられた浮き防止部材10の数nを増やすことは容易である。したがって、ケーソン12が設置された近傍の土壌中の地下水の増加によりケーソン本体16に作用する浮力σが増加した場合においても、浮き防止部材10をケーソン12の完成後に追加することができ、ケーソン12が浮き上がることを容易に防止することができる。
【0077】
さらに、浮き防止部材10が設けられる躯体22を所定の深さ、すなわち深さ20m以上の深さとすることにより、浮き防止部材10が岩盤層等の強固な地盤に設けられることから、地震により引き起こされる液状化の影響を受ける虞がなく、あるいは虞が少ない。このため、浮き防止部材10は、ケーソン12を所定の深さに保持することができる。
【0078】
次いで、
図6を参照して本実施例におけるセグメント24について説明する。セグメント24は、
図6に示すように円を分割した円弧状の構造物であり、鋼材等により形成されている。セグメント24の材質は、鋼材(スチール製)の他に、鉄筋コンクリート製、コンポジット製等がある。
【0079】
セグメント24は、スキンプレート32と、該スキンプレート32の上端及び下端にそれぞれ配置された主桁34,34と、スキンプレート32の側部にそれぞれ配置された継手板36,36と、セグメント24を補強するとともに上下方向に延びる複数のリブ38aと、セグメント24を補強するとともに周方向に延びる複数のリブ38bと、スキンプレート32の内側に配置されるとともにリブ38a及び38bに接合された補強板40と、補強板40を貫通して設けられ、ケーソン本体16の側壁18の内外を連通する連通部41と、該連通部41に固定された、後述する支持部材26と、補強板40において支持部材26の周囲に設けられた複数のボルト孔42とを備えて構成されている。
【0080】
また、セグメント24は、本実施例では鋼製セグメントが使われている。浮き防止部材10をケーソン12の側壁18に取り付ける際、その取り付け部分は充分な強度が要求される。このため、後述する支持部材26をセグメント24に取り付けるため、支持部材26の周囲を補強する必要がある。補強板40は、支持部材26を支持するための補強の役割を果たしている。更に、後述するフランジ部材56(
図17(A)参照)を補強板40に取り付けることも行われる。
【0081】
セグメント24は、隣り合ったセグメント24とボルト等の接続手段により接続され、複数のセグメント24を接続することにより円筒形状の躯体22を構成する。また、再度
図2を参照するに、
図2における紙面上下方向すなわちケーソン本体16の沈設方向において積み重ねられた複数の躯体22は、該躯体22を構成するセグメント24が周方向にずれるようにすなわち千鳥状に配置されるように接続されている。このため、後述する浮き防止部材10の支持部材26もケーソン本体16の沈設方向に沿って周方向に千鳥状に配置されている。
【0082】
<<<第1の実施例>>>
次いで
図7(A)及び
図7(B)を参照して、第1の実施例に係る浮き防止部材10の構成と取り付け状態について説明する。浮き防止部材10は、支持部材26と、荷重伝達部材44とを備えている。本実施例において支持部材26は、軸線方向に沿って貫通する孔部28を有する円筒状の部材として形成されている。
【0083】
荷重伝達部材44は、先端側44aと、基端側に設けられた接合部44bとを備えている。本実施例では、先端側44aと接合部44bとは同じ径寸法で構成されている。また、荷重伝達部材44は、軸線方向に沿って当該荷重伝達部材44を貫通する貫通孔46を備えている。接合部44bは、その外径寸法が支持部材26の孔部28の内径と同じ寸法に設定されている。すなわち、接合部44bは、孔部28に隙間無く嵌合することができる。
【0084】
支持部材26は、
図8(A)及び
図8(B)に示すように、セグメント24の連通部41に取り付けられている。支持部材26の一端部26aは、スキンプレート32に接している。また、他端部26bは、ケーソン12の内側の空間にむけて露出している。すなわち、支持部材26ひいては孔部28の軸線は、スキンプレート32に対して交差する。このため、支持部材26の孔部28の一端部26aの側は、スキンプレート32により閉口されている。これにより、ケーソン12を沈設した際、支持部材26の孔部28を介してケーソン12の外側の地下水がケーソン12の内側に流入することがない。
【0085】
次いで、
図9、
図10(A)及び
図10(B)を参照して荷重伝達部材44をケーソン12の側壁18から突出させた状態について説明する。荷重伝達部材44において先端側44aは、支持部材26の孔部28を介してケーソン12の側壁18の外側の土中に突出している。この際、支持部材26の外側に位置するスキンプレート32は、孔部28に対応する位置において後述する掘削カッター48により削孔されている。
【0086】
また、接合部44bは、孔部28に隙間無く嵌合し、支持部材26により支持されている。また、
図10(A)を参照するに円盤状の蓋体50が示されている。蓋体50には、周方向に間隔をおいて複数の貫通孔52が設けられている。蓋体50における複数の貫通孔52は、蓋体50が補強板40に取り付けられた際、支持部材26が取り付けられた補強板40に設けられた複数のボルト孔42に対応する位置に設けられている。
【0087】
図10(B)を参照するに、蓋体50は、複数のボルト54を貫通孔52を介してボルト孔42に螺合させることにより、補強板40に取り付けられている。これにより、接合部44bすなわち荷重伝達部材44は、軸線方向においてケーソン12の内側に向けての変位を規制されることとなる。このため、荷重伝達部材44は、ケーソン12の側壁18に対して片持ち梁状態で固定されている。
【0088】
したがって、荷重伝達部材44の先端側44aに土砂のせん断抵抗τが作用する際、せん断抵抗τは接合部44b及び支持部材26を介してケーソン本体16に確実に作用することとなる。
【0089】
また、蓋体50を補強板40に取り付けることにより、ケーソン本体16の内壁側に向けてケーソン12の外側からの圧力による地下水の浸入を防止することができる。この場合、蓋体50と補強板40との間に図示しないオーリング(O−ring)やゴム部材等の弾性止水材を配置することにより止水性の向上を図ることができる。さらに、本実施例において蓋体50の一方の側50aすなわち荷重伝達部材44及び支持部材26と当接する側には、グリース等の油脂剤が塗布されている。これにより、ケーソン12が沈設された土中の地下水により、或いは外気に触れることにより接合部44bの端面及び支持部材26の他端部26bが腐食することを防止することができ、或いは抑制することができる。
【0090】
<第1の実施例に係る浮き防止部材の設置工程>
次いで、
図11(A)ないし
図17(B)を参照して、第1の実施例に係る浮き防止部材10の設置方法について説明する。
図11(A)は、ケーソン12において底版20を打設後、ケーソン本体16の内側に貯まっていた地下水を排水した状態を示している。
【0091】
第1の工程として、
図11(B)において、ケーソン本体16の側壁18を構成するセグメント24の連通部41に固定された支持部材26に対して補強板40を介してフランジ部材56(
図17(A)参照)をボルト54で取り付ける。ここで
図17(A)を参照して、フランジ部材56について説明する。
【0092】
フランジ部材56は管状部材として形成され、その一端部56aはフランジ状に形成されている。フランジ状の一端部56aには、補強板40のボルト孔42の位置に対応するように複数の貫通孔58が設けられている。また、他端部56bの内周面には雌ねじ60が形成されている。フランジ部材56は、貫通孔58を介してボルト孔42と螺合する複数のボルト54により、フランジ状の一端部56aが補強板40すなわち側壁18に取り付けられ、該側壁18に強固に固定される。
【0093】
次いで第2の工程として、
図12(A)に示すように、フランジ部材56の他端部56bに止水装置62を取り付ける。止水装置62は、中空パイプ64と、該中空パイプ64の先端側66(
図12(A)左方)側から順に取り付けられた第1仕切バルブ68と、注入用バルブ70と、排泥用バルブ72と、第2仕切バルブ74と、グランドパッキン76とを備えて構成されている。
【0094】
また、止水装置62は第1仕切バルブ68と注入用バルブ70及び排泥用バルブ72との間の位置で、注入用バルブ70、排泥用バルブ72及び第2仕切バルブ74が第1仕切バルブ68に対して取り外し可能に構成されている。尚、取り外し可能構造は、公知の構造であって特定の構造に限定されないので、その詳細な図示は省略されている。
【0095】
