(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空気を吸い込む吸気ダクトと、該吸気ダクトの内部に減圧沸騰により微細化した温水を噴霧する温水噴霧装置と、前記吸気ダクトから吸引した空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機で圧縮された空気と燃料とを燃焼させる燃焼器と、該燃焼器で生成した燃焼ガスにより駆動されるタービンとを備えたガスタービンシステムにおいて、
前記温水噴霧装置として請求項1から4の何れかに記載の温水噴霧装置を用いたことを特徴とするガスタービンシステム。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン発電システムでは、夏場など大気温度が上昇する条件において圧縮機での空気取込み量、すなわち吸気量が減少し、それに伴って発電出力も低下することが知られている。大気温度の上昇に伴う発電出力低下を抑制する手段の一つとして、例えば特許文献1の技術がある。具体的には、圧縮機の吸気中に、ガスタービン増出力用高圧一流体霧化ノズルから高圧水を噴霧して圧縮機の吸気温度を低下させ吸気密度を増加させる技術が開示されている。そのために小型でシステム損失が極力少なく、大量の水を微細水滴に霧化することができる高圧一流体霧化ノズルを提供する内容である。ここで、システム損失を少なくすることは、すなわち液滴をより微細液化できるが圧縮空気動力損失が大きくなる二流体噴霧ではなく、一流体噴霧を選定することであり、またその一方で高速回転する圧縮機翼のエロージョンを抑制するために微細液滴を形成できる噴霧ノズルを提供しようとするものである。
【0003】
従来、吸気冷却においては、冷却するという観念から常温水が使用されるのが一般的であったが、一流体噴霧ノズルではザウター平均粒径で20μm程度が最小であり、圧縮機翼のエロージョンを抑制しつつ、効率的な冷却を行い、かつ冷却量を増やすためには更なる液滴の微細化が必要となっていた。
【0004】
一流体噴霧ノズルを用いて更なる液滴微細化を図る手段として、特許文献2の技術がある。
これには従来のような常温の高圧水ではなく、高圧温水として圧縮機の上流にある吸気ダクト内部の大気圧レベルにある吸気中に噴霧することで、減圧沸騰効果により液滴を微細化し、減圧沸騰時の気化熱により吸気冷却をする方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の常温水を用いた高圧水噴霧と異なり、大気圧下で減圧沸騰する100℃から150℃程度の高圧温水を用いる噴霧の場合には、温水配管から吸気への熱授受による吸気の昇温と減圧沸騰する温水の温度低下を防止することが課題となる。特にガスタービン発電システムの吸気ダクト(断面積)は大きいため、噴霧による加湿量を大きくするためには流路断面中に噴霧ノズルを配置せざるを得ず、流路を狭める要因となっていた。高圧温水による微細噴霧にて従来以上に冷却量を増加できるので噴霧ノズル数も多くなり、吸気ダクト内部に噴霧ノズルを設ける場合には吸気流路抵抗を増やさないことも課題として挙げられる。
【0007】
本発明の目的は、ガスタービン圧縮機の吸気温度を効率的に低下させ、かつ吸気ダクトの流路抵抗の増加を抑制する温水噴霧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、温水と吸気の接触および吸気ダクトと噴霧ノズルの設置場所を選定するために、ガスタービン圧縮機の吸気ダクト形状や吸気システム全体について総合的な検討を行った。外気を取込む吸気ダクトの入口から圧縮機までの吸気ダクト終端部までは、通常は直線的ではなく、折れ曲がりのある吸気ダクトとなっている。吸気ダクトの入口には大気中のちりや埃を取り除くためのフィルタが設けられ、またその下流にはサイレンサが設けられている。サイレンサ下流の吸気ダクトは、少なくとも一度折れ曲がって圧縮機入口に接続される。このような吸気ダクトにおいて、噴霧ノズルを設置する適正な場所として、サイレンサから圧縮機入口までの流路が挙げられる。
