(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車体に形成された乗降口を開閉するスライド式扉の外側下部に設けられ、スライド式扉の開閉により、乗降口とプラットホームとの間にスロープ板を掛け渡す鉄道車両の乗降口渡し板装置であって、
スライド式扉に開閉方向に沿って固定された起伏用ラックと、
車体に設けられて、当該起伏用ラックに係脱自在に噛合する受動ピニオンを有する連動ギヤ機構と、
乗降口の下部に沿って配置されて前記連動ギヤ機構により回転され、前記スロープ板の基端部を支持する起伏軸と、
スライド式扉と前記起伏用ラックと連結分離可能な連結分離機構と、を具備し、
前記連結分離機構は、起伏用ラックが、スライド式扉が閉鎖位置と倒伏完了位置の間で受動ピニオンが噛み合うストロークに形成され、かつスライド式扉が倒伏完了位置と開放側との間で開閉移動する時に、起伏用ラックが受動ピニオンに離脱、噛合可能であり、前記閉鎖位置から倒伏完了位置までスライド式扉が移動した時の開放距離が、乗客が乗降口を乗降できない距離内に設定された
ことを特徴とする鉄道車両の乗降口渡し板装置。
車体に形成された乗降口を開閉するスライド式扉と、当該スライド式扉の外側下部に倒伏自在に設けられたスロープ板を具備し、スライド式扉の開閉動作により、スロープ板を起伏させて乗降口とプラットホームとの間に掛け渡す鉄道車両の乗降口渡し板装置であって、
車体に、スライド式扉の開閉方向に沿って所定範囲で移動自在に設けられた起伏用ラックと、
車体に設けられて、前記起伏用ラックに噛合する受動ピニオンを有する連動ギヤ機構と、
乗降口の下部に沿って配置され、前記連動ギヤ機構により回動されて、基端部を中心に前記スロープ板を起立姿勢と倒伏姿勢の間で起伏可能な起伏軸と、
スライド式扉と前記起伏用ラックと連結分離可能な連結分離機構と、を具備し、
前記連結分離機構は、スライド式扉が、閉鎖位置と倒伏完了位置の間で開閉される時にスライド式扉と前記起伏用ラックを連結し、起伏完了位置から開放側で開閉される時にスライド用扉と前記起伏用ラックを分離するように構成され、前記閉鎖位置から倒伏完了位置までスライド式扉が移動した時の開放距離が、乗客が乗降口を乗降できない距離内に設定された
ことを特徴とする鉄道車両の乗降口渡し板装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の乗降用スロープは車内床面に設けられるので、客室スペースが犠牲にされるとともに、車内に設けられたスイッチ操作により、乗務員が乗降用スロープを操作するとき乗客の安全に配慮しなければならない。また、別途、乗降用スロープを乗降口側にスライドさせるシリンダ装置が必要であり、任意に乗降用スロープを使用状態にスライド、起伏させることができることから、乗降扉が開放時のみ、乗降用スロープをスライドおよび起伏させる安全装置も必要となり、制御装置も必要となる。
【0005】
本発明の目的は、このような課題を解決するもので、乗降扉の駆動力を利用することで駆動装置や制御装置も不要で、安全かつ確実に使用可能な鉄道車両の乗降口渡し板装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載の発明は、
車体に形成された乗降口を開閉するスライド式扉の外側下部に設けられ、スライド式扉の開閉により、乗降口とプラットホームとの間にスロープ板を掛け渡す鉄道車両の乗降口渡し板装置であって、
スライド式扉に開閉方向に沿って固定された起伏用ラックと、
車体に設けられて、当該起伏用ラックに係脱自在に噛合する受動ピニオンを有する連動ギヤ機構と、
乗降口の下部に沿って配置されて前記連動ギヤ機構により回転され、前記スロープ板の基端部を支持する起伏軸と、
スライド式扉と前記起伏用ラックと連結分離可能な
連結分離機構と、を具備し、
前記
