特許第6157807号(P6157807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6157807
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】ユニット構造体の連結構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
   E04B1/348 Q
   E04B1/348 S
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-120839(P2012-120839)
(22)【出願日】2012年5月28日
(65)【公開番号】特開2013-245501(P2013-245501A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】502205237
【氏名又は名称】株式会社CAコーポ
(73)【特許権者】
【識別番号】591280197
【氏名又は名称】株式会社構造計画研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(72)【発明者】
【氏名】木尾 昌睦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 治
(72)【発明者】
【氏名】富澤 徹弥
(72)【発明者】
【氏名】平本 知樹
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−045044(JP,A)
【文献】 特開平06−220918(JP,A)
【文献】 特開2009−024419(JP,A)
【文献】 特開平09−328818(JP,A)
【文献】 特開平06−306954(JP,A)
【文献】 特表平03−501984(JP,A)
【文献】 特開平03−233042(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0182016(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空の柱を備えた2つのユニット構造体を、上下、又は横方向に隣接配置した状態で、一方の該ユニット構造体の柱と、他方の該ユニット構造体の柱とを、連結具を用いて位置決めするユニット構造体の連結構造であって、
少なくとも一方の前記ユニット構造体に開口部を備え、
前記連結具は、基板と、該基板の少なくとも一方の面に突設した連結部材と、を備え、
記連結部材を少なくとも一方の前記ユニット構造体に形成した開口部内に嵌合させた状態で、前記基板を前記各ユニット構造体との間で挟圧した構成を備え、
前記各ユニット構造体の各柱には前記開口部を有した連結ベース部を備え、
前記連結部材は、前記各連結部材を前記基板の両面に夫々突設した構成を備え、
前記各連結部材は、前記基板に一端を固定された胴部と、該胴部よりも大径であり、且つ該胴部の他端に同軸状に一体化された係止部と、を有し、
前記胴部は、前記連結ベース部の厚み以上の軸方向長を有し、且つ、前記開口部の中心から該開口部の内周縁までの最短距離よりも短い距離を半径とする第一の円の内側に収まる形状を有し、
前記係止部は、前記開口部中心と該開口部中心から該開口部の内周縁までの最長距離を半径とする第二の円の内側に収まる形状を有しており、
前記係止部は、該係止部の中心部から外径方向へ放射状に突出し、且つ周方向間隔が一定の複数の突片を備えており、
前記各突片は、前記係止部の中心部からの径方向寸法が前記第一の円の半径よりも長く、且つ前記第二の円の半径よりも短く、
前記連結部材をその軸方向一端側から見た形状と、前記開口部の開口形状は、回転対称形状を成しており、
前記基板は、該基板面の中心部から外周縁までの最短距離が前記第二の円の半径を超えており、
前記各突片は、少なくともその一部が前記基板面と直交する方向に沿って延びる板材であることを特徴とするユニット構造体の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット建物の構築に利用されるユニット構造体に関し、特に上下に積層されたり、横方向に隣接配置されるユニット構造体間を位置決め性よく、且つ強固に連結するのに好適な連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅建設に多用されるユニット工法は、ユニット建物を構成するフレームを含むユニット構造体(ユニットモジュール)を予め工場で生産し、それらのユニット構造体を建設現場に輸送し、建設現場では複数のユニット構造体同士を水平方向や垂直方向に接合することでユニット建物を構成するものであり、建設現場での作業が簡略化され、工期が短縮される等の利点がある。
【0003】
ところで、複数のユニット構造体を上下に積み上げることにより複数階の建造物を構築する際には、下階のユニット構造体と上階のユニット構造体との間を強固に固定することによりユニット構造体間の位置ずれ、落下等を防止する必要がある。
特許文献1には、下階ユニット構造体上に上階ユニット構造体を積み上げることにより構築されるユニット式建物における問題点を解決する手段が提案されている。即ち、この発明によれば、ユニット構造体外部からの作業によって下階ユニット構造体の外周部と上階ユニット構造体の外周部とを連結させることができるため、ユニット構造体内部(居室内側)に作業スペースを確保する必要がなくなり、上階ユニット構造体の床板の一部や下階ユニット構造体の天井板の一部を予め切り欠いておけば、後刻この切欠き部を塞ぐ作業を省略することが可能となる。
【0004】