【0009】
上記の噴霧ノズルを設置する適正な場所において、高温水の温水配管から吸気への熱授受による吸気の昇温と減圧沸騰する温水の温度低下を防止するためには、吸気ダクトの外部に温水配管を設けると共に、その温水配管に噴霧ノズルを設け、吸気ダクト壁面に設けた噴霧孔を介して噴霧ノズルの温水を吸気ダクト内部に噴霧する構成が適切と判断した。
【0010】
より具体的には、吸気ダクトの曲がり部の外側に温水配管を設置して吸気ダクト内部の空気流内に噴霧し微細液滴を投入するものであり、噴霧ノズルと吸気ダクトは断熱性と伸縮性を兼ね備えた
ポリテトラフルオロエチレンやシリコン部材を介して接続される構成である。
【0011】
上記の構成により、本発明では、温水配管から吸気への熱授受を回避することができ、温水温度を維持した状態で吸気中に微細液滴を多量に噴霧できる。また、吸気ダクト内の流路抵抗を噴霧ノズルそのもので増加させることが無い。この結果、高温水の気化熱により、吸気ダクトを流れる空気温度を低下させることができ、夏場などの大気温度が高くなった場合でもガスタービン圧縮機における吸気流量が増加し、ガスタービンの発電出力を増加させることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガスタービン圧縮機の吸気温度を下げるために好適な温水噴霧装置を
提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ガスタービン発電システムの基本的な構成要素は、吸気ダクトから吸入した空気を圧縮する圧縮機と、この圧縮機で圧縮された空気と燃料とを燃焼させる燃焼器と、当該燃焼器で生成した燃焼ガスによって駆動されるタービンである。
【0015】
以後、詳述する本発明の実施の形態に共通する基本概念について説明する。
【0016】
空気を圧縮する圧縮機において、空気を吸い込む吸気ダクト内部もしくは吸気ダクトの上流側にて空気温度を大気温度以下に下げるため、圧縮機入口空気に高圧温水を噴霧し混入する。ここで、高圧温水はガスタービン発電システム内の排熱を利用するか、他の集熱装置で水を加熱して生成し、吸気ダクトへ供給する構成で良い。一般に常温の水噴霧でも圧縮機入口空気温度を低下できることが知られているが、高速回転機である圧縮機内部では、水滴などを形成させず、速やかに噴霧水を気化させることが吸気性能および機器信頼性(回転機バランス)の観点から望ましい。その観点から本発明では、圧縮機入口空気温
度を下げる目的とは一見逆方向となる温水を噴霧することを特徴としている。すなわち、高圧温水の有する熱量の約70から80%が気化潜熱であることを利用して、高圧状態(噴霧ノズル内部)から大気圧状態(圧縮機上流の吸気ダクト内部)へと急激に減圧させて温水を減圧沸騰させる。この場合、常温水では気化潜熱による吸熱作用で氷点下となり圧縮機入口部で氷結し易い上に、噴霧後の粒径が小さくなりにくく、圧縮機内部での速やかな気化が望めない状態が生じ得る。そこで本発明のように、減圧沸騰時に微粒化が促進するように高圧温水として噴霧する形態を取っている。
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
