特許第6157923号(P6157923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6157923
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】クリップ付キャップ
(51)【国際特許分類】
   B43K 23/12 20060101AFI20170626BHJP
   B43K 25/02 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   B43K23/12 140
   B43K25/02 150
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-103856(P2013-103856)
(22)【出願日】2013年5月16日
(65)【公開番号】特開2014-223748(P2014-223748A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】守屋 知己
【審査官】 藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭26−000315(JP,Y1)
【文献】 特開2009−262428(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/007756(WO,A1)
【文献】 特開平10−024693(JP,A)
【文献】 特開2005−271245(JP,A)
【文献】 実公昭38−007338(JP,Y1)
【文献】 実開昭49−008028(JP,U)
【文献】 実開昭56−044186(JP,U)
【文献】 実公昭43−028658(JP,Y1)
【文献】 登録実用新案第363777(JP,Z2)
【文献】 実開昭48−003339(JP,U)
【文献】 実開平05−035382(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 23/12
B43K 25/00−25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ本体およびクリップを金属で成形し、前記キャップ本体または前記クリップの表面に表面処理を施し、前記クリップのクリップ基部を前記キャップ本体に形成した窓孔に挿通させ、前記クリップ基部と前記キャップ本体との間にバネ部材を配して、前記クリップの挟持片が前記クリップ基部を基点に可動する構造のクリップ付キャップであって、前記キャップ本体の内部へ挿着する中子に、前方へ向かって突出する中央突片と、該中央突片の両側に隙間を隔てて設けた二つの側部突片とを形成し、前記クリップ基部に、二つの平行する起立片と、該二つの起立片の内側に突設した底片とを設け、前記クリップ基部を前記キャップ本体の窓孔に挿通させ、前記中子を前記キャップ本体の内部に装着した状態で、前記中央突片に形成した凸部を前記キャップ本体の窓孔に係合させ、前記中子の中央突片と二つの側部突片とで前記クリップ基部の二つの起立片を挟持させ、前記中子の中央突片と前記クリップ基部の底片との間にバネ部材を配することにより、当該中子の中央突片と当該クリップ基部の底片とを互いに離間するよう弾発させたことを特徴とするクリップ付キャップ。
【請求項2】
前記バネ部材に、前記中子の中央突片に当接する第一当接部と前記クリップ基部の底片に当接する第二当接部と、前記第一当接部と前記第二当接部とを連結させる折返部と、前記第二当接部の後端に前記クリップ基部に係止する係止部とを設けたことを特徴とする請求項1に記載のクリップ付キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属からなるクリップのクリップ基部を、金属からなるキャップ本体の窓孔に挿通させ、クリップ基部とキャップ本体との間にバネ部材を配して、クリップ本体の挟持片をクリップ基部を基点にしてバネ部材の弾発力に抗して可動させる構造のクリップ付キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、筆記具用のキャップでは、キャップ本体の外側面にクリップを装着した構造のものが存在しており、キャップ本体とクリップとを金属で成形して筆記具に高級感を与える構造のクリップ付キャップも多く存在している。
【0003】
尚、金属部材を用いたクリップ付キャップでは、キャップ本体とクリップとが擦れてしまうことによる、塗装やメッキの剥離が問題視されており、特に、キャップ本体とクリップ基部との間にバネ部材を配して、クリップの挟持力や耐久性を向上させた構造のクリップ付キャップにおいては、キャップ本体に挿通させたクリップ基部を基点にクリップが動くことから、キャップ本体とクリップ基部とが擦れて、塗装やメッキなどの表面処理が剥離されてしまったり、傷ついたりしてしまう可能性が高くなっていた。
【0004】