しかし、この従来技術による上下ユニット構造体の連結構造は、工場での加工、組立を前提とした複雑な構成を備えており、4本の柱と上下の梁から成る軸組と、底板、天井板、及び側壁と、からなるシンプルな構造のユニット構造体には、そもそも適用することが不可能である。
また上下に積層されるユニット構造体の水平方向のずれを防止するため、下側階の上部に設けられた下側ベースプレート上には円柱状のスタッキングピンが設けられているが、上側階のユニット構造体の凹部にスタッキングピンを嵌入すると同時に上下階のユニット構造体及びベースプレートを貫通するようボルトを挿入し固定しなければならず、上下階ユニット構造体の水平方向の位置決めが難しいという課題があった。
また、特許文献2にもドッキングプレート上に設けたスタッキングピンで上下階のユニット構造体の水平方向を規定し、ユニット構造体を連結固定する技術が開示されているが、この発明においてもドッキングプレートを上下階ユニット構造体に固定しなければならず、上下階ユニット構造体の水平方向の位置決めが難しいという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3438588号
【特許文献2】特開2001−65061公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のようにユニット構造体を積み重ねた建造物を構築する場合には、上下階のユニット構造体の水平方向の位置決めが必要となり、従来の技術では下階のユニット構造体の上部にスタッキングピンを設けたドッキングプレートを取り付け、スタッキングピンが上階のユニット構造体下部に設けた凹部に嵌入されるよう配置するとともに、上下階のユニット構造体及びスタッキングプレートの全てを貫通するようボルトで固定する必要があり、タッキングピンを含むドッキングプレートと、上下階のユニット構造体のフレームに設けられたボルト穴との芯出し等、複雑な位置関係を調整しつつ上下階のユニット構造体を積層しなければならなかった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、ユニット構造体を重ねた建造物を構築するために上下階のユニット構造体の各柱の端部を位置決めする際に、上下階のユニット構造体を貫通するボルト穴の芯出しが不要で、簡単に上下階のユニットの水平方向の位置決めを可能とする技術を提供することを目的としている。
また、上記技術を横方向に隣接配置されるユニット構造体間の連結にも適用することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係るユニット構造体の連結構造は、複数の中空の柱を備えた2つのユニット構造体を、上下、又は横方向に隣接配置した状態で、一方の該ユニット構造体の柱と、他方の該ユニット構造体の柱とを、連結具を用いて位置決めするユニット構造体の連結構造であって、少なくとも一方の前記ユニット構造体に開口部を備え、前記連結具は、基板と、該基板の少なくとも一方の面に突設した連結部材と、を備え、前記連結部材を少なくとも一方の前記ユニット構造体に形成した開口部内に嵌合させた状態で、前記基板を前記各ユニット構造体との間で挟圧した構成を備え、前記各ユニット構造体の各柱には前記開口部を有した連結ベース部を備え、前記各連結部材は、前記基板に一端を固定された胴部と、該胴部よりも大径であり、且つ該胴部の他端に同軸状に一体化された係止部と、を有し、前記胴部は、前記連結ベース部の厚み以上の軸方向長を有し、且つ、前記開口部の中心から該開口部の内周縁までの最短距離よりも短い距離を半径とする第一の円の内側に収まる形状を有し、前記係止部は、前記開口部中心と該開口部中心から該開口部の内周縁までの最長距離を半径とする第二の円の内側に収まる形状を有しており、前記係止部は、該係止部の中心部から外径方向へ放射状に突出し、且つ周方向間隔が一定の複数の突片を備えており、前記各突片は、前記係止部の中心部からの径方向寸法が前記第一の円の半径よりも長く、且つ前記第二の円の半径よりも短く、前記連結部材をその軸方向一端側から見た形状と、前記開口部の開口形状は、回転対称形状を成しており、前記基板は、該基板面の中心部から外周縁までの最短距離が前記第二の円の半径を超えており、前記各突片は、少なくともその一部が前記基板面と直交する方向に沿って延びる板材である。
係止部の中心部から外径方向へ放射状に突出し、且つ周方向間隔が一定の複数の突片とは、図8乃至図12に示した連結具41の係止具49の突片49a、49bに相当しており、各突片は軸芯Cから外径方向へ放射状に突出し、且つ周方向間隔が一定である。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によれば、箱形のユニット構造体を積み重ねた建造物を構築するために上下階のユニット構造体の水平方向の位置決めを行う際、上下階のユニット構造体に設けたボルト穴等の芯出しを行うことなく上階ユニット構造体の柱の下端部と下階ユニット構造体の柱の上端部との間に連結部材で位置決めが可能となる。
更に少なくとも上階ユニット構造体の柱の下端部もしくは下階ユニット構造体の柱の上端部に開口部と、該開口部に嵌入する連結部材とを備えるので、上下階のユニット構造体に設けたボルト穴等の芯出しを行うことなく上階ユニット構造体の柱の下端部と下階ユニット構造体の柱の上端部との間に連結部材で位置決めが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る連結構造を備えたユニット構造体を組み付けた状態を示す軸組の構成図である。
図2】本発明の連結構造A部分の断面構造を示す原理説明図である。
図3】連結構造A部分の分解斜視図である。
図4】(a)及び(b)は、連結構造の正面縦断面図、及び平面図である。
図5】(a)及び(b)は連結具の構成を示す正面図、及び平面図である。