本発明の実施例
を図1〜8により説明する。
図1〜図6に基づき本発明が適用される温水噴霧装置の実施例の全体構成などを説明し、図7及び図8に基づき本発明の実施例1及び実施例2を説明する。
【0019】
図1は、ガスタービン発電システムの圧縮機上流側に位置する吸気ダクト1に設けた温水噴霧装置の構成図である。
【0020】
図1において、本実施例の温水噴霧装置は、吸気ダクト1の外部に設けた温水配管3と、温水配管3に接続された噴霧ノズル4から成り、空気2が流れる吸気ダクト1の内部に向けて吸気ダクト1の壁面から温水を噴霧させる噴霧ノズル4を吸気ダクト1の外面に接続することによって構成される。温水配管3は断熱効果のある部材ないしは金属配管の外面に断熱材を施工して構成される。噴霧ノズル4の個数は、使用する噴霧ノズル性能を基に、冷却すべき空気2の流量と温度降下の度合いによって決定される。ガスタービン圧縮機で取込む空気2の流量は数十kg/sから数百kg/sと大きいため、吸気ダクト流路面積も大きい。大流量の空気2を全体的に冷却するため、噴霧ノズル4の個数は数十から数百個が設置される。
【0021】
なお、本実施例の温水噴霧装置は新設のガスタービンシステムに適用するだけではなく、既設のガスタービンシステムの改造方法として、温水噴霧装置を追設することも可能である。この場合、吸気ダクトの外部に温水配管を配置し、この温水配管に噴霧ノズルを接続するとともに、吸気ダクトの壁面に噴霧孔を形成して、噴霧ノズルから噴霧孔を介して吸気ダクト内部に減圧沸騰により微細化した温水を噴霧するように温水噴霧装置を構成することで実現することができる。
(作用・効果)
次に、
図1の実施例の動作を説明する。
【0022】
本実施例では、温水を生成する熱源については特定していないが、ガスタービン発電システム内での排熱や別置きの太陽熱加熱器などの利用を想定している。
【0023】
本実施例では、温水条件として水圧7MPa、水温130℃での運用を例に取り説明する。吸気ダクト1の外部に設置され周囲を断熱材で施工された温水配管3内の加圧温水は、複数の噴霧ノズル4に供給されて、吸気ダクト1の壁面の噴霧孔を介して吸気ダクト1の内部にスプレー5(微細液滴群)として噴霧される。スプレー5は、吸気ダクト1の内部を流れる空気2と合流し微細液滴が噴霧後に蒸発する気化熱によって空気2が冷却され、空気2の温度は外気温度より低い温度となる。外気温度より温度が低下した空気2は、吸気ダクト1の後流にある圧縮機へ流入する。
【0024】
図2は、水温によるザウター平均粒径変化の実験結果を示した図である。ザウター平均粒径は、液滴径の2乗で重み付けされた平均粒径であり、熱や質量の輸送プロセスにおける液滴径の整理法として最も多く用いられている指標である。このザウター平均粒径が小さいほど、空気中での蒸発が促進され、空気を効率的に冷却できることになる。
図2は、レーザーを用いた位相ドップラー粒径計測装置によって噴霧後の粒径を計測した結果であり、横軸を粒径(μm)、縦軸に粒子のカウント数(計測個数)を取り、同じ噴霧ノズルの同一計測点にて水量と水圧を同条件にし、水温を常温時と130℃に昇温した時の両者の粒径分布を比較したものである。これから、常温時に平均粒径が26.3μmであった状態が、130℃時に平均粒径15.6μmへ減少しており、粒径分布全体がより小さい粒径側へと推移し、大粒径の液滴が減少することが分かる。このことから、高圧温水を噴霧させることで減圧沸騰効果による液滴の微細化が進み、吸気ダクト1内の空気2を効率的に冷却できることが分かった。
(減圧沸騰による液滴の微細化の原理)
次に、
図3により減圧沸騰による噴霧液滴の微細化の原理について詳細に説明する。
