特許第6157124号(P6157124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6157124センサユニット、自動販売機、及び、人感センサによる人感知識別方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6157124
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】センサユニット、自動販売機、及び、人感センサによる人感知識別方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/56 20060101AFI20170626BHJP
   G07F 9/00 20060101ALI20170626BHJP
   G07F 9/02 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   G01S13/56
   G07F9/00 P
   G07F9/02 104
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-7462(P2013-7462)
(22)【出願日】2013年1月18日
(65)【公開番号】特開2014-137340(P2014-137340A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2014年12月25日
【審判番号】不服2015-16861(P2015-16861/J1)
【審判請求日】2015年9月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【弁理士】
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】近藤 崇
【合議体】
【審判長】 酒井 伸芳
【審判官】 中塚 直樹
【審判官】 関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−215031(JP,A)
【文献】 特開2006−245685(JP,A)
【文献】 特開2012−39298(JP,A)
【文献】 特開平10−283544(JP,A)
【文献】 特開平5−206821(JP,A)
【文献】 特開2005−49965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 13/56
G07F 9/00
G07F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の動きを感知し、電圧に変換して出力する人感センサを備え、自動販売機の前面側における利用者を感知するために前記自動販売機の外扉に金額表示器として設けられるセンサユニットにおいて、
前記人感センサは、ドップラー式電波センサであり、
前記人感センサの出力電圧を短い所定の短測定時間で平均して得られる変化値を繰り返し算出する変化値算出手段と、
前記人感センサの出力電圧を前記短測定時間よりも十分長い所定の長測定時間で平均して得られる定常値を繰り返し算出する定常値算出手段と、
前記変化値算出手段が算出したその時点の前記変化値と前記定常値算出手段が算出した直近の前記定常値との差が所定の人あり閾値以上であることに基づき、人を感知したものと判定する判定手段とを備え、
前記定常値算出手段には、第1の前記長測定時間と当該第1の長測定時間より長い第2の前記長測定時間が設定され、常には前記人感センサの出力電圧を前記第2の長測定時間で平均することで前記定常値を算出しており、前記判定手段が人を感知したものと判定した後は、前記変化値と前記定常値との差が所定の人なし閾値の範囲以内となって人なしと判定するまで前記人感センサの出力電圧を前記第1の長測定時間で平均することで前記定常値を算出することを特徴とするセンサユニット。
【請求項2】
前記変化値算出手段、前記定常値算出手段、及び、前記判定手段として機能する制御手段を備え、
該制御手段は、通信により人感センサの感知状態に関する情報を前記自動販売機側の制御手段に送信することを特徴とする請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項3】
前記変化値算出手段は、前記人感センサの出力電圧を前記短測定時間で移動平均することにより、前記変化値を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセンサユニット。
【請求項4】
前記判定手段は、前記変化値算出手段が算出したその時点の前記変化値と前記定常値算出手段が算出した直近の前記定常値との差が、前記人なし閾値の範囲以内となったことが複数回発生した場合、人なしと判定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載のセンサユニット。
【請求項5】
対象物の動きを感知し、電圧に変換して出力する人感センサを備え、前面側における利用者を感知するために外扉に設けられた金額表示器を有する自動販売機において、
前記人感センサは、ドップラー式電波センサであり、
前記人感センサの出力電圧を短い所定の短測定時間で平均して得られる変化値を繰り返し算出する変化値算出手段と、
前記人感センサの出力電圧を前記短測定時間よりも十分長い所定の長測定時間で平均して得られる定常値を繰り返し算出する定常値算出手段と、
前記変化値算出手段が算出したその時点の前記変化値と前記定常値算出手段が算出した直近の前記定常値との差が所定の人あり閾値以上となったことに基づき、人を感知したものと判定する判定手段とを備え、
