特許第6157688号(P6157688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6157688
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】ファインバブル液製造装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 3/04 20060101AFI20170626BHJP
   B01F 5/00 20060101ALI20170626BHJP
   B01F 5/10 20060101ALI20170626BHJP
   B01F 15/00 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   B01F3/04 Z
   B01F5/00 D
   B01F5/10
   B01F15/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-112002(P2016-112002)
(22)【出願日】2016年6月3日
【審査請求日】2016年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】516165963
【氏名又は名称】株式会社テクノアート
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 修
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−026658(JP,A)
【文献】 特開平11−319637(JP,A)
【文献】 特開2012−236151(JP,A)
【文献】 特開2011−218308(JP,A)
【文献】 特開2004−261314(JP,A)
【文献】 特開2011−139973(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/107077(WO,A1)
【文献】 米国特許第04680119(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00−5/26
B01F 15/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡径がマイクロメートルからナノメートルオーダーの範囲内の微細気泡を含有するファインバブル液製造装置であって、
気体供給口からの気体と原料液を圧送するためのポンプとともに、前記ポンプによって圧送された前記原料液と前記気体との気液混合物を加圧するための加圧室と、前記加圧室で加圧された気液混合物中の気泡径をマイクロメートルからナノメートルオーダーの範囲内のファインバブルへと微細化するための金属フィルターを備え、
前記ポンプおよび前記加圧室は、通液路により連通されており、
前記加圧室は、加圧室本体と、この加圧室本体の上流側の端部および下流側の端部に加圧流路とを備え、
前記加圧室の内部空間には、断面積が前記加圧室の断面積よりも小さい略円筒形の形状を有する微細気泡生成部を備え、微細気泡生成部の上側の底面部には、前記金属フィルターが一体化されて配置されており、前記微細気泡生成部の外側の側壁面と、前記加圧室本体の内側の側壁面との間隙には、前記加圧流路より前記加圧室本体の内部空間に導入された気液混合物が通過可能なようにスペーサーが配設されており、
前記金属フィルターでは、通液方向と同軸方向に微細孔路が多数開口されており、
前記加圧流路を通じて前記加圧室本体内に送り込まれた気液混合物が、前記加圧室本体と前記微細気泡生成部と前記スペーサーとによって形成された流路を通じ、加圧された状態で前記微細気泡生成部よりも上方に位置する前記加圧室本体の内部空間へと流れ込み、前記加圧室本体上側の内底面部に衝突した後、この加圧室本体上側の内底面部と微細気泡生成部との間に生じる、すり鉢状の攪拌渦に巻き込まれつつ、金属フィルターの微細孔路に通液され、気液混合物が前記微細孔路を通過することにより、気泡径が微細化され、加圧流路を通じて加圧室外へと送出されることを特徴とするファインバブル液製造装置。
【請求項2】
前記金属フィルターは、凹凸を有する金属薄板が巻かれて貫通孔である微細孔路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のファインバブル液製造装置。
【請求項3】
前記金属フィルターの前記微細孔路の孔径が、300μm以下であり、前記微細孔路の長さが30mm以上60mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のファインバブル液製造装置。
【請求項4】
