(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6157174
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】対象物に印刷を行うシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20170626BHJP
B05B 12/00 20060101ALI20170626BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20170626BHJP
B05B 13/04 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
B25J13/08 A
B05B12/00 A
B05C5/00 101
B05B13/04
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-71360(P2013-71360)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-202781(P2013-202781A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年12月1日
(31)【優先権主張番号】10 2012 006 370.9
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ベアナート バイアー
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ エアンスト
(72)【発明者】
【氏名】ヘルゲ グラント
(72)【発明者】
【氏名】ハイナー ピッツ
【審査官】
木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−514234(JP,A)
【文献】
特開2005−246248(JP,A)
【文献】
特開2003−159817(JP,A)
【文献】
特開平09−001483(JP,A)
【文献】
特開昭61−100805(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0253728(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0259110(US,A1)
【文献】
特開昭62−188350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/08
B05B 12/00
B05B 13/04
B05C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物(2)の表面(3)の少なくとも1つの非平面の領域に画像を印刷する、対象物に印刷を行うシステムであって、
ノズル(7)を有するインクジェット印刷ヘッド(4)と、
ロボット(5)であって、該ロボット(5)は、一次運動(17)を生ぜしめ、一次運動(17)は、前記インクジェット印刷ヘッド(4)の、側方に相並んで位置する少なくとも2つの印刷軌道(A,B)を形成する、ロボット(5)と、
前記ロボット(5)とは別個に設けられたアクチュエータであって、前記印刷軌道(A,B)が側方で互いに隣接するように前記各印刷軌道(A,B)の縁に位置する印刷点(9)の間隔を補整するため、前記一次運動(17)に対してほぼ垂直な二次運動を形成するアクチュエータと、を備えることを特徴とする、対象物に印刷を行うシステム。
【請求項2】
二次運動を形成する前記アクチュエータは、前記インクジェット印刷ヘッド(4)を前記ロボット(5)に対して相対運動させるピエゾアクチュエータ(10)であり、二次運動(16)は、前記インクジェット印刷ヘッド(4)の運動である、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
二次運動を形成する前記アクチュエータは、前記ノズル(7)のノズル支持体(7’,7’’)を前記ロボット(5)に対して相対運動させるピエゾアクチュエータ(10)であり、二次運動(16)は、前記インクジェット印刷ヘッド(4)の少なくとも1つのノズル(7)の運動である、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