前記定常値算出手段には、第1の前記長測定時間と当該第1の長測定時間より長い第2の前記長測定時間が設定され、常には前記人感センサの出力電圧を前記第2の長測定時間で平均することで前記定常値を算出しており、前記判定手段が人を感知したものと判定した後は、前記変化値と前記定常値との差が所定の人なし閾値の範囲以内となって人なしと判定するまで前記人感センサの出力電圧を前記第1の長測定時間で平均することで前記定常値を算出することを特徴とする自動販売機。
【請求項6】
照明装置と、該照明装置の点灯を制御する照明装置制御手段とを備え、
該照明装置制御手段は、前記判定手段が人を感知したものと判定した場合、前記照明装置を点灯することを特徴とする請求項5に記載の自動販売機。
【請求項7】
前記変化値算出手段は、前記人感センサの出力電圧を前記短測定時間で移動平均することにより、前記変化値を算出することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の自動販売機。
【請求項8】
前記判定手段は、前記変化値算出手段が算出したその時点の前記変化値と前記定常値算出手段が算出した直近の前記定常値との差が、前記人なし閾値の範囲以内となったことが複数回発生した場合、人なしと判定することを特徴とする請求項5乃至請求項7のうちの何れかに記載の自動販売機。
【請求項9】
自動販売機の前面側における利用者を感知するために当該自動販売機の外扉に設けられる金額表示器に備えられ、対象物の動きを感知し、電圧に変換して出力するドップラー式電波センサから成る人感センサの出力電圧を短い所定の短測定時間で平均して得られる変化値を繰り返し算出し、
前記人感センサの出力電圧を前記短測定時間よりも十分長い所定の長測定時間で平均して得られる定常値を繰り返し算出し、
その時点の前記変化値と直近の前記定常値との差が所定の人あり閾値以上となったことに基づいて人を感知したものと判定すると共に、
第1の前記長測定時間と当該第1の長測定時間より長い第2の前記長測定時間を設定し、常には前記人感センサの出力電圧を前記第2の長測定時間で平均することで前記定常値を算出し、人を感知したものと判定した後は、前記変化値と前記定常値との差が所定の人なし閾値の範囲以内となって人なしと判定するまで前記人感センサの出力電圧を前記第1の長測定時間で平均することで前記定常値を算出することを特徴とする人感センサによる人感知識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の動きを感知して出力電圧を発生する人感センサを備えたセンサユニット、及び、係る人感センサを備えた自動販売機、更に係る人感センサによる人感知識別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より例えば自動販売機においては、商品サンプル用照明装置の消費電力の削減や、演出効果の向上、防犯性能の改善等を図る目的で、人感センサが設けられるようになって来ている。この人感センサは、例えばドップラー式電波センサであり、外扉の前面側に利用者が到来する動きを反射して来る電波によって感知し、電圧に変換して信号を出力(出力電圧が変化)する。そして、この人感センサが利用者を感知した場合に、照明装置を点灯し、或いは、それまで暗くしていた照度を上げ、若しくは、所定の演出効果(照明や音声)等を奏するように構成されていた(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−108128号公報
【特許文献2】特開2005−49965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の自動販売機では一定の閾値を設定し、人感センサが対象物の動きを感知し、その出力電圧が上昇して前記閾値を超えた場合、人(利用者)を感知したものと判定していた。しかしながら、自動販売機の人感センサに定常的なノイズが乗る環境では、的確に人を感知することが困難であった。
【0005】
図10を参照してこの様子を説明する。この図は従来の自動販売機の人感センサによる人感知識別の状況を示している。図中SVで示す線が人感センサの出力電圧であり、THで示す値が閾値である。人感センサが出力する電圧は実際には細かく変化するため、出力電圧SVはそれを平均した計算結果である。また、閾値THは予め実験により人感センサが人(利用者)を感知したときの出力電圧を測定し、決定された一定の値である。
【0006】
このような自動販売機において、定常的なノイズが人感センサに入り、出力電圧SVが人が居ないにも拘わらず図10に示す如く徐々に上昇していった場合、閾値THを超えた時点で自動販売機は人ありと判定し、その後ノイズが減少して出力電圧SVが閾値THを下回るまでこの状態は続くことになり、ノイズを利用者の動きと誤って感知してしまう状況となっていた。
【0007】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、ノイズによる人感センサの誤感知を効果的に解消することができるセンサユニット、自動販売機、又は、ノイズによる人感センサの誤感知を効果的に解消することができる人感知識別方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明のセンサユニットは、対象物の動きを感知し、電圧に変換して出力する人感センサを備え、自動販売機の前面側における利用者を感知するために自動販売機の外扉に金額表示器として設けられるものであって、人感センサは、ドップラー式電波センサであり、人感センサの出力電圧を短い所定の短測定時間で平均して得られる変化値を繰り返し算出する変化値算出手段と、人感センサの出力電圧を短測定時間よりも十分長い所定の長測定時間で平均して得られる定常値を繰り返し算出する定常値算