(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6157151
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】微細レジストパターン形成用組成物およびそれを用いたパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/40 20060101AFI20170626BHJP
C08L 39/00 20060101ALI20170626BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20170626BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20170626BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20170626BHJP
C08K 3/30 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
G03F7/40 511
C08L39/00
C08K5/42
C08K5/09
C08K3/28
C08K3/30
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-43177(P2013-43177)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2014-170190(P2014-170190A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】511293803
【氏名又は名称】アーゼッド・エレクトロニック・マテリアルズ(ルクセンブルグ)ソシエテ・ア・レスポンサビリテ・リミテ
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】長 原 達 郎
(72)【発明者】
【氏名】關 藤 高 志
(72)【発明者】
【氏名】山 本 和 磨
(72)【発明者】
【氏名】小 林 政 一
(72)【発明者】
【氏名】佐 竹 昇
(72)【発明者】
【氏名】石 井 雅 弘
【審査官】
川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−020211(JP,A)
【文献】
特開2007−057967(JP,A)
【文献】
特表2008−518260(JP,A)
【文献】
特開2007−148272(JP,A)
【文献】
特開2004−212967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/40
C08K 3/28
C08K 3/30
C08K 5/09
C08K 5/42
C08L 39/00
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物を用いてポジ型レジストパターンを形成させる方法において、レジストパターンを太らせることによってパターンを微細化するために用いられる微細パターン形成用組成物であって、
ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、ポリエチレンイミン、およびポリ(アリルアミン−co−ジアリルアミン)からなる群から選択される、繰り返し単位中にアミノ基を含むポリマーと、
溶剤と、
前記ポリマーの全重量を基準として、0.5〜50重量%のスルホン酸、カルボン酸、硫酸、硝酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸と、
を含んでなることを特徴とする微細パターン形成用組成物。
【請求項2】
前記酸が、硫酸、ペンタフルオロプロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記酸が、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−アミノメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、および10−カンファースルホン酸からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記酸が、酢酸、メトキシ酢酸、グリコール酸、グルタル酸、リンゴ酸からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
pHが2以上11以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記溶剤が水を含んでなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
界面活性剤をさらに含んでなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
半導体基板上に化学増幅型フォトレジスト組成物を塗布してフォトレジスト層を形成する工程、
前記フォトレジスト層で被覆された前記半導体基板を露光する工程、
前記露光後に現像液で現像してフォトレジストパターンを形成する工程、
