【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的を達成するために、本発明は、設備のモニタリングが意図された水素を検出及び/又は定量解析するためのデバイスに関し、前記デバイスは、
−設備に備えることが意図された第1の測定用光ファイバーと、
−第1の測定用光ファイバーに光学的に接続され、かつ第1の光ファイバーの少なくとも1つのパラメータを測定するのに適した、光学システムと、
を備え、
光学システムは、ブリルアンタイプの測定原理に従った、第1の測定用光ファイバーに沿った第1の光ファイバーのパラメータの測定に適している。
【0021】
従ってこのようなデバイスは、第1の測定用光ファイバーのパラメータを測定するためのブリルアン測定原理を使用することによって、第1の測定用光ファイバーに沿った光学モードの有効伝播率n
effの変動を検出することができ、この変動はブリルアンピーク、故にブリルアンタイプの測定原理に従った測定の間に測定されたパラメータに直接影響を与える。光ファイバーにおける水素の拡散は光学モードの有効伝播率n
effに影響を与え、このような拡散は、屈折率、故にブリルアン測定原理に従って測定されたパラメータに変動をもたらすことによって検出可能となり、このようなデバイスを用いて定量化可能となる。
【0022】
このような測定は、所定の波長での光ファイバーの遷移の変動に左右されるものとは異なり、光学モードの有効伝播率n
effに左右され、ブリルアンピークの変動のみに関連するが、光ファイバーのエージング状態に対して顕著な依存性を示さない。このようなデバイスは従って、光ファイバーのエージング状態に左右されず、故に長期間にわたって信頼性を保った検出及び/又は定量解析を可能にする。
【0023】
この測定は、光ファイバーに沿ったブリルアン温度測定と同一の原理に従って、略10キロメートルを超える距離にわたって1メートル未満の空間分解能で、第1の測定用光ファイバーの全長さにわたって実施できるが、パラメータの変動が生じた正確な点、それ故に水素の拡散が生じた第1の測定用光ファイバーの正確な部分を示すことを可能にする。
【0024】
このようなデバイスは従って、設備のモニタリングされるべき領域を備える場合、モニタリングされるべき領域における水素源の正確な位置の識別とともに、長期間にわたってこれらの事象のサイトを予測する必要なく、水素源の検出及び定量解析を可能にするが、それは、その測定が測定用光ファイバーのエージングによってほんの僅かにのみ影響を受けるからである。
【0025】
ブリルアン測定原理に従った測定とは、上記及び本文書の残りにおいて、(i)ブリルアン後方散乱スペクトル(ストークス又はアンチストークス周波数であろうが、主要な(principal)又は二次的なピークの場合であろうが、ゼロでない光学モードとのオーバーラップを有する様々な音響モードに関連する)、又は(ii)ブリルアンゲインに関わる少なくとも1つのパラメータの測定を意味する。このパラメータは例えば、ブリルアン後方散乱現象を生じさせる電磁パルスに対する2つのブリルアン後方散乱ピークのうちの1つの周波数、又はピーク間の周波数、これら2つのブリルアンピークのうちの1つの強度、あるいはそれらの形態(例えばピークの半値全幅)におけるオフセットであり得る。
【0026】
ブリルアンピークとは、上記及び本文書の残りにおいて、同時のブリルアン後方散乱ピーク及びブリルアンゲインピークの両方を意味し、ピークの種類は、使用されるときにデバイスによって行われるブリルアン測定の種類に直接左右される。従って、例えば、反射率測定原理に従ってブリルアン測定を行うデバイスがある。
【0027】
第1の光ファイバーのパラメータは、時間領域でのコーディングによる空間分解能法と関連しているブリルアン光反射率測定、周波数領域でのコーディングによる配置方法と関連しているブリルアン光反射率測定、相関領域(correlation domain)でのブリルアン光反射率測定、時間領域での解析と関連しているブリルアンゲイン光測定、周波数領域でのブリルアンゲイン光測定、及び相関領域での解析によるブリルアンゲイン光測定を含む方法の群から選択されたブリルアン測定原理に従って測定され得る。
【0028】
従って、デバイスは、空間分解能、それに沿ってモニタリングが実施される距離、水素検出閾値、及び定量的水素分解能の観点で、モニタリングされるべき設備に関連する要件に応じて適合され得る。
【0029】
時間領域でのブリルアン光反射率測定、周波数領域でのブリルアン光反射率測定、相関領域でのブリルアン光反射率測定、時間領域での解析によるブリルアン光、周波数領域でのブリルアン光、及び相関領域での解析によるブリルアン光の測定は、それらの英語名及び対応する略称がよく知られており、それぞれ、Brillouin Optical Time Domain Reflectometry(BOTDR)、Brillouin Optical Frequency Domain Reflectometry(BOFDR)、Brillouin Optical Time Domain Analysis(BOTDA)、Brillouin Optical Time Frequency Domain Analysis(BOFDA)、及びBrillouin Optical Correlation Domain(BOCDA)である。これらの測定は、一般的に光ファイバー温度測定デバイス及び/又は変形(deformation)モニタリングデバイスで実施される測定である。
