【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、総務省、超高速近距離無線伝送技術等の研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
(本開示の一形態を得るに至った経緯)
特許文献1に記載されたAD変換器は、比較器のレプリカ回路が比較する電圧差が大きい場合、比較器が比較に必要な時間をクロックのHigh期間として決定できる。しかし、比較電圧差が小さい場合、比較電圧差に対するノイズ(例えば、トランジスタノイズ又は熱ノイズ)の影響が大きくなる。従って、ノイズの大きさに依存して、比較時間が短くなり、又は長くなる。
【0012】
比較電圧差が小さい場合、クロック毎のデューティが一定とならず、各デューティにずれが生じる。クロックのHigh期間が短くなると、比較器が比較のために必要な比較電圧差が大きくなり、AD変換器の精度が悪化する。そのため、レプリカ回路の比較電圧差を設計上の最小の電圧差にしても、十分な比較が困難であるため、AD変換器の解像度は最小解像度以上になることがあり、AD変換器の設計通りの精度を満たせなくなる。
【0013】
また、デューティ50%のクロックを使用する場合、クロック周波数を低くするとクロックのHigh期間は長くなるが、特許文献1に記載されたAD変換器では、クロックのHigh期間は、比較器の比較時間から決定される。従って、クロック周波数が低くなってもクロックのHigh期間の長さは変化しない。クロックのデューティが50%と比較すると、クロックの1周期に対するHigh期間の割合は短い。更に、比較器の比較できる最小電圧差も変わらないため、AD変換器の解像度も向上が困難となる。
【0014】
以下、AD変換器の変換精度を向上できるAD変換器及び受信装置について説明する。
【0015】
(開示の一態様の概要)
本開示の第1のAD変換器は、
第2のクロックを用いて、第1のクロックを生成するクロック生成器と、
前記第1のクロックの第1の期間において、入力信号と所定値とを比較するための比較回路と、前記第1のクロックの第2の期間において、次回の比較動作のために内部電圧を所定値にプリチャージするためのプリチャージ回路と、を含む比較器と、
を備え、
前記クロック生成器は、
前記比較器のプリチャージ回路のレプリカ回路を含み、
前記プリチャージ回路のレプリカ回路において、プリチャージの開始から終了までの期間であるプリチャージ期間を、前記第1のクロックの第2の期間とする。
【0016】
また、本開示の第2のAD変換器は、第1のAD変換器であって、
前記クロック生成器は、前記プリチャージ回路のレプリカ回路に含まれる内部ブロックにおける遅延時間に基づいて、前記第1のクロックを生成する。
【0017】
また、本開示の第3のAD変換器は、第1のAD変換器であって、
前記比較器は、複数段の内部ブロックとラッチ回路とを含み、
前記比較回路は、
前記複数段の内部ブロックのうち、初段の内部ブロックに含まれ、前記入力信号が入力される入力用トランジスタと、
前記複数段の内部ブロックのうち、前記ラッチ回路に接続され、ラッチを構成する第2の内部ブロックと、
を含み、
前記プリチャージ回路は、
前記複数段の内部ブロックのうち、前記初段の内部ブロックに含まれ、前記第1のクロックが入力されるプリチャージ用トランジスタ、
を含む。
【0018】
また、本開示の第4のAD変換器は、第3のAD変換器であって、
前記クロック生成器は、
複数段の内部ブロックを含み、
前記複数段の内部ブロックのうち、初段の内部ブロックは、前記第2のクロックが入力されるプリチャージ用トランジスタと、所定の電圧が入力される入力用トランジスタと、を含み、
前記複数段の内部ブロックのうち、前記第1のクロックを出力する内部ブロックは、前記比較回路の第2の内部ブロックの配線を変更した内部ブロックである。
【0019】
また、本開示の第5のAD変換器は、第1ないし第4のいずれか1つのAD変換器であって、
前記クロック生成器は、前記第1の期間を調整するための遅延制御回路を備える。
【0020】
また、本開示の第6のAD変換器は、第1ないし第5のいずれか1つのAD変換器であって、
前記第1の期間は、前記プリチャージ期間と同じである。
【0021】
また、本開示の第7のAD変換器は、第1ないし第5のいずれか1つのAD変換器であって、
前記第1の期間は、前記プリチャージ期間よりも長い。
【0022】
また、本開示の第8のAD変換器は、第1ないし第7のいずれか1つのAD変換器であって、
前記比較器は、差動比較器である。
【0023】
