(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の繊維であって、結晶粒子の前記長手方向の列が複数の長手方向の列を含み、各列が、繊維長の少なくとも一部において前記長手方向繊維軸と平行な長手方向線に沿って配置する複数の結晶粒子を含み、各結晶粒子は前記シリカクラッディング内に埋め込まれており、各列は前記シリカクラッディングにより他の列から分離されている繊維。
繊維プリフォームから熱延伸された繊維を設ける工程であって、前記繊維が長手方向軸繊維長を有し、また、前記繊維が、前記長手方向繊維軸に平行な長手方向コア軸を有し、且つ、前記繊維長に沿ったクラッディング材料からなる少なくとも1つの外側繊維クラッディング層に対して内部に配置されている、少なくとも1つの結晶性繊維コアを含む工程;
前記繊維を、前記繊維コアの溶融温度よりも高い温度である加熱部位温度Tを有する局在化加熱部位を通して供給し、前記繊維は、前記局在化加熱部位で前記繊維コアの一部を溶融する繊維供給速度vfで供給され、溶融液滴が、前記繊維供給速度vfにより設定された溶融液滴形成の期間に一滴ずつ、前記繊維コア部分から繊維コア材料をピンチオフ(pinch off)する工程;および
前記局在化加熱部位を通して前記繊維を連続的に供給して、前記溶融液滴を前記局在化加熱部位から移動させ、前記溶融液滴を固化し、前記繊維内に固体粒子の長手方向の列を前記長手方向繊維軸と平行に、各粒子が繊維クラッディング材料によって前記列中の他の粒子から分離されているように形成する工程
を含む、粒子の製造方法。
請求項25に記載の方法であって、繊維を設ける工程が、すず、銅、銀およびアンチモンからなる群から選択される材料を含むコアを有する繊維を設けることを含む方法。
繊維プリフォームから熱延伸された繊維を設ける工程であって、前記繊維が長手方向軸繊維長を有し、また、前記繊維が、前記長手方向繊維軸に平行な長手方向コア軸を有し、且つ、前記繊維長に沿ったクラッディング材料からなる少なくとも1つの外側繊維クラッディング層に対して内部に配置されている少なくとも1つの繊維コアを含む工程;
前記繊維コアの溶融温度よりも高い温度である加熱温度Tを有する移動温度勾配を前記繊維に適用し、前記移動温度勾配は、局在化加熱部位で前記繊維コアの一部を溶融する速度vfを有し、溶融液滴が、前記速度vfにより設定された溶融液滴形成の期間において一滴ずつ、前記繊維コア部分から繊維コア材料をピンチオフする工程;および
前記溶融液滴を固化し、前記繊維内に固体粒子の長手方向列を前記長手方向繊維軸に平行に、各粒子が繊維クラッディング材料によって前記列中の他の粒子から分離されているように形成する工程
を含む、粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
繊維内で粒子を製造するための本明細書に提供される方法においては、例えば繊維プリフォームの繊維への熱延伸により、前もって製造された繊維を、延伸後加熱工程で処理する。延伸した繊維は、長手方向軸繊維長を有し、本明細書で繊維コア領域と称する1つ以上の細長い内部領域を含む。それぞれは、長手方向繊維軸に対して平行な長手方向軸を有し、繊維長の少なくとも一部に沿って伸張している。内部の細長い繊維コア領域は、繊維内の任意の適切な半径方向および円周方向の位置に配置され得る。延伸された繊維は、細長い内部繊維コア領域のそれぞれを円周方向に囲む、少なくとも1つのクラッド領域を含んでいる。
【0012】
図1を参照すると、延伸後加熱工程において、長手方向繊維軸に沿って、時間的に動的な温度勾配、または、移動温度勾配が課される。そのような一例においては、繊維10は、制御された繊維供給速度v
fで、空間的に局在化された加熱部位12を通して、長手方向に供給される。
図1においては、局在化加熱部位12は、火炎13のホットスポットとして表されているが、例えば、タングステンワイヤーのような抵抗加熱素子を含むあらゆる適切な加熱源を用いることができる。繊維は、空間的に局在化された加熱部位12に供給されるので、1つ以上の細長い内部繊維コア領域14は、局在化加熱部位12を通過した後に、軟化し、溶融し、溶融状態となる。特に固体内部コア領域14の先端等の部分は、その表面エネルギーを低下させるために加熱部位に到着した後、溶融状態となってキャピラリー不安定性を受け、これにより溶融コア領域14の一部がピンチオフされ、球状の溶融した液滴となる。繊維の供給が続く間、球状の溶融した液滴が局在化加熱部位から移動するのに従い、液滴が凝固し、繊維10の固化したクラッディング16に埋め込まれる固体粒子18になる。液滴および粒子の形成プロセスの間に、クラッディング材料は、軟化し、球状の溶融している液滴のまわりを流れて、その後、粒子とともに硬化する。
【0013】
繊維を、局在化加熱部位を通して継続的に供給することにより、1列または1連の(a sequence, or string)球状の溶融液滴18が繊維内に形成され、粒子に固化する。液滴は1つずつ形成され、すなわち繊維供給速度によって設定された粒子形成の期間に、細長い溶融繊維コア領域の末端から一定間隔で一度に1つをピンチオフする。この1つずつの粒子形成では、1つの追加的な粒子は、対応する周期性を有する1連内の粒子間隔で、繊維のクラッディング16内の粒子の列19の末端に定期的に追加される。クラッディング16は、繊維内で粒子が凝集しないように、1連内の他のものから各粒子を分離する。
【0014】
以下に詳細に説明するように、繊維と繊維コア領域の動的な加熱は、繊維内の粒子寸法および間隔の正確な制御を可能にし、高い均一性を有する粒子の集団を生成する。粒子は、材料化合物等のあらゆる適切な材料について、ミリメートルからナノメートル、例えば、1ミクロン未満および100ナノメートル未満の粒子寸法の非常に広い範囲にわたって、ならびに、非晶質材料および結晶性材料等を含む範囲の形態で、球状、楕円形および他の形状を含む広い範囲の粒子形状で、製造することができる。局在化加熱部位の特別な構成は必要でない。移動温度勾配は静止した繊維に沿って適用することができ、または繊維は、上述のような手法で、固定した局在化加熱部位を通して供給することができる。いずれのシナリオも、広い範囲の繊維構成で使用することができる。
【0015】
例えば、
図2に示すように、繊維内粒子を製造するために処理される繊維10は、繊維10内の粒子を製造する際に、任意の適切な数の細長い内部コア領域20、22を含むことが可能である。例えば、2つの細長いコア領域20、22は繊維内に設けることができ、本明細書において明確にするために、繊維コアと呼ばれるが、繊維内において特定のサイズまたは位置に限定されるものではない。そのようなコアを含む繊維が、空間的に局在化された加熱部位12に時間的に動的に供給される場合、2つ以上のコア領域20、22のそれぞれの先端が、千切れて球状の溶融液滴内となり、適切な条件下で、以下に説明するように、他の球状溶融液滴と癒合して多粒子クラスター24を形成することができる。このように、以下に詳細に説明するように、繊維の複数の材料領域は、繊維内で生成された粒子と結合させることができる。
【0016】
あらゆる粒子形状について、動的粒子形成処理において、一般的に、繊維が動的な局在化加熱部位に導入される繊維速度vfは、繊維内に形成された粒子の大きさを制御する。供給速度が遅いと、粒径は小さくなる。この現象を表す1つの例示は、滴下している水の蛇口における液滴形成を制御するための流量の使用である。
図3を参照すると、示された1つの粒子が形成される、段階(a)から段階(e)と標識された5段階の処理での粒子形成処理が概略的に示されている。位置x=0は、コア領域の一部が局在化加熱部位に入ると、繊維内部にある細長いコア領域の固体先端部の溶融する前面を表す。球状粒子は、加熱部位内への入り口からの距離をxとしたときに、ピンチオフ点x=x
pとして設計された加熱部位内の固定位置で、溶融した繊維コア領域の先端部分から分離する。球状粒子の直径dは、界面の繊維供給速度v
fと繊維クラッディング材料と内部で細長い繊維コア領域との間の界面の速度u
pとの間の競合によって決定され、位置x
pで、溶融した粒子のピンチオフが発生する。
【0017】
クラッディング−コア界面速度u
pは、次元解析および動的な加熱処理に関する支配流体力学方程式の尺度化を用いて分析することができる。繊維システムにおける流体の流れは、主にコア領域とクラッディング領域との間の界面張力の力を受け、その結果、考慮すべき関連境界条件は、以下のように表すことのできる繊維クラッディング材料と、内部の細長いコア領域との間の界面における法線応力のバランスである