二次運動を形成する前記アクチュエータは、前記ノズル(7)を前記ロボット(5)に対して相対運動させるピエゾアクチュエータ(10)であり、二次運動(16)は、前記インクジェット印刷ヘッド(4)のノズル(7)の少なくとも1つの滴(9)の運動である、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
第1の印刷軌道(B)の印刷点(9)の実際位置を把握する検出器(13)と、
印刷点の目標位置からの印刷点の実際位置のずれを算出する計算機(19)と、を備え、
二次運動を形成する前記アクチュエータは、二次運動(16)として、第2の印刷軌道(A)において前記ずれをほぼ解消する補整運動を形成する、請求項2から4までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項6】
前記ロボット(5)は、ジョイントアーム・ロボットであり、
前記ジョイントアーム・ロボットのジョイント(5a,5b,5c)の角度位置を把握する少なくとも1つの回転角度センサ(12a,12b,12c)を備える、請求項1から4までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
前記検出器(13)は、光学センサ(13)又は超音波センサを備え、該光学センサ(13)又は超音波センサは、前記対象物(2)の前記表面(3)に向けられている、請求項5記載のシステム。
【請求項8】
前記光学センサ(13)は、前記表面(3)上の既に印刷された印刷点に向けられていて、印刷点の蛍光放射光を把握する、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
前記検出器(13)は、追跡システムを備え、該追跡システムは、前記インクジェット印刷ヘッド(4)の位置を把握する、請求項5記載のシステム。
【請求項10】
対象物(2)の表面(3)の少なくとも1つの非平面の領域に画像を印刷する、対象物に印刷を行うシステムであって、
ノズル(7)を有するインクジェット印刷ヘッド(4)と、
ロボット(5)であって、該ロボット(5)は、一次運動(17)を生ぜしめ、一次運動(17)は、前記インクジェット印刷ヘッド(4)の、側方に相並んで位置する少なくとも2つの印刷軌道(A,B)を形成する、ロボット(5)と、
第1の印刷軌道(B)の印刷点(9)の実際位置を把握する検出器(13)と、
印刷点の目標位置からの印刷点の実際位置のずれを算出する計算機(19)と、
前記計算機(19)と前記インクジェット印刷ヘッド(4)とを接続するデータ接続部(6)と、を備え、
前記データ接続部(6)は、前記インクジェット印刷ヘッド(4)の個々の前記ノズル(7)用の信号線路を有しており、
前記計算機(19)は、前記各ノズル(7)に対して相対的な、印刷したい像の、前記ずれをほぼ解消する側方の変位を生ぜしめるための修正値を算出し、
前記計算機(19)は、前記対象物(2)の表面(3)に前記像を印刷するため、前記一次運動(17)に対してほぼ垂直な方向に位置する前記ノズル(7)を選択するように、前記データ接続部(6)を介して前記信号線路に前記修正値を送信することを特徴とする、対象物に印刷を行うシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の表面の少なくとも1つの非平面の領域に画像を印刷する、対象物に印刷を行うシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術において、既に、対象物の表面の非平面の領域、例えば車両の車体の湾曲した部分にインクジェット印刷ヘッドにより印刷を行い、印刷を行う場合に、任意の多色の画像を表面上に形成することが知られている。このために、ロボット、例えばジョイントアーム・ロボットに設けられた印刷ヘッドが対象物の表面に沿って表面に対して所定の間隔を置いて案内されるので、印刷ヘッドから吐出されるインク滴は、表面上の所望の箇所に着弾し、そこで所望の像を形成する。対象物の表面は、通常、印刷ヘッドの延伸長さよりもはるかに大きいので、印刷ヘッドを複数回いわゆる印刷軌道上で表面に沿って案内し、相並んで位置する印刷軌道から所望の印刷像を形成する必要がある。この場合、印刷軌道の縁に視認可能な障害が形成されないように、印刷軌道を相互に隣接させる必要もある。例えば第2の印刷軌道が第1の印刷軌道に対して過度に大きな間隔を置いて形成される場合、両方の印刷軌道の間に、認識可能な、所望の印刷像を損なうストリップが生じることがある。同じく、両方のストリップが過度に広く重なり、これにより同様に認識可能な、所望の印刷像を損なう恐れがあるストリップが両方の印刷軌道の間に生じることがある。印刷像におけるそのような障害は、例えば印刷ヘッド案内機構が十分な精度を有しない場合に生じることがある。さらに障害は、例えば印刷ヘッドが運動中に遠心力に曝されており、その結果吐出される滴が表面上の所望の位置に位置決めされない場合にも、生じることがある。