出手段と、変化値算出手段が算出したその時点の変化値と定常値算出手段が算出した直近の定常値との差が所定の人あり閾値以上であることに基づき、人を感知したものと判定する判定手段とを備え、定常値算出手段には、第1の長測定時間と当該第1の長測定時間より長い第2の長測定時間が設定され、常には人感センサの出力電圧を第2の長測定時間で平均することで定常値を算出しており、判定手段が人を感知したものと判定した後は、変化値と定常値との差が所定の人なし閾値の範囲以内となって人なしと判定するまで人感センサの出力電圧を第1の長測定時間で平均することで前記定常値を算出することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明のセンサユニットは、上記発明において変化値算出手段、定常値算出手段、及び、判定手段として機能する制御手段を備え、この制御手段は、通信により人感センサの感知状態に関する情報を自動販売機側の制御手段に送信することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明のセンサユニットは、上記各発明において変化値算出手段は、人感センサの出力電圧を短測定時間で移動平均することにより、変化値を算出することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明のセンサユニットは、上記各発明において判定手段は、変化値算出手段が算出したその時点の変化値と定常値算出手段が算出した直近の定常値との差が、人なし閾値の範囲以内となったことが複数回発生した場合、人なしと判定することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明の自動販売機は、対象物の動きを感知し、電圧に変換して出力する人感センサを備え、前面側における利用者を感知するために外扉に設けられた金額表示器を有するものであって、人感センサは、ドップラー式電波センサであり、人感センサの出力電圧を短い所定の短測定時間で平均して得られる変化値を繰り返し算出する変化値算出手段と、人感センサの出力電圧を短測定時間よりも十分長い所定の長測定時間で平均して得られる定常値を繰り返し算出する定常値算出手段と、変化値算出手段が算出したその時点の変化値と定常値算出手段が算出した直近の定常値との差が所定の人あり閾値以上となったことに基づき、人を感知したものと判定する判定手段とを備え、定常値算出手段には、第1の長測定時間と当該第1の長測定時間より長い第2の長測定時間が設定され、常には人感センサの出力電圧を第2の長測定時間で平均することで定常値を算出しており、判定手段が人を感知したものと判定した後は、変化値と定常値との差が所定の人なし閾値の範囲以内となって人なしと判定するまで人感センサの出力電圧を第1の長測定時間で平均することで定常値を算出することを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明の自動販売機は、上記発明において照明装置と、この照明装置の点灯を制御する照明装置制御手段とを備え、この照明装置制御手段は、判定手段が人を感知したものと判定した場合、照明装置を点灯することを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明の自動販売機は、請求項5又は請求項6の発明において変化値算出手段は、人感センサの出力電圧を短測定時間で移動平均することにより、変化値を算出することを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明の自動販売機は、請求項5乃至請求項7の発明において判定手段は、変化値算出手段が算出したその時点の変化値と定常値算出手段が算出した直近の定常値との差が、人なし閾値の範囲以内となったことが複数回発生した場合、人なしと判定することを特徴とする。
【0016】
請求項9の発明の人感知識別方法は、自動販売機の前面側における利用者を感知するために当該自動販売機の外扉に設けられる金額表示器に備えられ、対象物の動きを感知し、電圧に変換して出力するドップラー式電波センサから成る人感センサの出力電圧を短い所定の短測定時間で平均して得られる変化値を繰り返し算出し、人感センサの出力電圧を短測定時間よりも十分長い所定の長測定時間で平均して得られる定常値を繰り返し算出し、その時点の変化値と直近の定常値との差が所定の人あり閾値以上となったことに基づいて人を感知したものと判定すると共に、第1の長測定時間と当該第1の長測定時間より長い第2の長測定時間を設定し、常には人感センサの出力電圧を第2の長測定時間で平均することで定常値を算出し、人を感知したものと判定した後は、変化値と定常値との差が所定の人なし閾値の範囲以内となって人なしと判定するまで人感センサの出力電圧を第1の長測定時間で平均することで前記定常値を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
対象物の動きを感知し、電圧に変換して出力する人感センサの出力電圧の変化は、定常的なノイズが載った場合と自動販売機等の利用者(人)である場合とでは異なり、利用者が到来した場合の方が、その度合いが大きくなる。
【0018】
そこで、本発明のセンサユニット又は自動販売機又は人感知識別方法によれば、対象物の動きを感知し、電圧に変換して出力する人感センサの出力電圧を短い所定の短測定時間で平均して得られる変化値を変化値算出手段により繰り返し算出すると共に、人感センサの出力電圧を短測定時間よりも十分長い所定の長測定時間で平均して得られる定常値を定常値算出手段により繰り返し算出し、その時点の変化値と直近の定常値との差が所定の人あり閾値以上となったことに基づき、判定手段により人を感知したものと判定するようにしているので、定常的なノイズによる出力電圧の変化では、判定手段が人を感知したものと判定しなくなる。