【数1】
(式中、T
cladおよびT
coreは、それぞれ繊維クラッディングおよび細長い内部繊維コア領域における応力テンソルであり、γは、コア/クラッド界面張力である)。コア領域における応力テンソルの要素
【数2】
は、以下のように与えられる
【数3】
(式中、v
iは、コア領域における速度場の要素であり、p
coreは、細長い繊維コア領域における圧力場である)。繊維クラッディングについて同様の表現は繊維クラッディングにもあてはまる。低レイノルズ数が繊維クラッディングおよび内部繊維コア領域の両方に流れると仮定し、問題の特徴的長さスケールは内部の細長いコア径Dであることに留意すると、液滴ピンチオフ位置における特徴的圧力は、細長いコア領域および繊維クラッディングにおいて、それぞれ
【数4】
および
【数5】
であると結論づけられる。したがって、応力平衡は、以下のように書き換えることができる。
【数6】
したがって、ほとんどの材料について、全ての実用的な温度において、
【数7】
であることから、u
pについての表現は以下のように与えられる。
【数8】
(式中、
【数9】
は、クラッディング材料の局所粘度であり、コア/クラッド界面張力は、x=x
pにおいてγ
pとして与えられる)。この界面張力は、ピンチオフ速度u
pで、コア部分が液滴にピンチオフするのを推進するものである。
【0018】
この関係で、コア先端部がピンチオフするために必要な時間である
【数10】
(式中、Dはコアの直径である)の間に局在化加熱部位に供給される、内部繊維コア部分の長さをλ
dと定義すると
【数11】
となる。この式は、一見、λ
dがv
fによって線形に増えることを意味するようだが、実際にはxpが繊維供給速度に依存する:繊維の供給速度v
fが上昇すると、ターン収量の温度が高くなるにつれてピンチング速度が早くなるような加熱部位では、コア領域の端部からの溶融液滴のピンチオフが更に発生する。
【0019】
コアの直径および繊維速度の間の正確な関係は複雑になり得るが、ほとんどの用途について、局在化加熱部位内への繊維供給速度vfが設定されている所定の用途のために優先的に指定された粒子寸法の制御された製造を可能にする、近似的関係を用いることができる。コア領域の直径Dを有する繊維コア領域を含む繊維内に製造されるべき所定の球状粒子の直径、dを考慮すると、粒子の直径dは、
【数12】
(式中、
【数13】
は局在化加熱部位の選択された温度における繊維クラッディング材料の局所速度であり、γ
pは、コア材料とクラッディング材料との間の界面張力である)としてdに対する関係を課すことによって得ることができる。
【0020】
この関係を用いて、大量の粒子集団にわたって、繰り返し且つ均一に選択された粒径を正確に生成するように、繊維/コアシステムおよび局在化加熱部位のパラメータを操作することができる。各因子を考慮すると、繊維クラッディング材料の局所粘度
【数14】
のみが、加熱部位温度に大きく依存している。次に、加熱部位の温度は、一般に、粒子材料の選択に基づいて選択される。加熱部位の温度は、好ましくは、繊維クラッディング内において、繊維コアからの溶融した液滴の形成を可能にする繊維コア材料を溶融する温度を超える、ある温度である。しかし、加熱部位の温度は、好ましくは、繊維クラッディング材料の粘度が、粒子形成処理の間に構造的完全性を維持するためには低すぎるであろう温度未満でもある。
【0021】
したがって、クラッディング材料の粘度が、粒子形成に最適となるような加熱部位の温度範囲を決定する、それ故、加熱部位の温度におけるクラッディングの粘度を決定するために、所定のコア材料が溶融するような局在化加熱部位の温度範囲を検討することは、有益であり得る。
図4を参照して、このような検討の一例として、シリカ繊維クラッディング材料と、シリカ繊維クラッディングの内部のシリコンコアが繊維内シリコン粒子を生成するために設けられた、繊維システムを考える。
図4においては、シリコンの融点1,414℃と、シリコンの沸点2,357℃との間の温度の関数としてのシリカ繊維クラッディング材料の粘度がプロットされている。約2,200℃を超える温度では、シリカの粘度は、シリカ繊維構造における粒子形成を補助するには低すぎるように思われる。約1,600℃未満の温度では、シリカの粘度は、各区粒子が形成されるように、形成されたシリカ粒子間にシリカの流れを収容するには高すぎる。したがって、約1,600〜約2,200℃の局在化加熱温度を、最適な温度範囲、および最終的に粒子形成のために選択された範囲内の温度に指定されたシリカの粘度として、設定することができる。温度範囲に適したクラッディング材料の粘度は、一般に、科学文献に見出すことができ、または選択されたクラッディングについて実験的に決定することができる。例えば、ケイ酸塩、ホウケイ酸塩、リン酸塩ガラス、およびソーダ石灰ガラス、ならびに他の適切な材料等を含むシリカ以外の繊維クラッディング材料を使用することができる。
【0022】
上記式(5)においては、繊維クラッディングとコア材料との間の界面張力γ
pは、温度に大きく依存せず、それ故、ほとんどの用途について、可能な粒子形成温度の範囲にわたり、定数として規定することができる。例えば、ちょうど議論した、シリカ/シリコン繊維クラッディング/繊維コアの例においては、約1.5J/m
2の界面張力が、可能な粒子形成温度の範囲に関して仮定し得る。このように特定された界面張力およびクラッディングの粘度を用いて、所定の繊維コア直径Dに対して予め選択された粒径dを製造するために必要な繊維速度v
fが、上記式(5)から決定される。
【0023】
したがって、この制御法を用い、空間的に局在化された加熱部位に繊維を動的に曝すことによる、または、局在化加熱部位を通して繊維を移動させることによる、繊維にわたって移動温度勾配の速度v
fの制御は、加熱部位の温度と無関係に、繊維内に製造される球状粒子の直径の直接的制御を可能にする。これは、システム粘度および対応する粒径を制御するための努力において、温度変化を要求するよりも遥かに実用的である。ここで、温度は一般的に粒子形成を可能にするためにのみ制御され、サイズに特異的ではない。更に、この速度制御処理は、ある長さの繊維を均一に加熱することにより製造できるものよりも、可能な粒径の範囲がより広く、特により小さい直径で、球状粒子を製造することを可能にする。上記で説明したように、温度勾配への繊維速度または繊維に沿った温度勾配速度により、繊維材料の特徴に沿った球状粒径が設定される。均一にある長さの繊維を加熱する処理においては、繊維長に沿って複数の球状粒子が同時に製造し、繊維コアの自発的および空間的にランダムな分裂により、球状粒子の連鎖を形成し、コア径と温度とによって粒径が設定される。
【0024】
一方、本発明の方法においては、所定の繊維コア径および加熱温度について、粒子形成がコア材料の先端部分で1つずつ起こり、コア材料の長さに沿って自発的に起こるものではないので、球状粒径を更に制御することができる。結果として、十分に遅い繊維速度で、所与のコア径に対して均一な加熱により得られるものよりも格段に小さい直径を有する球状粒子を製造することができる。したがって、本明細書の加熱方法は、広い範囲の内部コア径を有する繊維に適用して、ミリメートルサイズの粒子と同様、ナノメートルサイズの粒子などの小さい繊維内球状粒子を生成することができる。直径のこの広い範囲の任意の大きさのために、球状粒子の製造方法は、そのように繊維内の粒子の列に沿って非常に高い再現性が達成される程によく制御され、それにより、繊維長において製造された粒子の列における粒径分布が実質的に単峰性であり得る。更に、列中の粒子は実質的に球状である必要はなく、代わりに楕円形またはその他の選択された形状であってもよい。粒子の膨張は最長でも繊維の外径より小さいが、形状はある範囲を有することができる。
【0025】
繊維内粒子は、任意の適切な単一の材料、化合物材料、複合材料、または他の選択された材料で形成することができるが、好ましくは、局在化加熱部位でクラッディング材料と共に加熱することができる材料から形成され、加熱部位における溶融液滴のピンチオフのためにコア材料が溶融するとき、クラッディング材料は粒子間で流動するように軟化していると同時に構造完全性を維持している。更に、合理的な期間におけるコア材の溶融および液滴の形成を可能にするために、コアとクラッディング界面は、局在化加熱部位の温度の著しい界面エネルギーによって特徴付けられていることが好ましい。さらに、クラッディングおよびコア材料は、対応する繊維クラッディング材料とともに繊維プリフォームから繊維に共延伸(co-draw)することが好ましく、それ故、繊維プリフォームの延伸のために熱的に適合するものでなければならない。クラッディング材料としては、ポリマー、酸化物、シリカ、ガラス状材料、ホウケイ酸塩、ケイ酸塩、リン酸ガラス、ソーダライムガラス、および、熱可塑性樹脂を含む他の適切な材料、並びに他の適合性材料を含むことができる。
