(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アモルファス化合物は、L−酒石酸ビス(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)、(4−t−ブチルシクロヘキシル)(シクロヘキシル)−L−酒石酸、L−酒石酸ジ−DL−メンチル、これらの立体異性体および混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の転相インク。
前記結晶性化合物が、L−酒石酸ジベンジル、L−酒石酸ジフェネチル、L−酒石酸ビス(3−フェニル−1−プロピル)、L−酒石酸ビス(2−フェノキシエチル)、L−酒石酸ジフェニル、L−酒石酸ビス(4−メチルフェニル)、L−酒石酸ビス(4−メトキシフェニル)、L−酒石酸ビス(4−メチルベンジル)、L−酒石酸ビス(4−メトキシベンジル)、およびこれらの立体異性体および混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の転相インク。
【発明を実施するための形態】
【0009】
アモルファス化合物と;結晶性化合物と;任意要素の分散剤と;任意要素の共力剤と;任意要素の着色剤と;10〜80個の炭素原子、15〜60個の炭素原子、または20〜55個の炭素原子を含むアルキル長鎖を有するアルコールとを含む、転相インクが提供される。
【0010】
アルコールは、直鎖または分岐鎖、置換または非置換、飽和または不飽和であってもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、アルコールは、官能基化されていない材料をある割合で含む。いくつかの実施形態では、アルコールは、直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環状、置換、非置換のアルキル基から選択されるアルキル基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、ホウ素、リン)がアルキル基中に存在していてもよい、アルキル基;非置換アリール基および置換アリール基を含め、上述のようなヘテロ原子がアリール基中に存在していてもよい、アリール基;非置換および置換のアルキルアリール基を含み、アルキルアリール基のアルキル部分が、直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、および/または環状であってもよく、上述のようなヘテロ原子が、アルキルアリール基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方中に存在していてもよい、アルキルアリール基;非置換および置換のアリールアルキル基を含み、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、および/または環状であってもよく、上述のようなヘテロ原子が、アリールアルキル基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方中に存在していてもよい、アリールアルキル基を含むが、但し、アルコールは、10〜80個の炭素原子、または15〜60個の炭素原子、または20〜55個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルキル長鎖を有する。
【0012】
アルコールは、一級アルコールであってもよく、または二級アルコールであってもよい。いくつかの実施形態では、アルコールは、直鎖一級アルコールである。
【0013】
転相インクは、アモルファス化合物と;結晶性化合物と;任意要素の分散剤と;任意要素の共力剤と;任意要素の着色剤と;以下の式の直鎖一級アルコール
R−CH
2−OH
とを含み、式中、Rは、10〜80個の炭素原子、または15〜60個の炭素原子、または20〜55個の炭素原子を含むアルキル基である。いくつかの実施形態では、R−CH
2−OHは、特定の炭素鎖長を有するアルコールであり、いくつかの実施形態では、Rは、10〜80個の炭素原子、または15〜60個の炭素原子、または20〜55個の炭素原子を含むアルキル基である。いくつかの実施形態では、R−CH
2−OHは、式R−CH
2−OHのアルコールから選択されるアルコールの組み合わせを含むアルコール混合物であり、混合物中のそれぞれのアルコールについて、Rは、独立して、10〜80個の炭素原子、または15〜60個の炭素原子、または20〜55個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。いくつかの実施形態では、アルコールは、15〜60個の炭素原子または20〜55個の炭素原子を含むアルキル長鎖を有する直鎖一級アルコールである。
【0014】
本明細書で使用する場合、「アルキル」という用語は、脂肪族炭化水素基を指す。アルキル部分は、「飽和アルキル」基であってもよく、飽和アルキル基とは、アルケン部分またはアルキン部分を含まないことを意味する。アルキル部分は、「不飽和アルキル」部分であってもよく、不飽和アルキル部分とは、少なくとも1つのアルケン部分またはアルキン部分を含むことを意味する。「アルケン」部分とは、少なくとも2個の炭素原子と、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合とからなる基を指し、「アルキン」部分は、少なくとも2個の炭素原子と、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合とからなる基を指す。アルキル部分は、飽和であるか、または不飽和であるかにかかわらず、分岐鎖、直鎖の鎖または環状であってもよい。
【0015】