【0025】
本実施例においては、噴霧装置に供給される噴霧水の温度を、圧縮機に供給される空気2の圧力(大気圧)における水の沸点以上とし、そしてこの高圧温水6を減圧沸騰により微粒化させ、これにより生成した微細液滴7を吸気ダクト1の内部に噴霧している。高圧温水6を用いることにより、噴霧水温度が噴霧後の周囲の圧力における水の沸点よりも高い条件で噴霧される場合には、噴霧ノズル4の吐出直後のスプレー5内で気泡が発生する減圧沸騰を生じ、液滴はさらに微粒化され、微細液滴7となる。液滴が微粒化されることにより、液滴の空気2中への蒸発が速くなり、液滴の蒸発による冷却効果が短時間で得られるようになる。
【0026】
液滴蒸発の観点から見ると、一般に液滴の温度が高いほうが液滴の蒸発は早くなる。圧縮機内で液滴が蒸発する場合、圧縮機の入口に近い位置で蒸発するほど、蒸発に伴う冷却効果が後段にも反映され、動力低減効果が大きくなり、ガスタービン発電システムとしての効率が向上する。本実施例の温水噴霧装置により、吸気ダクト1を流れる空気2の温度を低下できる。
(本実施例の特徴)
本実施例においては、噴霧水に利用する高圧温水6を吸気ダクト1の外部から供給するので、吸気ダクト1内部の空気2を温水で加熱することなく、空気2を効率的に冷却できると共に、噴霧装置が吸気ダクト1の外側にあるため、噴霧ノズル4の保守や管理がし易いという利点がある。また、本実施例の噴霧装置は減圧沸騰により液滴を微細化するものであるため、微細液滴7の生成のために特別な噴霧装置を必要としない。
【0027】
次に、本発明の実施
例における構成を
図4により説明する。
【0028】
図4は、温水噴霧装置の構成図であり、
図1の実施
例において設けた噴霧ノズル(
図4中の符号4b)のほかに、吸気ダクト1の吸気ダクト角部8の前後にも噴霧ノズル(符号4a,4c)を設けたことを特徴とする。これは吸気ダクト角部8の内側を流れる空気2に生じる攪拌流9を利用して噴霧ノズル4a、4cからのスプレー5を空気2と十分に混合するためである。
図4は、S字形状の吸気ダクト1において、大別して3箇所の噴霧ノズル群を配置した例である。
(作用・効果)
次に
図4の実施例の動作を説明する。
【0029】
吸気ダクト1の最上流に設けた噴霧ノズル4aからの噴霧液滴は、すぐ下流の攪拌流9aによって空気2に混合され、吸気ダクト1の2番目の位置に設けた噴霧ノズル4bは、上流の攪拌流9aおよび下流の攪拌流9bによって空気2に混合される。吸気ダクト1の最下流に設けた噴霧ノズル4cのスプレー5は、上流の攪拌流9bにより空気2と混合が促進される。
【0030】
図4では平面的に噴霧ノズル4群を3箇所に設けたが、図面の垂直方向からも噴霧ノズル4を設けてさらに空気2とスプレー5の混合促進を図ることができる。すなわち、吸気ダクト1の形状に応じて、噴霧ノズル4の設置位置および噴霧ノズル4の個数を任意に変えて良い。
【0031】
吸気ダクトの折れ曲がり部の上流直上,下流直下に噴霧ノズルを配置する本実施例によれば、吸気ダクト1の内部に生じる攪拌流9を利用して噴霧ノズル4からのスプレー5を空気2と混合させるので、スプレー5と空気2を混合するための機器が不要となる。また、噴霧ノズル4をすべて吸気ダクト1の外側に配置したので、噴霧ノズル4のメンテナンスがし易いという利点がある。
【0032】
次に、本発明の実施
例における構成を
図5により説明する。
【0033】
図5は、温水噴霧装置の構成図であり、
図1の実施
例および
図2の実施