【0026】
電子的用途に特に十分に適切な粒子材料の例示としては、非晶質並びに多結晶性および単結晶性を含む結晶性の両方の半導体材料が挙げられ、例えば、カルゴゲンガラス、SiおよびGe等の結晶性半導体、ZnSe、ZnS、CdTe等のII−VI材料、GaAs、GaSb、AlGaAs、InSb、InP、InAs等のIII−V材料、または、繊維コア材料として用いることができる他の適切な半導体材料を含む。一般的に、多結晶性または単結晶性の結晶性半導体材料は、多結晶性または単結晶性半導体粒子を製造するために用いることができる。金、すず、銀、インジウム、ビスマス、カドミウム、リチウム等の電気的導電性材料、または合金、化合物等の他の電気的導電性材料、および非晶質ガラス状金属を、粒子を製造するために繊維プリフォームに含ませることができる。ポリマー、酸化物、シリカ、他のガラス等の絶縁体、および他の材料も、このような材料の粒子を製造するためのコア材料として繊維プリフォームに含ませることができる。
【0027】
繊維プリフォーム内に提供される材料はどれも、共延伸について熱的および機械的に適合する材料であり、粒子製造について熱的および機械的に適合している。共延伸について、ガラス状物質および絶縁体材料は、対象とする繊維延伸温度で適合する粘度を有しているべきであり、例えば、材料の材料完全性を維持しながら繊維延伸温度で約10
6ポイズ未満である粘度を有し、それによって、材料は、共延伸を可能にするために、重複する延伸温度でそれぞれの軟化点を超えている。材料は、延伸温度で同じ粘度を有する必要はなく、どちらかと言えば、共通の温度で流れる必要がある。金属材料および結晶性材料は、繊維延伸温度より低い温度で溶融すべきである。
【0028】
これらを考慮すると、繊維コア領域からの粒子の生成に関して、繊維クラッディングおよび繊維コア領域として対を形成するような、広い範囲のコンパニオン材料を同定することができる。以下の表1は、いくつかの例示的な材料の対を示し、それぞれに関して、粒径の範囲で粒子を製造するために用いることができる、加熱部位温度および繊維供給速度v
fの範囲を特定している。これらの例示的な温度範囲および供給速度は、クラッディング材料の十分な粘度を維持しながら、コア材料の溶融を可能にするための上記考察に基づいている。例示的な繊維供給速度は、広い範囲の粒子サイズを形成する能力を示す。
【表1】
【0029】
上記に説明したように、あらゆる粒径について、溶融粒子が局在化加熱部位の繊維コアの末端から形成された後に、溶融粒子が固化し、繊維クラッディングが固化し、クラッディング材料中に粒子が捕捉される。
図5を参照すると、この固化は、繊維コアの先端の溶融と関連して示されている。最初の相(1)においては、コアの先端が加熱部位で溶融し、ここで、繊維コア材料は機械的応力を受けていない。第2の相(2)においては、加熱部位で、柔らかくなった繊維クラッディング材料中に、溶融液滴が形成され、ここでも、繊維コア材料は機械的応力を受けていない。第3の相(3)においては、加熱部位の外で、繊維クラッディング中で粒子が固化する。粒子の材料組成および繊維クラッディングの材料組成に依存して、固化した粒子は、柔軟または硬いクラッディング材料のいずれかに対抗して、物理的に収縮し、または、物理的に膨張している可能性がある。
【0030】
図5に示すように、粒子の固化の際に物理的に膨張している場合、およびコア材料の固化温度がクラッディング材料の軟化点よりも低いシナリオについては、繊維クラッディングは、一般に粒子の固化の前に起こり、クラッディングの固化の際に粒子の周囲に気密容器を形成する。そのため、膨張した粒子が固化したクラッディングを押し、繊維内部に高圧状態を形成する。固化した球状粒子内で得られた内部圧力を推定するために、以下の圧力Pを有する均一な静水圧応力を特定することができる:
【数15】
(式中、Ksは固形の球状粒子材料の体積弾性率であり、G
Mは繊維クラッディング材料のせん断弾性率であり、αは以下の通り与えられる:
【数16】
(式中、p
solidおよびp
liquidは、それぞれ、固相および液相中の粒子材料の自由空間密度である))。これらの式は粒子サイズとは無関係であることが示されているので、繊維内の粒子によって誘発される圧力を発生する能力は、特定の粒子サイズの型(regime)に限定されるものではない。
【0031】
これらの式(6)および(7)に基づき、選択された粒子材料および繊維クラッディング材料について、繊維内で製造された粒子により生成された内部圧力Pを推定することができる。選択された粒子材料について、ミリメートルからナノメートルスケールにおける粒子の、繊維の粒子の部位において、これまで達成できなかったレベルの圧力を生じさせることができることが、本明細書において発見された。例えば、シリカクラッディングおよび繊維内のシリコンコアから形成されたシリコン粒子を含む繊維については、シリコンの球状粒子の部位で、α=0.1、Ksi=98GPa、およびG
SiO2=31GPaとして、P
Si−particle=2.9GPaの圧力を生じさせることができる。シリカクラッディング、および繊維内のゲルマニウムコアから形成されるゲルマニウム粒子を含む繊維については、ゲルマニウム球状粒子の部位で、α=0.055およびK
Ge=75GPaとしてP
Ge−particle=1.5GPaの圧力を生じさせることができる。同様に、ガリウム、アンチモン、ビスマスおよびこれらの合金は、固化時に膨張し、内部圧力を有する粒子を製造する。高圧の炭素系粒子を製造するために、炭素および炭素系材料等を含む他の材料を使用することができる。別の実施例においては、シリカクラッディングおよびアンチモンコアを繊維内に含む繊維を用いて、α=0.036およびk
sb=42GPaとして、P
sb−particle=0.62GPaの圧力を有するアンチモンの球状粒子を繊維内に製造することができる。
【0032】
対応する繊維クラッディング材料の選択と繊維内粒子材料の選択とによって、製造された粒子における繊維内粒子の位置における、0.1GPaを超え、更に1GPaを超え、または2GPaを超えるような、事前に特定されて選ばれたレベルの内部粒子圧を達成できることを、これらの例は証明する。繊維内の圧力は、繊維の特定の局在化された部位で制御され、且つ、繰り返し可能な方法で生じる。したがって、繊維長に沿って固化した一連の粒子の生成とともに、それぞれが少なくとも約0.1GPaの内部圧力からなる、繊維長に沿った、不連続で連結していない、一連の対応する高応力ドメインが生成される。各高応力ドメインの位置および繊維長に沿ったドメインの周期性は、粒子製造の際の局在化加熱部位への繊維速度によって定められる。結果として、繊維の高応力ドメインは、空間的に明確に規定された加圧環境を提供する。
【0033】
更に、高応力ドメインの複数の平行な列は、前述の手法のように、延伸した繊維に複数の繊維コアを含んでいる繊維内に製造することができる。各繊維コアを同時に溶融して、一列の溶融液滴とすることができ、それらは固化して列に沿った高内圧粒子となる。そのような列のそれぞれは、異なる粒子材料、したがって異なる粒子内圧を有する場合がある。繊維から放出される粒子の集団は、それによって、粒子内圧の範囲を有する粒子を含み得る。
【0034】
したがって、選択した材料を用いて、各々がこれまで達成できない繊維内の圧力を有する、一連または一列の繊維内圧力ドメインを生成することができる。各ドメインの圧力は、少なくとも約0.1GPa以上であるように設定され、シリコンおよびゲルマニウムなどの多くの結晶粒子材料については、より大きい1GPaまたは2GPaを超えるドメイン圧力を生じさせることができる。この圧力は、繊維に沿った圧力ドメインの大きさおよび位置の、先験的な仕様を用いて達成され、それによって選択された圧力状態を生成するため拡大縮小可能であり、特に優れたアプローチを提供することができる。これらの選択された粒子の圧力状態は、繊維のクラッディング材料から製造された粒子を除去する際にも保持される。得られた自立型粒子は、粒子の固化段階の際に発生した内部圧力を有し、0.1GPa、更には1GPaまたは2GPaより大きい内部圧力を有することができる。この高レベルの圧力は、粒子が繊維内で固化する際に繊維内で大きな圧力を生成するために十分なせん断弾性率を有していない繊維クラッディング材料では、達成することができない。例えば、繊維が、ポリマークラッディングおよびカルコゲナイドガラス球を繊維内部に有する場合、達成することができる内部のガラス球の圧力は、約10MPaに過ぎない。
