(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6157585
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】ブタジエンを製造するための低排出酸化脱水素方法
(51)【国際特許分類】
C07C 5/48 20060101AFI20170626BHJP
C07C 7/11 20060101ALI20170626BHJP
C07C 11/167 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
C07C5/48
C07C7/11
C07C11/167
【請求項の数】15
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-503552(P2015-503552)
(86)(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公表番号】特表2015-514092(P2015-514092A)
(43)【公表日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】US2013034205
(87)【国際公開番号】WO2013148908
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月24日
(31)【優先権主張番号】61/617,506
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/617,535
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513157626
【氏名又は名称】ティーピーシー・グループ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】カシウラ,リアナ
(72)【発明者】
【氏名】ダフ,ジョゼフ・ジー
(72)【発明者】
【氏名】バラード,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ポッター,マーク・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】チャダ,シリシャ
【審査官】
桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/137595(WO,A1)
【文献】
米国特許第03674887(US,A)
【文献】
特公昭49−005321(JP,B1)
【文献】
米国特許第04083884(US,A)
【文献】
米国特許第04067921(US,A)
【文献】
特開昭60−126235(JP,A)
【文献】
特公昭62−017976(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 5/48
C07C 7/11
C07C 11/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化させ、水蒸気及び酸素に富む気体と混合し、かつ当該混合流を過熱して反応器供給材料を生成し;
当該反応器供給材料をフェライト触媒上で酸素に富む気体により酸化脱水素して、それによってブタジエン富化生成物流を形成する;工程を含み;
ブタジエン富化生成物流を用いて、当該ブタジエン富化生成物流から顕熱を取り出すための間接熱交換と、当該ブタジエン富化生成物流から分離されるC4より軽質の炭化水素又は他の低価値の揮発性物質の熱酸化の組み合わせによって、以下のように反応器供給材料のための熱を与え;
少なくとも510℃(950°F)の温度の前記ブタジエン富化生成物流を、まず反応器供給材料過熱器に通して、そこで前記反応器供給材料を、前記ブタジエン富化生成物流との間接熱交換によって少なくとも345℃(650°F)に過熱し;
反応器供給材料過熱器から排出されるブタジエン富化生成物流を、次に水蒸気発生器に通して、そこでブタジエン富化生成物流との間接熱交換によって水を気化させ;
ブタジエン富化生成物流を、次にC4吸収器に通して、そこでブタジエンを含むC4化合物を相溶性の吸収油中に吸収させ;
吸収油を、非C4揮発性物質を取り出す脱気塔;ブタジエンを含むC4化合物を減圧下において吸収油から脱着/ストリッピングするC4ストリッパーに通し;
分散された、C4より軽質の炭化水素又は他の低価値の揮発性物質を含む揮発性低級有機化合物を、ブタジエン富化生成物流からストリッピングされた水性液体からストリッピングし、得られる水性流を水蒸気発生器に再循環し;
定常運転中において、ブタジエン富化生成物流の顕熱及びC4より軽質の炭化水素又は他の低価値の揮発性物質の熱酸化からの回収熱を含むブタジエン富化生成物流のエネルギー含量によって、
炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化及び過熱し;そして
反応器供給材料中に過熱水蒸気を供給するのに用いる水を気化及び過熱する;
のに必要なエネルギーの少なくとも40%が与えられる、炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに転化させる改良された低排出方法。
【請求項2】
水蒸気発生器に供給する水を気化させるのに必要な熱が、少なくとも部分的に、ブタジエン富化生成物流から取り出されるC4より軽質の炭化水素又は他の低価値の揮発性物質の熱酸化によって生成する熱によって与えられる、請求項1に記載の炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに酸化脱水素することによって炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに転化させる改良された低排出方法。
【請求項3】
フェライト触媒が、酸素、主要割合の鉄、小割合の亜鉛、及びより少量のマンガン、リン、並びに硝酸塩を含まないカルシウム前駆体の残渣から実質的に構成されるフェライト酸化物触媒である、請求項1に記載の炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに酸化脱水素することによって炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに転化させる改良された低排出方法。
【請求項4】
定常運転中において、ブタジエン富化生成物流の顕熱及びC4より軽質の炭化水素又は他の低価値の揮発性物質の熱酸化からの回収熱を含むブタジエン富化生成物流のエネルギー含量によって、
炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化及び過熱し;そして
過熱水蒸気を反応器供給材料中に供給するのに用いる水を気化及び過熱する;
ために必要なエネルギーの少なくとも45%が与えられる、請求項1に記載の炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに酸化脱水素することによって炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに転化させる改良された低排出方法。
【請求項5】
定常運転の第1段階中において、ブタジエン富化生成物流の顕熱及びC4より軽質の炭化水素又は他の低価値の揮発性物質の熱酸化からの回収熱を含むブタジエン富化生成物流のエネルギー含量によって、
炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化及び過熱し;そして
過熱水蒸気を反応器供給材料中に供給するのに用いる水を気化及び過熱する;
ために必要なエネルギーの少なくとも50%が与えられる、請求項1に記載の炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに酸化脱水素することによって炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに転化させる改良された低排出方法。
【請求項6】
反応器供給材料を過熱するための過熱器、及び反応器供給材料を気化させるための1以上の供給材料気化器を含む反応システム内においてブテン類を酸化脱水素することによって炭化水素質のブテンに富む供給材料からのブテン類をブタジエンに転化させることによるブタジエンの製造方法であって
(a)炭化水素質のブテンに富む供給材料を酸化脱水素反応器内で反応させてブタジエン富化生成物流を形成し、これを昇温温度において反応器から排出し;
(b)前記ブタジエン富化生成物流を供給材料過熱器に供給し、ここでブタジエン富化生成物流は425℃(800°F)以上の温度で過熱器に供給し、反応器供給材料も過熱器に供給し;
(c)反応器供給材料を、過熱器内において、ブタジエン富化生成物流から前記供給材料への顕熱の間接熱伝達によって少なくとも260℃(500°F)の温度に過熱し;
(d)工程(c)の後に、過熱器から排出されるブタジエン富化生成物流を供給材料気化器に供給し、ここで気化器に導入されるブタジエン富化生成物流は少なくとも205℃(400°F)の温度であり;そして
(e)反応器供給材料を、気化器内において、ブタジエン富化生成物流から前記供給材料への顕熱の間接熱伝達によって気化させる;
ことを含む、製造方法。
【請求項7】
ブタジエン富化生成物流を480℃〜760℃(900°F〜1400°F)の温度で過熱器に供給する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ブタジエン富化生成物流を少なくとも290℃(550°F)の温度で気化器に供給する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
生成するブタジエン1kgあたり少なくとも2300kJ(1000BTU/ポンド)を、過熱器内において間接熱交換によってブタジエン富化生成物流から反応器供給材料に伝達する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
生成するブタジエン1kgあたり2300〜5800kJ(1000〜2500BTU/ポンド)を、過熱器内において間接熱交換によってブタジエン富化生成物流から供給材料に伝達し、生成するブタジエン1kgあたり2300〜7000kJ(1000〜3000BTU/ポンド)を、気化器内において間接熱交換によってブタジエン富化生成物流から供給材料に伝達する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
(a)炭化水素質のブテンに富む供給材料を受容し、酸化脱水素によってブテン類をブタジエンに転化させ、それによってブタジエン富化生成物流を与えて、これを昇温温度において反応器から排出するように構成されている反応器;
(b)昇温温度における反応器からのブタジエン富化生成物流を受容するように反応器に接続されており、反応器供給材料を受容するように構成されており、ブタジエン富化生成物流からの顕熱を反応器供給材料へ伝達し、過熱された反応器供給材料を与えるように構成されている過熱器;
(c)過熱器から排出されたブタジエン富化生成物流を受容して、ブタジエン富化生成物流からの顕熱を反応器供給材料へ伝達するように反応器に接続されている反応器供給材料のための水蒸気を生成する第1の気化器;