アルキル基は、置換または非置換であってもよい。置換されている場合、水素以外の任意の基が置換基となり得る。置換されている場合、置換基は、個々に独立して以下の非限定的な具体例のリストから選択される1つ以上の基である。一置換アミノ基および二置換アミノ基を含む、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、ハロ、アミノ。典型的なアルキル基としては、いかなる様式にも限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三級ブチル、ペンチル、ヘキシル、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。それぞれの置換基がさらに置換されていてもよい。
【0016】
「アリール」という用語は、本明細書で使用する場合、1個、2個または3個の環を含む炭素環芳香族系を意味し、このような環が、側鎖の様式で一緒に接続していてもよく、または縮合していてもよい。「アリール」という用語は、芳香族基、例えば、ベンジル、フェニル、ナフチル、アントラセニルおよびビフェニルを包含する。
【0017】
「アリールアルキル」という用語は、本明細書で使用する場合、単独または組み合わせて、アルキル基を介して親分子部分に接続するアリール基を指す。「アルカンジイル」という用語は、アルカン基の二価の基を指す。このようなアルカンジイルは、一般式−Cn(RxRy)n−を有し、RxおよびRyは、それぞれ独立して、低級アルキル基または水素である。
【0018】
直鎖一級アルコールは、融点が65〜140℃、または70〜130℃、または75〜120℃である。融点は、示差走査熱量測定(DSC)のような任意の方法によって測定することができる。
【0019】
直鎖一級アルコールは、150℃での粘度が1〜20センチポイズ、または1〜10センチポイズ、または3〜8センチポイズである。粘度は、ASTM−D−3236に記載される方法のような任意の方法によって測定することができる。
【0020】
直鎖一級アルコールは、ヒドロキシル価が30〜180mg KOH/サンプル(g)、55〜150mg KOH/サンプル(g)、または60〜140mg KOH/サンプル(g)、または65〜130mg KOH/サンプル(g)である。ヒドロキシル価は、ASTM−E−222に記載される方法のような任意の方法によって測定することができる。
【0021】
本発明の転相インクで使用するのに適した直鎖一級アルコールは、Unilin(商標)350アルコール、Unilin(商標)425アルコール、Unilin(商標)550アルコールおよびUnilin(商標)700アルコールを含むUnilin(商標)アルコールシリーズから選択することができる。本発明の転相インクで使用するのに適切な選択されるUnilin(商標)アルコールの性質を表1にまとめている。さらなる詳細のために、http://www.bakerhughes.com/news−and−media/resources/technical−data−sheet/unilin−alcoholsを参照。
【表1】
【0022】
固体インク技術は、印刷の能力を広げ、多くの市場にわたる顧客基盤を広げ、印刷用途の多様性は、印刷ヘッド技術、印刷プロセスおよびインク材料を有効に組み込むことによって促進されるだろう。固体インク組成物は、室温(RT)(例えば、20〜27℃)で固体であり、溶融したインクが基材に塗布されるような高温で溶融することを特徴とする。現在のインクの選択肢は、多孔性の紙基材ならうまくいくが、これらの選択肢は、コーティングされた紙基材では常に満足いくものというわけではない。
【0023】
以前、固体インク配合物中で結晶性低分子化合物とアモルファス低分子化合物の混合物を用いると、堅牢性の高いインクを与え、特に、コーティングされた紙の上で堅牢性の高い画像を示す固体インクを与えることを発見した。米国特許出願第13/095,636号を参照。
【0024】
しかし、このアプローチを用いることは、驚くべきことに、結晶性材料またはアモルファス材料の既知の性質に依存する。結晶性材料の場合、低分子は、一般的に、固化すると結晶化する傾向があり、低分子量有機固体は、一般的に結晶である。結晶性材料は、一般的に硬度が大きく、耐性が大きいが、このような材料は、きわめて脆くもあり、その結果、主に結晶性のインク組成物を用いて作られる印刷塊は、かなり損傷を受けやすい。アモルファス材料の場合、高分子量アモルファス材料(例えばポリマー)は、高温では粘性があり粘着性の液体であるが、高温で十分に低い粘度を示さない。その結果、このポリマーは、所望の吐出温度(140℃)で印刷ヘッドノズルから吐出させることができない。
【0025】
さらに、以前、結晶性化合物とアモルファス化合物のブレンドによって、堅牢性の高い固体インクを得ることができることを発見した。米国特許出願第13/456,805号を参照。
【0026】
本発明の転相インクは、特に、コーティング基材の上で、印刷した画像の堅牢性を高める。本発明の転相インク(いくつかの実施形態では、顔料系転相インク)の引っ掻き性および折りたたんだときのしわといった特徴は、直鎖一級アルコール(例えば、Baker Hughesから商標名Unilin(商標)で入手可能なもの)を組み込むことによって、顕著に高まる。本明細書に提供される折りたたんだときのしわおよび耐引っ掻き性が向上することは、次世代の堅牢性が高いインクを可能にする鍵である。
【0027】
本発明の転相インク組成物は、(1)結晶性化合物と(2)アモルファス化合物のブレンドを、一般的に、それぞれ60:40〜95:5の重量比で含む。いくつかの実施形態では、結晶性化合物とアモルファス化合物の重量比は、65:35〜95:5、または70:30〜90:10、または70:30〜80:20である。他の実施形態では、結晶性化合物とアモルファス化合物を、それぞれ1.5〜20、または2.0〜10の重量比でブレンドする。
【0028】
それぞれの化合物または構成要素は、固体インクに特定の性質を付与し、これらのアモルファス化合物と結晶性化合物のブレンドを組み込んで得られたインクは、コーティングされていない基材およびコーティングされた基材の上で優れた堅牢性を示す。インク配合物中の結晶性化合物は、冷却すると、迅速な結晶化によって転相を進ませる。また、結晶性化合物は、最終的なインク膜の構造も固定し、アモルファス化合物の粘着性を減らすことによって、硬いインクを作り出す。アモルファス化合物は、印刷したインクに粘着性を与え、堅牢性を付与する。