【0035】
繊維内粒子によって可能になる周期的な高応力ドメインは、更に特定の用途にカスタマイズすることができる。例えば、前述した入れ子構造にした(nested)シェルまたは他の形状のような、選択された形状を有する繊維内粒子は、粒子の固化により生じた高圧の繊維内環境に供されたときに反応し得る反応性材料を用いて設けることができる。したがって、ヤヌス粒子、方位角不均一粒子、または粒子材料の他の選択された形態は、繊維内に局在する制御部位での化学反応または他の相互作用を行うために、用いることができる。
【0036】
特定の利益は、繊維内粒子の圧力を制御することにより、繊維内粒子内に配置される材料の化学的および/または電気的特性を制御する能力である。例えば、多くの半導体材料について、材料の電子バンドギャップは、材料の応力レベルに高く依存していることが、確立している。シリコンについては、応力Pによる第1の間接遷移の依存性は、
【数17】
である。また、ゲルマニウムについては、第1の間接遷移E
g、および第1の直接遷移Γ
Iの依存性は、
【数18】
である。材料応力による電子バンドギャップのこの直接的な依存性により、繊維内粒子のバンドギャップを制御するために、繊維内粒子の製造方法を適用して、粒子のバンドギャップエネルギーを、材料の自由空間バンドギャップエネルギーから負の方向または正の方向に移すことができる。このバンドギャップ幅のエネルギーの静水圧への依存は、結晶性材料の一般的特性であり、それ故、あらゆる適切な結晶性材料にも課すことができる。例えば、GaSbについては
【数19】
であり、これはGeについてのものと同様である。
【0037】
実際には、粒子の表面での圧力は、種々の材料の形態のために粒子体積の内部圧力とは異なり得ると認識されている。例えば、結晶性材料について、SiまたはGe等の溶融液滴の固化は、必ずしも均一でなく、それ故、結晶性固体球内で不均一な圧力分布をもたらす可能性がある、より複雑なプロセスである。粒子内部の圧力は、それにより、不均一な圧力分布、例えば、半径方向の圧力分布を有し得る。このような半径方向の圧力分布は、粒子材料組成内の半径方向の勾配、粒子形態の半径方向の勾配、粒子相内の半径方向の勾配、または粒子の別の特性をもたらし得る。これらの粒子勾配は、繊維クラッディングから放出した後も、自立粒子内に保持されている。したがって、粒子の固化時に達成されたバンドギャップエネルギーのシフトは、繊維から粒子が放出されても保持される。
【0038】
典型的な樹状突起(dendrite)の半径であるR
d=10μmよりも大きい任意の粒子サイズでは、固化処理において、再融着し、続いてより低温の表面から開始する固化先端の内部への伝搬によって、樹状結晶の成長が起こり得る。粒子の漸進的な固化は、粒子均質固化の場合とは対照的に、粒子中心部に向かって集束して大きな圧力をもたらし、表面よりも著しく高い圧力を粒子の最も内側のコア領域で生成することができる。したがって、最高圧の集中は粒子のコア中心部位で発生する可能性があり、外側の粒子表面で最低圧力が生じて、それらの2つの間に半径方向の圧力分布が生じる。2R
0≫10μm(R
0は球状粒子の半径である)である場合、粒子表面から開始する粒子の固化は緩やかであるが、2R
0≦10μmである場合は、固化は、粒子の体積全体を通して均一である。中間的な粒子サイズでは混合シナリオが予想される。樹状突起の半径が限定要因でない粒子サイズを考慮すると、粒子固化シナリオは、加熱条件、熱拡散および固化した粒子の寸法、ならびに繊維クラッディングの熱慣性に依存する。
【0039】
したがって、固化シナリオは、繊維クラッディングの厚みが一定ならば粒子サイズの関数として、ならびに、粒子サイズが一定ならばクラッディングの厚みの関数として、変化することが予想される。しかし、一般的には、あらゆる固化シナリオについて、通常、選択された繊維クラッディングおよび粒子材料により生成された圧力を特定するための上記式(6)に従い、高圧の繊維内ドメインを得ることができる。
【0040】
実験的に粒子表面での圧力を測定するために、固化時の繊維内粒子が周囲の繊維クラッディング材料を歪ませている状況を考慮することができる。繊維クラッディング内の歪みの結果として生じる状態は、クラッディング材料の光屈折特性を変化させ、それによって、固化した繊維内粒子周囲の繊維クラッディングの屈折率は、得られた歪みに比例する。2つの交差する偏光子間に配置して、繊維内球状粒子の周囲に伝えられた光の強度分布を測定することにより、繊維内の球形粒子表面での圧力の測定がもたらされる。
【0041】
この強度分布は以下の式を有する:
【数20】
(式中、θは方位角であり、ρは像面の動径座標であり、
【数21】
である)。ここで、Δn
ρ,θ(ρ,z)は、与えられた自由空間波長λ
0についての、球状粒子がクラッディングに及ぼす圧力によって誘導される繊維クラッディングにおける方位角に対称な複屈折であり、R
outは繊維の外半径である。λ
0は、可視波長、例えば532nmである。方位角強度分布は、4回対称性を有しており、粒子クラッディング界面における圧力および粒子サイズの両方について不変である。一方、強度分布Iの半径方向依存性を定義するΓは、粒子サイズおよび粒子クラッディング界面における圧力の両方の関数である。所定の粒径について、Γが2πの整数倍数であるというρの数(N)は、球面の圧力の関数である。したがって、繊維内の粒子の周囲にハロー(halo)で存在することが観察された暗い放射状の縞の数は、粒子クラッディング界面における圧力を示す。ある量を超えないハロー中の暗い縞の数Nを知ることにより、粒子表面での半径方向の圧力の上限を計算することができる。
【0042】
以上の通り、繊維内粒子の材料組成および繊維クラッディングの材料組成に依存し、溶融繊維コアの末端からピンチオフした後に固化する粒子は、物理的に収縮しているか、物理的に膨張していてもよい。固化中に、粒子が収縮する場合、むしろ膨張するよりも、固化した粒子の部位で繊維内に真空ドメインが生成する。真空状態は、クラッディングの内部表面の物理的状態を測定するための繊維内粒子の光学的画像によって確認することができ、真空状態下では、内部クラッディングに、粒子表面から一部の材料の昇華が起こり得ると予想される。したがって、ちょうど上述した高圧の繊維内ドメインのように、用途範囲を可能にするために、繊維に沿って所定の間隔で、繊維長に沿って繊維内の真空ドメインの列を生成することができる。多くの結晶性材料は固化によって収縮する。したがって、鉄、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、カドミウム、テルル化物および他の適切な材料のような、広範囲の材料から製造された固化された粒子の部位で、真空ドメインが生成され得る。
【0043】
ここで、対応する繊維の製造を開始することによって粒子を形成する処理を考慮し、
図6を参照すると、繊維10は、最初に、1つ以上の繊維プリフォームコア要素26および繊維クラッディング材料28を含む繊維プリフォーム25を構築して形成される。各繊維プリフォームコア要素は、所望の予め選択された粒径の考慮に基づいて選択される予め選択される直径を有する。図面の先細の延伸またはネック状の領域で示されているように、繊維プリフォーム25を、繊維および繊維内のコア(単数または複数)14について選択した直径を生じる延伸条件下で、繊維10へと熱延伸する。次いで、繊維の少なくとも一部は、選択された繊維速度v
fにより、空間的に局在化された加熱部位12に供給され、繊維コア14から、前述した方法で繊維コア径に関して繊維速度により設定された粒径を有する粒子18を繊維内に形成する。一連の固化した粒子が形成された後、繊維のクラッディング16は、所望の場合、例えば、容器30内の液体処理により除去されて、繊維から球状粒子18が放出される。
【0044】
多くの用途について、クラッディングから放出するよりも、繊維クラッディング材料中に固定された球状粒子を保持することが好ましい。この構成は、その断面積の100倍を超え得る長さを有する繊維内に埋め込まれた一連の粒子をもたらす。繊維クラッディング内に埋め込まれている間、粒子はお互いに分離され、その結果、多くの場合、従来のナノ粒子合成で頻繁に生じるように、凝集が起きることはない。繊維クラッディング材料の内側または内部に配置されていると、各粒子は、非常に大きな粒子密度であっても、それと全ての他の粒子との間に緩衝材を備えることができる。それによって、繊維クラッディング層内に埋め込まれたこの粒子の配列は、例えば、均一なマトリクス内の粒子の三次元分布を要求する用途に、用いることができる。
