(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6157237
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】パイロット式開閉弁およびこれを備えた逆流防止装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/385 20060101AFI20170626BHJP
F16K 31/40 20060101ALN20170626BHJP
F16K 31/06 20060101ALN20170626BHJP
【FI】
F16K31/385
!F16K31/40 B
!F16K31/06 305L
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-132945(P2013-132945)
(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-7453(P2015-7453A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2016年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(73)【特許権者】
【識別番号】000108557
【氏名又は名称】タイム技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】木下 良太
(72)【発明者】
【氏名】杉江 繁男
(72)【発明者】
【氏名】山口 修
(72)【発明者】
【氏名】宮田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】近藤 泰永
【審査官】
正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】
特許第3835281(JP,B2)
【文献】
実開昭56−97677(JP,U)
【文献】
実開昭60−128071(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/12−31/165、31/36−31/42
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次側流水路と2次側流水路とを連通させる弁開口部を開閉可能なように、前記弁開口部の周縁に位置する弁座に対向して往復動可能なダイヤフラム弁体と、
このダイヤフラム弁体の背面側に形成された背圧室を前記1次側流水路に連通させるように前記ダイヤフラム弁体に設けられたブリード孔と、
前記1次側流水路が正圧の際には前記ブリード孔を開状態とし、かつ前記1次側流水路が負圧の際には前記ブリード孔を閉状態とするブリード用弁体と、
を備えており、
前記ダイヤフラム弁体は、ダイヤフラムに組み付けられたダイヤフラムプレートの後面部に、前記背圧室と前記2次側流水路とを連通させるためのパイロット孔の一端側開口部を形成した筒状凸部が設けられた構成とされ、前記パイロット孔の前記開口部が往復動自在なプランジャによって開閉可能とされている、パイロット式開閉弁であって、
前記ブリード用弁体は、可撓性を有するプレート状またはシート状の部材を用いて構成され、かつ貫通孔が設けられており、この貫通孔に前記筒状凸部が挿入されていることにより前記ダイヤフラムプレートへの取り付けが図られており、
前記ブリード用弁体の一部分は、前記ブリード孔の背圧室側開口部に対向し、かつ前記1次側流水路および前記ブリード孔内の圧力に応じて前記背圧室側開口部の周囲に接触または離反し、前記背圧室側開口部を開閉可能とされていることを特徴とする、パイロット式開閉弁。
【請求項2】
請求項1に記載のパイロット式開閉弁であって、
前記筒状凸部の基部の外周面には、アンダカット部が形成されており、
前記ブリード用弁体は、前記貫通孔の周縁部が前記アンダカット部に係入していることにより、前記筒状凸部からの抜け止めが図られている、パイロット式開閉弁。
【請求項3】
請求項2に記載のパイロット式開閉弁であって、
前記ダイヤフラムプレートの外周縁には、その背面側に向けて突出するフランジ部が形成されており、
このフランジ部のうち、前記筒状凸部を中心として互いに対向する2箇所には、切り欠き部が設けられ、前記筒状凸部の前記アンダカット部を一対のスライド型を利用して形成する際に、前記切り欠き部に対応する箇所を前記一対のスライド型の移動経路とすることが可能とされている、パイロット式開閉弁。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のパイロット式開閉弁であって、