【0029】
アモルファス化合物は、以下に示す式Iの酒石酸エステルまたは式IIのクエン酸エステルを含んでいてもよく、
【化1】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立してアルキル基であり、ここで、アルキルは、1〜40個の炭素原子を含み、直鎖、分岐鎖または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であるか、または置換または非置換の芳香族基またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびt−ブチルから選択される1個以上のアルキル基で置換されたシクロヘキシル基である。いくつかの実施形態では、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびt−ブチルから選択される1個以上のアルキル基で置換されたシクロヘキシル基である。
【0031】
式Iを参照すると、いくつかの実施形態では、R
1およびR
2のうち、1つは2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、R
1およびR
2のうち、他の1つは2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、またはシクロヘキシルであるか、または、R
1およびR
2のうち、1つは4−t−ブチルシクロヘキシルであり、R
1およびR
2のうち、他の1つはシクロヘキシルである。特定の実施形態では、R
1およびR
2は、それぞれ2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルである。特定の実施形態では、R
1は2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、R
2は4−t−ブチルシクロヘキシルである。いくつかの実施形態では、R
1は2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、R
2はシクロヘキシルである。いくつかの実施形態では、R
1は4−t−ブチルシクロヘキシルであり、R
2はシクロヘキシルである。
【0032】
式IIを参照すると、いくつかの実施形態では、R
3、R
4およびR
5のうち、1つは2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、R
3、R
4およびR
5のうち、他の1つは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシルまたはシクロヘキシルであるか、または、R
3、R
4およびR
5のうち、1つは4−t−ブチルシクロヘキシルであり、R
3、R
4およびR
5のうち、他の1つはシクロヘキシルである。いくつかの実施形態では、R
3、R
4およびR
5は、それぞれ2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルである。いくつかの実施形態では、R
3は2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、R
4およびR
5は、それぞれ、4−t−ブチルシクロヘキシルである。特定の実施形態では、R
3は2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、R
4およびR
5は、それぞれシクロヘキシルである。特定の実施形態では、R
3は4−t−ブチルシクロヘキシルであり、R
4およびR
5は、それぞれシクロヘキシルである。
【0033】
ある種の適切なアモルファス材料が米国特許出願第13/095,784号に開示されている。アモルファス材料は、以下の式を有する酒石酸エステルを含んでいてもよく、
【化2】
式中、R
1およびR
2は、それぞれ他と独立して、つまり、これらが同じであってもよく、または異なっていてもよいことを意味し、アルキル基からなる群から選択され、ここで、アルキル部分は、1〜40個の炭素原子を含み、直鎖、分岐鎖または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であるか、または置換または非置換の芳香族基またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であってもよい。いくつかの実施形態では、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびt−ブチルから選択される1個以上のアルキル基で置換されたシクロヘキシル基である。いくつかの実施形態では、R
1およびR
2は、それぞれ2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルである。
【0034】
酒石酸骨格は、L−(+)−酒石酸、D−(−)−酒石酸、DL−酒石酸またはメソ酒石酸、およびこれらの混合物から選択される。酒石酸のR基および立体化学に依存して、エステルは、結晶または安定なアモルファス化合物を生成することができる。いくつかの実施形態では、アモルファス化合物は、L−酒石酸 ジ−L−メンチル、L−酒石酸 ジ−DL−メンチル(DMT)、DL−酒石酸 ジ−L−メンチル、DL−酒石酸 ジ−DL−メンチル、およびこれらの任意の立体異性体および混合物からなる群から選択される。
【0035】
アモルファス化合物は、米国特許出願第13/095,795号に開示されるクエン酸エステルを含んでいてもよい。これらのアモルファス材料は、クエン酸のエステル化反応によって合成される。クエン酸を種々のアルコールと反応させ、米国特許出願第13/095,795号に示される合成スキームにしたがってトリエステルを製造した。アモルファス化合物は、酒石酸のエステル化反応によって合成される。