図6】2つのユニット構造体を横方向に隣接させた状態で連結具によって連結した構成を示す要部断面図である。
図7】(a)乃至(d)は本発明に係るユニット構造体の連結構造の他の実施の形態を示す図である。
図8】本発明に係るユニット構造体の連結構造に用いる連結具の他の実施の形態を示す斜視図である。
図9】連結具と柱の上端部に設けられた連結ベース部及び柱の下端部に夫々設けられた連結ベース部を示す正面図である。
図10】(a)及び(b)は連結具を各柱の一端に取り付けられた連結ベース部に設けた開口部に挿入する際の各開口部と連結部材との位置関係を平面方向から見た図である。
図11】(a)乃至(c)は本発明に係る連結具の他の実施の形態を示す斜視図、平面図である。
図12】(a)乃至(c)は本発明に係る連結具の他の実施の形態を示す図である。
図13】(a)及び(b)は本発明に係る連結ベース部の他の実施の形態を示す図である。
図14】開口部の形状の変形例を示す平面図である。
図15】(a)乃至(c)は図8に示した連結具を用いて上下階のユニット構造体の柱間を連結する際の連結状況を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図面に示した実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係るユニット構造体の連結構造を備えたユニット構造体を組み付けた状態を示す軸組の構成図である。
箱状の下階ユニット構造体1の上部に同形状の上階ユニット構造体50の底部を積載して各ユニット構造体の柱の端部間を固定する際に、本発明の連結構造Aを用いることにより簡単に上階と下階の各ユニット構造体間の水平方向の位置決めを行うことができる。
下階ユニット構造体1及び上階ユニット構造体50の各軸組は、夫々四隅に立設された中空四角柱状の柱2、52と、隣接し合う各柱2の上部間に架設された上梁3、隣接し合う各柱2の下部間に架設された下梁4、隣接し合う各柱52の上部間に架設された上梁53、及び隣接し合う各柱52の下部間に架設された下梁54と、から構成されている。
隣接し合う各柱間に形成される各側面には図示しない側板が夫々固定され、底面及び天面には夫々図示しない底板及び天板が固定される。
【0014】
本発明のユニット構造体の連結構造Aは、複数本の中空の柱(本例では少なくとも四隅に立設された中空の柱)2、52を備えた2つのユニット構造体1、50を、上下に積層した状態で、下階のユニット構造体の各柱2の上部と、上階の該ユニット構造体の各柱52の下部とを、連結具15を用いて位置決めするものであって、少なくとも下階のユニット構造体の各柱の上部と、上階のユニット構造体の各柱の下部に夫々開口部10、11を備え、連結具15は、基板18と、基板の上下両面に夫々対向して突設した連結部材17と、を備える。更に、各連結部材17を各ユニット構造体に形成した各開口部内に嵌合させた状態で、基板を下階のユニット構造体の上面と上階のユニット構造体の各柱の下面との間で挟圧した構成が特徴的である。
即ち、ユニット構造体の連結構造Aは、柱2、52を備えたユニット構造体1、50を上下に積層した状態で、下階ユニット構造体1の各柱2の上部と、上階ユニット構造体50の各柱52の下部とを位置決めしながら固定する連結構造において、下階のユニット構造体1の各柱2の上部、又は上階のユニット構造体の各柱52の下部の少なくとも何れか一方に取り付けられ、柱2の軸方向一端側から見た形状(平面形状)が四角形(多角形)、その他の任意の形状を成す開口部10(11)と、開口部10(11)に嵌合する連結具15とを備えている。
なお、各構造体、連結具は、鉄、その他の金属材料から構成される。
【0015】
図2は本発明の連結構造A部分の断面構造を示す原理説明図、図3は連結構造A部分の分解斜視図である。
下階のユニット構造体1の柱2の上端部且つ柱2の軸上であって、上梁3の上面13に多角形の開口部10が設けられる。上階ユニット構造体50の柱52の下端部であって、下梁54の下面55には、四角形(多角形)の開口部11が設けられる。各開口部10、11は同形状であり、互いに合致、整合する位置関係となるように構成されている。
連結具15は、上梁3の上面と下梁54の下面との間に挟まれた挟圧状態でボルトにより固定される基板18と、基板18の両面に一体的に突設されて各開口部10、11に嵌合する断面形状が四角形(多角形)の連結部材(位置決め用突起)17と、を備えている。
【0016】
上梁3の上面13、下梁54の下面、及び連結具15の基板18には夫々互いに整合し合う位置関係、形状のボルト挿通用の貫通孔13a、55a、18aが貫通形成されている。
上梁3と連結具15と下梁54との位置決めが完了した後は、各貫通孔13a、55a、18aにボルト19を差し込んでナットにより締結固定することにより、下階のユニット構造体1に対して連結具15を介して上階のユニット構造体50を連結することができる。
【0017】
本発明の実施形態では、上下階のユニット構造体の水平方向の位置決めを断面形状が多角形の突起である各連結部材17と、各連結部材17が夫々整合して嵌入する開口部10、11とで行うため、連結具15、或いはユニット構造体が回転することなく、一義的に上下階のユニット構造体の水平方向を位置決めすることができる。
なお、上記実施形態では下階のユニット構造体の上梁3及び上階のユニット構造体の下梁54に夫々開口部10、11を設けているが、下階ユニット構造体1の柱2の上端面、及び上階ユニット構造体50の柱52の下端面に夫々断面形状が多角形(連結部材の平面形状と相似形)の開口部を設け、各開口部に連結具の各連結部材17を嵌入するように構成しても良い。要するに各開口部10、11は柱2の上部、柱52の下部に相当する部位に設けることが好ましい。
【0018】
