(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6157816
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】雪冷熱利用設備
(51)【国際特許分類】
F25D 3/00 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
F25D3/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-187008(P2012-187008)
(22)【出願日】2012年8月27日
(65)【公開番号】特開2014-44009(P2014-44009A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241946
【氏名又は名称】積水化学北海道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(72)【発明者】
【氏名】吾孫子 正和
(72)【発明者】
【氏名】菅野 昇平
(72)【発明者】
【氏名】中島 古史郎
【審査官】
伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−054708(JP,A)
【文献】
特開2011−007029(JP,A)
【文献】
特開2008−164251(JP,A)
【文献】
特開2005−299944(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/069730(WO,A1)
【文献】
特開2008−101378(JP,A)
【文献】
特開2009−127982(JP,A)
【文献】
特開2003−343953(JP,A)
【文献】
特開2002−310583(JP,A)
【文献】
特開2002−228384(JP,A)
【文献】
特開2009−174814(JP,A)
【文献】
特開2010−197028(JP,A)
【文献】
米国特許第04466256(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雪山の冷熱を冷房熱源として利用する雪冷熱利用設備であって、
雪山直下の地盤内の土壌に埋設され、閉路を形成して熱交換液体を循環させるとともに、流路の一部を地上部分に配設させた熱交換配管と、
該熱交換配管の地上部分に設けられ前記熱交換液体に流通動力を与える循環ポンプと、
前記熱交換配管の、該循環ポンプの上流側又は下流側の前記地上部分に設けられた熱交換部と、
を備え、
前記熱交換配管は、外周面に、長さ方向に沿って間隔をあけてリブが形成された樹脂管であることを特徴とする雪冷熱利用設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪山の冷熱を冷房熱源として利用する雪冷熱利用設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、夏期の冷房や冷蔵のために、冬の間に貯めた雪を利用する雪冷熱利用として、融雪水を直接利用する方法が知られている。この場合、容器等に貯めた雪の底部にコンクリート製等の板状、又は溝状の構造部材を設置することで、融雪水を集めて熱交換器等で熱交換を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、貯雪容器の容器底部に底盤から上側に間隔をあけて第1熱交換器を水平に配設し、その第1熱交換器の上方に雪を貯え、さらに第1熱交換器の下方に第1熱交換器に接触して融けた融雪水を貯め、その貯まった融雪水内に常に接触可能な状態で配設される第2熱交換器が設けられ、第2熱交換器と第1熱交換器との間に前記貯まった融雪水用のオーバーフロー孔を設け、貯まった融雪水が貯めてある雪に接触しないようにした構成の冷却装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−243739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した雪冷熱設備では、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1の冷却装置では、第1熱交換器の配管上に雪が直接載置されているので、雪に含まれる異物や融雪剤等によって配管材が損耗し、設備を交換したり、メンテナンスを行う手間がかかるうえ、設備費が増大するという問題があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