例において、複数ある噴霧ノズル4群を吸気ダクト1の直線部に千鳥状に設けたことを特徴とする。図示の例では、吸気ダクト1を平面方向に見たときに、あるダクト壁面1d側に配置された噴霧ノズル4dと、このダクト壁面1dと対向するダクト壁面1e側に配置された噴霧ノズル4eとを千鳥状(交互)に設置している。すなわち、噴霧ノズル4d,4eからのスプレー5d,5e同士が互いに衝突しない位置に配列している。
図5は、吸気ダクト1の対面において、それぞれ噴霧ノズル4d,4eを3箇所配置した例である。
(作用・効果)
次に
図5の実施例の動作を説明する。
【0034】
吸気ダクト1の片側面1dの最上流に設けた噴霧ノズル4dからのスプレー5dは、空気2を貫通して空気と混合が促進される。そして吸気ダクト1のもう一方の面1e(
図5の下側の吸気ダクト1の面)の最上流に設けた噴霧ノズル4eは、この噴霧ノズル4eからのスプレー5eが対面のスプレー5dと衝突しない位置に設けられる。これら吸気ダクト1の対面に設けた噴霧ノズル4d,4eの位置関係を踏襲することにより、噴霧ノズル4d,4e群が交互配列もしくは千鳥配列となり、噴霧ノズル4d,4eから噴霧されるスプレー5d,5eが互いに衝突しない状態で空気2に合流される。この千鳥配列状に設けられた噴霧ノズル4d,4eのスプレー5d,5eによって、空気2の流れが乱され、空気2とスプレー5の混合が促進される。
【0035】
図5では平面的に噴霧スプレー4d,4eを対面にそれぞれ3箇所設けたが、図面の垂直方向からも噴霧ノズル4d,4eを設けてさらに空気2とスプレー5d,5eの混合促進を図ることができる。すなわち、吸気ダクト1の直線的な形状部分に、
図5に示した噴霧ノズル4の配列が適用できる。
【0036】
本実施例によれば、吸気ダクト1の内部に噴霧ノズル4d,4eからのスプレー5d,5eを千鳥配列状に噴霧するので、空気2の流れが乱れ、スプレー5d,5eと空気2を混合させることができ、スプレー5d,5eと空気2を混合するための機器が不要となる。また、噴霧ノズル4d,4eを直線的な形状の吸気ダクト1の外側に配置したので、噴霧ノズル4d,4eを設置し易いという利点と噴霧ノズル4d,4eのメンテナンスが容易になるという利点がある。
【0037】
次に、本発明の実施
例における構成を
図6により説明する。
図6は、温水を噴霧する噴霧ノズル4と吸気ダクト壁10との接続図である。
【0038】
図6は、
図1の実施
例および
図2の実施
例、図3の実施
例において、吸気ダクト壁10への噴霧ノズル4を固定した時の熱伝導を抑制すると共に、温水配管3による熱伸縮を吸収するためのガスケット13を設けたことを特徴とする。吸気ダクト壁10と噴霧ノズル4の接続構成は、以下の通りである。
【0039】
吸気ダクト壁10には噴霧孔11が設けられ、また吸気ダクト壁10の外側に向けてボルト14が噴霧孔11を取り囲む位置に設けられている。一方、温水配管3に接続された噴霧ノズル4の周囲には取付板12が円周状に設けられている。なお、温水配管3の周囲には断熱材15が施工されている。吸気ダクト壁10に設けられた噴霧孔11には、噴霧ノズル4の端面が覗くようにセッティングされるが、その際に吸気ダクト壁10と噴霧ノズル4の取付板12との間にガスケット13を挿入し、ボルト14で固定する。ガスケット13は、耐熱性、断熱性および伸縮性を有する材質が好ましく、たとえば
ポリテトラフルオロエチレンやシリコン製を用いる。
(作用・効果)
次に
図6の実施例の動作を説明する。
【0040】
