特許第6157654号(P6157654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6157654酸改質ナノ粒子、二部分型重合性組成物、及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6157654
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】酸改質ナノ粒子、二部分型重合性組成物、及び方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/52 20060101AFI20170626BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   C08F4/52
   C08F2/44 Z
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-563079(P2015-563079)
(86)(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公表番号】特表2016-525581(P2016-525581A)
(43)【公表日】2016年8月25日
(86)【国際出願番号】US2014042705
(87)【国際公開番号】WO2014209680
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2016年3月3日
(31)【優先権主張番号】61/840,898
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【弁理士】
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】バラン, ジミー アール., ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ガルベ, ジェームズ イー.
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−518082(JP,A)
【文献】 特表2008−527077(JP,A)
【文献】 特表2012−516932(JP,A)
【文献】 特表2012−530601(JP,A)
【文献】 特表2001−502689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F4/52−4/54
C08F2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)化学構造Z−NHR−B(Rを有する少なくとも1つのトリオルガノボラン−アミン錯体を含む第1の部分であって、式中、
(i)Zが有機基であり、
(ii)RがH又は有機基であり、
(iii)各Rが独立して、炭素原子を介してホウ素原子に結合する有機基である第1の部分、並びに
(b)重合性成分と、酸基を含む複数の酸性化ナノ粒子と、を含む第2の部分であって、前記酸性化ナノ粒子のそれぞれが無機酸化物コア及び酸基を含み、前記酸基は、酸安定化剤、有機基を介して前記無機酸化物コアと共有結合した酸基、又はこれらの組み合わせから構成される、第2の部分を含む、二部分型重合性組成物。
【請求項2】
前記酸安定化剤が、(C〜C)モノカルボン酸、(C〜C)ジカルボン酸、アリールカルボン酸(ただし、アリールはC〜C14アリールである。)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の二部分型重合性組成物。
【請求項3】
前記酸安定化剤が、酢酸、ギ酸、プロパン酸、ブタン酸、安息香酸、シュウ酸、サリチル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の二部分型重合性組成物。
【請求項4】
前記酸安定化剤が前記無機酸化物コアの表面との水素結合相互作用を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の二部分型重合性組成物。
【請求項5】
有機基を介して前記無機酸化物コアと共有結合した前記酸基が、化学構造−AYを有し、式中、
(i)Aが(C〜C16)アルキレン基、(〜C16)ヘテロアルキレン基、(C〜C14アリーレン基、(C〜C14)シクロアルキレン基、又はこれらの組み合わせ(ただし、nが2である場合は、これらの基は対応する3価の基である。)であり、
(ii)Yはスルホン酸、カルボン酸、又はホスホン酸であり、
(iii)nは1又は2である、請求項2に記載の二部分型重合性組成物。
【請求項6】
前記共有結合した酸基が、(C〜C16)モノカルボン酸、(C〜C16)ジカルボン酸、アリールカルボン酸(ただし、アリールはC〜C14アリールである。)、(C〜C16)モノスルホン酸、(C〜C16)ジスルホン酸、(C〜C14)アリールスルホン酸、(C〜C16)モノホスホン酸、(C〜C16)ジホスホン酸、(C〜C14)アリールホスホン酸、及びこれらの組み合わせによって提供される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の二部分型重合性組成物。
【請求項7】
前記無機酸化物コアがジルコニア、シリカ、又はアルミナを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の二部分型重合性組成物。
【請求項8】
ポリマーを作製する方法であって
(a)化学構造Z−NHR−B(Rを有する少なくとも1つのトリオルガノボラン−アミン錯体を含む第1の部分を提供することであって、式中、
(i)Zが有機基であり、
(ii)RがH又は有機基であり、
(iii)各Rが独立して、炭素原子を介してホウ素原子に結合する有機基である、第1の部分を提供することと、
(b)重合性成分と、酸基を含む複数の酸性化ナノ粒子と、を含む第2の部分を提供することであって、前記酸性化ナノ粒子のそれぞれが無機酸化物コア及び酸基を含み、前記酸基としては、酸安定化剤、有機基を介して前記無機酸化物コアと共有結合した酸基、又はこれらの組み合わせが挙げられる、第2の部分を提供することと、
(c)前記第1の部分と前記第2の部分とを組み合わせることと、を含む、方法。
【請求項9】
前記組み合わせることが、前記第1の部分と前記第2の部分とを混合して、前記第1の部分と前記第2の部分との混合物を形成することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物を反応させてポリマーを形成することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[分野]
酸改質ナノ粒子、二部分型重合性組成物、及び方法を提供する。
【0002】
[背景]
オルガノボラン及びアミンからなる低分子のルイス酸−塩基錯体は既知である。これらはトリオルガノボラン(ルイス酸)とアミン(ルイス塩基)との反応によって形成され得る。トリオルガノボランを有する安定な錯体の大部分を形成するアミンは、1級アミン及びいくつかの2級アミンを含む。第3級アミン、立体障害2級アミン、及び窒素原子の孤立電子対が非局在化された(したがってホウ素の空のp軌道を介したホウ素原子との強い配位結合を形成できない)アミンは、オルガノボランとのより不安定な錯体を形成する。錯体は以下の一般構造を有し、
【0003】
【化1】

ここで各Rは独立してアルキル基、シクロアルキル基、又はアラルキル基であり、また各R’は独立してH、アルキル基、又はシクロアルキル基である。
【0004】
トリオルガノボラン−アミン錯体を、アミンと反応する化合物によって「脱錯体化」して、それにより遊離トリオルガノボランを遊離させることができる。この反応は一般的には不可逆的であるため、この後、当該アミンは当該トリオルガノボランとこれ以上錯体化できない。遊離したトリオルガノボランは酸素と反応していくつかのラジカル種を生成でき、そのうちのいくつかはアクリレートなどの不飽和モノマーのラジカル重合を開始することが知られている。
【0005】
従来の脱錯体化剤はカルボン酸又はカルボン酸無水物を含んでおり、組成物への溶解性の低さ、貯蔵又は取り扱い要件の難しさ、又は不快な臭気などの不利益を有する場合がある。より安定で、貯蔵、輸送、又は取り扱いの容易なトリオルガノボラン−アミン錯体及び脱錯体化剤が必要とされる。
【0006】
[概要]