【0003】
例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10202553号明細書において、噴霧ノズルを備える塗布装置を、対象物、例えば地上建築物、地表(地下)建築物及び技術建築物の対象物の表面に沿って、手動で、半自動式に又は全自動式に運動させ、その際に任意の像を表面に塗布することが公知である。先ず対象物表面が認識され、デジタル化され、そして印刷したいデジタル像が仮想に重畳される。塗布装置により表面に印刷を行う際に、塗布装置の位置を精確に知る必要がある。このために一連の測定法、例えば距離及び/又は角度測定技術、遠隔測定技術又は結像測定技術の方法が提案される。このような方法では、位置測定値の位置エラーは、限界値検査に用いられ、位置エラーが許容閾値外にある場合、インキが送り出されない。
【0004】
さらに、同一出願人によるドイツ連邦共和国特許公開第10390349号明細書において、インキ塗布要素の所定の位置で相応のインキ又はラッカが既に完全に塗布されている場合にはインキ着けが中断されることが記載されている。
【0005】
このような構成の代わりに、ドイツ連邦共和国EP特許の翻訳文第69005185号明細書及び米国特許出願公開第2004/0036725号明細書には、インクジェット印刷ヘッドのインク滴の滴下速度及び滴サイズに、印刷ヘッドのピエゾアクチュエータに印加されるパルスのその都度の種類を介して影響を及ぼす2つの方法が記載されている。例えばパルス長さ、パルス高さ(電圧)及びパルス形状は様々に変化される。前掲米国特許文献には、例えばどのようにしてプレパスルにより、実際のパルスにより発生させられるインク滴のサイズや飛翔方向にも所望に影響を及ぼすことができるのか記載されている。これにより、個々のインク滴をノズル開口から斜めに吐出して、したがって印刷したい対象物の表面の、そのようなプレパルスがない場合に得られる箇所とは別の箇所で表面を塗布することができる。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3140486号明細書には、対象物、例えばガラス瓶をプラスチックで被覆する装置が記載されている。被覆するために、被覆装置は、分配して配置された複数のノズルを有するノズルヘッドを備え、ノズルからプラスチックが連続する滴の形で吐出される。さらに駆動手段が設けられており、この駆動手段は、対象物の被覆したい表面とノズルヘッドとの間の相対運動をもたらす。相対運動の方向に関して、ノズルは、隣り合うノズルから吐出されるプラスチックの痕跡が対象物上で重なり合うように、配置されている。しかしそのような重なりは、前述のように、過度に高いインキ塗布値により印刷像に視認可能な障害をもたらす恐れがあり、したがって所望の印刷像に不都合に働く。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開3737455号明細書において、車体に塗料パターン、例えばストリップを形成する装置及び方法が公知である。塗料塗布は、印刷ヘッドにより行うことができ、印刷ヘッドは、ここでもロボットにより印刷したい対象物の表面に沿って案内される。印刷ヘッドは、複数の噴霧ノズルを備え、その時点で作動している噴霧ノズルの数及び配分が変化されることにより、印刷したいストリップの幅を変化させることができる。印刷ヘッドがロボットにより全体的に移動させられるとき、ストリップの位置は、印刷ヘッドの運動に対して直交する方向に変化させることができる。さらに、それぞれ異なる数の噴霧ノズルが作動させられることにより、ストリップの位置を変化させることができる。これによりストリップ位置の精密制御を達成することができる。精密制御は、ロボットによる制御に重畳され、ストリップの塗布に関する改善をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10202553号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許公開第10390349号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国EP特許の翻訳文第69005185号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0036725号明細書
【特許文献5】ドイツ連邦共和国特許出願公開第3140486号明細書