前記フォトレジストパターンの表面に、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、ポリエチレンイミン、およびポリ(アリルアミン−co−ジアリルアミン)からなる群から選択される、繰り返し単位中にアミノ基を含むポリマーと、溶剤と、前記ポリマーの全重量を基準として、0.5〜50重量%のスルホン酸、カルボン酸、硫酸、硝酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸とを含んでなる微細パターン形成用組成物を塗布する工程、
塗布済みのフォトレジストパターンを加熱する工程、および
過剰の微細パターン形成用組成物を洗浄して除去する工程
を含んでなることを特徴とするポジ型レジストパターンの形成方法。
【請求項9】
前記酸が、硫酸、ペンタフルオロプロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸からなる群から選択されるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フォトレジスト組成物が、光酸発生剤をさらに含んでなる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶剤が水を含んでなる、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
界面活性剤をさらに含んでなる、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体等の製造プロセスにおいて、レジストパターンを形成させた後、さらにそれを太らせることにより微細なサイズのレジストパターンを得るための組成物、およびそれを用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、半導体デバイスの製造過程におけるレジストパターンの微細化が求められている。一般的にレジストパターンは、光リソグラフィー技術を用いて、例えば露光されることによってアルカリ性現像液に対する溶解性が高くなるポジ型レジストを用い、レジストを露光した後にアルカリ性現像液を用いて、露光された部分を除去し、ポジ型パターンを形成する。しかし、微細なレジストパターンを安定的に得るためには、露光光源と露光方法に依存する部分が大きく、その光源や方式を提供できる高価で特別な装置や周辺材料が必要であり、莫大な投資が必要となる。
【0003】
このため、従来のレジストパターン形成方法を用いた後、より微細なパターンを得るための様々な技術が検討されている。その中で実用的な方法は、従来の方法で安定的に得られる範囲で形成されたレジストパターンに水溶性の樹脂および必要に応じて添加剤を含む組成物を覆い、レジストパターンを太らせて、ホール径または分離幅を微細化させるものである。
【0004】
このような方法としては、例えば以下のような技術が知られている。
(1)形成されたレジストパターンを酸によって架橋しえる組成物でレジストパターンを覆い、加熱によりレジストパターン中に存在する酸を拡散させ、レジストとの界面に架橋層をレジストパターンの被覆層として形成させ、現像液で非架橋部分を取り除くことでレジストパターンを太らせ、レジストパターンのホール径または分離幅が微細化される方法(特許文献1および2参照)。
(2)形成されたレジストパターンに、(メタ)アクリル酸モノマーと水溶性ビニルモノマーとからなるコポリマーの水溶液をレジストパターンに塗布し、熱処理により、レジストパターンを熱収縮させてパターンを微細化させる方法(特許文献3参照)。
(3)アミノ基、特に1級アミンを含むポリマーを含有する、フォトレジストパターンを被覆するための水溶性被覆用組成物(特許文献4参照)。
【0005】
ここで本発明者らの検討によれば、特許文献4に記載されている、塩基性樹脂を含む組成物を用いてパターンの微細化をした場合、条件によっては十分なパターンの微細化が達成できないことがあった。また場合、微細化された後のパターン表面に、多くの欠陥が見られることもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−73927号公報
【特許文献2】特開2005−300853号公報
【特許文献3】特開2003−84459号公報
【特許文献4】特表2008−518260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような課題に鑑みて、化学増幅型ポジ型フォトレジストを用いたレジストパターンの微細化において、大きなパターン微細化効果を達成しながら、表面における欠陥の発生を抑えることができる組成物、およびそれを用いたパターン形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による微細パターン形成用組成物は、化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物を用いてポジ型レジストパターンを形成させる方法において、レジストパターンを太らせることによってパターンを微細化するために用いられるものであって、
繰り返し単位中にアミノ基を含むポリマーと、
溶剤と
酸と、
を含んでなることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明によるポジ型レジストパターンの形成方法は、