連結分離機構は、起伏用ラックが、スライド式扉が閉鎖位置と倒伏完了位置の間で受動ピニオンが噛み合うストロークに形成され、かつスライド式扉が倒伏完了位置と開放側との間で開閉移動する時に、起伏用ラックが受動ピニオンに離脱、噛合可能であり、前記閉鎖位置から倒伏完了位置までスライド式扉が移動した時の開放距離が、乗客が乗降口を乗降できない距離内に設定された
ことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、
スロープ板が起伏軸に回動自在に支持されるとともに、当該スロープ板と前記起伏軸との間にばね部材が介在されたスロープ板連動機構を設け、
前記スロープ板連動機構は、倒伏時に、スロープ板が前記ばね部材のばね力に抗して自重により倒伏され、起立される時に、前記ばね部材により、スロープ板がプラットホームから押し上げる起立方向に回動付勢するように構成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の構成において、
スロープ板を、プレート本体と、当該プレート本体に出退自在に支持された出退プレートとで構成し、
スロープ板が起立された時に出退プレートを後退させ、スロープ板が倒伏された時に出退プレートを突出させるスロープ出退機構を設け、
当該スロープ出退機構は、スライド扉の開閉動作により駆動されることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、
車体に形成された乗降口を開閉するスライド式扉と、当該スライド式扉の外側下部に倒伏自在に設けられたスロープ板を具備し、スライド式扉の開閉動作により、スロープ板を起伏させて乗降口とプラットホームとの間に掛け渡す鉄道車両の乗降口渡し板装置であって、
車体に、スライド式扉の開閉方向に沿って所定範囲で移動自在に設けられた起伏用ラックと、
車体に設けられて、前記起伏用ラックに噛合する受動ピニオンを有する連動ギヤ機構と、
乗降口の下部に沿って配置され、前記連動ギヤ機構により回動されて、基端部を中心に前記スロープ板を起立姿勢と倒伏姿勢の間で起伏可能な起伏軸と、
スライド式扉と前記起伏用ラックと連結分離可能な
連結分離機構と、を具備し、
前記
連結分離機構は、スライド式扉が、閉鎖位置と倒伏完了位置の間で開閉される時にスライド式扉と前記起伏用ラックを連結し、起伏完了位置から開放側で開閉される時にスライド用扉と前記起伏用ラックを分離するように構成され、前記閉鎖位置から倒伏完了位置までスライド式扉が移動した時の開放距離が、乗客が乗降口を乗降できない距離内に設定されたことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の構成において、
スロープ板が起伏軸に回動自在に支持されるとともに、当該スロープ板と前記起伏軸との間にばね部材を有するスロープ板連動機構を設け、
前記スロープ板連動機構は、スロープ板がプラットホームに架け渡された倒伏姿勢で、前記ばね部材により、スロープ板の先端部をプラットホームに押し付ける方向に付勢するように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、乗降口渡し板装置は、車体の外側に設置され、スライド式扉が閉鎖位置と倒伏完了位置で開閉されると、スライド式扉の開放動作により移動する起伏用ラックにより、受動ピニオンを介して連動ギヤ機構を連動させ、起伏軸を介してスロープ板を倒伏・起立させることができる。これにより、スロープ板を、起立姿勢の収納状態から倒伏姿勢の使用状態として、乗降口とプラットホームの間に架け渡すことができる。そして、