【特許文献6】ドイツ連邦共和国特許出願公開3737455号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような背景技術から出発して、本発明の課題は、対象物の表面の少なくとも1つの非平面の領域に像を印刷する、対象物に印刷を行うシステムを改良して、複数の印刷軌道で表面に印刷を行う際にストリップ形成を防止するか、又は少なくとも、残留するストリップが障害として認識されない程度まで低減するものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明によれば、対象物の表面の少なくとも1つの非平面の領域に画像を印刷する、対象物に印刷を行うシステムであって、以下の構成:ノズルを有するインクジェット印刷ヘッドと、ロボットであって、ロボットは、一次運動を生ぜしめ、一次運動は、インクジェット印刷ヘッドの、側方に相並んで位置する少なくとも2つの印刷軌道を形成する、ロボットと、装置であって、装置は、二次運動を生ぜしめ、二次運動は、一次運動に対してほぼ垂直に行われ、これにより印刷軌道が側方で互いに隣接する、装置と、を備える。
【0011】
好適には、二次運動を形成する装置は、ピエゾアクチュエータを備え、二次運動は、インクジェット印刷ヘッドの運動である。
【0012】
好適には、二次運動を形成する装置は、ピエゾアクチュエータを備え、二次運動は、インクジェット印刷ヘッドの少なくとも1つのノズルの運動である。
【0013】
好適には、二次運動を形成する装置は、ピエゾアクチュエータを備え、二次運動は、インクジェット印刷ヘッドのノズルの少なくとも1つの滴の運動である。
【0014】
好適には、二次運動を形成する装置は、検出器を備え、検出器は、第1の印刷軌道の印刷点の実際位置を把握し、二次運動を形成する装置は、計算機を備え、計算機は、印刷点の目標位置からの印刷点の実際位置のずれを算出し、二次運動を形成する装置は、二次運動として、第2の印刷軌道においてずれをほぼ解消する補整運動を形成する。
【0015】
好適には、二次運動を形成する装置は、少なくとも1つの検出器を備え、ロボットは、ジョイントアーム・ロボットであり、検出器は、回転角度センサを備え、回転角度センサは、ジョイントアーム・ロボットのジョイントの角度位置を把握する。
【0016】
好適には、検出器は、光学センサ又は超音波センサを備え、光学センサ又は超音波センサは、対象物の表面に向けられている。
【0017】
好適には、光学センサは、表面上の既に印刷された印刷点に向けられていて、蛍光放射光を検出する。
【0018】
好適には、検出器は、追跡システムを備え、追跡システムは、インクジェット印刷ヘッドの位置を把握する。
【0019】
好適には、二次運動を形成する装置は、検出器を備え、検出器は、第1の印刷軌道の印刷点の実際位置を把握し、二次運動を形成する装置は、計算機を備え、計算機は、印刷点の目標位置からの印刷点の実際位置のずれを算出し、二次運動を形成する装置は、二次運動として、各ノズルに対して相対的な、印刷したい像の、ずれをほぼ解消する側方の変位を生ぜしめる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るシステムに二次運動を形成する装置を設けることにより、好適には、一次運動中のインクジェット印刷ヘッドの位置のずれ、つまりエラーのない像の印刷のための目標位置からの実際位置のずれを補整することができるようになり、これにより、印刷軌道の間の視認可能でしたがって不都合なストリップを防止するか、又は十分な程度に低減することができる。この場合、印刷軌道が側方で互いに隣接するとは、個々の印刷軌道の縁が精確に相並んで位置し、縁の間に過度に大きな間隔も過度に大きな重なりも形成されず、これにより、印刷軌道の縁の領域に、不都合な、特に過度に明るい又は過度に暗いストリップが防止されるか、又は十分な程度に低減される、ということを意味する。この場合、ロボットが形成する一次運動は、好適には、例えば側方で相並んで位置する複数の印刷軌道を同一方向又は逆方向に通走するインクジェット印刷ヘッドの運動である。例えば、第1の印刷軌道は、対象物の表面の上方で印刷ヘッドが前進運動する際に形成することができ、第1の印刷軌道に隣接する第2の印刷軌道は、第1の印刷軌道の隣の印刷ヘッドが後退運動する際に形成することができる。さらに、印刷ヘッドを先ず非作動状態で後退案内し、第1の印刷軌道に対して平行に再び前進運動させてもよい。ロボットは、ジョイントアーム・ロボット又は門型ロボットであってよい。
【0021】