半導体基板上に化学増幅型フォトレジスト組成物を塗布してフォトレジスト層を形成する工程、
前記フォトレジスト層で被覆された前記半導体基板を露光する工程、
前記露光後に現像液で現像してフォトレジストパターンを形成する工程、
前記フォトレジストパターンの表面に、繰り返し単位中にアミノ基を含むポリマーと、溶剤と、酸とを含んでなる微細パターン形成用組成物を塗布する工程、
塗布済みのフォトレジストパターンを加熱する工程、および
過剰の微細パターン形成用組成物を洗浄して除去する工程
を含んでなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パターンが十分に微細化され、表面の欠陥が少ないポジ型フォトレジストパターンを安定して得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明すると以下の通りである。
【0012】
微細パターン形成用組成物
本発明による微細パターン形成用組成物(以下、簡単のために単に「組成物」ということがある)は、繰り返し単位中にアミノ基を含むポリマーと溶剤と酸を含んでなる。本発明において用いられるポリマーは、アミノ基を含むものである。ここでアミノ基は、第一級アミノ基(−NH
2)、第二級アミノ基(−NHR)、および第3級アミノ基(−NRR’)をいう。ここで、アミノ基には、−N=のように窒素が二重結合を介して隣接元素に結合しているものも包含するものとする。これらのアミノ基は、繰り返し単位の側鎖に含まれていてもよいし、ポリマーの主鎖構造中に含まれていてもよい。
【0013】
このようなアミノ基を有する繰り返し単位を含むポリマーは種々のものが知られている。例えば、第一級アミノ基を側鎖に有する繰り返し単位を含むポリマーとしては、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、またはポリ(アリルアミン−co−ジアリルアミン)などが挙げられる。
【0014】
また、アミノ基がポリマー主鎖に含まれるポリマーとして、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミンなどのポリアルキレンイミンが挙げられる。また、主鎖中にアミド結合−NH−C(=O)−として含まれるポリマーも用いることができる。
【0015】
また、窒素原子がひとつの隣接原子と二重結合を介して結合し、もうひとつの隣接原子と単結合を介して結合している構造を有するポリマーを本発明による組成物に用いることもできる。このような構造は、ポリマーの側鎖および主鎖のいずれに含まれてもよいが、典型的には側鎖に複素環構造の一部として含まれる。このような構造を含む複素環としては、イミダゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、またはビピリジン環などが挙げられる。
【0016】
本発明に用いられるポリマーは、上記したようなものから適用するレジストパターンの種類やポリマーの入手容易性などの観点から適切に選択することができる。これらのうち、ポリビニルアミン、ポリビニルイミダゾール、またはポリビニルピロリドンなどは、塗布性およびパターン縮小量において有利な結果が得られるので好ましく用いられる。
【0017】
また、これらのポリマーに対して、本発明の範囲を損なわない範囲でアミノ基を含まない繰り返し単位を含むコポリマーも、本発明による微細パターン形成用組成物に用いることができる。例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコールなどを共重合単位として含むコポリマーが挙げられる。
【0018】
なお、アミノ基を含まない繰り返し単位の配合比が多すぎると、フォトレジスト中の樹脂とポリマーとの親和性が適当に保たれず、本発明による効果が発現しないことがある。このような観点から、アミノ基を含まない繰り返し単位は、ポリマーを構成する重合体単位の50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。
【0019】
また、本発明において用いられる、アミノ基を含むポリマーの分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が一般に5,000〜200,000、好ましくは8,000〜150,000の範囲から選択される。なお、本発明において重量平均分子量とは、ゲル透過クロマトグラフィを用いて測定した、ポリスチレン換算平均重量分子量をいう。
【0020】
繰り返し単位中にアミノ基を含むポリマーはフォトレジストとの親和性が良く、浸透しやすい傾向にある。しかし一方で、微細化プロセスにおいてフォトレジストと組成物層との境界面において、部分脱保護されたフォトレジストを溶解してしまう可能性があり、十分な微細化効果を得られないことがあった。そこでフォトレジスト表面を保護しながら、十分な微細化効果を得ることが望まれていた。本発明においては、組成物中に酸性物質を添加することによって、所望の効果を達成している。
【0021】
一般的な高解像度ポジ型フォトレジスト組成物は、末端基が保護基で保護されたアルカリ可溶性樹脂と光酸発生剤との組み合わせを含んでいる。このような組成物からなる層に紫外線、電子ビーム、またはX線などを照射すると、照射された部分においては光酸発生剤が酸を放出し、その酸により、アルカリ可溶性樹脂に結合した保護基が解離される(以下、脱保護という)。