(d)再循環凝集物中の水分を気化して反応器供給材料のための水蒸気を生成するための、反応器に接続されている第2の気化器;
(e)ブタジエン富化生成物流からブタジエンを回収するための精製系列;及び
(f)精製系列からの副生成物を酸化することによってエネルギーを回収し、第2の気化器のためのエネルギーを供給するための熱酸化装置;
を含む、炭化水素質のブテンに富む供給材料の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
【請求項12】
過熱器が、生成するブタジエン1kgあたり少なくとも2300kJ(1000BTU/ポンド)を間接熱交換によってブタジエン富化生成物流から供給材料へ伝達するように構成されている、請求項11に記載の炭化水素質のブテンに富む供給材料の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
【請求項13】
第1の気化器が、生成するブタジエン1kgあたり少なくとも2300kJ(1000BTU/ポンド)を間接熱交換によってブタジエン富化生成物流から反応器供給材料へ伝達するように構成されている、請求項11に記載の炭化水素質のブテンに富む供給材料の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
【請求項14】
熱酸化装置が、生成するブタジエン1kgあたり少なくとも930kJ(400BTU/ポンド)を第2の気化器へ供給するように構成されている、請求項11に記載の炭化水素質のブテンに富む供給材料の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
【請求項15】
過熱器が、生成するブタジエン1kgあたり2300〜8000kJ(1000〜3500BTU/ポンド)を間接熱交換によってブタジエン富化生成物流から供給材料へ伝達するように構成されており、第1の気化器が、生成するブタジエン1kgあたり2300〜10,500kJ(1000〜4500BTU/ポンド)を間接熱交換によってブタジエン富化生成物流から供給材料へ伝達するように構成されており、熱酸化装置が、生成するブタジエン1kgあたり少なくとも930kJ(400BTU/ポンド)を第2の気化器へ供給するように構成されている、請求項11に記載の炭化水素質のブテンに富む供給材料の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本国際特許出願は、2012年3月29日に出願された同じ表題の共に係属している米国仮特許出願61/617,506(代理人書類番号TPC−10−25)に基づくものであり、その優先権をここに主張し、その開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する。
【0002】
本国際特許出願はまた、2012年3月29日出願の「ブタジエンを製造するための改良された制御可能な酸化脱水素方法」と題された共に係属している米国仮特許出願61/617,535(代理人書類番号TPC−11−8)にも基づくものであり、その優先権をここに主張し、その開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する。
【0003】
本発明は、ブタジエン類を製造するためのブテン類の酸化脱水素に関する。ブタジエン富化生成物流を用いて、段階的間接熱交換によって反応セクションのための熱を供給する。また、ブタジエン富化生成物流から分離される有機化合物の熱酸化によっても、反応セクションへのエネルギーが与えられる。
【背景技術】
【0004】
炭化水素からブタジエンを製造するための従来公知の酸化脱水素方法は、反応供給流を気化及び過熱するために天然ガスを燃料とする加熱器を用いており、したがって今日の情勢において許容できるレベルを遙かに超える放出物、特にCO
2放出物を生成している。特に、従来のプロセスは、通常は、ブテンを気化させ、炭化水素、好ましくはブテン類、酸素、及び水蒸気の混合物を、260℃(500°F)より高く、より通常的には約315℃(600°F)より高く、好ましくは約345℃(650°F)より高く、或いは幾つかの場合においては更に371℃(700°F)より高い温度に加熱するために天然ガスを用いていた。通常のプロセスにおいては、反応混合物は、ブテン類、ブテンに富む炭化水素質の供給材料中のブテン1モルに対して約0.4モル〜約0.8モル、より通常的には0.5モルを僅かに超える量乃至約0.65モル以下の量の酸素、及び約12:1〜約16:1の量の過熱水蒸気を含む。反応に続いて、反応生成物の混合物を冷却し、油吸収及び次に分別によってブタジエンを分離する。通常は、これらのプロセスによって約50〜約70%、より通常的には約55〜約65%の範囲の純度の粗ブタジエンが生成し、これは公知の技術を用いて更なる処理を行うためにプラントにおいて前方に送る。
【0005】
興味深い参照文献を下記において議論する。
【0006】
Lewisの米国特許5,772,898(1998年6月30日)(新規なメタロ酸化マンガンを用いる炭化水素転化方法)は、炭化水素供給材料を、三次元骨格構造、結晶内細孔系、及び無水基準で式:
A
yMn
8−xM
xO
16
(式中、Aは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びアンモニウムイオンから選択される構造規定剤であり、「y」はAのモル数であって、約0.5〜約2.0からなる群からの範囲であり、Mは、クロム、ジルコニウム、スズ、白金、ロジウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、アンチモン、ルテニウム、ガリウム、及びゲルマニウムからなる群から選択される金属であり、「x」はMのモル数であって、約0.01〜約4.0の範囲であり、マンガンは+3又は+4の価数を有し、Mは、+3、+4、又は+5の価数を有する)
によって表される実験化学組成を有し、ホーランダイト構造を有する結晶質メタロ酸化マンガン組成物を含む触媒と接触させることを含む炭化水素転化方法に関する。
【0007】
Sakaiらの米国特許5,139,988(1992年8月18日)(鉄−アンチモン含有金属酸化物触媒組成物及びその製造方法)は、結晶質アンチモン酸鉄、並びにバナジウム、モリブデン、及びタングステンからなる群から選択される少なくとも1種類の元素を必須成分として含み、有機化合物の酸化反応における触媒として有用な組成物に関する。また、この組成物の製造方法も開示されている。
【0008】
Dejaifveらの米国特許4,975,407(1990年12月4日)(有機化合物を脱水素するための触媒、その製造方法及びその使用)は、酸化鉄を与える薬剤及び酸化カリウムを与える薬剤から誘導され、モル比が1.5〜60の範囲であり、カリウムフェライト(K
2Fe
12O
19)相が八面体Fe
3O
4マトリクス上に担持されて存在し、K
2Fe
12O
19の六方晶構造とFe
3O
4スピネル構造の(111)面との間に結晶エピタキシーを示すことを特徴とする触媒に関する。
【0009】
McFarlandの米国特許4,973,793(1990年11月27日)(アミレン類の酸化脱水素)は、接触酸化脱水素反応中にブチレン類をアミレン類と共に供給する酸化脱水素方法に関し、この方法はアミレン類の転化率が実質的に向上すると述べられている。向上したアミレンの転化率は、アミレン類及び10〜95モル%のブチレン類の混合物を酸化脱水素することによって得られる。
【0010】
Helbergの米国特許4,067,921においては、ブタジエン製造運転に関する熱回収が開示されている。
図4及び公報の6欄20〜38行を参照。
【0011】
Miklasの米国特許3,953,370(1976年4月27日)(亜鉛フェライト酸化脱水素触媒を活性化する方法)は、370〜700℃(700〜1300°F)の温度の水蒸気を用いて、C
4〜C
8炭化水素からブタジエンを製造するための亜鉛フェライト酸化脱水素触媒を活性化することに関する。
【0012】
Tschoppの米国特許3,943,185(1976年3月9日)(ジオレフィンの製造及び精製)は、第1の区域内においてC
4炭化水素を吸収油中に吸収させ;第2の区域内において水相を維持する温度及び圧力の条件下で運転する第2の区域内において、吸収油とC
4炭化水素の混合物から酸素及び不活性の非凝縮性気体をストリッピングし;そして、(1)第2の区域からの主として水性の相、(2)主として酸素及び不活性の非凝縮性気体の全部である塔頂物、並びに酸素及び不活性の非凝縮性気体を実質的に含まない吸収油及びC
4炭化水素の塔底物を排出する;ことを含む、酸素及び不活性の非凝縮性気体が除去されて実質的に含まない酸化脱水素したC
4炭化水素の流れを製造する方法に関する。
【0013】
Croceらの米国特許3,937,746(1976年2月10日)(イオウ促進酸化脱水素)においては、イオウ促進剤を触媒の一部として存在させるか、又は反応物質との反応に加えることによって有機化合物の酸化脱水素の収率を向上させている。
【0014】
Marsheckの米国特許3,801,671(1974年4月2日)(有機化合物の酸化脱水素)においては、モノオレフィンの転化に関して活性の少なくとも1種類の触媒と混合したパラフィンの転化に関して活性の少なくとも1種類の触媒から実質的に構成される流動混合触媒系の存在下で脱水素を行うことによって、パラフィン系炭化水素のジオレフィンへの酸化脱水素を向上させることができることが報告されている。
【0015】
Bertusらの米国特許3,745,194(1973年7月10日)(パラフィン系炭化水素の酸化脱水素)においては、供給材料を、蒸気相中、酸素含有気体の存在下において、酸化状態のスズを、酸化状態のビスマス、コバルト、又はニッケルの金属の少なくとも1つと組み合わせて含む触媒と接触させることによって、有機化合物を高い不飽和度を有する化合物に脱水素している。かかる転化の代表例は、スズ酸ニッケル含有触媒上でのブタンの1,3−ブタジエンへの酸化脱水素である。
【0016】
Woernerらの米国特許3,496,070(1970年2月17日)(ストリッパー塔頂物に液体溶媒を加えて抽出蒸留することによる不飽和炭化水素の精製)においては、抽出蒸留カラム内において選択的溶媒を用いて炭化水素混合物を抽出蒸留し、それによって抽出蒸留カラム内において炭化水素を選択的に抽出して炭化水素に富む溶媒フラクションを形成し、これを溶媒ストリッピングカラムに供給して、溶媒をストリッピングカラムから塔底物として取り出し、蒸気状の炭化水素フラクションをストリッピングカラムから塔頂フラクションとして取り出し;液相の選択的溶媒を溶媒ストリッパーからの蒸気状塔頂物に加えて、溶媒ストリッパーカラムの塔頂物凝縮器内及び溶媒ストリッパー内の圧力を低下させる;ことを含む、不飽和炭化水素を含む4〜5個の炭素原子を有する炭化水素の混合物を分離するための炭化水素分離方法が提供されている。
【0017】