前記加圧室の長さ方向の略中央部に前記金属フィルターが一体化されて配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のファインバブル液製造装置。
【請求項5】
前記加圧室に先立って、前記原料液中の浮遊物を除去するための樹脂製フィルターユニットが設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のファインバブル液製造装置。
【請求項6】
前記ファインバブル液製造装置が、前記原料液を貯留するタンクに、生成されたファインバブル液を供給し、このファインバブル液が前記金属フィルターを少なくとも1回以上通過する循環システムを構築していることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のファインバブル液製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡径がマイクロメートルからナノメートルオーダーの微細気泡を含有し、しかも微細気泡の含有量が多く洗浄力等に優れたファインバブル液製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、微細気泡を含有する水や溶液が注目されている。これらは、例えば、マイクロバブル水、ナノバブル水あるいはこれらの総称としてファインバブル液と呼称されており、原料液に種々の気体を混合あるいは溶解させて気泡を形成することで多様な機能性を付与することが可能であるとされている。具体的にも、例えば、オゾンや酸素などの殺菌性や酸化力の強い気体を原料液に供給することにより、殺菌効果、洗浄作用を有するファインバブル液として、精密機器や医療機器の洗浄などに利用されている。また、酸素の場合には、ファインバブル液中の溶存酸素量を増加させて、農業や水産業分野において、植物の生長や魚の成長促進を目的として利用されている。
【0003】
しかしながら、様々な効果が期待されているものの、ファインバブル液の利用はごく一部にとどまっている。このことは、従来のファインバブル液において、その品質の安定性、微細気泡の含有量の確実性などの客観的な信頼性が乏しいことに起因する。
【0004】
また、ファインバブル液においては、一般に、ファインバブル液中の気泡径が小さいほど、体積当たりの気泡の表面積が大きくなるため、洗浄力や生物の生長(成長)促進作用が向上すると考えられている。また、ファインバブル液の体積当たりの気泡含有量が多いほど、洗浄力や生物の生長(成長)促進作用が向上すると考えられている。
【0005】
これまでに、例えば、バルブの開閉の程度を調節して液体流量と空気吸気量を変化させることにより、適宜にバブルの発生量とバブル径を制御することができるファインバブル液製造装置が提案されている(特許文献1参照)。また、ファインバブル液を効率的に安定して発生させることができ、しかも旋回流を発生させることでメンテナンスを頻繁に行う必要のないファインバブル液製造装置も提案されている(特許文献2)。
【0006】
特許文献1に記載されたファインバブル液製造装置では、ボデーの内部に貫通孔を有するボールをハンドルによって回動させて、前記貫通孔の開放の程度を調節することにより原料液の流量を調節し、前記ボールの貫通孔の二次側、すなわち下流側の流路中に設けられた球体もしくはベンチュリー管を気泡発生部としている。気泡発生部の形状がいずれの場合であっても、急激に流路の断面積が減少することによって負圧を生じさせ、空気が自給導入されて液流中でせん断破壊され、微細気泡として液中に分散させることができるとされている。
【0007】
特許文献2に記載されたファインバブル液製造装置では、導入口から導入した原料液に本体流路内で旋回流を付与することでファインバブル液を製造している。ファインバブル液を製造する原理としては、通液方向に対してらせん状に旋回する少なくとも一条のらせん状溝を有する旋回流路によって生じる旋回流が、原料液と混合した空気などの気体をせん断破壊して微細化することができるとされている。また、流路の断面径を大→小→大→小→さらに小となる繰り返し構成とすることによって、せん断力を向上させ、微細気泡の気泡径を小さくすることができるとされている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたファインバブル液製造装置では、得られる微細気泡の気泡径はミリメートルオーダーから最小でも200μmの範囲であって、ナノメートルオーダーの微細気泡を含有するファインバブル液を得ることはできない。
【0009】
また、特許文献2に記載されたファインバブル液製造装置では、ファインバブル液中の気泡径が数百μmから数十μm程度であって、特許文献1と同様にナノメートルオーダーの微細気泡を含有するファインバブル液を得ることはできない。
【0010】
