【文献】
JOHNNY C. HO, ROIE YERUSHALMI,Controlled nanoscale doping of semiconductors via molecular monolayers,nature materials,2008年 1月,Vol. 7,p.62-67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
まず、本発明に係る基板処理方法の実施に使用する各種基板処理装置についての概略を説明する。
図1は、雰囲気炉10の概略構成を示す図である。雰囲気炉10は、基板Wを水素雰囲気中にて加熱する基板処理装置である。雰囲気炉10は、炉体14の内部に反応容器11および発熱体12を備える。また、雰囲気炉10は、反応容器11内に水素ガス(H
2)を含む処理ガスを供給する処理ガス供給機構21と、反応容器11からの気体の排気を行う排気機構16と、を備える。
【0018】
雰囲気炉10の炉体14は、例えばセラミックスなどの耐熱性に優れた素材にて形成された筐体である。反応容器11は、炉体14の内部に設置され、基板Wを収容する容器である。反応容器11は、耐熱性に優れ、かつ、水素との反応性に乏しい素材(例えば、アルミナ(Al
2O
3)等)にて形成するのが好ましい。反応容器11の内部には、基板Wを保持する基板保持部13が設けられている。基板保持部13も反応容器11と同様の耐熱性に優れて反応性に乏しい素材にて形成するのが好ましい。
【0019】
反応容器11には、図示省略の開口部が設けられており、その開口部を介して反応容器11に対する基板Wの搬出入が可能となる。反応容器11の当該開口部が閉鎖された状態では、反応容器11の内部が密閉された処理空間15となる。
【0020】
炉体14の内側であって反応容器11の周囲には発熱体12が配置されている。発熱体12は、通電によって発熱する抵抗発熱体(例えば、モリブデンヒータなど)である。なお、
図1では、反応容器11の上下に発熱体12が設けられているが、反応容器11の側方に発熱体12を設けるようにしても良い。
【0021】
処理ガス供給機構21は、水素ガス供給源22、不活性ガス供給源23、バルブ24,25、流量調整弁26,27および供給配管28を備える。供給配管28の先端側は反応容器11内の処理空間15に連通接続されている。供給配管28の基端側は二叉に分岐され、その一方は水素ガス供給源22に接続され、他方は不活性ガス供給源23に接続される。供給配管28の二叉に分岐された経路のうち水素ガス供給源22に接続された配管にはバルブ24および流量調整弁26が介挿され、不活性ガス供給源23に接続された配管にはバルブ25および流量調整弁27が介挿されている。
【0022】
バルブ25が開放されると、不活性ガス供給源23から供給配管28を通って処理空間15にヘリウムガス(He)が供給される。供給されるヘリウムガスの流量は流量調整弁27によって調整される。また、バルブ24が開放されると、水素ガス供給源22から供給配管28を通って処理空間15に水素ガスが供給される。供給される水素ガスの流量は流量調整弁26によって調整される。これらバルブ24およびバルブ25の双方を開放することによって、反応容器11内の処理空間15に水素ガスとヘリウムガスとの混合ガスを供給して水素雰囲気を形成することができる。なお、本明細書において「水素雰囲気」とは、水素ガスを含む雰囲気である。混合ガス中における水素ガスの濃度は、流量調整弁26および流量調整弁27によって水素ガスおよびヘリウムガスの供給流量を調整することによって規定することができる。
【0023】
排気機構16は、真空ポンプ17、排気配管18およびバルブ19を備える。排気配管18の先端側は反応容器11内の処理空間15に連通接続され、基端側は真空ポンプ17に接続される。排気配管18の経路途中にバルブ19が設けられる。真空ポンプ17を作動させつつ、バルブ19を開放することによって、処理空間15の雰囲気を装置外に排出することができる。処理ガス供給機構21からガス供給を行うことなく、排気機構16によって排気を行うことにより、処理空間15を真空とすることも可能である。これら処理ガス供給機構21および排気機構16によって、処理空間15の雰囲気を調整することができる。
【0024】