脱保護されたアルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像液(例:テトラメチルアンモニウム水溶液)に可溶なため、現像処理によって除去できる。
【0022】
しかしながら、現像処理において、脱保護されたアルカリ可溶性樹脂がすべて除去されるわけではなく、フォトレジスト表面近傍には部分的に脱保護されたアルカリ可溶性樹脂が存在する。
【0023】
微細化材料として繰り返し単位中にアミノ基を含むポリマー樹脂を用いるとレジストに対する浸透性が良い傾向にあるが、部分脱保護状態の表面近傍のレジストを溶解してしまうことがある。この場合、微細化プロセスの際、フォトレジストと組成物層との界面近傍において、フォトレジストが現像後に行うリンス処理において、リンス液中に溶出してしまうため、所望の微細化効果が得られなかったり、パターンの荒れを引き起こす場合があった。
【0024】
この現象を回避するためには、レジスト表面近傍に存在する、部分脱保護された樹脂を溶解しない組成物を用いることが考えられる。本発明における組成物は、その要件を満たすために酸を含んでなる。
【0025】
本発明において用いることができる酸の種類はレジストパターンに悪影響を与えないものであれば特に限定されず、無機酸および有機酸から選択することができる。具体的には、有機酸として、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、フタル酸、グルタン酸、クエン酸、フマル酸、メトキシ酢酸、グルコール酸、グルタル酸などのカルボン酸、ならびにメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ペンタフルオロプロピオン酸、または10−カンファースルホン酸などのスルホン酸が好ましいものとして例示できる。これらのうちp−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロプロピオン酸が、水への溶解性が高く、沸点が比較的高いので、製造過程における加熱等の際に被膜中から揮発しにくいので特に好ましい。また、無機酸として、硫酸、硝酸、塩酸、またはリン酸などを用いることができる。これらのうち硫酸または硝酸は、電気特性に強い影響を与える元素を持ち込まないので半導体プロセスへの親和性に優れており好ましい。
【0026】
また、本発明による組成物は、溶剤を含んでなる。溶剤はレジストパターンを溶解しないものであれば特に限定されないが、水を用いることが好ましい。用いられる水としては、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理等により、有機不純物、金属イオン等が除去されたもの、特に純水が好ましい。また、濡れ性などを改良するために少量の有機溶剤を共溶剤として用いてもよい。このような溶剤としてはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、乳酸エチル、酢酸エチル等のエステル等が挙げられる。ここで溶剤は、その組成物が塗布されるレジスト膜を溶解または変性させないものから選択されるべきである。
【0027】
本発明による微細パターン形成用組成物は、前記した通りの特定の構造を含むポリマー酸、および溶剤を含むものである。ポリマーの濃度は対象となるレジストパターンの種類やサイズ、目的とするパターンサイズなどに応じて任意に選択することができる。しかし、前記の特定の構造を含むポリマーの濃度は組成物の全重量を基準として、一般に0.1〜10重量%、好ましくは1.0〜7.0重量%とされる。
【0028】
また、組成物の酸含有率は、組成物中のアミノ基を含むポリマーの全重量を基準として、0.5〜50重量%であることが好ましく、2.5〜30重量%であることが好ましい。
【0029】
また、微細パターン形成用組成物のpHは、一般にpHは2以上11以下が好ましく、更に好ましくは3以上10以下である。pHが2未満または11を超えると、フォトレジストパターンの溶解などが起きることがあり、フォトレジストレジストパターンの表面が荒れてしまうことがあるので、pHは適切に調整することが好ましい。
【0030】
本発明による微細パターン形成用組成物は、必要に応じてその他の添加剤を含むこともできる。このような添加剤としては、界面活性剤、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、および防カビ剤が挙げられる。これらのうち、組成物の塗布性の観点から組成物は界面活性剤を含むことが好ましい。これらの添加剤は原則的に微細パターン形成用組成物の性能には影響を与えないものであり、通常組成物の全重量を基準として一般に1%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.05%以下の含有量とされる。なお、界面活性剤の用いずにレジストパターンの表面を前処理してから微細パターン形成用組成物を塗布することによって、塗布性改良の効果を得ることもできる。
【0031】
パターン形成方法
次に、本発明による微細なレジストパターンの形成方法について説明する。本発明の微細パターン形成用組成物が適用される代表的なパターン形成方法をあげると、次のような方法が挙げられる。
