(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6157404
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 24/00 20060101AFI20170626BHJP
B60K 15/035 20060101ALI20170626BHJP
F16K 31/18 20060101ALI20170626BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20170626BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
F16K24/00 Q
B60K15/035 Z
F16K24/00 J
F16K31/18 C
F02M37/00 301E
F02M37/00 311A
F02M37/00 311K
F16J15/06 N
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-97411(P2014-97411)
(22)【出願日】2014年5月9日
(65)【公開番号】特開2015-215014(P2015-215014A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2016年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100077241
【弁理士】
【氏名又は名称】桑原 稔
(72)【発明者】
【氏名】和田 敏男
【審査官】
山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5132500(JP,B2)
【文献】
特開平10−325482(JP,A)
【文献】
特開平7−90891(JP,A)
【文献】
特開2002−21667(JP,A)
【文献】
米国特許第4886089(US,A)
【文献】
特開2011−52791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 21/00−24/06
F16K 31/18−31/34
B60K 11/00−15/10
F02M 37/00
F16J 15/06
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部弁体を構成するフロートと、これを収納するケースとを有し、燃料タンクの通気流路の一部を構成する弁装置であって、
第一貫通穴が形成された前記ケースの天部と、
この天部上からこの天部に組み合わされる第二貫通穴を備えた挟持部材との間で、
前記第一貫通穴にはめ込まれて内部を前記第二貫通穴に連通させる筒状シール体の一部を挟持させてなり、
前記挟持部材上に前記第二貫通穴を開閉する上部弁体を備えてなる、弁装置。
【請求項2】
前記筒状シール体の一部を、前記天部と前記挟持部材との間に挟持される外鍔部とさせてなる、請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記上部弁体は、タンク内外の圧力差により開閉されるチェックバルブを構成する弁体となっている、請求項1又は請求項2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記上部弁体は、自重により着座して前記第二貫通穴を閉弁し、タンク内の圧力上昇により離座して前記第二貫通穴を開弁する構成となっている、請求項3に記載の弁装置。
【請求項5】
前記ケースの天部及び前記挟持部材のいずれか一方に、これらの他方に設けた被係合部に係合される係合爪を備えさせてなる、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車や二輪自動車などの燃料タンクに取り付けられて、開弁状態において燃料タンク内外を連通させるように機能される弁装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクの通気流路を構成する弁装置として、下側にフロート室を、上側に通気室を有し、フロート室と通気室とを仕切る隔壁に設けた通気口の下側の口縁をフロート弁に対する弁座とし、かかる通気口の上側の口縁を通気室に納められたチェック弁に対する弁座としたものがある(特許文献1参照。)
【0003】