中空パイプ64の先端側66には雄ねじが形成されている。止水装置62は、中空パイプ64の前記雄ねじとフランジ部材56の雌ねじ60とを螺合させることによりフランジ部材56を介して側壁18に取り付けられる。尚、
図12(B)において、第1仕切バルブ68、注入用バルブ70、排泥用バルブ72及び第2仕切バルブ74は閉じられた状態にある。
【0096】
第3の工程として、
図12(B)に示すように、第2仕切バルブ74を開き、中空パイプ64の後端部78側から図示しない駆動源により駆動される掘削カッター48を中空パイプ64内に挿入する。
【0097】
第4の工程として、
図13(A)に示すように、第1仕切バルブ68及び排泥用バルブ72を開き、掘削カッター48を支持部材26の孔部28内へと前進させる。そして、掘削カッター48により、支持部材26の孔部28を閉口しているスキンプレート32を掘削し、孔部28をケーソン12の側壁18の外側に向けて開口させる。
【0098】
この際、中空パイプ64のグランドパッキン76より先端側に止水装置62から中空パイプ内を通り掘削カッター48先端に水が供給され、掘削カッター48によるスキンプレート32の加工屑の除去が行われる。そして加工屑とともに水は排泥用バルブ72から排出される。尚、グランドパッキン76は、掘削カッター48の外周面に接して、前記水が中空パイプ64の後端部78側に噴出することを防止している。
【0099】
第5の工程として、
図13(B)に示すように、掘削カッター48により形成された開口部80から側壁18の外側の地山UGへと掘削カッター48を前進させ、地山UGを掘削し、側壁18から地山UGに延びる掘削孔82を設ける。尚、削孔水は中空パイプ64内に送水され、掘削カッター48から中空パイプ64と地山との間を後端部78方向に流れて排泥されるので、掘削カッター48の直径は排泥できる程度に支持部材26の孔部28の直径より小さく設定されている。
【0100】
この際、中空パイプ64のグランドパッキン76より先端側に掘削カッター48先端から水が供給され、掘削カッター48による地山UGから掘削した土砂の除去が行われる。そして土砂とともに水は排泥用バルブ72から排出される。
【0101】
そして第6の工程として、掘削カッター48は、掘削孔82を側壁18の外側の地山UG中に設けた後、後端部78側に引き戻され、第1仕切バルブ68、排泥用バルブ72及び第2仕切バルブ74が閉じられる。その後、掘削カッター48は、中空パイプ64から取り外される。
【0102】
第7の工程として、
図14(A)に示すように、第2仕切バルブ74を開き、中空パイプ64の後端部78側から荷重伝達部材44を中空パイプ64内に挿入する。また、荷重伝達部材44の接合部44b側には、該荷重伝達部材44を押す挿入突棒84が配置されている。挿入突棒84は、
図17(A)に示すように、その先端に荷重伝達部材44の貫通孔46と嵌合する嵌合部84aと、荷重伝達部材44を中空パイプ64の内面に沿って案内する案内部84bとを備えている。
【0103】
第8の工程として、
図14(B)に示すように第1仕切バルブ68を開き、荷重伝達部材44を挿入突棒84により掘削孔82内に押し込む。その際、荷重伝達部材44の軸線方向において接合部44bの位置と支持部材26の位置とを一致させる。すなわち接合部44bと支持部材26とを嵌合させるように荷重伝達部材44を掘削孔82内に押し込む。その後、挿入突棒84を中空パイプ64の後端部78側に引き戻し、第2仕切バルブ74を閉じる。
【0104】
第9の工程として、注入用バルブ70を開き、荷重伝達部材44の貫通孔46を介して掘削孔82に向けて「グラウト材」としてのモルタル86を注入し、掘削孔82内にモルタル86を充填する。モルタル86を注入後、
図15(A)に示すように、第1仕切バルブ68及び注入用バルブ70を閉じる。
【0105】
第10の工程として、
図15(B)に示すように、止水装置62の注入用バルブ70、排泥用バルブ72及び第2仕切バルブ74を第1仕切バルブ68から取り外す。そして第11の工程として、
図16(A)に示すように、掘削孔82に充填したモルタル86が固化した後、第1仕切バルブ68をフランジ部材56から取り外す。
【0106】
第12の工程として、
図16(B)に示すように、荷重伝達部材44の軸線方向において荷重伝達部材44(接合部44b)の後端、支持部材26の他端部26b及び補強板40の面が同じ位置となるように固化したモルタル86の一部を除去する。そして、蓋体50をボルト54により補強板40に取り付ける。これにより、荷重伝達部材44は、支持部材26を介してケーソン本体16の側壁18に荷重伝達部材44の軸線方向への変位が規制された状態で強固に固定された状態となる。すなわち、荷重伝達部材44の先端側44aが、ケーソン本体16の側壁18から突出した状態となる。
【0107】
さらに、荷重伝達部材44は、先端側44aと掘削孔82との間及び先端側44aと開口部80との間にはモルタル86が充填されていることから十分な強度を有している。
【0108】
このため、浮き防止部材10は、浮力σの作用によりケーソン本体16の側壁18に対して撓んだ際に浮き防止部材10が損傷する虞がなく、あるいは損傷する虞が少ない。したがって、浮き防止部材10は、該浮き防止部材に作用する土砂のせん断抵抗及び土砂の重さに耐えうることからケーソン本体16に作用する浮力σに抗して、ケーソン本体16を所定の深さに維持することができる。
【0109】
<<<第1の実施例の変更例>>>
(1)本実施例において、荷重伝達部材44の先端側44aと接合部44bとは、同じ直径寸法として構成したが、この構成に代えて、
図18(A)に示すように荷重伝達部材88の先端側88aの直径寸法を接合部88bの直径寸法よりも小さく構成してもよい。
(2)さらに、荷重伝達部材90において、直径寸法の異なる先端側90aと接合部90bとを滑らかに接続する傾斜部90cを備える構成としてもよい。
【0110】
(3)本実施例において、荷重伝達部材44の先端側44aと接合部44bとは、同じ直径寸法として構成したが、この構成に代えて、
図19(A)に示すように荷重伝達部材92を先端側92aと、テーパー形状に形成された接合部92bとにより構成してもよい。
【0111】
また、荷重伝達部材92の接合部92bと嵌合するように支持部材94の孔部96も接合部92bのテーパー勾配と一致する逆テーパー形状に構成してもよい。すなわち、
図19(B)に示すようにテーパー形状の最小径部が一端部94a側に形成され、テーパー形状の最大径部が他端部94b側に形成されている。この構成においては、支持部材94は、一端部94aがスキンプレート32に面し、他端部94bはケーソン本体16の内側の空間に面するようにセグメント24の連通部41に固定されている。
【0112】
接合部92bをテーパー形状に形成することにより接合部92bの断面の大きさを円筒状の接合部44bの断面の大きさよりも大きくすることができる。これにより、接合部92bを円筒状に形成する場合よりも荷重伝達部材が耐え得るせん断抵抗τの大きさを大きくすることができる。
【0113】
(4)本実施例において、
図20に示すように支持部材26の孔部28に支持部材26の一端部26aから他端部26bまで連通する排泥溝98を設けてもよい。孔部28に排泥溝98を形成することにより削孔時における掘削された土砂の排出を容易にし、掘削作業の作業性を向上させることができる。さらに、支持部材26と接合部44bとを嵌合させる際、孔部28に付着した泥土を排泥溝98を介して支持部材26と接合部44bとの接触面から除去することができ、支持部材26と接合部44bとの密着性を向上させることができる。
【0114】
(5)本実施例において、支持部材26及び荷重伝達部材44は、軸線方向に交差する断面形状を円状に形成したが、互いに嵌合する関係にあれば四角形や六角形等の多角形として構成してもよい。
(6)本実施例において、支持部材26はセグメント24に対して直接取り付ける構成としたが、例えば、セグメント24にケーソン本体16の側壁18の外側と内側とを連通するグラウトホール等の連通孔を設け、該連通孔に支持部材26を固定する構成としてもよい。
【0115】
<<<第2の実施例>>>
次いで
図21(A)ないし
図22(B)を参照して、第2の実施例に係る浮き防止部材10の構成と取り付け状態について説明する。第2の実施例に係る浮き防止部材10は、支持部材100と、荷重伝達部材102とを備えている。
【0116】
支持部材100は、
図21(A)に示すように円筒状に形成され、軸線方向に沿って貫通する孔部104を備えている。孔部104の内面には、雌ねじ106が形成されている。また、荷重伝達部材102は、
図21(B)に示すように先端側102aと、基端側に設けられた接合部102bとを備えている。接合部102bには、雄ねじ108が形成されている。また、本実施例において先端側102aの直径寸法は、接合部102bの雄ねじの谷の径と等しく、或いは小さく設定されている。