また、本開示の第9のAD変換器は、第1ないし第8のいずれか1つのAD変換器であって、
前記クロック生成器は、前記比較器に含まれるトランジスタと物理的に同一の大きさのトランジスタを含む。
【0024】
また、本開示の第10のAD変換器は、第1ないし第8のいずれか1つのAD変換器であって、
前記クロック生成器は、前記比較器に含まれるトランジスタと同一の構成のトランジスタを含む。
【0025】
また、本開示の第11のAD変換器は、第1ないし第10のいずれか1つのAD変換器であって、
前記比較器を複数個備え、
各比較器は、並列に接続され、前記クロック生成器から出力された同一の前記第1のクロックを入力する。
【0026】
また、本開示の受信装置は、
複数の通信規格に準拠する受信装置であって、
第1ないし第11のいずれか1つに記載のAD変換器と、
前記AD変換器に入力するクロックを、通信規格に応じて生成するクロック生成部と、
前記AD変換器から出力された変換信号を、前記通信規格に応じて復調する復調部と、
前記復調部による復調処理の方式及び前記クロック生成部が生成するクロックを、前記通信規格に応じて決定するアクセス制御部と、
を備える。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるAD変換器100の構成例を示す図である。AD変換器100は、コンパレータ(Comparator:比較器)101及びクロック生成器102を備える。クロック生成器102は、コンパレータ101のレプリカ回路を含むプリチャージ期間生成器106を備える。
【0028】
コンパレータ101は、クロック生成器102から出力されるコンパレータクロック202がhighであると、比較動作する。比較動作では、入力信号203と所定値204とを比較し、比較結果205を出力する。また、コンパレータ101は、コンパレータクロック202がLowであると、プリチャージ動作する。プリチャージ動作は、次回の比較動作するための充電動作である。なお、コンパレータクロック202がLowでは比較動作し、コンパレータクロック202がHighではプリチャージ動作してもよい。
【0029】
クロック生成器102は、外部クロック201を入力し、周期的に極性が反転するコンパレータクロック202を生成する。コンパレータクロック202の周期は、外部クロック201の周期と同一である。クロック生成器102は、コンパレータクロック202の第1の期間において、コンパレータ101がプリチャージ動作するためのクロック極性(例えばLow)とする。第1の期間は、プリチャージ期間生成器106の内部ブロックにおける遅延時間に相当する。一方、クロック生成器102は、コンパレータクロック202の第1の期間以外の第2の期間において、コンパレータ101が比較動作するためのクロック極性(例えばHigh)とする。
【0030】
なお、図面では、外部クロック201を「E−CLK」とも記載する。コンパレータクロック202を「C−CLK」とも記載する。
【0031】
次に、コンパレータ101の詳細について説明する。
図2は、コンパレータ101の回路例を示す図である。コンパレータ101は、複数段の内部ブロックを含む。ここでは、内部ブロックが2段であるが、3段以上であってもよい。初段の内部ブロックN11には、プリチャージ用トランジスタT11及び入力用トランジスタT12を含む。
【0032】
プリチャージ用トランジスタT11には、コンパレータクロック(C−CLK)202が入力される。入力用トランジスタT12には、複数の信号VINP及びVINMが入力される。VINP及びVINMは、コンパレータ101により比較される2つの入力信号である。VINPは例えば入力信号203であり、VINMは例えば所定値204である。
【0033】
Node1p及びNode1mは、コンパレータ101内の初段の内部ブロックN11の出力であり、Node1pが出力信号の正側、Node1mが出力信号の負側である。Node2p及びNode2mは、コンパレータ101内の二段目の内部ブロックN12の出力であり、Node2pが出力信号の正側、Node2mが出力信号の負側である。なお、内部ブロックN12は、NORラッチを構成する。
【0034】
Node2p及びNode2mは、それぞれインバータ207に接続される。インバータ207は、それぞれNANDラッチ回路206に接続される。なお、
図2では、インバータ207を用いて構成するが、インバータ207を省略することもでき、その場合は、NANDラッチ回路206の代わりに、NORラッチ回路を用いる。つまり、コンパレータ101は全体としてラッチ構成を有する。
