(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6157266
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】再突入機の加速度誤検知防止装置及び加速度誤検知防止方法
(51)【国際特許分類】
B64G 1/62 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
B64G1/62
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-165010(P2013-165010)
(22)【出願日】2013年8月8日
(65)【公開番号】特開2015-33877(P2015-33877A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】岸野 義宏
(72)【発明者】
【氏名】杉村 文隆
(72)【発明者】
【氏名】森崎 浩武
(72)【発明者】
【氏名】守屋 朝子
(72)【発明者】
【氏名】牧野 隆
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0120020(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0254697(US,A1)
【文献】
特開2001−272062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/00 − 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母船となる宇宙機に宇宙空間から大気圏に再突入するよう分離可能に搭載された再突入機の加速度誤検知防止装置であって、
前記再突入機に設けられ、該再突入機の加速度を計測する加速度計測手段と、
前記加速度計測手段から加速度データを取得する加速度データ取得手段を有し、該加速度データ取得手段から取得した加速度データに基づいて前記再突入機の各種制御を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記宇宙機が宇宙空間から大気圏に再突入して破壊されるときに発生する衝撃加速度を前記加速度計測手段が計測した場合、前記衝撃加速度を計測した時点から該衝撃加速度の影響がなくなるまでの所定の時間に亘り、前記加速度データ取得手段による前記加速度計測手段からの加速度データの取得を中止する、または前記加速度データに基づく判定処理を実行しないように制御することを特徴とする再突入機の加速度誤検知防止装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記各種制御の1つとして、前記加速度計測手段が最大の加速度を計測した場合に所定の時間経過後にパラシュートを開傘するパラシュート開傘手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の再突入機の加速度誤検知防止装置。
【請求項3】
母船となる宇宙機に宇宙空間から大気圏に再突入するよう分離可能に搭載された再突入機の加速度誤検知防止方法であって、
前記再突入機に設けられ、該再突入機の加速度を計測する加速度計測手段から加速度を取得する工程と、
取得した加速度に基づいて前記再突入機の各種制御を行う工程とを有し、
前記再突入機の各種制御を行う工程では、前記加速度計測手段によって計測した加速度を加速度データ取得手段により加速度データとして取得する一方、前記宇宙機が宇宙空間から大気圏に突入して破壊されるときに発生する衝撃加速度が前記加速度計測手段によって計測された場合、前記衝撃加速度を計測した時点から該衝撃加速度の影響がなくなるまでの所定の時間に亘り、前記加速度データ取得手段による前記加速度計測手段からの加速度データの取得を中止する、または前記加速度データに基づく判定処理を実行しないように制御することを特徴とする再突入機の加速度誤検知防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再突入機の加速度誤検知防止装置及び方法に係り、詳しくは大気圏に再突入する再突入機の加速度の誤検知を防止するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙空間に打ち上げた人工衛星等の宇宙機は、その任務を終えると大気圏に再突入させられて、地上の安全な領域へ落下させることが従来から行われている。大気圏に宇宙機を再突入させると、宇宙機の機体は空力加熱により高温に曝される。ここで空力加熱とは、宇宙機が高速で大気圏を通過するために宇宙機の機体前方にある空気が圧縮されて温度が上昇し、高温となった空気によって機体が加熱されることである。再突入させる宇宙機が空力加熱に対する耐熱性を備えていない場合、大気圏に再突入させられた宇宙機は空力加熱により破壊されてしまい、機体の一部が地上に落下することになる。このため、宇宙機の形状を保持したまま地上へ帰還させるためには、その機体に耐熱性を備えている必要がある。