【0045】
また、粒子の凝集を防止するために、繊維から放出された粒子表面の不動態化を実施することができる。例えば、繊維クラッディング材料を溶解または他の方法で除去する際に、粒子は、選択されたスプレー種、例えば、ポリマースプレーでコーティングし、粒子上に層を形成することができる。また、繊維クラッディングの除去を、粒子コーティング材料を高濃度で含む流動溶液中で実施することができる。ここで、粒子が繊維から放出される際に粒子間の間隔を維持するために、溶液の流れを用いることができる。更に、凝集を防止する酸化環境のような不動態化剤に粒子を曝すことができる。これらの例は、広範囲のプロセスが、繊維からの放出による粒子の凝集を防止するために適用できることを実証している。
【0046】
繊維内粒子製造処理においては、繊維内で製造される球状粒子の直径dを、
【数22】
(式中、Dは、球状粒子を製造する加熱の前における、延伸された繊維コアの直径である。)よりも小さくすることができない。したがって、粒子形成処理の前に、選択された球状粒子直径の製造を可能にし得る繊維コア径を達成するために、繊維を、任意の適切な方法で処理することができる。上記直径と繊維速度との関係に基づき、温度勾配への繊維速度を制御することにより選択された球状粒径を製造できる繊維コア径を達成するために、例えば、繊維を、複数回熱的に再延伸することができ、または細くすることができ、または他の方法で適切に処理することができる。例えば、130μmの直径を有するコアを含む熱延伸された繊維は、4μmのコア径を達成するために再延伸することができ、約340nmのコア径を達成するために更に再延伸することができる。球状粒子製造方法において使用される、選択される繊維コア径を達成するために、あらゆる適切な繊維処理を実施することができる。
【0047】
広範囲の粒子構造は、対応する形状を有する繊維プリフォームを用意することにより、熱粒子製造処理によって製造することができる。このような粒子の構造およびこのような構造のための繊維プリフォームの製造方法は、2013年8月8日に公開された米国特許出願公開第2013/0202888A1号に教示および示されており、全体を本願に引用して援用する。最初の例においては、繊維コア材料の均一な粒子は、均質な導電性材料、電子的にドープされたものを含む電気的半導体材料、または電気的に絶縁性の材料を用いて製造することができる。また、粒子は、材料の不均質領域を含んでもよく、すなわち、異なる複数の材料が、任意の適切な配置で粒子内に含まれていてもよい。例えば、生成された粒子は、コア−シェル構造を示してもよく、すなわち、生成された粒子は、球状のコアそれぞれが球状のシェルに囲まれるように製造することができる。そのようなコア−シェル球状粒子を製造するための繊維プリフォームにおいては、コア径D1を有する繊維コアと、コアの周囲に設けられたクラッディング層と、クラッディング層の周囲に設けられた付着物層とを設けることができる。このプリフォームを繊維まで延伸した後、次いで粒子製造処理に供する際に、コアおよびシェル層を形成し、コア−シェル粒子は、付着繊維クラッディング材料に保持される。この粒子の形状は、球状コアを包囲する、同心状の入れ子構造にした複数の球状シェルを含む球体に展開し得る。
【0048】
構築された粒子の第2の例においては、本明細書に開示される延伸後加熱処理により製造することのできる粒子は、繊維内に共延伸することのできる異なる材料からなる2つの半球を含む、対称性が破られたヤヌス粒子である。繊維の形成においては、選択されたクラッディング材料に包囲された、選択されたコア材料のそれぞれの半円筒体を含むプリフォームが構築されている。繊維の延伸後、繊維コアは、クラッディング層に包囲されて、選択された2つのコア材料からなる第1の半円筒体と第2の半円筒体とを含んでいる。繊維の熱処理は、繊維内に第1の半円筒体および第2の半円筒体に対応する第1の半球および第2の半球を有する、球状ヤヌス粒子を製造する繊維コアのヤヌス粒子を形成させるために、実施される。
【0049】
コア−シェル粒子、およびちょうど説明した2領域ヤヌス粒子は、粒子製造処理から構築することができる、より複雑な形状のプロトタイプ構造である。例えば、多層粒子は、適切な厚みの入れ子構造にした円筒体状のシェルからなるコアを含んで製造することができ、入れ子構造にしたコア内で、方位角部分を有するコアを配置することにより方位角領域を設けることができる。粒子のために選択された構成では、円筒体状のシェルのそれぞれと方位角の各部分は、別個の材料として設けられ、もしくは選択された材料に代えてもよく、またはそうでなければ粒子に対して選択された構成で配置されてもよい。
【0050】
粒子形状のこれらの多くの例の製造において、また、一般的に、粒子の製造においては、選択された粒子形状をもたらすであろう材料のマクロスケールの配置を示す繊維プリフォームが構築される。例えば、球状粒子の製造においては、球体を製造するために選択されたコア材料が、例えば円柱ロッドとして提供される。ロッドは、クラッディング材料の構造内に挿入することができ、またはクラッディング材料をロッドの周囲に積層することができる。あらゆる適切な数の繊維コアを、繊維内の粒子のアレイを製造するための繊維プリフォーム内に配置することができ、特定の粒子形状の製造のために、繊維コアは、特定の寸法とし、また、互いに対して位置決めをすることができる。
【0051】
例えば、直径が等しい2つの繊維コアが設けられている場合、
図2に示すように、これら2つのコアからの粒子の同時形成は、2粒子クラスターを製造するために用いることができる。加熱部位12の局在化な境界は、等しいサイズのコアに対して固定した液滴ピンチオフの位置を一意的に規定して、空間的にコヒーレントな方法での液滴の形成を各コアに強いる。次いで、体積を保存することにより、固化した球状の球の直径は、それらが形成されたコア円筒体よりも大きい。結果として、
図7を参照すると、
図7に示すように、複数の密接に分離されたコアから製造される球状粒子は、互いに接触し、多粒子クラスター40を形成している。熱処理されるべき繊維において、複数のコア間の距離が、制御処理の条件に基づいて生成された球について規定された直径よりも小さい場合に、このような構成を製造することができる。これは、部分的に融合した球の複合体をもたらす。多くの用途において、このような部分的に融合した球は、デバイスとして構成することができる。例えば、1つの球42が電気的に半導体p型材料であり、1つの球44が電気的に半導体n型材料である場合、p−n接合46を2つの球の間の物理的界面で形成することができ、電子デバイスとして構成することができる、2球状p−n分子を生じる。
【0052】
このようなp−n接合分子は、繊維内において繊維クラッディング材料によってn型材料のコアからp型材料コアが分離されることを必要とすることに留意されたい。例えば、お互いに接触するp型およびn型シリコン半円筒体から形成されたシリコンコアを有する繊維は、2粒子p−n接合を形成することができない。なぜならこの場合、シリコンが溶融した際に繊維プリフォームの延伸中にシリコンコア全体に材料が拡散し、ドーパントを完全に均質化するためである。
【0053】
これらの例は、繊維を製造するための繊維プリフォームおよびそれから製造される球状粒子のアセンブリ中に、選択された粒子形状または多粒子クラスター構成を形成するための幾何学的に構成される1つ以上の材料の細長いコア領域があることを示している。適切な繊維プリフォームコア材料としては、ポリマー、ガラス、金属および結晶性材料を挙げることができる。繊維プリフォームクラッディング材料は、繊維コアおよびクラッディング材料の共延伸を可能にするように、また上記に説明したコア材料からの球状粒子の形成を可能にするように、繊維コア材料に基づいて選択される。繊維プリフォームアセンブリ、ならびに適合性のガラス、金属およびポリマー材料の熱延伸の例は、2007年11月13日に発行された米国特許第7,295,734号に記載および示されており、全体を本願に引用して援用する。
【0054】