【0035】
NANDラッチ回路206の出力としてのOUTM及びOUTPが、比較結果205として出力される。
図1では、比較結果205は、単線で記載しているが、OUTM及びOUTPを含む。なお、比較結果205は、OUTM又はOUTPのいずれかであってもよい。
【0036】
以上より、
図2のコンパレータ101の構成では、プリチャージ動作に関する内部ブロックは、プリチャージ用トランジスタT11となり、入力信号と所定値との比較動作に関する内部ブロックは、入力用トランジスタT12、内部ブロックN12、インバータ207、NANDラッチ回路206となる。
【0037】
図3は、コンパレータ101のタイミングチャートの一例を示す図である。
図3(a)はコンパレータクロック202の出力の一例であり、
図3(b)はNode1p及びNode1mの出力の一例であり、
図3(c)はNode2p及びNode2mの出力の一例であり、
図3(d)はOUTP、OUTMの出力の一例である。
【0038】
時刻t11においてコンパレータクロック(C−CLK)202が立ち下がると、つまりLow期間になると、コンパレータ101のプリチャージ動作が始まり、Node1p及びNode1mがグランド電位から電源電位まで立ち上がる。Node1p及びNode1mが立ち上がり、所定の電圧に達すると、Node2p及びNode2mの一方はグランド電位に維持され、Node2p及びNode2mの他方は電源電位からグランド電位に立ち下がる。
【0039】
なお、プリチャージ期間は、例えば、Node1p及びNode1mがグランド電位から立ち上がり始めた時点t11から、Node2p及びNode2mがグランド電位となった時点t12までの期間である。
【0040】
なお、Node1pとNode1mとの間、又は、Node2pとNode2mとの間に差があると、次回の比較動作に影響を与えて正確な比較が困難であるので、プリチャージ期間は長いことが望ましい。
【0041】
続いて、時刻t13においてコンパレータクロック202が立ち上がると、つまりHigh期間になると、比較動作が始まり、Node1p及びNode1mは電源電位からグランド電位に立ち下がる。VINPとVINMとの電位差により、Node1pが立ち下がる速度とNode1mが立ち下がる速度とに差が現われる。
【0042】
VINPがVINMよりも高電位である場合、Node1mがNode1pよりも早く立ち下がる。Node1p及びNode1mが立ち下がると、Node2p及びNode2mが立ち上がろうとする。しかし、2段目の内部ブロックN12はラッチ構成になっているので、Node2p及びNode2mが同時に立ち上がることはない。
【0043】
図3(b)において、Node1p(破線)がNode1m(実線)よりも早く立ち下がると、Node2mがNode2pよりも早く立ち上がり始めて、Node2pが立ち上がることを抑制する。従って、
図3(c)において、Node2m(実線)は立ち上がり、Node2p(破線)はグランド電位に戻っていく。
【0044】
一方、VINPがVINMよりも低電位である場合、
図3(b)において、Node1p(破線)がNode1m(実線)よりも早く立ち下がる。Node1m及びNode1pが立ち下がると、
図3(c)において、Node2m及びNode2pが立ち上がろうとする。しかし、2段目の内部ブロックN12はラッチ構成になっているので、Node2p及びNode2mが同時に立ち上がることはない。
【0045】
図3(b)において、Node1pがNode1mよりも早く立ち下がると、
図3(c)において、Node2mがNode2pよりも早く立ち上がり始めて、Node2pが立ち上がることを抑制する。従って、Node2m(実線)は立ち上がり、Node2p(破線)はグランド電位に戻っていく。
【0046】
従って、VINPがVINMよりも高電位では、比較結果205としてHighが出力され、VINPがVINMよりも低電位では、比較結果205としてLowが出力される。
【0047】
また、コンパレータ101は、VINP及びVINMをさらに1つずつ設け、差動構成としてもよい。入力信号203及び所定値204としてのリファレンス信号も差動となる。コンパレータ101への入力信号が差動であっても、コンパレータ101が差動構成であれば、2つの入力信号をコンパレータ101に入力できるので、コンパレータ101内において信号パワーを2倍にでき、ノイズの影響を半分にできる。
【0048】
次に、クロック生成器102の詳細について説明する。
図4は、クロック生成器102の第1回路例を示す図である。
【0049】