連結分離機構は、起伏用ラックに受動ピニオンを分離・噛合させる簡単な構成ですみ、またスロープ板の起伏動作に、駆動装置や制御装置も不要で、安全かつ確実な鉄道車両の乗降口渡し板装置を提供することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、スロープ板を起立させる時に、スロープ板連動機構のばね部材のばね力を利用して、倒伏姿勢のスロープ板を押し上げることができるので、スロープ板の起立動作をスムーズに行える。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、スロープ板を、プレート本体から出退プレートを出退させる二段出退式とし、スライド式扉の開閉動作により出退プレートを出退させることができる。これにより、起立姿勢のスロープ板を短くできてコンパクトに構成でき、または倒伏姿勢のスロープ板の長さを長くできて、乗降口とプラットホームのあらゆる条件に対応することができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、乗降口渡し板装置は、車体の外側に設置され、スライド式扉が閉鎖位置と倒伏完了位置で開閉されると、スライド式扉の開放動作により移動する起伏用ラックにより、起伏用ピニオンを介して連動ギヤ機構を連動させ、起伏軸を介してスロープ板を倒伏・起立させることができる。これにより、スロープ板を、起立姿勢の収納状態から倒伏姿勢の使用状態として、乗降口とプラットホームの間に架け渡すことができる。したがって、スロープ板の起伏動作に、駆動装置や制御装置も不要で、安全かつ確実な鉄道車両の乗降口渡し板装置を提供することができる。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、スロープ板連動機構により、スロープ板と起伏軸との間に介装されたばね部材を利用して、倒伏姿勢のスロープ板をプラットホームに押し付けることができる。したがって、乗降口とプラットホームとの間の段差が変動しても、確実に追従して、スロープ板をプラットホームに確実に掛け渡すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施例1]
本発明に係る鉄道車両の乗降口渡し板装置の実施例1を
図1〜
図5に基づいて説明する。
【0018】
この乗降口渡し板装置1は、鉄道車両の車体2で、両開き式(または片開き式)の乗降用のスライド式扉3を有する乗降口2aの外側下部に設けられており、スライド式扉3の開閉時に閉鎖位置と倒伏完了位置との間の起伏動作距離L/2を移動する間に、スライド式扉3の開閉動作(開閉動力)を利用して、起立姿勢のスロープ板5を倒伏させて先端部をプラットホームPHに着地させ、または倒伏姿勢のスロープ板5を起立させて収納するものである。ここで、「起伏動作距離L」は、閉鎖位置から乗客が通過できない距離(たとえば両開き式で両スライド式扉3のそれぞれの移動距離が閉鎖位置から10cm前後、合計距離、20cm前後)をいう。
【0019】
以下、乗降口渡し板装置1の詳細を説明する。
乗降口渡し板装置1は、スライド式扉3の開閉方向に沿って車体2に回動自在に支持された起伏軸4と、この起伏軸4にスロープ板連動機構21を介して支持されたスロープ板5と、スライド式扉3の下部に設けられた連動アーム9と、スライド式扉3の下部で車体2に所定範囲でスライド自在に支持された起伏用ラック6と、連動アーム9と起伏用ラック6とを連結分離可能な連結分離機構10と、起伏用ラック6に噛合される受動ピニオン11を介して起伏軸4を回転駆動する連動ギヤ機構7と、を具備している。
【0020】
連動アーム9は、スライド式扉3の所定位置から垂下された垂直部9aと、垂直部9aの下端から扉閉動方向に折れ曲がる水平部9bを有するL字形に形成されている。そして、連動アーム9の水平部9bに対向して、起伏用ラック6がガイド部材6aを介してスライド式扉3の開閉方向にスライド自在に配置されている。そして、起伏用ラック6の開放側と連動アーム9の水平部9bの間に、
図5に示す連結分離機構10が設けられている。
【0021】
(連結分離機構)
連結分離機構10は、
図5に示すように、連動アーム9の水平部9b先端に、扉開閉方向に直交する乗降方向の支軸31を介して、係脱用フック(係合部材)32が上下方向に回動自在に支持されている。この係脱用フック32は、支軸31から扉閉動方向に伸びさらに下方に折り曲げられた係合爪(係合部)32aと、支軸31から下方に伸びる離脱爪(離脱部)32bと、を有している。そして係脱用フック32は、支軸31に設けられたフック付勢ばね33により下方(係合爪32aが後述の係合溝34に係合する方向、