このように、特許文献1および2に記載されたファインバブル液製造装置のいずれにおいても、気泡径の微細化が必ずしも十分であるとは言い難い側面があり、ファインバブル液製造装置のさらなる改良が求められている。
【0011】
また、特許文献1および2のいずれにおいても、ファインバブル液1ccあたりの気泡含有量や気泡径の分布などについては何ら検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第5006273号公報
【特許文献2】特許第5269493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、気泡径がマイクロメートルからナノメートルオーダーの微細気泡を精度よく含有し、しかも1ccあたりの微細気泡の含有量が多く、これらの安定性や確実性を客観的にも高め、洗浄力に優れたファインバブル液製造装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を踏まえ、発明者は鋭意検討した結果、通液路の途中に、加圧室を設け、該加圧室に、通液方向と同軸方向に多数の微細孔路が開孔された金属フィルターを設けることにより、気液混合物が前記微細孔路を通過する際に気泡径が数十μmから数十nmオーダーのマイクロ・ナノバブルを多数含有するファインバブル液が製造されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明は、以下のとおりのファインバブル液製造装置を提供する。
(1)気泡径がマイクロメートルからナノメートルオーダーの範囲内の微細気泡を含有するファインバブル液製造装置であって、気体供給口からの気体と原料液を圧送するためのポンプとともに、前記ポンプによって圧送された前記原料液と前記気体との気液混合物を加圧するための加圧室と、前記加圧室で加圧された気液混合物中の気泡径をマイクロメートルからナノメートルオーダーの範囲内のファインバブルへと微細化するための金属フィルターを備え、前記ポンプおよび前記加圧室は、通液路により連通されており、前記加圧室は、略円筒形の加圧室本体と、この加圧室本体の上流側の端部および下流側の端部に加圧流路とを備え、前記加圧室の内部空間には、断面積が前記加圧室の断面積よりも小さい略円筒形の形状を有する微細気泡生成部を備え、微細気泡生成部の上側の底面部には、前記金属フィルターが一体化されて配置されており、前記微細気泡生成部の外側の側壁面と、前記加圧室本体の内側の側壁面との間隙には、前記加圧流路より前記加圧室本体の内部空間に導入された気液混合物が通過可能なようにスペーサーが配設されており、前記金属フィルターでは、通液方向と同軸方向に微細孔路が多数開口されており、前記加圧流路を通じて前記加圧室本体内に送り込まれた気液混合物が、前記加圧室本体と前記微細気泡生成部と前記スペーサーとによって形成された流路を通じ、加圧された状態で前記微細気泡生成部よりも上方に位置する前記加圧室本体の内部空間へと流れ込み、前記加圧室本体上側の内底面部に衝突した後、この加圧室本体上側の内底面部と微細気泡生成部との間に生じる、すり鉢状の攪拌渦に巻き込まれつつ、金属フィルターの微細孔路に通液され、気液混合物が前記微細孔路を通過することにより、気泡径が微細化され、加圧流路を通じて加圧室外へと送出されることを特徴とする。
(2)前記金属フィルターは、凹凸を有する金属薄板が巻かれて貫通孔である微細孔路が形成されていることが好ましい。
(3)前記金属フィルターの前記微細孔路の孔径が、300μm以下であり、前記微細孔路の長さが30mm以上60mm以下であることが好ましい。
(4)前記加圧室の長さ方向の略中央部に前記金属フィルターが一体化されて配置されていることが好ましい。
(5)上記発明(1)から(4)において、前記加圧室に先立って、前記原料液中の浮遊物を除去するための樹脂製フィルターユニットが設けられていることが好ましい。
(6)上記発明(1)から(5)において、前記ファインバブル液製造装置が、前記原料液を貯留するタンクに、生成されたファインバブル液を供給し、このファインバブル液が前記金属フィルターを少なくとも1回以上通過する循環システムを構築していることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のファインバブル液製造装置によれば、気泡径がマイクロメートルからナノメートルオーダーの微細気泡を精度よく含有し、しかも1ccあたりの微細気泡の含有量が多く、これらの安定性や確実性を客観的にも高め、洗浄力に優れたファインバブル液が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のファインバブル液製造装置の概略図である。
図2】本発明のファインバブル液製造装置の金属フィルターの概略斜視図である。
