【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題は、ポリアミドマトリックスにも、CNT表面又はグラフェン表面にも結合する特定の二官能性又はオリゴ官能性カップラーの添加により、この炭素変態の分散を改善することにより解決される。
【0016】
従って、本発明の主題は次の成分を含有するポリアミド組成物である:
a) ポリアミド少なくとも40質量部、好ましくは少なくとも50質量部、特に好ましくは少なくとも60質量部、
b) カーボンナノチューブ及びグラフェンの群から選択される導電性炭素 0.15〜25質量部、好ましくは0.2〜8質量部、特に好ましくは0.3〜6質量部、
c) 炭素表面の反応基と反応することができる少なくとも1つの官能基を有し、かつ更にポリアミドの末端基と反応することができる少なくとも1つの官能基を有するオリゴ官能性化合物 0.3〜8質量部、好ましくは0.4〜6質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部、
d) 任意に通常の助剤及び添加剤、
その際、成分a)〜d)の質量部の合計は100である。
【0017】
適切な官能基は、好ましくは、オキサジノン基、オキサゾロン基、オキサゾリン基、イソシアナート基、カルボジイミド基、N−アシルラクタム基、N−アシルイミド基、芳香族又は脂肪族炭酸エステル基、エポキシ基及びカルボン酸無水物基から選択されるが、ただし少なくとも2つの炭酸エステル基を有しかつそれ以外に他の、要求に応じた官能基を有しない化合物並びに少なくとも2つのカルボジイミド基を含有する化合物は、アミノ官能化されたカーボンナノチューブとの組合せにおいてのみ使用されるものとし、及び少なくとも1つのエポキシ基又は少なくとも1つのカルボン酸無水物基を有する化合物は、最大8000g/mol、好ましくは最大5000g/mol、特に好ましくは最大3000g/mol、殊に好ましくは最大2000g/molの数平均分子量M
nを有するものとする。
【0018】
ポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸の組合せから、ω−アミノカルボン酸から、又は相応するラクタムから製造可能である。基本的に、全てのポリアミド、例えばPA6、PA66又はこれらを基礎として、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸から誘導される単位とのコポリアミド(一般にPPAといわれる)、並びにPA9T及びPA10T及びこれらと他のポリアミドとのブレンドを使用することができる。好ましい実施態様の場合に、ポリアミドのモノマー単位は平均して少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個のC原子を有する。ラクタムの混合物から誘導されるモノマー単位の場合には算術平均が計算される。ジアミンとジカルボン酸との組合せの場合には、ジアミンのC原子とジカルボン酸のC原子との算術平均が、好ましい実施態様の場合に少なくとも8、少なくとも9又は少なくとも10でなければならない。適切なポリアミドは、例えば、PA610(ヘキサメチレンジアミン[6個のC原子]とセバシン酸[10個のC原子]とから製造可能、従ってモノマー単位中のC原子の平均はこの場合では8)、PA88(オクタメチレンジアミンと1,8−オクタン二酸とから製造)、PA8(カプリルラクタムから製造)、PA612、PA810、PA106、PA108、PA9、PA613、PA614、PA618、PA812、PA128、PA1010、PA1013、PA10、PA814、PA148、PA1012、PA11、PA1014、PA1212、PA12並びに1,12−ドデカン二酸と4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタンからのポリアミド(PA PACM12)(特に35〜65%のトランス,トランス−異性体割合を有する4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタンを前提とする)である。ポリアミドの製造は先行技術である。もちろん、これらを基礎とするコポリアミドを使用することもでき、その際、場合によりモノマー、例えばカプロラクタムを併用することも可能である。このポリアミドはポリエーテルアミド又はポリエーテルエステルアミドであってもよい。異なるポリアミドの混合物を使用することもできる。