図4時計回り)に回動付勢されている。一方、起伏用ラック6には、係脱用フック32の係合爪32aが係合可能な係合溝(被係止部)34が形成されている。また車体2(固定側)で連動アーム9の下部に、前記起伏限位置から開放限まで、離脱爪32bが乗り上げて摺接し係脱用フック32を離脱姿勢で保持する段付き部35が、開放初期位置からスライド式扉3の開放限の範囲に設けられている。この段付き部35の入口端に、離脱爪32bの乗上げをスムーズに行うように、円弧状のアール部35aが形成されている。なお、連結分離機構10を、カム溝とカムフォロワ、係脱用フック32により構成することもできる。
【0022】
したがって、
図5(a)〜(c)に示すように、係脱用フック32が起伏用ラック6の係合溝34に係合した状態で、スライド式扉3と共に起伏用ラック6が全閉の位置から開方向に移動する。車体2側に設けられた段付き部35に離脱爪32bが当接して乗り上げると、係脱用フック32が上方に回動して係合爪32aが係合溝34から離脱される。これにより、連結分離機構10が解除されて、連動用アーム9が起伏用ラック6から切り離され、係脱用フック32が離脱した姿勢のまま、スライド用扉3が開放限まで移動される。
【0023】
反対に、スライド式扉3が全開の状態から閉方向に移動すると、
図5(c)〜(a)の順に、係脱用フック32のり離脱爪32bが段付き部35から離脱されて、フック付勢ばね33により係脱用フック32の係合爪32aが起伏用ラック6の係合溝34に係合されるとともに、連動アーム9の水平部9bにより起伏用ラック6が押され、全閉位置まで移動する。
【0024】
なお、連結分離機構10を、カム溝とカムフォロワ、係脱用フック32などにより構成することもできる。
(連動ギヤ機構)
連動ギヤ機構7は、
図1〜
図3に示すように、車体2の支持部材2bに回転自在に支持された垂直方向の受動軸12と、この受動軸12に固定されて起伏用ラック6側面のラック歯に噛合する受動ピニオン11と、受動軸12の上端部に取り付けられた第1傘歯車13と、支持部材2aに回転自在に支持されて起伏軸4に平行な中間軸15と、この中間軸15の右端部に取り付けられて第1傘歯車13に螺合する第2傘歯車14と、中間軸15の左端部に取り付けられた駆動歯車16と、起伏軸4の右端部に取り付けられて駆動歯車16と螺合する受動歯車17とを備えている。そして、連動ギヤ機構7は、
図3に示すように、車体2に設けられたケーシング18に収容される。
【0025】
(スロープ板連動機構)
起伏軸4とスロープ板5は、スロープ板連動機構21を介して軸支されている。スロープ板5は、たとえば金属板を用いて略平板状に形成され、その基端部に円筒状の連結筒部5aが設けられており、この連結筒部5aと起伏軸4にスロープ板連動機構21を介して所定範囲で回動自在に装着される。
【0026】
スロープ板連動機構21は、連結筒部5aと起伏軸4の両端側にそれぞれ設けられており、
図4に示すように、スロープ板5を倒伏側に回動付勢するねじりコイルばね(ばね部材)22と、連結筒部5aの回動を規制する回動規制部23を具備している。連結筒部5aには、周方向の長穴25が回動許容角αの範囲に形成されている。一方、起伏軸4には、長穴25に移動自在に嵌合する規制ピン24が突設され、連結筒部5aが起伏軸4に回動許容角αの範囲で回動自在に軸支されている。また、ねじりコイルばね22は、一端部が起伏軸4に連結され、他端部がスロープ板5側、たとえば連結筒部5aに連結され、スロープ板5をプラットホームPHに押し付ける矢印A方向に回動付勢している。これにより、
図4(a)に示すように、収納時は、ねじりコイルばね22によりA方向に付勢され、規制ピン24が長穴25の一端部に当接されて、スロープ板5が起立姿勢に保持される。
【0027】