前記ダイヤフラムプレートの後面部には、前記筒状凸部に繋がった状態または離間した状態の追加の凸状部がさらに形成されており、かつこの追加の凸状部は、前記貫通孔の一部、または前記ブリード用弁体に前記貫通孔とは別に設けられた追加の貫通孔に嵌入されていることにより、前記ブリード用弁体が前記筒状凸部を中心に回転することが規制されている、パイロット式開閉弁。
【請求項5】
1次側流水路から2次側流水路への通水動作のオン・オフ切り替えを行なうためのパイロット式開閉弁と、
前記2次側流水路側に直列に設けられた第1および第2の逆止弁と、
これら第1および第2の逆止弁の相互間に位置する流水路に接続され、かつこの流水路に逆流水が生じた際にこの逆流水を外部に排出することが可能な逃がし弁と、
を備えている、逆流防止装置であって、
前記パイロット式開閉弁として、請求項1ないし4のいずれかに記載のパイロット式開閉弁が用いられていることを特徴とする、逆流防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば給湯装置から風呂追い焚き回路への注湯動作のオン・オフ切り替え用途など、逆流水の防止が要請される配管部に取り付けて用いるのに好適なパイロット式開閉弁、およびこれを備えた逆流防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、パイロット式開閉弁の一例として、特許文献1(
図3〜
図5)に記載のものを先に提案している。
同文献に記載のパイロット式開閉弁は、1次側流水路と2次側流水路との連通部である弁開口部を開閉するためのダイヤフラム弁体を備えている。このダイヤフラム弁体には、ダイヤフラム弁体の背面側に形成された背圧室と1次側流水路とを連通させるためのブリード孔が設けられており、このブリード孔には、ブリード孔内の圧力に応じてブリード孔を開閉するためのブリード用弁体としてのボールが収容されている。このボールの脱出を防止するためのピン状のストッパも別途設けられている。
このような構成によれば、1次側流水路が正圧である際には、ボールがブリード孔を開状態とし、1次側流水路の水がブリード孔を通過して背圧室に流れ込む。したがって、ダイヤフラム弁体の弁閉状態時には、背圧室の圧力を高くし、この圧力を利用して弁閉状態を維持することができる。一方、1次側流水路側に断水を生じるなどして、1次側流水路が負圧になった際には、ブリード孔が閉状態となる。このため、背圧室が負圧になることが防止される。また、1次側流水路の負圧をダイヤフラム弁体が所定の弁座に圧接する力として利用することも可能となる。このため、2次側流水路の逆流水をパイロット式開閉弁の位置において遮断し、1次側流水路に逆流水が生じることが防止される。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、ブリード孔を開閉させるブリード用弁体は、ブリード孔内に収容されたボールであり、このボールの移動を規制するためのストッパなどを別途設ける必要もある。したがって、全体の部品点数が多く、またそれらの組み付け作業も煩雑となる。さらに、ブリード孔の内部には、ボールを当接させるための弁座を高い寸法精度で形成する必要もある。このようなことから、従来においては、全体の製造コストが高価となる不具合があった。
【0005】
1次側流水路に負圧が発生し、2次側流水路に逆流が生じた場合には、この逆流水がパイロット式開閉弁を通過して1次側流水路に流れてくることを防止する必要がある。このような逆流水防止性能を高めるには、1次側流水路が負圧となってブリード用弁体がブリード孔を閉状態とする際に、優れた止水シール性能が得られるようにする必要がある。ところが、従来のボールを用いた方式では、優れた止水シール性能を簡易に得ることは難しい。
パイロット式開閉弁を、たとえば給湯装置から浴槽に接続された風呂追い焚き回路への給湯のオン・オフ用途などに用いる場合、現在の業界自主基準では、パイロット式開閉弁の2次側流水路側に設けられた2つの逆止弁に、φ0.3mm相当の異物の噛み込みが生じ、逆流が生じたとしても、この逆流水を別途設けた逃がし弁を利用して外部に排出させることができればよいとされている。ただし、実際には、前記した条件よりも過酷な条件での逆流水、すなわちφ0.3mmよりも大きな異物の噛み込みが生じた条件下において多くの逆流水が発生する可能性がある。このような逆流水については、逃がし弁のみでは対応できず、パイロット式開閉弁の位置まで逆流水が到達する虞がある。このような事態