例えば、コア−シェル粒子の製造においては、プリフォームは、例えば、環状ダイを通した円筒体状ビレットの押出により製造することができる。このようなビレットの例は3つのディスクで構成されており、最初の一番上のディスクはポリマーであり、真ん中のディスクはガラスであり、下部のディスクは再度ポリマーである。ビレットは軟化温度よりも高い温度に加熱された後、加圧下にダイを通して垂直下方に押される。次いで、得られた押出ロッドは、ポリマー−グラスのコア−シェル粒子を製造するための繊維を延伸するためのプリフォームとして用いることができる。
【0055】
ヤヌス粒子または他の方位角構造の粒子の形成においては、対応する繊維プリフォーム中に、粒子領域の製造のための形状の配置を有する必要な材料を配置することができる。例えば、選択された粒子の形成温度で同様の粘度を有する2つのガラス状の半円筒体を、クラッディング層、例えば、2つの半円筒体の周囲に巻いてあるPESの薄層を有する円筒体状コアとして配置することができる。多重部分「ビーチボール」粒子は、延伸またはそれに応じて成形された、いくつかのセクション、例えば6つのセクション(異なる2つの材料からそれぞれ3つずつ)より組み立てられた繊維プリフォームから製造することができる。クラッディング層は、組み立てられた部分の周りに巻くことができ、プリフォームを真空下で固化した。
【0056】
一般的に、繊維プリフォーム内の繊維コアの配置を考慮すると、繊維コア構造は、例えば、ロッドまたはストランド、ワイヤ、箔、シートまたは他の材料の適切な物品等のプリフォームに設けることができる。熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、化学蒸着(CVD)、および他の物理的蒸着技術も、プリフォームの要素を製造するために用いることができる。掘削、鋳造、成形、および他の技術は、選択されたクラッディングおよびコア構成を有するプリフォームを製造するために用いることができる。例えば、穴をポリマーまたはシリカ体に掘削し、導電性もしくは半導体ストランドまたは他の要素を、掘削領域に取り付けることができる。材料の共延伸を可能にする配置における全ての材料を収容するあらゆるプリフォームアセンブリ技術を用いることができる。
【0057】
選択されたプリフォームアセンブリ技術および得られる配置に依存し、繊維延伸処理の前に組み立てられたプリフォームを熱的に固化することが好ましい。固化は、加熱および真空条件下で1種以上のプリフォーム材料を、プリフォームにおけるエアポケットが実質的に排除されるように共に融合させる処理である。これにより、最終繊維内の隣接する材料層との間に密接な界面接触を生成し得るプリフォームアセンブリがもたらされ、繊維延伸処理中に自己保持的構造安定性を有するプリフォームが設けられる。
【0058】
繊維の延伸は、繊維延伸塔または他の適切な延伸装置内で実施することができる。3つの温度帯、すなわち、頂部、中央部および底部温度帯を可能にする垂直な延伸炉であって、頂部の温度帯はプリフォーム材料を柔軟にするが流動させず、中央部の温度帯が、プリフォームが流動して繊維になる延伸温度であるような、延伸炉を用いることが好ましい。延伸炉温度帯、プリフォーム供給速度、および出力キャプスタン速度は、プリフォーム材料、および所望の繊維構成に材料要素を共延伸することを可能にする構成に基づいて選択される。過度に高い延伸温度が使用されている場合はプリフォームが壊滅的に変形し、一方、過度に低い延伸温度はプリフォーム歪みおよび膨張の原因となる。プリフォームの構造的配置は延伸温度で保存されなければならない。例えば、シリカクラッディングを含む繊維プリフォームについては、約2100℃の繊維プリフォーム延伸温度を用いることができるが、PSUクラッディングを含む繊維プリフォームについては、約285℃の繊維プリフォーム延伸温度を用いることができる。典型的な繊維供給速度は約1mm/分であり、典型的な延伸速度は約0.1m/分から約10m/分の間であり、繊維プリフォームと延伸された繊維との間の所望のスケール比に依存する。
【0059】
したがって、所与のプリフォーム材料アセンブリについて、延伸温度、繊維供給速度、および繊維延伸速度のいくらかの実験的試験が必要であり得ると認識すべきである。合理的な基準は、ガラス状材料およびポリマー材料が延伸温度で約10
8ポアズより低い粘度を有し、金属材料および結晶性材料が延伸温度で溶融することである。繊維プリフォームを繊維に延伸した後、前述した方法で繊維内粒子を製造するために局在化加熱部位に繊維を直接供給することができる。
【0060】
前述したように、繊維内粒子の製造後に、適切な液相または気相処理を用いて繊維から粒子を放出させる。酸(シリカ繊維クラッディングの場合、フッ化水素酸等)、またはポリマークラッディングの場合には選択された溶媒を、繊維内の特徴を保持している自立型粒子を製造するために、繊維クラッディングから粒子を除去するために用いることができる。
【実施例】
【0061】
[実施例1]
選択された繊維コア径を製造するための熱繊維プリフォームの延伸、再延伸およびテーパ加工
繊維プリフォームを構築し、プリフォームから延伸された繊維においてシリコン粒子を製造するためのシリコン繊維コアを製造した。プリフォームは、太さ8mmの石英クラッディングチューブ内にはめられた、Lattice Materials社製の、長さ10cm、直径2mmの幅のシリコンロッドを用いて製造され、チューブの底部を密封するために太いロッドにより真空融合し、シリコンロッドが挿入された後にチューブ内のポケットを閉鎖するために頂部を太いロッドで真空融合した。石英は、Technical Glass Products社(オハイオ州Painesville Twp.)から得た。繊維プリフォームは、繊維延伸塔内で、炉の中心の2130℃のホットゾーン延伸温度で、延伸供給速度v
f=1.2mm/分および延伸速度v
d=0.3m/分で延伸した。この熱繊維延伸により、外繊維径500μm、シリコンコア径130μmの繊維が得られた。
【0062】
次いで、シリコン繊維コアの直径を更に小さくするために、第2の熱延伸に対する第2のプリフォーム内に繊維を構成した。第2のプレフォームは、延伸した繊維が供給される、12mmの直径を有する第2のシリカクラッディングチューブを用いて設けられた。第2のシリカクラッディングチューブは、頂部および底部において真空融合された。繊維を含むこの第2のプリフォームは、繊維延伸塔のホットゾーン炉温度2095℃で、供給速度v
f=1.2mm/分、および延伸速度v
d=2m/分で延伸した。この延伸により、外繊維径280μm、およびシリコンコア太さ径4μmの繊維が製造された。次いで、繊維をインラインUV硬化コーティングシステムで保護した。コーティング層は、20〜40μmの厚みを有する、DSM Desotech社(イリノイ州Elgin)製、3471-3-14 (941-314) Desolite単一コーティングであった。
【0063】
この繊維再延伸工程で、再延伸工程の際にプリフォーム内のシリコンコアが分裂するのを回避するため、プリフォームは、可能な限り迅速に延伸塔のホットゾーンに供給しなければならず、延伸塔炉のホットゾーン内のシリコンコアの滞留時間を最小にするために可能な限り迅速に延伸しなければならないことがわかった。プリフォームの活性部位の中心の100〜200μmの材料のみがシリカ以外の材料を含むため、うまくプリフォームを延伸しながらこの条件を満たすことができ、それ故、プリフォームの亀裂のない延伸が達成された、この条件を満たすことができた。更に、延伸温度を、亀裂を防止するのに可能な最低温度2095℃に設定した。
【0064】
上記条件下による太さ130μmのSiコアを用いた繊維の再延伸により、延伸の開始において細いコアから開始し(最も細いサンプルは太さ0.5μmであった)、数メートルの間に成長し、(4±5%)μmで安定化した、外径280μmのSiコア繊維の60m長の連続部分がもたらされた。これは、従来の熱繊維プリフォームの延伸処理で実現できるコアサイズであって、安定に延伸でき、かつ制御可能に縮小できるもののうち、おおよそ最も細いサイズであることがわかっている。
【0065】
従来の繊維延伸処理は、繊維延伸速度v
dに対するプリフォーム供給速度v
fの比が2〜4桁の範囲であることによって特徴付けられ、これにより、繊維に対するプリフォームの断面スケール比が典型的には数十から数百となる。シリカ−クラッディング繊維を製造する場合、そのようなv
f/v
d比率は、粘性破壊現象により延伸中の繊維クラッディングの亀裂を回避するために、比較的低いシリカ粘度の条件下で実行される延伸を必要とする。一方、スケール比の実現可能な範囲は、繊維プリフォーム内のコアのサイズを、繊維へと減少する前に延伸コーンで生じるシリコンコア分裂を起こし得る直径に制限し、スケール比が大きくなるほど、コアおよびクラッディング間の界面張力γ=1.5J/m