次に、図4(a)及び(b)は、連結構造の正面縦断面図、及び平面図であり、図5(a)及び(b)は連結具の構成を示す正面図、及び平面図である。
ここでは、図2図3に示した連結構造の原理を用いて構築した具体的な連結構造の例について説明する。なお、図1乃至3と同一部分には同一符号を付して説明する。
この具体例に係る連結構造Aでは、連結具15を、図示のように平面形状がL字状の基板18と、基板18の両面の対向する位置から夫々突設した連結部材17と、から構成している。連結部材17は内部が軸方向に貫通した四角筒状体としているが、密実な構造であってもよい。
【0019】
下階のユニット構造体1の柱2の上端面(梁3の上面)には連結部材17の平面形状(軸方向一端側から見た輪郭形状)と相似形で、且つ連結部材の輪郭よりも若干大きい開口面積を有した開口部10が貫通形成され、上階のユニット構造体50の柱52の下端面(梁54の下面)には連結部材17の平面形状と相似形で、且つ連結部材よりも若干大きい開口部11が貫通形成されている。
この連結具15を用いて上下の開口部10、11を連結する場合には、下階のユニット構造体1の上面に露出した各開口部10内に夫々連結具15の一方の連結部材17を嵌合させた状態で基板18下面を梁3の上面に載置する。この状態では、貫通孔13a、5a、18aをボルトにより仮固定する必要はない。次いで、クレーン等を用いて上階のユニット構造体50を吊り上げてユニット構造体1上に載置する。この際に、ユニット構造体50の下面の各開口部11内に各連結具の上側の連結部材17が嵌合するように位置合わせを行う。その後、貫通孔13a、5a、18a内にボルトを貫通させてナットで締結することにより、両ユニット構造体間の連結が完了する。
【0020】
本実施形態によれば、ボルト等を用いて連結具15をユニット構造体1上に仮止めしておく必要がないため、組立工数を低減できる。また、格別のジョイント部材を用いて上下の開口部間を連結する場合には、柱や梁の適所に形成した作業用の大きな窓を介して開口部間にジョイント部材を締結する必要があるが、本発明では上下の柱間(梁間)で連結具を挟み込むだけで仮止め、位置決めが完了するので工数を低減できる。また、柱等に作業用の窓を形成することによる強度低下、柱加工作業手数の増大を解消できる。
【0021】
また、上記実施形態例では各連結部材17として、その軸方向に直交する方向の断面形状が四角形のものを用いて説明したが、これに限定されるものではなく、断面形状(平面形状)が三角形、その他の多角形とすることができる。また、各連結部材の平面形状と相似形状の開口部を上梁3及び下梁54、或いは柱2の上端部及び柱52の下端部に設けることで連結具15が回転することなく上下階のユニット構造体の水平方向の位置決めを行うことができる。
また、各連結部材17の先端面の周縁を面取りすることにより開口部内に差込み易くすることも可能である。この観点からすれば、極端な例としては連結部材の正面形状を多角錐、円錐(先端面に平坦面を有する錐形状を含む)等々としてもよい。
また、連結部材17の平面形状は、必ずしも多角形である必要はない、円筒状、楕円筒形状であっても、開口形状が相似形である開口部内に嵌合した際にその外周面で開口部内周縁と係合することができれば、水平方向への位置決めは十分になし得るからである。例えば、連結部材を円筒形状とした場合には開口部の開口形状を円形とすることになるため、連結部材が開口部内で回転可能になるが、連結部材の位置決めは下側の開口部10内で確実に行われるので、上側のユニット構造体側の開口部11を位置合わせして連結部材と嵌合させることが容易となる。なお、開口部の開口形状とは、開口部中心を通る軸線の一端側から見た開口部内周縁の輪郭形状である。
【0022】
また、図2図3では連結部材17として密実な構成例を示したが、図4図5のように連結部材17に軸方向に貫通する穴を形成することにより中空筒状体としてもよい。
また、連結部材17は基板18の一方の面のみに突設してもよい。即ち、例えば基板18の上面のみに連結部材17を突設した連結具15を用いた場合には、基板18の下面を下階のユニット構造体の上面にボルト固定する。この際に、上側に突出した単一の連結部材17は、積載される上階のユニット構造体50の下面の開口部11と整合する位置関係にあるため、ユニット構造体50を整合性よくユニット構造体1上に積載することにより、連結部材17を開口部11内に嵌合させることができる。なお、連結部材17を基板の一方のみに設ける構成は、以下の全ての連結構造に適用することができる。
このように連結部材17を基板の一面のみに設ける場合には、連結部材が嵌合する開口部は上階のユニット構造体50の下面にのみ設ければよい。
【0023】
以上のように本発明の連結構造Aによれば、開口部間を連結具15により位置決めすることができるため、ボルトを用いた仮止めなどが不要となる。従来、柱2の上部と柱52の下部とを接合する際に、各柱内部にボルト締め等の作業を行う必要がある場合には、何れか一方の柱の側面に作業用の窓を開口する必要があったが、このような窓は比較的大きな開口となるため、柱の強度を低下させたり、柱を製造する際の加工手数を増大させる原因となる。
これに対して本発明では、柱間の対向面に連結具を挟み込むだけで開口部間が連結部材17によって位置決めされるため、窓を介した柱の内部でのボルト締結作業などが一切不要となり、工数を低減し、柱の強度低下、加工手数の増大、を解消できる。また、窓を形成しないため、柱の強度を高め、製造手数を削減できる。
【0024】
また、上記実施形態では、下階のユニット構造体上に上階のユニット構造体を積載する場合の連結構造に本発明を適用した例を示したが、本発明は横方向に連結されるユニット構造体の接合面にも適用することができる。即ち、この場合には横方向に隣接する2つのユニット構造体の対向し合う柱、或いは梁の端面に夫々開口部を形成し、この開口部内に連結具15を装着することにより、両ユニット構造体を容易に位置決めして横方向への位置ずれを解消できる。