クロック生成器102は、外部クロック201を入力し、インバータ107を介して、外部クロック201を第1クロック217と第2クロック218とに分岐させる。なお、第1クロック217と第2クロック218との周期と位相は同一である。
【0050】
プリチャージ期間生成器106は、第2クロック218を入力し、論理反転し、反転結果をコンパレータ101によるプリチャージ期間分遅延させ、第3クロック219として出力する。OR回路105は、第1クロック217と第3クロック219とを入力し、第1クロック217と第3クロック219との論理和をコンパレータクロック202として出力する。
【0051】
なお、図面においては、第1クロック217を「clk1」とも記載する。また、第2クロック218を「clk2」とも記載する。また、第3クロック219を「clk3」とも記載する。
【0052】
図5は、クロック生成器102の第1回路例のタイミングチャートの一例を示す図である。ここでは、外部クロック201、第1クロック217及び第2クロック218、第3クロック219、並びにコンパレータクロック202の出力例を示す。
【0053】
コンパレータクロック202の第1の期間は、プリチャージ期間生成器106の内部ブロックの動作に起因する遅延期間であり、コンパレータ101のプリチャージ期間に相当する期間(プリチャージ模擬動作期間)である。
図5では、クロック生成器102により出力されるコンパレータクロック202は、プリチャージ期間においてLowになる。
【0054】
図6は、クロック生成器102の第2回路例を示す図である。
図6のクロック生成器102は、コンパレータ101のプリチャージ期間に対応するコンパレータクロック202の第1の期間を調整できる。
図6のクロック生成器102では、OR回路105の前段に遅延制御回路110が挿入され、プリチャージ期間生成器106の前段に遅延制御回路111が挿入される。
【0055】
遅延制御回路110,111は、コンパレータクロック202の第1の期間を調整するための回路である。遅延制御回路110,111を備えることで、より高精度にコンパレータ101のプリチャージ期間を推定でき、好適にコンパレータ101がプリチャージできる。
【0056】
遅延制御回路110は、例えば、外部から入力される第1遅延制御信号223により遅延時間を制御する。遅延制御回路111は、例えば、外部から入力される第2遅延制御信号224により遅延時間を制御する。
【0057】
遅延制御回路110の遅延時間を長くする、又は、遅延制御回路111の遅延時間を短くすると、コンパレータクロック202の第1の期間は短くなる。一方、遅延制御回路110の遅延時間を長くする、又は、遅延制御回路111の遅延時間を短くすると、コンパレータクロック202の第2の期間は長くなる。
【0058】
コンパレータ101がプリチャージ動作する場合、Node1pとNode1mとの差、又は、Node2pとNode2mとの差があると、ノード間の差は次回の比較動作の誤差となる。プリチャージ期間を長めに設けることにより、Node1p及びNode1mを電源電圧に安定し、Node2p及びNode2mをグランド電位に安定するため、次の比較動作の誤差が小さくなる。プリチャージ期間を長めに設けるためには、コンパレータクロック202の第1の期間を、コンパレータ101のプリチャージ期間よりも長く設定しておけばよい。
【0059】
図7は、クロック生成器102の第3回路例を示す図である。クロック生成器102の第1回路例と比較すると、インバータ107を備えず、OR回路105がNAND回路109に変更されている。インバータ107を備えていないため、外部クロック201は、反転されずにNAND回路109及びプリチャージ期間生成器106へ出力される。NAND回路109は、外部クロック201とプリチャージ期間生成器106から出力される第4クロック222とを入力し、論理演算する。図面においては、第4クロック222を「clk4」とも記載する。
【0060】
クロック生成器102の第3回路例の構成であっても、プリチャージ期間生成器106の遅延時間(第1の期間)は、コンパレータクロック202のプリチャージ期間に対応する。
【0061】
なお、クロック生成器102において、外部クロック201を分岐させた後にバッファを挿入することによって、高周波信号の鈍りを抑制できる。
【0062】
次に、プリチャージ期間生成器106の詳細について説明する。
図8は、プリチャージ期間生成器106の第1回路例を示す図である。
図9は、プリチャージ期間生成器106の第2回路例を示す図である。
【0063】