本開示は、トリオルガノボラン−アミン錯体と、重合性成分と、酸基を含む酸性化ナノ粒子と、を含む、二部分型重合性組成物を提供する。酸基としては、酸安定化剤、及び/又は有機基を介して無機コアと共有結合した酸基が挙げられる。トリオルガノボラン−アミン錯体は、重合性組成物の2つの部分が結合される時に酸性化ナノ粒子と接触して、その意図される用途のために活性種のトリオルガノボランを遊離させることで脱錯体化される。一般的に酸性化ナノ粒子は、液体酸と比較してより容易な貯蔵、輸送、及び取り扱いが可能である。トリオルガノボラン−アミン錯体は一般的には液状で使用される。遊離したトリオルガノボランは、例えば、エチレン性不飽和モノマー(例えばアクリレートモノマー)のフリーラジカル重合反応などの重合反応の開始剤として用いられる。
【0007】
一実施形態では、本開示は、構造Z−NHR−B(R(式中、Zは有機基であり、RはH又は有機基であり、各Rは独立して、炭素原子を介してホウ素原子と結合した有機基である。)を有する少なくとも1つのトリオルガノボラン−アミン錯体を含む第1の部分を含む二部分型重合性組成物を提供する。その組成物は、重合性成分、及び酸基を含む酸性化ナノ粒子を含む第2の部分を更に含み、各酸性化ナノ粒子は無機コア及び酸基を含み、酸基としては、酸安定化剤、及び/又は有機基を介して無機コアと共有結合した酸基が挙げられる。各無機コアは、一般的には無機酸化物コア、例えばシリカ、ジルコニア、又はアルミナである。
【0008】
一実施形態ではポリマーの製造方法が提供され、方法は、構造Z−NHR−B(R(式中、Zは有機基であり、RはH又は有機基であり、各Rは独立して、炭素原子を介してホウ素原子と結合した有機基である。)を有する少なくとも1つのトリオルガノボラン−アミン錯体を含む第1の部分を提供することを含む。方法は、重合性成分、及び酸基を含む複数の酸性化ナノ粒子を含む第2の部分を提供すること(ここで各酸性化ナノ粒子は無機コア及び酸基を含み、酸基としては、酸安定化剤、及び/又は有機基を介して無機コアと共有結合した酸基が挙げられる)、並びに第1の部分と第2の部分とを組み合わせることを更に含む。
【0009】
用語「ナノ粒子」は、粒径(すなわち、粒子の最長の寸法、例えば、球体の直径)が100ナノメートル(nm)以下である粒子を指し、ナノ粒子は、非集塊でかつ非集塊の離散粒子、並びに。集塊又は凝集した粒子(すなわち、集塊又は凝集した、例えば球体の直径の最長の寸法)が100ナノメートル(nm)以下である粒子を指す。本明細書では、用語「ナノ粒子」は、ヒュームド又は焼成無機酸化物(ヒュームドシリカ(沈降シリカとも称される場合もある)、焼成シリカ、又はヒュームドアルミナなど)を含まない。
【0010】
ナノ粒子に関する用語の「表面改質した」は、ナノ粒子の外表面に共有結合した少なくとも1つの基を有するナノ粒子を意味する。
【0011】
用語「酸安定化剤」は、ナノ粒子に共有結合していない、少なくとも1つの酸基を含む化合物を意味する。酸性化合物は、溶液又はゾル(即ち、流体コロイド溶液)内で、ナノ粒子の分散体が100ナノメートル超の粒径に集塊すること、又はゲル化すること(即ち、一般的なフラスコ(例えば250ml丸底フラスコ)を通して視認可能であるような、透明又は僅かに濁った状態から、濁り、かつ粘稠性であることの多い状態への変化)を防ぐのに有効な量で存在する。
【0012】
ナノ粒子に関する用語「酸改質した」は、酸安定化剤、及び有機基を介して無機コアと共有結合した酸基、又はこれらの組み合わせを含む、少なくとも1つの酸基を含むナノ粒子を意味する。
【0013】
本明細書で使用するとき、用語「有機基」は、脂肪族基、環状基又は脂肪族基と環状基との組み合わせ(例えば、アルカリール及びアラルキル基)として分類される、炭化水素基(酸素、窒素、硫黄及びケイ素のような、炭素及び水素以外の任意元素を含む)を意味する。本発明との関係においては、有機基は、オルガノボラン−アミン錯体及び/又はモノマー重合若しくはエチレン性不飽和モノマーの形成を妨害しない基である。用語「脂肪族基」は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖炭化水素基を意味する。この用語は、例えばアルキル、アルケニル、及びアルキニル基を包含する。用語「アルキル基」は下記で定義する。用語「アルケニル基」は、ビニル基のような、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有する不飽和の、直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する。用語「アルキニル基」は、1つ以上の炭素−炭素三重結合を有する不飽和の、直鎖又は分枝鎖炭化水素基を表す。用語「環状基」は、脂環式基、芳香族基、又は複素環式基として分類される閉じた環状炭化水素基を表す。用語「脂環式基」は、脂肪族基の特性に似た特性を有する環式炭化水素基を意味する。用語「芳香族基」又は「アリール基」は下記で定義する。用語「複素環基」は、環内の1つ又は複数の原子が、炭素以外の元素(例えば、窒素、酸素、硫黄など)である閉環炭化水素を意味する。別段の指示がない限り、有機基は一般的には少なくとも1つの炭素原子、また多くの場合、最大で30の炭素原子を含む。有機基は任意の好適な価数を有し得るが、多くの場合は一価又は二価である。
【0014】
用語「アルキル」は、アルカンのラジカルである一価の基を意味し、直鎖、分岐鎖、環式、及び二環式のアルキル基並びにこれらの組み合わせである基を含み、これには非置換及び置換両方のアルキル基が含まれる。別段の指示がない限り、アルキル基は一般的には1〜30の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、アルキル基は1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3の炭素原子を含有する。本明細書で用いられるアルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、イソブチル、t−ブチル、イソプロピル、n−オクチル、n−ヘプチル、エチルヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
用語「シクロアルキル」は閉環したアルキル基を意味する。別段の指示がない限り、シクロアルキル基は一般的には1〜30の炭素原子を有する。シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
用語「アルキレン基」は、アルカンのラジカルである二価の基を意味し、直鎖、分岐鎖、及び環式の基、並びにこれらの組み合わせである基を含み、これには非置換及び置換両方のアルキレン基が含まれる。別段の指示がない限り、アルキレン基は、一般的に1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。
【0017】
用語「アリール」とは、芳香族かつ任意選択で炭素環式である一価の基を意味する。アリールは、少なくとも1つの芳香環を有し、芳香環に縮合される1つ以上の更なる炭素環式環を有することができる。任意の更なる環は不飽和でも、部分的に飽和していても、飽和していても、又は芳香族であってもよい。別段の指示がない限り、アリール基は一般的には6〜30の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、アリール基は6〜20、6〜18、6〜16、6〜12、又は6〜10の炭素原子を含む。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナンスリル、及びアントラシルが挙げられる。
【0018】
用語「アラルキル」は、アリール基で置換されたアルキル基である一価基を指す。用語「アルカリール」は、アルキル基で置換されたアリールである一価基を指す。いずれの基の場合も、アルキル部分は多くの場合1〜10の炭素原子、1〜6の炭素原子、又は1〜4の炭素原子を有し、アリール部分は多くの場合6〜20の炭素原子、6〜18の炭素原子、6〜16の炭素原子、6〜12の炭素原子、又は6〜10の炭素原子を有する。
【0019】
用語「加水分解性」は、大気圧条件下で1〜10のpHを有する水と反応可能な基を意味する。ヒドロキシル基は、多くの場合、加水分解反応によって得られる。ヒドロキシル基は、多くの場合、更に反応を受ける。一般的な加水分解性基としては、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アルカリールオキシ、アシルオキシ、又はハロゲン基が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用する時、多くの場合、この用語はシリル基のケイ素原子に結合した1つ又は複数の基に関連して用いられる。