【0003】
宇宙機の任務の目的に応じて、例えば宇宙機に再突入機を搭載し、空力加熱により母船となる宇宙機が破壊されることによって再突入機を分離させ、再突入機を地上に落下させるものがある。
【0004】
母船となる宇宙機に搭載された再突入機を大気圏に再突入させる場合、母船となる宇宙機から電気的なインタフェースが予め用意されている場合がある。このようなインタフェースがあると、宇宙機が再突入により破壊され、再突入機を分離した際に発生する分離信号等により、自身が母船から分離されたことを検知して自身のシーケンスを実行することができる。このシーケンスとは、例えばカメラでの撮像やパラシュート開傘等の各種制御であり、地上でデータを取得したり、再突入機を回収したりするためには非常に重要なものである(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】”何としても地球に帰らせたかった「はやぶさ」”、[online]、宇宙航空研究開発機構、[平成25年1月16日検索]、インターネット<http://www.jaxa.jp/article/special/hayabusareturn/kawaguchi01_j.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなシーケンスは、再突入機に備えられているタイマー及び加速度センサが計測する加速度に基づいて連続して行われるのが一般的である。この一連のシーケンスは宇宙機が再突入機を分離する前に開始され、分離された再突入機は、大気圏中を落下することに伴う加速度に基づいて各シーケンスを実行していく。
【0007】
この加速度センサが計測する加速度には、再突入機の落下に伴う加速度と、宇宙機の破壊により発生する衝撃加速度とが含まれる。再突入機が実行する各シーケンスは落下に伴う加速度に基づいて行うものであるため、宇宙機の破壊により発生する衝撃加速度の影響によって各シーケンスの実行タイミングがずれてしまうことが懸念される。そこで、意図したタイミングで確実に各シーケンスが実行されるようにするために、母船となる宇宙機が再突入機を分離した分離信号を再突入機が検知した後に、再突入機は加速度の計測を開始する必要があった。
【0008】
しかしながら、母船となる宇宙機が再突入機との電気的なインタフェースを有しておらず、宇宙機が大気圏に再突入して破壊されることによって再突入機が分離される場合、再突入機は自身が母船となる宇宙機から分離されたことを検知することができない。このため、再突入機が自身の分離を検知できなくても再突入機のシーケンスを適切なタイミングで実行することが求められていた。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、母船となる宇宙機と再突入機との間に電気的なインタフェースがない場合でも、再突入機の各シーケンスを適切なタイミングで実行することの可能な再突入機の加速度誤検知防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するべく、請求項1の再突入機の加速度誤検知防止装置は、母船となる宇宙機に宇宙空間から大気圏に再突入するよう分離可能に搭載された再突入機の加速度誤検知防止装置であって、前記再突入機に設けられ、該再突入機の加速度を計測する加速度計測手段と、前記加速度計測手段から加速度データを取得する加速度データ取得手段を有し、該加速度データ取得手段から取得した加速度データに基づいて前記再突入機の各種制御を行う制御装置とを備え、前記制御装置は、前記宇宙機が宇宙空間から大気圏に再突入して破壊されるときに発生する衝撃加速度を前記加速度計測手段が計測した場合、前記衝撃加速度を計測した時点から該衝撃加速度の影響がなくなるまでの所定の時間に亘り、前記加速度データ取得手段による前記加速度計測手段からの加速度データの取得を中止する、または前記加速度データに基づく判定処理を実行しないように制御することを特徴とする。
【0011】
請求項2の再突入機の加速度誤検知防止装置では、請求項1において、前記制御装置は、前記各種制御の1つとして、前記加速度計測手段が最大の加速度を計測した場合に所定の時間経過後にパラシュートを開傘するパラシュート開傘手段を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項3の加速度誤検知防止方法は、母船となる宇宙機に宇宙空間から大気圏に再突入するよう分離可能に搭載された再突入機の加速度誤検知防止方法であって、前記再突入機に設けられ、該再突入機の加速度を計測する加速度計測手段から加速度を取得する工程と、取得した加速度に基づいて前記再突入機の各種制御を行う工程とを有し、前記再突入機の各種制御を行う工程では、前記加速度計