【0036】
これらの材料は、吐出温度付近(140℃以下、または100〜140℃、または105〜140℃)では比較的低い粘度(<10
2センチポイズ(cp)、または1〜100cp、または5〜95cp)を示すが、室温では非常に高い粘度を示す(>10
5cp)。
【0037】
特に、L−酒石酸 ジ−DL−メンチル(DMT)は、本発明のインク実施形態でアモルファス化合物として使用するのに特に適していることがわかった。
【0038】
アモルファス構成要素を合成するために、酒石酸を種々のアルコールと反応させ、米国特許出願第13/095,784号に示される合成スキームにしたがってジエステルを製造した。エステル化に、例えば、メントール、イソメントール、ネオメントール、イソネオメントールおよびこれらの任意の立体異性体および混合物のような種々のアルコールを使用してもよい。脂肪族アルコールの混合物をエステル化に使用してもよい。2種類の脂肪族アルコールの混合物をエステル化に使用してもよい。脂肪族アルコールのモル比は、25:75〜75:25、40:60〜60:40、または50:50であってもよい。酒石酸と反応させたときに、混合物がアモルファス化合物を形成する適切な脂肪族アルコールとしては、シクロヘキサノールおよび置換シクロヘキサノール(例えば、2−、3−、または4−tert−ブチル−シクロヘキサノール)が挙げられる。この反応に2モル当量以上のアルコールを使用し、酒石酸のジエステルを製造してもよい。1モル当量のアルコールを使用する場合、結果は、ほとんどモノエステルである。
【0039】
いくつかの実施形態では、アモルファス化合物は、L−酒石酸 ビス(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)または(4−t−ブチルシクロヘキシル)−(シクロヘキシル)−L−酒石酸、L−酒石酸 ジ−DL−メンチル、および任意の立体異性体を含む。
【0040】
適切なアモルファス構成要素としては、Morimitsuらに対する米国特許出願第13/095,795号に開示されるものが挙げられる。アモルファス材料は、以下の構造を有する化合物を含んでいてもよく、
【化3】
式中、R
3、R
4およびR
5は、独立してアルキル基であり、ここで、アルキル部分は、1〜40個の炭素原子を含み、直鎖、分岐鎖または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であるか、または置換または非置換の芳香族基またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であってもよい。クエン酸 トリ−DL−メンチル(TMC)は、適切な熱特性およびレオロジー特性を与え、印刷画像に堅牢性を付与する望ましいアモルファス候補物質である。
【0041】
これらのアモルファス材料は、クエン酸のエステル化反応によって合成される。クエン酸を種々のアルコールと反応させ、本明細書に開示する合成スキームにしたがってトリエステルを製造した。エステル化反応でクエン酸と少なくとも1つのアルコールから合成したアモルファス化合物を用いることによって、転相インク組成物が得られる。
【0042】
アモルファス化合物は、以下の式を有するジウレタン化合物を含んでいてもよく、
【化4】
式中、Zは、以下のもの
【化5】
からなる群から選択され、Zは、*と表示した結合を介してジウレタンの式の窒素原子のいずれかの側に接続することができ、R
6およびR
7は、それぞれ、(i)アルキルが、1〜8個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖であってもよい、アルキル基、または(ii)アリール基であり;但し、Zが−(CH
2)
6−である場合、R
6およびR
7の両方が−(CH
2)
n−C
6H
5(n=0〜4)ではない。R
6およびR
7は両方とも、メチル、エチル、プロピル、(n−、iso−、sec−およびt−)ブチル、(n−、iso−、t−)ペンチル、(n−、iso−、t−)ヘキシル、(n−、iso−、t−)ヘプチル、または(n−、iso−、t−)オクチルを含む任意の直鎖アルキルまたは分岐鎖アルキルであってもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、R
6およびR
7は、独立して、以下のもの
【化6】
からなる群から選択される。
【0044】
いくつかの実施形態では、zは−(CH
2)
6−であり、R
6およびR
7は、両方とも
【化7】
であり、R
6およびR
7は、縮合した環アルコール、ヒドロアビエチルアルコール(例えば、ロジンアルコール)、イソボルネオールおよびオクチルフェノールエトキシレート(例えば、Igepal(登録商標)CA210)であってもよい。
【0045】
これらの材料は、吐出温度付近(140℃以下、または100〜140℃、または105〜140℃)では比較的低い粘度(<10
2センチポイズ(cp)、または1〜100cp、または5〜95cp)を示すが、室温では非常に高い粘度を示す(>10
5cp)。
【0046】
アモルファス化合物を結晶性化合物とともに配合し、固体インク組成物を作成する。インク組成物は、良好なレオロジープロフィールを示す。コーティングされた紙の上に、K−プルーフによって固体インク組成物を用いて作成した印刷サンプルは、優れた堅牢性を示す。酒石酸をエステル基剤として用いると、低コストであり、潜在的に生物由来の供給源から得られるため、さらなる利点を有する。
【0047】
エステル化反応で酒石酸と少なくとも1つのアルコールから合成した新規のアモルファス化合物を用いることによって、固体インク組成物が得られる。固体インク組成物は、アモルファス化合物を、結晶性化合物および着色剤と組み合わせて含む。本発明の実施形態は、望ましい粘度を維持しつつ、液体から固体への迅速な相転移を実現し、硬くて堅牢性の高い印刷画像を促進するために、一定のバランスでアモルファス化合物と結晶性化合物とを含む。このインクを用いて作られた印刷物は、市販のインクと比べて利点を示した(例えば、引っ掻きに対する堅牢性が良好である)。本発明の酒石酸エステルは、固体インクのためのアモルファス化合物を与え、望ましいレオロジープロフィールを有し、インクジェット印刷の多くの要求事項を満たす堅牢性の高いインクを生成することを発見した。