【0117】
また、荷重伝達部材102は、軸線方向に沿って当該荷重伝達部材102を貫通する貫通孔110を備えている。貫通孔110の接合部102b側には、後述する挿入突棒112の凹部114と嵌合する凸部116が設けられている。また、荷重伝達部材102は、接合部102bの雄ねじ108が支持部材100の雌ねじ106と螺合することにより、支持部材100に固定され、支持される。
【0118】
図22(A)及び
図22(B)を参照して、支持部材100のセグメント118への取り付け状態を説明する。尚、本実施例におけるセグメント118は、鉄筋コンクリート製セグメントであり、スキンプレート32を備えていない点で第1の実施例のセグメント24と相違する。
【0119】
支持部材100は、セグメント118の連通部119に取り付けられている。セグメント118において支持部材100の周囲には、複数のボルト孔120が所定の間隔をおいて設けられている。また、本実施例におけるセグメント118は、第1実施例のセグメント24と異なりスキンプレート32を備えていない。このため、ケーソン本体16を沈設する際、支持部材100の孔部104を閉口しておく必要がある。
【0120】
このため、支持部材100の孔部104には、プラグ122が取り付けられている。プラグ122は、円筒状に形成され、その外周面には孔部104の雌ねじ106と螺合する雄ねじが形成されている。プラグ122は、掘削カッター48により破砕されやすくするため樹脂材料で形成されている。
【0121】
また、セグメント118により構成されるケーソン本体16を沈設する際、支持部材100の孔部104は、雄ねじ108と螺合したプラグ122により閉口されていることから、ケーソン本体16の側壁18の外側の土中から地下水が流入することを防止することができる。
【0122】
<第2の実施例に係る浮き防止部材の設置工程>
次いで、
図11(A)ないし
図16(A)、
図23(A)及び
図26を参照して、第2の実施例に係る浮き防止部材10の設置方法について説明する。第2の実施例における浮き防止部材10の設置方法は、第8の工程が第1の実施例の浮き防止部材10の設置方法と異なる。尚、第1の工程ないし第7の工程、第9の工程ないし第12の工程(
図11(A)ないし
図16(A)参照)については、同じ工程のため、説明を省略する。
【0123】
第8の工程において、第1の実施例に係る設置方法(
図14(B)参照)と異なる点は、支持部材100の孔部104の雌ねじ106に荷重伝達部材102の接合部102bの雄ねじを螺合させることにある。第2の実施例における第8の工程を
図14(B)を参照して説明する。
【0124】
第8の工程として、第1仕切バルブ68を開き、荷重伝達部材102(図中44に相当)の凸部116に挿入突棒112(図中84に相当)の凹部114を嵌合させた状態で荷重伝達部材102を挿入突棒112により掘削孔82内に押し込む。そして、支持部材100(図中26に相当)に接合部102b(図中44b)が接すると、挿入突棒112を回転させて接合部102bの雄ねじを支持部材100の雌ねじ106に螺合させる。その後、挿入突棒84を中空パイプ64の後端部78側に引き戻し、第2仕切バルブ74を閉じる。
【0125】
その後、第1の実施例における設置方法の第9の工程ないし第12の工程を実施する。これにより、荷重伝達部材102は、
図23(A)に示すように支持部材100を介してセグメント118すなわちケーソン本体16に支持固定される。
【0126】
尚、本実施例では、荷重伝達部材102がその軸線方向において支持部材100に対して確実に固定されることから、前記軸線の直角方向断面に土水圧による荷重により地山側からケーソン本体16側に向けて力が作用する際、荷重伝達部材102の軸線方向への変位を確実に規制することができる。
【0127】
さらに、荷重伝達部材102は、先端側102aと掘削孔82との間及び先端側102aと開口部80との間にはモルタル86が充填されていることから十分な強度を有している。
【0128】
<<<第2の実施例の変更例>>>
(1)本実施例において、
図23(B)に示すように支持部材100の孔部104に支持部材100の一端部100aから他端部100bまで連通する排泥溝124を設けてもよい。孔部104に排泥溝124を形成することにより削孔時における掘削された土砂の排出を容易にし、掘削作業の作業性を向上させることができる。
【0129】
さらに、支持部材100と接合部102bとを螺合させる際、雌ねじ106に付着した泥土を排泥溝98を介して雌ねじ106と接合部102bの雄ねじとの接触面から除去することができ、支持部材100と接合部102bとを円滑に螺合させることができる。
【0130】
(2)本実施例において、支持部材100はセグメント118に対して直接取り付ける構成としたが、例えば、セグメント118にケーソン本体16の側壁18の外側と内側とを連通するグラウトホール等の連通孔を設け、該連通孔に支持部材100を固定する構成としてもよい。
(3)本実施例では、プラグ122を樹脂材料で形成したが、鉄やアルミ等の材質で構成してもよい。
【0131】
(4)本実施例では、孔部104にプラグ122を取り付けた構成としているが、この構成に代えて、連通部119の地山UGの側に、図示しない仮壁(スキンプレート)を設ける構成としてもよい。この構成では、プラグ122を取り付けを省略することができる。
(5)本実施例では、蓋体50を補強板40に取り付ける構成としたが、この構成に代えて、蓋体50を取り付けなくてもよい。荷重伝達部材102は、支持部材100と接合部102bとが螺合していることから、当該荷重伝達部材102の軸線方向の変位が規制されているからである。
【0132】
<<<第3の実施例>>>
次いで
図24(A)及び
図24(B)を参照して、第3の実施例に係る浮き防止部材10の構成について説明する。第3の実施例に係る浮き防止部材10は、荷重伝達部材126と、支持部材128とを備えている。
【0133】
また、荷重伝達部材126は、
図24(A)に示すように先端側126aと、基端側に設けられた接合部126bとを備えている。また、荷重伝達部材126には軸線方向に沿って貫通する貫通孔130が形成されている。また、接合部126bの外周面には嵌合凸部132が形成され、内周面には凸部134が形成されている。
【0134】
支持部材128は、
図24(B)に示すように、一端部128aと他端部128bとを備えている。また、支持部材128には、軸線方向に沿って貫通する孔部136が形成されている。孔部136の内面には、嵌合凹部138が形成されている。
【0135】
嵌合凹部138は、支持部材128の他端部128bに向けて開口し、嵌合凸部132を案内する案内部138aと、支持部材128に対して荷重伝達部材126を相対回転させた際に嵌合凸部132と嵌合し、荷重伝達部材126の前記軸線方向への変位を規制する嵌合部138bを備えている。
【0136】
<第3の実施例に係る浮き防止部材の設置工程>
第3の実施例における浮き防止部材10の設置方法は、第8の工程が第1の実施例の浮き防止部材10の設置方法と異なる。尚、第1の工程ないし第7の工程、第9の工程ないし第12の工程(
図11(A)ないし
図16(A)参照)については、同じ工程のため、説明を省略する。
【0137】
第8の工程において、第1の実施例に係る設置方法(
図14(B)参照)と異なる点は、支持部材128の孔部136に設けられた嵌合凹部138に荷重伝達部材126の接合部126bの嵌合凸部132を嵌合させることにある。第3の実施例における第8の工程を
図14(B)を参照して説明する。第8の工程として、第1仕切バルブ68を開き、荷重伝達部材126(図中44に相当)の凸部134に挿入突棒112(図中84に相当)の凹部114を嵌合させた状態で荷重伝達部材126を挿入突棒112により掘削孔82内に押し込む。
【0138】
その際、荷重伝達部材126は、その軸線方向において接合部126bの外周面の嵌合凸部132が支持部材128の嵌合凹部138の案内部138aに案内されて、前記軸線方向における支持部材128に対して所定の位置まで前進する。そして、支持部材128(図中26に相当)に荷重伝達部材126(図中44)を相対回転させることにより、嵌合凸部132と嵌合凹部138とを嵌合させる。その後、挿入突棒84を中空パイプ64の後端部78側に引き戻し、第2仕切バルブ74を閉じる。
【0139】
そして、第1の実施例における設置方法の第9の工程ないし第12の工程を実施する。これにより、荷重伝達部材126は、支持部材128を介してケーソン本体16に支持固定される。すなわち、荷重伝達部材126は支持部材128に対して、その軸線方向における変位が規制された状態で支持固定されている。