この種の弁装置にあっては、その流量特性や開弁圧の変更や調整には前記通気口の大きさの変更を必要とする。ここで、特許文献1のものでは、かかる流量特性などの変更や調整のために、前記通気口を備えたケース本体全体の交換が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5132500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の弁装置において、その流量特性や開弁圧の変更や調整を、きわめて容易になさせるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、弁装置を、下部弁体を構成するフロートと、これを収納するケースとを有し、燃料タンクの通気流路の一部を構成する弁装置であって、
第一貫通穴が形成された前記ケースの天部と、
この天部上からこの天部に組み合わされる第二貫通穴を備えた挟持部材との間で、
前記第一貫通穴にはめ込まれて内部を前記第二貫通穴に連通させる筒状シール体の一部を挟持させてなり、
前記挟持部材上に前記第二貫通穴を開閉する上部弁体を備えてなる、ものとした。
【0007】
かかる弁装置にあっては、第一に、前記ケースの天部に前記挟持部材を組み合わせることで、前記ケースの天部に下部弁体の弁座を構成可能な前記筒状シール体を簡素な構造を持って強固に備えさせることができる。また、第二に、前記天部と挟持部材との挟持によって、筒状シール体の一部を挟持することで、前記天部と前記筒状シール体との間、及び、前記筒状シール体と前記挟持部材との間を、気密状態にシールすることが可能となる。また、第三に、前記挟持部材及び上部弁体以外の構成を変更することなく、この挟持部材及び上部弁体の双方又はいずれか一方の構成を変更することで、例えば、前記第二貫通穴の穴径や上部弁体の重量などを変更することで、必要に応じて弁装置の流量特性や開弁圧を容易に調整することができ、また、これら特性などを異ならせた弁装置を主要部品の共用化によって容易に提供することができる。
【0008】
前記筒状シール体の一部を、前記天部と前記挟持部材との間に挟持される外鍔部とさせれば、この外鍔部が弾性変形された状態で天部の第一貫通穴の穴縁部及び挟持部材の第二貫通穴の穴縁部に圧接されるようにすることができ、これにより下部室と上部室との間の通気が筒状シール体の内部を通じてのみなされるようにすることができる。
【0009】
前記上部弁体は、タンク内外の圧力差により開閉されるチェックバルブを構成する弁体としておくことが、この発明の好ましい態様の一つとされる。この場合さらに、前記上部弁体を、自重により着座して前記第二貫通穴を閉弁し、タンク内の圧力上昇により離座して前記第二貫通穴を開弁する構成のものとすることが、この発明の好ましい態様の一つとされる。
【0010】
また、前記ケースの天部及び前記挟持部材のいずれか一方に、これらの他方に設けた被係合部に係合される係合爪を備えさせるようにしておくことが、この発明の好ましい態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0011】
この発明にかかる弁装置にあっては、その流量特性や開弁圧の変更や調整を、前記挟持部材及び上部弁体以外の構成を変更することなく、この挟持部材及び上部弁体の双方又はいずれか一方の構成を変更することで、容易になすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、この発明の一実施の形態にかかる弁装置の側面図である。
【
図3】
図3は、前記弁装置を構成する上部弁体、挟持部材、筒状シール体及びケースの分離斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4におけるA−A線位置での断面図であり、フロートが下降位置にある状態を示している。
【
図6】
図6は、
図4におけるB−B線位置での断面図であり、フロートが下降位置にある状態を示している。
【
図7】
図7は、
図4におけるC−C線位置での断面図であり、フロートが下降位置にある状態を示している。
【
図8】
図8は、
図4におけるD−D線位置での断面図であり、フロートが下降位置にある状態を示している。
【
図9】
図9は、前記弁装置を構成する挟持部材の斜視図である。
【
図10】
図10は、前記弁装置を構成する筒状シール体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1〜