測手段によって計測した加速度を加速度データ取得手段により加速度データとして取得する一方、前記宇宙機が宇宙空間から大気圏に突入して破壊されるときに発生する衝撃加速度が前記加速度計測手段によって計測された場合、前記衝撃加速度を計測した時点から該衝撃加速度の影響がなくなるまでの所定の時間に亘り、前記加速度データ取得手段による前記加速度計測手段からの加速度データの取得を中止する、または前記加速度データに基づく判定処理を実行しないように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の再突入機の加速度誤検知防止装置によれば、母船となる宇宙機が大気圏に突入して破壊されるときに発生する衝撃加速度が計測された場合、制御装置は、衝撃加速度の影響がなくなるまでの時間に亘って、計測された加速度の取得を中止する、または加速度に基づく判定処理を実行しないように制御する。
これにより、宇宙機と再突入機との間に電気的なインタフェースがなく、再突入機が宇宙機から分離したことを自身で検知できなくても、宇宙機が破壊されるときに発生する衝撃加速度と、再突入機の落下に伴う加速度とを区別することができる。従って再突入機が実行する各シーケンスを加速度に基づいて適切なタイミングで実行することができる。
【0014】
請求項2の再突入機の加速度誤検知防止装置によれば、加速度の最大値を計測した場合、所定の時間経過後にパラシュートを開傘するので、再突入機の落下速度を減速させて緩降下させることができ、地上に軟着陸させたり水面に軟着水させたりすることができる。従って再突入機に搭載されている電子機器等の破損を防ぐことができるので、再突入機を回収したり、再突入機と通信してデータを取得したりすることが可能となる。
【0015】
請求項3の方法によれば、前述した請求項1の加速度誤検知防止装置と同様に、再突入機が実行する各シーケンスを加速度に基づいて適切なタイミングで実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の再突入機を含む宇宙機の部分断面図である。
【
図3】(A)は再突入機の外装が分離する前の状態、(B)は外装が2つに分離した状態、(C)はパラシュートを引き出した状態、(D)はパラシュートを開傘した状態を示す概略図である。
【
図4】再突入機の再突入シーケンスを示す図である。
【
図5】本発明に係る加速度誤検知防止ルーチンのフローチャートを示す図である。
【
図6】加速度センサが計測した加速度のグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、宇宙機1の部分断面図を示す図である。宇宙機1は、例えば国際宇宙ステーション(図示せず)に物資を補給する補給機(例えばHTV(H-II Transfer Vehicle))である。宇宙機1は、与圧ユニット2、非与圧ユニット4、制御ユニット6、及び推進ユニット8を備えている。
【0018】
与圧ユニット2は、例えば国際宇宙ステーションのクルーが内部に入って作業できるよう与圧されており、内部には補給物資(図示せず)が搭載されている。与圧ユニット2の内部には、再突入機(加速度誤検知防止装置)12が固定されている。
非与圧ユニット4には、例えば国際宇宙ステーションの船外で用いる実験装置や交換するための機器等が内部に搭載されている。
【0019】
制御ユニット6は、推進ユニット8を制御して宇宙機1の航法制御、宇宙機1に搭載されている機器への電力供給、地上や国際宇宙ステーションとの通信等を行うものである。
推進ユニット8は、推進剤を収納したタンク(図示せず)と、当該タンクから供給された推進剤を高速ガスとして噴出し、推力を発生するスラスタ10とを備えている。なお、スラスタ10は、推進ユニット8の背面側だけでなく宇宙機1の各部にも配置されているが、図示は省略する。
【0020】
再突入機12は、コンテナ13に覆われて与圧ユニット2に固定されている。再突入機12は、大気圏への再突入したときに発生する空力加熱に耐え得る耐熱性の外装12aで覆われている。コンテナ13は、再突入機12が大気圏へ突入したときに発生する空力加熱に耐え得る耐熱性を有していない。このため、宇宙機1が破壊されることにより再突入機12がコンテナ13と共に宇宙機1から分離されると、コンテナ13も空力加熱により破壊され、再突入機12だけが単独で落下することになる。
【0021】
再突入機12は、母船となる宇宙機1との電気的なインタフェースを有していない。このため再突入機12は、宇宙機1が大気圏に突入して空力加熱により破壊されることによって宇宙機1から分離されても、分離したことを知らせる信号を宇宙機1から受信することはできない。
【0022】
図2は、再突入機12の概略構成図を示している。再突入機12は、加速度センサ(加速度計測手段)14、タイマ16、制御装置18、及びパラシュート20を備えている。加速度センサ14及びタイマ16は、制御装置18に電気的に接続されている。加速度センサ14は、計測した加速度を制御装置18に入力する。タイマ16は、制御装置18からの入力信号をトリガにして時間の計測を開始し、制御装置18から指定された時間が経過すると制御装置18へ通知する。