【0140】
<第3の実施例の変更例>
本実施例では、蓋体50を補強板40に取り付ける構成としたが、この構成に代えて、蓋体50を取り付けなくてもよい。荷重伝達部材126は、嵌合凸部132と嵌合凹部138とが嵌合していることから、当該荷重伝達部材126の軸線方向の変位が規制されているからである。
【0141】
さらに、荷重伝達部材126は、先端側126aと掘削孔82との間及び先端側126aと開口部80との間にはモルタル86が充填されていることから十分な強度を有している。
【0142】
<<<第3の実施例の変更例>>>
(1)支持部材128の孔部136に一端部128aと他端部128bとを連通する排泥溝を設ける構成としてもよい。
(2)本実施例においても、支持部材128はセグメント24に対して直接取り付ける構成としたが、例えば、セグメント24にケーソン本体16の側壁18の外側と内側とを連通するグラウトホール等の連通孔を設け、該連通孔に支持部材128を固定する構成としてもよい。
【0143】
<<<第4の実施例>>>
図25(A)及び
図25(B)を参照して、第4の実施例に係る浮き防止部材10の構成について説明する。第4の実施例に係る浮き防止部材10は、荷重伝達部材140と、支持部材142とを備えている。
【0144】
荷重伝達部材140は、
図25(A)に示すように先端側140aと、基端側に設けられた接合部140bとを備えている。接合部140bはテーパー形状に形成されている。また、荷重伝達部材140には軸線方向に沿って貫通する貫通孔144が形成されている。また、接合部140bの内周面には凸部146が形成されている。さらに先端側140aの前面には、複数の掘削部材148が設けられている。掘削部材148には、ビット、チップ等が含まれている。尚、凸部146は、荷重伝達部材140により掘削孔82を掘削する際、挿入突棒112の凹部114に嵌合する。
【0145】
支持部材142は、
図25(B)に示すように、一端部142aと他端部142bとを備えている。また、支持部材142には、軸線方向に沿って貫通する孔部150が形成されている。また、孔部150は、荷重伝達部材140のテーパー形状の接合部140bと嵌合するように、接合部140bのテーパー勾配と一致する逆テーパー形状に形成されている。すなわち、テーパー形状の最小径部が一端部142a側に形成され、テーパー形状の最大径部が他端部142b側に形成されている。
【0146】
また、支持部材142は、
図27(A)に示すようにセグメント24の連通部41に固定されている。さらに、支持部材142の他端部142bは、ケーソン本体16の内側の空間に面している。
【0147】
次いで、
図26を参照するに、浮き防止部材10の設置工程において使用する挿入突棒112が示されている。挿入突棒112は、その先端に荷重伝達部材102、126、140の貫通孔110、130、144と嵌合する嵌合部112aと、荷重伝達部材102、126、140を中空パイプ64の内面に沿って案内する案内部112bとを備えている。
【0148】
さらに、案内部112bには凹部114が設けられている。凹部114は、荷重伝達部材102、126、140に設けられた凸部116、134、146と嵌合するように構成されている。
【0149】
<第4の実施例に係る浮き防止部材の設置工程>
次いで、
図27(A)ないし
図31(B)を参照して、第4の実施例に係る浮き防止部材10の設置方法について説明する。
図27(A)は、ケーソン12において底版20を打設後、ケーソン本体16の内側に貯まっていた地下水を排水した状態を示している。尚、本実施例におけるセグメント24は第1の実施例と同じ鋼製セグメントである。
【0150】
第1の工程として、
図27(B)において、ケーソン本体16の側壁18を構成するセグメント24の連通部41に固定された支持部材142に対して補強板40を介してフランジ部材56(
図17(A)参照)をボルト54で取り付ける。
【0151】
次いで第2の工程として、
図28(A)に示すように、フランジ部材56の他端部56bに止水装置62を取り付ける。止水装置62は、中空パイプ64と、該中空パイプ64の先端側66(
図28(A)左方)側から順に取り付けられた第1仕切バルブ68と、注入用バルブ70と、排泥用バルブ72と、第2仕切バルブ74と、グランドパッキン76とを備えて構成されている。
【0152】
また、止水装置62は、第1の実施例と同様に第1仕切バルブ68と注入用バルブ70及び排泥用バルブ72との間の位置で、注入用バルブ70、排泥用バルブ72及び第2仕切バルブ74が第1仕切バルブ68に対して取り外し可能に構成されている。尚、取り外し可能構造は、公知の構造であって特定の構造に限定されないので、その詳細な図示は省略されている。
【0153】
中空パイプ64の先端側66には雄ねじが形成されている。止水装置62は、中空パイプ64の前記雄ねじとフランジ部材56の雌ねじ60とを螺合させることによりフランジ部材56を介して側壁18に取り付けられる。尚、
図28(B)において、第1仕切バルブ68、注入用バルブ70、排泥用バルブ72及び第2仕切バルブ74は閉じられた状態にある。
【0154】
第3の工程として、
図28(B)に示すように、第2仕切バルブ74を開き、中空パイプ64の後端部78側から荷重伝達部材140及び挿入突棒112を中空パイプ64内に挿入する。挿入突棒112は、図示しない駆動源により回転駆動される。これにより、荷重伝達部材140は、挿入突棒112を介して図示しない駆動源により回転駆動される。
【0155】
第4の工程として、
図29(A)に示すように、第1仕切バルブ68及び排泥用バルブ72を開き、荷重伝達部材140を支持部材142の孔部150内へと前進させる。そして、荷重伝達部材140の先端側140aに設けられた複数の掘削部材148により、支持部材142の孔部150を閉口しているスキンプレート32を掘削し、孔部150をケーソン12の側壁18の外側に向けて開口させる。
【0156】
この際、中空パイプ64のグランドパッキン76より先端側に止水装置62から中空パイプ内を通り荷重伝達部材140の貫通孔144を介して先端側140aの掘削部材148周辺に水が供給され、掘削部材148によるスキンプレート32の加工屑の除去が行われる。そして加工屑とともに水は排泥用バルブ72から排出される。尚、グランドパッキン76は、挿入突棒112の案内部112bに接して、前記水が中空パイプ64の後端部78側に噴出することを防止している。
【0157】
第5の工程として、
図29(B)に示すように、荷重伝達部材140の掘削部材148により形成された開口部80から側壁18の外側の地山UGへと荷重伝達部材140を前進させ、地山UGを掘削し、側壁18から地山UGに延びる掘削孔82を設ける。尚、削孔水は中空パイプ64内に送水され、荷重伝達部材140の貫通孔144を介して先端側140aの掘削部材148から中空パイプ64と地山との間を後端部78方向に流れて排泥される。これにより、掘削部材148による地山UGから掘削した土砂の除去が行われる。そして土砂とともに水は排泥用バルブ72から排出される。
【0158】
そして、荷重伝達部材140の接合部140bが、支持部材142の孔部150と接して嵌合した際、荷重伝達部材140の回転を停止させ、掘削部材148による地山UGの掘削を停止させる。その後、挿入突棒112を中空パイプ64の後端部78側に引き戻し、第2仕切バルブ74を閉じる。
【0159】
第6の工程として、注入用バルブ70を開き、荷重伝達部材140の貫通孔144を介して掘削孔82に向けてモルタル86を注入し、掘削孔82内にモルタル86を充填する。モルタル86を注入後、
図30(A)に示すように、第1仕切バルブ68及び注入用バルブ70を閉じる。
【0160】
第7の工程として、
図30(B)に示すように、止水装置62の注入用バルブ70、排泥用バルブ72及び第2仕切バルブ74を第1仕切バルブ68から取り外す。
【0161】
第8の工程として、
図31(A)に示すように、掘削孔82に充填したモルタル86が固化した後、第1仕切バルブ68をフランジ部材56から取り外す。
【0162】
第9の工程として、
図31(B)に示すように、荷重伝達部材140の軸線方向において荷重伝達部材140(接合部140b)の後端、支持部材142の他端部142b及び補強板40の面が同じ位置となるように固化したモルタル86の一部を除去する。そして、蓋体50をボルト54により補強板40に取り付ける。これにより、荷重伝達部材140は、支持部材142を介してケーソン本体16の側壁18に荷重伝達部材140の軸線方向への変位が規制された状態で強固に固定された状態となる。すなわち、荷重伝達部材140の先端側140aが、ケーソン本体16の側壁18から突出した状態となる。