即ち、図6は2つのユニット構造体1Aと1Bとを横方向に隣接させた状態で連結具15によって連結した構成を示す要部断面図である。なお、図4図5と同一部分には同一符号を付して説明する。
【0025】
この連結構造Aは、少なくとも四隅に立設された中空の柱を備えた2つのユニット構造体1A、1Bを横方向に隣接させた状態で、一方のユニット構造体の柱の外側面と、他方のユニット構造体の柱の外側面とを、連結具15を用いて位置決めするものにおいて、各ユニット構造体の各柱の対向する外側面に夫々開口部10を備え、連結具15は、基板18と、該基板の同位置における両面に夫々対向して突設した連結部材17と、を備え、各連結部材を各ユニット構造体に形成した各開口部内に嵌合させた状態で、基板を両ユニット構造体の各柱の外側面間で挟圧したことを特徴とするものである。
即ち、隣接し合う2つの柱2A、2Bの対向面には開口部10が形成されており、各開口部10内に連結部材17を嵌合させた状態で、各柱間に連結具15を挟み込むことにより、両ユニット構造体1A、1B間の連結構造Aを構築している。
この連結構造Aによれば、隣接し合うユニット構造体間の横方向位置決めをジョイント部材や、ボルトによる仮固定を用いずに行うことができる。
【0026】
このように本発明の連結構造Aは、上下方向に積層したユニット構造体と、横方向に隣接配置したユニット構造体間の連結に使用することができる。
即ち、上記各実施形態に係るユニット構造体の連結構造Aは、少なくとも四隅に立設された中空の柱を備えた2つのユニット構造体を、上下、又は横方向に隣接配置した状態で、一方の該ユニット構造体の各柱の外面適所と、他方の該ユニット構造体の各柱の外面適所とを、連結具15を用いて位置決めするものであって、一方のユニット構造体と、他方のユニット構造体に夫々開口部10、11を備え、連結具15は、基板18と、基板の両面に夫々突設した連結部材17と、を備えている。更に、各連結部材17を各ユニット構造体に形成した各開口部内に嵌合させた状態で、基板18を各ユニット構造体との間で挟圧したことを特徴とするものである。
【0027】
次に、図7(a)乃至(d)は本発明に係るユニット構造体の連結構造Aの他の実施の形態を示す図であり、図7(a)は上下階のユニット構造体の柱の連結部分を示した分解斜視図、図7(b)は上下階のユニット構造体の柱を連結した後の状態を示す斜視図である。中空四角柱状の柱2、52の夫々上端及び下端の開口部2a、52aの夫々内部に接合用サヤ管(連結具)31を挿入することで柱2及び52の水平方向の位置決めを行うことができる。図7(b)に示した組み付け状態とした後で、ボルト33、ナットを各柱2、52及び接合用サヤ管31の側面に設けた各ネジ穴を利用して螺着してこれらを固定する。
接合用サヤ管(連結具)31は、基板31aの上下面に連結部材31bを突出させた構成を有している点において上記実施形態の連結具と同等である。各連結部材31bは、各開口部2a、52a内に嵌合されて位置決めを行う。本例では、連結部材31b、開口部2a、52aの平面形状を四角形としたが、四角形以外の多角形、円形、楕円形、長円形等々、他の形状であっても良い。
【0028】
図7(c)は2つのユニット構造体の二本の柱間を連結した状態を示す斜視図及びその連結に用いられる接合用サヤ管35(基板35a、連結部材35b)を示した図であり、この接合用サヤ管35は、大面積の基板35aの片面に所定のギャップを介して2つの連結部材35bを突設すると共に、基板の他面に前記各連結部材と対向するように他の2つの連結部材35bを突設している。このギャップ内には各柱を構成する側板が入り込む。
図7(d)は4つのユニット構造体の4本の柱が集合する場所において上下階のユニット構造体の柱を連結した状態を示す斜視図及びその連結に用いられる接合用サヤ管37(基板37a、連結部材37b)を示した図である。その具体的な構造は、接合用サヤ管35と同様である。
このようにユニット構造体の中空の柱の内部に挿入され、上下階のユニット構造体の柱を連結する接合用サヤ管(連結具)31、35、37を用いることで、容易、且つ正確に水平方向の位置決めを行うことができる。
【0029】
次に、図8は本発明に係るユニット構造体の連結構造に用いる連結具の他の実施の形態を示す斜視図であり、図9は連結具41とユニット構造体の中空四角柱状の柱2の上端部に設けられた連結ベース部55、及び柱52の下端部に夫々設けられた連結ベース部56とを示す正面図である。また、図10(a)は連結具41を各柱2、52の一端に取り付けられた連結ベース部55、56に設けた開口部55a、56aに挿入する際の各開口部と連結部材45との位置関係を平面方向からみた図であり、図10(b)は図10(a)に示した状態から連結具41の基板43を時計方向或いは反時計方向のいずれかに45度回転させた際の各連結ベース部の開口部と連結部材45との位置関係を平面方向から見た図である。
なお、図1図2図3等を併せて参照しながら説明する。
【0030】
本実施形態に係る連結構造Aでは、各ユニット構造体1、50の各柱2、52は、開口部55a、56aを有した連結ベース部55、56を備え、連結具41は、各連結部材45を基板43の同位置における両面に夫々突設した構成を備え、各連結部材は、基板面に一端を固定された小径の胴部47と、該胴部よりも大径であり、且つ該胴部の他端に同軸状に一体化された大径の係止部49と、を有する。各胴部47は、連結ベース部55、56の厚み以上の軸方向長を有し、且つ、開口部55a、56aの中心(開口部中心)60から開口部の内周縁までの最短距離を半径r1とする第一の円61の内側に収まる形状を有し、係止部49は、開口部中心60から該開口部の内周縁までの最長距離を半径r2とする第二の円63の内側に収まる形状を有している。なお、胴部47は、開口部内に位置している時に回転することができるように形状、寸法が設定されている。係止部49は、開口部中心から最長距離にある内周縁を利用することにより開口部内を軸方向へ進退自在になる。