次にスロープ板連動機構21の動作を説明する。
1)スライド式扉3が開動されると、連動ギヤ機構7により、起伏軸4がA方向に回転され、ねじりコイルばね22の作用により、連結筒部5a(スロープ板5)が起伏軸4に追従して倒伏される。そして、起伏軸4が起伏角β分回動されると、スロープ板5がプラットホームPHに着地される。
【0028】
2)起伏軸4がさらにA方向に増締角γ分、回動され、規制ピン24が長穴25に沿って移動し、回動許容角α分を超えると、規制ピン24が長穴25の他端部に当接される。
3)起伏軸4がさらにA方向に増締角γ(増締角γ<回動許容角α)分回転されて停止される。これにより、ねじりコイルばね22が締め付けられて、大きい加圧力でスロープ板5をプラットホームPHに押し付け、起伏軸4の回転が停止される。ここで、起伏軸4の全回転角δは、起伏角β+増締角γであり、増締角γ<回動許容角αに設定される。
【0029】
4)スライド式扉3が閉じられると、連動ギヤ機構7により、起伏軸4が反A方向に回動許容角α分回動されると、規制ピン24が長穴25に沿って移動し、長穴25の一端部に当接される。
【0030】
5)起伏軸4がさらに反A方向に回転されると、連結筒部5aを介して倒伏姿勢のスロープ板5が上方に回動されてプラットホームPHから離れ、さらに起立方向に回動されて、スロープ板5がスライド式扉3に沿う起立姿勢で収納される。
【0031】
(乗降口渡し装置の動作)
スライド式扉3が閉じられてスロープ板5が収納された起立姿勢からスライド式扉3が開き始めると、連結分離機構10を介して連動アーム9に接続されている起伏用ラック6が、スライド式扉3と共に開動方向に移動する。これにより、連動ギヤ機構7の起伏用ラック6に噛合された受動ピニオン11が回転駆動され、受動軸12が回転される。この受動軸12により、第1傘歯車13、第2傘歯車14を介して中間軸15が回転され、さら駆動歯車16および受動歯車17を介して起伏軸4が回転される。さらにスロープ板連動機構21を介して、スロープ板5が下方に回動され、その先端部がプラットホームPHに当接される。
【0032】
このように、起伏軸4の回転が、プラットホームPHに当接した後、増締角γだけ継続されることにより、あらゆる高さのプラットホームPHにスロープ板5の先端部を確実に当接させることができる。さらにねじりコイルばね22が増し締めされることにより、大きい加圧力でスロープ板5をプラットホームPHに押し付けて確実に着地させることができる。
【0033】
起伏用ラック6は、スライド式扉3が開方向に、たとえば100mm移動したところで、連結分離機構10によってアーム9から分離される。そして起伏用ラック6を切り離した一方のスライド式扉3は所定の全開位置まで移動する。このように、スライド式扉3の開動初期時に、スロープ板5がプラットホームPHに倒伏されて降ろされるので、乗降客が乗降可能な位置までスライド式扉3が開いたときには、乗降客は確実にプラットホームPHに下ろされたスロープ板5を使用することができる。
【0034】
上記実施例1によれば、乗降口渡し板装置1は車体2の外側に設置され、閉鎖位置の起立姿勢から倒伏完了位置の倒伏姿勢まで、スライド式扉3の開放動作に連動して、連動ギヤ機構7を介してスロープ板5を倒伏させ、スロープ板5を乗降口2aとプラットホームPHの間に架け渡すことができる。したがって、スロープ板5の起伏動作に、駆動装置や制御装置も不要で、安全かつ確実な鉄道車両の乗降口渡し板装置を提供することができる。
【0035】
またスロープ板5と起伏軸4との間に介装されたねじりコイルばね22により、倒伏姿勢のスロープ板5をプラットホームPHに押し付けるように構成したので、乗降口2aとプラットホームPHとの間の段差が変動しても、確実に追従して、スロープ板5をプラットホームPHに確実に掛け渡すことができる。
【0036】
[スロープ板連動機構の他の実施例]
図6はスロープ板連動機構の他の実施例を示す。