【0019】
この様子を図5にて説明する。図中SAV1は人感センサの出力電圧を短い短測定時間(例えば後述する如くサンプリング1msで64回の64ms等)で平均して得られた変化値を示し、SAV2は人感センサの出力電圧を短測定時間より十分長い長測定時間(例えば後述する如くサンプリング1msで1000回の1s等)で平均して得られた定常値を示している。実際に自動販売機の前に利用者(人)が到来し、人感センサの感知範囲内に入ると、人感センサの出力電圧は直ぐに上昇するため、変化値SAV1も直ぐに上昇していくが、定常値SAV2は直ぐには上昇せず、その差が拡大していく。そして、差が所定の人あり閾値以上となることで、感知対象物を人と判定し、判定結果を「人あり」とすることができる。一方、定常的なノイズが人感センサに入り、変化値SAV1(図5の実線)が、人が居ないにも拘わらず同図に示す如く徐々に上昇していった場合、定常値SAV2(図5の破線)も変化値SAV1に追随するかたちで図5の実施例では階段状に上昇していくことになるため、ノイズによる変化値SAV1の変化程度では、その時点の変化値SAV1と直近の定常値SAV2との差は小さくなる。即ち、ノイズによる変化値SAV1の上昇分が、定常値SAV2が上昇することで打ち消されるかたちとなり、その時点の変化値と直近の定常値との差に基づいて判定することで、ノイズによる影響をキャンセルすることが可能となる。
【0020】
そこで本発明では、変化値算出手段が変化値を繰り返し算出し、定常値算出手段が定常値を繰り返し算出しており、判定手段がその時点の変化値と直近の定常値との差が所定の人あり閾値以上となったことに基づいて人を感知したものと判定するようにしているので、係るノイズによる誤った人感知を的確に防止し、ノイズに強い装置又は方法とすることが可能となる。
【0021】
特に、第1の長測定時間と当該第1の長測定時間より長い第2の長測定時間を定常値算出手段に設定し、常には人感センサの出力電圧を第2の長測定時間で平均することで定常値を算出しており、判定手段が人を感知したものと判定した後は、変化値と定常値との差が所定の人なし閾値の範囲以内となって人なしと判定するまで人感センサの出力電圧を第1の長測定時間で平均することで定常値を算出するようにしているので、人なしから人ありへの判定の際に、変化値と定常値との差が出やすくなり、迅速な人あり判定を実現することができるようになる。また、その後は第1の長測定時間で平均した定常値と変化値との差で人なしとなったか否かの判定を行うことになるので、人あり判定後にノイズが載ってくるような場合にも、支障無く人感知識別判定を行うことが可能となる。
【0022】
これにより、自動販売機において、ノイズにより自動販売機の前面側に利用者が到来したものと誤って感知する不都合を効果的に防止し、請求項6の如く照明装置制御手段が、判定手段が人を感知したものと判定した場合に照明装置を点灯する制御を実行する自動販売機において、照明装置の制御を最適に行うことができるようになる。
【0023】
また、センサユニットを自動販売機の金額表示器としているので、請求項1の発明のセンサユニットを自動販売機に効率よく採用することができるようになると共に、自動販売機への組み付けも容易となる。
【0024】
更に、請求項2の発明の如く変化値算出手段、定常値算出手段、及び、判定手段として機能する制御手段を備え、この制御手段が、通信により人感センサの感知状態に関する情報を自動販売機側の制御手段に送信するようにすれば、センサユニットの人感センサが感知した情報等を支障無く自動販売機側に通知し、自動販売機側における制御に供することが可能となる。
【0025】
特に、請求項3や請求項7の発明の如く変化値算出手段が、人感センサの出力電圧を短測定時間で移動平均することにより、変化値を算出するようにすれば、人感センサが出力する電圧の細かい変化を滑らかにし、それによる誤作動を回避することが可能となると共に、急な変化を捉えやすくなり、また、サンプリング毎に判定手段が判定することになるので、判定動作の分解能が向上し、迅速な人感知識別判定を実現することが可能となる。
【0026】
また、請求項4や請求項8の発明の如く判定手段が、変化値算出手段が算出したその時点の変化値と定常値算出手段が算出した直近の定常値との差が、人なし閾値の範囲以内となったことが複数回発生した場合、人なしと判定するようにすれば、誤った人なし判定を回避し、例えば、請求項6の如く照明装置を点灯する場合、人あり判定と人なし判定を繰り返すことによる照明装置の頻繁な点灯/消灯を防止することができるようになる。
【0027】
そして、以上のことは本発明の如く人感センサとしてドップラー式電波センサを用いたときに特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明を適用した一実施例の自動販売機の正面図である。
図2図1の自動販売機の金額表示器(センサユニット)の正面図である。
図3図1の自動販売機の人感センサに係る電気回路の概略ブロック図である。
図4図3の金額表示器側制御装置が実行する人感センサによる人感知識別制御を説明する図である(実施例1)。
図5】定常的なノイズが載った場合に図3の金額表示器側制御装置が算出する変化値と定常値を示す図である。
図6図3の金額表示器側制御装置が実行する人感センサによるもう一つの人感知識別制御を説明する図である(実施例2)。
図7図6における判定結果を説明する図である。
図8図6の人感知識別制御を説明する更にもう一つの図である。
図9図8における判定結果を説明する図である。