ガスケット13を介して吸気ダクト壁10に固定された噴霧ノズル4には、温水配管3より5MPaから7MPa程度に加圧された130℃から150℃の温水が供給され、吸気ダクト内部22に向けて噴霧ノズル4からスプレー5が噴霧される。噴霧ノズル4は温水により温度上昇するが、ガスケット13によって吸気ダクト壁10への熱伝導が抑制されることで、温水温度を維持した状態でスプレー5が噴霧される。なお、取付板12とボルト14を介して噴霧ノズル4から吸気ダクト壁10に一部の熱伝導が生じるが、噴霧ノズル4の1個あたりの温水流量の熱量からして温水温度の低下に支障ない状態で噴霧できる。
【0041】
本実施例によれば、噴霧ノズル4から吸気ダクト壁10への伝熱量を抑制できるので、微細なスプレー5を実現でき、吸気ダクト内部22の空気2を効率的に冷却することができる。また、吸気ダクト1の外側にて噴霧ノズル4の脱着が可能であり、噴霧ノズル4の点検や保守がし易い利点がある。また、必要に応じて、取付板12とボルト14の間に間隙を設けるか、または断熱部材を介在させることで、さらに噴霧ノズル4から吸気ダクト壁10への熱伝導を抑制することができる設置上の柔軟性を有する。
【実施例1】
【0042】
次に、本発明の実施例
1における構成を
図7により説明する。
図7は、温水を噴霧する噴霧ノズル4と吸気ダクト壁10との接続図である。
【0043】
図7は、
図6の実施
例において、吸気ダクト壁10への噴霧ノズル4固定時の熱伝導をさらに抑制する構造を示している。吸気ダクト壁10と噴霧ノズル4の接続構成は、以下の通りである。
【0044】
吸気ダクト壁10には噴霧孔11が設けられている。一方、温水配管3に接続された噴霧ノズル4の周囲には押付板16が円周状に設けられている。なお、温水配管3の周囲には断熱材15が施工されている。吸気ダクト壁10に設けられた噴霧孔11には、噴霧ノズル4の端面が覗くようにセッティングされるが、その際に吸気ダクト壁10と噴霧ノズル4の押付板16との間にガスケット13を挟み面接触させる。ガスケット13は、耐熱性、断熱性および伸縮性を有する材質が好ましく、たとえば
ポリテトラフルオロエチレンやシリコン製を用いる。温水配管3の近傍に支柱18を設けて、その支柱18と温水配管3の間に押付バネ17を設ける。
(作用・効果)
次に
図7の実施例の動作を説明する。
【0045】
ガスケット13を介して吸気ダクト壁10に固定された噴霧ノズル4には、温水配管3より5MPaから7MPa程度に加圧された130℃から150℃の温水が供給され、吸気ダクト内部22に向けて噴霧ノズル4からスプレー5が噴霧される。噴霧ノズル4は温水により温度上昇するが、ガスケット13によって吸気ダクト壁10への熱伝導が抑制されることで、温水温度を維持した状態でスプレー5が噴霧される。支柱18を固定点とした押付バネ17による縮んだ弾性体が拡張しようとする反力を利用して、押付板16とガスケット13が吸気ダクト壁10に押付けられる。この場合、
図6で用いたボルト14が無いので、噴霧ノズル4から吸気ダクト壁10への熱授受は主に押付板16からガスケット13を介して行われる。噴霧ノズル4から吸気ダクト壁10には輻射熱として一部の熱授受はあるが、噴霧ノズル4の1個あたりの温水流量の熱量からして温水温度の低下に支障ない状態で噴霧できる。このように、噴霧ノズル4を吸気ダクト壁10に機械的に固定せず、面接触で押し当てられる要因の一つは、吸気ダクト内部22が圧縮機の吸引によって若干の負圧になっていることが挙げられる。
【0046】
本実施例によれば、噴霧ノズル4から吸気ダクト壁10への伝熱量をさらに抑制できるので、安定した微細なスプレー5を実現でき、吸気ダクト内部22の空気2を効率的に冷却することができる。また、噴霧ノズル4を吸気ダクト壁10に固定していないので、吸気ダクト(1)の外側にて噴霧ノズル4の脱着が容易であり、押付バネ17をはずすことで噴霧ノズル4の点検や保守がし易い利点がある。また、必要に応じて、押付板16の押付面積やガスケット13の厚さを変更することで、さらに噴霧ノズル4から吸気ダクト壁10への熱伝導を抑制することができるという設置上の柔軟性を有する。なお、ガスケット13がずれないように、ガスケット13を吸気ダクト壁10にシリコンゴムペーストなどで接着しても良い。