【0020】
用語「非加水分解性基」は、一般的に、大気圧条件下で1〜10のpHを有する水と反応しない基を意味する。一般的な非加水分解性基としては、アルキル、アリール、アラルキル、及びアルカリールが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用する時、多くの場合、この用語はシリル基のケイ素原子に結合した1つ又は複数の基に関連して用いられる。
【0021】
用語「含む(comprises)」及びこの変形は、これらの用語が現れる説明及び請求項において制限する意図を持たない。
【0022】
「好ましい」及び「好ましくは」の言葉は、特定の状況下で、特定の利益をもたらし得る本開示の実施形態のことを指す。しかしながら、同様又は他の環境下では、他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ又は複数の好ましい実施形態の説明は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、かつ本開示の範囲から他の実施形態を除外することを目的としたものではない。
【0023】
本出願において、「a」、「an」、及び「the」といった語は、1つの実体のみを指すことを意図したものではなく、その説明のために具体的な例が用いられ得る一般的な部類を含む。「a」、「an」、及び「the」なる語は、「少なくとも1つの」なる語と互換的に用いられる。リストがその後に続く「〜のうちの少なくとも1つ」及び「〜のうちの少なくとも1つを含む」という語句は、リスト内の項目のうちの任意の1つ、及びリスト内の項目のうちの2つ以上の項目の任意の組み合わせを指す。
【0024】
本明細書で使用する時、用語「又は」は、内容が明確に他を指示しない限り、概ね、「及び/又は」を含む普通の意味で利用される。用語「及び/又は」は、1つ若しくは全ての列挙した要素、又は2つ以上の列挙した要素のいずれかの組み合わせを意味する。
【0025】
また、本明細書においては、全ての数は「約」という用語で修飾されたとみなされ、好ましくは「厳密に」という用語で修飾されたとみなされる。本明細書で測定された量に関連して使用される用語「約」は、測定をし、測定の対象物及び使用された測定装置の精度と同等の水準の注意を行使した当業者によって期待される測定量における変動を指す。
【0026】
本明細書ではまた、端点による数値範囲の列挙には、範囲並びに端点内に含まれる全ての数が包含される(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、などを含む)。
【0027】
同じであっても異なってもよい基は、「独立して」何かであると称される。つまり、ある基が本明細書に記載される式中に2回以上存在する時は、特に記載のあるなしに関わらず、各基は独立して選択される。例えば、式中に2つ以上のR基が存在する時、各R基は独立して選択される。更に、これらの基に含まれる下位基も独立して選択される。
【0028】
本明細書で使用するとき、「室温」という用語は、20℃〜25℃又は22℃〜25℃の温度を指す。
【0029】
本開示の前述の概要は、本開示の各開示実施形態又は全ての実施を説明しようとするものではない。以下の説明は、例示的実施形態を更に具体的に例示する。本出願の全体を通じていくつかの箇所で、実施例を列挙することにより指針が提供されており、それらの実施例は様々に組み合わせて使用され得る。それぞれの事例において、列挙されているリストは代表的な群としてのみ供せられるものであり、排他的なリストとして解釈すべきではない。
【0030】
[代表的実施形態の詳細な説明]
二部分型重合性組成物
本開示は、構造Z−NHR−B(R(式中、Zは有機基であり、RはH又は有機基であり、各Rは独立して、炭素原子を介してホウ素原子と結合した有機基である。)を有する少なくとも1つのトリオルガノボラン−アミン錯体を含む第1の部分を含む二部分型重合性組成物を提供する。各酸性化ナノ粒子は無機コア及び酸基を含み、ここで酸基は酸安定化剤、有機基を介して無機コアと共有結合した酸基、又はこれらの組み合わせを含む。各無機コアは、一般的には無機酸化物コア、例えばシリカ、ジルコニア、又はアルミナである。
【0031】
酸性化ナノ粒子
本開示は、トリオルガノボラン−アミン錯体を脱錯体化して重合性組成物の重合を開始するための酸性化ナノ粒子を提供する。上記のように、酸性化ナノ粒子は、少なくとも1つのトリオルガノボラン−アミン錯体を含む第1の部分を含む二部分型重合性組成物に有利に用いられる。第2の部分は重合性成分と、酸基を含む複数の酸性化ナノ粒子と、を含み、ここで各酸性化ナノ粒子は無機コア及び酸基を含む。酸基には、酸安定化剤、有機基を介して無機コアと共有結合した酸基、又はこれらの組み合わせが含まれる。
【0032】
複数の酸性化ナノ粒子は酸基を含み、ここで各酸性化ナノ粒子は無機コア及び酸基を含む。例えば自由流動性粉末として一旦形成されると、続いてナノ粒子がトリオルガノボラン錯体を含む組成物と結合するまで、これらの酸性化ナノ粒子は、液体の酸化合物と比較してより容易に送達及び貯蔵することができる。二部分型重合性組成物に酸性化ナノ粒子を用いることの利点としては、液体の酸と比較して臭気が低いことが挙げられる。
【0033】
特定の実施形態では、複数の酸性化ナノ粒子は、酸基の50重量%以下、又は酸基の40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、又は1重量%以下の量の遊離酸を更に含む。一実施形態では、複数の酸性化ナノ粒子は遊離酸を更に含まない。特定の実施形態では、複数の酸性化ナノ粒子は、酸基の50モル%以下、又は酸基の40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、5モル%以下、2モル%以下、1モル%以下の量の遊離酸を更に含む。換言すれば、いくつかの実施形態では、複数のナノ粒子は酸基の半分以下のモル数(即ち50モル%以下)の遊離酸を含むことになる。
【0034】
特定の実施形態では、酸基はカルボン酸などの酸安定化剤を含む。いくつかの実施形態では、酸安定化剤は(C1〜C4)モノカルボン酸、(C2〜C6)ジカルボン酸、(C6〜C14)アリールカルボン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。好適な酸安定化剤としては、例えば酢酸、ギ酸、プロパン酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸、シュウ酸、サリチル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸が挙げられるが、限定されない。理論に束縛されるものではないが、酸安定化剤は、ナノ粒子の無機コアの表面との水素結合相互作用を含むものと考えられる。酸安定化剤を含む酸基を有する酸性化ナノ粒子を用いる利点は、酸安定化剤とナノ粒子との間の相互作用を生むのに加工工程を必要としないことである。
【0035】
特定の実施形態では、酸基は、有機基を介して無機コアと共有結合した酸基を含む。かかる酸性化ナノ粒子は、酸基が構造−AYnを有する有機基を介して無機コアと共有結合する構造を有することが好ましく、ここでAは、(C1〜C16)アルキレン基、(C1〜C16)ヘテロアルキレン基、(C6〜C14)アリール基、(C6〜C14)シクロアルキル基、又はこれらの組み合わせであり、Yはスルホン酸、カルボン酸、又はホスホン酸であり、nは1又は2である。
【0036】
以下の構造が示され得る。
【0037】
【化2】
【0038】
特定の実施形態では、共有結合した酸基には、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、及びこれらの組み合わせが含まれる。非限定的な例として、好適な共有結合した酸基は、(C〜C16)モノカルボン酸、(C〜C16)ジカルボン酸、(C〜C14)アリールカルボン酸、(C〜C16)モノスルホン酸、(C〜C16)ジスルホン酸、(C〜C14)アリールスルホン酸、(C〜C16)モノホスホン酸、(C〜C16)ジホスホン酸、(C〜C14)アリールホスホン酸、又はこれらの組み合わせによって提供される。