を生じた場合であっても、逆流水がパイロット式開閉弁の上流側には流れないようにすることが好ましい。このためには、パイロット式開閉弁の簡素化や低コスト化を図るだけではなく、逆流防止性能を従来にも増して優れたものにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3835281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、従来よりも簡易かつ廉価に製造することができ、しかも逆流防止性能なども優れたものとすることが可能なパイロット式開閉弁、およびこれを備えた逆流防止装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供されるパイロット式開閉弁は、1次側流水路と2次側流水路とを連通させる弁開口部を開閉可能なように、前記弁開口部の周縁に位置する弁座に対向して往復動可能なダイヤフラム弁体と、このダイヤフラム弁体の背面側に形成された背圧室を前記1次側流水路に連通させるように前記ダイヤフラム弁体に設けられたブリード孔と、前記1次側流水路が正圧の際には前記ブリード孔を開状態とし、かつ前記1次側流水路が負圧の際には前記ブリード孔を閉状態とするブリード用弁体と、を備えており、前記ダイヤフラム弁体は、ダイヤフラムに組み付けられたダイヤフラムプレートの後面部に、前記背圧室と前記2次側流水路とを連通させるためのパイロット孔の一端側開口部を形成した筒状凸部が設けられた構成とされ、前記パイロット孔の前記開口部が往復動自在なプランジャによって開閉可能とされている、パイロット式開閉弁であって、前記ブリード用弁体は、可撓性を有するプレート状またはシート状の部材を用いて構成され、かつ貫通孔が設けられており、この貫通孔に前記筒状凸部が挿入されていることにより前記ダイヤフラムプレートへの取り付けが図られており、前記ブリード用弁体の一部分は、前記ブリード孔の背圧室側開口部に対向し、かつ前記1次側流水路および前記ブリード孔内の圧力に応じて前記背圧室側開口部の周囲に接触または離反し、前記背圧室側開口部を開閉可能とされていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、ブリード用弁体は、可撓性を有するプレート状またはシート状の部材を用いて構成されており、その一部分がブリード孔の背圧室側開口部に対向するようにダイヤフラム弁体に取り付けられた構造である。したがって、前記従来技術と比較して、その構造はかなり簡素である。また、ブリード用弁体の取り付け手段として、パイロット孔の開口部が形成された筒状凸部を利用し、この筒状凸部にブリード用弁体の貫通孔を嵌合させる手段を採用しているために、その構成は合理的であり、製造コストの大幅な低減化を図ることができる。
第2に、ブリード用弁体は、その一部分が1次側流水路およびブリード孔内の圧力に応じてブリード孔の背圧室側開口部の周囲に接触または離反することにより、ブリード孔を開閉する構造であるために、その開閉動作は安定したものとなる。また、1次側流水路およびブリード孔に負圧が発生した際のブリード用弁体と背圧室側開口部の周囲との接触による止水シール性も良好にすることが可能である。この止水シール性能は、ブリード孔やブリード用弁体の各部の寸法精度には殆ど左右されず、これらの寸法に多少の寸法誤差があったとしても、優れたシール性能を得ることが可能である。したがって、たとえば1次
側流水路側が負圧となり、2次側流水路側に逆流水が生じる状況になったとしても、背圧室が負圧になるようなことは適切に防止され、前記逆流水を本発明のパイロット式開閉弁の位置で適切に遮断し得る優れた逆流防止性能を得ることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記筒状凸部の基部の外周面には、アンダカット部(凹状部)が形成されており、前記ブリード用弁体は、前記貫通孔の周縁部が前記アンダカット部に係入していることにより、前記筒状凸部からの抜け止めが図られている。
【0012】
このような構成によれば、専用部品などを用いることなく、ブリード用弁体をダイヤフラムプレートに取り付けることができ、製造コストを低減するのに一層好ましいものとなる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記ダイヤフラムプレートの外周縁には、その背面側に向けて突出するフランジ部が形成されており、このフランジ部のうち、前記筒状凸部を中心として互いに対向する2箇所には、切り欠き部が設けられ、前記筒状凸部の前記アンダカット部を一対のスライド型を利用して形成する際に、前記切り欠き部に対応する箇所を前記一対のスライド型の移動経路とすることが可能とされている。