プリチャージ期間生成器106は、コンパレータ101のプリチャージ動作を検証するため、プリチャージ動作を模擬した動作であるプリチャージ模擬動作を行う。
図8及び
図9では、プリチャージ期間生成器106は、コンパレータ101のレプリカ回路を含む。レプリカ回路は、コンパレータ101に含まれるプリチャージ動作に係る構成を含む。プリチャージ期間生成器106は、例えばコンパレータ101と同数のトランジスタを含む。
【0064】
具体的には、プリチャージ期間生成器106は、コンパレータ101と同様に、複数段の内部ブロックを含む。ここでは、内部ブロックが2段であるが、3段以上であってもよい。初段の内部ブロックN21には、プリチャージ用トランジスタT21及び入力用トランジスタT22を含む。また、プリチャージ期間生成器106は、例えばコンパレータ101と同数のトランジスタを含む。
【0065】
一方、プリチャージ期間生成器106は、プリチャージ動作には影響を与えないコンパレータ101におけるNANDラッチ回路206に相当する回路を含まない。また内部ブロックN22は、
図2のコンパレータ101のN12とは配線を変更し、また、NANDラッチ回路206にも接続されないため、ラッチ構成ではなくなり、clk2がHighであると、pre.node2pとpre.node2mはそれぞれ立ち上がることができる。よって、プリチャージ期間に対応する第1の期間は、入力信号の電位差に依存せず、一定となる。さらに、比較期間に対応する第2の期間も、一定となる。
【0066】
プリチャージ用トランジスタT21には、第2クロック218が入力される。入力用トランジスタT22には、所定の電圧(例えば電源電圧VDD)が入力される。なお、VDDでなくても、例えば0.6V以上の所定の電圧が入力されてもよい。
【0067】
pre.Node1p及びpre.Node1mは、プリチャージ期間生成器106内の初段の内部ブロックN21の出力であり、pre.Node1pが出力信号の正側、pre.Node1mが出力信号の負側である。pre.Node2p及びpre.Node2mは、プリチャージ期間生成器106内の二段目の内部ブロックN22の出力であり、pre.Node2pが出力信号の正側、pre.Node2mが出力信号の負側である。
【0068】
pre.Node2mは、インバータ231に接続される。インバータ231の出力が、第3クロック219として出力される。インバータ231をpre.Node2mの後段に挿入することにより、インバータ231が負荷として機能し、プリチャージ期間生成器106における遅延時間が、コンパレータ101のプリチャージ期間と等しくなる。
【0069】
図10は、プリチャージ期間生成器106のタイミングチャートの一例を示す図である。プリチャージ期間生成器106の入力としての第2クロック218が立ち下がると、pre.Node1pとpre.Node1mとが立ち上がる(例えば電源電位となる)。そして、pre.Node2pとpre.Node2mとが立ち下がる(例えばグランド電位となる)。つまり、pre.Node1pとpre.Node1mとが所定値以上となり、pre.Node2pとpre.Node2mとが所定値以下となると、プリチャージ期間生成器106の出力としての第3クロック219が立ち上がる。
【0070】
プリチャージ期間生成器106は、各内部ブロックN21,N22の電圧が所定値(例えば電源電位又はグランド電位)に達した時点に基づいて、前記第1の期間の開始時点及び終了時点を決定してもよい。これにより、各内部ブロックの出力からコンパレータ101のプリチャージ期間を推定できる。
【0071】
プリチャージ期間生成器106のプリチャージ模擬動作は、コンパレータ101のプリチャージ動作と同じ動作である。従って、プリチャージ期間生成器106により生成される遅延時間(第1の期間)は、コンパレータ101のプリチャージ動作の遅延時間と等しくなる。第1の期間とプリチャージ期間とを等しくすることで、第1の期間を最短期間に設定でき、比較期間に対応する第2の期間をより長く確保できる。従って、コンパレータ101の最小解像度をより向上できる。
【0072】
また、プリチャージ模擬動作は、コンパレータ101のプリチャージ動作を模擬し、プリチャージ期間に相当する遅延時間を生成することが目的である。従って、プリチャージ期間生成器106は、コンパレータ101に含まれるトランジスタの全てを含まなくても良い。つまり、プリチャージ期間生成器106は、コンパレータ101に含まれるトランジスタと同一の構成のトランジスタを一部含めばよく、一部省略されてもよい。トランジスタの一部を省略することにより、プリチャージ期間生成器106を小面積化及び低消費電力化できる。