Bajarsの米国特許3,284,536(1966年11月8日)(マグネシウムフェライトを用いる脱水素)は、炭化水素を、蒸気相中、昇温温度において、酸素及びマグネシウムフェライトを含む触媒の存在下で脱水素することに関する。この方法にしたがって脱水素する炭化水素は、4〜7炭素原子の炭化水素、好ましくは、少なくとも4炭素原子の直鎖を有する4〜5又は6炭素原子の飽和炭化水素、モノオレフィン、ジオレフィン、及びこれらの混合物、並びに脂環式炭化水素からなる群から選択される脂肪族炭化水素である。脱水素する炭化水素1モルあたり0.2〜2.5モルの酸素の範囲内の量の酸素を反応区域内に存在させる。脱水素反応の温度は250℃より高く、例えば約300℃又は375℃より高く、反応器内の最高温度は約650℃又は750℃、或いは場合によって幾つかの状況下においてはより高い温度であってよい。
【0018】
Gayの米国特許3,207,805(1965年9月21日)(酸素及びアンモニウムハロゲン化物の存在下での脱水素)は、有機化合物を脱水素する方法に関し、より詳しくは昇温温度において、酸素及びアンモニウムハロゲン化物の存在下で脱水素可能な有機化合物を脱水素することに関する。
【0019】
Welchら, BUTADIENE VIA OXIDATIVE DEHYDROGENATION, Hydrocarbon Processing, 1978年11月, p.131-136においては、断熱反応器システム内において、ハロゲン及びイオウ化合物のような気相添加剤を用いずに、温度上昇を抑えるヒートシンクとして水蒸気を用いて、水蒸気、空気又は酸素、及びn−ブテン類を加熱して、約430℃(800°F)において未公表の自己再生不均一触媒上に通す酸化脱水素プロセスが議論されている。このプロセスは供給材料中の酸素の実質的に全部を消費し、通常は流出流中の残留酸素レベルは0.3%より低いと述べられている。アセチレン類及び酸素化副生成物が主要な副生成物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許5,772,898
【特許文献2】米国特許5,139,988
【特許文献3】米国特許4,975,407
【特許文献4】米国特許4,973,793
【特許文献5】米国特許4,067,921
【特許文献6】米国特許3,953,370
【特許文献7】米国特許3,943,185
【特許文献8】米国特許3,937,746
【特許文献9】米国特許3,801,671
【特許文献10】米国特許3,745,194
【特許文献11】米国特許3,496,070
【特許文献12】米国特許3,284,536
【特許文献13】米国特許3,207,805
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Welchら, Hydrocarbon Processing, 1978年11月, p.131-136
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、ブテン類を水蒸気及び酸素と混合し、次にフェライト酸化物触媒上での酸化脱水素によってブタジエンに転化させる、ブテンに富む供給材料からブタジエンを製造する低排出方法を提供する。酸化脱水素反応生成物中の顕熱を、形成される低価値の揮発性生成物の熱酸化によって生成する熱と一緒に用いて、エネルギー必要量及びCO
2排出を減少させる。高い温度の顕熱は供給材料を過熱する目的のために用い、多少低い温度の顕熱は供給材料を気化させる目的のために用いる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
代表的な方法は、ブテンに富む炭化水素質の供給材料を与え、炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化させ且つ少なくとも約205℃(400°F)の温度に過熱し、炭化水素質のブテンに富む供給材料を過熱水蒸気及び酸素に富む気体と混合して反応器供給流を形成し、反応器供給流中の酸素のモル数を、炭化水素質のブテンに富む供給材料1モルあたり少なくとも約0.4、より好ましくは少なくとも約0.5モルの酸素の範囲になるように制御し、反応器供給流を、フェライト酸化物触媒、好ましくは、主要割合の鉄;小割合の亜鉛;及びより少量のマンガン;リン酸のようなリン源から誘導されるリン;及び好ましくは酢酸カルシウムのような非窒素含有カルシウム前駆体から誘導されるカルシウム;を含む酸化物触媒の上で反応させ;それによってブタジエン富化生成物流を形成することを含み;ここで、触媒床は、不活性又は還元性の供給流、しばしば天然ガス、しかしながら場合によってはより好都合な場合にはブテン、並びに水蒸気を、酸素の不存在下で、触媒の活性に応じて約345℃(650°F)の温度乃至少なくとも約425℃〜455℃(800°F〜850°F)の床温度以下に達するまで触媒床に通すことによって、酸化脱水素反応を開始するのに十分な温度に予備加熱する。触媒床をこの温度にするのに用いる流れの中の水蒸気は、天然ガス又は幾つかの他の好都合な外部エネルギー源を用いて過熱する。触媒床が適度に加熱されたら、還元剤が天然ガスである場合にはこれをブテン類によって置き換える。ブテンを還元剤として用いた場合には、反応のために必要な酸素を含む空気を導入し、過熱水蒸気流を制御して、混合反応器供給材料の温度を所望のレベルに維持する。供給流に必要な熱を供給するのに用いる反応器流出流によって、通常は反応器供給流を少なくとも約315℃〜345℃(600°F〜650°F)に加熱する。通常は約595℃(1100°F)のブタジエン富化反応器流出流は、一連の熱交換器の高温側上で用い、まず反応器供給材料過熱器に通して、そこで、反応器に送るブテン類と水蒸気の混合流を、通常は、ブタジエン富化生成物流との間接熱交換によって、少なくとも約205℃(400°F)、通常は約315℃〜345℃(600°F〜650°F)に過熱する。幾つかの場合においては、ブタジエン富化生成物流は、次に再循環凝縮物気化器に通して、そこで間接熱交換によって水蒸気を生成させ(上述したように、水蒸気は次にブテン類と混合し、得られる混合物は、反応器に導入する前にブタジエン富化生成物流によって過熱する);ブタジエン富化生成物流は、175℃〜約125℃(350°F〜約260°F)、好ましくは約130℃〜150℃(280°F〜300°F)の範囲の温度に冷却した後、急冷カラムを通して送り、ここでブタジエン富化生成物流から熱を取り出し、その含有水蒸気を凝縮させる。下記に記載するようにプロセス流から取り出される低価値の有機物質を燃焼させることによって生成する高圧水蒸気を用いて水性凝縮物を気化させることがしばしば好ましい。
【0024】
急冷カラムに通した後、ブタジエン富化生成物流は吸引ドラムにかけることができ、そこで生成物流中に同伴されている液体を取り出した後、段階間冷却を有する2段階圧縮機に通す。或いは、急冷塔の頂部が蒸気/液体の解離のために的確な寸法であり、急冷塔から圧縮機へ送られる可能性がある懸濁液滴を捕捉するようにデミスターパッドが与えられている場合には、吸引ドラムを省くことができる。約1140kPa絶対圧(150psig)に加圧した後、ブタジエン富化生成物流はアルデヒドスクラバー、及び最終的にはC
4吸収器に送る。アルデヒドスクラバーにおいてアルデヒド類を取り出した後、ブタジエン富化生成物流中に含まれるC
4種を、C
4吸収カラム内において、ブタジエン及び他のC
4化合物を優先的に吸収するように構成されている相溶性の吸収油中に吸収させることによって取り出し、窒素、水素、及び取り出されるより軽質の炭化水素種を気体状塔頂流中に排出し、これを、熱回収装置を備えた熱酸化装置に送って、熱、特に上述したように使用済みの回収される水性縮合物を気化させて酸化脱水素反応のために必要な過熱水蒸気を生成させるための熱を供給するために用いる高圧水蒸気を供給する。好ましくは、他の処理工程中又はプラント中の他の操作において取り出される生成物又は反応物質としてよりも燃料としてより価値のあるオフガスも熱酸化装置に送るが、熱酸化装置への供給材料中のエネルギーの大きな供給源は、C
4吸収カラム内で吸収されない気体状生成物から誘導される。幾つかの場合においては、熱酸化装置への供給材料を天然ガス又は幾つかの他の蒸気状供給材料で増量して、安定な炎が熱酸化装置において得られるようにすることが好都合である。この場合には、回収される低価値の有機物質の燃焼によって得られる発熱量によって、回収される水性凝縮物を気化させるために必要な熱の大きな割合を供することができ、この気化のために必要なエネルギーはプロセスのエネルギー必要量の大きな割合であるが、BTUは勿論代替可能であるので、これらを気化器に直接送ることはできない可能性がある。熱酸化装置のための燃焼性有機物質の特に有用な供給源は、粗ブタジエンを販売可能な製品に精製するための下流のプロセス中にある。アルカン類を現場で脱水素して酸化脱水素プロセスに供給されるブテン類を与える場合には、このプロセスからのオフガスがエネルギーの他の有用な供給源である可能性がある。
【0025】
C
4吸収カラムに通した後、その中にブタジエンが溶解された吸収油を脱気塔に送って、そこで二酸化炭素、残留窒素、及び水素を塔頂から取り出し、気体圧縮機の第2段階に戻して、吸収油をそこからC
4ストリッパーに送って、そこで吸収油中に溶解している分散有機物質をストリッピングして取り出し、吸収油を冷却し、リーンオイルサージドラムを介してC
4吸収器に再循環する。好ましくは、通常は一回に数ヶ月間継続するプラントの定常運転中において、炭化水素質のブテンに富む供給材料及びブタジエン富化生成物流から回収される凝縮物の両方を気化させるのに必要な熱の40%超は、主として、ブタジエン富化生成物流から回収される顕熱、並びに2つの供給源:(1)ブタジエン富化生成物流;及び(2)アルカン類からのブテン類の製造中に生成する不要の生成物;から取り出される不要の生成物の熱酸化によって生成する熱によって供給され、必要なエネルギーの大部分は反応器への供給材料を気化及び過熱するために用いられるので、ブタジエンを製造するために必要なエネルギーの少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%は、運転のための供給材料のエネルギー含量によって供給される。例えば、1時間あたり約32,000kgのブタジエン(1時間あたり70000ポンドのブタジエン)の能力を有するプラントにおいては、製造されるブタジエン1kgあたり約21,000kJが必要(1ポンドあたり9000BTUが必要)であり、したがって少なくとも約3800kJ〜約4200kJ(約3600BTU〜約4000BTU)を、反応器流出流から顕熱を回収することによって供給することができる。この点に関し、回収されるエネルギーの多くは約595℃(1100°F)の高乃至中品質の熱源から得られ、回収プロセスにおいて1つの管壁に通すことしか必要でないことは重要であると考えられる。更に、凝縮物から燃焼性の有機物質を分離することによって、ブタジエン富化生成物流の含有水が清浄化されるので、これを気化して水蒸気を生成させ、必要な場合には酸化脱水素反応器のために再使用することができるので、従来技術のプロセスと比べて、本発明のプロセスの正味のエネルギー及び水の使用量は非常に少なくすることができる。熱酸化装置を用いる場合には、熱酸化装置の寸法によって、必要なエネルギーの更なる10〜40%であるブタジエン1kgあたり約2100〜約8400kJ(1ポンドあたり約900〜約3600BTU)を、燃焼性の有機物質の燃焼によって供給することができる。
【0026】