、熱交換部を地盤内に埋設することにより、簡単な設備とすることができ、しかも設備の損耗を少なくすることができ、コストの低減を図ることができる雪冷熱利用設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る雪冷熱利用設備では、雪山の冷熱を冷房熱源として利用する雪冷熱利用設備であって、雪山直下の地盤内の土壌に埋設され、閉路を形成して熱交換液体を循環させるとともに、流路の一部を地上部分に配設させた熱交換配管と、熱交換配管の地上部分に設けられ熱交換液体に流通動力を与える循環ポンプと、熱交換配管の、循環ポンプの上流側又は下流側の地上部分に設けられた熱交換部と、を備え
、前記熱交換配管は、外周面に、長さ方向に沿って間隔をあけてリブが形成された樹脂管であることを特徴としている。
【0008】
本発明では、地中部分と地上部分とにわたって循環する熱交換配管内の熱交換液体が地上部分に設けられた循環ポンプにより一方向に流れ、熱交換配管の地中部分に送られると、その地中部分を通過する際に、雪山直下で融雪水によって冷やされた地盤内
の土壌を通過するので、その低温土壌と地上で温められた熱交換液体との間で熱交換される。つまり、熱交換配管の地中部分を通過した熱交換液体は、冷却されて再び熱交換配管の地上部分に送られ、地上部分に設けられた熱交換部で室内空気又は外気との間で熱交換される。そして、温度が上昇した熱交換液体は熱交換部の下流側又は上流側に配置される循環ポンプによって再び熱交換配管の地中部分へ送られる熱交換による循環が行われる。
【0009】
このように、本発明では、熱交換配管が地盤内
の土壌に埋設されているので、熱交換配管に対して直接雪山が載置されたり、接触することがなく、また融雪水が貯まった水中に浸かった状態となることもないので、熱交換配管が雪山に混入される異物によって損耗したり、あるいは雪山を積み上げて貯める際に地中部分の配管設備に荷重や衝撃を与えることがないという利点がある。そのため、設備の交換やメンテナンスにかかる手間や時間を少なくすることができる。
【0010】
また、熱交換配管を雪山直下に埋設するだけの簡単な構成となるので、従来のように融雪水を貯留するためのピット等の工事費の高い構造が不要となることから、コストの低減を図ることができる。
【0012】
また、本発明では、リブによって熱交換配管の外周面の表面積が大きくなり、地盤に対する接触面積が増大することから、熱交換配管の地中部分における熱交換効率をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の雪冷熱利用設備によれば、熱交換配管を地盤内に埋設することにより、簡単な設備とすることができ、しかも設備の損耗を少なくすることができ、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態による雪冷熱利用設備の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す雪冷熱利用設備を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態による雪冷熱利用設備について、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1及び
図2に示すように、本第1の実施の形態による雪冷熱利用設備1は、冬場に積み上げて形成した雪山Sの冷熱を冷房熱源として利用し、建物6にその冷熱を送るためのものである。
なお、雪山Sとしては、例えば除雪による雪を利用することができ、冷熱の利用目的に応じた大きさで積み上げられる。
【0017】
具体的に雪冷熱利用設備1は、雪山直下の地盤G内に埋設され、閉路を形成して熱交換液体5を循環するとともに、流路の一部が地上に突出する熱交換配管2と、この熱交換配管2の地上部分2Bに設けられ、熱交換液体5に一方向への流通動力を与える循環ポンプ3と、熱交換配管2の、循環ポンプ3の上流側の地上部分2Bに設けられた熱交換器4(熱交換部)と、を備えている。
【0018】
熱交換配管2は、地上部分2Bと地中部分2Aの間を循環する閉路をなし、地中部分2Aは雪山Sの直下地盤の範囲であって雪山Sの配置面積とほぼ同じ範囲にわたって蛇行して配置されている。そして、熱交換配管2の地上部分2Bには、前記熱交換器4と、循環ポンプ3が接続されている。つまり、熱交換配管2の地上部分2Bは、熱交換器4と、循環ポンプ3とが熱交換液体5の流通方向でその順に接続されている。
【0019】
熱交換配管2の地中部分2Aの深さは、雪山Sの融雪水が浸透し、例えば雪下温度で5℃程度となる所定の深さに設定される。