図10に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる弁装置は、自動車や二輪自動車などの燃料タンクTに取り付けられてかかる燃料タンクTの通気流路Cの一部をなすと共に、開弁状態において燃料タンクT内外を連通させるように機能されるものである。かかる弁装置は、典型的には、燃料タンクTの上部に取り付けられて、燃料タンクTの通気流路Cの一部を構成する。かかる弁装置は、図示の例のように、燃料タンクTに設けた取り付け穴Tbを利用して、あるいは、図示は省略するが燃料タンクT内に設けたブラケットなどを利用するなどして、燃料タンクTに備えさせることができる。
【0014】
かかる弁装置は、下部弁体1を構成するフロート1’と、これを収納するケース2と、上部弁体3とを備えている。
【0015】
図示の例では、ケース2の上部にはフランジ4が組み合わされ、ケース2の下部にはキャップ5が組み合わされ、かかるケース2とフランジ4とキャップ5とにより弁装置の外郭が形成されている。前記ケース2の天部2aの下方に前記フロート1’を納める下部室Lが形成されると共に、前記ケース2の天部2aの上方に前記上部弁体3を納める上部室Uが形成されるようになっている。前記ケース2、フランジ4、キャップ5は、典型的には、プラスチック製とされる。
【0016】
ケース2は、天部2aを有すると共にこの天部2aの中央に円形の第一貫通穴2bを有し、下端を開放させた実質的に円筒状を呈している。また、天部2aには、第一貫通穴2bを囲繞する短寸筒部2cの下端が一体に連接されている。この短寸筒部2cの外径は天部2a下のケース2の外径よりも小さく、ケース2の上部に周回段差面2dが形成されている。また、前記短寸筒部2cの外周部には周回溝2eが形成されている。
【0017】
フランジ4は、前記ケース2の短寸筒部2cの外径と略等しい内径を備えると共に、筒上端を閉塞させ、筒下端を開放させた短寸筒状部4aと、この短寸筒状部4aの筒下端に形成された外鍔部4bと、管一端を短寸筒状部4aの側部に一体に連通させて横向きに延びる管状をなす排気ポート4cとを備えている。
【0018】
ケース2とフランジ4とは、ケース2の周回段差面2dがフランジ4の外鍔部4bに突き当たる位置まで、短寸筒状部4a内にケース2の短寸筒部2cを嵌め入れることで一体化されるようになっている。ケース2とフランジ4とをこのように組み合わせた状態において、前記天部2aと短寸筒状部4aの閉塞端との間に前記上部室Uが形成される。図中符号6は前記周回溝2eを利用して短寸筒部2cに取り付けられるシールリングであり、このシールリング6によって短寸筒部2cと短寸筒状部4aとの間が気密状態にシールされるようになっている。図中符号2fはケース2の外側部に形成された係合部であり、図示の例では、フランジ4の被係合部4dにこの係合部2fを係合させることでケース2とフランジ4との前記組み付け状態を維持するようになっている。
【0019】
キャップ5は、ケース2の下端の外径と略等しい内径をを備えた短寸筒状部5aと、この短寸筒状部5aの筒下端を塞ぐ底板5bとを備えてなる。ケース2の天部2a下にフロート1’を納めた後、ケース2の下端側をキャップ5内に入れ込みきると、ケース2に形成された係合突部2gがキャップ5の短寸筒状部5aに形成された係合窓5cに係合されて、かかるキャップ5によりケース2の下端が塞がれ、このキャップ5の前記底板5bによって下降位置にあるフロート1’が支持されるようになっている。かかるキャップ5の底板5bには流入部5dが形成されている。
【0020】
前記ケース2の上部には、筒状シール体7が備えられている。この実施の形態にあっては、前記第一貫通穴2bが形成された前記ケース2の天部2aと、この天部2a上からこの天部2aに組み合わされる第二貫通穴8aを備えた挟持部材8との間で、前記第一貫通穴2bにはめ込まれて内部を前記第二貫通穴8aに連通させる筒状シール体7の一部を挟持させている。そして、前記挟持部材8上に前記第二貫通穴8aを開閉する上部弁体3を備えさせている。
【0021】
前記筒状シール体7は、ゴム又はゴム状弾性を備えたプラスチックから構成される。図示の例では、かかる筒状シール体7は、筒上端に周回状をなす外鍔部7aを有している。この外鍔部7aの上面には、周回突条7bが形成されている。外鍔部7aの外径は前記第一貫通穴2bの穴径よりも大きい。筒状シール体7の外周部であって、その上下方向略中程の位置には、周回隆起部7cが形成されている。この周回隆起部7cと前記外鍔部7aとの間には前記天部2aの厚さ相当分の間隔が形成されている。周回隆起部7cと筒状シール体7の筒下端との間には、この筒下端に近づくに連れて筒状シール体7の外径を小さくする周回傾斜面7dが形成されている。