本発明の一態様においては、炭化水素質のブテンに富む供給材料、及びブタジエン富化生成物流からストリッピングされる水の両方を気化させるのに必要な熱は、関連するプラント装置によって生成する利用可能な熱によって増加されるので、定常運転中においては、ブテンに富む供給材料から粗ブタジエンを製造するために必要なエネルギーは、脱水素及び酸化脱水素の複合プロセスへの供給材料のエネルギー含量、及び関連するプラント装置によって生成する利用可能な熱によって供給され、ブタジエン1kgあたり約12,800kJ(1ポンドあたり約5500BTU)未満、好ましくはブタジエン1kgあたり約11,500kJ(1ポンドあたり約5000BTU)未満は化石燃料によって供給される。熱酸化装置を用いる場合には、化石燃料からの必要なエネルギーは、ブタジエン1kgあたり約10,500kJ(1ポンドあたり約4500BTU)未満、乃至ブタジエン1kgあたり5800kJ(1ポンドあたり2500BTU)未満にすることができる。
【0027】
下記において、複数の例及び添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。図面中の同じ番号は全体にわたって同様の部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の実施において用いるための好ましい反応器の概要断面図である。
【
図2】
図2は、反応器、及びブテンに富む供給材料を反応器の運転のために必要な入口条件にするための予備処理装置を示す粗ブタジエン装置の反応器セクションのフロー図である。
【
図3】
図3は、
図2の反応器セクションによって生成するブタジエン富化生成物流を初期処理するための気体圧縮及びスクラビング装置を示す粗ブタジエン装置の一部のフロー図である。
【
図4】
図4は、
図3の気体圧縮及びスクラビングセクションによって処理した後のブタジエン富化生成物流を処理するためのアルデヒドストリッパー及び関連する装置を示す粗ブタジエン装置の一部のフロー図である。
【
図5】
図5は、
図4のアルデヒドストリッパーセクションから受容されるブタジエン富化生成物流を処理することによって約50%のブタジエンの粗流を製造するためのC
4吸収及びストリッピング装置を示す粗ブタジエン装置の一部のフロー図である。
【
図6】
図6は、それからC
4化合物をストリッピングした後の吸収油を取り扱うために用いるシステムの複数の部分を示す粗ブタジエン装置の一部のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
下記において、例示のみの目的の図面に関連して本発明を詳細に説明する。本発明は添付の特許請求の範囲において規定される。明細書及び特許請求の範囲の全体にわたって用いる専門用語はそれらの通常の意味で与えられ、例えば「間接熱伝達」とは熱交換器壁を通して1つの媒体から他の媒体へ熱伝達させることを指し、圧力は他に示さない限りにおいてゲージ圧を指す。本発明方法を実施する際には、好ましくは、熱は、単一の熱交換器壁を通して、より高い温度の流れからより低い温度の流れへ、例えば下記に記載するように供給材料過熱器内において反応器流出流から反応器供給材料へ伝達させる。間接熱伝達は、本発明にしたがって、チューブアンドシェル熱交換器又はプレート式熱交換器のような任意の好適な装置を用いて行うことができる。
【0030】
他に示さない限りにおいて、「ブタジエン」又は「BD」とは、1,3−ブタジエン、又は1,3−ブタジエンを含む混合物を指す。
【0031】
「温度変量」とは、温度差、例えば熱交換装置に供給される流れの入口温度と、その熱交換装置からのその流れの排出(出口)温度との間の温度差を指す。而して、熱交換器を通る流れの温度変量は、その流れの入口温度と出口温度との間の差である。
【0032】
本発明のブタジエン製造システムの前部は複数の概して同一のプロセス系列を含み、それぞれのプロセス系列はブタジエン富化生成物流を生成する1つの反応器30を有する。ブタジエン富化生成物流からは、急冷塔64に導入する前に間接熱交換によって有用な熱を引き抜く。本発明の好ましい態様においては急冷塔64の位置において全てのプロセス流が合流される。必要以上に複雑になるのを回避するために、1つの系列のみを示す。
【0033】
図2において、ブテンに富む供給材料はブテン気化器50内で気化される。ブテン気化器50においては、気化のために必要な熱は急冷塔64の塔底物から熱を取り出すことによって供給される。急冷塔64の塔底物は、下記において議論するように、進行中のプロセスにおいて定常状態の運転が達成された時点で高温の反応生成物と接触させることによって加熱される。ブテン気化器50を通過した後、気化したブテン供給材料を水蒸気と混合する。この水蒸気は2つの再循環凝縮物気化器54及び56内で生成される。再循環凝縮物気化器54内で生成する水蒸気は、反応器供給材料過熱器48から排出されるブタジエン富化生成物流との間接熱交換によって生成される。再循環凝縮物気化器56内で水蒸気を生成させるのに必要な熱は、好ましくはプラント配管網か、又は好ましくは熱酸化装置若しくは幾つかの他の都合よく利用できる供給源のいずれかからの水蒸気によって供給される。好ましくは、水蒸気は、反応器供給材料過熱器48に通される前の気化したブテンと混合する前に、再循環凝縮物気化器56内で完全に気化される。反応器供給材料過熱器48においては、反応器供給材料が、反応器30から排出されるブタジエン富化生成物流との間接熱交換によって予備加熱され、得られる混合導入流は、少なくとも約345℃(約650°F)、好ましくは約345℃〜400℃(約650°F〜750°F)の範囲の温度を有する。而して、反応器30への供給材料は、出口流との間接熱交換によって必要な温度に加熱され、これは下記において議論するように、通常は535℃(1000°F)より高く、より通常的にはおよそ595℃(1100°F)の温度である。重要なことには、回収される熱は、中間流体を用いるスキームと対比して単一の管壁のみを通過する。反応器供給材料過熱器48から排出される予備加熱された反応器供給材料は、加圧された酸素含有気体、通常は空気と混合され、供給空気の量は、反応器に送られる供給材料中の炭化水素1モルあたり約0.5〜0.6モルの酸素が供給されるように注意深く制御する。幾つかの場合においては、高圧水蒸気を用いて酸素含有気体を約205〜約235℃(約400〜約450°F)に予備加熱することが好都合である。混合した後、反応供給流を、
図1に示す耐熱性ライニング断熱反応器30に送り、ここでブテン/水蒸気/空気供給材料を、反応器30の内部において、まず不活性流量分布層32、次に83.8cm(33インチ)などの深さを有する酸化脱水素触媒層34、アルデヒド及びアセチレン除去(AAR)触媒層36、及び不活性支持材(アルミナ球体)層38に通す。
【0034】
好ましい反応器30及びそれを運転する方法の更なる詳細は、2012年3月29日出願の「ブタジエンを製造するための改良された制御可能な酸化脱水素方法」と題された米国仮特許出願61/617,535(代理人書類番号TPC−11−8)において与えられている。本発明においてはこれまで通常用いられていたものよりも深い触媒床を用いることが好ましいので、本発明に関して用いる触媒粒子は、触媒床を通る圧力降下を制限するために従来の実施において通常用いられていたものよりも僅かに大きいことが望ましい。より大きい圧力降下はシステム内のより高い圧力を必要とし、これによって選択性が低下する。本発明においてはまた、2つの主要な従来の実施との相違点:(1)粒子は、装填する前に「予備還元」又は他の形態の熱処理を行って、約50cm〜約150cm(約20インチ乃至約60インチ以下)の深さ、好ましくは約65cm〜約130cm(約25インチ〜約50インチ)、より好ましくは約75cm〜約100cm(約30インチ〜約40インチ)の深さを有する床内で用いることを可能にするのに必要な粉砕強度をそれらに与え;一方、か焼した粒子の嵩密度は、約1100kg/m
3(約70ポンド/フィート
3)以下、好ましくは約880kg/m
3〜1050kg/m
3(約55ポンド/フィート
3〜65ポンド/フィート
3)の間、更により好ましくは約920kg/m
3〜1010kg/m
3(約58ポンド/フィート
3〜63ポンド/フィート
3)の間である;及び(2)本発明においては、これらの触媒中にしばしば含ませるカルシウム化合物のための前駆体として従来用いられている硝酸塩を使用することは回避することが好ましい;を有する触媒粒子を用いることも好ましい。本発明者らは、酢酸カルシウムはこの点に関して好適な前駆体であり、NO
x放出を減少させる有利性を有し、一方、塩化カルシウム及び炭酸カルシウムも好適であることを見出した。
【0035】
触媒床におけるチャネリング及びホットスポットを回避するためには、流量分布も重要である。好ましい流動様式は全乱流であり、これは入口分配器を存在させることによって向上する。即ち、入口分配器は、触媒床を通る均一な流量分布を確実にし、触媒寿命を短くする可能性があるチャネリング及びホットスポットの生成の可能性を阻止するために有利に与えられる。この入口分配器装置に関する1つの好ましいデザインは、流れの均一な分布を促進し、入口の圧力損失を最小にするために、触媒床上の蒸気空間中に設置されるバッフル及びリングの形態である。
【0036】
好適な触媒はまた、Miklasの米国特許3,953,370(1976年4月27日)(亜鉛−フェライト酸化脱水素触媒を活性化する方法)(C
4〜C
8炭化水素からブタジエンを製造するための亜鉛フェライト酸化脱水素触媒を活性化するために371〜704℃(700〜1300°F)の温度の水蒸気を用いることに関する);及びBajarsらの米国特許3,284,536(マグネシウムフェライトを用いる脱水素);酸化カルシウム変性亜鉛フェライト酸化脱水素触媒及び使用と題されたPurdyの米国特許4,083,844;並びに米国特許4,658,074(接触酸化脱水素方法)(これらの開示事項を参照として本明細書中に包含する)にも記載されている。アセチレン及びアルデヒド(AAR)除去触媒並びにこれらの用法は、係属している出願PCT/US2011/000624(その開示事項も参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
【0037】
反応器30において、ブテン類を一連の反応で酸素と反応させて、最終的に、その中にあったとしても非常に僅かな酸素しか存在しないが、大きく増加した濃度のブタジエン及び大きく減少した量のブテン類が存在する流れを生成させる。反応生成物はまた汚染物質も含み、これらは下記において記載するように除去しないと重合プロセスへの供給材料としてブタジエンを用いることを大きく妨げる。反応器30内で起こる反応は高発熱性であるので、反応器30から排出される流れは、通常は540℃(1000°F)より高く、より通常的には595℃(1100°F)に近い大きく上昇した温度である。反応器30から排出される流れの中の顕熱の多くを、混合して反応器30への供給材料を形成する複数の流れの複数の部分に慎重に伝達することによって、プロセスの経済性を向上させるだけでなく、定常運転中における天然ガスの使用を排除しないとしても大きく減少させることができる。ここで議論するエネルギーを回収する他の手段と組み合わせると、プロセスへのブテンに富む供給材料を生成させるのに用いる炭化水素の流れの中で生来供給されるもの以外のエネルギーを概して消費することなく、プロセスのブテン転化セクションへの供給流を気化及び過熱することが可能になる。