雰囲気炉10には、上述の構成以外にも、処理空間15中の水素濃度を測定する濃度計、処理空間15の温度を測定する温度センサ、炉体14の過熱を防止するための冷却機構などが設けられている。
【0025】
図2は、液供給装置30の概略構成を示す図である。液供給装置30は、基板Wの表面にドーパントを含む薬液(ドーパント液)を供給する基板処理装置である。液供給装置30は、筐体31の内部に、スピンチャック32、カップ35、および、ノズル36などを備える。筐体31には図示省略の開口部とシャッター機構とが設けられており、当該シャッター機構が開口部を開放している状態にて、液供給装置30に対する基板Wの搬出入が行われる。
【0026】
スピンチャック32は、基板Wの下面を吸着して基板Wを略水平姿勢(基板Wの法線が鉛直方向に沿う姿勢)にて保持する。スピンチャック32は、図外の回転駆動機構によって鉛直方向に沿った軸と中心として矢印AR2にて示すように回転される。スピンチャック32が基板Wを保持しつつ回転することにより、その基板Wも水平面内にて回転する。
【0027】
ノズル36は、スピンチャック12の上方に設けられている。ノズル36は、基板Wの径以上の長さを有するスリット状の吐出孔を備えたスリットノズルである。ノズル36は、液配管37を介してドーパント液供給源38と接続されている。液配管37にはバルブ39が介挿されている。バルブ39が開放されると、ドーパント液供給源38からノズル36にドーパント液が送給され、ノズル36からドーパント液が吐出される。また、ノズル36は、
図2の紙面に垂直な方向に沿ってスライド移動されるように構成されている。
【0028】
ノズル36は、スピンチャック32に保持された基板Wの上方をスライド移動しつつ、ドーパント液供給源38から送給されたドーパント液を基板Wの上面に供給する。ここで「ドーパント液」とは、基板Wに導入すべき不純物であるドーパントを含有する薬液である。このようなドーパント液としては、ドーパントとしてのホウ素(B)を含むアリルボロン酸ピナコールエステル(Allylboronic acid pinacol ester)、または、酸化ホウ素(B
2O
3)と有機バインダーと溶剤との混合液などを用いることができる。
【0029】
カップ35は、スピンチャック32およびそれに保持される基板Wの周囲を取り囲むように設けられている。スピンチャック32によって回転される基板Wの端縁部からはドーパント液などが周囲に飛散するのであるが、飛散した液はカップ35によって回収される。
【0030】
図3は、フラッシュランプアニール装置40の概略構成を示す図である。フラッシュランプアニール装置40は、ドーパントが導入された基板Wの表面にフラッシュ光を照射して加熱することにより、ドーパントを活性化させる基板処理装置である。フラッシュランプアニール装置40は、筐体41の内部に、載置台44と、複数のフラッシュランプFLと、リフレクタ45と、を備える。筐体41には図示省略の開口部とシャッター機構とが設けられており、当該シャッター機構が開口部を開放している状態にて、フラッシュランプアニール装置40に対する基板Wの搬出入が行われる。
【0031】
載置台44は、筐体41内にて基板Wを載置して保持する。載置台44は、ヒータを内蔵しており、載置した基板Wを所定温度に加熱することができる。
【0032】
複数のフラッシュランプFLは、載置台44の上方に設けられている。複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、載置台44に保持される基板Wと平行となるように平面状に配列されている。各フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極と、を備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行う電源回路のコイル定数によって調整することができる。
【0033】
また、リフレクタ45は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ45の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を載置台44の側に反射するというものである。