【0031】
以下、本実施形態に係るユニット構造体の連結構造を更に詳細に説明する。
連結具41は、基板43と、基板43の上下両面から夫々対称的に突出して形成された同一形状の連結部材45と、を有する。連結部材45は、基板43の両面に夫々一端を固定された小径の胴部47と、各胴部47の他端部に夫々同軸上に積層一体化された大径の係止部49と、を有している。開口部55a、56a、及び連結部材45(胴部47、係止部49)は、何れも軸方向から見た形状が回転対称形状を有している。
胴部47は開口部55a、56a内に嵌合したときに開口部内で回転可能となる形状であれば、どのような形状であってもよい。また、胴部47の軸方向長は、開口部を設けた連結ベース部55、56の肉厚よりも長く設定する。
係止部49は、開口部に対する回転方向角度が一定の状態にある時(図10(a)の状態)には開口部内に挿入することができるが、その角度よりも所定角度以上ずれると(図10(b)の状態)開口部の内周縁を外側に越えてしまい開口部内に挿入できなくなる。つまり、係止部49の軸心と開口部55a、56aの中心とを一致させた状態で、係止部49を軸方向へ移動させて開口部内に挿入する際に、係止部の最大径方向長部分が開口部の最大径方向長部分(対角線方向)と合致するように挿入すれば、係止部は開口部に挿入できるが、その角度よりもずれると挿入不能となる。
【0032】
次に、下階の柱2の連結ベース部55に対して連結部材45を組み付ける手順を平面方向から見た図を用いて説明するが、上階の柱52の連結ベース部56についても同様である。
連結ベース部55、56には柱2または柱52の軸方向一端側(平面視方向)から見た形状が四角形(多角形)の開口部55a、56aが設けられている。開口部55a、56aは平面形状(開口形状)が同形状、且つ同角度方向を向いており、下階側ユニット構造体の上面に上階側ユニット構造体を整合性よく着座させた際には、各辺、各角隅部同士が互いに合致し、整合、連通する位置関係にある。
下階のユニット構造体1上に上階のユニット構造体50を組み付けるに先立ち、下階のユニット構造体の柱2の上端部、即ち連結ベース部55の開口部55a内に連結具41の連結部材45の一方(下方)を挿入する作業を実施する。全ての開口部55a内に連結具の連結部材45を差し込んで差込み時の角度(回転方向角度)を維持しつつ、クレーン等の重機によって吊り下げた上階のユニット構造体50の底部を下階のユニット構造体1の上面に位置関係を整合させながら下降させて着座させる。この際に、上階のユニット構造体50を垂直に下降させることにより各柱52の底面の開口部56a内に連結具の上側の連結部材45をスムーズに差し込むことが可能となる。このようにして両開口部55a、56a内に連結具の各連結部材を差し込んだ後で、工具により連結具の基板を所定角度(45度)回転させることにより、上下の連結ベース部55、56間をロックすることができる。
【0033】
以下、連結具による固定手順について詳細に説明する。
まず、下側の開口部55a内に連結具41の下方の連結部材45を挿入する。本実施例では開口部55aは四角形であるのに対して、平面方向から見た連結部材45の係止部49の投影形状の輪郭(十字形状)が開口部55aの内周縁の内側に収まるので、連結部材45の係止部49を連結ベース部55の開口部55a内に挿入できる。
本例に係る係止部49の平面形状は十字形状をなしており、対向する2つの突片49a、49bの端部間の距離Lは開口部55a(56a)の対角線長を下回っている。このため、各突片49a、49bが開口部の対角線に沿うように平面方向から連結具41を開口部内に差し込むことにより係止部49を開口部内にスムーズに挿入することができる。胴部47は開口部よりも大幅に小径であり、開口部を構成する板材の肉厚を越えた軸方向長を有しているため、胴部47が開口部内に入った状態で連結具41を開口部に対して回転させることが可能となる。
【0034】
次に、係止部49と開口部55a(56a)との関係を図10に基づいて説明する。
柱2の上端面に形成された平面形状が正方形の開口部55aの中心を開口部中心60とし、開口部中心60から開口部内周縁までの最短距離を半径r1とする第一の円を61とし、一方、係止部49の平面形状の輪郭において、開口部中心60から最も遠い開口部内周縁までの距離を半径r2とする第二の円を63とする。
また、連結部材45の中心部(軸心)Cと、該中心部Cと係止部49を構成する各突片49a、94bの先端部との間の距離を半径r3とする円を第3の円64とする。
第一の円61の直径r1、第二の円63の直径r2、第三の円64の直径r3の関係は、r1<r2、r3となる。
各突片49a、94bの先端部は、第一の円61と第二の円63との間に位置するように寸法、形状が設定されており、各突片が開口部中心60から最長位置にある内周縁部位(四隅)に向いている時に、開口部内を進退できるように構成されている。
連結部材45を開口部内に挿入した際には、回転対称形状である開口部中心60と、同じく回転対称形状である連結部材の軸心Cとをほぼ一致させることができる。従って、胴部47を開口内に位置させて連結具41を開口部内で回転させると、連結部材45はほぼ開口部中心60を中心として回転することができる。なお、連結部材45の回転中心と開口部中心とが必ずしも一致しなければ回転できない訳ではない。
【0035】