【0014】
このような構成によれば、成形用の金型を用いてダイヤフラムプレートを樹脂成形する場合に、筒状凸部の基部のアンダカット部を、一対のスライド型を用いて容易かつ適切に形成することができる。ダイヤフラムプレートが小サイズの場合には、スライト型の移動スペースを確保することがとくに困難となるが、前記構成によれば、そのような場合にも好適に対処することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記ダイヤフラムプレートの後面部には、前記筒状凸部に繋がった状態または離間した状態の追加の凸状部がさらに形成されており、かつこの追加の凸状部は、前記貫通孔の一部、または前記ブリード用弁体に前記貫通孔とは別に設けられた追加の貫通孔に嵌入されていることにより、前記ブリード用弁体が前記筒状凸部を中心に回転することが規制されている。
【0016】
このような構成によれば、ブリード用弁体がブリード孔の背圧室側開口部を適切に開閉できない箇所に位置ずれするといったことが、簡易な構成によって適切に防止される。また、ブリード用弁体をダイヤフラムプレートに取り付ける際には、追加の凸状部を貫通孔または追加の貫通孔に嵌入させることにより、ブリード用弁体の向きや配置などを適正な状態にセッティングすることもできる。
【0017】
本発明の第2の側面により提供される逆流防止装置は、1次側流水路から2次側流水路への通水動作のオン・オフ切り替えを行なうためのパイロット式開閉弁と、前記2次側流水路側に直列に設けられた第1および第2の逆止弁と、これら第1および第2の逆止弁の相互間に位置する流水路に接続され、かつこの流水路に逆流水が生じた際にこの逆流水を外部に排出することが可能な逃がし弁と、を備えている、逆流防止装置であって、前記パイロット式開閉弁として、本発明の第1の側面により提供されるパイロット式開閉弁が用いられていることを特徴としている。
【0018】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供されるパイロット式開閉弁について述べたのと同様な作用が得られる。1次側流水路に負圧が発生した際に、2次側流水路から1次側流水路に逆流水が生じることを適切に防止する上で、好ましい。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(a)は、本発明に係る逆流防止装置の一例を示す断面図であり、(b)は、(a)に示す逆流防止装置を構成するパイロット式開閉弁の要部拡大断面図である。
【
図2】(a)は、
図1(b)に示すパイロット式開閉弁のダイヤフラムプレートを示す断面図であり、(b)は、(a)の分解断面図である。
【
図3】(a)は、
図2に示すダイヤフラムプレートおよびブリード用弁体の斜視図であり、(b)は、その分解斜視図である。
【
図4】
図2に示すダイヤフラムプレートの樹脂成形時の一例を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1(a)に示す逆流防止装置Aは、ケーシング1a〜1c内に形成された1次側流水路11、2次側流水路12、パイロット式開閉弁V1、第1および第2の逆止弁2A,2B、ならびに逃がし弁3を備えている。
【0023】
この逆流防止装置Aは、たとえば給湯装置から風呂追い焚き回路への湯水供給経路途中に設けられて使用される。このような使用態様においては、1次側流水路11は給湯装置側に配管接続され、2次側流水路12は、風呂追い焚き回路側に配管接続される。風呂追い焚き回路は、浴槽の湯水をポンプによって汲み上げてから追い焚き用の熱交換器によって加熱した後に浴槽に戻す回路である。したがって、このような風呂追い焚き回路から給湯装置側(上水道側)に逆流を生じることは適切に防止する必要がある。
【0024】
パイロット式開閉弁V1は、1次側流水路11と2次側流水路12との連通部分である弁開口部13をダイヤフラム弁体Dによって開閉し、1次側流水路11から2次側流水路12への通水のオン・オフを切り替えるためのものである。第1および第2の逆止弁2A,2Bは、2次側流水路12に直列に設けられており、2次側流水路12における下流側への通水を許容しつつ、上流側への逆流を阻止するものである。逃がし弁3は、第2の逆止弁2Bに異物の噛み込みを生じるなどして、第1および第2の逆止弁2A,2B間の通水路19に逆流水が進行してきた場合に、この通水路19に空気を送り込みつつ、逆流水を外部に排出させるためのものである。この逃がし弁3は、バネ31によって弁開方向に付勢されたダイヤフラム30を有し、このダイヤフラム30の背面側の圧力室32には、1次側流水路11からの1次圧P1が供給されている。1次圧P1が低下すると、バネ31の力によってダイヤフラム30が開弁状態に後退し、弁開口部33が開放する。このことにより、逆流水が排水路34を介して外部に排出される。