【0048】
いくつかの実施形態では、アモルファス材料は、インク組成物の合計重量の5〜40重量%、または5〜35重量%、または10〜30重量%の量で存在する。
【0049】
結晶性構成要素は、アミド、芳香族エステル、直鎖ジエステル、ウレタン、スルホン、芳香族基を有する酒石酸エステル誘導体、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0050】
適切な結晶性構成要素としては、米国特許出願第13/457,221号に開示されているものが挙げられる。これらの結晶性材料は、以下の構造を含み、
【化8】
式中、R
8およびR
9は、同じであってもよく、または異なっていてもよく、R
8およびR
9は、それぞれ独立して、(i)1〜40個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和のアルキル基であってもよく、ヘテロ原子がアルキル基中に存在していてもよい、アルキル基、(ii)置換または非置換のアリールアルキル基であってもよく、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分岐鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和であってもよく、ヘテロ原子は、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、いくつかの実施形態では、4〜40個の炭素原子を含むアリールアルキル基、(iii)置換または非置換の芳香族基であってもよく、置換基は、直鎖、分岐鎖、環状または非環状のアルキル基であってもよく、ヘテロ原子が芳香族基中に存在していてもよく、3〜40個の炭素原子を含む芳香族基からなる群から選択される。
【0051】
適切な結晶性構成要素としては、Morimitsuらに対する米国特許出願第13/456,916号に開示されているものが挙げられ、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。これらの結晶性材料は、以下の構造を含み、
【化9】
式中、R
10およびR
11は、同じであってもよく、または異なっていてもよく、R
10およびR
11は、それぞれ独立して、(i)直鎖または分岐鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和のアルキル基であってもよく、ヘテロ原子がアルキル基中に存在していてもよく、いくつかの実施形態では、1〜40個の炭素原子を含むアルキル基、(ii)置換または非置換のアリールアルキル基であってもよく、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分岐鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和であってもよく、ヘテロ原子は、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、いくつかの実施形態では、4〜40個の炭素原子を含むアリールアルキル基、(iii)置換または非置換の芳香族基であってもよく、置換基は、直鎖、分岐鎖、環状または非環状のアルキル基であってもよく、ヘテロ原子が芳香族基中に存在していてもよく、3〜40個の炭素原子を含む芳香族基からなる群から選択されるが、但し、R
10およびR
11のうち、少なくとも1つは芳香族基であり;pは、0または1である。
【0052】
結晶性芳香族エーテルの非限定例としては、
【化10】
およびこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
適切な結晶性構成要素としては、米国特許出願第13/095,555号に開示されるものが挙げられる。これらの結晶性材料は、以下の構造を有する脂肪族の直鎖二酸のエステルを含み、
【化11】
式中、R
12は、置換または非置換のアルキル鎖であってもよく、−(CH
2)
1−から−(CH
2)
12−からなる群から選択され、R
13およびR
14は、お互いに他と独立して、置換または非置換の芳香族基またはヘテロ芳香族基からなる群から選択され、置換基は、アルキル基を含み、アルキル部分は、直鎖、分岐鎖または環状であってもよい。
【0054】
適切な結晶性構成要素としては、米国特許出願第13/456,619号に開示されるものが挙げられる。これらの結晶性材料は、以下の構造を有するジウレタンを含み、
【化12】
式中、Qは、アルカンジイルであり;R
15およびR
16は、それぞれ独立して、1個以上のアルキルで置換されたフェニルまたはシクロヘキシルであり;iは、0または1であり;jは、0または1であり;pは、1〜4であり;qは、1〜4である。いくつかの実施形態では、R
15およびR
16は、それぞれ独立して、1個以上のメチルまたはエチルで置換されたフェニルまたはシクロヘキシルである。このような実施形態のうち、特定のものでは、R
15およびR
16は、フェニルである。特定の実施形態では、Qは−(CH
2)
n−であり、nは、4〜8である。特定の実施形態では、nは6である。特定の実施形態では、R
15およびR
16は、それぞれ独立して、ベンジル、2−フェニルエチル、2−フェノキシエチル、C
6H
5(CH
2)
4−、シクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシル、3−フェニルプロパニル、3−メチルシクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−メチルシクロヘキシルメチル、3−メチルシクロヘキシルメチル、4−メチルシクロヘキシルメチル、4−エチルシクロヘキサニルから選択される。