【0163】
さらに、荷重伝達部材140は、先端側140aと掘削孔82との間及び先端側140aと開口部80との間にはモルタル86が充填されていることから十分な強度を有している。
【0164】
<<<第4の実施例の変更例>>>
図32(A)を参照するに第4の実施例の変更例の一例が示されている。荷重伝達部材152は、先端側152aと、接合部152bとを備えている。荷重伝達部材152において、先端側152aの直径寸法と接合部152bの直径寸法とは同じ大きさに設定されている。また、荷重伝達部材152には軸線方向に沿って貫通する貫通孔154が形成されている。また、接合部152bの内周面には凸部156が形成されている。さらに先端側152aの前面には、複数の掘削部材158が設けられている。掘削部材158には、ビット、チップ等が含まれている。
【0165】
また、
図32(B)を参照するに第4の実施例の変更例のその他の例が示されている。荷重伝達部材160は、先端側160aと、接合部160bとを備えている。荷重伝達部材160において、先端側160aの直径寸法は接合部160bの直径寸法より小さく設定されている。また、荷重伝達部材160には軸線方向に沿って貫通する貫通孔162が形成されている。また、接合部160bの内周面には凸部164が形成されている。
【0166】
さらに先端側160aの前面には、複数の掘削部材166が設けられている。掘削部材166は、先端側160aの直径寸法より半径方向外側にはみ出すように先端側160aに設けられている。すなわち、掘削部材166の刃先直径は、先端側160aの直径寸法より大きく設定されている。このため、先端側160aの外周面と、該外周面の周囲の地山UGとの摩擦力を低減することができ、荷重伝達部材160の掘進に必要な力を低減することができる。尚、掘削部材166には、ビット、チップ等が含まれている。
【0167】
尚、上記の荷重伝達部材152、160は、接合部152b、160bが円筒状に形成されていることから、第4の実施例に係る支持部材142に代えて、第1の実施例に係る支持部材26と嵌合することとなる。
【0168】
<<<第5の実施例>>>
図33(A)を参照して、第5の実施例に係る荷重伝達部材168の構成について説明する。荷重伝達部材168は、先端側168aと、基端側に設けられた接合部168bとを備えている。先端側168aは掘削部170と撹拌部172とを備えている。
【0169】
掘削部170は先端側168aの先端に位置している。掘削部170はその先端に複数の掘削部材174を備えている。また、掘削部170には、先端側に向けて開口している水切り溝176が設けられている。水切り溝176は、中空パイプ64及び後述する貫通孔180を介して送水される削孔水を掘削部材174周辺に供給することができる。これにより掘削部材174に掘削された土砂を先端側168aと周囲の地山UGとの間を通して排泥用バルブ72から排出する。
【0170】
また、掘削部170の直径寸法は、内面がテーパー形状に形成された支持部材142の一端部142a側の孔部150の内径寸法より小さく設定されている。尚、掘削部材174には、ビット、チップ等が含まれている。
【0171】
また、撹拌部172は、掘削部170と接合部168bとを接続している。撹拌部172の直径寸法は、掘削部170の直径寸法よりも小さく設定されている。撹拌部172には、該撹拌部172の外周面から半径方向外側に向かって延びる複数の「撹拌手段」としての突起178を備えている。
【0172】
突起178は、撹拌部172とともに荷重伝達部材168の軸線の周囲に回転した際、突起178がつくる刃先円の直径は、支持部材142の一端部142a側の孔部150の内径寸法より小さく設定されている。
【0173】
また、荷重伝達部材168には、その軸線方向に掘削部170、撹拌部172及び接合部168bを貫通する貫通孔180が形成されている。また、接合部168bの内周面には凸部182が形成されている。尚、凸部182は、荷重伝達部材168により掘削孔82を掘削する際、挿入突棒112の凹部114に嵌合する。
【0174】
<第5の実施例に係る浮き防止部材の設置工程>
第5の実施例における浮き防止部材10の設置工程は、第4の実施例における第6の工程が異なるほかは同じである。したがって、第1の工程(
図27(B)参照)から第5の工程(
図29(B)参照)についての説明は省略する。また、同様に第7の工程(
図30(B)参照)から第9の工程(
図31(B)参照)も第4の実施例における設置工程と同様であることから説明は省略する。尚、本実施例では、第5の工程において、掘削停止後に挿入突棒112を中空パイプ64の後端部78側に引き戻さず、そのまま、第6の工程を実施する。
【0175】
第6の工程として、
図33(B)に示すように注入用バルブ70を開き、荷重伝達部材168の貫通孔180を介して掘削孔82に向けてモルタル86を注入し、掘削孔82内にモルタル86を充填する。そしてモルタル86を注入しながら、あるいは注入した後、図示しない駆動源により挿入突棒112を介して荷重伝達部材168を回転させる。これにより、突起178が掘削孔82内で充填されたモルタル86を撹拌する。
【0176】
尚、
図33(B)に示すように挿入突棒112は、荷重伝達部材168を掘削孔82に押し込んだ際、その外周面に注入用バルブ70の位置に対応するように複数のモルタル注入口112cが設けられている。また、挿入突棒112は、その中心部に挿入突棒112の先端から軸線方向においてモルタル注入口112cの位置まで延びるモルタル注入孔112dが設けられている。モルタル注入口112cとモルタル注入孔112dとは連通している。したがって、注入用バルブ70を開いた際、モルタル86は挿入突棒112のモルタル注入口112cおよびモルタル注入孔112dを介して、荷重伝達部材168の貫通孔180に供給される。
【0177】
この際、荷重伝達部材168の周囲の地山UGの土とモルタル86を混合撹拌することができる。その結果、荷重伝達部材168の周囲に前記土が混合した状態で固化したモルタル86の層を荷重伝達部材168と一体化させることができる。これにより、浮き防止部材10の径を大きくすることができ、荷重伝達部材168に作用するせん断抵抗τを大きくすることができる。
【0178】
そしてモルタル86の撹拌後、挿入突棒112を中空パイプ64の後端部78側に引き戻し、第1仕切バルブ68、注入用バルブ70及び第2仕切バルブ74を閉じる。その後は、第7の工程(
図30(B)参照)から第9の工程(
図31(B)参照)を実施する。
【0179】
<<<第6の実施例>>>
図34(A)ないし
図35(B)を参照して、第5の実施例に係る荷重伝達部材184の構成について説明する。荷重伝達部材184は、先端側184aと、基端側に設けられた接合部184bとを備えている。接合部184bは、支持部材142の孔部150と嵌合するようにテーパー形状に形成されている。また先端側184aの直径寸法は、孔部150の内径よりも小さく設定されている。すなわち先端側184aの直径寸法は、テーパー形状の接合部184bにおいて最小径部の直径寸法より小さく設定されている。
【0180】
先端側184aは、その先端に「掘削部材」としての固定掘削部材186と可動掘削部材188とを備えている。また、先端側184aは、その外周面に「撹拌手段」としての可動撹拌部材190を備えている。
【0181】
また、荷重伝達部材184には、その軸線方向に先端側184a及び接合部168bを貫通する貫通孔192が形成されている。また、接合部168bの内周面には凸部194が形成されている。尚、凸部194は、荷重伝達部材184により掘削孔82を掘削する際、挿入突棒112の凹部114に嵌合する。
【0182】
荷重伝達部材184において、可動掘削部材188及び可動撹拌部材190は、それぞれ「倒れた状態」としての閉じている状態(
図34(A)参照)と開いている状態(
図34(B)参照)とを取り得る。
【0183】
可動掘削部材188は、
図35(A)に示すように、回動軸196を備えている。可動掘削部材188は、回動軸196を中心に回動可能に構成されている。可動掘削部材188は、先端側184aの外周面に密着した状態(
図35(A)一点鎖線部参照)が閉じている状態であり、先端側184aの外周面に対して立ち上がっている状態が開いている状態(
図35(A)実線部参照)である。
【0184】
荷重伝達部材184を設置する工程において、可動掘削部材188は、支持部材142の孔部150を通り抜ける際、閉じている状態にある。先端側184aが支持部材142の一端部142aと隣接しているスキンプレート32に接した際、可動掘削部材188は回動軸196を回動支点に回動し、先端側184aの外周面に対して立ち上がった状態すなわち開いている状態となる。
【0185】