図3図2のA−A’断面図である。
図4】本発明のファインバブル液製造装置の別の実施形態における加圧室の概略図である。
図5】本発明のファインバブル液製造装置を用いて製造したファインバブル液中におけるファインバブルの気泡径および発生量を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明のファインバブル液製造装置について図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明のファインバブル液製造装置の実施の形態を例示した概略図である。
【0020】
この図1の本発明のファインバブル液10製造装置では、気泡径がマイクロメートルからナノメートルオーダーの範囲内の微細気泡を含有するファインバブル液製造装置であって、気体供給口2からの気体1と通液路11の原料液3を圧送するためのポンプ4とともに、ポンプ4によって圧送された原料液3と気体1との気液混合物を加圧するための加圧室5と、加圧室5で加圧された気液混合物中の気泡径をマイクロメートルからナノメートルオーダーの範囲内のファインバブルへと微細化するための金属フィルター6を備えることを特徴としている。金属フィルター6では、後述のように、通液方向と同軸方向に微細孔路が多数開口されており、気液混合物が微細孔路を通過することにより、気泡径が微細化されることを特徴としている。
【0021】
ファインバブル液10製造装置は、通液路11の上流側の端部から、原料液3を供給される。
【0022】
原料液3としては、例えば、水道水、純水、脱イオン水などの水や、洗浄剤としての界面活性剤などを含有する水溶液や、メタノールやエタノールなどの親水性溶媒を含む水溶液などが例示される。
【0023】
原料液3の供給方法としては、例えば、原料液3が水道水の場合、通液路11の上流側の端部を水道管に直結して、水道水を供給する方法などが例示される。
【0024】
原料液3が純水、脱イオン水などの純度の高い水である場合、これら純度の高い水の製造装置の貯留タンク等の吐出口と、ファインバブル液10製造装置の通液路11の上流側の端部とを連結して、原料液3を供給する方法等が例示される。
【0025】
原料液が洗浄剤としての界面活性剤などを含有する水溶液や、メタノールやエタノールなどの親水性溶媒を含む水溶液である場合、これら水溶液の調整槽の吐出口と、ファインバブル液10製造装置の通液路11の上流側の端部とを連結して、原料液3を供給する方法等が例示される。
【0026】
また、ファインバブル液10製造装置では、図1に示すように、原料液3を貯留するタンク8と、タンク8内に貯留されている原料液3が所定の流量で流れ込む調整槽9とを備えている態様も好ましく考慮される。この場合、原料液3のタンク8から調整槽9への流入は、流量調整ができるように、オーバーフロー方式による流入としてもよいし、バルブ開閉による方式等にしてもよい。
【0027】
ファインバブル液10製造装置では、通液路11が調整槽9と加圧室5に接続され、通液路11は調整槽9と加圧室5と連通する。また、通液路11の途中には、原料液3の流量を調節するための第1の流量調節弁12と、原料液3を圧送するためのポンプ4とが設けられている。
【0028】
第1の流量調節弁12は、ファインバブル液10の製造時には、完全に開放することはなく、流路断面積の2割程度開くことが好ましく考慮される。第1の流量調節弁12を流路断面積の2割程度開くことにより、ポンプ4が稼働した際に負圧が生じ、調整槽9に貯留されている原料液3をポンプ4に引き込むことができる。これにより、ポンプ4の下流側に配置された加圧室5に原料液3を適切な流量で圧送することが可能となる。
【0029】
ポンプ4は、気体供給口2を備えている。気体供給口2としては、水の送液に通常用いられるポンプにおいて、呼び水を供給するための開口部を用いることが考慮される。気体供給口2には、気体供給路13が接続されており、気体供給路13は気体供給口2およびポンプ4を連通する。
【0030】
ポンプ4に気体を供給する方法としては、例えば、気体供給路13の気体供給口2側とは反対側の末端に、ニードルバルブ14および気体流量調節目盛15を接続し、気体流量を調節した上で、気体1としてファインバブル液10製造装置の外気を吸気して自給導入する方法や、気体供給路13の気体供給口2側とは反対側の末端に、高圧の気体が充填されたガスボンベを接続し、気体1を供給する方法などが例示される。ファインバブル液の製造コストを考慮すると、図1に示すように、気体供給路13の気体供給口2側とは反対側の末端に、ニードルバルブ14および気体流量調節目盛15を接続し、気体流量を調節した上で、気体1としてファインバブル液10製造装置の外気を吸気して自給導入する方法を用いることが好ましい。
【0031】