【0019】
カーボンナノチューブは、一般的に、黒鉛層から形成される管状の形状を有する。この黒鉛層は、円筒の軸を中心に同心状に配置されている。カーボンナノチューブは、炭素ナノフィブリルとも言われる。このカーボンナノチューブは、長さ対直径の比の値が少なくとも5、好ましくは少なくとも100、特に好ましくは少なくとも1000である。このナノフィブリルの直径は、一般的に、0.003〜0.5μmの範囲内、好ましくは0.005〜0.08μmの範囲内、特に好ましくは0.006〜0.05μmの範囲内にある。このカーボンナノフィブリルの長さは、一般的には0.5〜1000μm、好ましくは0.8〜100μm、特に好ましくは1〜10μmである。このカーボンナノフィブリルは、中空の円筒状のコアを有する。この中空部は、一般的に0.001〜0.1μmの直径、好ましくは0.008〜0.015μmの直径を有する。このカーボンナノチューブの一般的な実施態様は、前記中空部を取り囲むこのフィブリルの壁部は8つの黒鉛層からなる。更に、この壁部が2つの黒鉛層からなるタイプも得ることができる。このカーボンナノフィブリルは、この場合、複数のナノフィブリルからなる直径1000μmまでの凝集物として存在することができる。この凝集物は、鳥の巣状、櫛で整えられた糸状(gekaemmtem Garn)又は開放したネット構造(offenen Netzstrukturen)の形状を有することができる。カーボンナノチューブの合成は、例えばUS-A 5 643 502に記載されたように、炭素を含有するガスと金属触媒を含有する反応器中で行われる。
【0020】
マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT、multi-walled carbon nanotube)の他に、本発明の場合、シングルウォールナノチューブ(SWCNT、single-walled carbon nanotube)を使用することもできる。SWCNTは、一般的に数ナノメートルの範囲の直径を有するが、その横断面との関連でかなりの長さ、例えば数マイクロメートルの範囲の長さに達する。SWCNTの構造は、単原子の黒鉛層(グラフェン)から誘導され、この単原子の黒鉛層がシームレスな円筒形に巻かれていると考えられる。SWCNTは優れた導電体であることができる。達成可能な電流密度は10
9A/cm
2で、銅又は銀からなる金属ワイヤの場合よりも約1000倍高い。SWCNTの製造は、例えばUS 5 424 054に記載されている。
【0021】
実在するカーボンナノチューブには、繰り返しsp
3混成軌道を有する、従って4つの結合相手を有する炭素原子の列が見られる。円筒部でのアモルファスカーボンの全体の領域(広範囲にわたる秩序なしにsp
2混成軌道並びにsp
3混成軌道による炭素原子の架橋)は、MWCNTの場合に頻繁に見出すことができる。炭素網中の他の欠陥箇所の可能性は不完全な結合である場合がある。これらの空いた結合は高反応性であり、周囲の可能な結合相手と迅速に反応する。従って、カーボンナノチューブの表面に著しい量の酸素基及び窒素基が同定されることも異例ではない。特に欠陥の少ない表面は、2500℃を超える温度で酸素遮断下で加熱することによりこれらの欠陥箇所の修復を行う場合にだけ得られる。
【0022】
この工業的に製造されたCNTは、一般に、大量の不純物を含んでいる。触媒の残りの他に、これは主にアモルファスカーボンである。アモルファスカーボンの割合を低減するために、アモルファスカーボンからなる堆積物がCNT自体よりも酸化に対して不安定であることを利用する。これは、簡単に、空気中で約700℃で加熱することにより行うことができる。それにより、もちろん、CNT表面の所定の官能化、例えばカルボキシル基による官能化は避けられない。
【0023】
更に、表面が適切に官能化された、例えばアミノ基により官能化されたCNTは、市場で入手できる。例えば硝酸を用いた酸化により、他方でカルボキシル基及びヒドロキシル基を付けることができる。
【0024】