【0023】
制御装置18は、中央演算処理装置(以下、CPUという)やROM、RAM等のメモリ(図示せず)から構成されたコンピュータであって、加速度センサ14から加速度データを取得する加速度データ取得部(加速度データ取得手段)22及びパラシュート開傘部(パラシュート開傘手段)24等を備えている。当該メモリには各プログラムが格納されており、制御装置18がこれらのプログラムを実行することによって、加速度データ取得部22、パラシュート開傘部24等の機能が発揮される。なお、制御装置18は、加速度データ取得部22、パラシュート開傘部24以外の機能も備えているが、本実施形態では説明を省略する。また、当該メモリに格納されている各種プログラムは、ハードディスク、光ディスク、メモリカード等の記憶媒体(図示せず)に記録されていたものであって、例えばこの記憶媒体から当該メモリに各種プログラムが供給される。
【0024】
制御装置18は、消費電力を抑えるために、後述するように宇宙機1の再突入シーケンス(各種制御)が開始される直前まで電源が切られている。
【0025】
パラシュート20は再突入機12に収容されており、パラシュート開傘部24がパラシュート20の展開を指示する指令信号を出力することによってパラシュート20が開傘される。詳しくは
図3(A)〜(D)に基づいて説明する。パラシュート開傘部24がパラシュート20を展開する指令信号を出力すると、
図3(A)、(B)に示すように再突入機12の外装12aが分離して、
図3(C)に示すように再突入機12に収容されていたパラシュート20を引き出し、
図3(D)に示すようにパラシュート20を開傘する。なお再突入機12は、加速度センサ14、タイマ16,制御装置18、パラシュート20以外の構成も備えているが、本実施形態では説明を省略する。
【0026】
次に、このように構成された再突入機12の制御装置18で行う再突入シーケンスについて説明する。
図4は、再突入機12の再突入シーケンスを示す図、
図5は、本発明に係る加速度誤検知防止ルーチンのフローチャート、
図6は、加速度センサ14が計測した加速度の一例を示すグラフである。以下、これらの図に基づいて説明する。なお、以下に述べる加速度誤検知防止ルーチンのフローチャートにおける各ステップの処理は、制御装置18のメモリに格納されているプログラムをCPUで実行することによって行われる。
【0027】
制御装置18は、例えば宇宙機1が
図4のシーケンスA101に到達し、大気圏への再突入に向けて軌道を変更するためにスラスタ10を噴射したことを加速度センサ14が検出すると、自動的に電源が入るように構成されている。制御装置18の電源が入ると、加速度誤検知防止ルーチンが開始される。
【0028】
図5のステップS1では、加速度センサ14の加速度Gの計測を開始する。なお、加速度Gの計測が開始されると、加速度センサ14が計測した加速度Gは所定時間毎に取得され、後述するステップS2以降の各ステップで利用される。
【0029】
続くステップS2では、加速度センサ14が計測した加速度Gが所定の加速度となる閾値を超えたか否かを判定する。
図6に示すように、加速度センサ14で計測される加速度は計測開始から安定して変化していくものの、ある時点、即ち時間幅T1にある加速度のように大きく変化して不安定になることがある。これは、例えば
図4のシーケンスA102に示す高度78km付近で母船となる宇宙機1の主要部が空力加熱により破壊され始め、シーケンスA103に示すように宇宙機1が破壊されて再突入機12が宇宙機1から放出されることにより生じる衝撃加速度のためである。この衝撃加速度のように加速度が不安定な状態のまま後述するステップS5を実行してしまうと、加速度の最大値が検出されたと誤って判定してしまう虞がある。このため、加速度センサ14が計測した加速度Gが、宇宙機1が破壊し始めるときの微小な衝撃加速度、例えば0.5Gを超えたか否かを本ステップで判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合には、加速度センサ14が衝撃加速度を計測したとして、ステップS3へ進む。一方、当該判定結果が偽(No)の場合には、衝撃加速度を計測していないとして、所定時間経過後、再びステップS2へ戻る。
【0030】
ステップS3では、加速度センサ14が計測している加速度Gを予め規定された規定時間マスキングするために、タイマ16が経過時間Tの計測を開始する。経過時間Tが計測されている間、加速度センサ14が計測する加速度Gを無視し、加速度データ取得部22での加速度データの取得を中止する。ここで予め規定された規定時間とは、宇宙機1の破壊に伴い発生する不安定な衝撃加速度が収束する、つまり宇宙機1の破壊による衝撃加速度の影響がなくなり、加速度Gが安定するために十分な時間である。この時間幅は、加速度Gが最大値Gmaxに達する時間Tmaxにはかからない幅である。