【0034】
フラッシュランプアニール装置40には、上述の構成以外にも、筐体41内に窒素ガスなどを供給する機構、および、筐体41内から雰囲気の排気を行う機構などが設けられていても良い。また、載置台44には、ヒータとともに、水冷管などの基板Wを冷却する機構が設けられていても良い。
【0035】
次に、基板Wに対する処理手順について説明する。
図4は、本発明に係る基板Wの処理方法の手順を示すフローチャートである。また、
図5および
図6は、基板処理にともなう、基板Wの表面状態の変化を示す図である。
【0036】
まず、雰囲気炉10によって水素雰囲気中にて基板Wのアニール処理を行う(ステップS1)。本実施形態の基板Wは、シリコンの半導体ウェハーである。
図5(a)に示すように、雰囲気炉10に搬入される前の基板Wの表面には、二酸化ケイ素(SiO
2)の自然酸化膜101が形成されている。自然酸化膜101は、基板Wの表面に露出しているシリコンが大気中の酸素と触れることによって不可避的に形成される二酸化ケイ素の膜である。通常、基板Wの表面には2nm〜3nmの自然酸化膜101が形成されている。なお、基板Wの表面とは、デバイスパターンが形成される主面であり、裏面とはその反対側の主面である。
【0037】
このような表面に自然酸化膜101が形成された基板Wが雰囲気炉10の反応容器11内に搬入され、基板保持部13によって保持される。基板Wが搬入された後、反応容器11の開口部が閉鎖されて処理空間15が密閉空間とされる。
【0038】
その後、真空ポンプ17を作動させつつ、バルブ19を開放することによって、反応容器11内の処理空間15から排気を行う。それと同時に、バルブ24およびバルブ25の双方を開放することによって、処理空間15に水素ガスとヘリウムガスとの混合ガスを供給する。これにより、反応容器11内に水素ガスとヘリウムガスとの混合ガスの気流が形成され、処理空間15が水素雰囲気に置換される。なお、置換効率を高めるために、バルブ24およびバルブ25を閉止した状態で排気機構16によって処理空間15を一旦真空排気した後に、バルブ24およびバルブ25を開放して混合ガスを供給するようにしても良い。
【0039】
処理空間15に供給される水素ガスの流量は流量調整弁26によって調整され、ヘリウムガスの流量は流量調整弁27によって調整される。これらの流量比を調整することによって、処理空間15の混合ガス中における水素ガスの濃度を規定することができる。本実施形態では、処理空間15の混合ガス中における水素濃度が4%以上10%以下となるように、水素ガスおよびヘリウムガスの供給流量が調整される(但し、水素濃度の単位はvol.%)。
【0040】
処理空間15に水素濃度が4%以上10%以下の水素雰囲気が形成された後、発熱体12が通電によって発熱し、基板Wを含む処理空間15の全体を加熱する。本実施形態においては、基板Wを600℃以上1300℃以下の処理温度に加熱している。また、雰囲気炉10における基板Wの加熱時間(基板Wを処理温度に維持する時間)は30分以上60分以下である。
【0041】
図5(b)に示すように、自然酸化膜101が形成された基板Wを水素雰囲気中にて600℃以上1300℃以下の処理温度に加熱することにより、自然酸化膜101の二酸化ケイ素が水素によって還元される水素還元反応が進行する。そして、水素雰囲気中にて基板Wが処理温度に30分以上60分以下維持されることにより、自然酸化膜101の全体にわたって二酸化ケイ素が水素によって還元され、シリコンが水素と結合した状態となる。さらに、自然酸化膜101が還元されるとともに、自然酸化膜101との下地シリコンとの界面近傍に存在しているシリコンの未結合手(ダングリングボンド)が水素終端される。その結果、
図5(c)に示すように、シリコンに水素が結合した水素導入層102が基板Wの表面に形成されることとなる。30分以上60分以下のアニール処理によって、基板W表面の水素導入層102の膜厚は当初の自然酸化膜101とほぼ同じ2nmから3nm程度となる。所定の加熱時間が経過した後、発熱体12への通電が停止されて基板Wの温度が低下する。
【0042】