【0025】
パイロット式開閉弁V1は、ダイヤフラム弁体Dと、ブリード用弁体6と、電磁ソレノイド70を駆動源とするプランジャ7とを備えている。
【0026】
ダイヤフラム弁体Dは、弁開口部13の周縁に位置する弁座14に対向して往復動可能であり、可撓性を有するダイヤフラム4に、比較的硬質の樹脂製のダイヤフラムプレート5を組み付けて構成されている。ダイヤフラムプレート5は、ダイヤフラム4のうち、弁座14に対向する部分およびその周囲の一定領域が不当に撓みなどを生じないようにバックアップする役割を果たすものであり、弁座14よりも大径である。ダイヤフラム弁体Dのうち、弁座14の周囲にはみ出して1次側流水路11に対面する部分は、1次圧P1を受ける。ダイヤフラム4に対するダイヤフラムプレート5の組み付けは、たとえばダイヤフラムプレート5の前面部に突設された複数の突起部50a〜50cをダイヤフラム4に
抜け止め状態に貫通させることにより図られている。
【0027】
ダイヤフラム弁体Dの背面側(
図1の右側)には、背圧室15が形成されている。ダイヤフラム弁体Dには、背圧室15を2次側流水路12と連通させるためのパイロット孔51、および背圧室15を1次側流水路11と連通させるためのブリード孔52が設けられている。ブリード孔52およびブリード用弁体6の詳細については後述するが、1次圧P1が正圧の場合には、ブリード用弁体6が開き、背圧室15はブリード孔52を介して1次側流水路11と連通するために1次圧P1と同圧となる。これに対し、1次圧P1が負圧の場合には、ブリード用弁体6がブリード孔52を閉状態とし、背圧室15が負圧になることは防止される。
【0028】
ダイヤフラムプレート5の後面部の中央部には、背面側に向けて突出する筒状凸部56が形成されており、パイロット孔51の一端側開口部51aは、筒状凸部56の先端に開口している。パイロット孔51は、筒状凸部56の内部からその前方に一連に延びて形成されており、その他端側の開口部は突起部50aの先端に位置している。
【0029】
プランジャ7は、ダイヤフラムプレート5の背面側において往復動自在であり、
図1に示すように、その前進時には、筒状凸部56の先端に開口したパイロット孔51の開口部51aを閉塞しつつ、ダイヤフラム弁体Dを弁座14側に押圧することが可能である。図示説明は省略するが、プランジャ7を後退させた際には、パイロット孔51の開口部51aが開状態となって背圧室15と2次側流水路12とが連通するため、ダイヤフラム弁体Dを後退させて弁開口部13を開状態とすることが可能である。
【0030】
ブリード用弁体6は、可撓性を有するプレート状またはシート状の部材を用いて構成されており、好ましくは弾性を有するゴム製または樹脂製である。
図3によく表われているように、ブリード用弁体6は、貫通孔61を有する略円板状などの基本的形態をもつベース部60aに、このベース部60aからその外方に一部突出した形状の舌片部60bが一体的に連設された形態を有している。
図2および
図3に示すように、筒状凸部56の基部の外周には、この基部の外形または幅を部分的に小さくするアンダカット部56a(凹状部)が形成されている。ダイヤフラムプレート5の後面部には、筒状凸部56に繋がった追加の凸状部53(
図2では省略)が形成されている。この追加の凸状部53は、正面視において筒状凸部56からその左右に突出する略矩形状の凸状部であり、その高さはブリード用弁体6の厚みと略同等程度である。
【0031】
ブリード用弁体6の貫通孔61は、筒状凸部56のアンダカット部56aに対応する第1領域61aと、追加の凸状部53に対応する第2領域61bとが繋がった形状とされている。ブリード用弁体6は、貫通孔61の第1領域61aが筒状凸部56に嵌合され、この第1領域61aの内周縁部がアンダカット部56aに係入していることにより、筒状凸部56からの抜け止めが図られた状態とされている。第1領域61aは、筒状凸部56の最大外径部分よりも小サイズであるが、ブリード用弁体6は伸縮性を有しており、筒状凸部56に第1領域61aを嵌合させる際には第1領域61aのサイズを一時的に拡大させることにより、アンダカット部56aの位置に第1領域61aの内周縁部を係入させることが可能である。このような係入を終えた後には、第1領域61aが元のサイズに復帰し、筒状凸部56の最大外径よりも小さくなるため、ブリード用弁体6の筒状凸部56からの抜け止めが図られる。一方、貫通孔61の第2領域61bは、追加の凸状部53に嵌合している。このことにより、ブリード用弁体6の向きなどが規定されるとともに、ブリード用弁体6が筒状凸部56を中心として回転することが防止される。