【0030】
そのデバイスは、第1の測定用光ファイバー上の少なくとも1つの位置で測定用光ファイバーの少なくとも1つのパラメータの基準測定を行うように適合されることができ、前記基準測定は水素の存在によって影響を受けない。
【0031】
この構成では、第1の測定用光ファイバーのパラメータの測定によって、ブリルアン測定に影響を与えるパラメータがブリルアン測定原理に従ってなされた測定を補正でき、故に、基準測定の間に測定されたパラメータの影響を制限あるいは除外することで、水素の検出及び/又は定量解析を改善することができる。
【0032】
ブリルアン測定に影響を与えるパラメータは特に、温度、第1の測定用光ファイバーの変形、及び放射線、圧力、相対湿度、並びに大気の含水量であり得る。
【0033】
光学システムは、2以上の異なる波長で、第1の光ファイバーに沿った基準測定を行うように適合させることができる。これを達成するために、デバイスは、ブリルアンラインが発生するカスケードで、幾つかのポンプレーザーを含むか、又は刺激となり得る。
【0034】
水素の存在が2つの異なる影響を示す2つの異なるポンプ波長でのパラメータの測定は、この影響が知られている場合、この影響を除去し、かつ水素に敏感でない前記パラメータの基準測定を提供することを可能にする。
【0035】
光学システムは、測定用光ファイバーに沿った温度及び/又は変形及び/又は上記の他のパラメータの基準測定を提供するために、水素を測定するファイバーに近接して配置された他種の光ファイバーを添加することによって、測定用光ファイバーの少なくとも1つの他の影響パラメータの変動を測定するように適合され得る。
【0036】
そのデバイスは、ラマン拡散原理であろうがレイリー拡散原理であろうが、他の後方散乱測定に従って第1の光ファイバーに沿った少なくとも1つのパラメータの基準測定を行うように適合され得る。
【0037】
第1の測定用光ファイバーは、水素に対して鈍感にされた少なくとも1つの部分を含むことがあり、故に、前記部分での光学システムによる第1の測定用光ファイバーのパラメータの測定は、基準測定を提供する。
【0038】
上記及び本文書の残りの部分において、水素に対して鈍感にされた光ファイバーの部分又は光ファイバーとは、光ファイバーの部分又は光ファイバーが、前記光ファイバーの部分又は前記ファイバーの大気環境における水素の存在が前記光ファイバーの部分又は前記光ファイバーに行われた測定に影響を与えないような構成を有することを意味する。
【0039】
このような部分は、ブリルアン測定原理に従った第1の測定用光ファイバーのパラメータの測定を補正するために、水素の影響のない基準測定を提供することができる。
【0040】
設備に備えることが意図されながら光学システムに接続される基準光ファイバーがまた提供され、前記基準光ファイバーは基準測定を提供するよう意図されている。
【0041】
設備に備えることが意図されながら光学システムに接続される基準光ファイバーがまた提供され、前記基準光ファイバーは、第1の測定用光ファイバーに沿った温度及び/又は変形の基準測定を提供するよう意図されている。
【0042】
このような基準光ファイバーは、ブリルアン測定原理に従った水素検出及び/又は定量解析測定と干渉し得るパラメータの測定を提供することによって、第1の測定用光ファイバーに沿った前記検出及び/又は定量解析測定を補正することを可能にする。このような補正により、基準光ファイバーになされた基準測定の間に測定されるパラメータの影響を制限又は除外することができる。
【0043】
基準光ファイバーは、水素に対して低下した敏感性を有するように、優先的には水素に対して鈍感であるように構成され得る。
【0044】
基準光ファイバーの水素に対するこのような低下した敏感性、又は鈍感性により、基準光ファイバーを用いて得られる基準測定における水素の影響を低減あるいは無効にすることができる。
【0045】
基準光ファイバーは、コアと、基準光ファイバーが水素に対して低下した、優先的にはゼロである敏感性を有するようにその材料が構成されたクラッディングと、を含むことができる。
【0046】
この可能性によると、コア及び/又はクラッディングは、シリコン若しくはカルコゲニドをベースとするガラス、又は空気若しくは液体で充填された空隙(「孔を有するファイバー」)であり得る。
【0047】
基準光ファイバーは、コアと、基準光ファイバーが水素に対して低下した、優先的にはゼロである敏感性を有するようにドーピング元素の拡散が構成されたクラッディングと、を含むことができる。
【0048】
基準光ファイバーは、基準光ファイバーにおいて水素の拡散を制限するように適合されたコーティングを含むことができる。
【0049】
設備に備えることが意図されながら光学システムに接続される第2の測定用光ファイバーがまた提供され、前記第2の測定用光ファイバーは、第1の測定用光ファイバーとは異なる水素との相互作用を有するように構成される。
【0050】