【0039】
共有結合した酸基を含む酸性化ナノ粒子は、上記で開示した酸基を有する粒子を官能化することによって調製することが好ましい。したがって、共有結合した酸基を含む無機ナノ粒子は、以下の工程を含む方法によって製造され得る。無機酸化物ナノ粒子を提供すること、1つ又は複数の酸基を提供すること、及び共有結合した酸基を含む酸性化無機ナノ粒子を形成するのに効果的な条件下で1つ又は複数の酸基と無機ナノ粒子とを組み合わせること。
【0040】
特定の実施形態では、1つ又は複数の酸基と無機ナノ粒子とを組み合わせることが、これらを溶剤内で一緒に混合し、続いて得られた表面改質ナノ粒子から溶剤を除去して、本明細書に記載される無機コアと酸基とを含むものを得る方法によって実施できる。一般的には、この方法では、溶剤は、アルカン(例えばヘキサン)、芳香族化合物(例えばトルエン)、エーテル(例えばTHF)、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0041】
特定の実施形態では、1つ又は複数の酸基と無機ナノ粒子とを組み合わせることは、以下のことを含む方法によって実施可能である。1つ又は複数の酸基を、例えば、噴霧などによって溶剤中で乾燥した無機ナノ粒子に加えることと、及びそのナノ粒子を撹拌し、得られた表面改質無機ナノ粒子から溶剤を蒸発させて本明細書に記載される無機コア及び酸基を含むものを得ること。一般的には、この方法では、溶剤はテトラヒドロフラン(THF)又はヘキサンである。
【0042】
1つ又は複数の酸基と無機ナノ粒子とを結合させることは空気中で実施可能であり、又は窒素雰囲気などの不活性雰囲気下で実施可能である。1つ又は複数の酸基と無機ナノ粒子とを組み合わせることは、低温(例えば−20℃、−10℃、又は0℃)、室温、及び高温(例えば溶剤の沸点と同等の温度)を含む任意の温度で実施可能である。
【0043】
特定の実施形態では、各酸性化ナノ粒子の無機コアは、無機コアの表面に共有結合した少なくとも1つの疎水性基を含む。例えば、少なくとも1つの疎水性基は、任意選択で(C3〜C16)アルキル基、(C6〜C14)アリール基、シクロアルキル基、又はこれらの組み合わせを含む。
【0044】
本開示の酸性化ナノ粒子は、硬化性接着剤及びその他の多成分配合物などの重合性システム中の補強充填剤としても機能し得る。したがって、こうした固体で、分散可能なナノ粒子は、トリオルガノボラン−アミン錯体の脱錯体化剤として有用であり、また、ニ部分型の二重硬化システムを調製するのに用いられ得る。酸性の脱錯体化剤は固形であることが好ましいため、かかる剤の量は容易に運搬可能であり、また運搬される量は液体の酸と比べて制御がより容易である。
【0045】
あるいは、本開示の酸性化ナノ粒子は、複数の酸性化ナノ粒子の液体分散体として提供され得る。かかる分散体又は液体は、液体であってもよい二部分型重合性組成物の重合性成分と相溶性であることが好ましい。
【0046】
トリオルガノボラン−アミン錯体
実施形態では、トリオルガノボラン−アミン錯体は、構造Z−NHR−B(Rを有する少なくとも1つのトリオルガノボラン−アミン錯体を含む遊離錯体である。かかる液体錯体はフリーラジカル前駆体の錯体である。
【0047】
かかる遊離錯体では、Zは有機基、例えば一価の有機基である。特定の実施形態では、Zは1〜30の炭素原子を有する有機基である。特定の実施形態では、Zは1〜20の炭素原子を有する有機基である。特定の実施形態では、Zは1〜10の炭素原子を有する有機基である。特定の実施形態では、Zは1〜6の炭素原子を有する有機基である。特定の実施形態では、Zは1〜3の炭素原子を有する有機基である。特定の実施形態では、Zはアルキレン基である。
【0048】
及びRの基は、ルイス酸塩基のトリオルガノボラン−アミン錯体がアミン基とトリオルガノボラン化合物との間で容易に形成するように選択される。これは、かかる基を電子的及び立体的な考慮に基づいて選択することを含む。例えば、ルイス酸塩基錯体が形成しないように、Rが過度に立体障害性でない、又は過度に電子吸引性でないことが望ましい。
【0049】
かかる錯体では、RはH又は有機基である。特定の実施形態では、RはH、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、又はこれらの組み合わせ(例えばアラルキル、アルカリール、又はシクロアルキルで置換されたアルキル)である。特定の実施形態では、Rはメチル、エチル、n−プロピル、−CH−フェニル、又は−CH−シクロヘキシルである。特定の実施形態では、RはH、アルキル基、又はシクロアルキル基である。特定の実施形態では、RはH、(C1〜C6)アルキル基、又は(C4〜C8)シクロアルキル基である。特定の実施形態では、RはHである。
【0050】
好適なR基は、ルイス酸塩基錯体が形成されないように、過度に立体障害性でない。フェニル、イソプロピル、t−ブチル、及びシクロヘキシルなどの立体障害性基は望ましくないが、かかる嵩高な基がアミン基の窒素原子に直接結合しない場合は用いてもよい。かかる基の例としては−CH−フェニル又は−CH−シクロヘキシルが挙げられる。更により好ましいR基はメチル、エチル、及びプロピル基であり、これらはルイス酸塩基錯体のより容易な形成を可能にする。
【0051】
かかる錯体では、各Rは独立して、炭素原子を介してホウ素原子に結合する有機基である。特定の実施形態では、各Rは独立してアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、又はこれらの組み合わせ(例えばアラルキル基又はアルカリール基)である。特定の実施形態では、各Rは独立してアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、又はアルカリール基である。特定の実施形態では、各Rは独立して(C1〜C20)アルキル基、(C4〜C8)シクロアルキル基、(C6〜C14)アル(C1〜C10)アルキル基、又は(C1〜C10)アルク(C6〜C14)アリール基である。特定の実施形態では、各Rは1〜10の炭素原子、1〜6の炭素原子、又は1〜4の炭素原子を有するアルキル基である。特定の実施形態では、各Rは独立してアルキル基、又はシクロアルキル基である。特定の実施形態では、各Rは独立して(C1〜C20)アルキル基、又は(C4〜C8)シクロアルキル基である。特定の実施形態では、各Rは、構造Z−NHR−B(Rにおいて同一である。
【0052】
好適なR基は、ルイス酸塩基錯体が形成されないような、過度に電子供与性でない。一般的には、アリール基などの電子供与性基は、アルキル及びシクロアルキル基ほどには望ましくないが、かかる基がトリオルガノノボラン基のホウ素原子に直接結合しない場合は用いてもよい。
【0053】
構造Z−NHR−B(Rを有するトリオルガノボラン−アミン錯体の特定の実施形態では、Zは1〜30の炭素原子を有する有機基であり、RはH、アルキル基、又はシクロアルキル基であり、各Rは独立してアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、又はアルカリール基である。
【0054】
構造Z−NHR−B(Rを有するトリオルガノボラン−アミン錯体の特定の実施形態では、Zは1〜20の炭素原子を有する有機基であり、RはH又は(C1〜C6)アルキル基若しくは(C4〜C8)シクロアルキル基であり、各Rは独立して(C1〜C20)アルキル基、(C4〜C8)シクロアルキル基、(C6〜C14)アル(C1〜C10)アルキル基、又は(C1〜C10)アルク(C6〜C14)アリール基である。
【0055】
構造Z−NHR−B(Rを有するトリオルガノボラン−アミン錯体の特定の実施形態では、Zは1〜3の炭素原子を有する有機基であり、RはHであり、各Rは独立して(C1〜C6)のアルキル基である。
【0056】
ナノ粒子
本開示のナノ粒子としては、無機コア、特に無機酸化物コア(例えば、ジルコニア、チタニア、セリア、アルミナ、酸化鉄、バナジア、酸化ゲルマニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ、及びアルミナシリカ)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子としてはシリカ、ジルコニア、又はこれらの混合物が挙げられる。酸性化ナノ粒子(例えば酸安定化剤及び/又はナノ粒子に共有結合した酸基を含む無機コア)を含む二部分型重合性組成物の特定の実施形態では、無機コアは無機酸化物コアを含む。かかる実施形態では、各無機コアは独立して、ジルコニア、チタニア、シリカ、セリア、アルミナ、酸化鉄、バナジア、酸化ゲルマニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ、又はアルミナシリカを含み、好ましくはジルコニア、シリカ、又はアルミナ、例えばシリカを含む。