次に、水素雰囲気中でのアニール処理の終了した基板Wを液供給装置30に搬送し、基板Wの表面にドーパント液を供給する(ステップS2)。雰囲気炉10でのアニール処理によって表面に水素導入層102が形成された基板Wが液供給装置30の筐体31内に搬入され、スピンチャック32に略水平姿勢にて保持される。基板Wは表面を上面に向けてスピンチャック32に保持される。
【0043】
続いて、バルブ39を開放してノズル36からドーパント液を吐出しつつ、スピンチャック32に保持された基板Wの上方にてノズル36を水平方向にスライド移動させる。これにより、
図6(a)に示すように、基板Wの表面の全面がドーパント液103によって覆われる。
【0044】
基板Wの表面に形成された水素導入層102にドーパントを含有するドーパント液103が接触することによって、
図6(b)に示す如く水素導入層102の水素がドーパントに置き換えられ、基板Wの表面にドーパントが導入される。本実施形態では、水素導入層102の膜厚が2nm〜3nm程度であるため、基板Wの表面から2nm〜3nmにドーパントが導入されることとなる。すなわち、基板Wの表面に膜厚2nm〜3nmのドーパント導入層104が形成される。
【0045】
このドーパント液供給工程では、ノズル36から基板Wの表面に継続してドーパント液を供給するようにしても良いし、スピンチャック32によって基板Wを回転させるようにしても良く、基板Wの表面がドーパント液によって覆われていれば良い。基板Wの表面にドーパント液の供給を開始してから所定時間が経過した後、スピンチャック32の回転数を増加させ、遠心力によって基板Wの表面からドーパント液を振り切る。基板Wの端縁部から飛散したドーパント液はカップ35によって回収される。
【0046】
次に、表面にドーパントが導入された基板Wをフラッシュランプアニール装置40に搬送し、基板Wの表面にフラッシュ光を照射してフラッシュ加熱を行う(ステップS3)。液供給装置30にて液処理によってドーパントが導入された基板Wがフラッシュランプアニール装置40の筐体41内に搬入され、載置台44の上面に載置される。載置台44は、内蔵するヒータによって予め所定温度に昇温されており、載置台44に載置された基板Wは当該所定温度に予備加熱(アシスト加熱)される。
【0047】
そして、基板Wが所定の予備加熱温度に到達して所定時間が経過した時点にて、フラッシュランプFLから基板Wへ向けてフラッシュ光が照射されてフラッシュ加熱が実行される。フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予め蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。このフラッシュ光照射によって、ドーパント導入層104を含む基板Wの表面は瞬間的に目標温度にまで上昇し、その後急速に上記の予備加熱温度にまで降温する。
【0048】
このようにドーパント導入層104を極めて短い時間昇温することにより、導入されたドーパントの活性化を実行することができる。その一方、ドーパントの活性化に比較して拡散には長時間を要するため、ドーパント導入層104を目標温度に昇温する時間が極めて短時間であれば、ドーパントの外方拡散は生じない。すなわち、フラッシュ光の照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下の極めて短い時間であるため、ドーパントの外方拡散を抑制しつつドーパントの活性化を行うことができる。
【0049】
フラッシュ加熱処理が終了した後、フラッシュランプアニール装置40から基板Wが搬出されて一連のドーパント導入処理が完了する。
【0050】
本実施形態においては、表面に自然酸化膜101が形成された基板Wを水素雰囲気中にて600℃以上1300℃以下の処理温度に30分以上60分以下加熱することによって、二酸化ケイ素を水素で還元している。さらに、自然酸化膜101
と下地シリコンとの界面近傍に存在しているシリコンを水素終端している。これにより、シリコンに水素が結合した水素導入層102を基板Wの表面に形成している。そして、水素導入層102が形成された基板Wの表面にドーパント液を供給し、水素導入層102中の水素をドーパントに置き換えることによって、水素導入層102がドーパント導入層104となる。つまり、基板Wの表面にドーパントが導入される。
【0051】