【0032】
まず、必要に応じて前処理された、シリコン基板等の基板の表面に化学増幅型フォトレジストをスピンコート法など従来から公知の塗布法により塗布して、化学増幅型フォトレジスト層を形成させる。化学増幅型フォトレジストの塗布に先立ち、反射防止膜を基板表面に形成させてもよい。このような反射防止膜により断面形状および露光マージンを改善することができる。
【0033】
本発明のパターン形成方法には、従来知られている何れの化学増幅型フォトレジストを用いることができる。化学増幅型フォトレジストは、紫外線などの光の照射により酸を発生させ、この酸の触媒作用による化学変化により光照射部分のアルカリ現像液に対する溶解性を上げてパターンを形成するもので、例えば、光照射により酸を発生させる酸発生化合物と、酸の存在下に分解しフェノール性水酸基或いはカルボキシル基のようなアルカリ可溶性基が生成される酸感応性基含有樹脂からなるもの、アルカリ可溶樹脂と架橋剤、酸発生剤からなるものが挙げられる。
【0034】
基板上に形成された化学増幅型フォトレジスト層は、必要に応じて、例えばホットプレート上でプリベークされて化学増幅型フォトレジスト中の溶剤が除去され、厚さが通常50nm〜500nm程度のフォトレジスト膜とされる。プリベーク温度は、用いる溶剤或いは化学増幅型フォトレジストにより異なるが、通常50〜200℃、好ましくは70〜150℃程度の温度で行われる。
【0035】
フォトレジスト膜はその後、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、軟X線照射装置、電子線描画装置など公知の照射装置を用い、必要に応じマスクを介して露光が行われる。
【0036】
露光後、必要に応じベーキングを行った後、例えばパドル現像などの方法で現像が行われ、レジストパターンが形成される。本発明ではレジストの現像は、アルカリ性現像液を用いて行われる。使用し得る現像液としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、水酸化カリウム水溶液などから任意に選ぶことができる。
現像処理後、リンス液を用いてレジストパターンのリンス(洗浄)が行われることが好ましい。このとき、リンス液には純水を用いることが好ましい。
【0037】
引き続き、本発明による微細パターン形成用組成物を適用してパターンの微細化を行うが、それに先立って、レジストパターンの表面に、レジストパターンを溶解しない水や有機溶剤を塗布することができる。このような処理によって、組成物の塗布性を改良し、組成物を均一に塗布することができる。すなわち、組成物に界面活性剤等の塗布性を改良するための添加剤を用いずに、塗布性を改良することができる。このような処理はプリウエット処理と呼ばれることがある。
【0038】
次いで、このレジストパターンを覆うように本発明による微細パターン形成用組成物を塗布し、レジストパターンと微細パターン形成用組成物との相互作用によって、レジストパターンを太らせる。ここで起こる相互作用は、ポリマーがレジストへ浸透したり、付着したりすることであると考えられ、それによってレジストパターンが太るものと考えられる。
【0039】
すなわちレジストパターンの表面のうち、形成された溝や孔の内壁に本発明による微細パターン形成組成物が浸透または付着などしてパターンが太り、その結果レジストパターン間の幅が狭まり、レジストパターンのピッチサイズまたはホール開口サイズを実効的に限界解像以下に微細化することが可能となる。
【0040】
本発明によるパターン形成方法において、微細パターン形成用組成物を塗布する方法は、例えばフォトレジスト樹脂組成物を塗布する際に従来から使用されている、スピンコート法などの任意の方法を用いることができる。
【0041】
微細パターン形成用組成物が塗布された後のレジストパターンは、必要に応じプリベークされる。プリベークは、一定の温度で加熱することにより行っても、段階的に温度を昇温させながら加熱することによって行ってもよい。微細パターン形成用組成物を塗布した後の加熱処理の条件は、例えば40〜200℃、好ましくは80〜180℃、の温度、10〜300秒、好ましくは30〜120秒程度である。このような加熱は、ポリマーのレジストパターンへの浸透や付着を促進するものである。
【0042】
微細パターン形成用組成物の塗布および加熱後に、レジストパターンは太り、レジストパターンのライン幅は太くなり、ホールパターンの孔径は小さくなる。このような寸法の変化量は、加熱処理の温度と時間、使用するフォトレジスト樹脂組成物の種類などに応じて適宜調整することができる。したがって、レジストパターンをどの程度まで微細化させるか、言い換えればレジストパターンのライン幅をどの程度広げ、ホールパターンの孔径をどの程度小さくすることが必要とされるかにより、これら諸条件を設定すればよい。しかし、レジストパターンの寸法変化量は微細パターン形成用組成物の適用の前後の差が、5〜30nmとするのが一般的である。
【0043】
レジストパターンを実質的に微細化させた後、レジストに対して作用しなかった過剰の微細パターン形成用組成物を、必要に応じて水や溶剤によりリンス処理して除去することができる。このようなリンス処理のために用いられる水または溶剤としては、レジストパターンに浸透または付着した微細パターン形成組成物に対しては溶解性が低く、浸透していないまたは付着していない過剰の組成物に対しては溶解性が高いものが選択される。より好ましいのは、微細パターン形成用組成物に用いられている溶剤、特に純水をリンス処理に用いることが好ましい。
