特許第6157145号(P6157145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6157145
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】浮上油回収装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/40 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
   C02F1/40 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-34402(P2013-34402)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-161789(P2014-161789A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(72)【発明者】
【氏名】奥 武志
(72)【発明者】
【氏名】北中 良徳
(72)【発明者】
【氏名】山田 家里
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭45−012919(JP,B1)
【文献】 実開昭53−047746(JP,U)
【文献】 特開昭54−128163(JP,A)
【文献】 特開2001−246374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/40
E02B 15/00 − 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内の水面に浮遊する油を回収する浮上油回収装置において、
軸線方向が略水平に前記水槽の側壁に貫設された円筒状の支軸と、
円筒形状の側壁の両端面が閉塞されて中空の有底円筒形状を成し、一方の閉塞された端面が前記支軸の先端に回転可能に取り付けられた円筒体と、
前記円筒体の円筒形状の前記側壁に並んで取り付けられた前記円筒体より小なる直径の円筒状のフロートとにより構成され、
前記フロートが前記水槽に浮いた状態で、前記円筒体の側壁に設けられた開口が、前記円筒体の側壁と並んで取り付けられたフロート側に、フロートの上端位置と同じ高さ位置に備えられ、前記円筒体と前記円筒状の支軸との取り付け部分で互いの内部が連通されていることを特徴とする浮上油回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽内の水面に浮遊する油を回収する浮上油回収装置に関すものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のユニット部品において、特にトランスミッションなどの気密性を有するユニット部品の場合、車両に搭載する前段階で、水槽に溜められた水中にユニット部品を沈めて、気泡が発生するかどうかを目視することで、当該ユニット部品の気密性の良否を判定することが行われている。
【0003】
ところが、このように水中にユニット部品を沈めると、ユニット部品の加工時に付着した油分が水面に浮遊することがあり、浮遊した油が邪魔になって水没したユニット部品からの気泡を目視できなという不都合が生じる。
【0004】
そこで従来、例えば図に示すように、水槽WTに収容した水Qに浮遊して配置された吸引室3を、連結パイプ2を介して真空ポンプ1に連結し、吸引室3の高さの略中央部位に連結板6を固定するとともに、この連結板6の下面にフロート4を固定し、吸引室3の下端部中央に連結具7を設け、この連結具7に錘5を取り付け、吸引室3は、縦長のカプセル状に形成し、吸引室3内の油Pを連結パイプ2に排出せしめる吸引部3Bを吸引室3の上端部に設け、吸引室3の側面には横長状の口唇形状に開口した吸込口3Aを形成し、回収する油Pの油面に吸引口3Aが位置するように予め錘5で調整しておき、水Qの水面に広がる油Pを効率良く吸引室3内に引き込むとともに真空ポンプ1によって吸い上げて真空タンク1Bに回収し、さらに水と油を分離するようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−2379号公報(段落0012〜0017および図1参照)図1図7参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した特許文献1に記載の装置では、油Pを水槽WTから回収するのに、真空ポンプ1を必要とし、真空ポンプ1が非常に高価であるため、装置のコストアップを招くという問題がある。また、水槽WTには、油分を除去した水を水槽WTに還流したり新たに水を追加したりして、水面をほぼ一定に保持する必要があるが、水槽WTからの水オーバーフローを防止するために、水槽WTに別途排水口を加工する必要があり、これも装置のコストアップにつながる。
【0007】
本発明は、安価かつ簡単な構成により、水槽に浮遊する油分を回収できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明の浮遊油回収装置は、水槽内の水面に浮遊する油を回収する浮上油回収装置において、軸線方向が略水平に前記水槽の側壁に貫設された円筒状の支軸と、円筒形状の側壁の両端面が閉塞されて中空の有底円筒形状を成し、一方の閉塞された端面が前記支軸の先端に回転可能に取り付けられた円筒体と、前記円筒体の円筒形状の前記側壁に並んで取り付けられた前記円筒体より小なる直径の円筒状のフロートとにより構成され、前記フロートが前記水槽に浮いた状態で、前記円筒体の側壁に設けられた開口が、前記円筒体の側壁と並んで取り付けられたフロート側に、フロートの上端位置と同じ高さ位置に備えられ、前記円筒体と前記円筒状の支軸との取り付け部分で互いの内部が連通されていることを特徴としている(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、円筒形状の側壁の両端面が閉塞されて中空の有底円筒形状を成す円筒体の側壁に、円筒体より小なる直径のフロートが並んで取り付けられ、円筒体はその一方の端面が円筒状の支軸の先端に互いの内部を連通しつつ回転可能に取り付けられ、支軸はその軸線方向が略水平に水槽の側壁に貫設されているため、フロートの上端位置が略水面と同じ位置を保持するようにフロートの浮力を調整することによって、水面の変動に伴うフロートの上下動により円筒体が回転しても、フロートの上端位置と同じ高さ位置に形成された開口から円筒体内に水面に浮遊する油が水と一緒に侵入し、円筒体内に侵入した油分は、円筒体に内部が連通する支軸内を通って外部に排出されて回収される。