【0038】
それぞれの反応器内で起こる高発熱性の反応の位置を、酸化脱水素層34の高さに沿って間隔を置いて配置される複数の遠隔読取可能な熱電対40によって監視して、下記に記載するようにその中の反応区域の位置を求めることができるようにする。生成物流中に残留する酸素の量を、層34の底部付近に配置される酸素分析器42によって監視して、下記においてより詳細に議論するようにAAR層36中への酸素の漏出を回避するようにする。また、層36中の収束解析器のための下部試料ポート44も与えて、組成物を反応器の下端において監視することができるようにする。
【0039】
上述したように、反応器30からの高温の反応生成物流は反応器供給材料過熱器48(
図2)に通し、これにより反応器30への供給材料を必要な運転温度にするのに用いる熱の一部が供給され、反応器供給材料過熱器48から排出される反応生成物はそこから水蒸気発生器54に通して、そこでその中に含まれる顕熱の一部を用いて、反応器30へ送られる水蒸気を気化及び/又は過熱する。
【0040】
次に、水蒸気発生器54から排出されるブタジエン富化反応生成物は、急冷塔64(
図3)に送って、通常運転中において予測される最高液体レベルよりも僅かに高い高さにおいて導入する。言及したように、本発明の好ましい態様においては、反応器30からのブタジエン富化生成物流は、急冷塔64に導入する前に、他の反応器(図示せず)からの他のブタジエン富化生成物流と混合する。一態様においては、急冷塔64の底部セクション66にはバルブトレイが装備され、一方、頂部セクション70には、Lantzらの米国特許6,874,769(構造化充填プレート及び部材並びにその製造方法)又はRukovenaの米国特許4,740,334に記載されているものと同様のKoch Flexipac(登録商標)のような波形金属構造化充填材が装備される。或いは、塔全体に関して噴霧ノズルを用いることができる。多くの場合において、蒸気状及び液体状の反応生成物流出流の混合物を、予め相分離することなく急冷塔64中に直接供給することが可能であると予想されるが、かかる予め行う相分離は、適切な場合にはフラッシュタンク又は同様の相分離装置を含めることによって容易に適合させることができる。急冷塔64の下部出口67において回収され、主として凝縮水蒸気及び急冷水を含む凝縮液相は、ブテン気化器50の高温側を通して戻し、冷却された戻り液は急冷凝縮物空気冷却器76を通して戻して、そこから、急冷塔循環冷却器78に送った後に、急冷塔64の充填セクション70の頂部より十分に高いが、デミスターパッド83よりも低い位置において急冷塔64中に供給する。好ましくは、急冷凝縮物空気冷却器76には、種々の周囲条件中で温度制御を容易にするために、モジュラー管列、個々に制御されるファン、及び可変ピッチファンブレードを装備する。多くの場合においては、急冷塔塔底流64からの更なる熱を、関連するプラントの他の箇所で用いるために引き抜いて、急冷塔冷却器76及び78の寸法及びコストを減少させることができる。
【0041】
粗ブタジエン蒸気は、急冷塔64の頂部セクション70(
図3)から排出され、主として気体圧縮機84を同伴される液滴から保護するために含まれるデミスターパッド83に通し、2段階遠心気体圧縮機84の吸込側上に導入する。圧縮機中間冷却器88及び89によって間接的な中間冷却が与えられ、圧縮機中間冷却器88への冷却はストリッピングされた水の冷却器99から排出されるプロセス流によって供給され、圧縮機中間冷却器88のシェル側からの加熱された流れはアルデヒドストリッパー98に供給する(
図4)。中間冷却器89への冷却は、好都合にはプラント冷却塔水によって供給される。
【0042】
デミスターパッド83上で凝集した同伴液滴は急冷塔64を通して還流し、一方、1140kPa絶対圧(約150psig)に加圧された加圧蒸気状ブタジエン富化生成物は気体圧縮機の第2段階から排出され、アルデヒドスクラバー92に送られる。アルデヒドスクラバー92の頂部部分93には、好ましくはNorton Intallox構造化充填材又は上記に記載の充填材と同様であってよい構造化充填材を充填する。アルデヒドスクラバー92からの塔底物の一部は、構造化充填材を通して、アルデヒドスクラバー塔底物冷却器95を介して再循環し、一方、残りはアルデヒドスクラバー塔底物分離器96(
図4)を介してアルデヒドストリッパー98に送る。アルデヒドスクラバー塔底物分離器96は、急冷塔塔底物ポンプ65を介して急冷塔64の塔底からの液体、及び気体圧縮機84の第2段階ノックアウトドラムからの液体を受容する。アルデヒドスクラバー塔底物分離器96の含有水は、デミスターパッド83の下方の位置において急冷塔64に戻すことができる。相当量のC
4より軽質の炭化水素又は他の低価値の揮発性物質をその中の種々の流れから取り出すことができる場合には、これらのオフガスを熱酸化装置に供給して、そこで燃焼させて水蒸気を生成させ、これを用いてプロセス全体の種々の部分に関して必要な熱を供給して、これによって定常運転中において天然ガスを燃焼させる必要性を大きく減少させ、且つこれによって付随して起こる一酸化炭素及び二酸化炭素の生成も減少させることができることは本発明の重要な特徴である。
【0043】
アルデヒドストリッパー(
図4)は、油相を掬い取った後のアルデヒドスクラバー塔底物からの水相を受容する。この流れは、まずストリッピングされた水の冷却器99のシェル側にポンプ移送し、これから圧縮機中間冷却器88のシェル側に送って、アルデヒドストリッパー98に供給する前に熱統合によってその温度を上昇させることを助け、アルデヒドストリッパー98からのこの塔頂蒸気の一部はアルデヒドストリッパー塔頂物凝縮器100に送り、ここからアルデヒドストリッパー98へ還流として戻して、カラム内の蒸気/液体平衡を維持し、この塔98への供給材料中に含まれるアルデヒドを塔頂に押し流す。塔頂物凝縮器100を迂回するアルデヒドストリッパー98からの塔頂蒸気流の残りは、他の低価値の可燃物と混合して、過熱水蒸気を生成させるために熱酸化装置(図示せず)に送る。塔頂物凝縮器100からの凝縮塔頂流中に同伴されるより重質の炭化水素は塔底物凝集装置によって回収し、これも従来の油水施設(図示せず)において処理することによって処分する。アルデヒドストリッパーリボイラー102は、水蒸気、有利には中圧水蒸気を用いて、アルデヒドストリッパー98からのアルデヒドストリッパー塔底物の一部を気化させ、この蒸気をアルデヒドストリッパー98の底部トレイの下方に再導入し、一方、残りはアルデヒドストリッパー塔底物ポンプ105を用いて2つの場所にポンプ移送する。即ち、(1)2つのストリッピングされた水の冷却器(図示せず)を介してアルデヒドスクラバー92の充填材の下方の底部に戻し;及び(2)再循環凝縮物気化器に送って、そこで酸化脱水素反応のために用いる水蒸気の全部ではないにしても多くの量を生成させる。
【0044】
アルデヒドスクラバー92(
図3)の塔頂からの反応生成物は、複数のトレイ又は気液接触を促進するための他の公知の器具を含み、少なくとも1つの中間冷却器111を装備したC
4吸収器110(
図5)の底部に送る。吸収器110内で用いる吸収油(時にはリーンオイルとも呼ばれる)は、好適にはパラフィン系、或いはパラフィン系と芳香族の混合物であってよいが、ビニルシクロヘキセン(ブタジエン二量体)に富むか、又は場合によっては更には完全にこれから構成されるオイルを用いるとより良好な結果が得られると思われる。良好な商業的な結果は、新たな吸収油が主として、90℃〜150℃(200°F〜300°F)の沸点を有し、表1に示す組成を有する芳香族ナフサ製品であるEspersol 250である場合に得られた(表1Aにおいては摂氏の沸点を与える)。
【0047】
生成物流中のブタジエンは、C
4吸収器110の頂部において導入される吸収油中に吸収され、それからの塔底物は、C
4吸収器塔底物ポンプ113及び脱気装置供給流冷却器115を通して脱気塔116の頂部にポンプ移送する。脱気塔116は、残留気体、特に二酸化炭素、窒素、及び水素の除去を促進するためにより低圧で運転し、これらは2段階気体圧縮機84の中間冷却器88を通して、アルデヒドスクラバー92に通す前のブタジエン富化生成物流に送る。脱気装置116からの脱気装置塔頂気体は、圧縮機84の第2段階に再循環して戻し、それからスクラバー92及び吸収器110に送り、そこから最終的に熱酸化装置114中に流入させる。脱気装置リボイラー122によって、脱気塔116の液相中の温度を、残留気体を上記に記載するようにフラッシングして熱酸化装置114に送るのに十分に高く維持する。主として吸収油中の粗ブタジエン及び種々のC
4化合物を含む脱気塔116からの塔底物は、C
4ストリッパー供給塔底物交換器127を通してC
4ストリッパー124に送る。C
4ストリッパー供給塔底物交換器127においては、C
4ストリッパー124の塔底からの高温の吸収油をC
4ストリッパー供給物/塔底物交換器127の管に通すことによってこの塔底流を加熱する。加熱された脱気装置塔底物は、C
4ストリッパー124中に中間高さで導入する。C
4ストリッパー124中において、加熱された吸収油から粗ブタジエン及びC
4化合物をストリッピングし、塔頂物としてC
4ストリッパー塔頂物凝縮器130に送り、一方、C
4ストリッパー124からの塔底物中に回収される消耗した吸収油は、C
4ストリッパーリボイラー128内で再加熱する。C
4ストリッパー124からの塔頂蒸気は、C
4ストリッパー塔頂物凝縮器130内で凝縮させ、凝縮した液体の一部はC
4ストリッパー還流ドラム125内で蓄積させて、ここで残留水を炭化水素相から分離してアルデヒドストリッパー塔98に戻すことができ、一方、粗ブタジエン生成物は、C
4ストリッパー還流ポンプ123を通して更なる処理にポンプ移送し、一方、C
4ストリッパー124内で十分な分離が行われるのを確保するのに十分な粗ブタジエンを還流として再循環させる。
【0048】
C
4ストリッパー124から排出される塔底物は、ブタジエン及びそれからストリッピングされた他のC
4化合物を有する吸収油を含み、これは3つの部分に分割し、1つは、C
4ストリッパーリボイラー128を通してC
4ストリッパー124に再循環し、第2の部分は吸収油サージドラム142(
図6)に送り、残りの部分は、上述したようにC
4ストリッパー供給物/塔底物交換器127を通過させることによってブタジエン/吸収油混合物を加熱するのに用い、C
4ストリッパー供給物/塔底物交換器127においては、それと吸収油サージドラム142から再循環される油を吸収油空気冷却器131及び吸収油冷却器133に送り、その後、再使用するためにC
4吸収器110に戻す。吸収油は分解してより重質の分子を形成するので、新しい補給油をシステム中に導入し、一方、残余は重質物を取り出すために再処理カラムに送る。吸収油再処理塔132の運転が正当化されるか又は必要になるのに十分な重質物が吸収油中に蓄積されたら、吸収油サージドラム142から再循環される油の一部を蒸留して、吸収油再処理塔の塔底物中のより重質の成分を取り出し、塔頂物は吸収油再循環ループにポンプで戻す。時には、回収される油を、新しい吸収油を貯蔵している貯蔵タンク140にポンプ移送することができる。
【0049】