本発明に係るシステムの好適な態様によれば、二次運動を形成する装置は、ピエゾアクチュエータもしくは電子機械要素を備え、二次運動は、インクジェット印刷ヘッドの運動である。この場合、ピエゾアクチュエータは、インクジェット印刷ヘッド全体に作用し、かつインクジェット印刷ヘッドが一次運動に対して垂直に補整運動として二次運動を行うように働く。
【0022】
本発明に係るシステムの別の好適な態様によれば、二次運動を形成する装置は、ピエゾアクチュエータを備え、二次運動は、インクジェット印刷ヘッドの少なくとも1つのノズルの運動である。したがってこの改良態様によれば、印刷ヘッドの全体ではなく、単に少なくとも1つのノズルが一次運動に対して垂直に運動させられる。この場合、少なくとも1つのノズル、1つのノズル群又は全てのノズルが可動にインクジェット印刷ヘッドに収容されていてもよく、その結果、ピエゾアクチュエータによる二次運動は、インクジェット印刷ヘッドに関する相対運動として行われる。
【0023】
別の好適な改良態様によれば、二次運動が印刷ヘッドの全体にも印刷ヘッドの個々のノズルにも及ぼされず、本発明に係るシステムの好適な改良態様によれば、二次運動を形成する装置は、ピエゾアクチュエータを備え、二次運動は、インクジェット印刷ヘッドのノズルの少なくとも1つの滴の運動である。この場合、ピエゾアクチュエータは、滴を形成するピエゾアクチュエータではなく、これとは異なる別個のピエゾアクチュエータである。
【0024】
本発明に係るシステムの別の好適な改良態様は、二次運動を形成する装置が検出器を備え、検出器は、第1の印刷軌道の印刷点の実際位置を把握すること、二次運動を形成する装置が計算機を備え、計算機は、印刷点の目標位置からの印刷点の実際位置のずれを算出すること、及び、二次運動を形成する装置が二次運動として第2の印刷軌道においてずれをほぼ解消する補整運動を形成すること、において優れている。換言すると、(生じ得る不都合なストリップを)補整する二次運動は、既に印刷された印刷点からの目標値−実際値比較に基づいて行われる。
【0025】
別の好適な改良態様によれば、二次運動を形成する装置は、少なくとも1つの検出器を備え、ロボットは、ジョイントアーム・ロボットであり、検出器は、回転角度センサを備え、回転角度センサは、ジョイントアーム・ロボットのジョイントの角度位置を把握する。ジョイントアーム・ロボットが複数のジョイントを備える場合、好適には、各ジョイントに1つの検出器が設けられており、その結果、ロボットの空間的な位置及びロボットに収容された印刷ヘッドの空間的な位置は、実際位置として、精確に特定することができる。この実際位置が所定の目標位置からずれると、ロボットの後案内を行うことができる。この後案内は、(生じ得る不都合なストリップを)補整する二次運動として働く。印刷ヘッドの座標を空間的に、及び場合によっては時間的な順序でも特定するために、択一的に、加速度センサ、傾斜センサ、ジャイロメータを用いてもよい。
【0026】
さらに本発明に係るシステムの別の好適な改良態様によれば、検出器は、光学センサ又は超音波センサを備え、光学センサ又は超音波センサは、対象物の表面に向けられている。センサは、例えば表面上に既に予め印刷された像の印刷点を把握し、そこから予め印刷された印刷軌道の縁を特定することができる。この場合、少なくとも印刷ヘッドの縁の近くのノズルのインキに、簡単に検出器により検知することができるインキが用いられると好適である。この場合、例えば蛍光特性を有し、その蛍光を検出器により高精度で把握することができる特別な添加物をインキに用いることが特に好適である。したがって本発明に係るシステムの別の好適な改良態様によれば、光学センサは、表面上の既に印刷された印刷点に向けられていて、印刷点の蛍光放射光を把握する。このようにして、予め印刷された軌道の縁を精確に把握して、なお印刷したい軌道の縁を検出された縁に対して精確に調整し、これにより不都合なストリップ形成を中断するか又は低減することができる。
【0027】
また本発明に係るシステムの別の好適な改良態様によれば、インクジェット印刷ヘッドの位置を把握する追跡システムが用いられる。したがって印刷ヘッドの空間的な目下の実際位置に関する情報が常に存在し、空間的に(生じ得る不都合なストリップを)補整する二次運動の形で常に修正運動を行うことができる。この場合、追跡システムは、印刷ヘッドの特定の点又は印刷ヘッドのマークを追跡し、その空間的な軌道を求める。択一的に、印刷ヘッドに3つのレーザポインタが位置し、レーザポインタの(好適には相互に直交して延びる)ビームは、周りを囲む壁又は特別に設けられた検出シールド上に光点を形成する。この光点の運動は、カメラ技術的に把握することができる。そこから印刷ヘッドの目下の位置を算出することもできる。