【0057】
ナノ粒子は非金属の酸化物、金属の酸化物、又はこれらの組み合わせを含み得る。非金属の酸化物として、例えばケイ素又はゲルマニウムの酸化物が挙げられる。金属の酸化物としては、例えば鉄、チタニウム、セリウム、バナジウム、アンチモン、スズ、アルミニウム、又はジルコニウムの酸化物が挙げられる。
【0058】
ナノ粒子は100ナノメートル(nm)以下、75ナノメートル以下、50ナノメートル以下、25ナノメートル以下、20ナノメートル以下、15ナノメートル以下、又は10ナノメートル以下の平均粒径を有し得る。ナノ粒子は少なくとも1ナノメートル、少なくとも5ナノメートル、少なくとも15ナノメートル、少なくとも20ナノメートル、少なくとも25ナノメートル、少なくとも50ナノメートル、又は少なくとも75ナノメートルの平均粒径を有し得る。
【0059】
種々のナノ粒子が、市販されている。ナノ粒子の市販品は、Nyacol Co.(Ashland,MA)、Solvay−Rhodia(Lyon,France)、及びNalco Co.(Naperville,IL)から入手可能である。ナノ粒子は、当該技術分野において既知の技術を使用して作成することもできる。例えば、ジルコニアナノ粒子は、例えば、WO2009/085926号(Kolbら)に記載の水熱技術を用いて調製が可能である。
【0060】
好ましくは、無機(非表面改質)ナノ粒子は、40ナノメートル以下、好ましくは20ナノメートル以下、より好ましくは10ナノメートル以下の平均粒径を有し、水性又は水/有機溶媒混合物中に提供されるシリカナノ粒子であり得る。平均粒径は透過型電子顕微鏡を用いて測定可能である。
【0061】
いくつかの実施形態では、(非表面改質)ナノ粒子はコロイド状分散体の形態であり得る。水性媒体中のコロイド状シリカナノ粒子は、当該技術分野で周知であり、市販されている。水中又は水−アルコール溶液中シリカゾルは、LUDOX(Sigma−Aldrich Corp.(St.Louis,MO)から入手可能)、NYACOL(Nyacol Co.(Ashland,MA)から入手可能)、及びNALCO(Nalco Co.(Naperville,IL)から入手可能)などの商品名で入手可能である。
【0062】
その他の有用なシリカゾルは、平均粒径5ナノメートル、pH 10.5、固形分15重量%のシリカゾルとして入手可能なNALCO 2326(Nalco Co.(Naperville,IL)から入手可能)である。他の市販のシリカナノ粒子としては、Nalco Co.から入手可能なNALCO 1115、NALCO 1130、NALCO 1040、NALCO 1050、NALCO 1060、NALCO 2327、及びNALCO 2329、Remet Corp.から入手可能なREMASOL SP30、並びに、Sigma−Aldrichから入手可能なLUDOX SMが挙げられる。
【0063】
ジルコニアナノ粒子分散体は、Nalco Chemical Co.から商品名NALCO OOSSOO8で、またBuhler AG(Uzwil,Switzerland)から商品名BUHLER ZIRCONIA Z−WOで入手可能である。好適なジルコニアナノ粒子には、例えば、米国特許第7,241,437号(Davidsonら)に記載のものもある。
【0064】
ナノ粒子は完全凝縮されてもよい。完全凝縮ナノ粒子(非晶質シリカを例外として)は、典型的に、55%を超える、好ましくは60%を超える、より好ましくは70%を超える結晶化度(単離金属酸化物粒子として測定した場合)を有する。例えば、結晶化度は、最大約86%、又はそれ以上にすることができる。結晶化度は、X線回折法によって決定することができる。凝縮結晶性(例えばジルコニア)のナノ粒子は、屈折率が高いが、非晶質ナノ粒子は典型的に、屈折率がより低い。
【0065】
ナノ粒子に結合する任意の基
ナノ粒子は、共有結合した酸基又は酸安定化剤以外の表面改質基を含み得る。例えば、ナノ粒子は、ナノ粒子に直接結合するアミン官能性有機基を更に含み得る。
【0066】
また、ナノ粒子はナノ粒子に直接結合した、更なる安定化性(一般的には非アミン官能性)の有機基を含み得る。かかる有機基は、共有結合した酸基又はナノ粒子に結合し得る任意のアミン官能性有機基とは別個で、かつ区別可能である(即ち、これらの一部ではない)。更なる安定化性の有機基が、ナノ粒子に結合した多種多様な従来の官能基から選択され得る。一般的に、これらは、液体(例えば水、アルコール(例えばメタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、又はグリコール)又はこれらの組み合わせ)に分散した時に、ナノ粒子と酸とを共有結合する前に複数の無機ナノ粒子を安定化するために選択される。かかる追加的な安定化性(一般的には非アミン官能性)の有機基は、任意でカテナリー酸素原子及びその他の官能基(例えばOH基)を含む(C1〜C30)の有機基を含む。特定の実施形態では、更なる安定化性の有機基には、(C3〜C16)アルキル基、(C6〜C14)アリール基、又はこれらの組み合わせ(アルカリール又はアラルキル基)が含まれる。特定の実施形態では、追加の安定化性有機基は(C3〜C16)アルキル基である。
【0067】
アミン官能性有機基及び更なる安定化性の有機基は、−Si−O−Si−結合を含む連結基を介して無機酸化物ナノ粒子に共有結合され得る。
【0068】
したがって、特定の実施形態では、アミン官能性有機基は化学式A−ZNHRの化合物によって提供され、式中のAはナノ粒子の表面と反応して、基−ZNHRを表面に結合させる基であり、Z及びRは本明細書で−Z−NHR−B(Rに関して定義される通りである。A基は、式−Si(R)(Rの基などの加水分解性のシリル基であり得、式中Rは加水分解性基であり、Rは加水分解性基又は非加水分解性基である。多くの実施形態では、A基はトリメトキシシリル基又はトリエトキシシリル基などのトリ(アルコキシ)シリル基である。式A−ZNHRの例示的な化合物としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、及び11−アミノウンデシルトリエトキシシランが挙げられる。
【0069】
特定の実施形態では、更なる安定化性の有機基が、化学式A−Qの化合物によって提供され、式中のAは上記と同様であり、Qは安定化性有機基である。特定の実施形態では、Qは、任意でカテナリー酸素原子及びその他の官能基(例えばOH基)を含む(C1〜C30)有機基である。特定の実施形態では、Qは(C3〜C16)アルキル基、(C6〜C14)アリール基、又はこれらの組み合わせ(アルカリール又はアラルキル基)である。好ましいQ基は、メチル、エチル、分岐若しくは非分岐プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、及びヘキサデシル基などの(C3〜C16)アルキル基であり、又はフェニル基などの(C6〜C14)アリール基である。
【0070】
例示的な式A−Qの化合物としては、例えば、イソオクチルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソ−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、及びブチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0071】
ポリマーの製造方法