ポンプ4には、上流側に通液路11が接続されており、通液路11はポンプ4を連通する。また、ポンプ4には、下流側に通液路11aが接続されており、通液路11aはポンプ4を連通する。
【0032】
ポンプ4としては、液体の吸引および送液に通常用いられているものであって、かつ気体供給口2から所望の量の気体1を吸入することができる限り特に制限されないが、吸引力の高いものが好ましく考慮される。本実施形態のファインバブル液10製造装置においては、吸引力の高いポンプを用いることで、気体1としてファインバブル液10製造装置の外気を気体供給口2から直接吸気して自給導入し、通液路11を通じて引き込んだ原料液3と混合して気液混合物を作ることができる。このような吸引力の高いポンプとしては、ポンプ4内部のインペラの羽根の枚数が多いもの、回転ポンプの場合回転数が高いものなどが好ましく考慮される。ポンプ4の吸引力が十分ではない場合、気体供給口2から気体1として所望の量のファインバブル液10製造装置の外気を直接吸気することが難しくなる。
【0033】
加圧室5は、断面積が通液路11b、11cの断面積よりも大きい略円筒形の加圧室本体5aと、加圧室本体5aの上流側の端部および下流側の端部に、断面積が通液路11b、11cの断面積よりも小さい加圧流路5b、5cとを備える。
【0034】
加圧室5には、加圧流路5bに通液路11bが接続されており、加圧流路5cに通液路11cが接続されており、通液路11b、11cは、加圧流路5b、5cおよび加圧室5全体を連通する。
【0035】
加圧室5の加圧流路5b、5cの断面積が通液路11b、11cの断面積よりも小さいことから、通液路11bを通じて加圧室5に圧送された気液混合物は、加圧流路5bにおいて圧縮流となり、加圧室5内部で加圧される。一般に、気体と液体が共存する系においては、ヘンリーの法則に基づき、圧力が上昇することにより液体中への気体分子の溶解度が高まる。このため、加圧室5においては、気液混合物中の気体1が原料液3中に溶け込み、溶存気体濃度が上昇すると考えられる。また、この時、気泡の微細化が生じ、微細気泡の表面電荷がマイナスに帯電すると考えられる。
【0036】
加圧室5において気液混合物に加わる圧力としては、例えば、2.5kgf/cm程度の圧力が例示される。
【0037】
加圧室5の材質としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂などの成形品が例示されるが、気泡の発生状態を確認することができるため透明度の高いアクリル樹脂の成形品を用いることが好ましく考慮される。
【0038】
また、このような加圧室5の長さ方向の略中央部に金属フィルター6が一体化されて配置されている。加圧室5における金属フィルター6の配置の方法としては、例えば、加圧室本体5aの内径を金属フィルター6の直径よりもわずかに大きく設計することにより、加圧流路5b、5cの取り付け前に、あらかじめ加圧室本体5aの内壁に沿わせて金属フィルター6を所定の位置まで押し込む方法が例示される。また、加圧室5が略中央付近で通液方向と直交する断面で2分割されるように設計し、分割された断面に金属フィルター6を挟み込み、2分割された加圧室5の断面の外縁に形成されたフランジ部分においてボルトおよびナットなどの固定具を用いて固定する方法などが例示される。
【0039】
金属フィルター6は、図2に示すように、略円柱状の部材であり、円形の断面には、気泡の微細化を促す微細孔路7が多数形成されている。図2中の矢印は、気液混合物の通液方向を示している。
【0040】
金属フィルター6は、凹凸を有する金属薄板が巻かれて貫通孔である微細孔路が形成されている。そして、前記金属薄板の凹凸によって形成された空間の一つ一つが、それぞれ微細孔路7となる。
【0041】
図3は、図2のA−A’断面図である。微細孔路7は、図3に示すように、通液方向と同軸方向に多数開孔されており、しかも、金属フィルター6の一方の端部から他方の端部まで達する貫通孔を形成している。
【0042】
金属フィルター6の微細孔路7の孔径は、300μm以下であり、微細孔路7の長さは30mm以上60mm以下であることが好ましい。微細孔路7の孔径および微細孔路7の長さが上記の範囲内であれば、気泡径がマイクロメートルからナノメートルオーダーの微細気泡を精度よく含有し、しかも1ccあたりの微細気泡の含有量が多く、これらの安定性や確実性を客観的にも高め、洗浄力に優れたファインバブル液10を製造することが可能である。
【0043】
また、加圧室5内に配置する金属フィルター6は、1枚であってもよく、通液方向と同軸方向に2枚以上を重ねるように配置してもよい。金属フィルター6を2枚以上配置する際には、金属フィルター6間で微細孔路7同士が連結し、微細孔路7の長さが延長するように配置してもよいし、金属フィルター6間で微細孔路7同士が連結しないように、一方の金属フィルター6を回転させて配置してもよい。