前記、問題点の解決を目的とした構造の中に、例えば特許文献1に記載されているクリップの取付構造がある。特許文献1では、キャップに設けたクリップ取付用開口の上下縁に、一対の舌状突片を設けてあり、クリップ取付用開口の左右縁を上方から下方に向かって暫時拡大するように形成して、取付用脚の外壁面とクリップ取付用開口の左右縁との間に隙間を生じさせることにより、クリップの取付用脚がクリップ取付用開口に取り付けた状態で、取付用脚の内壁面が舌状突片に当接してクリップの巾方向の振れを防止すると共に、取付用脚の外壁面がクリップ取付用開口の左右縁との接触してクリップのメッキを剥離してしまったり、傷つけてしまうことを防止している。
【0005】
ところで、前記特許文献1に記載されているクリップの取付構造では、一対の取付用脚の内側をキャップの舌状突片が支持して取付用脚の振れを防止しているが、取付用脚の外側には隙間が存在しており、自由な状態になっていることから、クリップの取付用脚に対して巾方向への強い力が掛かった際には、取付用脚が変形してしまったり、取付用脚の外壁面が取付用開口の側縁と接触して、メッキが剥離してしまう虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−271245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、キャップ本体とクリップ基部との擦れによる、メッキ剥離や傷つきを防止できるクリップ付キャップを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
「1.キャップ本体およびクリップを金属で成形し、前記キャップ本体または前記クリップの表面に表面処理を施し、前記クリップのクリップ基部を前記キャップ本体に形成した窓孔に挿通させ、前記クリップ基部と前記キャップ本体との間にバネ部材を配して、前記クリップの挟持片が前記クリップ基部を基点に可動する構造のクリップ付キャップであって、前記キャップ本体の内部へ挿着する中子に、前方へ向かって突出する中央突片と、該中央突片の両側に隙間を隔てて設けた二つの側部突片とを形成し、前記クリップ基部に、二つの平行する起立片と、該二つの起立片の内側に突設した底片とを設け、前記クリップ基部を前記キャップ本体の窓孔に挿通させ、前記中子を前記キャップ本体の内部に装着した状態で、前記中央突片に形成した凸部を前記キャップ本体の窓孔に係合させ、前記中子の中央突片と二つの側部突片とで前記クリップ基部の二つの起立片を挟持させ、前記中子の中央突片と前記クリップ基部の底片との間にバネ部材を配することにより、当該中子の中央突片と当該クリップ基部の底片とを互いに離間するよう弾発させたことを特徴とするクリップ付キャップ。
2.前記バネ部材に、前記中子の中央突片に当接する第一当接部と前記クリップ基部の底片に当接する第二当接部と、前記第一当接部と前記第二当接部とを連結させる折返部と、前記第二当接部の後端に前記クリップ基部に係止する係止部とを設けたことを特徴とする前記1項に記載のクリップ付キャップ。」である。
【0009】
本発明におけるキャップ本体およびクリップは、真鍮、ステンレス、アルミニウム、鉄などの金属で成形し、その表面への表面処理としては、金メッキ、クロムメッキ、ロジウムメッキ等のメッキを行ったり、エポキシ塗料、ウレタン塗料、アクリル塗料などで塗装を行ったり、ヘアライン、エッチング、ホーニング等の加飾を行うことができる。尚、キャップ本体およびクリップをアルミニウムで成形する場合には、アルマイト処理を行うことが可能となる。
また、本発明におけるバネ部材は、金属からなる線材や板材を曲成して形成したコイルバネや板バネなど、あるいはエラストマーやゴムなどの弾力を有する材料でバネ部材を構成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は前述した構造なので、キャップ本体とクリップ基部との擦れによる、メッキ剥離や傷つきを防止できるクリップ付キャップを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施例のクリップ付キャップの斜視図である。
図2】クリップ付キャップの組立図である。
図3】中子の前方の一部を示した図である。
図4】中子とバネ部材との関係を示した図である。
図5】組立工程における一状態を示した図であり、内部の一部を破線で示してある。
図6】組立工程における図5の次の状態を示した図であり、内部の一部を破線で示してある。
図7】組立てられたクリップ付キャップであり、内部の一部を破線で示してある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施例におけるクリップ付キャップの説明を行う。尚、図面中の同じ部材、同じ部品については同じ番号を付してある。本実施例の説明においてはキャップ開口端側を後方と表現し、その反対側を前方と表現する。また、キャップ本体の軸心に直交する方向を巾方向として表現する。
【0013】