このスロープ板連動機構41は、起伏軸4にスロープ板5の連結筒部5aが回動自在に支持されるとともに、起伏軸4と連結筒部5aとの間に、起伏軸4の他端部に設けられて、スロープ板5が中立位置から起立方向に回動された時に起立方向に回動付勢する起立付勢ばね(ばね部材)42Lと、起伏軸4の右端部に設けられて、スロープ板5が中立位置から倒伏方向に回動された時に倒伏方向に回動付勢する倒伏付勢ばね(ばね部材)42Rが設けられている。これら倒伏付勢ばね42Rと起立付勢ばね42Lは、左右の捩じり方向が互いに逆方向のものが使用される。
【0037】
すなわち、
図6(b)に示すように、連結筒部5aの右端側に起立付勢ばね42Lが外嵌され、起立付勢ばね42Lの他端e2が連結筒部5aに固定され、一端e1が、起伏軸4に固定された付勢板43Lの起立規制ピン44Lに、中立位置から起立方向に回動時のみ係止され、起立付勢ばね42Lによりスロープ板5を起立方向に回動付勢するように構成されている。一方、連結筒部5aの左端側に倒伏付勢ばね42Rが外嵌され、倒伏付勢ばね42Rの一端e1が連結筒部5aに固定され、他端e2が、起伏軸4に固定された付勢板43Rの倒伏付勢ピン44Rに中立位置から倒伏方向の回動にのみ係止されて、倒伏付勢ばね42Rによりスロープ板5を倒伏方向に回動付勢するように構成されている。そして、スロープ板5の中立姿勢から倒伏姿勢では、起立付勢ばね42Lの他端e1は、支持部材2bに設けられた規制片45Rに位置規制されて、起立付勢ピン44Lから離間されている。またスロープ板5の中立姿勢から起立姿勢では、倒伏付勢ばね42Rの他端e2が、支持部材2bに設けられた規制片45Lに位置規制されて倒伏付勢ピン44Rから離間されている。もちろん、中間姿勢でも、起立付勢ばね42Lは起立方向に、倒伏付勢ばね42Rは倒伏方向に、それぞれ回動付勢するように圧縮されている。
【0038】
したがって、スロープ板5の収納状態では、起伏軸4が起立回動限までの間に、増締区間を回動されて起立付勢ばね42Lがさらに圧縮されており、そのばね力によりスロープ板5が起立方向に付勢されるとともに、起立姿勢で回動を規制するストッパ(図示せず)により規制され、起立姿勢が安定して保持されている。起伏軸4が起立回動限から倒伏方向に回動されると、起立付勢ばね42Lに抗してスロープ板5が倒伏される。起伏軸4が中立位置Nになると、起立付勢ばね42Lの他端e1が規制片45Rに係止され、同時に倒伏付勢ピン44Rが倒伏付勢ばね42Rの他端e2を押して圧縮し、倒伏付勢ばね42Rを介してスロープ板5が倒伏方向に回動される。そして、スロープ板5の先端部がプラットホームPHに着地した後、さらに起伏軸4が倒伏回動限まで増締区間を回動することにより、倒伏付勢ピン44Rが倒伏付勢ばね42Rをさらに圧縮し、そのばね力によりスロープ板5がプラットホームPHに押し付けられる。
【0039】
スロープ板5の倒伏姿勢から起立姿勢への回動は、上記と逆の手順で行われる。
上記構成によれば、起伏軸4が倒伏回動限まで回動されることにより、倒伏付勢ばね42Rでスロープ板5をプラットホームPHに押し付けることができる。これにより、高さの異なるプラットホームPHであっても、スロープ板5を確実に着地させて押し付け、スロープ板5を乗降口2aからプラットホームPHに確実かつ安定して掛け渡すことができる。
【0040】
また起伏軸4を起立回動限まで回動することにより、起立付勢ばね42Lでスロープ板5を起立方向に付勢して確実に起立姿勢で保持することができる。
[実施例2]
本発明に係る鉄道車両の乗降口渡し板装置の実施例2を
図7〜
図10に基づいて説明する。なお、実施例1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
この実施例2は、連結分離機構50を、起伏用ラック6と受動ピニオン11とを係脱可能とすることにより構成したものである。またスロープ板51を、スライド式扉3の開閉動作によりスロープ板出退機構52を具備した二段出退式に構成したものである。さらに、スロープ板連動機構58は、起立付勢ばね(ばね部材)59によりスロープ板51を起立方向にのみ付勢するように構成している。