【0044】
金属フィルター6を構成する金属としては、例えば、アルミやステンレス鋼などが例示されるが、耐久性や強度と加工性を兼ね備えていることから、ステンレス鋼であることが好ましく考慮される。ステンレス鋼としては、通常水廻りで様々な用途に用いられているものである限り特に制限されることはなく、例えば、SUS304などが例示される。
【0045】
加圧室5に導入されて溶存気体濃度が上昇した気液混合物が、加圧状態で金属フィルター6の微細孔路7に通液されると、気液混合物と微細孔路7の接触時に、微細気泡がせん断破壊され、さらに微細孔路7内で整流され、キメの細かい微細気泡が生じる。このため、平均気泡径のバラつきが少ない微細気泡が多量に含まれたファインバブル液10を製造することができると考えられる。
【0046】
また、金属フィルター6と気液混合物との接触、衝突時に表面電荷がマイナスに荷電した微細気泡が、圧壊し、スーパーオキサイドアニオンラジカルやヒドロキシラジカル等の活性酸素種が発生し、このような酸化力、殺菌力の強い副産物を含有することにより、洗浄力や殺菌力が向上するものと考えられる。
【0047】
本発明のファインバブル液10製造装置においては、加圧室5に先立って、原料液3中の浮遊物を除去するための樹脂製フィルターユニットが16設けられていることが好ましい。樹脂製フィルターユニット16には、上流側に通液路11aが接続されており、通液路11aは樹脂製フィルターユニット16を連通する。また、樹脂製フィルターユニット16には、下流側に通液路11bが接続されており、通液路11bは樹脂製フィルターユニット16を連通する。
【0048】
樹脂製フィルターユニット16としては、公知の不純物除去用の樹脂製フィルターユニットを適用することができる。このような樹脂製フィルターユニット16は、通常、ハウジングとカートリッジを備え、さらにカートリッジはコアと濾材を備えている。また、前記フィルターカートリッジとしては、例えば、ワインドタイプフィルター、スパンタイプフィルター、プリーツタイプフィルターなど各種のフィルターカートリッジを適用可能である。このような樹脂製フィルターユニット16のハウジングを構成する樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、アクリロニトリルスチレンなどが例示される。また、樹脂製フィルターユニット16のカートリッジを構成する樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン等が例示されるが、特に、カートリッジのコアと濾材がともにポリプロピレンによって構成されているものを用いることが好ましく考慮される。
【0049】
樹脂製フィルターユニット16の濾過精度としては、例えば0.5μm以上10μm以下の範囲が例示される。樹脂製フィルターユニット16の濾過精度が上記の範囲内であれば、金属フィルター6に開孔された微細孔路7が不純物によって閉塞してしまうことを未然に防ぐことができる。
【0050】
また、本発明のファインバブル液10製造装置では、原料液3を貯留するタンク8に、生成されたファインバブル液10を供給し、このファインバブル液10が金属フィルター6を少なくとも1回以上通過する循環システムを構築することも好ましく考慮される。
【0051】
例えば、金属フィルター6を備える加圧室5の加圧流路5cに通液路11cが接続され、連通路11cが加圧流路5cを連通する。また、タンク8に通液路11cの下流側の端部が接続され、通液路11cがタンク8を連通する形態等が例示される。また、通液路11cの途中には、第2の流路調節弁17が設けられていてもよい。
【0052】
この場合、加圧室5およびその内部の金属フィルター6に通液することで大量の微細気泡を含有するファインバブル液10が、通液路11cを通じて、タンク8に供給され、さらに、タンク8に貯留されたファインバブル液10が調整槽9に流入し、通液路11を通じてポンプ4に引き込まれ、通液路11aを通じて樹脂製フィルターユニット13に圧送される。樹脂製フィルターユニット13にて濾過されたファインバブル液10は、通液路11bを通じて加圧室5に送液され、加圧流路11bを通じて加圧室本体5aに入り、加圧状態で金属フィルター6の微細孔路7に通液されて、加圧流路11c、通液路11cを通じて、タンク8に供給される。
【0053】
このような循環システムを構築することにより、タンク8には、製造直後のファインバブル液10が常時注ぎ足され、各種の洗浄作業などに必要な量のファインバブル液10をタンク8からファインバブル液10製造装置の外部へと速やかに供給することが可能となる。
【0054】