図10】定常的なノイズが載った場合の従来の人感センサの出力電圧と閾値の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0030】
図1は本発明を適用した一実施例の自動販売機1の正面図を示している。実施例の自動販売機1は、前面が開口した断熱性の本体2と、この本体2の前面を開閉自在に閉塞する外扉3を備えており、例えば屋外に設置される。本体2内に図示しない商品収納庫が構成され、この商品収納庫内に販売する缶飲料、ペットボトル飲料等の商品が収納されている。また、商品収納庫の下側には図示しない機械室が構成され、この機械室内には商品収納庫内を冷却又は加温するための冷凍機が設置されている。尚、商品収納庫の前面開口はこれも図示しない断熱性の内扉で開閉自在に閉塞されている。
【0031】
外扉3は係る内扉の前側に間隔を存して位置しており、実施例では向かって左側が本体2に回動自在に枢支されている。外扉3の前面上部には商品サンプル室4が構成されており、この商品サンプル室4内に陳列された複数の各商品サンプルに対応して複数の商品選択スイッチ6が配置されている。また、商品サンプル室4の下側の外扉3前面には、広告パネル(広告表示部)5が構成されており、この広告パネル5の下側の外扉3前面下部には商品取出口7が構成されている。
【0032】
更に、外扉3前面の向かって右側(非枢支側)中央部には化粧パネル8が取り付けられており、この化粧パネル8内に位置して硬貨投入口9、返却レバー11が設けられている。また、この化粧パネル8の向かって左側の外扉3前面には、本発明におけるセンサユニットの実施例としての金額表示器12が取り付けられている。この金額表示器12については後に詳述する。
【0033】
更に、この金額表示器12の下側の外扉3前面には紙幣識別装置(ビルバリ)19が取り付けられている。また、商品取出口7の向かって右側の外扉3前面には硬貨返却口13が構成されている。
【0034】
商品サンプル室4の各商品選択スイッチ6の後側には蛍光灯やLEDから成る商品サンプル室照明装置18が取り付けられ、商品サンプル室4内の商品サンプルを照明している。また、商品サンプル室4内上部には飲料メーカー名等が表示されたロゴパネル(広告表示部)14が配置されている。そして、このロゴパネル14や広告パネル5には、蛍光灯やLEDから成る広告用照明装置16、17がそれぞれ設けられている。尚、本出願における照明装置としては係る蛍光灯やLEDの他に、液晶パネルや有機EL等も採用できる。
【0035】
次に、図2は前記金額表示器(本発明のセンサユニット)12の正面図を示している。金額表示器12内には後述する金額表示器側制御装置(センサユニット側制御装置)21の基板(回路基板)の他、投入金額や商品収納庫内の温度等を表示するための7セグLED表示器22や赤外線通信を行うためのLED23と、本発明に係る人感センサ24が取り付けられている。
【0036】
尚、実施例の人感センサ24としてはドップラー式電波センサが採用されている。人感センサ24は外扉3の前面側における感知範囲内での感知対象物の動きを反射して来る電波によって感知し、電圧に変換して信号を出力(出力電圧が変化)する。本発明において人感センサ24は、その出力電圧の変化に基づいて後述する如く自動販売機1の外扉3の前面側に利用者が到来したことを感知するために用いられるものである。
【0037】
次に、図3は自動販売機1の人感センサ24に係る電気回路を示している。金額表示器12に設けられたマイクロコンピュータから成る金額表示器側制御装置21(センサユニット側の制御手段)の入力には人感センサ24が接続されている。この金額表示器側制御装置21は、自動販売機1の商品販売制御を司る自動販売機側制御装置27(自動販売機側の制御手段)と通信によりデータ(状態情報)の送受信を行う。尚、この発明において「通信による状態情報の送受信」とは、有線又は無線によるデータの送受信の他、単なる信号線を用いた信号(「H」/「L」)のやりとりも含むものとする。自動販売機側制御装置27には前述した各照明装置16〜18が接続され、自動販売機側制御装置27は照明装置制御手段として機能すると共に、更に図示しないが自動販売機1の商品温度制御から商品販売制御に係る各種機器が接続され、自動販売機側制御装置27はそれらを制御する。
【0038】
尚、後述する人感センサ24に係る動作説明では、金額表示器側制御装置21が本発明における変化値算出手段、定常値算出手段、及び、判定手段として機能するように制御アルゴリズムが組み込まれたかたちで説明するが、それに限らず、金額表示器側制御装置21からは人感センサ24の出力電圧に関するデータのみが自動販売機側制御装置27に送られ、この自動販売機側制御装置27が本発明における変化値算出手段、定常値算出手段、及び、判定手段として機能するようにしてもよい。
【0039】
次に、図4を参照しながら金額表示器(センサユニット)12に設けられた人感センサ24による対象物の感知と金額表示器側制御装置21による「人あり」判定制御(人感知識別の方法)について説明する。図4の上のグラフの縦軸は人感センサ24の出力電圧、横軸は時間である。図4の下のグラフは人あり、人なしの判定状態を示している。
【0040】
実施例の場合、金額表示器側制御装置21は1ms(1m秒)毎に人感センサ24の出力電圧をサンプリングし、取り込んでいる。また、実施例の金額表示器側制御装置21には本発明における短測定時間として64ms(64m秒)が設定され、第1の長測定時間として1s(1秒)が、第2の長測定時間として32s(32秒)がそれぞれ設定されている。そして、金額表示器側制御装置21は、サンプリングした人感センサ24の出力電圧を64回取り込んで移動平均することで、出力電圧の前記短測定時間の移動平均値である変化値SAV1を繰り返し算出している(変化値算出手段)。
【0041】