【0031】
ステップS4では、経過時間Tが予め規定された規定時間を超えたか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合には、衝撃加速度が収束したとしてステップS5へ進む。一方、当該判定結果が偽(No)の場合、経過時間Tはまだ規定時間を超えておらず、衝撃加速度がまだ収束していないとして、所定時間経過後に再びステップS4へ戻る。
【0032】
ステップS5では、加速度センサ14が計測した加速度Gが最大値Gmaxに達したか否かを判定する。詳しくは、今回取得した加速度Gが前回取得した加速度Gより小さいか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合、加速度センサ14が計測した加速度Gが前回取得した加速度Gより小さいので、加速度Gが最大値Gmaxに達したと判定してステップS6へ進む。一方、当該判定結果が偽(No)の場合、加速度センサ14が計測した加速度Gが前回取得した加速度G以上なので、加速度は最大値に達していないと判定して、所定時間経過後、ステップS5に戻る。
【0033】
ステップS6では、ステップS5から所定の時間経過後、パラシュート20を開傘する。詳しくは、ステップS5で加速度Gが最大値Gmaxに達したと判定された後にパラシュート20を開傘するが、要求されている高度に応じてパラシュート20を開傘する必要がある。このため、加速度センサ14が計測した加速度Gが最大値Gmaxに達した高度から要求されている高度まで再突入機12が落下するために要する時間を所定の時間とし、タイマ16が所定の時間を計測する。タイマ16から所定の時間が経過したことを通知されると、シーケンスA104に示すようにパラシュート20を開傘する。
【0034】
パラシュート20を開傘することで再突入機12の落下速度を減速させて緩降下させることができ、シーケンスA105に示すように、再突入機12は安全な海域に軟着水することができる。これにより、再突入機12内部の制御装置18等が着水の衝撃で壊れてしまうことを防ぐことができ、例えば人工衛星を介して制御装置18に蓄積された計測データ等を取得することが可能となる。なお、再突入機12が安全な海域に着水する場合、再突入機12は海面を浮遊するための浮き機構を備えていてもよい。また、再突入機12は、陸地の安全な領域に着陸するようにしてもよい。
【0035】
このように、本実施形態では、再突入機12に対して母船となる宇宙機1が大気圏に突入して破壊を開始する初期の衝撃加速度を加速度センサ14が計測した場合、制御装置18は、宇宙機1の破壊に伴い不安定になる衝撃加速度が安定するまでの時間、加速度センサ14が計測する加速度を無視し、加速度データ取得部22での加速度データの取得を中止する。
【0036】
これにより、宇宙機1と再突入機12との間に電気的なインタフェースがなく、宇宙機1から再突入機12が分離した分離信号が与えられなくても、宇宙機1の破壊に伴う衝撃により発生する衝撃加速度を再突入機12の落下に伴う加速度と区別することができる。従って再突入機12が再突入に伴い実行する各処理を、加速度に基づいて適切なタイミングで実行することができる。
【0037】
また、加速度が最大値に達した後、所定の時間経過後にパラシュート20を開傘するので、再突入機12の落下速度を減速して緩降下させ、安全な海域に軟着水させることができ、制御装置18等の電子機器の破損を防止することができる。従って、着水した再突入機12を回収したり、通信によりデータを取得したりすることもできる。
【0038】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態では、再突入機12が大気圏に再突入して実行するシーケンスとしてパラシュート20の開傘について説明したが、これに限られず、再突入機12に撮像装置を設け、加速度センサ14が計測する加速度Gに基づいて、所望のタイミングで周囲を撮影するシーケンスを設けるようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、ステップS2で加速度Gが所定の加速度を超えた場合、予め規定された時間加速度Gをマスキングするとしているが、加速度の最大値Gmaxを誤検出してしまうことを防止できればこれに限られない。つまり、加速度Gが所定の加速度を超えた場合、予め規定された時間、ステップS5の加速度が最大値Gmaxに達したか否かの判定を実行しないように制御できればよい。
【符号の説明】
【0041】
1 宇宙機
12 再突入機(加速度誤検知防止装置)
14 加速度センサ(加速度計測手段)
18 制御装置
20 パラシュート
22 加速度データ取得部(加速度データ取得手段)
24 パラシュート開傘部(パラシュート開傘手段)