ファインバブル液10製造装置の外部へのファインバブル液10の供給方法は、図示していないが、通液路11cの下流側に設けた吐出口から吐出、散布する方法等が例示される。また、前記の循環系を構築している場合には、図示していないが、タンク8にファインバブル液10吐出管を接続し、このファインバブル液10吐出管がタンク8を連通し、ファインバブル液10吐出管のタンク8側とは反対側の端部からファインバブル液を洗浄対象物に散布する方法などが考えられる。散布の方法は、例えば、壁面に貫通孔が設けられたシャワーパイプを洗浄対象物の上下に配管して、このシャワーパイプの管内にファインバブル液10を通液する方法などが例示される。
【0055】
また、本発明のファインバブル液10製造装置を、精密機器部品の製造ラインの中に組み込み、ベルトコンベアー等の設備によって製造直後の精密機器部品を搬送しながら、タンク8に浸漬して精密機器部品の洗浄、脱脂を行うことも可能である。
【0056】
本発明のファインバブル液10製造装置の別の実施形態としては、図4に示すように、加圧室51の形状を変更したものが例示される。加圧室51は、断面積が通液路11b、11cの断面積よりも大きい略円筒形の加圧室本体51aと、加圧室本体51aの上流側の端部、すなわち、加圧室本体51aの側壁面の一部を貫通するように接続された、断面積が通液路11bの断面積よりも小さい加圧流路51bを備える。通液路11bは、加圧流路51bおよび加圧室本体51aを連通する。
【0057】
加圧流路51bは、加圧室本体51aの水平断面の中心を通る弦に対して平行であり、かつ、加圧流路51bの流路方向の延長線が加圧室本体51aの上記水平断面の中心を通らないように接続されていることが好ましく考慮される。このような位置関係で加圧室本体51aに加圧流路51bが接続されていることにより、加圧流路51bを通じて、加圧室本体51a内部に送液された気液混合物は、図4中の流路55内を一方向に高速で旋回しながら液面を上昇させていく。
【0058】
また、加圧室51は、加圧室本体51aの下流側の端部、すなわち、加圧室本体51aの下側の底面部52aの一部を貫通するように接続された、断面積が通液路11cの断面積よりも小さい加圧流路51cを備える。通液路11cは、加圧流路51cおよび加圧室本体51aを連通する。
【0059】
加圧室51の材質としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂などの成形品が例示されるが、気泡の発生状態を確認することができるため透明度の高いアクリル樹脂の成形品を用いることが好ましく考慮される。
【0060】
加圧室本体51aの内部空間には、断面積が加圧室本体51aの断面積よりも小さい略円筒形の形状を有する微細気泡生成部53が設けられている。
【0061】
微細気泡生成部53の上側の底面部53aには、金属フィルター6が一体化されて配置されている。微細気泡生成部53における金属フィルター6の配置の方法としては、例えば、微細気泡生成部53の内径を金属フィルター6の直径よりもわずかに大きく設計することにより、微細気泡生成部53の上側の底面部53aと金属フィルター6の上側の底面部6aとが略面一となるように、あらかじめ微細気泡生成部53の内壁に沿わせて金属フィルター6を所定の位置まで押し込む方法が例示される。
【0062】
微細気泡生成部53内に配置する金属フィルター6は、1枚であってもよく、通液方向と同軸方向に2枚以上を重ねるように配置してもよい。金属フィルター6を2枚以上配置する際には、金属フィルター6間で微細孔路7同士が連結し、微細孔路7の長さが延長するように配置してもよいし、金属フィルター6間で微細孔路7同士が連結しないように、一方の金属フィルター6を回転させて配置してもよい。
【0063】
微細気泡生成部53の外側の側壁面と、加圧室本体51aの内側の側壁面との間隙には、加圧流路51bより加圧室本体51aの内部空間に導入された気液混合物が通過可能なようにスペーサー54が配設されており、流路55が形成されている。また、微細気泡生成部53の外側の側壁面には、スペーサー54よりも下方にパッキン56が設けられており、加圧室本体51a内部に導入された気液混合物は、パッキン56よりも下方に位置する加圧室本体51aの内部空間には流入することはない。
【0064】
このような構造を有する、加圧室51および微細気泡生成部53においては、まず、気液混合物が、通液路11bおよび加圧流路51bを通じて、加圧室本体51aの側面方向から加圧室本体51aの内部空間に圧送、導入される。加圧室51の加圧流路51bの断面積は、通液路11bの断面積よりも小さいため、通液路11bを通じて加圧室51に圧送された気液混合物は、加圧流路51bにおいて圧縮流となり、加圧室本体51a内部で加圧される。一般に、気体と液体が共存する系においては、ヘンリーの法則に基づき、圧力が上昇することにより液体中への気体分子の溶解度が高まる。このため、加圧室51においては、気液混合物中の気体が原料液3中に溶け込み、溶存気体濃度が上昇すると考えられる。また、この時、気泡の微細化が生じ、微細気泡の表面電荷がマイナスに帯電すると考えられる。