一実施形態ではポリマーの製造方法が提供され、その方法は、構造Z−NHR−B(Rを有する少なくとも1つのトリオルガノボラン−アミン錯体を含む第1の部分を提供することを含み、式中、Zは有機基であり、RはH又は有機基であり、各Rは独立して、炭素原子を介してホウ素原子と結合した有機基である。その方法は、重合性成分、及び酸基を含む複数の酸性化ナノ粒子を含む第2の部分を提供することと、第1の部分及び第2の部分を一緒に組み合わせることと、を更に含む。各酸性化ナノ粒子は無機コア及び酸基を含み、ここで酸基は酸安定化剤及び/又は有機基を介して無機コアと共有結合した酸基を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、その組み合わせることは、第1の部分と第2の部分とを混合して第1の部分と第2の部分との混合物を形成することを更に含み、かつ任意選択で、その混合物を反応させてポリマーを形成することを更に含む。特定の実施形態では、第1の部分を提供することは、第1の部分を分配カートリッジの第1のチャンバに充填すること、及び第2の部分を分配カートリッジの第2のチャンバに充填することを含む。任意選択で、かかる方法は、第1の部分及び第2の部分を容器内で混合して、第1の部分及び第2の部分の混合物を形成することを更に含む。一実施形態では、第1の部分及び第2の部分の混合物は基材上にコーティングされて基材上で重合する。
【0073】
特定の実施形態では、酸基はカルボン酸などの酸安定化剤を含む。いくつかの実施形態では、酸安定化剤は(C1〜C4)モノカルボン酸、(C2〜C6)ジカルボン酸、(C6〜C14)アリールカルボン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。好適な酸安定化剤としては、例えば酢酸、ギ酸、プロパン酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸、シュウ酸、サリチル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸が挙げられるが、これらに限定されない。理論に束縛されるものではないが、酸安定化剤は、ナノ粒子の無機コアの表面との水素結合相互作用を含むものと考えられる。
【0074】
特定の実施形態では、酸基は、有機基を介して無機コアと共有結合した酸基を含む。かかる酸性化ナノ粒子は、酸基が構造−AYnを有する有機基を介して無機コアに共有結合する構造を有することが好ましく、式中、
(i)Aは(C1〜C16)アルキレン基、(C1〜C16)ヘテロアルキレン基、(C6〜C14)アリール基、(C6〜C14)シクロアルキル基、又はこれらの組み合わせであり、
(ii)Yはスルホン酸、カルボン酸、又はホスホン酸であり、
(iii)nは1又は2である。
【0075】
特定の実施形態では、共有結合した酸基には、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、又はこれらの組み合わせが含まれる。非限定的な例として、好適な共有結合した酸基は、(C〜C16)モノカルボン酸、(C〜C16)ジカルボン酸、(C〜C14)アリールカルボン酸、(C〜C16)モノスルホン酸、(C〜C16)ジスルホン酸、(C〜C14)アリールスルホン酸、(C〜C16)モノホスホン酸、(C〜C16)ジホスホン酸、(C〜C14)アリールホスホン酸、又はこれらの組み合わせによって提供される。
【0076】
一般的に、重合性成分としては、エチレン性不飽和モノマー、オリゴマー、及び1つ又は複数のエチレン性不飽和基を有するポリマーが挙げられる。好適な化合物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含有しかつ付加重合可能である。このようなラジカル重合可能な化合物としては、モノ−、ジ−又はポリ−(メタ)アクリレート(即ち、アクリレート及びメタクリレート)(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビス[1−(2−アクリロキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、及びトリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレート)と、(メタ)アクリルアミド(即ち、アクリルアミド及びメタクリルアミド)(例えば(メタ)アクリルアミド、メチレンビス−(メタ)アクリルアミドと、ジアセトン(メタ)アクリルアミド)と、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールのビス−(メタ)アクリレート(好ましくは、分子量200〜500)、米国特許第4,652,274号(Boettcherら)に記載されているような、アクリレート化されたモノマーの共重合可能な混合物、米国特許第4,642,126号(Zadorら)に記載されているような、アクリレート化されたオリゴマー、及び米国特許第4,648,843号(Mitra)米国特許番号に開示されているもののような、ポリ(エチレン部が不飽和の)カルバモイルイソシアヌレート、並びにビニル化合物(例えばスチレン、ジアリルフタレート、ジビニルサクシネート、ジビニルアジペート及びジビニルフタレート)、が挙げられる。他の好適なフリーラジカル重合可能な化合物としては、例えば、WO 00/38619(Guggenbergerら)、WO 01/92271(Weinmannら)、WO 01/07444(Guggenbergerら)、WO 00/42092(Guggenbergerら)に開示されているようなシロキサン官能性(メタ)アクリレート、及び例えば、米国特許第5,076,844号(Fockら)、米国特許第4,356,296号(Griffithら)、欧州特許第0373 384号(Wagenknechtら)、欧州特許第0201 031号(Reinersら)、並びに欧州特許第0201 778号(Reinersら)に開示されているようなフルオロポリマー−官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。好ましくは、重合性成分は、1つ又は複数のアクリレートモノマーを含む。所望する場合、2つ以上のラジカル重合可能な化合物の混合物を用いることができる。
【0077】
特定の実施形態では、二部分型重合性組成物は2つの重合性成分、例えば熱硬化性成分(例えばポリウレア、ポリウレタン、又はエポキシ熱硬化性樹脂)などの第1の重合性成分と、重合性アクリレート成分などの第2の重合性成分とを含む。重合性アクリレート成分は、1つ又は複数のアクリレート又はメタクリレートモノマーを含む任意の重合性アクリレート成分であってよい。かかる実施形態では、重合性成分の一方は少なくとも1つのトリオルガノボラン−アミン錯体を有する第1の部分に含まれ、もう一方は酸性化ナノ粒子を有する第2の部分内の重合性成分である。
【0078】
二重硬化システムの成分は独立して重合して、硬化した材料(例えば基材上のコーティング剤)を形成する。熱硬化性成分は重合して、アミンとイソシアネートとの自発反応によって、例えば、ポリウレアを形成し得る。アクリレート成分は、重合してアクリルホモポリマー又はコポリマーを形成し得る。アクリルポリマーは架橋しても架橋しなくてもよい。硬化される材料内の熱硬化性樹脂及び熱硬化性アクリルポリマーは、互いに化学結合し得る(例えば、熱硬化性成分及びアクリレート成分の両方に反応性の化合物を組成物中に添加することによって)か、又は成分が互いに化学結合しない相互侵入高分子網目(IPN)を形成し得る。
【0079】
一つの例示的実施形態では、二部分型重合性組成物は、重合して、ポリウレア(ポリアミン成分とポリイソシアネート成分との自発反応により)及びポリアクリレート(1つ又は複数のアクリレートモノマーの重合により)を形成し得る二部分系である。本実施形態では、第1の部分はポリアミン成分及びオルガノボラン−アミン錯体を含み、第2の部分はポリイソシアネート成分及び1つ又は複数のアクリレートモノマーを含む。2つの部分が混合されると、ポリアミン成分とポリイソシアネート成分とが自然に反応してポリウレアを形成し得、続いて遊離したトリオルガノボランが反応して1つ又は複数のアクリレートモノマーの重合を開始し得る。一般的に、かかる系は、2つの硬化性成分が、各成分の化学的性質を制御することによって硬度及び可撓性といった硬化材料の物理特性を制御又は改質する方法を提供する点で、従来のポリウレア、ポリウレタン、エポキシ、又はアクリレートコーティングに勝る利点を有する。
【0080】
[代表的実施形態]
実施形態1は、(a)構造Z−NHR−B(Rを有する少なくとも1つのトリオルガノボラン−アミン錯体を含む第1の部分であって、式中、(i)Zは有機基であり、(ii)RはH又は有機基であり、(iii)各Rは独立して、炭素原子を介してホウ素原子に結合する有機基である、第1の部分、並びに、(b)重合性成分と、酸基を含む複数の酸性化ナノ粒子と、を含む第2の部分であって、前記各酸性化ナノ粒子は無機コア及び酸基を含み、酸基は、酸安定化剤、有機基を介して無機コアと共有結合した酸基、又はこれらの組み合わせから構成される、第2の部分を含む、二部分型重合性組成物である。