【0073】
また、コンパレータ101に含まれるトランジスタとプリチャージ期間生成器106に含まれるトランジスタとは、例えば物理的に同一の大きさである。物理的な大きさとは、例えばLW(縦横)サイズである。物理的な大きさを同じにすることにより、プリチャージ動作をより正確に模擬できる。
【0074】
また、コンパレータ101のプリチャージ動作は、
図3の時刻t11〜t12のプリチャージ期間において実行される。プリチャージ期間は、
図10の時刻t21〜22のプリチャージ模擬動作期間(第1の期間)に相当する。
【0075】
図10では、プリチャージの模擬動作においては、全ての内部ブロック(ここでは内部ブロックN21及びN22)がグランド電位と電源電位との間において振幅(フル振幅)する。つまり、デジタル回路的に、グランド電位及び電源電位のいずれかの電位に動作する。これは、
図8、
図9のN22はラッチ構成を含まないためである。従って、微小電圧のノイズ(例えば、±1mvのトランジスタノイズ又は熱ノイズ)が重畳されても、プリチャージ動作に対して遅延時間が大きく変化しない。
【0076】
また、コンパレータ101の比較期間として、コンパレータ101が比較対象とする信号の最小入力電圧差を比較するための時間を確保する必要がある。よって、まず、コンパレータ101の入力用トランジスタT12に入力される最小入力電圧差を比較するために必要な時間を算出する。そして、コンパレータクロック202の一周期分から、上記算出された時間を除いた期間に、コンパレータ101のプリチャージ動作が完了するよう、コンパレータ101を設計する。なお、CLK3の立ち下がりポイントは、CLK2がHighである期間内であれば良い。
図10において、例えば、pre.Node1p及びpre.Node1mがグランド電位になった場合、又は、pre.Node2p及びpre.Node2mが電源電位になった場合、CLK3を立ち下げれば良い。
【0077】
プリチャージ期間生成器106によれば、フル振幅により行われるプリチャージの模擬動作に基づいて、コンパレータ101のプリチャージ期間に相当するコンパレータクロック202の第1の期間を決定できる。また、プリチャージ動作の模擬動作はフル振幅であるので、ノイズによってコンパレータクロック202の第1の期間が変動せず、コンパレータクロック202のデューティは毎クロック一定である。従って、コンパレータ101の最小解像度は、毎クロック同じ精度を維持できる。
【0078】
また、プリチャージ期間生成器106の前段に、
図6に示した遅延制御回路111を挿入することを想定する。pre.Node1p及びpre.Node1mをVDDまで確実にセトリング(Settling)でき、pre.Node2p及びpre.Node2mを電源電位まで確実にセトリングできる。これにより、プリチャージが完了する前に論理(比較動作)が進行することを回避できる。
【0079】
次に、コンパレータクロック202のクロック周波数について説明する。
図11は、コンパレータクロック202のクロック周波数の一例を示す図である。クロックA及びクロックBは、コンパレータクロック202の一例である。クロックAの周期は、クロックBの周期よりも短い。
【0080】
コンパレータクロック202の周期から、プリチャージ期間に相当する第1の期間を除いた期間が、比較期間に相当する第2の期間である。第1の期間は、上述の通りクロック周波数によっては変化しないので、クロック周波数を低くした場合、クロック周期が長くなった分第2の期間を長くできる。コンパレータ101の比較期間が長くなると最小解像度は小さくなる、つまり、解像度が向上するので、コンパレータクロック202の第2の期間が長くなると、コンパレータ101の最小解像度を小さくできる。
【0081】
AD変換器100は、比較器及びクロック生成器102を備える。比較器は、第1のクロックの第1の期間において、入力信号と所定値とを比較するための比較回路と、第1のクロックの第2の期間において、次回の比較動作のために内部電圧を所定値にプリチャージするためのプリチャージ回路と、を含む比較器と、を含む。クロック生成器102は、第2のクロックを用いて、第1のクロックを生成する。また、クロック生成器102は、比較器のプリチャージ回路のレプリカ回路を含み、プリチャージ回路のレプリカ回路において、プリチャージの開始から終了までの期間を、第1のクロックの第2の期間とする。
【0082】
比較器は、例えばコンパレータ101である。第1のクロックは、例えばコンパレータクロック202である。第2のクロックは、例えば外部クロック201である。