また、前記開いている状態における可動掘削部材188が作る刃先円は、孔部150の内径よりも大きくなるように設定されている。これにより、固定掘削部材186とともに可動掘削部材188が掘削する掘削孔82の直径寸法は、孔部150の最小径部あるいは最大径部の直径寸法よりも大きくすることができる。
【0186】
次いで、可動撹拌部材190について説明する。可動撹拌部材190は
図35(B)に示すように、回動軸198を備えている。可動撹拌部材190は、回動軸198を中心に回動可能に構成されている。可動撹拌部材190は、先端側184aの外周面に密着した状態(
図35(A)一点鎖線部参照)が閉じている状態であり、先端側184aの外周面に対して立ち上がっている状態が開いている状態(
図35(A)実線部参照)である。
【0187】
また、可動撹拌部材190は、荷重伝達部材184を回転させることにより、閉じている状態と開いている状態とを選択することができる。本実施例では、
図35(B)において時計方向に荷重伝達部材184を回転させることにより、可動撹拌部材190は、閉じている状態から回動軸198を回動支点として回動し、開いている状態に変位する。
【0188】
逆に、可動撹拌部材190が開いている状態にある際、反時計方向に荷重伝達部材184を回転させることにより、可動撹拌部材190は、開いている状態から回動軸198を回動支点として回動し、閉じている状態に変位する。
【0189】
荷重伝達部材184を設置する工程において、可動撹拌部材190は、支持部材142の孔部150を通り抜ける際、閉じている状態にある。その後、荷重伝達部材184を時計方向に回転させた際、可動撹拌部材190は、開いている状態となる。
【0190】
また、前記開いている状態における可動撹拌部材190が作る刃先円は、可動掘削部材188が作る刃先円と同じ大きさに設定されているとともに、孔部150の最小径部あるいは最大径部の直径寸法よりも大きくなるように設定されている。
【0191】
ここで、荷重伝達部材184を設置する工程において、固定掘削部材186とともに可動掘削部材188が掘削孔82を掘削する際、荷重伝達部材184の回転方向を反時計方向とすると、可動撹拌部材190が閉じた状態で、荷重伝達部材184はケーソン12の側壁18の外側方向に掘進する。このため、荷重伝達部材184と周囲の地山UGとの摩擦力を低減することができ、荷重伝達部材184の掘進に必要な力を低減することができる。
【0192】
さらに、荷重伝達部材184の掘進が終了し、貫通孔192を介して掘削孔82にモルタル86を注入しながら、あるいは注入した後、図示しない駆動源により挿入突棒112を介して荷重伝達部材168を時計方向に回転させる。このため、可動撹拌部材190は、閉じている状態から開いている状態へと変位する。これにより、可動撹拌部材190が掘削孔82内で充填されたモルタル86を撹拌する。
【0193】
この際、荷重伝達部材184の周囲の地山UGの土とモルタル86を可動撹拌部材190により混合撹拌することができる。その結果、荷重伝達部材184の周囲に前記土が混合した状態で固化したモルタル86の層を荷重伝達部材184と一体化させることができる。これにより、荷重伝達部材184の周囲に支持部材142の孔部150の内径よりも大きいモルタル86の層を形成することができ、浮き防止部材10の径を大きくすることができることから、荷重伝達部材184に作用するせん断抵抗τを大きくすることができる。
【0194】
<第6の実施例に係る浮き防止部材の設置工程>
第6の実施例における浮き防止部材10の設置工程は、第5の実施例と同じである。したがって、第1の工程(
図27(B)参照)から第5の工程(
図29(B)参照)、第6の工程(
図33(B)参照)、第7の工程(
図30(B)参照)から第9の工程(
図31(B)参照)についての説明は省略する。
【0195】
<<<第6の実施例の変更例>>>
本実施例において、掘削孔82を掘削する固定掘削部材186及び可動掘削部材188の回転方向を反時計方向とする構成としたが、これに代えて時計方向とする構成としても良い。
【0196】
<<<第7の実施例>>>
図36(A)ないし
図37(B)を参照して、第7の実施例に係る荷重伝達部材200の構成について説明する。荷重伝達部材200は、先端側200aと、基端側に設けられた接合部200bとを備えている。本実施例において先端側200aの直径寸法と接合部200bの直径寸法とは同じ径寸法に設定されている。
【0197】
また、荷重伝達部材200は、軸線方向に沿って当該荷重伝達部材200を貫通する貫通孔202を備えている。接合部200bは、その外径寸法が第1の実施例における支持部材26の孔部28の内径と同じ寸法に設定されている。すなわち、接合部44bは、支持部材26の孔部28に隙間無く嵌合することができる。
【0198】
図36(B)を参照するに、本実施例における荷重伝達部材200の設置工程に使用する内管部材204が示されている。内管部材204は、軸線方向に沿って当該内管部材204を貫通する貫通孔206を備えている。また、内管部材204は、その先端に可動掘削部材208を備えている。
【0199】
内管部材204の外形寸法は、荷重伝達部材200の貫通孔202の内径寸法と一致するように構成されている。すなわち、
図37(A)に示すように、内管部材204の外周面204aに荷重伝達部材200の貫通孔202の内面が嵌合するように構成されている。
【0200】
可動掘削部材208は、
図37(B)に示すように、回動軸210を回動支点として回動可能に構成されている。可動掘削部材208は、内管部材204の軸線に対して平行にある状態すなわち倒れている状態(
図37(B)一点鎖線部参照)と、内管部材204の軸線に対して直行する状態すなわち立ち上がっている状態(
図37(B)実線部参照)とを取り得る。
【0201】
また、可動掘削部材208が立ち上がっている状態にある際、可動掘削部材208が作る刃先円の直径は、荷重伝達部材200の外径より大きくなるように設定されている。すなわち、可動掘削部材208が作る刃先円の直径は、支持部材26の孔部28の直径寸法よりも大きく設定されている。
【0202】
一方、可動掘削部材208が倒れている状態にある際、可動掘削部材208は、内管部材204の外周面204aよりも半径方向外側に突出することはない。すなわち、可動掘削部材208が倒れている状態にある際、荷重伝達部材200は内管部材204の軸線方向に沿って内管部材204の外周面204a上を変位することができる。
【0203】
<第7の実施例に係る浮き防止部材の設置工程>
次いで、
図38(A)ないし
図40(B)を参照して、第7の実施例に係る浮き防止部材10の設置方法について説明する。尚、本実施例において、第1の工程(
図11(B)参照)及び第2の工程(
図12(A)参照)は第1の実施例と共通であるため、その説明を省略する。また、本実施例において、荷重伝達部材200を突出させるセグメントは第1の実施例におけるセグメント24であり、荷重伝達部材200を固定支持する支持部材は、第1の実施例における支持部材26である。
【0204】
第3の工程として、
図38(A)に示すように、第2仕切バルブ74を開き、中空パイプ64の後端部78側から図示しない駆動源により駆動される荷重伝達部材200及び内管部材204を中空パイプ64内に挿入する。この際、荷重伝達部材200の貫通孔202には、内管部材204が挿入され、可動掘削部材208が荷重伝達部材200の先端側200aよりも軸線方向において支持部材26側に位置している。すなわち、可動掘削部材208が回動可能の状態にある。
【0205】
第4の工程として、
図38(B)に示すように、第1仕切バルブ68及び排泥用バルブ72を開き、荷重伝達部材200及び内管部材204を支持部材26の孔部28内へと前進させる。そして、内管部材204の先端に設けられた可動掘削部材208がスキンプレート32に接触すると、可動掘削部材208は倒れている状態から立ち上がっている状態に変位する。これにより可動掘削部材208は支持部材26の孔部28を閉口しているスキンプレート32を掘削し、孔部28をケーソン12の側壁18の外側に向けて開口させる。
【0206】
この際、中空パイプ64のグランドパッキン76より先端側に止水装置62から中空パイプ内を通り、内管部材204の貫通孔206を介して可動掘削部材208先端に水が供給され、可動掘削部材208によるスキンプレート32の加工屑の除去が行われる。そして加工屑とともに水は排泥用バルブ72から排出される。尚、グランドパッキン76は、内管部材204の外周面204aに接して、前記水が中空パイプ64の後端部78側に噴出することを防止している。
【0207】
第5の工程として、