【0081】
実施形態2は、前記複数の酸性化ナノ粒子が酸安定化剤を含む、実施形態1に記載の二部分型重合性組成物である。
【0082】
実施形態3は、前記酸安定化剤がカルボン酸を含む、実施形態1又は2に記載の二部分型重合性組成物である。
【0083】
実施形態4は、前記酸安定化剤が、(C〜C)モノカルボン酸、(C〜C)ジカルボン酸、(C〜C14)アリールカルボン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の二部分型重合性組成物である。
【0084】
実施形態5は、前記酸安定化剤が酢酸、ギ酸、プロパン酸、ブタン酸、安息香酸、シュウ酸、サリチル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸からなる群から選択される、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の二部分型重合性組成物である。
【0085】
実施形態6は、前記酸安定化剤が前記無機コアの表面との水素結合相互作用を含む、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の二部分型重合性組成物である。
【0086】
実施形態7は、前記複数の酸性化ナノ粒子が前記酸基の50重量%以下の量の遊離酸を含む、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の二部分型重合性組成物である。
【0087】
実施形態8は、有機基を介して前記無機コアと共有結合した前記酸基が、化学構造−AYを有し、式中、(i)Aが(C〜C16)アルキレン基、(C〜C16)ヘテロアルキレン基、(C〜C14)アリール基、(C〜C14)シクロアルキル基、又はこれらの組み合わせであり、(ii)Yがスルホン酸、カルボン酸、又はホスホン酸であり、(iii)nが1又は2である、実施形態1に記載の二部分型重合性組成物である。
【0088】
実施形態9は、前記共有結合した酸基が、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の二部分型重合性組成物である。
【0089】
実施形態10は、前記共有結合した酸基が、(C〜C16)モノカルボン酸、(C〜C16)ジカルボン酸、(C〜C14)アリールカルボン酸、(C〜C16)モノスルホン酸、(C〜C16)ジスルホン酸、(C〜C14)アリールスルホン酸、(C〜C16)モノホスホン酸、(C〜C16)ジホスホン酸、(C〜C14)アリールホスホン酸、又はこれらの組み合わせによって提供される、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の二部分型重合性組成物である。
【0090】
実施形態11は、前記無機コアが前記無機コアの表面に共有結合した少なくとも1つの疎水性基を含む、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の二部分型重合性組成物である。
【0091】
実施形態12は、前記少なくとも1つの疎水性基が、(C〜C16)アルキル基、(C〜C14)アリール基、シクロアルキル基、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態11に記載の二部分型重合性組成物である。
【0092】
実施形態13は、前記無機コアが無機酸化物コアを含む、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の二部分型重合性組成物である。
【0093】
実施形態14は、前記無機コアが、ジルコニア、チタニア、シリカ、セリア、アルミナ、酸化鉄、バナジア、酸化ゲルマニウム、酸化亜鉛、アンチモン酸化物、酸化スズ、又はアルミナシリカを含む、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の二部分型重合性組成物である。
【0094】
実施形態15は、前記無機コアがジルコニア、シリカ、又はアルミナを含む、実施形態1〜14のいずれか1つに記載の二部分型重合性組成物である。
【0095】
実施形態16は、前記無機コアがシリカを含む、実施形態1〜15のいずれか1つに記載の二部分型重合性組成物である。
【0096】
実施形態17は、Zが1〜30の炭素原子を有する一価有機基である、実施形態1〜16のいずれか1つに記載の二部分型重合性組成物である。
【0097】
実施形態18は、RがH、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、又はこれらの組み合わせである、実施形態1〜17のいずれか1つに記載の二部分型重合性組成物である。
【0098】
実施形態19は、Rがメチル、エチル、n−プロピル、−CH−フェニル、又は−CH−シクロヘキシルである、実施形態1〜18のいずれか1つに記載の二部分型重合性組成物である。
【0099】
実施形態20は、各Rが独立してアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、又はこれらの組み合わせである、実施形態1〜19のいずれか1つに記載の二部分型重合性組成物である。
【0100】
実施形態21は、(a)Zが1〜20の炭素原子を有する有機基であり、(b)RがH又は(C〜C)アルキル基又は(C〜C)シクロアルキル基であり、(c)各Rが独立して(C〜C20)アルキル基、(C〜C)シクロアルキル基、(C〜C14)アル(C〜C10)アルキル基、又は(C〜C10)アルク(C〜C14)アリール基である、実施形態1〜18のいずれか1つに記載の二部分型重合性組成物である。
【0101】
実施形態22は、(a)Zが1〜3の炭素原子を有する有機基であり、(b)RがHであり、(c)各Rが独立して(C〜C)アルキル基である、実施形態1〜19のいずれか1つに記載の二部分型重合性組成物である。
【0102】
実施形態23は、ポリマーを作製する方法であって、(a)化学構造Z−NHR−B(Rを有する少なくとも1つのトリオルガノボラン−アミン錯体を含む第1の部分を提供することであって、式中、(i)Zは有機基であり、(ii)RはH又は有機基であり、(iii)各Rは独立して、炭素原子を介してホウ素原子に結合する有機基である、第1の部分を提供することと、(b)重合性成分と、酸基を含む複数の酸性化ナノ粒子と、を含む第2の部分を提供することであって、前記各酸性化ナノ粒子が無機コア及び酸基を含み、前記酸基としては、酸安定化剤、有機基を介して前記無機コアと共有結合した酸基、又はこれらの組み合わせが挙げられる、第2の部分を提供することと、(c)前記第1の部分と前記第2の部分とを組み合わせることと、を含む、ポリマーを作製する方法である。
【0103】
実施形態24は、前記組み合わせることが、前記第1の部分及び前記第2の部分を組み合わせて、前記第1の部分及び前記第2の部分の混合物を形成することを更に含む、実施形態23に記載の方法である。
【0104】
実施形態25は、前記混合物を反応させてポリマーを形成することを更に含む、実施形態24に記載の方法である。
【0105】
実施形態26は、前記第1の部分を提供することが、前記第1の部分を分配カートリッジの第1のチャンバに充填することを含み、前記第2の部分を提供することが、前記第2の部分を前記分配カートリッジの第2のチャンバに充填することを含む、実施形態23〜25のいずれか1つに記載の方法である。
【0106】
実施形態27は、前記分配カートリッジの前記第1のチャンバと前記第2のチャンバの内容物とを1つの容器内に分配することを更に含む、実施形態26に記載の方法である。
【0107】
実施形態28は、前記第1の部分と前記第2の部分とを前記容器内で混合して、前記第1の部分及び前記第2の部分の混合物を形成することを更に含む、実施形態27に記載の方法である。
【0108】
実施形態29は、前記混合物を基材上にコーティングする工程を更に含む、実施形態24又は28に記載の方法である。
【0109】
実施形態30は、前記重合性成分が1つ又は複数のアクリレートモノマーを含む、実施形態23〜29のいずれか1つに記載の方法である。
【0110】
実施形態31は、前記複数の酸性化ナノ粒子が酸安定化剤を含む、実施形態23〜30のいずれか1つに記載の方法である。
【0111】