本実施例にかかる連結具41は、柱2の一端に取り付けられた開口部55a内に図10に示した姿勢で係止部49を挿入し、且つ、挿入後には基板43を時計方向或いは反時計方向のいずれかに45度回転させる必要があるので、胴部47の平面方向からみた投影形状の輪郭は小径の第一の円61の内側に位置しなければならない。更に、基板43を45度回転させた後は、係止部49の一部(突片49a、49b)が連結ベース部55(開口部55a周縁)から外径方向へ突出した状態となって、連結具41の垂直方向(連結ベース部の厚さ方向)への動き(開口部からの抜け落ち)を規制する役割を果たす必要がある。このため、開口部中心60から最も遠い開口部内周縁部位を通り、且つ開口部中心60を中心とする円の軌跡である第二の円63の半径r2は、第一の円61の半径r1よりも長く、且つ、図10(b)のように突片49a、49bが連結ベース部55上に係止される。これにより、開口部55aの内周縁を越えて外径側に係止部49の突片49a、49bが突出して係止される。
【0036】
全ての柱2の開口部55a内に各連結具の下側の係止部49を係止させた後で、連結具を回動させることなく、上側のユニット構造体50を下側のユニット構造体1上に下降させる。この際、上側のユニット構造体50の底面の四隅にある開口部56aは、下側のユニット構造体1の上面四隅にある開口部55a内にセットされた各連結具41の上側の連結部材45に対してスムーズに入り込む位置関係にあるため、連結具の基板43を間に挟んだ状態で両ユニット構造体が積層された状態となる。
上記の如き、構成上の条件を満たすことで、各係止部49を各開口部内に挿入することができ、また挿入後に開口部内で連結具41を回転させることで係止部49の突片49a、49bが開口部の周縁を越えて外径方向へ突出した状態となり、開口部から軸方向へ抜け落ちることがなくなる。
この連結具を用いることにより、各ユニット構造体の水平方向への位置ずれのみならず、上下方向への位置ずれも防止することが可能となる。
【0037】
図11(a)乃至(c)は本発明に係る連結具の他の実施の形態を示す斜視図、平面図である。
連結具41は、基板43の両面に対称な位置関係で突設された2つの連結部材45を有している。連結部材45は、小径の胴部47と、胴部47上に胴部と同一軸心状に一体化された大径の係止部49と、を備えている。
連結具41が図8に示した連結具41と違う点は、係止部49を構成する突片49a、49bの外側面を先端に向かう程、内側に向かって傾斜するように(テーパー状に)した点にある。言い換えれば、本実施形態の連結具41は、係止部49の軸方向と直交する方向の断面積が係止部49の先端部に近づくに連れて漸減するよう構成したものである。この連結具41の利用方法は前記実施形態に係る連結具41と同様である。すなわち、係止部49を連結ベース部55の開口部55aに挿入しやすくするため、係止部49の端部の断面積が小さく形成されている。このような構成の連結具においても、係止部49を連結ベース部55の開口部55aに挿入し、胴部47が開口内に達した時点で基板43を時計方向或いは反時計方向のいずれかに45度回転させることで連結部材45の一部である胴部47側の下端が連結ベース部55の一端と当接し、柱2または柱52の垂直方向の動きを規制することができる。
【0038】
次に、図12(a)乃至(c)は本発明に係る連結具41の他の実施の形態を示す図である。
この連結具41は、基板43の両面に対称な位置関係で突設された2つの連結部材45を有している。連結部材45は、小径の胴部47と、胴部47上に胴部と同一軸心状に一体化された大径の係止部49と、を備えている。
この連結具41は、連結部材45を構成する係止部49を120度間隔で突設した3つの突片49cから構成している。換言すれば、係止部49を軸方向から見た投影形状(平面形状)が軸の中心から三方向に突片49cを突設し、その輪郭が略星形である。また、柱2の上端部及び柱52の下端部に設けられた開口部55a、56aの平面形状は係止部49を差し込むことができるように正三角形となっている。係止部49を開口部に差し込んだ後で回転させることにより、係止部を各開口部の周縁に係止させる点では上記実施形態と同様である。
各突片49cの外側面は図11の実施形態と同様に先端方向へ向かう程内側に傾斜したテーパー状としてもよい。
【0039】
本実施形態では、係止部49は、中心部Cから突片49cの先端部までの距離r3が、開口部中心60から最も遠い内周縁部位と開口部中心60との距離を半径r2とする第二の円63の内側に収まり、且つ同心円である第一の円61の外径側に位置するように構成されている。このため、各突片49cが三角形の開口部の頂部を向くように係止部49を開口部内に差し込む場合には開口部内を軸方向へ向けて進退することができる。
また、胴部47の柱の軸方向から見た投影形状(平面形状)の輪郭は、柱の軸方向と直交する平面上の開口部55aの中心である開口部中心60から開口部55aの内周縁までの最短距離を半径r1とする第一の円61の内側に収まるよう構成されている。これにより係止部49を連結ベース部55の開口部55aに挿入後、基板43を時計方向或いは反時計方向のいずれかに回転させることができる。
係止部49を開口部内に差し込んでから胴部47が開口部内に達した時点で、連結具を60度一方向に回転させると、突片49cが開口部55aの周縁面と当接し、柱2に対する連結具41の軸方向への動きを規制できる。
実際の組み付け作業においては、柱2の開口部55a内に一方の係止部49を差し込んでから、その状態のままで上側のユニット構造体50の開口部56aを上側の係止部49に嵌合させる。この状態では基板43が両ユニット構造体間に挟圧された状態となるが、この状態で連結具41を60度回転させることにより、各突片49cが両開口部55a、56aの周縁面に係止された状態となる。
【0040】