【0032】
ブリード用弁体6の舌片部60bは、ブリード孔52の背圧室側開口部52a(ブリード孔52のうち、背圧室15側に開口する開口部)に対向し、この背圧室側開口部52a
を閉塞するように設定されている。ただし、舌片部60bは、ブリード孔52側から正圧を受けた際には、撓み変形を生じ、背圧室側開口部52aを開状態とする。舌片部60bの片面には、環状突起部62が設けられており、ブリード用弁体6が背圧室側開口部52aを閉状態とする際には、環状突起部62が背圧室側開口部52aの周囲に当接するようになっている。なお、ブリード用弁体6に環状突起部62を設ける構成に代えて、環状突起部62と同様な環状突起部をダイヤフラムプレート5側に設けた構成、すなわち背圧室側開口部52aの周囲に設けた構成とすることもできる。
【0033】
ダイヤフラムプレート5には、このダイヤフラムプレート5の外周縁部からその背面側に向けて突出するフランジ部55が一体形成されている。このフランジ部55は、ダイヤフラム4をガイドする役割や、ダイヤフラムプレート5の強度を高める役割を果たす。ただし、このフランジ部55のうち、筒状凸部56を中心として互いに対向する左右2箇所には、切り欠き部58が設けられている。
図4は、ダイヤフラムプレート5の樹脂形成時において、一対のスライド型92を用いて、筒状凸部56のアンダカット部56aや追加の凸状部53を形成する例を示している。フランジ部55に切り欠き部58が設けられていれば、この切り欠き部58の位置をスライド型92の移動経路とし、アンダカット部56aや追加の凸状部53を容易かつ適切に形成することが可能となる。
【0034】
図2に示すように、ブリード孔52は、第1および第2の孔部52A,52Bが組み合わされて構成されている。第1の孔部52Aは、ダイヤフラムプレート5の前面側(1次側流水路11側)に一端が開口するように設けられた非貫通孔であり、突起部50bの内側に形成されている。第2の孔部52Bは、ダイヤフラムプレート5の後面側に背圧室側開口部52aを形成するように設けられた非貫通孔である。これら第1および第2の孔部52A,52Bは、第2の孔部52Bが第1の孔部52Aよりも適当な寸法L1だけダイヤフラムプレート5の中心寄りに位置するようにして互いに繋がっている。このような構成によれば、背圧室側開口部52aをフランジ部55から遠ざけた配置とすることが可能であるために、背圧室側開口部52aの周囲に、環状突起部62を当接させるためのスペースを適切に確保することができる。背圧室側開口部52aがダイヤフラムプレート5の外周縁寄りに過度に配置された場合には、ブリード用弁体6の先端部がフランジ部55に不当に干渉する虞があるが、前記構成によれば、このような不具合を適切に解消することが可能である。
【0035】
次に、前記したパイロット式開閉弁V1を備えた逆流防止装置Aの作用について説明する。
【0036】
まず、ブリード用弁体6は、可撓性を有するプレート状またはシート状であり、その舌片部60bがブリード孔52の背圧室側開口部52aに対向している。このため、舌片部60bは、1次側流水路11およびブリード孔52内の圧力に対応して変形し、この圧力が正圧の場合には背圧室側開口部52aを開放状態し、かつ負圧の場合には背圧室側開口部52aを閉塞する。したがって、パイロット式開閉弁V1の閉状態時において、1次側流水路11が正圧である場合には、ブリード孔52が開状態となって背圧室15も正圧となり、この圧力を利用してダイヤフラム弁体Dを弁座14に圧接させる作用が得られる。一方、1次側流水路11の上流側に断水を生じるなどして、1次側流水路11が負圧となった場合には、背圧室側開口部52aが閉塞されるために、背圧室15が負圧になることは阻止される。また、1次側流水路11の負圧は、ダイヤフラム弁体Dのうち、弁座14からはみ出した部分に作用し、ダイヤフラム弁体Dを弁座14に圧接させる力として作用する。このため、仮に、第1および第2の逆止弁2A,2Bに異物の噛み込みなどの異常を生じた状態において、2次側流水路12に逆流が生じ、この逆流水の全量を逃がし弁3によって外部に排出することが困難な状況になったとしても、パイロット式開閉弁V1の弁閉状態を適切に維持させ、前記逆流水をパイロット式開閉弁V1によって適切に遮断す