自然酸化膜101が形成された基板Wを水素雰囲気中でアニールすることによって形成される水素導入層102の膜厚は自然酸化膜101と概ね同程度の2nm〜3nm程度である。従って、従来のように、希フッ酸によって自然酸化膜を除去してから水素終端を行うのに比較して、水素導入層102の膜厚を厚くすることができる。すなわち、基板Wの表面から深くまで水素を均一に導入することができる。もっとも、深くまでとは言っても、従来と比較してのことであり、その深さは基板Wの表面から2nm〜3nm程度である。
【0052】
このような従来よりも厚い水素導入層102が形成された基板Wの表面にドーパント液を供給することによって、ドーパント導入層104も厚くなり、ドーパントの導入量が増大する。また、基板Wの表面から所定の深さに均一にドーパントが導入されることとなる。
【0053】
その後、従来よりも深くかつ均一にドーパントが導入された基板Wの表面に、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短いフラッシュ光を照射することにより、ドーパントの外方拡散を抑制しつつドーパントの活性化を行うことができる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、雰囲気炉10の構成は
図1に限定されるものではなく、水素雰囲気中にて基板Wを600℃以上1300℃以下の処理温度に30分以上60分以下加熱できるものであれば良い。また、1回の熱処理に30分以上60分以下を要するため、雰囲気炉10は、複数の基板Wを同時に収容してアニール処理を行う型式のものが好ましい。
【0055】
液供給装置30の構成も
図2に限定されるものではなく、基板Wの表面にドーパント液を供給して当該表面をドーパント液で覆えるものであれば良い。液供給装置30は、処理槽に貯留したドーパント液に複数の基板Wを一括して浸漬するバッチ式の装置であっても良い。
【0056】
また、本発明における水素は、いわゆる軽水素(H)のみならず、重水素(D)および三重水素(T)を含む。重水素または三重水素のガスを含む雰囲気中にて自然酸化膜101が形成された基板Wのアニール処理を実行することにより、自然酸化膜101中の二酸化ケイ素を効率良く還元することができる。
【0057】
また、上記実施形態においては、反応容器11内の処理空間15に水素ガスとヘリウムガスとの混合ガスを供給していたが、これに限定されるものではなく、例えば、水素ガスとアルゴンガス(Ar)との混合ガスを供給するようにしても良い。また、処理空間15に水素ガスと窒素ガス(N
2)との混合ガスを供給するようにしても良い。もっとも、基板Wを1300℃近傍の高温に加熱する場合には窒素の化合物が形成されるおそれがあるため、ヘリウムガスまたはアルゴンガスなどの希ガスと水素ガスとの混合ガスを供給するのが好ましい。
【0058】
また、上記実施形態では、水素雰囲気中にて基板Wのアニール処理を行うことによって、膜厚が2nm〜3nm程度の水素導入層102を形成していたが、600℃以上1300℃以下および30分以上60分の範囲内で高温長時間のアニール処理を行うことにより、さらに下層のシリコンに水素を結合させて水素導入層102の膜厚を10nm程度としても良い。水素導入層102の膜厚に応じてドーパントが導入される深さおよび導入量が規定される。すなわち、アニール処理の条件によって水素導入層102の膜厚を調整することにより、基板W表面の必要とされる深さにドーパントを導入することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、基板Wの表面に導入されたドーパントの活性化をフラッシュランプアニールによって行っていたが、外方拡散を抑制できるのであれば、ハロゲンランプを用いたいわゆるスパイクアニールによって行うようにしても良い。さらに、上記実施形態では、水素導入層102が形成された基板Wの表面にドーパント液を供給する液相反応によってドーパントを導入していたが、気相反応によって基板Wの表面にドーパントを導入するようにしても良い。
【0060】
また、ドーパント液としてはホウ素を含む薬液に限定されるものではなく、導入するドーパントの種類(例えば、リン(P)やヒ素(As))に応じて適宜のものを選択することができる。