グラフェンは、各炭素原子が他の3つの炭素原子に取り囲まれて、蜂の巣状のパターンを形成する二次元構造を有する炭素の変態についての名称である。グラフェンは、構造的には黒鉛と近縁であり、この黒鉛は概念的に複数のグラフェンの層が積み重なっていると考えられる。グラフェンは、黒鉛からの剥離(基本平面での劈開)により大量に得ることができる。このため、酸素を黒鉛格子内へインターカレーションさせ、この酸素を部分的に炭素と反応させ、これらの層の内的な反発力を生じさせる。化学的な還元により、このグラフェンは次の段階で溶液中に懸濁させ、ポリマー中に埋め込むことができる。この還元が徹底して完全な反応にまで行われない場合には、グラフェン中になお酸素含有官能基が含まれる。
【0025】
成分c)のオリゴ官能性化合物は、好ましくは2〜40個、特に好ましくは2〜12個、特に好ましくは2〜6個、さらに特に好ましくは2又は3個の官能基を有する。この上限は、ポリアミドマトリックスと分子的に混合可能であるために、このオリゴ官能性化合物が十分に低分子であることに基づいている。オリゴ官能性化合物が、ポリアミドマトリックス中に単に分散して分布されている場合には、このオリゴ官能性化合物の有効性は限定的であるか又は存在しないことが判明した。この理由から、成分c)のオリゴ官能性化合物は、最大8000g/mol、好ましくは最大5000g/mol、特に好ましくは最大3000g/mol、殊に好ましくは最大2000g/molの数平均分子量M
nを有するのが好ましい。
【0026】
このオリゴ官能性化合物の例は次のものである:
1. 少なくとも2つのオキサジノン基を有する化合物、例えば次の化合物
【化1】
これは公知のように、テレフタロイルクロリドとアントラニル酸とから製造することができる。
【0027】
2. 少なくとも2つのオキサゾロン基を有する化合物、例えば次の化合物
【化2】
これは公知のようにアジピン酸ジクロリドとグリシンとから製造することができる。
【0028】
3. 少なくとも2つのオキサゾリン基を有する化合物、例えば次の化合物
【化3】
これは、イソフタル酸と2−アミノエタノールとから製造することができ、市場で入手することもできる。
【0029】
4. 少なくとも1つのオキサジノン基と少なくとも1つのオキサゾリン基を有する化合物、例えば次の化合物
【化4】
この種の化合物は、DE 100 34 154 A1より製造することができる。
【0030】
5. 少なくとも2つのイソシアナート基を有する化合物、例えば次の化合物
【化5】
このイソシアナート基は、この場合、公知のようにCH反応性、NH反応性又はOH反応性の化合物でキャップされていてもよい。
【0031】
6. 少なくとも2つのカルボジイミド基を有する化合物、例えば
【化6】
R
1及びR
3は、1〜20個のC原子を有するアルキル、5〜20個のC原子を有するシクロアルキル、6〜20個のC原子を有するアリール又は7〜20個のC原子を有するアラルキルであり、
R
2は、2〜20個のC原子を有するアルキレン、5〜20個のC原子を有するシクロアルキレン、6〜20個のC原子を有するアリーレン又は7〜20個のC原子を有するアラルキレンであり、
nは、1〜39である。
【0032】
7. 少なくとも1つのカルボジイミド基と少なくとも1つのイソシアナート基を有する化合物、例えば
【化7】
R
1及びR
3は、イソシアネート基を有する基であり、この基は場合によりCH反応性、NH反応性又はOH反応性の化合物でキャップされている。
R
2は、2〜20個のC原子を有するアルキレン、5〜20個の有するシクロアルキレン、6〜20個のC原子を有するアリーレン又は7〜20個のC原子を有するアラルキレンであり、
nは、1〜37である。
【0033】
8. 少なくとも2つのN−アシルラクタム基を有する化合物、例えば次の化合物
【化8】
【0034】
9. 少なくとも2つのN−アシルイミド基を有する化合物、例えば次の化合物
【化9】
【0035】
10. 少なくとも2つの芳香族又は脂肪族炭酸エステル基を含有する化合物;相応する化合物はWO 00/66650に開示されていて、この文献についてここで全範囲を引用する。この種の化合物は、低分子、オリゴマー又はポリマーであることができる。この種の化合物は、完全にカーボネート単位からなるか又は更に他の単位を有していてもよい。この単位は、好ましくはオリゴアミド又はポリアミド単位、オリゴエステル又はポリエステル単位、オリゴエーテル又はポリエーテル単位、オリゴエーテルエステルアミド単位又はポリエーテルエステルアミド単位又はオリゴエーテルアミド又はポリエーテルアミド単位である。このような化合物は、公知のオリゴマー化法又は重合法によるかもしくは等重合度反応によって製造することができる。