【0055】
適切な結晶性構成要素としては、米国特許出願第13/457,323号に開示されるものが挙げられる。これらの結晶性構成要素は、以下の構造を有するスルホン化合物であり、
【化13】
式中、R
17およびR
18は、同じであってもよく、または異なっていてもよく、R
17およびR
18は、それぞれ他と独立して、(i)直鎖または分岐鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和のアルキル基であってもよく、ヘテロ原子がアルキル基中に存在していてもよく、いくつかの実施形態では、1〜40個の炭素原子を含むアルキル基、(ii)置換または非置換のアリールアルキル基であってもよく、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分岐鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和であってもよく、ヘテロ原子は、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、いくつかの実施形態では、4〜40個の炭素原子を含むアリールアルキル基、(iii)置換または非置換の芳香族基であってもよく、置換基は、直鎖、分岐鎖、環状または非環状のアルキル基であってもよく、ヘテロ原子が芳香族基中に存在していてもよく、3〜40個の炭素原子を含む芳香族基からなる群から選択される。
【0056】
いくつかの実施形態では、R
17およびR
18は、それぞれ独立して、1個以上のハロ、アミノ、ヒドロキシまたはシアノ基で置換されたアルキルまたはアリール、およびこれらの組み合わせであるか、またはR
17およびR
18と、これらが接続しているS原子とを合わせてヘテロ環を形成する。いくつかの実施形態では、R
17およびR
18は、それぞれ独立して、置換アルキル、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチルまたはt−ブチルである。いくつかの実施形態では、R
6およびR
7は、それぞれ独立して、置換アリール、例えば、フェニルまたはベンジルである。いくつかの実施形態では、R
17およびR
18は、それぞれ独立して、1個以上のアミノ、クロロ、フルオロ、ヒドロキシ、シアノ、またはこれらの組み合わせで置換される。アリール基の置換は、フェニル基のオルト位、メタ位またはパラ位置、およびこれらの組み合わせで行われてもよい。いくつかの実施形態では、R
17およびR
18は、それぞれ独立して、2−ヒドロキシエチルまたはシアノメチルである。
【0057】
いくつかの実施形態では、結晶性構成要素としては、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、2−ヒドロキシフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホン、フェニル−4−クロロフェニルスルホン、フェニル−2−アミノフェニルスルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ジベンジルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、メチルイソプロピルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、ジ−n−ブチルスルホン、ジビニルスルホン、メチル−2−ヒドロキシメチルスルホン、メチルクロロメチルスルホン、スルホラン、3−スルホレン、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0058】
結晶性化合物は、以下の式の酒石酸エステルを含んでいてもよく、
【化14】
式中、R
19およびR
20は、それぞれ独立して、低級アルキルおよびアルコキシで置換されたアリールまたはヘテロアリールであり、各nは、独立して0〜3である。いくつかの実施形態では、R
19およびR
20は、それぞれ独立して、置換アリール、例えばフェニルである。いくつかの実施形態では、R
19およびR
20は、それぞれ独立して置換されていないか、またはメチル、エチル、イソプロピル、メトキシまたはエトキシで置換されている。いくつかの実施形態では、R
19およびR
20は、それぞれ独立して、メチルまたはメトキシで置換されたフェニルである。
【0059】
いくつかの実施形態では、R
19およびR
20は、それぞれ独立して、
【化15】
およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0060】
いくつかの実施形態では、酒石酸骨格は、L−(+)−酒石酸、D−(−)−酒石酸、DL−酒石酸またはメソ酒石酸、およびこれらの混合物から選択される。
【0061】
いくつかの実施形態では、結晶性化合物は、L−酒石酸 ジベンジル、L−酒石酸 ジフェネチル、L−酒石酸 ビス(3−フェニル−1−プロピル)、L−酒石酸 ビス(2−フェノキシエチル)、L−酒石酸 ジフェニル、L−酒石酸 ビス(4−メチルフェニル)、L−酒石酸 ビス(4−メトキシルフェニル)、L−酒石酸 ビス(4−メチルベンジル)、L−酒石酸 ビス(4−メトキシルベンジル)、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0062】
いくつかの実施形態では、転相インクは、以下の式の第1の酒石酸エステルを含むアモルファス化合物を含み、
【化16】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立してアルキル基であり、ここで、アルキルは、1〜40個の炭素原子を含み、直鎖、分岐鎖または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であるか、または置換または非置換の芳香族基またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であってもよく、結晶性化合物は、以下の式の第2の酒石酸エステルを含み、