【0044】
このようにして得られたレジストパターンは、現像直後のレジストパターンが微細パターン形成用組成物の作用によってパターンの寸法が変化し、実質的に微細化されている。
そして、本発明による微細化パターン形成用組成物を用いて製造されたレジストパターンは半導体素子の製造に当たって、より微細なパターンを有する半導体素子等の製造に有用なものである。
【0045】
実施例
レジストパターン形成
スピンコーター(東京エレクトロン株式会社製)にて、下層反射防止膜AZ ArF−1C5D(商品名、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を8インチシリコンウェハーに塗布し、200℃にて、60秒間ベークを行い、膜厚37nmの反射防止膜を得た。その上に感光性樹脂組成物AZ AX2110P(商品名、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を、110℃にて60秒間ベークを行い120nmの膜厚を得た。得られたウエハーをArF線(193nm)の露光波長を有する露光装置(株式会社ニコン製)を用いて、マスク(ライン/スペース=1/1)を用いて、1回目のパターン露光を行った。次に、同マスクを、1回目の露光と直交する方向に回転し、2回目の露光を行った。その後110℃にて、60秒間ベークした後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(2.38%)にて30秒間現像処理を行い、ピッチ160nm、ホールサイズ80nmのレジストパターンを得た。
【0046】
微細パターン形成用組成物の調製
微細パターン形成用組成物に用いるポリマーとしてポリスチレン換算重量平均分子量25,000のポリアリルアミンを用意した。このポリマーを純水に溶解し、2重量%の水溶液を得た。さらに界面活性剤として、この水溶液に対して500ppmとなる量のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(下式(1))をくわえた。これを組成物Aとする。
【化1】
【0047】
微細パターン形成用組成物に用いるポリマーとしてポリスチレン換算重量平均分子量30,000のアリルアミン・ジメチルアリルアミン共重合物を用意した。このポリマーを純水に溶解し、2重量%の水溶液を得た。さらに界面活性剤として、この水溶液に対して500ppmとなる量のアセチレン系ジオールポリオキシアルキレンエーテル(下式(2))をくわえた。これを組成物Bとする。
【化2】
【0048】
微細パターン形成用組成物に用いるポリマーとしてポリスチレン換算重量平均分子量70,000のポリビニルイミダゾールを用意した。このポリマーを純水に溶解し、2重量%の水溶液を得た。さらに界面活性剤としてこの水溶液に対して500ppmとなる量のポリオキシエチレン−ラウリルアミン(下式(3))をくわえた。これを組成物Cとする。
【化3】
【0049】
微細パターン形成用組成物に用いるポリマーとしてポリスチレン換算重量平均分子量15,000のポリエチレンオキシド・ポリビニルイミダゾールブロック共重合物(50mol%:50mol%)を用意した。このポリマーを純水に溶解し、2重量%の水溶液を得た。さらに界面活性剤として、この水溶液に対して300ppmとなる量のポリオキシエチレン−モノステアレート(下式(4))をくわえた。これを組成物Dとする。
【化4】
【0050】
微細パターン形成用組成物に用いるポリマーとしてポリスチレン換算重量平均分子量
67,000のポリビニルピロリドンを用意した。このポリマーを純水に溶解し、2重量%の水溶液を得た。さらに界面活性剤として、この水溶液に対して700ppmとなる量のジメチルラウリル―アミンオキシド(下式(5))をくわえた。これを組成物Eとする。
【化5】
【0051】
それぞれの組成物に、各種酸が樹脂に対して5重量%、20重量%、または45重量%となるように添加し試料を調製した。それぞれの組成物を予め用意したレジストパターンにスピンコーター(東京エレクトロン株式会社製)を用いて塗布を行った。各例においてレジスト層の厚さは100nmとした。ここで膜厚はレジスト平坦部分で測定を行って決定した。140℃1分の加熱を行った後、純水を使って過剰の組成物を除去した。乾燥後、欠陥検査装置を使って、処理後のパターン表面に発生した欠陥を調べた。また。微細化組成物によるパターンの微細化量も併せて評価した。得られた結果は以下の表1a〜dおよび2a〜dに示す通りであった。パターン表面の欠陥についての評価の基準は以下の通りとした。
a: 極めて良好
b: 欠陥が見られるものの事実上支障なし
c: 不良
【表1】
【0052】
【表2】
PFPS: ペンタフルオロプロピオン酸
PTS: p−トルエンスルホン酸
TFMS: トリフルオロメタンスルホン酸
【0053】
酸を加えなかった微細化組成物を用いた場合に対して、各種の酸を加えた場合には、パターン表面の欠陥が顕著に改良されており、微細化効果はわずかに低下したものの実用上は問題ないレベルであった。以上の結果より、本発明の組成物においては他の諸性能を損なうことなく、欠陥の発生が抑制されていることが確認できた。