ることができる。
【0037】
ブリード用弁体6の舌片部60bが、ブリード孔52の背圧室側開口部52aを閉塞する際には、環状突起部62が背圧室側開口部52aの周囲に密接する。したがって、ブリード用弁体6によって背圧室側開口部52aを閉塞する際の止水シール性はより良好なものとなる。ブリード用弁体6が弾性部材を用いて構成されていれば、その弾性復元力を利用してブリード用弁体6を背圧室側開口部52aの周囲に圧接させることもできるために、止水シール性を良好とする上で、より好ましいものとなる。ブリード用弁体6は、既述したように、貫通孔61が追加の凸状部53に嵌合していることにより、筒状凸部56を中心に回転することが規制されているために、舌片部60bが背圧室側開口部52aに対向しない位置に不当に位置ずれするようなこともない。
【0038】
ブリード用弁体6は、プレート状またはシート状の部材を用いて構成されており、その製造コストをかなり廉価にすることが可能である。また、ダイヤフラム弁体Dに対するブリード用弁体6の取り付けは、パイロット孔51を形成している筒状凸部56を利用し、この筒状凸部56に貫通孔61を嵌合させることにより行なわれているために、やはりその構造は簡易であり、ブリード用弁体6の組み付け作業も容易である。したがって、本実施形態によれば、優れた逆流防止性能が得られるだけではなく、パイロット式開閉弁V1の製造コストを廉価にする上でも好ましいものとなる。
【0039】
図5は、本発明の他の実施形態を示している。同図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0040】
図5に示す実施形態においては、筒状凸部56にプッシュナット98を外嵌止着させており、このプッシュナット98によってブリード用弁体6が筒状凸部56から抜け外れないように押さえ付けている。このような構成によれば、筒状凸部56にアンダカット部を形成する必要はなく、やはり簡易な作業によってブリード用弁体6を筒状凸部56から抜け外れないように組み付けることができる。本発明では、パイロット孔を形成している筒状凸部に、ブリード用弁体の貫通孔を嵌合させることによって、ダイヤフラムプレートに対するブリード用弁体の取り付けを図るようにしているが、ブリード用弁体が筒状凸部から抜け外れないように固定するための具体的な手段としては、種々の手段を採用することが可能である。プッシュナット以外の部品を用いて、ブリード用弁体の固定を図ってもよい。
【0041】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係るパイロット式開閉弁、およびこれを備えた逆流防止装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0042】
上述した実施形態においては、追加の凸状部53を筒状凸部56に繋がった状態に設けているとともに、ブリード用弁体6の貫通孔としては、筒状凸部56に対応する第1領域61aと追加の凸状部53に対応する第2領域61bとが繋がった1つの貫通孔を形成しているが、本発明はこれに限定されない。追加の凸状部53を筒状凸部56から離間した配置に設け、ブリード用弁体6には、筒状凸部56に嵌合させるための貫通孔と、追加の凸状部53に嵌合させるための追加の貫通孔とを互いに分離させた状態に設けてもよい。
【0043】
本発明において、ブリード用弁体は、可撓性を有するプレート状またはシート状の部材を用いて構成されていればよく、このプレート状またはシート状の部材に対し、さらに別部材が付加された構成とされていてもよい。本発明に係るパイロット式開閉弁は、給湯装置と風呂追い焚き回路とを接続する配管部に設けて、いわゆる注湯弁として用いるのに好適であるが、使用用途はこれに限定されるものではない。同様に、本発明に係る逆流防止
装置の具体的な用途も問わない。
【符号の説明】
【0044】
A 逆流防止装置
D ダイヤフラム弁体
V1 パイロット式開閉弁
2A,2B 第1および第2の逆止弁
3 逃がし弁
4 ダイヤフラム
5 ダイヤフラムプレート
6 ブリード用弁体
7 プランジャ
11 1次側流水路
12 2次側流水路
13 弁開口部
14 弁座
15 背圧室
51 パイロット孔
52 ブリード孔
52a 背圧室側開口部
52A,52B 第1および第2の孔(ブリード孔)
53 追加の凸状部
55 フランジ部
56 筒状凸部
56a アンダカット部
58 切り欠き部
61 貫通孔(ブリード用弁体の)
62 環状突起部
92 スライド型