また、金額表示器側制御装置21は、人を感知していない状態では、サンプリングした人感センサ24の出力電圧を32000回取り込んで平均することで、出力電圧の前記第2の長測定時間の平均値である定常値SAV2を繰り返し算出している(定常値算出手段)。そして、算出したその時点の変化値SAV1(図4の実線)と直近の定常値SAV2(図4の太い破線)とを、変化値SAV1を算出する毎に、即ち、1ms毎に比較し、その差eが所定の人あり閾値(例えば、0.6V)以上となったか否か、判定している(判定手段)。
【0042】
前述の図5において説明した如く、人感センサ24に定常的なノイズが載り、その出力電圧の変化値SAV1が徐々に上昇したとしても、定常値SAV2もノイズによる出力電圧の上昇により段階的に上昇する。即ち、ノイズによる変化値SAV1の上昇分が、定常値SAV2が上昇することで打ち消され、ノイズによる影響がキャンセルされるかたちとなるので、両者の差eは大きくならず、前記人あり閾値以上とならない。これにより、ノイズが載って人ありと誤判定する不都合は防止、若しくは、抑制される。
【0043】
次に、実際に自動販売機1の外扉3の前に利用者(人)が到来し、人感センサ24の感知範囲内に入ると、人感センサ24の出力電圧は直ぐに上昇するため、変化値SAV1も直ぐに上昇していくが、定常値SAV2は32sの平均値であるために直ぐには上昇せず、その差eが拡大していく。そして、図4の時刻t1で差eが人あり閾値以上となると、金額表示器側制御装置21は感知対象物を人と判定し、判定結果を「人あり」とする。
【0044】
このように判定された結果は金額表示器側制御装置21から自動販売機側制御装置27に人感センサ感知状態データ(状態情報)として送信される。自動販売機側制御装置27は、金額表示器側制御装置21から送信された人感センサ感知状態データが「人あり」であった場合(利用者が到来の場合)、自動販売機側制御装置27は照明装置16〜18を所定時間(例えば10s)点灯する(同時に所定の演出効果を実行してもよい)。これにより、利用者に商品をアピールすると共に、利用者が商品を選択し易い状態とする。
【0045】
一方、金額表示器側制御装置21は、時刻t1で「人あり」と判定した場合、その後はサンプリングした人感センサ24の出力電圧を1000回取り込んで平均することで、出力電圧の前記第1の長測定時間の平均値である定常値SAV2を繰り返し算出する状態に切り替わる(定常値算出手段)。そして、算出した変化値SAV1(図4の実線)と定常値SAV2(図4の階段状の細い破線)とを、変化値SAV1を算出する毎に(1ms毎に)比較し、その差eが所定の人なし閾値の範囲(例えば、プラス/マイナス0.3V)以内となったか否か、判定する状態に移行する(判定手段)。
【0046】
人を感知したことで変化値SAV1はその動きに応じて上昇し、最大値となった後に降下に転じるが(図4の実線)、より短い長測定時間の1sで平均された定常値SAV2もそれに追随して段階的に上昇し、下降する変化を示すので、「人あり」判定後にノイズが載ってきた場合にも、後述する「人なし」判定の際の誤判定は予防される。利用者が商品を購入して立ち去ると、変化値SAV1は最大値から降下し、定常値SAV2がそれに近づいていく。
【0047】
但し、両者の差eが時刻t2で人なし閾値の範囲以内となった場合にも、金額表示器側制御装置21は直ぐに「人なし」とは判定せず、それをカウントする。そして、その後の時刻t2、t3、t4、t5、t6で何れも差eが人なし閾値の範囲以内となり、時刻t7で6回目の人なし閾値の範囲以内となった場合、金額表示器側制御装置21は「人なし」と判定する。
【0048】
この「人なし」判定結果は同様に金額表示器側制御装置21から自動販売機側制御装置27に人感センサ感知状態データ(状態情報)として送信される。自動販売機側制御装置27は、金額表示器側制御装置21から送信された人感センサ感知状態データが「人なし」であった場合、自動販売機側制御装置27は照明装置16〜18を消灯する。また、定常値を算出する測定時間も前記第2の長測定時間(32s)に戻す。
【0049】
以上のように本発明では、金額表示器側制御装置21が変化値SAV1を繰り返し算出し(変化値算出手段)、また、定常値SAV2を繰り返し算出しており(定常値算出手段)、その時点の変化値SAV1と直近の定常値SAV2との差が所定の人あり閾値以上となったことに基づいて人を感知したものと判定するようにしているので(判定手段)、ノイズによる誤った人感知を的確に防止し、ノイズに強い自動販売機1とすることが可能となる。
【0050】
これにより、自動販売機1において、ノイズにより自動販売機1の前面側に利用者が到来したものと誤って感知する不都合を効果的に防止し、自動販売機側制御装置27(照明装置制御手段)が、金額表示器側制御装置21(判定手段)が人を感知したものと判定した場合に各照明装置16〜18を点灯する制御を実行する際に、照明装置16〜18の制御を最適に行うことができるようになる。
【0051】
また、人感知識別のためのセンサユニットとして自動販売機1の金額表示器12を採用しているので、センサユニットを自動販売機1に効率よく採用することができるようになると共に、自動販売機1への組み付けも容易となる。
【0052】
更に、本発明の変化値算出手段、定常値算出手段、及び、判定手段として機能する金額表示器側制御装置21を備え、この金額表示器側制御装置21が、通信により人感センサ感知状態データ(状態情報)を自動販売機側制御装置27に送信するようにしているので、金額表示器21(センサユニット)の人感センサ24が感知した情報等を支障無く自動販売機1側に通知し、自動販売機1側における制御に供することが可能となる。
【0053】