従って、このような第2の測定用光ファイバーにより、デバイスは、水素との相互作用が異なり、前記相互作用の差異に従って、単一の測定用光ファイバーを有するデバイスよりも広大な範囲にわたる一時的な情報又は最適化された敏感性などの、検出された水素源上の補助的な情報を提供することができる、2つの測定へのアクセスを可能にする。
【0051】
第2の測定用光ファイバーは、前記第2の測定用光ファイバーにおいて水素の拡散を制限するための手段を含むことができる。
【0052】
このような拡散を制限するための手段は、水素が光ファイバーに入る速度を低下させ、故に、検出される水素を生じさせる水素源の一時的な情報を提供する。
【0053】
第2の測定用光ファイバーの水素の拡散を制限するための手段は、前記第2の測定用光ファイバーのコーティングを含むことができ、前記コーティングは、水素に対して部分透過性(partial permeability)を有する。
【0054】
水素に対する部分透過性とは、前記光ファイバーにおける拡散を完全に除去することなしに、前記コーティングを備えた光ファイバー内への水素の浸透を制限するようにコーティングが適合されることを意味する。
【0055】
このようなコーティングは、第2の測定用光ファイバーの光学特性への影響が低いか、あるいはゼロである、第2の測定用光ファイバーにおける水素の拡散を制限するための手段を提供する。
【0056】
第2の測定用光ファイバーの水素の拡散を制限するための手段は、その内部構造がそのドーパントの選択によって、そのガラスマトリックスの選択によって、又は前記第2の測定用光ファイバーの水素に対する敏感性を増加させるように構成された事前の水素担持(prior hydrogen loading)など、若しくは例えばガンマ及び/又はUV放射線などのイオン化放射線担持などの前処理によって修正された、光ファイバーの選択であり得る。
【0057】
これらの前処理により、水素検出の閾値を変更し、故にこのような第2の測定用光ファイバーでなされた測定から得られる検出及び/又は定量解析の敏感性を変更することができる。
【0058】
これらの特定の前処理及び(性質、並びに第1及び第2のコーティングの観点からの)光ファイバーの選択は、水素吸収の飽和閾値を変更する。
【0059】
第2の測定用光ファイバーは、前記光ファイバーの水素との相互作用を修正するように構成された事前の水素担持を有することができる。
【0060】
1つ又は複数の測定用光ファイバー及び基準光ファイバーは、クラスター又はリボンの形態で配置され得る。
【0061】
互いに対するこのような光ファイバーの配置により、熱的な観点から、並びに応力、圧力、及びそれらがさらされる放射線レベルの観点から、全ての光ファイバーに対して同一の環境を提供することができる。従って、基準光ファイバーを備えるデバイスでは、基準測定は、水素の検出及び/又は定量解析に用いられるのと同一の条件下で実施される。同様に、第2の測定用光ファイバーを備えるデバイスでは、第1及び第2の測定用光ファイバーによってなされる測定は互いに同等である。
【0062】
本発明はまた、設備のモニタリングのための、水素を検出及び/又は定量解析するための方法に関し、前記方法は、
−設備に第1の測定用光ファイバーを設置するステップと、
−ブリルアン測定原理に従って、測定用光ファイバーに沿ってパラメータの測定を行うステップと、
からなるステップを含む。
【0063】
本発明はまた、本発明によるデバイスを用いて水素を検出及び/又は定量解析するための方法に関し、
−ブリルアン測定原理に従って第1の測定用光ファイバーに沿って第1の測定用光ファイバーのパラメータを測定するために、光学システムを使用するステップと、
−ブリルアン測定原理に従って測定用光ファイバーに沿って測定されたパラメータから、測定用光ファイバーにおける水素をそれぞれ検出及び/又は定量解析するステップと、
からなるステップを含む。
【0064】
このような方法は、設備のモニタリングされるべき領域がどの程度であろうと、設備における水素の検出及び/又は定量解析を結果としてもたらすことができる。また、水素の存在を検出する場合、水素の検出が行われる第1の測定用光ファイバーに沿った点を識別することができる。
【0065】
基準測定を行うように適合されたデバイスが使用され得、水素を検出及び/又は定量解析するためのそれぞれのステップは、
−第1の測定用光ファイバーに沿った基準測定を行うために、光学システムを使用するステップと、
−基準測定に基づいて、ブリルアン測定原理に従って第1の測定用光ファイバーに沿ってなされた第1の測定用光ファイバーのパラメータの測定を補正するステップと、
−基準測定を用いて補正された、ブリルアン測定原理に従った第1の測定用光ファイバーに沿った第1の測定用光ファイバーのパラメータの測定から、第1の測定用光ファイバーにおける水素の存在をそれぞれ検出及び/又は測定するステップと、
からなるサブステップを含む。
【0066】
率(index)変動測定を補正するこのようなステップを含む方法は、例えば温度の変化に関連し得る水素の存在の誤った検出のリスクを制限する。
【0067】
本発明は、添付の図面を参照して、純粋に例示の目的で提示され制限的ではない実施例の説明を読むことで、より良く理解されよう。