図1および図2を用いて、本実施例におけるクリップ付キャップについて説明を行う。図1に示すように、本実施例のクリップ付キャップ1は、キャップ本体2にクリップ3を装着してある。キャップ本体2は、平板状のアルミニウム材を打抜加工および絞り加工して形成してあり、表面処理としてアルマイト処理を行っている。また、クリップ3は、平板状の鉄板を打抜加工および曲げ加工して形成してあり、表面処理として金メッキを行っている。また、図2に示すように本実施例のクリップ付キャップ1は、キャップ本体2の内部に、樹脂で射出成形された筒状の中子4と、ステンレス製の線材を折り曲げて形成したバネ部材5とを備えている。
【0014】
クリップ3は、挟持片3bと、挟持片3bの先端に形成した玉部3cとを有したクリップ本体3aに、キャップ本体2に形成した窓孔2aへ挿通させるクリップ基部3dを形成してある。クリップ基部3dは、二つの平行する起立片3eと、起立片3eの内側に突出させた底片3fとを形成してあり、二つの底辺3f同士を重ねてある。
キャップ本体2は、前方部の側面に窓孔2aを設けてあり、窓孔2aの上部に巾狭部2bを形成し、窓孔2aの後方部の中央に前方へ突出する舌片2cを形成し、舌片2cを挟んで二つのスリット部2dを形成してある。また、キャップ本体2の前方に天面部2eを設けてあり、後方に開口部2fを設けて中子4をキャップ本体2内に挿着できるようにした。
【0015】
中子4は、前方へ向かって突出する中央突片4aと、中央突片4aの両側に形成した隙間4bを隔てて設けた二つの側部突片4cとを有し、中央突片4aの表面側に凸部4dを形成して、中子4をキャップ本体2に挿着した際に、凸部4dが窓孔2aに係合して、キャップ本体2に対して中子4を抜止状態にすることができる。尚、中子4の後方には開口部4eを設けてある。
バネ部材5は、中子4の中央突片4aに当接する第一当接部5aと、クリップ基部3dの底片3fに当接する第二当接部5bと、第一当接部5aと第二当接部5bを連結させる弧状の折返部5cとを形成すると共に、第二当接部5bの後端にはクリップ基部3dへ係止させる係止部5dを外側に折り曲げて形成してある。
【0016】
図3および図4で示すように、本実施例の中子4は、中央突片4aの裏面側に軸方向へ延びる二つのリブ4fを形成してあるので、二つのリブ4fの間に形成された平坦部4gに、バネ部材5の第一当接部5aを当接させた状態で、バネ部材5の巾方向へのずれを防ぐことができる。
【0017】
次に、図5図7を用いて、本実施例のクリップ付キャップ1の組立手順について説明を行う。図5に示すように、クリップ3のクリップ基部3aをキャップ本体2の窓孔2aに挿通させた上で、キャップ本体2の開口部2fから中子4を挿通させ、クリップ基部3dの二つの起立片3eを中子4の二つの隙間4bに係止して、クリップ基部3dの二つの起立片3eを中子4の中央突片4aと二つの側部突片4cとで挟持させて固定し、図6の状態にさせる。
さらに、バネ部材5を中子4の開口部4eから挿通させ、バネ部材5の第一当接部5aを中子4の中央突片4aに当接させ(図4参照)、バネ部材5の第二当接部5bをクリップ基部3dの底片3fに当接させて、図7の完成状態とした。
図7に示すように、バネ部材5は、中子4の中央突片4aとクリップ基部3dの底片3fとを互いに離間するよう弾発しており、クリップ3の挟持片3bをキャップ本体2の側面から離れるように持ち上げると、中子4の中央突片4aとクリップ基部3dの底片3fとで、第一当接部5aと第二当接部5bとが接近するようにバネ部材5は圧縮され、クリップ3がクリップ基部3dを基点に回動するよう可動させることができる。
【0018】
また、本実施例のクリップ付キャップ1は、キャップ本体2に設けた窓孔2aの巾を、クリップ3のクリップ基部3aの巾より大きく形成してあり、クリップ3を可動させた時に、クリップ基部3aが窓孔2aに擦れることがなく、さらにクリップ基部3aの二つの起立片3eが、中子4の中央突片4aと側部突片4cとで挟み込まれていることから、クリップ3のクリップ基部3aに、巾方向への強い力が掛かった場合においても、クリップ基部3aが変形してしまったり、クリップ基部3aの起立片3eがキャップ本体2の開口部2fの側縁と接触してメッキが剥離してしまうこともない。
【0019】
また、本実施例のバネ部材5は、断面丸形状のステンレスからなる線材を、圧延加工で平たく潰して断面を矩形状に形成したものを使用しているので、安価な製造が可能になると共に、中子4の中央突片4aおよびクリップ基部3dの底片3fに対して、バネ部材5の第一当接部5aおよび第二当接部5bが面接触することから、クリップ3の繰り返しの可動における位置ずれが生じ難く、安定した動作を継続して行うことができる。
【符号の説明】
【0020】
1…クリップ付キャップ、
2…キャップ本体、
2a…窓孔、2b…巾狭部、2c…舌片、2d…スリット部、
2e…天面部、2f…開口部、
3…クリップ、
3a…クリップ本体、3b…挟持片、3c…玉部、
3d…クリップ基部、3e…起立片、3f…底片、
4…中子、
4a…中央突片、4b…隙間、4c…側部突片、
4d…凸部、4f…リブ、4g…平坦部、
5…バネ部材、
5a…第一当接部、5b…第二当接部、5c…弧状の折返部、
5d…係止部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7