【0065】
加圧室51において気液混合物に加わる圧力としては、例えば、2.5kgf/cm程度の圧力が例示される。このような圧力は真空ポンプの回転数を調節することにより、ある程度の範囲内で任意の値に設定、調節することが可能である。
【0066】
気液混合物は、加圧室本体51aの側面方向から加圧室本体51aの内部空間に導入されるため、図4中に矢印で示したように、加圧室本体51aの内側の側壁面に沿って高速で旋回しながら、流路55を通じ、加圧された状態で加圧室本体51aの内部空間を満たしていく。この状態で、ポンプ4を稼動させて、気体供給口2からファインバブル液10製造装置の外気を直接吸気し、自給導入させることにより、加圧室本体51aの内部空間において、加圧室本体51a上側の内底面部52bと微細気泡生成部53との間で、気液混合物にはすり鉢状の攪拌渦が生じる。気液混合物は、一旦、加圧室本体51a上側の内底面部52bに衝突した後に、前記すり鉢状の攪拌渦に巻き込まれつつ、金属フィルター6を通じて、微細気泡生成部53の内部へと流入する。溶存気体濃度が上昇した気液混合物が、加圧状態で金属フィルター6の微細孔路7に通液されると、気液混合物と微細孔路7の接触時に、微細気泡がせん断破壊され、さらに微細孔路7内で整流され、キメの細かい微細気泡が生じる。このため、平均気泡径のバラつきが少ない微細気泡が多量に含まれたファインバブル液10を製造することができると考えられる。このようにして製造されたファインバブル液10は、微細気泡生成部53の下方に位置する、加圧流路51cを通じて加圧室51外へと送液され、通液路11c内部において常圧に戻り、下流へと送液される。
【0067】
本発明のファインバブル液10製造装置によって得られるファインバブル液10においては、液1cc当たりに含有される微細気泡の量は、例えば、1億個/cc以上1.5億個/cc以下の範囲であることが例示される。図5に示したグラフでは、液1cc当たりに含有される微細気泡の量は、1.25億個/ccである。さらに、これらの微細気泡の平均気泡径は154nmであり、しかもバラつきが少なく、精度良いファインバブル液10を製造可能であることが確認される。図5に示したグラフでは、気泡径分布における微細気泡のピーク値は104nmであり、最小の気泡径は25nmである。なお、上記の平均気泡径は、ナノ粒子解析装置(NANOSIGHT、Malvern製)を用いて測定した。
【0068】
本発明のファインバブル液10製造装置によって得られるファインバブル液10は、精密電子部品や自動車部品の脱脂、水洗、薄く熱に弱いガラスやフィルムの洗浄、魚介類の養殖や農作物の水耕栽培、医療・福祉分野における除菌・殺菌・消臭など様々な分野に適用可能である。
【0069】
本発明のファインバブル液製造装置は、上記の実施形態によって何ら限定されるものでない。加圧室、金属フィルターなどの構成の細部は様々に可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 気体
2 気体供給口
3 原料液
4 ポンプ
5、51 加圧室
5a、51a 加圧室本体
5b、5c、51b、51c 加圧流路
52a 下側の底面部
52b 上側の内底面部
53 微細気泡生成部
53a 上側の底面部
54 スペーサー
55 流路
6 金属フィルター
7 微細孔路
8 タンク
9 調整槽
10 ファインバブル液
11、11a、11b、11c 通液路
12 第1の流量調節弁
13 気体供給路
14 ニードルバルブ
15 気体流量調節目盛
16 樹脂製フィルターユニット
17 第2の流量調節弁
【要約】
【課題】気泡径がマイクロメートルからナノメートルオーダーの微細気泡を精度よく含有し、しかも1ccあたりの微細気泡の含有量が多く、これらの安定性や確実性を客観的にも高め、洗浄力に優れたファインバブル液製造装置を提供する。
【解決手段】気泡径がマイクロメートルからナノメートルオーダーの範囲内の微細気泡を含有するファインバブル液10製造装置であって、気体供給口2からの気体1と原料液3を圧送するためのポンプ4とともに、ポンプ4によって圧送された原料液3と気体1との気液混合物を加圧するための加圧室5と、加圧室5で加圧された気液混合物中の気泡径をマイクロメートルからナノメートルオーダーの範囲内のファインバブルへと微細化するための金属フィルター6を備え、金属フィルター6では、通水液方向と同軸方向に微細孔路7が多数開口されており、気液混合物が微細孔路7を通過することにより、気泡径が微細化される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5