【0083】
AD変換器100によれば、プリチャージの模擬動作はフル振幅動作なので、第1の期間はノイズの影響をほとんど受けず一定である。また、比較器のレプリカの比較時間からクロックのHigh期間を決定するのではなく、レプリカの比較器のプリチャージ期間に相当する期間からクロックのLow期間を決定する。従って、クロックデューティは一定である。
【0084】
また、クロックのLow期間を一定に決定し、残りの期間をHighとする。従って、クロック周波数を低くすると、周期が長くなった分、High期間が長くなり、比較器の比較できる最小電圧差も小さくなり、AD変換器の解像度が細かくなる。
【0085】
また、コンパレータ101のクロックのデューティが毎回等しいので、コンパレータ101の最小解像度がクロック毎に等しく、SNR(Signal to Noise Ratio)が設計値どおりとなり、高精度に計測可能となる。
【0086】
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態におけるAD変換器100Bの構成例を示す図である。AD変換器100Bは、フラッシュAD変換器である。AD変換器100Bは、複数のコンパレータ101A,101B,101C,101Dと、クロック生成器102と、を備える。なお、コンパレータの台数はこれに限られない。
【0087】
各コンパレータ101A〜101Dは、クロック生成器102から出力された同一のコンパレータクロック202を入力する。また、各コンパレータ101A〜101Dに設定される各所定値204A〜204Dは、各々異なる電圧である。各コンパレータ101A〜101Dから出力される比較結果205A〜205Dは、例えば温度計コードにより表される。
【0088】
例えば、所定値204A:950mV、所定値204B:900mV、所定値204C:850mV、所定値204D:800mVとする。入力信号203が800mV未満では、温度計コードは、205A,B,C,D=(0,0,0,0)となる。すなわち、比較結果205A〜205Dは「0」つまり「Low」となる。
【0089】
なお、理想的なコンパレータの動作としては、入力電圧と所定値とが等しい場合、コンパレータの出力はメタステーブル状態となる。ただし、ノイズの影響によって、High又はLowとなるので、ここでは、Highとして説明する。
【0090】
また、入力信号203が800mV以上850mV未満では、温度計コードは、205A,B,C,D=(0,0,0,1)となる。すなわち、比較結果205A〜205Cは「0」となり、比較結果205Dは「1」つまり「High」となる。
【0091】
また、入力信号203が850mV以上900mV未満では、温度計コードは、205A,B,C,D=(0,0,1,1)となる。すなわち、比較結果205A,205Bは「0」となり、比較結果205C,205Dは「1」となる。
【0092】
また、入力信号203が900mV以上950mV未満では、温度計コードは、205A,B,C,D=(0,1,1,1)となる。すなわち、比較結果205Aは「0」となり、205B〜205Dは「1」となる。
【0093】
また、入力信号203が950mV以上では、温度計コードは、205A,B,C,D=(1,1,1,1)となる。すなわち、比較結果205A〜205Dは「1」となる。
【0094】
AD変換器100Bでは、複数のコンパレータ101A〜101Dを複数個並列に並べ、複数のコンパレータ101A〜101Dのクロックとしてコンパレータクロック202を与える。AD変換器100Bによれば、全てのコンパレータ101A〜101Dのクロックのデューティが等しいので、コンパレータ101A〜101Dの最小解像度が等しく、SNRが設計値どおりとなる。従って、高精度に計測可能なフラッシュAD変換器を実現できる。
【0095】
(第3の実施形態)
図13は、第3の実施形態における受信装置1000の構成例を示す図である。受信装置1000は、複数の通信規格に準拠した受信装置である。受信装置1000は、第1クロック生成部1010,第2クロック生成部1020、選択部1030、AD変換器1040、復調部1050,1060、及びアクセス制御部1070を備える。
【0096】
第1クロック生成部1010,第2クロック生成部1020は、クロックを発生させる装置であり、例えば、水晶発振器、パルスジェネレータ、ファンクションジェネレータである。第1クロック生成部1010は、第1の通信規格に準拠した通信を実現するための第1クロック1011を生成する。第2クロック生成部1020は、第2の通信規格に準拠した通信を実現するための第2クロック1021を生成する。