実施形態32は、前記酸安定化剤が、(C〜C)モノカルボン酸、(C〜C)ジカルボン酸、(C〜C14)アリールカルボン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態23〜31のいずれか1つに記載の方法である。
【0112】
実施形態33は、前記酸安定化剤が、前記無機コアの表面との水素結合相互作用を含む、実施形態23〜32のいずれか1つに記載の方法である。
【0113】
実施形態34は、前記複数の酸性化ナノ粒子が、前記酸基の50重量%以下の量の遊離酸を含む、実施形態23〜33のいずれか1つに記載の方法である。
【0114】
実施形態35は、前記有機基を介して前記無機コアと共有結合した前記酸基が、化学構造−AYを有し、式中、(i)Aが(C〜C16)アルキレン基、(C〜C16)ヘテロアルキレン基、(C〜C14)アリール基、(C〜C14)シクロアルキル基、又はこれらの組み合わせであり、(ii)Yがスルホン酸、カルボン酸、又はホスホン酸であり、(iii)nが1又は2である、実施形態23〜34のいずれか1つに記載の方法である。
【0115】
実施形態36は、前記共有結合した酸基が、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態23〜34のいずれか1つに記載の方法である。
【0116】
実施形態37は、前記共有結合した酸基が、(C〜C16)モノカルボン酸、(C〜C16)ジカルボン酸、(C〜C14)アリールカルボン酸、(C〜C16)モノスルホン酸、(C〜C16)ジスルホン酸、(C〜C14)アリールスルホン酸、(C〜C16)モノホスホン酸、(C〜C16)ジホスホン酸、(C〜C14)アリールホスホン酸、及びこれらの組み合わせによって提供される、実施形態23〜34のいずれか1つに記載の方法である。
【実施例】
【0117】
本開示の目的及び利点を、以下の実施例によって更に例示するが、これらの実施例で列挙される特定の材料及びその量並びに他の諸条件及び詳細によって、本開示が不当に制限されるものではない。
【0118】
以下の実施例は、あくまで説明を目的としたものであって、付属の特許請求の範囲をいかなる意味においても限定することを目的とするものではない。実施例における部、百分率、比等は全て、特に記載しない限り、重量基準である。用いられる単位の略語には、h=時間、gm=グラム、wt=重量、cm=センチメートルが含まれる。特に明記しない限り、材料はSigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手したものである。
【0119】
調製例1
マグネチックスターラー、温度計、及び還流冷却器を備えた500mLの三つ口丸底フラスコに、シリカの水性分散液(100グラム、Nalco 2326)(Nalco Company(Naperville,IL)から入手した)及び3−(トリヒドロキシシリル)−1−プロパンスルホン酸の水溶液(12.06グラム)(Gelest Inc(Morrisville,PA)から入手)を投入した。フラスコを油浴に置き、混合物を撹拌して50℃で一晩加熱した。続いて混合物をガラス皿に注ぎ、100℃の熱風乾燥器内で乾燥して生成物を得た。
【0120】
調製例2
米国特許出願公開第20100276374号に記載の方法に従って調製された酸安定化ジルコニアゾルをガラス皿に注ぎ、100℃のオーブン内で乾燥して粉末を得た。
【0121】
(実施例1)
ガラス小瓶に10グラムの、メチルメタクリレート(55.9重量%)と、メチルメタクリレートコポリマー(25.2重量%、ELVACITE 2013(Lucite International(Cordova,TN)から入手))と、二酸化チタン(18.9重量%、Ti−PURE R−960(E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能)と、の混合物を投入した。調製例1に記載されたスルホン酸改質シリカナノ粒子(1.0グラム)を、前記混合物に撹拌しながら投入した。続いて、トリ−n−ブチルボランと3−メトキシプロピルアミンとの錯体(0.09グラム、TNBB−MOPA(BASF(Evans City,PA)から入手)を混合物に添加した。へらを用いて混合物を撹拌すると、次第に粘着性が増加してきた。約1.5時間後の混合物は固体であった。
【0122】
(実施例2)
ガラス小瓶に13.8グラムの、メチルメタクリレート(55.9重量%)と、メチルメタクリレートコポリマー(25.2重量%、ELVACITE 2013(Lucite International(Cordova,TN)から入手))と、二酸化チタン(18.9重量%、Ti−PURE R−960(E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能)と、の混合物を投入した。調製例1に記載されたスルホン酸改質シリカナノ粒子(5.2グラム)を、前記混合物に撹拌しながら投入した。続いて、トリエチルボランと1,3−ジアミノプロパンとの錯体(0.09グラム、TEB−DAP(BASF(Evans City,PA)から入手)を混合物に添加した。粘性の混合物をシリコーンコーティングされたポリエステル剥離ライナーにコーティングした。約40分後、コーティング剤は重合され、硬質かつ脆性であった。
【0123】
(実施例3〜6)
個々のガラス小瓶に4mLのメチルメタクリレートを投入した。続いて秤量した量の調製例1のスルホン酸改質シリカナノ粒子をメチルメタクリレート(実施例3では0.11グラム、実施例4では0.51グラム、実施例5では0.98グラム、実施例6では2.16グラム)に撹拌しながら投入した。続いて、トリ−n−ブチルボランと3−メトキシプロピルアミンとの錯体(0.02mL、TNBB−MOPA(BASF(Evans City,PA)から入手)を瓶内の各混合物に添加した。へらを用いて各混合物を短時間撹拌した。各混合物の粘度の変化、メチルメタクリレートの重合量の定性的測定を、各瓶を傾けて混合物を経時的に観察することで監視した。実施例3〜6のそれぞれの混合物の粘度は経時的に増加した。TNBB−MOPAの添加後の様々な時間における相対粘度は実施例6>実施例5>実施例4>実施例3であった。各混合物は重合して固体となった。
【0124】
(実施例7〜8)
個々のガラス小瓶に4mLのメチルメタクリレートを投入した。調製例1のスルホン酸改質シリカナノ粒子(2.07グラム)を各瓶に添加して、前記モノマーと撹拌した。実施例7では、続いて0.4mLのトリ−n−ブチルボランと3−メトキシプロピルアミンとの錯体(TNBB−MOPA(BASF(Evans City,PA)から入手)を瓶内の混合物に添加した。実施例8では、0.6mLのTNBB−MOPAを瓶内の混合物に添加した。へらを用いて各混合物を撹拌すると、10分以内に各瓶内のモノマーは重合して、硬質なポリマーが得られた。
【0125】
(実施例9)
2−エチルヘキシルアクリレート(1.0グラム)、調製例1のスルホン酸改質シリカナノ粒子(0.3グラム)、及びトリ−n−ブチルボランと3−メトキシプロピルアミンとの錯体(0.2グラム、TNBB−MOPA(BASF(Evans City,PA)から入手)を小皿内で一緒に撹拌した。アクリレートモノマーは重合して固体となった。
【0126】
(実施例10)
ガラス小瓶に、ヘキサンジオールジアクリレート(SR238(Sartomer USA LLC(Exton,PA)から入手)を4.0mL、及び調製例2の乾燥した酸安定化ジルコニアゾルを1.27グラム投入した。トリ−n−ブチルボランと3−メトキシプロピルアミンとの錯体(0.06グラム、TNBB−MOPA(BASF(Evans City,PA)から入手)を前記小瓶に添加して、へらを用いて前記混合物を撹拌した。混合物の粘度は増加し、アクリレートモノマーは重合して5分以内に固体となった。
【0127】
本明細書中に引用される特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示は、参照によりそれぞれが個々に組み込まれたかの如くその全体が本明細書に組み込まれる。当業者には、本開示の範囲及び趣旨を逸脱することのない、本開示に対する様々な修正及び変更が明らかであろう。本開示は、本明細書に記載した具体例及び実施例によって不当に制限されるものではないこと、そしてかかる実施例及び実施形態は、以下のような本明細書に記載の請求項によってのみ制限されるように意図された本開示の範囲内の単なる例示として示されることを理解されたい。