表2及び2Aは、23,000kg/時(50,600ポンド/時)のブタジエンを製造するための3種類の可能なプラント構成に関するエネルギーバランスを示す。プラント構成は、1つは熱酸化装置を有さず;1つは、主としてブテンをブタジエンに転化させるプロセスにおいて生成する低価値の可燃物に合わせた寸法の小型の熱酸化装置を有し;1つは、ブテンをブタジエンに転化させるプロセスにおいて生成する低価値の可燃物、及び粗ブタジエンを販売できるグレードに精製するプロセスにおいて生成するものの両方に合わせた寸法のものである。ブテン類をブタジエンへ転化させるプロセスの定常運転中に反応器に供給される種々の流れを気化及び過熱するためのエネルギー必要量は、反応器生成物流中の顕熱を、ブタジエン製造及び精製の両方からの低価値の可燃物の熱酸化から得られるエネルギーと組み合わせると、驚くほど小さいことを認めることができる。
【0052】
反応セクションに関するエネルギー必要量はまた、下表3及び3Aにおいて示すように、生成するBD(ブタジエン)1kgあたりのkJ(BTU/ポンド)で表すこともできる。
【0055】
表2、2A、3、及び3Aにおけるデータは、新しい触媒を用いるプロセスモデル化を反映している。
【0056】
ブタジエン1kgあたり4400kJ(1900BTU/ポンド)を超える過熱器48のためのエネルギーの全ては、高温の反応器流出流(流出生成物流は370℃(700°F)を優に超える)からの顕熱の間接熱伝達によって供給することができる。更に、気化器54のためのエネルギーの全ては、流出生成物流の多少低い温度における間接熱伝達によって同じように供給することができる。プロセス流からの熱回収は、供給材料を過熱する目的のために流れが比較的高温にある時点で流出流から熱を引き抜き、次に供給材料を気化させる目的のために比較的低い温度で反応器流出流から熱を引き抜くことによって向上する。気化器56のためのエネルギーは、本明細書に記載する酸化脱水方法に関連して生成する揮発性有機化合物の熱酸化から熱を引き抜くプラント水蒸気配管網から供給することができる。
【0057】
好ましい態様においては、気化及び過熱した炭化水素質のブテンに富む供給材料は、少なくとも約205℃(約400°F)、より好ましくは260℃(500°F)、更により好ましくは少なくとも約315℃(約600°F)、最も好ましくは約345℃(約650°F)の温度にし、炭化水素質のブテンに富む供給材料、過熱水蒸気、及び酸素に富む気体と混合して反応器供給流を形成し、かかる反応器供給流中の酸素のモル量は、炭化水素質のブテンに富む供給材料1モルあたり少なくとも約0.4モル、より好ましくは少なくとも約0.5モル、最も好ましくは約0.55モルの酸素の範囲内になるように制御する。
【0058】
好ましくは、ブテン類、水蒸気、及び酸素を含む供給混合物を、酸素、主要割合の鉄;少割合の亜鉛;及びより少量のマンガン;リン;並びに硝酸塩を含まないカルシウム前駆体の残渣から実質的に構成されるフェライト酸化物触媒上で酸化脱水素して、それによってブタジエン富化生成物流を形成する。実質的に硝酸塩を含まない酸化脱水素触媒を用いることが非常に有利である。
【0059】
ブタジエン富化生成物流のエネルギー含量は、ブタジエン富化生成物流から顕熱を取り出すための間接熱交換と、ブタジエン富化生成物流をまず反応器供給材料過熱器に通して、そこで反応器に導入される水蒸気とブテン富化炭化水素の混合物を、ブタジエン富化生成物流との間接熱交換によって、少なくとも205℃(400°F)、好ましくは少なくとも260℃(500°F)、より好ましくは少なくとも約315℃(約600°F)、最も好ましくは約345℃(約650°F)の温度に過熱することによってブタジエン富化生成物流から分離される不要の炭化水素質の生成物の熱酸化の組み合わせによって、反応供給流のための熱を与えるために用いる。
【0060】
続いて、ブタジエン富化生成物流を次に水蒸気発生器に通して、そこで水、好ましくはプロセス流から凝縮される水を、ブタジエン富化生成物流との間接熱交換によって気化させる。
【0061】
ブタジエン富化生成物流は、次に急冷塔内で急冷し、圧縮し、スクラビングしてアルデヒド類を取り出し、C
4吸収器に通して、そこでブタジエンを含むC
4種を吸収油(時にはリーンオイルとも呼ばれる)中に吸収させる。
【0062】
ブタジエンは、吸収油を脱気塔に通して、そこで非C
4揮発性物質を取り出し;C
4ストリッパーに通して、そこでブタジエンを含むC
4化合物を減圧下において吸収油から脱着させるか又はストリッピングする;ことによって回収される。好ましくは、ブタジエン富化生成物流からストリッピングされた液体から、分散した揮発性低級有機化合物をストリッピングし、得られる水性流を水蒸気発生器に再循環し、一方、揮発性有機化合物は酸化して、水蒸気発生器に供給する水を気化させるのに必要な熱を供給するために用いる水蒸気を発生させる。
【0063】
(1)ブタジエン富化生成物流、及び(2)粗ブタジエンの販売できるブタジエンへの精製の副生成物から回収される低価値の生成物の熱酸化によって十分な熱が生成するので、定常運転においては、酸化脱水素プロセスへの供給材料のエネルギー含量によって、(1)炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化及び過熱し;及び(2)製造サイクルにおける定常運転中に反応器供給流中に過熱水蒸気を供給するために用いる水を気化及び過熱するために必要なエネルギーの少なくとも60%、好ましくは70%、より好ましくは85%が供給される。
【0064】
本発明の好ましい方法においては、必要なエネルギーはしたがって酸化脱水素プロセスへのブテンに富む供給材料のエネルギー含量によって供給されるので、生成するブタジエン1kgあたり0.15kg未満、より好ましくは0.10kg未満、最も好ましくは0.05kg未満の天然ガスが、(a)ブテンに富む供給材料の気化及び過熱、並びに(b)反応器供給流中に過熱水蒸気を供給するために用いる水の気化及び過熱において消費される。
【0065】
定常運転中にプロセスの種々の段階においてブタジエン富化生成物流から取り出される分散された揮発性低級有機化合物の熱酸化によって、定常運転中において、ブテンに富む供給材料を気化及び過熱すること、並びに反応器供給流に供給する過熱水蒸気を供給するのに用いる水を気化及び過熱することの両方のために必要な合計の熱は、(1)ブタジエン富化生成物流から引き抜かれる顕熱、並びに(2)(a)ブタジエン富化生成物流から取り出される不要の生成物、及び(b)アルカン類をブテン類富化流へ転化させてブテンに富む供給材料を与えるプロセスの副生成物の熱酸化によって生成する熱の合計の130%以下、好ましくは110%以下である。
【0066】
好ましい構成においては、ブタジエン富化生成物流からストリッピングされる水を気化させるのに必要な熱の少なくとも75%は、(1)ブタジエン富化生成物流中の顕熱;(2)ブタジエン富化生成物流からの不要の揮発性物質の熱酸化の組み合わせによって供給される。
【0067】
より好ましくは、ブタジエン富化生成物流からストリッピングされる水を気化させるのに必要な熱の少なくとも約50%は、
(a)ブタジエン富化生成物流中の顕熱;
(b)ブタジエン富化生成物流から得られる不要の揮発性生成物の熱酸化から得られる熱;
によって供給される。
【0068】
更により好ましくは、炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化及び過熱し、並びに反応器供給流中に過熱水蒸気を供給するために用いる水を過熱するのに必要なエネルギーの少なくとも約75%は、酸化脱水素プロセスへのブテンに富む供給材料のエネルギー含量によって供給される。
【0069】
本発明を詳細に記載したが、本発明の精神及び範囲内の修正は当業者には容易に明らかになるであろう。上記の議論、当該技術における関連する知識、並びに背景及び詳細な説明に関連して上記で議論した参照文献(共に係属中の出願を含む)(これらの開示事項は全て参照として本明細書中に包含する)を考慮すると、更なる記載は不要であると考えられる。更に、本発明の複数の形態及び種々の態様の複数の部分は、全体的又は部分的に組み合わせるか又は交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上記の記載は例示のみの目的であり、本発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。
以下に本発明の実施態様を記載する。
[態様1]
炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化させ、少なくとも205℃(400°F)の温度に過熱し、炭化水素質のブテンに富む供給材料を、過熱水蒸気及び酸素に富む気体と混合して反応器供給流を形成し;
反応器供給流をフェライト触媒上で酸化脱水素して、それによってブタジエン富化生成物流を形成する;
工程を含み;
ブタジエン富化生成物流を用いて、ブタジエン富化生成物流から顕熱を取り出すための間接熱交換と、ブタジエン富化生成物流から分離される不要の炭化水素質生成物の熱酸化の組み合わせによって反応供給流のための熱を与え;
少なくとも約510℃(950°F)の温度のブタジエン富化生成物流を、まず反応器供給材料過熱器に通して、そこで反応器に導入される水蒸気及びブテン富化炭化水素の混合物を、ブタジエン富化生成物流との間接熱交換によって少なくとも345℃(650°F)に過熱し;
反応器供給材料過熱器から排出されるブタジエン富化生成物流を、次に水蒸気発生器に通して、そこでブタジエン富化生成物流との間接熱交換によって水を気化させ;
ブタジエン富化生成物流を、次にC4吸収器に通して、そこでブタジエンを含むC4化合物を相溶性の吸収油中に吸収させ;
吸収油を、非C4揮発性物質を取り出す脱気塔;ブタジエンを含むC4化合物を減圧下において吸収油から脱着/ストリッピングするC4ストリッパーに通し;
分散された揮発性低級有機化合物を、ブタジエン富化生成物流からストリッピングされた水性液体からストリッピングし、得られる水性流を水蒸気発生器に再循環し;
定常運転中において、酸化脱水素反応器へのブテンに富む供給材料のエネルギー含量によって、
炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化及び過熱し;そして
反応器供給流中に過熱水蒸気を供給するのに用いる水を気化及び過熱する;
のに必要なエネルギーの少なくとも40%が与えられる、炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに転化させる改良された低排出方法。
[態様2]
水蒸気発生器に供給する水を気化させるのに必要な熱が、少なくとも部分的に、ブタジエン富化生成物流から取り出される不要の生成物の熱酸化によって生成する熱によって与えられる、態様1に記載の炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに酸化脱水素することによって炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに転化させる改良された低排出方法。
[態様3]フェライト触媒が、酸素、主要割合の鉄、小割合の亜鉛、及びより少量のマンガン、リン、並びに硝酸塩を含まないカルシウム前駆体の残渣から実質的に構成されるフェライト酸化物触媒である、態様1に記載の炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに酸化脱水素することによって炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに転化させる改良された低排出方法。