【0097】
選択部1030は、アクセス制御部1070からの指令に応じて、第1クロック生成部1010又は第2クロック生成部1020を選択する。
【0098】
AD変換器1040は、先に説明したAD変換器100又は100Bである。AD変換器1040は、受信信号を入力し、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換信号を出力する。
【0099】
第1の復調部1050は、受信装置1000が第1の通信規格に準拠する場合に、AD変換器1040からのデジタル信号を第1の通信規格に従って復調する。つまり、第1の復調部1050は、第1の復調処理を行う。第2の復調部1060は、受信装置1000が第2の通信規格に準拠する場合に、AD変換器1040からのデジタル信号を第2の通信規格に従って復調する。つまり、第2の復調部1060は、第2の復調処理を行う。
【0100】
アクセス制御部1070は、例えば受信信号により通信に用いられた通信規格を推定し、通信規格に応じて、選択部1030から出力するクロックと、第1の復調部1050又は第2の復調部1060による復調処理の方式と、を決定する機能を有する。
【0101】
なお、通信開始時は、第1の通信規格を用いることを、予め、送信機と受信機間において定めておく。
【0102】
アクセス制御部1070は、復調部1050、1060の出力(例えば、音楽ファイル、動画ストリーミングデータ)をホスト(PC又はアプリケーション)に出力する。
【0103】
第1の通信規格では、選択部1030は、第1クロック生成部1010により生成された第1クロック1011を、AD変換器1040に出力する。次に、第1の復調部1050は、AD変換器1040の出力に対して復調処理する。
【0104】
第2の通信規格では,選択部1030は、第2クロック生成部1020により生成された第2クロック1021を、AD変換器1040に出力する。次に、第2の復調部1060は、AD変換器1040の出力に対して復調処理する。
【0105】
受信装置1000によれば、受信信号から推定される通信規格に対応して復調処理できる。また、複数の通信規格に準拠する通信システムにおいて、AD変換器1040を用いる場合、クロック周波数に対応するサンプリングレートの低い方の通信規格の有効ビットを増加できる。
【0106】
例えば、IEEE802.11ad規格の通信には、SC−PHY及びOFDM−PHYのモードがある。OFDM−PHYではSC−PHYよりもサンプリングレートを低下させてもよいが、高い分解能(最小解像度)が要求される。AD変換器1040は、クロック周波数を低下させることで有効ビット数を増加でき、高い分解能を確保できる。従って、IEEE802.11adの上記2つのモードに好適である
【0107】
本開示は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、特許請求の範囲で示した機能、または本実施形態の構成が持つ機能が達成できる構成であれば、どのようなものであっても適用可能である。
【0108】
上記実施形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する場合を例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0109】
また、上記実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含む1チップとしてもよい。ここでは、LSIとしてもよいし、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称してもよい。
【0110】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。例えば、LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続、又は、設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0111】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0112】
本開示は、2012年9月7日出願の日本特許出願No.2012-197704に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。