次に、図13(a)及び(b)は本発明に係る連結ベース部55の他の実施の形態を示す図であり、連結ベース部55には開口部55aに挿入された連結部材45の係止部49の周方向への動き(回転)を規制するための規制突起(回転規制部)65が設けられている。このように係止部49の動きを制御する規制突起65を設けることで、係止部49を連結ベース部55の開口部55aに挿入した後、基板43を軸方向から見て時計周りのみに回転させることができ、且つ45度回転させた後はそれ以上回転しないよう規制することができる。したがって、回転過多により胴部47側の下端と連結ベース部55の一端との当接面積が減少し、連結部材45による連結機能が損なわれることを防ぐことができる。
なお、図12に示した実施形態に係る三角形状の開口部55aにおいても係止部49の動きを規制する規制突起65を周縁部に設け、係止部49が必要以上回転しないよう規制するよう構成しても良い。
【0041】
また、規制突起(回転規制部)65により規制される連結具41の回転方向は、全ての開口部について同一方向とせずに、例えば対角線に沿って対向する2つの開口部については逆方向とすることも一方法である。例えば、一つの開口部55aについては図13のように時計回り方向への回動を規制するように規制突起65を設ける一方で、この開口部と対角位置にある他の開口部55aについては反時計回り方向への回動を規制するように規制突起を設けることにより、上下、又は横方向にユニット構造体を隣接させて連結した後に、両ユニット構造体が各連結具41を中心として回転方向へ位置ずれすることを防止できる。
【0042】
次に、図14は開口部の形状の変形例を示す平面図である。
開口部55a、56aは、開口部中心60と開口部の内周縁のうちで開口部中心60からの距離が最も近い点とを結ぶ半径r1を有した第一の円61と、開口部中心60と開口部の内周縁のうちで開口部中心60から最も遠い点を結ぶ半径r2を有した第二の円63とを有している。
このため、上記の各実施形態における連結具41の係止部49は、開口部内周縁に設けた外径方向へ突出した凹所55bを介して開口部内に差し込まれることが可能である。また、胴部47は第一の円61内に収まるため、開口部内で回転することができる。
このため、係止部49を凹所55bを介して開口部内に挿入してから、胴部47を開口部内に移行させて回転させることにより、係止部を凹所55b以外の開口部内周縁に係止することができる。
なお、図8以降の各実施形態においては、開口部の開口形状や連結部材の端面形状を回転対称形状とした例を示したが、係止部を開口部内に差し込んでから、胴部を中心として回転させることにより、係止部の突片を開口部周縁に係止することができる形状であれば、回転対称形状でなくてもよい。
【0043】
図15(a)乃至(c)は図8に示した連結具41を用いて上下階のユニット構造体の垂直方向の柱2と52とを連結する際の連結状況を説明するための図である。まず、図15(a)に示すように、柱2の上端部の開口部55a内に連結具41の下側の係止部49を挿入する。続いて、(b)に示すように上階のユニット構造体50の開口部56a内に上側の係止部49が嵌合するようにユニット構造体50を重ねる。この状態では連結具41の基板43は各柱2、52の接合面から側方に突出した状態となっている。続いて、(c)に示すように基板43の各辺が柱の上下端部の各辺と一致するまで胴部47を中心として基板43を回転させることで係止部49の突片49a、49bが各開口部55a、56aの周縁から外径方向へ突出した状態となり、柱2及び52の軸方向の動きを規制することができる。つまり、図15(b)において上下のユニット構造体の端縁から突出した基板の角部をユニット構造体間に押し込むことにより、係止部49による開口部間のロックが完了する。なお、符号81は連結具41の基板43の厚みと同じ厚みを有するスペーサーであり、必要に応じて使用する。
【0044】
また、符号85は、各ユニット構造体の柱の上部に開口形成された吊り上げ用の穴であり、クレーン等のフックを個々に差し込んでユニット構造体を持ち上げる際に使用する。
このように上下階を構成するユニット構造体を積層して水平方向の位置決めを行うと同時にユニット構造体の柱の上下方向の動きを規制し、その後、上下階のユニット構造体を固定するボルト等で固定することで、上下階のユニット構造体を強固に固定することが可能となる。
なお、図8以降の各実施形態に係る連結構造Aは、図6に示した如くユニット構造体を横方向へ連結する場合にも適用することができる。
このように本発明によれば、ユニット構造体を重ねた建造物を構築するために上下階のユニット構造体の各柱の端部を位置決めする際に、上下階のユニット構造体を貫通するボルト穴の芯出しが不要で、簡単に上下階のユニットの水平方向の位置決めが可能となる。
また、ユニット構造体を横方向に隣接させた状態で連結具により連結する場合には、上下方向、水平方向への位置ずれを防止することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…ユニット構造体、2…柱、2a…開口部、3…上梁、10、11…開口部、13…上面、13a…貫通孔、15…連結具、17…連結部材、18…基板、19…ボルト、1A、1B…ユニット構造体、31…接合用サヤ管、31a…基板、31b…連結部材、33…ボルト、35…接合用サヤ管、35a…基板、35b…連結部材、37…接合用サヤ管、37a…基板、37b…連結部材、41…連結具、43…基板、45…連結部材、47…胴部、49…係止部、49a、49b…突片、49c…突片、50…ユニット構造体、52…柱、53…上梁、54…下梁、55…連結ベース部、55a…開口部、55b…凹所、55b…開口部、56…連結ベース部、56a…開口部、60…開口部中心、65…規制突起。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15