【0036】
好ましい実施態様の場合に、ポリカーボネート、例えばビスフェノールAを基礎とするポリカーボネート、又はこの種のポリカーボネートブロックを有するブロックコポリマーである。
【0037】
11. 少なくとも1つの芳香族又は脂肪族炭酸エステル基並びに少なくとも1つのオキサゾリン基を有する化合物、例えば
、主成分として以下の化合物を有する、4−ヒドロキシ安息香酸の炭酸ジエステルと化合物IIIとからの反応生成物。
【化10】
【0038】
12. 1つだけのイソシアナート基とその他に少なくとも1つの他の要求に応じた基を有する化合物。
【0039】
13. 少なくとも2つのエポキシ基を有する化合物、例えばビスフェノールAのビスグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌラート又はエポキシ樹脂、例えばアラルジット(Araldit)。
【0040】
14. 少なくとも2つのカルボン酸無水物基を有する化合物、例えばピロメリト酸二無水物、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸の二無水物又は低分子量のスチレン−マレイン酸無水物−コポリマー。
【0041】
成分c)の要求に応じた基の中で、
− オキサジノン基は、第1に、ヒドロキシル基又はアミノ基と反応し、
− オキサゾロン基は、第1に、ヒドロキシル基又はアミノ基と反応し、
− オキサゾリン基は、第1に、カルボキシル基と反応し、
− イソシアナート基は、第1に、ヒドロキシル基又はアミノ基及びその他にカルボキシル基とも反応し、
− カルボジイミド基は、第1に、ヒドロキシル基又はアミノ基及びその他にカルボキシル基とも反応し、
− N−アシルラクタム基は、第1に、ヒドロキシル基又はアミノ基と反応し、
− N−アシルイミド基は、第1に、ヒドロキシル基又はアミノ基と反応し、
− 芳香族又は脂肪族炭酸エステル基は、第1に、アミノ基と反応し、
− エポキシ基は、第1に、アミノ基、及びその他にヒドロキシル基又はカルボキシル基とも反応し、並びに
− カルボン酸無水物基は、第1に、アミノ基及びその他にヒドロキシル基とも反応する。
【0042】
公知の反応性に基づいて、オリゴ官能性化合物c)の選択は、一方でCNT又はグラフェンの表面にどの官能基を提供し、他方でポリアミド鎖の末端にどの官能基を提供するかに依存する。ポリアミド鎖は、カルボキシル末端であるかアミン末端である。カルボキシル基とアミノ基との割合は、公知のように、モノアミン、モノカルボン酸又は好ましくはジアミン又はジカルボン酸の調整によって調節することができる。
【0043】
最も簡単な場合には、成分c)のオリゴ官能性化合物は、ポリアミド、CNTもしくはグラフェンと一緒に、場合により助剤及び添加剤と一緒に溶融物の形で直接混合することができる。これは、CNT又はグラフェンがすでにマスターバッチとしてポリアミド中に存在するが成分c)が存在しない実施態様を含める。他の場合には、ポリアミド及び場合による残りの成分の不在での、成分c)と導電性炭素との予備反応が好ましい。好ましい実施態様の場合に、官能基を有するCNT又はグラフェン、前記官能基と反応する適切な成分c)及び好ましくはこれと相補的に反応しない末端基を有するポリアミドとを有するマスターバッチを製造し、このマスターバッチをその後に適切な反応性の末端基を有するポリアミド中に混入する。例えば、カルボキシル基を有するCNTと、2つのオキサゾリン基を有する化合物、例えば化合物IIIと、カルボキシル末端基よりも本質的に多いアミノ末端基を有するポリアミドとからなるマスターバッチである。このオキサゾリン基は、部分的にカルボキシル基と反応するが、アミノ末端基とは反応しない。次の段階で、このマスターバッチを、カルボキシル基の実質的な割合を有するポリアミド中に混入し、この場合、前記ポリアミドとの結合が行われる。
【0044】
このマスターバッチは、マスターバッチ100質量部に対してそれぞれ、好ましくは3〜25質量部、特に好ましくは4〜22質量部、特に好ましくは5〜20質量部の導電性炭素を有する。
【0045】