【0022】
前記挟持部材8は、円板状底部8bと、この円板状底部8bの外縁を縁取る周回立ち上がり部8cとを備えている。円板状底部8bの中央に円形の前記第二貫通穴8aが形成されている。かかる挟持部材8の外径は前記短寸筒部2cの内径と実質的に等しくなっている。
【0023】
上部弁体3は、図示の例では、円板状をなすウエイトによって構成されている。上部弁体3の外径は挟持部材8の周回立ち上がり部8cの内径よりもやや小さくなっている。かかる上部弁体3は、典型的には、金属によって構成される。
【0024】
図示の例では、筒状シール体7は、その筒下端側を先にして上方から第一貫通穴2bにはめ込まれる。はめ込みきられた位置で、筒状シール体7の外鍔部7aは前記天部2aの外面に接し、前記周回隆起部7cは前記天部2aの内面に接する。
【0025】
このように第一貫通穴2bに筒状シール体7をはめ込んだ状態から、天部2a上に形成された短寸筒部2c内に、天部2aと挟持部材8の円板状底部8bとの間で筒状シール体7の外鍔部7aを挟持するように挟持部材8を入れ込みケース2に組み合わせる。すなわち、図示の例では、前記天部2aと前記挟持部材8との間に挟持される前記筒状シール体7の一部は、前記外鍔部7aとなっている。
【0026】
この実施の形態にあっては、前記ケース2の天部2a及び前記挟持部材8のいずれか一方に、これらの他方に設けた被係合部に係合される係合爪8dを備えさせており、これにより、前記筒状シール体7の一部の挟持状態を維持するようになっている。
【0027】
図示の例では、係合爪8dは挟持部材8に設けられている。係合爪8dは挟持部材8の円板状底部8bの外縁から下方に突き出す弾性片8eの先端から外向きに突き出している。図示の例では、係合爪8dは、挟持部材8の中心を巡る向きにおいて、隣り合う係合爪8dとの間に間隔を開けて三箇所に設けられている(
図9)。三箇所の係合爪8d…8dの爪先を通る仮想の円の直径は、前記短寸筒部2cの内径よりもやや大きくなっている。図示の例では、前記被係合部は、前記短寸筒部2cの筒下端の内面側に形成された凹所2hによって構成されている。前記の短寸筒部2c内への挟持部材8の入れ込みは、前記弾性片8eの弾性変形により許容される。そして、この挟持部材8の入れ込み終了位置における前記弾性片8eの弾性復帰により前記被係合部としての凹所2hに係合爪8dが入り込み係合されるようになっている。
【0028】
以上のように、ケース2の天部2aに挟持部材8を組み合わせた後、上部弁体3は挟持部材8の周回立ち上がり部8c内に板面を水平に配するようにして納められる(
図5)。そして、このように上部弁体3を天部2a上に配したケース2とフランジとが前記のように組み合わされて、弁装置が構成される。
【0029】
図示の例では、弁装置は、燃料タンクTの上部に開設された取り付け穴Tbにフランジ4より下方を挿入させた状態でこのフランジ4の外鍔部4bを燃料タンクTの外面部に典型的には溶着により固着させることで、燃料タンクTに取り付けられるようになっている。前記排気ポート4cは前記通気流路Cを構成する管体Pの一端に嵌め入れられるようになっている。
【0030】
フロート1’がその下端を前記キャップ5に接しさせた下降位置にあるとき(
図5)、タンク内外は、前記流入部5d、前記筒状シール体7、第二貫通穴8a、排気ポート4cを通じて連絡可能とされる。下部室L内に燃料が流入されるとこの下部室Lに臨んだ前記筒状シール体7の筒下端を弁座7eとして、フロート1’はその上部に備えられた弁体1をこの弁座7eに着座させる位置まで上昇される。これによりタンク内外の前記連絡が遮断される。燃料が収納室4内から流出されるとフロート1’は再び下降しタンク内外は弁装置を介して再び連絡可能とされる。
【0031】
また、図示の例では、前記上部弁体3によって前記筒状シール体7を介して下部室Lに連通された第二貫通穴8aは通常は前記上部室U側から閉塞されるようになっている。図示の例では、挟持部材8の円板状底部8bには前記第二貫通穴8aを縁取る環状隆起部8fが形成されており、この環状隆起部8fが上部弁体3の弁座8gとして機能するようになっている。すなわち、図示の例では、前記上部弁体3は、タンク内外の圧力差により開閉されるチェックバルブを構成する弁体となっている。この実施の形態にあっては、前記上部弁体3は、自重により着座して前記第二貫通穴8aを閉弁し、タンク内の圧力上昇により離座して前記第二貫通穴8aを開弁する構成となっている。なお、かかる上部弁体3は、タンク内外の圧力差により開閉される構成のものであれば良く、図示は省略するが、例えば、バネにより下方に付勢されて前記第二貫通穴8aを前記上部室U側から閉塞させるものなどによって代替可能である。