【0028】
さらに本発明に係るシステムの別の好適な改良態様によれば、二次運動を形成する装置は、検出器を備え、検出器は、第1の印刷軌道の印刷点の実際位置を把握し、二次運動を形成する装置は、計算機を備え、計算機は、印刷点の目標位置からの印刷点の実際位置のずれを算出し、二次運動を形成する装置は、二次運動として、ノズルに対して相対的な、印刷したい像の、ずれをほぼ解消する側方の変位を形成する。この改良態様における利点は、二次運動に際して印刷ヘッドの構成要素が運動させられず、単に像の変位が行われることにあり、像の変位は、印刷点が、第1のノズルではなく、例えば第1のノズルの隣の第2のノズルにより印刷されるように、行われる。これにより、印刷点が1つまたは複数の印刷ノズルだけ変位されて対象物の表面に到達する、ということが達成される、その際、印刷ヘッド又はノズル自体を運動させる必要はない。その際、質量を運動させる必要がないので、そのような補整運動は、極めて迅速に実現されるだけでなく、必要な計算機の計算容量に応じて実時間でも実現される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係るシステムの好適な態様を示す概略図である。
【
図2】本発明に係るシステムの好適な1つの態様の一部を示す概略図である。
【
図3】本発明に係るシステムの好適な1つの態様の一部を示す概略図である。
【
図4】本発明に係るシステムの好適な1つの態様の一部を示す概略図である。
【
図5】本発明に係るシステムの好適な1つの態様の一部を示す概略図である。
【
図6】本発明に係るシステムの好適な1つの態様の一部を示す概略図である。
【
図7】本発明に係るシステムの好適な1つの態様の一部を示す概略図である。
【
図8】本発明に係るシステムの好適な1つの態様の一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の実施の形態を、図示の態様に基づいて詳説する。
【0031】
図1には、非平面の表面3を有する三次元的な対象物に印刷を行うシステム1が示されている。システムは、印刷ヘッド4を備え(例えばSpectra Galaxy JA256/80 AAA)、印刷ヘッド4は、ジョイントアーム・ロボット5(例えばKuka KR 60−3)に収容されている。図示の態様では、ロボット5は、3つのジョイント5a,5b,5cを備え、ジョイント5a,5b,5cにより、ロボット5は、印刷ヘッド4を、対象物2の表面3に沿って移動させる。さらに、印刷ヘッド4は、塗料接続部及びデータ接続部6を介して、塗料貯蔵部及び計算機に接続されている。したがって接続部6は、塗料供給管路を備え、さらに印刷ヘッド4の個々のノズル7用の信号線路を備える。
【0032】
さらに
図1には、印刷ヘッド4が位置4’で対象物2の表面に印刷軌道Aを印刷することが示されている。印刷軌道Aを印刷する際に、ロボット5及び印刷ヘッド4の運動は、例えば図平面に垂直に図平面に向かって又は図平面から外へ向かって行われる。さらに、印刷ヘッドが予め位置4’’で対象物2の表面3に印刷軌道Bを印刷したことが示されている。印刷軌道Bを印刷する際にも、印刷ヘッド4は、例えば図平面に向かって又は図平面から外へ向かって移動する。両方の印刷軌道A,Bは、表面3上の位置8において印刷軌道A,Bの各縁で両方の印刷軌道の間に印刷されないストリップ及び重畳されたストリップが生じないように隣接している。個々の印刷軌道A,Bは、それぞれ1つの通走プロセスで印刷する(シングルパス)か又はそれぞれ複数の通走プロセスで印刷(マルチパス)することができる。
【0033】
ロボット5及びロボット5に収容された印刷ヘッド4は、実際の目標位置からずれて、したがって印刷軌道Aは、印刷軌道Bに対して所定の間隔を置いて塗布されるか又は印刷軌道Bに重畳されることがある。両方の場合、視認可能でしたがって障害となるストリップ形成が位置8に生じることがある。しかし、そのような障害は、本発明において回避することができる。以下の
図3〜
図8において、丁度そのようなエラーを回避するか又は低減する、本発明に係るシステムの好適な改良態様が示されている。
【0034】
先ず