成分a)〜c)の他に、ポリアミド組成物は、更に所定の特性を調節するために必要な助剤又は添加剤を成分d)として含有することができる。このための例は、耐衝撃性を変性するゴム、他のポリマー、例えばポリフェニレンエーテル、ABS又はポリオレフィン、可塑剤、着色剤、顔料又は染料、例えば二酸化チタン、硫化亜鉛、ケイ酸塩又は炭酸塩、難燃剤、加工助剤、例えばロウ、ステアリン酸亜鉛又はステアリン酸カルシウム、離型剤、ガラスビーズ、ガラス繊維、酸化防止剤、UV吸収剤、HALS安定剤又は滴下防止剤(Antidrippingmittel)である。他のポリマーの添加は、ポリアミドが連続相であり、好ましくはマトリックスを形成するように決定される。
【0046】
可能な実施態様の場合に、このポリアミド組成物は、可塑剤を1〜25質量%、特に好ましくは2〜20質量%、殊に好ましくは3〜15質量%含有する。
【0047】
ポリアミドの場合の可塑剤及びその使用は公知である。ポリアミドに適している可塑剤に関する一般的な概要は、Gaechter/Mueller著、Kunststoffadditive, C. Hanser Verlag, 第2版、296頁から推知できる。
【0048】
可塑剤として適した通常の化合物は、例えばアルコール成分中に2〜20個のC原子を有するp−ヒドロキシ安息香酸のエステル又はアミン成分中に2〜12個のC原子を有するアリールスルホン酸のアミド、好ましくはベンゼンスルホン酸のアミドである。
【0049】
可塑剤として、特にp−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、p−ヒドロキシ安息香酸オクチルエステル、p−ヒドロキシ安息香酸−i−ヘキサデシルエステル、トルエンスルホン酸−n−オクチルアミド、ベンゼンスルホン酸−n−ブチルアミド又はベンゼンスルホン酸−2−エチルヘキシルアミドが挙げられる。
【0050】
本発明によるポリアミド組成物は、個々の成分から好ましくは混練する装置中で好ましくは溶融混合によって製造される。
【0051】
可能な実施態様の場合に、ポリアミド組成物は、10
0〜10
11Ωcmの範囲、好ましくは10
1〜10
9Ωcmの範囲の比体積抵抗を有し、この場合、10
6Ωcm及びそれを越える範囲ではDIN IEC 60093により測定し、10
6Ωcm未満の範囲ではEN ISO 3915により測定される。
【0052】
本発明によるポリアミド組成物は、好ましくはポリアミド成形材料である。この成形材料は粉末であることができ、この粉末は例えば表面被覆又は積層式に構築する方法、例えばレーザー焼結、マスク焼結(Maskensintern)又は選択的吸収焼結(Selektives Absorbing-Sintering;SAS)を用いて作業するラピッドプロトタイピングのために利用される。
【0053】
本発明によるポリアミド成形材料からは、先行技術の全ての通常の方法、例えば押出、同時押し出し、ブロー成形又は射出成形により、成形品を製造及び加工することができる。この場合、「成形品」の概念とは、平面状の成形体、例えばシート又はプレートであると解釈される。得られた成形品も同様に本発明の主題である。
【0054】
意外にも、成分c)の添加により、カーボンナノチューブ又はグラフェンにより引き起こされる電気散逸作用又は導電性を更に改善することができることが見出された。パーコレーション挙動の改善により、全体として少量の比較的高価なカーボンナノチューブ又はグラフェンが必要となるだけである。
【0055】
分散を改善し並びにカーボンナノチューブ又はグラフェンの濃度を低減することができることにより、この成形材料から製造された成形品は、改善された表面品質を有し、この表面品質は顕微鏡を用いて又は摩擦係数の測定又は光沢度の測定により決定できる。
【0056】
更に、多くの場合に、本発明による成形材料から製造された成形品の衝撃強さ又はノッチ付衝撃強さは、成分c)を含有しない組成物と比較して改善されている。同様のことが引張強度についても当てはまる。
【0057】
本発明によるポリアミド成形材料からなる成形品は、良好な機械特性との関連で良好な伝導性が要求されるところ、例えば、自動車、航空機、電子機器の工業分野において並びに通信技術、安全技術及び軽量化技術において広範囲に使用される。例示する適用として、露出保護された(exgeschuetzt)空間用の機器スイッチ、帯電防止ケーシング、燃料フィルタ、燃料導管並びにコネクタが挙げられる。