[態様4]
定常運転中において、ブテンに富む供給材料のエネルギー含量によって、
炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化及び過熱し;そして
過熱水蒸気を反応器供給流中に供給するのに用いる水を気化及び過熱する;
ために必要なエネルギーの少なくとも45%が与えられる、態様1に記載の炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに酸化脱水素することによって炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに転化させる改良された低排出方法。
[態様5]
定常運転の第1段階中において、ブテンに富む供給材料のエネルギー含量によって、
炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化及び過熱し;そして
過熱水蒸気を反応器供給流中に供給するのに用いる水を気化及び過熱する;
ために必要なエネルギーの少なくとも50%が与えられる、態様1に記載の炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに酸化脱水素することによって炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに転化させる改良された低排出方法。
[態様6]
ブテンに富む供給材料のエネルギー含量によって、
(a)炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化及び過熱し;そして
(b)過熱水蒸気を反応器供給流中に供給するのに用いる水を気化及び過熱する;
ために必要なエネルギーの、生成するブタジエン1kgあたり0.35kg未満の天然ガスが(a)及び(b)において消費されるような割合が与えられる、態様1に記載の炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに酸化脱水素することによって炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに転化させる改良された低排出方法。
[態様7]
ブテンに富む炭化水素質の供給材料のエネルギー含量によって、
(a)炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化及び過熱し;そして
(b)過熱水蒸気を反応器供給流中に供給するのに用いる水を気化及び過熱する;
のに必要なエネルギーの、生成するブタジエン1kgあたり0.3kg未満の天然ガスが(a)及び(b)において消費されるような割合が与えられる、態様1に記載の炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに酸化脱水素することによって炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに転化させる改良された低排出方法。
[態様8]
ブテンに富む炭化水素質の供給材料のエネルギー含量によって、
(a)炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化及び過熱し;そして
(b)過熱水蒸気を反応器供給流中に供給するのに用いる水を気化及び過熱する;
のに必要なエネルギーの、生成するブタジエン1kgあたり0.25kg未満の天然ガスが(a)及び(b)において消費されるような割合が与えられる、態様1に記載の炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに酸化脱水素することによって炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに転化させる改良された低排出方法。
[態様9]
炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化させ、炭化水素質のブテンに富む供給材料を過熱水蒸気及び酸素に富む気体と混合して反応器供給流を形成し、反応器供給流を少なくとも345℃(650°F)の温度に過熱し;
反応器供給流をフェライト酸化物触媒上で酸化脱水素して、それによってブタジエン富化生成物流を形成する;
工程を含み;
ブタジエン富化生成物流を用いて、ブタジエン富化生成物流から顕熱を取り出すための間接熱交換と、ブタジエン富化生成物流から分離される炭化水素質生成物の熱酸化の組み合わせによって反応供給流のために熱を与え;
少なくとも約510℃(約950°F)の温度のブタジエン富化生成物流を、まず反応器供給材料過熱器に通して、そこで反応器に導入される水蒸気及びブテン富化炭化水素の混合物を、ブタジエン富化生成物流との間接熱交換によって少なくとも345℃(650°F)に過熱し;
ブタジエン富化生成物流を、次に水蒸気発生器に通して、そこでブタジエン富化生成物流との間接熱交換によって水を気化及び/又は過熱し;
ブタジエン富化生成物流を、次に急冷塔、圧縮機、アルデヒドスクラバー、及びC4吸収器に通して、そこでブタジエン及びC4化合物を吸収油中に優先的に吸収させ、C4吸収器からの塔頂物を熱酸化装置に送って、プロセスにおいて用いる熱を供給するための水蒸気を生成させるために用い、吸収油を、残留窒素、水素、及び二酸化炭素をブタジエン富化吸収油から取り出す脱気塔;ブタジエン及びC4化合物を吸収油からストリッピングして、粗ブタジエン生成物流として回収するC4ストリッパーに通し;
分散された揮発性低級有機化合物を、プロセスの種々の段階においてブタジエン富化生成物流からストリッピングされた水性液体からストリッピングし、得られる水性流を水蒸気発生器に供給し;定常運転の第1段階中において、
炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化及び過熱し;そして
反応器供給流中に過熱水蒸気を供給するのに用いる水を気化及び過熱する;
のに必要な更なる熱が、(1)ブタジエン富化生成物流から引き抜かれる顕熱、及び(2)ブタジエン富化生成物流から取り出される揮発性生成物の熱酸化によって生成する熱の合計の130%以下である、炭化水素質のブテンに富む供給材料の酸化脱水素によってブタジエンを製造する改良された低排出方法。
[態様10]
フェライト触媒が、酸素、主要割合の鉄、小割合の亜鉛、及びより少量のマンガン、リン、並びに硝酸塩を含まないカルシウム前駆体の残渣から実質的に構成されるフェライト酸化物触媒である、態様9に記載の炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに酸化脱水素することによって炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに転化させる改良された低排出方法。
[態様11]
ブテンに富む供給材料をブタジエン富化流に転化させるために必要な更なるエネルギーが、(1)ブタジエン富化生成物流から誘導される顕熱、及び(2)(a)ブタジエン富化生成物流から取り出される揮発性生成物の熱酸化によって生成する熱の合計の110%以下である、態様9に記載のブテン富化供給材料をブタジエンに酸化脱水素することによってブテンに富む供給材料からブタジエンを製造する改良された低排出方法。
[態様12]
ブテンに富む炭化水素質の供給材料を与え、炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化及び少なくとも約205℃(約400°F)の温度に過熱し、炭化水素質のブテンに富む供給材料を過熱水蒸気及び酸素に富む気体と混合して反応器供給流を形成し;
反応器供給流を、主要割合の鉄酸化物、小割合の亜鉛酸化物、及びより少量のマンガン酸化物、並びにリン酸を含む触媒上で酸化脱水素して、それによってブタジエン富化生成物流を形成する;
工程を含み;
ブタジエン富化生成物流中の顕熱を用いて、間接熱交換によって反応器供給流のための熱を与え;
ブタジエン富化生成物流を反応器供給材料過熱器に通して、そこで気化したブテン類及び水蒸気を含む流れを、ブタジエン富化生成物流との間接熱交換によって少なくとも205℃(400°F)に過熱し;
ブタジエン富化生成物流を、次に水蒸気発生器に通して、そこでブタジエン富化生成物流との間接熱交換によって水蒸気を発生させ;
ブタジエン富化生成物流を、次に急冷塔、圧縮機、アルデヒドスクラバー、C4吸収器、脱気塔、C4ストリッパーに通して、そこでブタジエン富化生成物流からストリッピングされた水性液体から、分散された有機物質をストリッピングし、得られる水性流をストリッピングされた水の水蒸気加熱器に供給し;
ブタジエン富化生成物流からストリッピングされた水を気化するために必要な熱の少なくとも75%が、
ブタジエン富化生成物流中の顕熱、及び
ブタジエン富化生成物流からの不要の揮発性物質の熱酸化;
の組み合わせによって与えられる、酸化脱水素によって炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに転化させる改良された低排出方法。
[態様13]
ブテンに富む炭化水素質の供給材料を与え、炭化水素質のブテンに富む供給材料を気化及び少なくとも約205℃(約400°F)の温度に過熱し、炭化水素質のブテンに富む供給材料を過熱水蒸気及び酸素に富む気体と混合して反応器供給流を形成し;
反応器供給流を、主要割合の鉄酸化物、小割合の亜鉛酸化物、及びより少量のマンガン酸化物、並びにリン酸を含む触媒上で酸化脱水素して、それによってブタジエン富化生成物流を形成する;
工程を含み;
ブタジエン富化生成物流中の顕熱を用いて、間接熱交換によって反応器供給流のための熱を与え;
ブタジエン富化生成物流をまず反応器供給材料過熱器に通して、そこで反応器に導入される気化したブテン類及び水蒸気を含む反応器供給材料を、ブタジエン富化生成物流との間接熱交換によって少なくとも205℃(400°F)に過熱し;
その後、ブタジエン富化生成物流を水蒸気発生器に通して、そこでブタジエン富化生成物流との間接熱交換によって水蒸気を過熱し;
ブタジエン富化生成物流を、次に急冷塔、圧縮機、アルデヒドスクラバー、C4吸収器、脱気塔、C4ストリッパーに通して、そこでブタジエン富化生成物流からストリッピングされた水性液体から分散された有機物質をストリッピングし、得られる水性流をストリッピングされた水の水蒸気加熱器に供給し;
ブタジエン富化生成物流からストリッピングされた水を気化するのに必要な更なる熱の少なくとも約50%が、
(a)ブタジエン富化生成物流中の顕熱、及び
(b)ブタジエン富化生成物流から得られる不要の揮発性生成物の熱酸化から得られる熱;
によって与えられる、酸化脱水素によって炭化水素質のブテンに富む供給材料をブタジエンに転化させる改良された低排出方法。
[態様14]
(a)ブテンに富む供給流を酸化脱水素反応器内で反応させてブタジエン富化生成物流出流を形成し、これを昇温温度において反応器から排出し;
(b)ブタジエン富化生成物流出流を供給材料過熱器に供給し、ここでブタジエン富化生成物流出流は425℃(800℃)以上の温度で過熱器に供給し、反応器供給材料も過熱器に供給し;