【0010】
このとき、水槽内の水中に自動車のユニット部品を沈めて気密性を確認する場合に、ユニット部品を沈めたときに水面の高さが変動しても、フロートと一緒に円筒体が水面の変動に追従するため、効率よく水面に浮遊する油分が水と一緒に円筒体内に侵入することが許容され、その後油分と水とを分離回収して水のみを水槽内に還流させることによって、水槽内の水が常に略一定量に保持される。
【0011】
したがって、従来のように、高価なポンプを用いることもなく、水槽内の水量を一定に保持するために、オーバーフローする水の排水口を水槽に形成する必要もなく、安価かつ簡単な構成により、水槽の水面に浮遊する油分を水槽外部に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る浮遊油回収装置の一実施形態の斜視図である。
図2】一実施形態の一部の平面図である。
図3】一実施形態の正面図である。
図4】一実施形態の一部の側面図である。
図5】一実施形態の動作説明用の模式図である。
図6】従来例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の浮遊油回収装置の一実施形態について、図1ないし図5を参照して詳細に説明する。
【0014】
本実施形態における浮遊油回収装置は、図1ないし図4に示すように、所定の深さの水槽11と、軸線方向が略水平に水槽11の側壁に貫設された円筒状の金属製支軸12と、円筒状の側壁13aの両端面13b,13cが閉塞された有底かつ中空の筒状体である金属製円筒体13と、円筒体13の側壁13aに並んで取り付けられた円筒体13の直径よりも小なる直径を有する円筒状の金属製フロート14とを備えている。
【0015】
図2に示すように、支軸12の一端が水槽11の側壁を貫通して取り付けられ、貫通部分はパッキン等を介在して複数のボルト15a、ナット15bにより水密状態に締結されている。また、支軸12の他端が、円筒体13の一方端面の中央にベアリング17を挟んだ状態で複数のボルト18aの締結により接合され、ベアリング17により円筒体13が支軸12に同軸で回転可能に取り付けられている。
【0016】
また、特に図1及び図4に示すように、円筒状のフロート14の両端面それぞれを延出した2枚の連結板20,20が、円筒体13の両端面13b,13cそれぞれに一体的に取り付けられている。換言すれば、略「8」字形状、或いは、略「だるま」形状の2枚の連結板20,20が円筒体13およびフロート14それぞれの両端面を成す構造となっている。そして、フロート14が水槽11内の水面に浮いた状態で、円筒体13のフロート14の上端位置と略同じ高さ位置に開口22が形成されており、フロート14の上端位置が略水面と同じ位置を保持するように、フロート14の浮力によるバランスが調整される。
【0017】
このような構成により、水槽11内の水中に自動車のユニット部品を沈めて機密性を確認する場合に、図5(a)および(b)に示すように、ユニット部品を沈めたときに水面の高さが変動しても、フロート14の上下動により、水面の変動に追従して円筒体13が支軸を中心に回転し、開口22を介して円筒体13内に水面に浮遊する油分が水と一緒に円筒体13内に侵入する。
【0018】
また、円筒体13の軸方向が水平から傾斜するような角度変化が生じた場合でも、図5(c)に示すように、フロート14の直径が円筒体13の直径より小さく、フロート14のいずれかの端面側上端から開口22を介して円筒体13内に油分が水とともに侵入し易い構成であるため、効率よく水面に浮遊する油分が水と一緒に円筒体13内に侵入することが許容される。
【0019】
そして、水槽11の外部において油分と水とを分離回収して水のみを水槽11内に還流させる構成を採用することによって、水槽11内の水量を常に略一定に保持することができる。
【0020】
したがって、上記した実施形態によれば、従来のように、高価な真空ポンプを用いることもなく、水槽11内の水量を一定に保持するために、オーバーフローする水の排水口を水槽11に形成する必要もなく、安価かつ簡単な構成により、水槽11の水面に浮遊する油分を回収し水槽11の外部において水と分離することができ、水槽11内の水中に自動車のトランスミッションなどのユニット部品を沈めて気密性を確認する際に、水面の油分・油膜に邪魔されることなくユニット部品から発生する気泡の有無を目視により確実に確認することが可能になる。
【0021】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。
【0022】
上記した実施形態では、円筒体13とした場合について説明したが、四角筒状やその他の多角筒状であって支軸12に回転可能に取り付け可能であればよく、材質も金属製に限らない。
【0023】
また、フロート14は、円筒体13が水面の変動に追従して回転するように取り付けられていればよく、取り付け方はどのようであっても構わない。
【0024】
また、上記した実施形態では、フロート14を中空の有底の金属からなる円筒体形状とした場合について説明したが、形状や材質はこれに限定されるものではない。
【0025】
また、本発明は、上記したようなユニット部品の気密性検査以外の用途にも適用することができるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0026】
11 …水槽
12 …支軸
13 …円筒体(筒状体)
14 …フロート
22 …開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6