特に、金額表示器側制御装置21(変化値算出手段)が、人感センサ24の出力電圧を短測定時間で移動平均することにより、変化値SAV1を算出するようにしているので、人感センサ24が出力する電圧の細かい変化を滑らかにし、それによる誤作動を回避することが可能となると共に、急な変化を捉えやすくなり、また、金額表示器側制御装置21はサンプリング毎に判定する(判定手段)ことになるので、判定動作の分解能が向上し、迅速な人感知識別判定を実現することが可能となる。
【0054】
また、金額表示器側制御装置21(定常値算出手段)に、第1の長測定時間(1s)と当該第1の長測定時間より長い第2の長測定時間(32s)を設定し、常には人感センサ24の出力電圧を第2の長測定時間で平均することで定常値SAV2を算出しており、金額表示器側制御装置21(判定手段)が人を感知したものと判定した後は、人なしと判定するまで人感センサ24の出力電圧を第1の長測定時間で平均することで定常値SAV2を算出するようにしているので、特に、「人なし」から「人あり」への判定の際に、変化値SAV1と定常値SAV2との差が出やすくなり、迅速な「人あり」判定を実現することができるようになる。
【0055】
また、その後も変化値SAV1と定常値SAV2との差eで「人なし」となったか否かの判定を行うことになるので、「人あり」判定後にノイズが載ってくるような場合にも、支障無く人感知識別判定を行うことが可能となる。その場合、金額表示器側制御装置21(判定手段)が、算出したその時点の変化値SAV1と直近の定常値SAV2との差eが、人あり閾値より小さい所定の人なし閾値となったことが複数回(実施例では6回)発生した場合、「人なし」と判定するようにしているので、誤った人なし判定を回避し、「人あり」判定と「人なし」判定を繰り返すことによる照明装置16〜18の頻繁な点灯/消灯を防止することができるようになる。
【実施例2】
【0056】
次に、図6図10を参照して、本発明の他の実施例について説明する。この実施例の場合、金額表示器側制御装置21には、記録長の異なる複数の前記短測定時間が設定されている。例えば金額表示器側制御装置21には第1の短測定時間(16ms)と、それより長い第2の短測定時間(32ms)と、更にそれより長い第3の短測定時間(64ms)が設定されている(第3の短測定時間は実施例1の短測定時間と同一)。
【0057】
そして、金額表示器側制御装置21は、サンプリングした人感センサ24の出力電圧を16回取り込んで移動平均することで、出力電圧の前記第1の短測定時間の移動平均値である第1の変化値SAV11と、出力電圧を32回取り込んで移動平均することで、出力電圧の前記第2の短測定時間の移動平均値である第2の変化値SAV12と、出力電圧を64回取り込んで移動平均することで、出力電圧の前記第3の短測定時間の移動平均値である第3の変化値SAV13を並行して繰り返し算出している(変化値算出手段)。
【0058】
また、前述同様に金額表示器側制御装置21は、人を感知していない状態では、サンプリングした人感センサ24の出力電圧を32000回取り込んで平均することで、出力電圧の前記第2の長測定時間の平均値である定常値SAV2を繰り返し算出している(定常値算出手段)。そして、算出したその時点の各変化値SAV11〜SAV13(図6の三つの実線)と直近の定常値SAV2(図6の破線)とを、変化値SAV1を算出する毎に(1ms毎に)それぞれ比較し、SAV11とSAV2の差e1と、SAV12とSAV2の差e2と、SAV13とSAV2の差e3の全てが前述した所定の人あり閾値(0.6V)以上となったか否か、判定している(判定手段)。
【0059】
この場合、人感センサ24に定常的なノイズが載り、その出力電圧の変化値SAV11〜SAV13が徐々に上昇したとしても、定常値SAV2もノイズによる出力電圧の上昇により段階的に上昇するので、両者の差e1〜e3は大きくならず、前記人あり閾値以上とならないので、ノイズが載って人ありと誤判定する不都合は前述同様に防止若しくは解消される。
【0060】
次に、実際に自動販売機1の外扉3の前に利用者(人)が到来し、人感センサ24の感知範囲内に入ると、人感センサ24の出力電圧は直ぐに上昇するため、図6に示すように先ず最も測定時間が短い第1の変化値SAV11が直ぐに上昇し、その次に短い第2の変化値SAV12が上昇し、その次に短い第3の変化値SAV13が上昇していくことになる。
【0061】
また、人の移動速度が速いとき記録長の異なる各変化値SAV11〜SAV13同士の差、即ち、第1の変化値SAV11と第2の変化値SAV12との差e12と、第1の変化値SAV11と第3の変化値SAV13の差e13と、第2の変化値SAV12と第3の変化値SAV13との差e23も広がっていく。一方、定常値SAV2は32sの平均値であるために直ぐには上昇せず、各差e1〜e3、e12、e13、e23が拡大し、図6の時刻t1で全ての差e1〜e3が人あり閾値以上となり、且つ、差e12、e13、e23が人の動きに基づいて決定された一定範囲内となると(図7に丸で示す)、金額表示器側制御装置21は感知対象物を人と判定し、判定結果を「人あり」とする。
【0062】
このように判定された結果は前述同様に金額表示器側制御装置21から自動販売機側制御装置27に人感センサ感知状態データ(状態情報)として送信される。自動販売機側制御装置27は、金額表示器側制御装置21から送信された人感センサ感知状態データが「人あり」であった場合(利用者が到来の場合)、自動販売機側制御装置27は照明装置16〜18を所定時間(例えば10s)点灯する。
【0063】