【実施例2】
【0047】
次に、本発明の実施例
2における構成を
図8により説明する。
図8は、温水を噴霧する噴霧ノズル4と吸気ダクト壁10との接続図である。
【0048】
図8は、
図6の実施
例および
図7の実施例
1において、吸気ダクト壁10への噴霧ノズル4の固定方法を変えて、噴霧ノズル4から吸気ダクト壁10への熱伝導を抑制するネジ込みガスケット19を設けると共に、温水配管3による熱伸縮を吸収するためのフレキシブル配管21を設けたことを特徴とする。吸気ダクト壁10と噴霧ノズル4の接続構成は、以下の通りである。
【0049】
吸気ダクト壁10には噴霧孔11が設けられている。一方、温水配管3と噴霧ノズル4は、フレキシブル配管21によって接続されている。なお、温水配管3の周囲には断熱材15が施工されている。吸気ダクト壁10に設けられた噴霧孔11には、噴霧ノズル4の端面が覗くようにセッティングされるが、その際に吸気ダクト壁10と噴霧ノズル4は、ネジ込みガスケット19を介して固定される。ネジ込みガスケット19は、耐熱性、断熱性および伸縮性を有する材質が好ましく、たとえば
ポリテトラフルオロエチレンやシリコン製を用いる。吸気ダクト壁10の噴霧孔11の周囲にネジ部20を設けてあり、そのネジ部20にネジ込みガスケット19をネジ込んで固定する。ネジ込みガスケット19の中心軸上には噴霧ノズル4を設定するための穴があり、そのネジ込みガスケット19の穴に噴霧ノズル4を挿入する。この場合、噴霧ノズル4とネジ込みガスケット19の固定は、ネジ込みガスケット19の中心軸上の穴径を噴霧ノズル4の外径よりも若干小さくすることで圧着固定するか、もしくは噴霧ノズル4の外周にねじ山を設けてネジ込みガスケット19にねじ込んで固定する方法がある。
(作用・効果)
次に
図8の実施例の動作を説明する。
【0050】
ネジ込みガスケット19を介して吸気ダクト壁10に固定された噴霧ノズル4には、温水配管3より5MPaから7MPa程度に加圧された130℃から150℃の温水が供給され、吸気ダクト内部22に向けて噴霧ノズル4からスプレー5が噴霧される。噴霧ノズル4は温水により温度上昇するが、断熱性のネジ込みガスケット19によって吸気ダクト壁10への熱伝導が抑制されることで、温水温度を維持した状態でスプレー5が噴霧される。なお、ネジ込みガスケット19を介して噴霧ノズル4から吸気ダクト壁10に一部の熱伝導が生じるが、噴霧ノズル4の1個あたりの温水流量の熱量からして温水温度の低下に支障ない状態で噴霧できる。また、ネジ込みガスケット19を介して吸気ダクト壁10に固定された噴霧ノズル4の熱伸縮は、温水配管3と噴霧ノズル4の間に設けたフレキシブル配管21によって緩和される。
【0051】
本実施例によれば、噴霧ノズル4から吸気ダクト壁10への伝熱量を抑制できるので、安定した微細なスプレー5を実現でき、吸気ダクト内部22の空気2を効率的に冷却することができる。また、吸気ダクト1の外側にて噴霧ノズル4の脱着が可能であり、噴霧ノズル4の点検や保守がし易い利点がある。また、フレキシブル配管21を用いて温水配管3と噴霧ノズル4を接続したので、温水配管3による多方向への熱伸縮に対応でき、噴霧ノズル4と吸気ダクト壁10の位置関係にずれを生じさせることなく、吸気ダクト内部22の適正な位置にスプレー5を噴霧することができる。