【0042】
(連結分離機構)
連結分離機構50は、
図7に示すように、スライド式扉3から下方に伸びる連動アーム9の水平部9bに、起伏用ラック6が開閉方向に沿って固定され、受動ピニオン11がこの起伏用ラック6に噛み合い・離脱可能に設けられている。したがって、スライド式扉3が、閉鎖位置と倒伏完了位置との間の起伏動作距離L/2を移動する時に、起伏用ラック6が受動ピニオン11と噛み合い、連動ギヤ機構7を介して起伏軸4を起立回動限と倒伏回動限の範囲で回動させることができる。
【0043】
(スロープ板出退機構)
スロープ板51は、
図8,
図9に示すように、プレート本体51aと、プレート本体51aに図示しないガイド部材(ガイドローラやリニアベヤリングなど)を介して先端側に出退自在に内装された出退プレート51bとを具備している。
【0044】
スロープ板出退機構52は、ラック・ピニオン機構を使用したギヤ装置であって、起伏軸4に回転自在に支持され支持部材2bなどを介して車体2側に固定された固定歯車53と、プレート本体51aに設けられたブラケットに中間軸55を介して回転自在に支持され固定歯車53に噛み合う従動歯車54と、従動歯車54に中間軸55を介して連結固定された出退用ピニオン56と、出退プレート51bに連結固定されて出退用ピニオン56が噛み合う出退用ラック57とを具備している。
【0045】
したがって、スライド式扉3が閉鎖位置から倒伏完了位置まで起伏動作距離L/2を開閉移動されると、起伏用ラック6に噛み合う受動ピニオン11により、連動ギヤ機構7を介して起伏軸4が回動され、スロープ板51が起立姿勢から倒伏姿勢に回動される。この回動中に、固定歯車53に噛み合う従動歯車54と出退用ピニオン56が矢印C方向に回動されて、出退プレート51bが先端側に突出される。
【0046】
なお、スロープ板出退機構52を起伏軸4の右端部に配置したが、中央部や両端部に一対を設置してもよい。
(スロープ板連動機構)
スロープ板連動機構58は、起立付勢ばね(ばね部材)54によりスロープ板51を起立方向にのみ付勢するように構成している。
【0047】
図8および
図10に示すように、スロープ板61の連結筒部6aに外嵌された起立付勢ばね(ばね部材)59は、一端部59aが支持部材2bに突設された車体2側の係止片2cに倒伏方向への移動を規制され、他端部59bがスロープ板51に起立方向の移動が規制されて、スロープ板51を起立方向に回動付勢している、そして、スロープ板51が倒伏方向に回動されることで、起立付勢ばね59がさらに圧縮され、スロープ板51を起立方向に回動付勢する。なお、スロープ板51は、起立付勢ばね59のばね力より、十分に大重量に設定されている。したがって、倒伏姿勢では、自重によりスロープ板51が起立付勢ばね59に抗してプラットホームPH側に押し付けられ、乗降口2aからからプラットホームPHに安定して架け渡すことができる。
【0048】
また、スライド式扉3が倒伏姿勢から閉動する時に、受動ピニオン11が起伏用ラック6に噛み合い、起伏軸4が起立方向に回動されると、起立付勢ばね59のばね力が働いて、スロープ板51の起立が補助され、スロープ板51の起立動作をスムーズに行うことができる。
【0049】
上記実施例2によれば、連結分離機構50の起伏用ラック6を、スライド式扉3に固定し、受動ピニオン11を起伏用ラック6に噛み合い・離脱可能に構成したので、構造を簡易化することができ、容易かつ低コストで提供できる。
【0050】
また、スロープ板51を、プレート本体51aから出退プレート51bを出退させる二段出退式として、スライド式扉3の開閉動作により出退プレート51bを出退させることにより、起立姿勢のスロープ板51を短くできてコンパクトに収納でき、または倒伏姿勢のスロープ板51の長さを長くできて、乗降口2aとプラットホームPHの多様な条件に対応して、スロープ板51を架け渡すことができる。