【0020】
また、熱交換配管2は、外周面に一定間隔ごとに環状リブ2aを有する硬質塩化ビニルであり、その管内に熱交換液体5を循環させて熱交換することにより、熱交換液体5が熱交換の媒体になるため、熱交換の媒体が空気である場合に比べて管内の結露水の処理が不要になるという利点があり、設備全体の簡素化を図ることができる。
具体的に硬質塩化ビニル製の管として、例えば下水道に使用されるリブ付き硬質塩化ビニル管であることが好ましい。
【0021】
地上に配置される熱交換器4は、建物6内に設けられ、熱交換配管2内の熱交換液体5と建物6内の空気との間で熱交換されるようになっている。
【0022】
以上説明した本実施形態による雪冷熱利用設備によれば、以下の作用効果を奏する。
すなわち、
図1に示すように、本実施の形態の雪冷熱利用設備1では、地中部分2Aと地上部分2Bとにわたって循環する熱交換配管2内の熱交換液体5が地上部分2Bに設けられた循環ポンプ3により一方向に流れ、熱交換配管2の地中部分2Aに送られると、その地中部分2Aを通過する際に、雪山直下で融雪水によって冷やされた地盤G内を通過するので、その低温土壌と地上で温められた熱交換液体5との間で熱交換される。
【0023】
つまり、熱交換配管2の地中部分2Aを通過した熱交換液体5は、冷却されて再び熱交換配管2の地上部分2Aに送られ、その地上部分2Aに設けられた熱交換器4で外気(本実施の形態では建物6内であるため室内空気)との間で熱交換される。そして、温度が上昇した熱交換液体5は熱交換器4の下流側に配置される循環ポンプ3によって再び熱交換配管2の地中部分2Aへ送られる熱交換による循環が行われる。
【0024】
このように、本実施の形態では、熱交換配管2が地盤G内に埋設されているので、熱交換配管2に対して直接雪山Sが載置されたり、接触することがなく、また融雪水が貯まった水中に浸かった状態となることもないので、熱交換配管2が雪山Sに混入される異物によって損耗したり、あるいは雪山Sを積み上げて貯める際に地中部分の配管設備に荷重や衝撃を与えることがないという利点がある。そのため、設備の交換やメンテナンスにかかる手間や時間を少なくすることができる。
【0025】
また、熱交換配管2を雪山直下に埋設するだけの簡単な構成となるので、従来のように融雪水を貯留するためのピット等の工事費の高い構造が不要となることから、コストの低減を図ることができる。
【0026】
また、熱交換配管2の外周面に複数の環状リブ2aが形成されており、環状リブ2aによって熱交換配管2の外周面の表面積が大きくなり、地盤に対する接触面積が増大することから、熱交換配管2の地中部分2Aにおける熱交換効率をより一層向上させることができる。
【0027】
上述のように本実施の形態による雪冷熱利用設備では、熱交換配管2を地盤G内に埋設することにより、簡単な設備とすることができ、しかも設備の損耗を少なくすることができ、コストの低減を図ることができる。
【0028】
以上、本発明による雪冷熱利用設備の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0029】
例えば、上述の本実施の形態では、熱交換配管2として、外周面に一定間隔ごとに環状リブ2aを有する硬質塩化ビニルを採用しているが、このような構成であることに制限されることはなく、例えば環状リブ2aが一定間隔でないものでもよいし、リブが環状であることにも限定されることはない。さらに、リブ自体を省略した配管であってもかまわない。
【0030】
また、本実施の形態では、熱交換配管2の地中部分2Aにおいて、複数回にわたって蛇行させているが、このような配置であることに制限されることはない。
【0031】
さらに、本実施の形態では、1つの雪山Sを対象としてその直下に熱交換配管2を埋設しているが、このような構成に制限されることはなく、複数の雪山Sの直下の範囲にわたって熱交換配管を配設することも可能である。
【0032】
また、本実施の形態では、熱交換器4を建物6内に配置しているが、これに限定されることもない。熱交換器4、循環ポンプ3の位置、形状、構成については適宜設定することができる。例えば、本実施の形態では、循環ポンプ3の上流側に熱交換器4を配置しているが、循環ポンプ3の下流側に熱交換器4を設けるようにしても良い。
【0033】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 雪冷熱利用設備
2 熱交換配管
2a 環状リブ(リブ)
2A 地中部分
2B 地上部分
3 循環ポンプ
4 熱交換器(熱交換部)
5 熱交換液体
6 建物
S 雪山