図2において、改めて、そのようなエラーがどのようにみられるのか相応に拡大して示されている。両方の位置4’,4’’における印刷ヘッド4並びに印刷軌道A,Bの個々の印刷点9(もしくはAM又はFMスクリーニングの場合の印刷像の網点)が示されている。印刷軌道Aにおける印刷点の間の平均的な間隔D1と、印刷ウェブBにおける印刷点の間の平均的な間隔D2とはそれぞれほぼ同一であり、これに対して印刷軌道A,Bのそれぞれの縁における両方の印刷点9の間の間隔D3は間隔D1,D2よりも大きいことが看取される。相応に印刷された対象物2の観察者には、両方の印刷軌道Aと印刷軌道Bとの間の移行領域に、印刷像に不都合な影響を及ぼす明るいストリップが認められる。滴による印刷点が印刷ヘッド4のノズル7から到来し、これらの滴はノズルと表面3との間の所定の間隔、例えば約1センチメートルの間隔を超えて飛翔して移動する必要があるので、表面3上の印刷点9の位置を正確に予測することはできない。その点において、間隔D1,D2,D3は、単に平均値としてみなされている。印刷軌道A,Bの印刷点を密に置くこともでき、これによりベタ面を形成することができる。
【0035】
具体的で好適な態様:表面2上の滴9の滴サイズ(平均直径)は、約100マイクロメートルである。滴9の相互間隔も、同じく約100マイクロメートルである。着弾点の様々な態様及びロボット5の軌道精度も、同じく約100マイクロメートルである。したがってこのオーダーの二次運動の形成を介して、不都合なストリップ形成を低減するか又は防止することができる。
【0036】
図3において、印刷ヘッド4を備えた本発明に係るシステムが看取され、
図3のシステムでは、印刷ヘッド4とロボット5のホルダ19との間にピエゾアクチュエータ10が配置されており、印刷ヘッド4は、ピエゾアクチュエータ10によりロボット5もしくはホルダ19に対して相対運動可能である。ピエゾアクチュエータ10は、印刷ヘッド4の接続部6を介して制御信号を受け取り、制御信号は、二次運動16(
図1参照)として補整運動が行われるようにする。この補整運動は、ピエゾアクチュエータ10の振動の結果として、印刷ヘッド4の変位11をもたらすので、各印刷軌道A,Bの両方の縁に位置する印刷点9は、縁に位置する両方の印刷点の間隔が各印刷軌道の印刷点の平均間隔に一致するように、相互に接近して位置する。ピエゾアクチュエータ10の制御信号は、計算機から供給され、計算機は、目下特定される印刷ヘッドの実際位置及び印刷ヘッド4の目標位置から必要な変位11を算出し、相応の制御信号をピエゾアクチュエータ10に送信する。このために必要な実際位置は、検出器を介して把握(検出)することができる。このために例えば回転角度センサ12a,12b,12c(
図1参照)を設けてよく、回転角度センサ12a,12b,12cは、ジョイント5a,5b,5cのそれぞれの角度位置を把握し、そこから印刷ヘッド4の目下の実際位置を求めることができる。
【0037】
ピエゾアクチュエータ10の振動は、滴の着弾点もしくは印刷点9の様々な態様を形成する。様々な態様は、好適には、好適な例では10〜100マイクロメートルのオーダーにあってよい。この振動は、ホワイトノイズに相当する。振動は、時間に関して周期的であってもよいが、もちろん印刷点9を形成するクロック周波数に対して非整数比になければならない。
【0038】
二次運動16が印刷ヘッド4の平面、例えばその下面上に位置する場合には、ピエゾアクチュエータ10による印刷ヘッド4の妨害の振幅は、滴の着弾点の様々な態様の振幅に相当する。
【0039】
図4には、別の態様が示されており、
図4の態様では、ピエゾアクチュエータ10は、印刷ヘッド4にではなく、個々のインクジェットノズル7用のノズル支持体7’とホルダ19との間に配置されている。ピエゾアクチュエータ10には、同じく計算機から制御信号が供給される。ピエゾアクチュエータ10は、ノズル支持体7’の相対運動として補整運動を可能にするので、各印刷軌道A,Bの縁に位置する印刷点9は、ストリップのない印刷のための所望の間隔を有する。
【0040】
図5に示された態様もまたピエゾアクチュエータ10を備える。しかしこのピエゾアクチュエータ10は、1つしかノズル7を有しないノズル支持体7’’に配置されている。このノズル7は、印刷軌道Aの縁に位置することになる印刷点9を印刷する。印刷ヘッド4の目標位置に関して実際位置を補整するための相応の制御信号によりピエゾアクチュエータ10は案内され、補整運動として二次運動16が形成される。ノズル7の二次運動により、ノズルにより印刷される印刷点9は、隣り合う印刷軌道Bの対応する印刷点9に対して所定の間隔を占めるので、両方の印刷軌道A,Bの間にストリップのない印刷が実現される。
【0041】
図6に示されている態様も同様にピエゾアクチュエータ10を備える。しかしこのピエゾアクチュエータ10は、ノズルヘッド4の縁に位置するノズル7に連結されており、ピエゾアクチュエータ10の作動時に、相応の制御信号に基づいて、このノズルにより印刷したい印刷点9が斜めに変位され、このようにして、予め印刷された印刷軌道Bの隣り合う印刷点9に対する間隔がストリップのない印刷のために修正される。