【化17】
式中、R
19およびR
20は、それぞれ独立して、低級アルキルおよびアルコキシで置換されたアリールまたはヘテロアリールであり、各nは、独立して0〜3である。
【0063】
結晶性材料は、迅速な結晶化を示し、140℃の温度で比較的低い粘度(≦10
1センチポイズ(cp)、または0.5〜20cp、または1〜15cp)を示すが、室温で非常に高い粘度を示す(>10
6cp)。これらの材料は、融点(T
melt)が150℃未満、または65〜150℃、または66〜145℃であり、結晶化温度(T
crys)が60℃より大きく、または60〜140℃、または65〜120℃である。T
meltとT
crysとのΔは、55℃未満である。
【0064】
いくつかの実施形態では、結晶性材料は、インク組成物の合計重量の60重量%〜95重量%、または65重量%〜95重量%、または70重量%〜90重量%の量で存在する。
【0065】
転相インク組成物は、任意の適切な着色剤または望ましい着色剤、例えば、任意の適切な量または望ましい量で存在する従来の染料、顔料、これらの混合物および組み合わせからなる群から選択される着色剤を含んでいてもよい。2種類以上の着色剤が含まれる場合、転相インク組成物中に存在する着色剤の合計量は、望ましい色または色相を得るのに望ましいか、または有効な任意の量であってもよく、いくつかの実施形態では、転相インク組成物の合計重量を基準として、0.1〜50重量%、または0.1重量%〜20重量%の量で存在していてもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書の転相インク組成物は、顔料系転相インク組成物である。いくつかの実施形態では、顔料は、金属フタロシアニン、金属を含まないフタロシアニン、およびこれらの混合物および組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、転相インク組成物は、シアン、グリーン、ブルー、ブラック、カーボンブラック、Pigment Blue、銅フタロシアニン、およびこれらの混合物および組み合わせからなる群から選択される顔料を含む。具体的な実施形態では、顔料は、シアン顔料である。
【0067】
転相インク組成物中に、顔料を任意の適切な量または望ましい量で与えてもよい。いくつかの実施形態では、顔料は、転相インク組成物の合計重量を基準とし、顔料合計で0.1〜20重量%、または0.5重量%〜5重量%、または0.75〜3重量%の量で存在していてもよい。
【0068】
任意の適切な共力剤または望ましい共力剤を使用してもよい。いくつかの実施形態では、顔料系転相インク、いくつかの実施形態では、シアン固体インクの分散安定性を高めるために、銅フタロシアニン誘導体が共力剤として用いられる。
【0069】
本明細書の転相インク組成物は、分散剤を含んでいてもよい。任意の適切な分散剤または望ましい分散剤を使用してもよい。いくつかの実施形態では、分散剤は、Adela Goredemaらの米国特許第7,973,186号に記載される分散剤であってもよい。具体的な実施形態では、分散剤は、以下の式の化合物
【化18】
またはその混合物であり、式中、RとR’は、同じであるか、または異なっており、RおよびR’は、独立して、37個の炭素原子を含む直鎖アルキル基および47個の炭素原子を含む直鎖アルキル基から選択され、mは、1〜30の整数である。
【0070】
分散剤は、ポリマー分散剤、例えば、Solsperse(登録商標)、いくつかの実施形態では、Solsperse(登録商標)1700、Solsperse(登録商標)32000、Solsperse(登録商標)13240という名称で販売されるものであってもよい。
【0071】
転相インク組成物中に、分散剤は、任意の適切な量または望ましい量で、例えば、転相インク組成物中の顔料の合計重量を基準として、1〜500%の量で与えられてもよい。
【0072】
インクは、従来の添加剤に関連して知られている機能を利用するために、このような従来の添加剤をさらに含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、少なくとも1つの酸化防止剤、消泡剤、すべり剤およびレベリング剤、清澄剤、粘度調整剤、接着剤、可塑剤が挙げられてもよい。
【0073】
インクは、画像の酸化を防ぐために酸化防止剤を含有していてもよく、また、インク容器中で加熱した溶融物として存在している間にインクの構成要素が酸化するのを防いでもよい。
【0074】
本開示の転相インク組成物は、任意の望ましい方法または適切な方法によって調製することができる。いくつかの実施形態では、本明細書の転相インク組成物を調製する方法は、アモルファス化合物と;結晶性化合物と;任意要素の着色剤と;任意要素の共力剤と;任意要素の分散剤と;直鎖一級アルコールとを合わせ、転相インク組成物を製造することを含む。
【0075】
例えば、インク成分を一緒に混合し、次いで、100℃〜140℃以下の温度まで加熱し、均一なインク組成物が得られるまで撹拌し、その後、インクを周囲温度(典型的には20〜25度)まで冷却してもよい。本開示のインクは、周囲温度で固体である。いくつかの実施形態では、作成プロセス中に、溶融状態のインクを型に注ぎ、次いで、冷却して固化させ、インクステックを作成する。
【0076】
本明細書のインクジェットプリンターのスティックまたはペレットは、アモルファス化合物と;結晶性化合物と;任意要素の着色剤と;任意要素の共力剤と;任意要素の分散剤と;直鎖一級アルコールとを含む転相インク組成物を含有する。
【0077】