【0032】
この実施の形態にかかる弁装置にあっては、第一に、前記ケース2の天部2aに前記挟持部材8を組み合わせることで、前記ケース2の天部2aに下部弁体1の弁座7eを構成可能な前記筒状シール体7を簡素な構造を持って強固に備えさせることができる。また、第二に、前記天部2aと挟持部材8との挟持によって、筒状シール体7の一部を挟持することで、前記天部2aと前記筒状シール体7との間、及び、前記筒状シール体7と前記挟持部材8との間を、気密状態にシールすることが可能となる。図示の例では、前記挟持により、筒状シール体7の外鍔部7aが弾性変形された状態で天部2aの第一貫通穴2bの穴縁部及び挟持部材8の第二貫通穴8aの穴縁部に圧接され、下部室Lと上部室Uとの間の通気は筒状シール体7の内部を通じてのみなされるようになっている。この実施の形態にかかる弁装置にあっては、第三に、前記挟持部材8及び上部弁体3以外の構成を変更することなく、この挟持部材8及び上部弁体3の双方又はいずれか一方の構成を変更することで、例えば、前記第二貫通穴8aの穴径や上部弁体3の重量などを変更することで、必要に応じて弁装置の流量特性や開弁圧を容易に調整することができ、また、これら特性などを異ならせた弁装置を主要部品の共用化によって容易に提供することができる。
【0033】
なお、前記挟持部材8は、前記天部2aとの間で筒状シール体7の一部を挟持するように、前記天部2aに組み合わされるものであれば良く、図示は省略するが、例えば、前記ケース2の短寸筒部2c内に入れ込まれた後の捻り回し操作によってかかるケース2に組み付けられる構成のものであっても構わない。
【0034】
フロート1’は、フロート主体10と、このフロート主体10の上部に傾動可能に備えられた弁体11とを備えてなる。
【0035】
図示の例では、フロート主体10は、上端を実質的に閉塞し、内部に芯部10aを巡る環状空間10bを有し、この環状空間10bを下端側で開放させた円筒状を呈している。環状空間10bには、バネ上端をこの環状空間10bの内奥部に当接させ、かつ、バネ下端を前記キャップ5の底板5bに当接させて、フロート1’に対し上方への一定の付勢力を常時作用させる圧縮コイルバネ9が納められるようになっている。
【0036】
弁体11は、以下の(1)〜(4)の各部を有している。
(1)前記フロート1’の上昇時に前記第一貫通穴2bを閉塞するシール部11a
(2)前記フロート1’主体の一部に対して引っかかって前記傾動の中心となる引っかかり部11b
(3)前記シール部11aの裏側において突出する当接部11c
(4)前記傾動時に前記筒状シール体7の下端に当接する支点部11d
【0037】
そして、この実施の形態にかかる弁装置にあっては、前記傾動による前記フロート主体10の上部に形成された被当接部10cへの前記傾動による当接部11cの当接によって、前記弁体11の水平方向への移動を生じさせさせるようにしている。
【0038】
ケース2内への燃料の流入時にはこれにより上昇されるフロート1’の弁体11のシール部1aによって第一貫通穴2bは閉塞され前記上部室U3への燃料の流入は阻止される。ケース2内から燃料が流出されるとフロート1’は下降可能となるところ、フロート主体10と弁体11とは前記引っかかり部1b側で連係され支点部1c側では連係されていないことから、弁体11は支点部11cを筒状シール体7の下端に当接させてこの当接箇所を支点として引っかかり部1b側を傾斜下とするように傾動する。それと共に、弁体11は、前記傾動により当接部11cを被当接部10cに接しさせるところ、被当接部10cの水平方向の位置は変わらないことから、前記傾動をしながら水平方向に移動される。これにより、タンク内が高圧である場合であっても、また、前記シール部11aと筒状シール体7とが密着し易い材料からなる場合であっても、前記シール部1aと筒状シール体7との離弁、つまり、弁装置のスムースな開弁が実現される。
【0039】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0040】
1 下部弁体
1’ フロート
2 ケース
2a 天部
2b 第一貫通穴
3 上部弁体
7 筒状シール体
8 挟持部材
8a 第二貫通穴
T 燃料タンク
C 通気流路