2が分裂処理をより促進する。最後には、繊維長に沿ってランダムな直径の不均一なSiコアを有する繊維をもたらす。より速い供給速度は、Siがキャピラリーの不安定性に敏感である延伸コーンでのSiの滞留時間を短くすることにより、部分的にこの条件を補償する。しかし、これは、より太い繊維コアを製造する、減少した断面スケール比をもたらし得る。したがって、コアの太さを変えることなく維持するために、延伸速度を上昇させ、亀裂のない繊維延伸のためにシリカ粘度を更に低下させることを必要とする。
【0066】
従来の繊維の延伸の制限を克服するため、次いで、再延伸した繊維を、水素炎中で高い張力下で延伸することによる、トーチスケーリングに供した。第1のスケーリング処理中に、繊維は、0.020インチの小さな直径を有するトーチ出口の開口部を通って流速0.23l/分で流れる水素の燃焼に起因する水素炎のホットスポットを通して供給された。火炎を集中し、この低流速におけるフラッシュバック爆発を防ぐために、出口開口部の小さな直径を選択した。繊維は、速度3mm/分で供給し、速度15mm/分で延伸した。この処理により、繊維の太さ4μmのSiコアは3回再スケールされた。連続した再スケーリングのそれぞれについて、再スケール繊維の熱容量の低下を補償し、高張力状態を維持できるように、水素流を0.02l/分に減少した。
【0067】
これらのトーチスケーリング工程により、Siコアを無傷に維持しながら、かつ、繊維内にいかなる亀裂も誘導されることなく、繊維の直径は、
【数23】
の係数によってスケーリングされた。結果として、直径4ミクロンのSi−コア繊維から開始して、三重再スケーリング処理により、外径(24±1)μmおよびシリコンコア径(340±15)nmを有する連続的なSi−コア繊維が製造された。したがって、このトーチスケーリングおよび繊維プリフォーム延伸の組合せは、繊維の完全性を維持しながら、ナノスケールのコア繊維径の製造を可能にすることを実証した。繊維プリフォーム延伸およびトーチスケーリング処理は、本明細書における、Siコア等の繊維コアの所望の直径が達成されるまで複数回繰り返すことができる。太さ2mmのシリコンロッドから開始して、本明細書の処理により、コア径(340±15)nmを有する連続的なSi−コア繊維を製造した。
【0068】
[実施例2]
繊維速度により粒径を制御する繊維内粒子製造
実施例1の延伸された繊維の部分が、三重スケーリング処理に供されず、シリコンコア径4μmを有するシリカ−クラッド繊維として維持された。次いで、6つの異なる繊維部分を切断し、動的繊維内粒子製造処理に個々に供した。各処理では、繊維部分を0.3l/分の水素流および0.1l/分の酸素流の水素/酸素火炎のホットゾーンに通して供給した。6つの部分のそれぞれは、2μm/秒、10μm/秒、30μm/秒、50μm/秒、70μm/秒、および90μm/秒という異なる前述の繊維速度v
fで火炎に通して供給した。この繊維速度のみが異なり、水素および酸素流は一定に維持された。繊維長が火炎を通して供給されるにつれて、前述のような態様で、繊維内のシリコンコアの端部は火炎の位置で分裂し、繊維内に粒子の列が形成される。
【0069】
図8Aは、6つの繊維供給速度に対する、分裂期間λと呼ばれる粒子形成の測定周期(正方形でプロットに示す)の繊維供給速度の関数としてのプロット図である。
図8Bは、6つの繊維の供給速度に対する、製造された繊維内の球状粒子の測定された直径(正方形でプロットに示す)のプロット図である。各プロット図において、プロット図の底部の横棒は、試料測定のそれぞれについての標準偏差であって、分裂期間については10倍に拡大され、球体の直径の測定については1000倍に拡大されたものを示す。測定された球体の直径の誤差は、分裂期間および繊維コア太さの不安定性の両者に由来すると推測される。
【0070】
次いで、二重トーチスケーリング手順を行った実施例1の繊維長の1つを、20μm/秒の繊維供給速度で、本実施例の火炎条件下で繊維内粒子製造処理に供した。測定されたシリコン粒径は6μmであることがわかった。
【0071】
この測定データから、動的な熱的繊維内製造方法は繊維速度依存的であることが実証される。一定の加熱部位温度に対して、より遅い供給速度は、より速い供給速度よりもより小さいシリコン球の形成を誘発した。分裂期間は、繊維供給速度を変えることにより2の係数で低下し、次にシリコン球の直径を20%小さくした。したがって、粒径は、繊維供給速度によって制御可能であることが証明された。
【0072】
更なる実験的試験において、それぞれシリコンコアおよびシリカクラッディングを含む6つの繊維を別個に製造し、それぞれゲルマニウムコアおよびシリカクラッディングを含む2つの繊維を別個に製造した。これら8つの別個の繊維のそれぞれについて、水素/酸素火炎を用い、実験的繊維内粒子の製造を実施した。各繊維を用い、10μm/秒または20μm/秒のいずれかの繊維速度が用いられた。以下の表2は、繊維内粒子製造の条件、および各繊維について得られた繊維内球状粒子の測定された直径を示す。
【表2】
【0073】
これらの結果は、上記式(5)と一致し、粒径が、所与の繊維供給速度について繊維コア径に直接依存していることを実証している。
【0074】
[実施例3]
サブミクロンの直径の繊維内粒子の製造
最初に、シリカクラッディングおよび直径325nmのSiコアを含む外径23μmの繊維を製造することによって、実施例1の繊維プリフォーム延伸と三重スケーリング手順を経て、100nmスケールのシリコンSi球体の製造を実験的に実施した。シリコン粒子を製造するために、それぞれガス流速を0.17l/分および0.08l/分に設定した水素/酸素火炎のホットゾーンを通して、繊維供給速度10μm/秒で繊維を供給した。繊維内に粒子が製造された後、フッ化水素酸(HF)を使用したクラッディングの化学エッチングにより、球体をシリカクラッディングから放出させた。
【0075】
繊維クラッディングから放出された球体の走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像の統計分析により、球体の直径の分布が、中心が(460±24)nmにある正規分布に適合し、1cmの長さのスケールにわたって均一である平均ピッチ(1.4±0.3)μmを有することが示された。このピッチサイズは、キャピラリー分裂現象λ=πD=1μmにより実現可能な究極的限界に密接に近づいており、等温的な分裂によっては近づくことができない。1個の球体表面における電子後方散乱回折(EBSD)測定により、球体の経線にわたる回折パターンが示され、球体がダイヤモンド立方シリコンからなることを示唆していた。
【0076】
Si球体の構造についての深い知識を得るために、集束イオンビーム(FIB)を使用する透過型電子顕微鏡(TEM)のための断面試料を調製した。この処理では、粒子を含む繊維の部分を、直径3mmの300Cuメッシュ銅グリッド上のCF300−CU炭素膜(Electron Microscopy Sciences社製、ペンシルベニア州Hatfield)に固定した後、200kVでのJEOL社製2010FEG TEM(マサチューセッツ州Peabody)を用いた画像化を可能にするためにHFに浸漬した。次いで、球体のイオンビーム切片を、FEI社製Helios NanoLab 600(マサチューセッツ州Burlington)を用いて完成させた。代表的なSi球体のコアの制限視野電子回折(SAD)によれば、シリコンがダイヤモンド立方、かつ多結晶である大きな容積を含むいくつかの粒子を含むことが示された。
【0077】
平衡ダイヤモンド立方Si中の酸素溶融度が、1パーセントを超えないこと、および、多結晶Siの酸素の主な起源が粒子境界における酸化物形成であることは十分に確立している。粒子境界における酸化物形成の可能性を調査するために、エネルギー分散X線分光分析(EDX)を使用して、球体コア内の酸素の分布を定性的にマッピングした。EDXライン走査は粒子境界における酸素シグナルの増加を何ら示さず、Siコア中の酸素含有量はEDXの検出限界未満であり、多結晶性シリコン球体が電子応用のためには十分に純粋であり、酸素含有量が典型的な電子グレードのものに匹敵することを示した。
【0078】
TEMを使用し、全体のSi球体の微細構造を更に解明した。シリコン球体は、その球体表面に多孔質シェルを含むことがわかった。シェルは、コアから突き出た結晶性Si「フィンガー」からなり、Si球体とシリコンクラッディングとの間の界面で浸透したSi/シリカ混合物が形成されたところにあると推定される。「フィンガー」を形成する材料は、高分解能TEM像に基づいてその格子定数を得ることにより、Siであることが確認された。