金額表示器側制御装置21は、時刻t1で「人あり」と判定した場合、同様にその後はサンプリングした人感センサ24の出力電圧を1000回取り込んで平均することで、出力電圧の前記第1の長測定時間の平均値である定常値SAV2を繰り返し算出する状態に切り替わる(定常値算出手段)。そして、算出した各変化値SAV11〜SAV13(図6の各実線)と定常値SAV2(図6の階段状の破線)とを、各変化値SAV11〜SAV13を算出する毎に(1ms毎に)比較し、その差e1〜e3の全てが前記所定の人なし閾値(0.3V)以内となったか否か、判定する状態に移行する(判定手段)。
【0064】
尚、前記各変化値SAV11〜SAV13同士の差、即ち、第1の変化値SAV11と第2の変化値SAV12との差e12と、第1の変化値SAV11と第3の変化値SAV13との差e13と、第2の変化値SAV12と第3の変化値SAV13との差e23と一定範囲との比較は、後述するように感知対象物が何であるかを判定するために用いるため、一旦「人あり」と判定した後は必ずしも実行しなくてもよいが、実行してもよい。但し、その場合は一定範囲の幅を大きい方向に拡大する必要がある。ここでは実行しないものとする。
【0065】
人を感知したことで各変化値SAV11〜SAV13はその動きに応じて次々と上昇し、最大値となった後に次々と降下に転じるが(図6の各実線)、より短い長測定時間の1sで平均された定常値SAV2もそれに追随して段階的に上昇し、下降する変化を示すので、「人あり」判定後にノイズが載ってきた場合にも、誤判定は予防される。利用者が商品を購入して立ち去ると、第1の変化値SAV11が最大値から降下し、次に第2の変化値SAV12、次に第3の変化値SAV13と続いて降下し、定常値SAV2がそれらに近づいていく。
【0066】
そして、時刻t2で変化値SAV11が先ず人が居ないときの値まで降下し、次に時刻t3で変化値SAV12が同様の値まで降下し、最終的に時刻t4で変化値SAV13も同様の値まで降下して全ての変化値SAV11〜SAV13が人が居ないときの値となる。また、定常値SAV2も段階的に降下していき、時刻t4には変化値SAV11〜SAV13との差e1〜e3が全て人なし閾値以内となる。但し、それらの差e1〜e3が時刻t4で全て人なし閾値以内となった場合にも、同様に金額表示器側制御装置21は直ぐに「人なし」とは判定せず、それをカウントする。そして、その後の時刻t5、t6で何れも差e1〜e3が全て人なし閾値以内となり、時刻t7でこの場合は4回目の人なし閾値以内となった場合、金額表示器側制御装置21は「人なし」と判定する。
【0067】
この「人なし」判定結果は同様に金額表示器側制御装置21から自動販売機側制御装置27に人感センサ感知状態データ(状態情報)として送信される。自動販売機側制御装置27は、金額表示器側制御装置21から送信された人感センサ感知状態データが「人なし」であった場合、自動販売機側制御装置27は照明装置16〜18を消灯する。また、定常値を算出する測定時間も前記第2の長測定時間(32s)に戻す。
【0068】
尚、この実施例において、人感センサ24が対象物として雨を感知した場合を図8図9で説明する。時刻t0で雨が人感センサ24の感知範囲内を落下した場合、対象物が小さく、感知範囲内を短時間で通り過ぎるため、図8の円Pで示すように最も短い第1の短測定時間の第1の変化値SAV11が急速に上昇した後、直ぐに低下するようになる。係る場合、第1の変化値SAV12と定常値SAV2との差e1が人あり閾値以上とならず、また、各変化値同士の差e12、e13、e23も一定範囲内に届かないため(図9にバツで示す)、この時刻t0では金額表示器側制御装置27は「人あり」とは判定しない。これにより、雨による誤感知を排除することが可能となる。そして、その後の時刻t1(図8)で利用者(人)が到来した場合には、以後図6と同様となる。
【0069】
ここで、人感センサ24が対象物として車を感知した場合は、対象物が大きく、移動が速いため、第1の変化値SAV11の変化が図6よりも大きくなり、第2の変化値SAV12や第3の変化値SAV13との差e12、e13が人の場合よりも大きくなる。従って、前述した一定範囲を超えてしまうため、判定はやはりバツとなり、「人あり」判定とはならないことになる。
【0070】
このように、この実施例では金額表示器側制御装置21(変化値算出手段)に長さが異なる複数の短測定時間(第1の短測定時間〜第3の短測定時間)を設定し、人感センサ24の出力電圧を各短測定時間で平均した複数の変化値SAV11〜SAV13を並行して算出すると共に、算出した各変化値SAV11〜SAV13と定常値SAV2との差e1〜e3に基づいて判定するようにしているので、感知した対象物が何であるかも判定可能となる。
【0071】
例えば感知した対象物が雨であった場合、対象物が小さく、感知範囲内を短時間で通り過ぎるため、より短い短測定時間の第1の変化値SAV11が上昇した後、直ぐに低下するようになり、これにより、対象物が雨であると判定することができ、人と雨の識別が可能となる。
【0072】
また、感知した対象物が車であった場合には、対象物が大きく、移動が速いため、第1の変化値SAV11の変化が急峻で、且つ、大きくなり、変化値SAV12、SAV13との差が人の場合よりも大きくなるので、この実施例のように変化値同士の差e12、e13、e23も加味して判定することで、人と車を識別することも可能となり、人感知識別精度を一層向上させることが可能となる。
【0073】
尚、上記各実施例で示した各数値は、それに限定されるものでは無く、自動販売機1の設置場所や環境等に応じて適宜設定されるべきものである。
【符号の説明】
【0074】
1 自動販売機
3 外扉
12 金額表示器(センサユニット)
16〜18 照明装置
21 金額表示器側制御装置
24 人感センサ
27 自動販売機側制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10