(c)反応器供給材料を、過熱器内において、ブタジエン富化生成物流出流から供給材料への顕熱の間接熱伝達によって少なくとも260℃(500°F)の温度に過熱し;
(d)工程(c)の後に、過熱器から排出されるブタジエン富化生成物流出流を供給材料気化器に供給し、ここで気化器に導入されるブタジエン富化生成物流出流は少なくとも205℃(400°F)の温度であり;そして
(e)供給材料を、気化器内において、ブタジエン富化生成物流出流から供給材料への顕熱の間接熱伝達によって気化させる;
ことを含む、供給材料を過熱するための過熱器、及び供給材料を気化させるための1以上の供給材料気化器を含む反応システム内においてブテン類を酸化脱水素することによってブテンに富む流れからのブテン類をブタジエンに転化させることによるブタジエンの製造方法。
[態様15]
ブタジエン富化生成物流出流を485℃(900°F)以上の温度で過熱器に供給する、態様14に記載の方法。
[態様16]
ブタジエン富化生成物流出流を540℃(1000°F)以上の温度で過熱器に供給する、態様15に記載の方法。
[態様17]
ブタジエン富化生成物流出流を595℃(1100°F)以上の温度で過熱器に供給する、態様16に記載の方法。
[態様18]
ブタジエン富化生成物流出流を480℃〜760℃(900°F〜1400°F)の温度で過熱器に供給する、態様14に記載の方法。
[態様19]
ブタジエン富化生成物流出流を少なくとも290℃(550°F)の温度で気化器に供給する、態様14に記載の方法。
[態様20]
ブタジエン富化生成物流出流を少なくとも315℃(600°F)の温度で気化器に供給する、態様19に記載の方法。
[態様21]
ブタジエン富化生成物流を少なくとも345℃(650°F)の温度で気化器に供給する、態様20に記載の方法。
[態様22]
ブタジエン富化生成物流を260℃〜425℃(500°F〜800°F)の温度で気化器に供給する、態様14に記載の方法。
[態様23]
供給材料を過熱器内において少なくとも290℃(550°F)の温度に加熱する、態様14に記載の方法。
[態様24]
供給材料を過熱器内において少なくとも316℃(600°F)の温度に加熱する、態様23に記載の方法。
[態様25]
供給材料を過熱器内において少なくとも345℃(650°F)の温度に加熱する、態様24に記載の方法。
[態様26]
供給材料を過熱器内において260℃〜485℃(500°F〜900°F)の温度に加熱する、態様14に記載の方法。
[態様27]
過熱器を通るブタジエン富化生成物流出流の温度変量が少なくとも120℃(220°F)である、態様14に記載の方法。
[態様28]
過熱器を通るブタジエン富化生成物流出流の温度変量が少なくとも150℃(270°F)である、態様27に記載の方法。
[態様29]
過熱器を通るブタジエン富化生成物流出流の温度変量が少なくとも180℃(325°F)である、態様28に記載の方法。
[態様30]
過熱器を通るブタジエン富化生成物流出流の温度変量が120℃〜235℃(220°F〜425°F)である、態様14に記載の方法。
[態様31]
生成するBD1kgあたり少なくとも2300kJ(1000BTU/ポンド)を、過熱器内において間接熱交換によってブタジエン富化生成物流出流から供給材料に伝達する、態様14に記載の方法。
[態様32]
生成するBD1kgあたり少なくとも3500kJ(1500BTU/ポンド)を、過熱器内において間接熱交換によってブタジエン富化生成物流出流から供給材料に伝達する、態様31に記載の方法。
[態様33]
生成するBD1kgあたり少なくとも2300kJ(1000BTU/ポンド)を、気化器内において間接熱交換によってブタジエン富化生成物流から供給材料に伝達する、態様14に記載の方法。
[態様34]
生成するBD1kgあたり少なくとも3500kJ(1500BTU/ポンド)を、気化器内において間接熱交換によってブタジエン富化生成物流から供給材料に伝達する、態様33に記載の方法。
[態様35]
生成するBD1kgあたり少なくとも4100kJ(1750BTU/ポンド)を、気化器内において間接熱交換によってブタジエン富化生成物流から供給材料に伝達する、態様34に記載の方法。
[態様36]
生成するBD1kgあたり2300〜5800kJ(1000〜2500BTU/ポンド)を、過熱器内において間接熱交換によってブタジエン富化生成物流出流から供給材料に伝達し、生成するBD1kgあたり2300〜7000kJ(1000〜3000BTU/ポンド)を、気化器内において間接熱交換によってブタジエン富化生成物流から供給材料に伝達する、態様14に記載の方法。
[態様37]
(a)ブタンに富む供給流を受容し、酸化脱水素によってブテン類をブタジエンに転化させ、それによってブタジエン富化生成物流出流を与えて、これを昇温温度において反応器から排出するように構成されている反応器;
(b)昇温温度における反応器からのブタジエン富化生成物流出流を受容するように反応器に接続されており、反応器供給材料を受容するように構成されており、ブタジエン富化生成物流出流からの顕熱を反応器供給材料へ伝達し、過熱された反応器への供給材料を与えるように構成されている過熱器;
(c)過熱器から排出されたブタジエン富化生成物流出流を受容して、ブタジエン富化生成物流出流からの顕熱を反応器供給材料へ伝達するように反応器に接続されている第1の気化器;
(d)蒸気供給材料をそれに供給するための、反応器に接続されている第2の気化器;
(e)ブタジエン富化生成物流出流からブタジエンを回収するための精製系列;及び
(f)精製系列からの副生成物を酸化することによってエネルギーを回収し、第2の気化器のためのエネルギーを供給するための熱酸化装置;
を含む、ブタンに富む供給流の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
[態様38]
過熱器が、生成するBD1kgあたり少なくとも2300kJ(1000BTU/ポンド)を間接熱交換によってブタジエン富化生成物流出流から供給材料へ伝達するように構成されている、態様37に記載のブタンに富む供給流の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
[態様39]
過熱器が、生成するBD1kgあたり少なくとも3500kJ(1500BTU/ポンド)を間接熱交換によってブタジエン富化生成物流出流から供給材料へ伝達するように構成されている、態様38に記載のブタンに富む供給流の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
[態様40]
第1の気化器が、生成するBD1kgあたり少なくとも2300kJ(1000BTU/ポンド)を間接熱交換によってブタジエン富化生成物流出流から供給材料へ伝達するように構成されている、態様37に記載のブタンに富む供給流の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
[態様41]
第1の気化器が、生成するBD1kgあたり少なくとも3500kJ(1500BTU/)を間接熱交換によってブタジエン富化生成物流出流から供給材料へ伝達するように構成されている、態様40に記載のブタンに富む供給流の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
[態様42]
第1の気化器が、生成するBD1kgあたり少なくとも4300kJ(1850BTU/ポンド)を間接熱交換によってブタジエン富化生成物流出流から供給材料へ伝達するように構成されている、態様41に記載のブタンに富む供給流の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
[態様43]
過熱器が、生成するBD1kgあたり2300〜8100kJ(1000〜3500BTU/ポンド)を間接熱交換によってブタジエン富化生成物流出流から供給材料へ伝達するように構成されており、第1の気化器が、生成するBD1kgあたり2300〜10,500kJ(1000〜4500BTU/ポンド)を間接熱交換によってブタジエン富化生成物流出流から供給材料へ伝達するように構成されている、態様37に記載のブタンに富む供給流の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
[態様44]
熱酸化装置が、生成するBD1kgあたり少なくとも930kJ(400BTU/ポンド)を第2の気化器へ供給するように構成されている、態様37に記載のブタンに富む供給流の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
[態様45]
熱酸化装置が、生成するBD1kgあたり少なくとも1800kJ(800BTU/ポンド)を第2の気化器へ供給するように構成されている、態様44に記載のブタンに富む供給流の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
[態様46]
熱酸化装置が、生成するBD1kgあたり少なくとも3700kJ(1600BTU/ポンド)を第2の気化器へ供給するように構成されている、態様45に記載のブタンに富む供給流の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
[態様47]
熱酸化装置が、生成するBD1kgあたり少なくとも4600kJ(2000BTU/ポンド)を第2の気化器へ供給するように構成されている、態様46に記載のブタンに富む供給流の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
[態様48]
熱酸化装置が、生成するBD1kgあたり少なくとも6500kJ(2800BTU/ポンド)を第2の気化器へ供給するように構成されている、態様47に記載のブタンに富む供給流の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
[態様49]
過熱器が、生成するBD1kgあたり2300〜8000kJ(1000〜3500BTU/ポンド)を間接熱交換によってブタジエン富化生成物流出流から供給材料へ伝達するように構成されており、第1の気化器が、生成するBD1kgあたり2300〜10,500kJ(1000〜4500BTU/ポンド)を間接熱交換によってブタジエン富化生成物流出流から供給材料へ伝達するように構成されており、熱酸化装置が、生成するBD1kgあたり少なくとも930kJ(400BTU/ポンド)を第2の気化器へ供給するように構成されている、態様37に記載のブタンに富む供給流の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。
[態様50]
過熱器が、生成するBD1kgあたり2300〜8000kJ(1000〜3500BTU/ポンド)を間接熱交換によってブタジエン富化生成物流出流から供給材料へ伝達するように構成されており、第1の気化器が、生成するBD1kgあたり2300〜10,500kJ(1000〜4500BTU/ポンド)を間接熱交換によってブタジエン富化生成物流出流から供給材料へ伝達するように構成されており、熱酸化装置が、生成するBD1kgあたり少なくとも4600kJ(2000BTU/ポンド)を第2の気化器へ供給するように構成されている、態様49に記載のブタンに富む供給流の酸化脱水素によってブタジエンを製造するための装置。