【0079】
これらの浸透したフィンガーは、フィンガーが応力を解放するためのメカニズムを提供する場合には液状Siに対応する寸法のシリカ空洞内での結晶化に基づくSiの膨張の結果、もしくは、長引く熱処理に起因して生じるSiナノクラスターへのシリコンの沈殿に伴う、周囲のシリカへのSiの拡散の結果のいずれかであるか、または両者の組合せであるとの仮説が立てられた。
【0080】
[実施例4]
繊維内粒子クラスターの製造
2つの別個のシリカチューブを用いて、上記の手法で2つの分離されたSiロッドを含む繊維プリフォームを調製し、二重コア繊維に延伸した。Siロッドの1つはp型であり、電子アクセプタ濃度N
A=6.9x10
18cm
−3を有し、他方のSiロッドはn型であり、電子ドナー濃度N
D=1.6x10
19cm
−3を有していた。2つのロッドは、それぞれ直径が2mmであり、それぞれは12mmのシリカクラッディングを有するプリフォームにはめられていた。プリフォームは、延伸温度2130℃、ならびに0.6mm/分の供給速度v
fおよび0.6m/分の延伸速度v
dで熱延伸された。
【0081】
得られた繊維の一部分を、実施例1に記載の方法と同様の方法で新しいプリフォームに導入した。次いで、新しいプリフォームを、延伸温度2085℃で、供給速度v
f=1.2mm/分および延伸速度v
d=1.2m/分で延伸した。得られた繊維の断面は、2つのコア間でのクラッディングによる分離が保存されている、オリジナルのプリフォームの形状を維持していた。両者のコアは、同じ23μmの直径であった。
【0082】
次いで、この二重コア繊維の一部分を、それぞれ0.42l/分および0.20l/分の水素および酸素のガス流で生成した火炎中に、繊維供給速度v
f=20μm/秒で動的加熱処理に供した。これは、繊維内の2球体p−n接合粒子の鎖の製造をもたらした。シリカクラッディングをHF酸中に溶融することにより、2球体p−n接合粒子を繊維から放出させた。このp−n接合粒子の製造は、延伸された繊維における複数のコア間の距離が、製造される球体の先験的に定められた直径よりも小さい場合には、部分的に結合した球体を含む複雑な構造を形成することができることを実証した。
【0083】
各クラスターは、単一の大きな球体に再形成されなかった。その代わり、各クラスターは、2粒子クラスターあの形状のままであった。これは、おそらく、2つの接触した石けんの泡が結合して、その間に薄い膜を有する1つの「2重の泡」になることと同様に、結合した球体間の接触面の前述混合層膜の存在に起因する。結合したクラスターのp型とn型の半体との間に浸透したSi/シリカ複合材料の膜は、ドーパント拡散障壁として作用し、それによって接合部の電子的特性を維持している可能性がある。この層がなければ、ドーパントは、おそらく全体のクラスター容積にわたり完全に均質化したであろう。
【0084】
繊維から放出した後のp−n接合粒子の電流電圧特性を、2.4μmの2つのタングステンニードル(Cascade Microtech社製PTT-24-25)を使用し、手動のプローブポジショナー(Cascade Microtech社製、オレゴン州Beaverton)で球体表面と接触させて、実施した。Keithley 6517A Electrometerを使用してプローブ間に電圧を印加し、同時にKeithley 6487 Picoammeter(Keithley Instruments社製、オハイオ州Cleveland)を用いて電流を測定し、両者のユニットは、LabView custom interface(National Instruments社製、テキサス州Austin)により制御されている。
図9は、p−n接合粒子の電流−電圧特性のプロット図であり、本明細書で整流素子として操作される粒子の極性と一致する整流挙動を明瞭に示す。
【0085】
[実施例5]
加圧による、繊維内粒子のバンドギャップ制御
各粒子についての内部圧力および対応するバンドギャップシフトを測定するために、シリコン繊維内粒子、およびゲルマニウム繊維内粒子についてフーリエ変換赤外分光法(FTIR)を実施した。シリコン粒子は直径450μmの球体であり、ゲルマニウム粒子は直径35μmの球体であった。表2の最初の行に示すようにシリコン粒子を製造し、表2の最後の行に示すようにゲルマニウム粒子を製造した。
【0086】
透過/反射スペクトルを材料の繊維内粒子について測定し、「応力のある」スペクトルを、粒子が形成される、応力のない繊維内コア材料について測定したスペクトルと比較した。バンドギャップエネルギーよりも低いエネルギーの光子の透過/反射はフレネル反射係数により記述されるが、バンドギャップ光子エネルギー以上に高いものについては、吸収が急速に増加し、透過/反射が急激に低下する。上記で説明したSiおよびGeについては、式(8)および(9)に示したように、与えられた材料に対するバンドギャップ端のスペクトル位置は、適用された応力に比例してシフトする。
【0087】
各繊維は、繊維が顕微鏡の光軸に対して垂直に配列し、繊維のシリカクラッディング内に埋め込まれた球体粒子に虹彩(iris)を通してFTIRが照射され、画像平面における球体の中心部分への照射が制限されるように、顕微鏡の対物レンズ下に別個に配置された。別に、粒子形成に供されていないそれぞれの繊維の長さを画像化した。参照測定領域において応力が存在しないことを目視で確認した。
【0088】
Si繊維内球状粒子のFTIR測定により、粒子材料における0.050±00.005eVの赤色への負のバンドギャップシフトが示され、これは、球状Si粒子の体積内の平均内部圧力が3.5±0.4GPaであることに相当している。Ge繊維内球状粒子のFTIR測定により、0.090±0.005eVの青色への正のバンドギャップシフトが示され、これは、球状Ge粒子の体積内の平均内部圧力が1.8±0.1GPaであることに相当している。これらの測定は、高エネルギー光子の吸収が、間接遷移によって支配されると仮定される。これらの測定は、バンドギャップエネルギーのシフトを、繊維内の粒子材料に課すことができることを実験的に示している。
【0089】
[実施例6]
繊維内真空製造
銅のコアおよびシリカクラッディングを有する繊維を延伸し、Cuの繊維内球状粒子を製造した。繊維は、直径6μmの銅のコアを備えており、Cu粒子を製造するために、0.4l/分の水素流から得られる純粋な水素炎を通して10μm/秒で供給された。トーチ穴から繊維までの距離は3cmであった。得られた繊維内粒子の分裂期間は1.7mmであった。得られた粒子は、楕円形状を有し、その細長い軸は繊維軸と一致していた。シリカクラッディングは、各楕円形粒子の部位で変形し、搬送方向と反対方向に向いている極に、銅が存在しない真空の空隙を含んでいる容器を形成した。
【0090】
繊維クラッディング内のCu粒子の位置は、透過モードの光学顕微鏡を用いて分析した。銅粒子が、シリカクラッディングの硬化によって生成するドメイン内の体積の全体を占有していないことが観察された。更に、銅粒子の部位におけるシリカクラッディングの内壁が、銅の薄層でコーティングされていることが観察された。シリカ内壁へのこの銅の堆積は、粒子表面からの銅の著しい昇華と、それに続く粒子の固化を示す。この昇華により、昇華に十分な真空条件の実現が証明された。Cuの昇華圧力は6×10
−1Paであり、これは高真空度として従来定義される範囲の上限に接する。したがって、真空の状態は、繊維内での粒子形成後の繊維内粒子の物理的収縮によって、繊維内のドメインで達成されることが証明された。
【0091】
上記実施例および詳細な説明は、1以上の繊維コアを含む繊維に移動温度勾配を課すことによる繊維内粒子製造方法が、繰り返し可能で拡大縮小可能な方法で、粒子の製造の全体にわたり、正確な寸法制御を可能にすることを示した。繊維内で熱処理によって製造される、規則正しく、指向性があり、かつ、固定化された粒子は、広範囲の用途に用いることができる。粒子は、繊維クラッディングから除去され、例えば、内部圧力、材料組成および形態等の繊維内特性を保持する自立粒子を提供することができる。広範囲の用途は、それによって対処し得る。
【0092】
当業者は本発明の技術分野への貢献の趣旨および範囲を逸脱することなく上記の実施形態に各種の変形および付加を加えることができることを認識している。したがって、本発明により与えられる保護は本発明の主題および本発明の範囲の均等物に適正に及ぶとみなされるべきである。