図39(A)に示すように、内管部材204の可動掘削部材208により形成された開口部212から側壁18の外側の地山UGへと荷重伝達部材200及び内管部材204を前進させる。この際、内管部材204の可動掘削部材208により地山UGを掘削し、側壁18から地山UGに延びる掘削孔214を設ける。掘削孔214は地山UGにおいて円筒状に掘削される。
【0208】
さらに、可動掘削部材208が作る刃先円の直径は、荷重伝達部材200の外径よりも大きい。このため、掘削孔214と荷重伝達部材200の外周面との摩擦力を低減することができ、ひいては内管部材204がケーソン12の側壁18の外側に向かって掘進する際の摩擦力を低減することができる。
【0209】
この際、中空パイプ64のグランドパッキン76より先端側に可動掘削部材208先端から水が供給され、可動掘削部材208による地山UGから掘削した土砂の除去が行われる。そして土砂とともに水は排泥用バルブ72から排出される。尚、削孔水は中空パイプ64内に送水され、可動掘削部材208から中空パイプ64と地山との間を後端部78方向に流れて排泥される。
【0210】
そして、内管部材204は、側壁18の外側の地山UGに対して荷重伝達部材200の先端側200aが所定の位置まで突出した時点で掘削を終了する。このとき、荷重伝達部材200の接合部200bと支持部材26の孔部28とは嵌合した状態となっている。すなわち、荷重伝達部材200は、支持部材26に支持された状態となっている。
【0211】
そして、内管部材204を中空パイプ64の後端部78側に引き戻す。この際、可動掘削部材208は、後端部78側に引き戻されることにより荷重伝達部材200の先端側200aに押圧され、立ち上がっている状態から倒れている状態に変位する。
【0212】
このため、可動掘削部材208は、荷重伝達部材200と干渉することなく、中空パイプ64の後端部78側に引き戻される。そして、第1仕切バルブ68、排泥用バルブ72及び第2仕切バルブ74が閉じられる。その後、内管部材204は、中空パイプ64から取り外される。
【0213】
第6の工程として、注入用バルブ70を開き、荷重伝達部材200の貫通孔202を介して掘削孔214に向けてモルタル86を注入し、掘削孔214内にモルタル86を充填する。モルタル86を注入後、
図39(B)に示すように、第1仕切バルブ68及び注入用バルブ70を閉じる。
【0214】
第7の工程として、
図40(A)に示すように、止水装置62の注入用バルブ70、排泥用バルブ72及び第2仕切バルブ74を第1仕切バルブ68から取り外す。そして第8の工程として、掘削孔214に充填したモルタル86が固化した後、第1仕切バルブ68をフランジ部材56から取り外す。
【0215】
第9の工程として、
図40(B)に示すように、荷重伝達部材200の軸線方向において荷重伝達部材200(接合部200b)の後端、支持部材26の他端部26b及び補強板40の面が同じ位置となるように固化したモルタル86の一部を除去する。そして、蓋体50をボルト54により補強板40に取り付ける。これにより、荷重伝達部材200は、支持部材26を介してケーソン本体16の側壁18に荷重伝達部材200の軸線方向への変位が規制された状態で強固に固定された状態となる。すなわち、荷重伝達部材200の先端側200aが、ケーソン本体16の側壁18から突出した状態となる。
【0216】
また、本実施例では、掘削孔214を円筒状に掘削することから第1の実施例の掘削孔82と比較して掘削する土砂の量を少なくすることができる。これにより、掘削孔214の掘削時間を短縮することができる。すなわち、ケーソン12の工期短縮を図ることができる。また、本実施例では、荷重伝達部材200の外周面外側の余堀りを少なくすることができる。その結果、本実施例では、荷重伝達部材200の周囲の地山UGを乱すことを小さくすることができる。
【0217】
さらに、荷重伝達部材200は、先端側200aと掘削孔214との間及び先端側200aと開口部212との間にはモルタル86が充填されていることから十分な強度を有している。
【0218】
このため、浮き防止部材10は、浮力σの作用によりケーソン本体16の側壁18に対して撓んだ際に浮き防止部材10が損傷する虞がなく、あるいは損傷する虞が少ない。したがって、浮き防止部材10は、該浮き防止部材に作用する土砂のせん断抵抗及び土砂の重さに耐えうることからケーソン本体16に作用する浮力σに抗して、ケーソン本体16を所定の深さに維持することができる。
【0219】
<<<第8の実施例>>>
図41(A)及び
図41(B)を参照して、第8の実施例に係る荷重伝達部材216の構成について説明する。荷重伝達部材216は、先端側216aと、基端側に設けられた接合部216bとを備えている。本実施例において先端側216aの直径寸法と接合部216bの直径寸法とは同じ径寸法に設定されている。
【0220】
さらに、荷重伝達部材216は、その軸線方向において先端側216aから接合部216bまで連続した雄ねじ218が形成されている。雄ねじ218は、第2の実施例に係る支持部材100の孔部104の雌ねじ106と螺合するピッチで構成されている。
【0221】
さらに、荷重伝達部材216は、前記軸線方向に沿って土砂収容部220が設けられている。土砂収容部220は、荷重伝達部材216の内部に円筒状の空間として構成されている。さらに、土砂収容部220は、先端側216a側に形成された開口222により外側の空間と連通している。
【0222】
また、先端側216aには、中央部掘削部材224と外周部掘削部材226とを備えている。中央部掘削部材224は、先端側216aにおいて開口222を仕切る仕切部材228に設けられている。また、外周部掘削部材226は、先端側216aにおいて開口222の外周に配置されている。
【0223】
荷重伝達部材216の後端すなわち接合部216b側の端面には、荷重伝達部材216を前記軸線の周りに回転させるための回転工具等(図示せず)と係合するための係合凸部230が形成されている。本実施例では、係合凸部230は、スパナ等の回転工具と係合するために六角形状に形成されている。
【0224】
<第8の実施例に係る浮き防止部材の設置工程>
次いで、
図42(A)ないし
図43(B)を参照して、第8の実施例に係る浮き防止部材10の設置方法について説明する。尚、本実施例において、荷重伝達部材216を突出させるセグメントは第2の実施例におけるセグメント118であり、荷重伝達部材216を固定支持する支持部材は、第2の実施例における支持部材100である。
【0225】
図42(A)を参照するに、セグメント118に支持部材100が取り付けられている。また、支持部材100の孔部104にはプラグ122が取り付けられている。プラグ外周面の雄ねじと孔部104の雌ねじ106とは螺合した状態にある。
【0226】
第1の工程として、
図42(B)に示すように、支持部材100の孔部104の雌ねじ106に荷重伝達部材216の雄ねじ218を螺合させて、支持部材100に荷重伝達部材216を取り付ける。
【0227】
第2の工程として、
図43(A)に示すように、荷重伝達部材216の後端の係合凸部230に図示しない回転工具を係合し、該回転工具により荷重伝達部材216を該荷重伝達部材216の軸線方向に沿って支持部材100に対して螺進させる。このため、プラグ122は、荷重伝達部材216の螺進にともなって中央部掘削部材224及び外周部掘削部材226により破砕される。破砕されたプラグ122の破片は、開口222を介して土砂収容部220に収容される。
【0228】
第3の工程として、
図43(B)に示すように、荷重伝達部材216をケーソン本体16の側壁18の外側の地山UGに向かって掘進させることにより、荷重伝達部材216の先端側216aをケーソン本体16の側壁18の外側の地山UGに向かって突出させる。この際、中央部掘削部材224及び外周部掘削部材226により掘削された土砂は、開口222を介して土砂収容部220に収容される。荷重伝達部材216は、先端側216aがケーソン本体16の側壁18の外側の地山UGに所定量突出した位置で掘進を停止する。
【0229】
本実施例において、荷重伝達部材216は、接合部216bが支持部材100の孔部104と螺合していることから、支持部材100に支持固定されている。このため、荷重伝達部材216がその軸線方向において支持部材100に対して確実に固定されることとなる。したがって、荷重伝達部材216において前記軸線の直角方向断面に土水圧による荷重により地山側からケーソン本体16側に向けて力が作用する際、荷重伝達部材216の軸線方向への変位を確実に規制することができる。
【0230】
また、本実施例によれば、荷重伝達部材216を支持部材100に直接螺合させる構成であるから、その設置工程において止水装置62を必要としない。このため、浮き防止部材10の設置工期を短縮できるとともに施工コストを低減することができる。