図6に示されているように、特別な構成で設けられたピエゾアクチュエータ10により、印刷軌道Aの印刷点9を形成するインキ滴の飛翔方向に影響が及ぼされ、滴下が印刷ヘッド4の下面に対してほぼ垂直に行われるのではなく、90°とは異なる角度で行われる。このような構成では、修正された印刷点9により実際に生じ得るストリップの低減が行われ、新たなストリップが印刷軌道Aの内側に形成されないことが、考慮されている。このことは、与えられた状況下で、印刷軌道Aの印刷点9が、印刷点9の左側でも右側でも(
図6に示された図示に関して)ストリップが印刷点の間の変化された間隔により看取されない程度に変位されることより、達成される。ピエゾアクチュエータは、連続する滴の飛翔軌道(及び/又はサイズ)の統計学的な変動を形成するために用いてもよい。これにより不都合なストリップを低減するか又は回避する印刷軌道の縁の非シャープ化が得られる。
【0042】
図7には、本発明に係るシステムの別の好適な態様が示されている。
図7の態様では、追加的にカメラ13が用いられる。予め印刷された印刷軌道Bの、縁に位置する印刷点9’は、特別なインキで印刷されている。このインキは、例えば特別な添加剤を含み、この添加剤は、励起することができ、蛍光性を有する。カメラ13及び場合によってはカメラ13に前置されたバンドパスフィルタ14により、縁に位置する印刷点9’の蛍光を把握することができる。図示していない計算機にカメラ13が線路15を介して接続されており、計算機は、印刷軌道Bにおいて縁に位置する個々の印刷点9’の位置から印刷軌道Bの縁を求め、そこから印刷軌道Aを印刷する際の印刷ヘッド4の二次運動16の修正値を求めることができる。この修正値は、
図1に示された接続部6を介して、二次運動を導入する装置に提供することができる。そのような装置は、例えば
図3〜
図6に示された、それぞれピエゾアクチュエータ10を備えた態様であってよい。
【0043】
別の好適な態様は、
図8に示されている。図示された印刷ヘッド4は、印刷軌道Aを印刷する際に、予め既に印刷された印刷ウェブBに対してある程度重畳して案内される。修正がない場合にノズル7bにより印刷される印刷点9aは、今や修正値を用いて、隣のノズル7aにより印刷される。これにより印刷点9aは、予め印刷された印刷軌道Bの縁に位置する印刷点9に近づき、これによりストリップのない印刷が実現される。このために必要な修正では、例えばカメラ13(
図7に示されたように)による検出を用いることができる。カメラにより把握された印刷軌道Bの縁は、図示していない計算機により、ノズル及び印刷点の割り当ての修正に用いられる。例えば修正のない場合に両方の印刷軌道の縁に位置する印刷点の間に過度に大きな間隔が存在することが確認される場合、印刷軌道Aの印刷点は、印刷軌道Bの印刷点に近づけられる。このことは、例えば
図8において印刷点9a及び両方のノズル7a,7bについて変位11により示され、上述されたように、印刷点がそれぞれ隣のノズルにより印刷されることにより行うことができる。これに対して、各印刷軌道A,Bの印刷点が過度に大きく重畳されたことが確認される場合、印刷点は、修正により、逆向きに移動され、つまり印刷軌道Aの印刷点は隣のノズルにより印刷され、その結果、印刷軌道Bに対する間隔が拡大される。
【0044】
択一的な構成によれば、印刷ヘッドは、マルチパス運転で印刷する際に、それぞれ異なる速度を有する様々な通走プロセスで運動させられ、これにより滴の飛翔軌道の様々な構成に基づいて二次運動が形成される。
【0045】
別の択一的な構成によれば、マルチパス運転で印刷する際に、縁の領域で、全ての印刷点が第1の通走プロセスで印刷されるものではない。第1の通走プロセスの印刷点の間の隙間は、第2の通走プロセス又は更なる通走プロセスに際して満たされる。したがって印刷軌道A及び印刷軌道Bは、ある程度互いに重なり合い、印刷軌道Aと印刷軌道Bとの間に真っ直ぐな縁が存在しない。
【符号の説明】
【0046】
1 システム、 2 対象物、 3 表面、 4 印刷ヘッド、 4’ 位置、 4’’ 位置、 5 ロボット、 5a〜5c ジョイント、 6 接続部、 7 ノズル、 7’ ノズル支持体、 7’’ ノズル支持体、 8 位置、 9 印刷点、 9a 印刷点、 9b 印刷点、 10 ピエゾアクチュエータ、 11 変位、 12a〜12dc 回転角度センサ、 13 カメラ、 14 バンドパスフィルタ、 15 接続部、 16 二次運動、 17 一次運動、 18 装置、 19 ホルダ、 A 印刷軌道、 B 印刷軌道、 D1 間隔、 D2 間隔、 D3 間隔