本明細書に開示されるインクを、直接印刷するインクジェットプロセスおよび間接的に(オフセット)印刷するインクジェット用途のための装置で使用してもよい。別の実施形態は、本明細書に開示されるインクをインクジェット印刷装置に組み込むことと、このインクを溶融させることと、溶融したインクの液滴を画像の模様になるように記録基材の上に放出することとを含むプロセスに関する。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、本明細書に記載する転相インク組成物をインクジェット印刷装置に組み込むことと、インク組成物を溶融させることと、溶融したインクの液滴を画像の模様になるように基材の上に放出することとを含む。
【0079】
普通紙、例えば、XEROX(登録商標)紙、透明材料、布地、繊維製品、プラスチック、ポリマー膜、無機基材、例えば、金属および木材を含め、任意の適切な基材または記録シートを使用してもよい。いくつかの実施形態では、基材は、コーティングされた紙を含む。
【実施例】
【0080】
(実施例1)
転相インク基剤を表2に記載するように調製した。
【表2】
【0081】
アトライタで混合した顔料濃縮物をインク基剤に加えることによって、着色したインクを調製した。配合の詳細を表3に示す。
【表3】
【0082】
ジBn−HDIジウレタンは、本明細書で上の第91段落に記載した結晶性化合物である。米国特許出願第13,456,619号を参照。
【0083】
ジ−DL−メンチル L−酒石酸(DMT)は、本明細書で上の第60段落に記載したアモルファス化合物である。米国特許出願第13/095,784号を参照。
【0084】
B4Gは、HOSTAPERM(登録商標) Blue B4Gである(Clariantから市販)。
【0085】
Sunflo(登録商標)SFD−B124は、誘導体化されたスルホン酸化銅フタロシアニンであり、Sun Chemicalから入手可能である。
【0086】
Solsperse(登録商標)32000は、The Lubrizol Corporationから入手可能なポリマー分散剤である。
【0087】
直鎖ポリエチレンワックスは、本発明の転相インクの媒剤としては極性がなさすぎる。直鎖一級アルコール(例えば、Baker Hughesから入手可能なUnilin(商標)350)を用いることによって、ワックスが転相インクと相溶性になり、優れた画像堅牢性を有する画像を与えることがわかった。
【0088】
顔料系インクは、140℃でニュートン性粘度を示し、吐出可能な粘度を示した(つまり、≦12センチポイズ)。
図1は、Unilin(商標)350の含有量が0%の実施例1のコントロールインク、Unilin(商標)350を5%含有する実施例2のインク、Unilin(商標)350を10%含有する実施例3のインクについて、温度に対する複素粘度を示す。
【0089】
図2は、Unilin(商標)350の含有量が0%の実施例1のコントロールインク、Unilin(商標)350を5%含有する実施例2のインク、Unilin(商標)350を10%含有する実施例3のインクについて、140℃での周波数に対する複素粘度を示す。
【0090】
コーティング紙(DCEG:Xerox digital Color Elite Gloss、120gsm)の上にK−プルーフサンプルを製造した。実施例2および実施例3のK−プルーフサンプルは、それぞれ5重量%および10重量%のUnilin(商標)350を組み込んだインクを含んでいた。実施例1のK−プルーフサンプルは、「未希釈」の顔料系インクを含んでいたが、Unilin(商標)350を添加しなかった。実施例のインクをコントロールインクと同じ様式で調製した。それぞれのK−プルーフをXerox Phaser(登録商標)8400プリンターまたはPhaser(登録商標)8860プリンターによって、1インチ/秒のドラムで、紙の前加熱温度50℃で、インク表面が転写固定ドラムに面するようにK−プルーフを広げた。次いで、それぞれのインクの1つのK−プルーフをXRCCの3つの丸い指状部を有するシステムで引っ掻き、別のK−プルーフを、Duplo D−590ホルダーにページが面するように4200(75gsm)に沿って折り曲げ、折りたたんだときのしわを評価した。スプレッダードラムおよび前加熱温度を上昇させつつ、裏移りが明らかになるまで第3のK−プルーフを広げた(スプレッダーによる裏移りは、制限因子になる場合があり、この温度で、特定の印刷処理工程を行うことができ、温度が高いほど良い)。
【0091】
各インクの2つのK−プルーフを50℃で広げ、これについて、引っ掻き、折りたたんだときのしわがある領域を目で見て評価した。
図3、
図4および
図5は、3つの丸い指状部を用いた試験によって引っ掻いたK−プルーフサンプルの走査画像をまとめたものである。
図3は、実施例1のコントロールインクを用いて調製したK−プルーフサンプルの走査画像である。
図4は、Unilin(商標)350を5%含有する実施例2のインクを用いて調製したK−プルーフサンプルの走査画像である。
図5は、Unilin(商標)350を10%含有する実施例3のインクを用いて調製したK−プルーフサンプルの走査画像である。
【0092】
実施例1のシアン顔料系転相インクは、引っ掻き性、折りたたんだときのしわ、または折りたたんだときの裏移りについて、目標性能を満たしていない。本明細書に記載のUnilin(商標)350を加えることは、シアン顔料系転相インクの堅牢性の性能をさらに高めるアプローチを提供する。耐引っ掻き性および折りたたんだときのしわの耐性は、インク配合物合計中にUnilin(商標)350内容物を加えると、耐性が高まる。
【0093】
図3、4、5の引っ掻いたK−プルーフを比較すると、除去されたインクの量および引っ掻き部分の視覚化は、Unilin(商標)350を加えることによって顕著に高まり、5%のUnilin(商標)350が最も良い引っ掻き結果を与える。
図6、
図7および8の折りたたんだK−プルーフを考えると、添加剤の保持量を繰り返し増やしていくと、折りたたんだときのしわがわずかに改善し、最も良い結果は、Unilin(商標)350が10%のときに得られた。
【0094】
実施例2および実施例3は、Unilin(商標)350の使用が転相インクの結晶化速度を遅くしないことを示す。表5は、本開示の実施例2および3のインクの結晶化データをまとめたものである。
【表4】