【0231】
<<<第8の実施例の変更例>>>
さらに荷重伝達部材216は、
図44(A)及び
図44(B)に示すように接合部216bの後端面に土砂収容部220と該土砂収容部220の外側の空間とを連通するグラウト注入部232を備えていてもよい。グラウト注入部232には、貫通孔234が設けられている。貫通孔234内部には、逆止弁236が設けられている。
【0232】
荷重伝達部材216の先端側216aをケーソン本体16の側壁18の外側の地山UGに向かって所定量突出させた状態において、グラウト注入部232の貫通孔234を介してモルタル86を土砂収容部220の隙間に注入する。そして、土砂収容部220の隙間内にモルタル86を充填させた状態でモルタル86を固化させる。
【0233】
これにより、荷重伝達部材216の内部が掘削した土砂とモルタル86により充填された状態となることから、荷重伝達部材216の剛性を高めることができる。また、荷重伝達部材216は、ケーソン本体16の側壁18に対する突出量を調整することにより土砂のせん断抵抗τの大きさを調整することができる。
【0234】
上記説明をまとめると本実施例のケーソンの浮き防止部材10は、ケーソン12の側壁18に設けられた内外を連通する連通部41、119に固定され、孔部28、96、104、136、150を有する支持部材26、94、100、128、142と、前記支持部材の孔部28、96、104、136、150に基端側の接合部44b、88b、90b、92b、102b、126b、140b、152b、160b、168b、184b、200b、216bが支持され、先端側44a、88a、90a、92a、102a、126a、140a、152a、160a、168a、184a、200a、216aが前記側壁18の外側の地山UGに突出する荷重伝達部材44、88、90、92、102、126、140、152、160、168、184、200、216とを備えている。
【0235】
荷重伝達部材44、88、90、92、126、140、152、160、168、184、200は、前記接合部44b、88b、90b、92b、126b、140b、152b、160b、168b、184b、200bが前記孔部28、96、136、150の内側と面接触して該孔部に支持されている。
【0236】
前記荷重伝達部材44、126、152、200、216は同一径に形成されている。また、接合部92b、140b、168b、184b、はテーパー形状に形成され、孔部96、150は前記テーパー形状に対応する逆テーパー形状に形成されている。
【0237】
荷重伝達部材102は、前記孔部104、216と螺合して前記荷重伝達部材の軸線方向への変位が規制される。荷重伝達部材126は、孔部136と嵌合して前記荷重伝達部材の軸線方向への変位が規制される。荷重伝達部材140、152、160、168、184、216の先端に掘削部材148、158、166、174、186、188、224、226を備えている。掘削部材166は、該掘削部材が作る刃先円の直径が前記荷重伝達部材160の先端側160aの外径より大きく形成されている。
【0238】
荷重伝達部材168、184の先端に掘削部材174、186、188を備え、前記荷重伝達部材の外周に撹拌手段178、190を備えている。撹拌手段178は固定された突起であって該突起が作る刃先円の直径は、前記孔部150の内径よりも小さい。掘削部材188は倒立可能であり、倒れた状態で作る外径は前記孔部150の内径より小さい。可動撹拌部材190は倒立可能であり、倒れた状態で作る外径は前記孔部150の内径より小さい。
【0239】
荷重伝達部材200は円筒体であり、該荷重伝達部材200が突出するために地山UGに形成される掘削孔214は円筒状である。浮き防止部材10は側壁18の内側にボルト54により固定される蓋体50を備えている。蓋体50は、荷重伝達部材44、88、90、92、102、126、140、152、160、168、184、200の軸線方向への変位を規制する。支持部材26、94、100、128、142の孔部28、96、104、136、150には該孔部の軸線方向に沿って延びる排泥溝98、124が形成されている。
【0240】
荷重伝達部材216の外周には雄ねじ218が形成され、支持部材100の孔部104には雌ねじ106が形成されている。荷重伝達部材216の先端には掘削部材224、226が設けられている。荷重伝達部材216を孔部104に対して螺進させて、掘削部材224、226により前記土を掘削して、荷重伝達部材216を前記土中に突出させる。
【0241】
掘削部材224、226は掘削した土を荷重伝達部材216の土砂収容部220に導くように構成されている。接合部216bには側壁18の内側から荷重伝達部材216の土砂収容部220に向けてモルタル86を注入可能な逆止弁236が設けられている。
【0242】
ケーソンの浮き防止部材10の設置方法は、ケーソン12の側壁18に設けられた内外を連通する連通部41、119に固定された、孔部28、96、104、136、150を有する支持部材26、94、100、128、142の該孔部を介して側壁18から該側壁の外側の地山UGに向かって荷重伝達部材44、88、90、92、102、126、140、152、160、168、184、200、216を突出させるための掘削孔82、214を土中に掘削する工程と、荷重伝達部材44、88、90、92、102、126、140、152、160、168、184、200、216を前記掘削された土中の掘削孔82、214に挿入する工程と、孔部28、96、104、136、150に荷重伝達部材44、88、90、92、102、126、140、152、160、168、184、200、216の接合部44b、88b、90b、92b、102b、126b、140b、152b、160b、168b、184b、200b、216bを支持させて固定する工程とを含む。
【0243】
ケーソンの浮き防止部材10の設置方法は、ケーソン12の側壁18に設けられた内外を連通する連通部41に固定された、孔部150を有する支持部材142を有する支持部材の該孔部を介して前記側壁から該側壁の外側の地中に向かって荷重伝達部材140、152、160、168、184を突出させるための掘削孔82を土中に掘削するとともに荷重伝達部材140、152、160、168、184を前記掘削された地山UGの掘削孔82に突出する工程と、孔部150に荷重伝達部材140、152、160、168、184の接合部140b、152b、160b、168b、184bを支持させて固定する工程とを含む。
【0244】
さらに、浮き防止部材10の設置方法は、荷重伝達部材44、88、90、92、102、126、140、152、160、168、184、200、216を介して掘削された孔82、214にモルタル86を注入する工程を含む。さらに、浮き防止部材10の設置方法は、前記荷重伝達部材168、184を回転させて、前記注入されたモルタル86と荷重伝達部材168、184の周囲の地山UGの土とを混合撹拌する工程と、前記撹拌されたモルタル86を固化させる工程とを含む。
【0245】
また、浮き防止部材10の設置方法は、ケーソン12の側壁18に設けられた内外を連通する連通部41に固定された、孔部28を有する支持部材26の該孔部28を介し、荷重伝達部材200の内側に配置され、先端に掘削部材208を備える内管部材204を荷重伝達部材200とともに側壁18の外側の地山UGに向かって掘進させて荷重伝達部材200を突出させる工程と、内管部材204を突出させた状態の荷重伝達部材200から引き抜く工程と、孔部28に荷重伝達部材200の接合部200bを支持させて固定する工程とを含む。
【0246】
さらに、浮き防止部材10の設置方法は、荷重伝達部材200を介して前記掘削された掘削孔214にモルタル86を注入する工程と、注入されたモルタル86を固化させる工程とを含む。
【0247】
さらに、浮き防止部材10の設置方法は、側壁18の内側にボルト54を用いて蓋体50を取り付ける工程を含む。
【0248】
また、浮き防止部材10の設置方法は、ケーソン12の側壁18に設けられた内外を連通する連通部119に固定された、孔部104を有する支持部材100の該孔部104を介し、荷重伝達部材216を孔部104に対して螺進させて土中を掘削する工程と、掘削した土を荷重伝達部材216の土砂収容部220に導いて荷重伝達部材216を土中に突出させる工程とを含む。
【0249】
さらに、浮き防止部材10の設置方法は、荷重伝達部材216の土砂収容部220にモルタル86を注入する工程と、前記注入されたモルタル86を固化させる工程とを含む。
【0250】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。