(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転軸において前記ステータより出力側に向けて突出する部分には、該回転軸と一体に回転する従動部材が嵌められていることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステッピングモータでは、回転軸においてステータより出力側に向けて突出する部分にギヤ等の円筒状の従動部材を出力側の端部から圧入により嵌めることがあるが、その場合、回転軸には反出力側に向かう大きな力が加わる。しかしながら、特許文献1に記載のモータでは、回転軸の反出力側の端部より反出力側に軸受部材や板バネ部が存在するため、回転軸の反出力側の端部を治具等によって直接、支持することができないという問題点がある。これに対して、特許文献2に記載のモータでは、回転軸の反出力側の端部を治具等によって直接、支持することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載のステッピングモータでは、回転軸の反出力側の端部がモータ本体の反出力側の端部から反出力側に突出している分、ステッピングモータの軸線方向の寸法が長くなってしまうという問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、回転軸の反出力側の端部を反出力側ラジアル軸受部材の軸孔から反出力側に突出させた場合でも、モータの軸線方向の寸法を短くすることができるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るモータは、回転軸の外周面に永久磁石を備えたロータと、前記永久磁石の外周に配置された筒状のステータ、前記回転軸を回転可能に支持する反出力側ラジアル軸受部材、および該反出力側ラジアル軸受部材を前記ステータとの間に保持する反出力側端板を備えた固定体と、を有し、前記反出力側ラジアル軸受部材には、前記回転軸の外周面をラジアル方向で支持する軸孔を備えた軸受部と、前記軸受部より反出力側でラジアル方向外側に向けて突出して前記ステータの反出力側の端部に重なるフランジ部と、当該反出力側ラジアル軸受部材の反出力側の端部で出力側に向けて凹み、底部で前記軸孔が開口する凹部と、が形成されており、前記軸受部の出力側の端部は、前記回転軸の軸線方向において前記ステータの反出力側の端部より出力側に位置し、前記回転軸の反出力側の端部は、前記凹部内で前記軸孔から反出力側に向けて突出
して前記軸線方向において前記固定体の反出力側の端部より出力側に位置
し、前記永久磁石の反出力側の端部には、前記回転軸の周りで出力側に向けて凹む環状凹部が形成され、前記軸受部の少なくとも出力側の端部は、前記環状凹部の内側に位置し、前記環状凹部の底部および前記軸受部の出力側の端部は、前記軸線方向に直交する平面になっており、前記回転軸には、前記環状凹部の内側に環状部材が装着されていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、反出力側ラジアル軸受部材では、反出力側の端部に出力側に向けて凹んだ凹部が形成されており、回転軸の反出力側の端部は、凹部内で軸孔から反出力側に向けて突出している。このため、回転軸の反出力側の端部は、固定体の反出力側の端部より出力側に位置する。しかも、反出力側ラジアル軸受部材の軸受部の出力側の端部は、ステータの反出力側の端部より出力側に位置する。このため、モータの軸線方向の寸法を短くすることができる。
さらに、永久磁石の反出力側の端部には、回転軸の周りで出力側に向けて凹む環状凹部が形成され、軸受部の少なくとも出力側の端部は、環状凹部の内側に位置する。このため、モータの軸線方向の寸法をさらに短くすることができる。
【0009】
本発明において、前記回転軸の反出力側の端部は、前記軸線方向に直交する平面からなることが好ましい。かかる構成によれば、回転軸においてステータより出力側に向けて突出する部分にギヤ等の従動部材を出力側の端部から嵌める際、回転軸の反出力側の端部を治具等によって直接、支持する際、安定した状態に支持することができる。
【0010】
本発明において、前記回転軸において前記ステータより出力側に向けて突出する部分には、該回転軸と一体に回転する従動部材が嵌められている構成を採用することができる。このような構成を採用する場合、回転軸においてステータより出力側に向けて突出する部分にギヤ等の従動部材を出力側の端部から嵌めるが、その際、回転軸の反出力側の端部を治具等によって直接、支持することができる。
【0013】
本発明において、前記ロータを反出力側に向けて付勢する付勢部材を備え、前記環状部材は、前記環状凹部の底部および前記軸受部の出力側の端部と接していることが好ましい。
【0014】
本発明において、前記環状凹部の底部は、前記軸受部の出力側の端部より面積が広いことが好ましい。
【0015】
本発明において、前記ステータでは、前記永久磁石の外周面に対向する複数の極歯が周方向に配置されており、前記ロータに加わる第1摺動負荷をTaとし、前記ロータに作用するディテントトルクをTdとし、前記ロータが前記ステータから受ける動トルクをTeとしたとき、前記第1摺動負荷Ta、前記ディテントトルクTd、および前記動トルクTeは、以下の式で示す関係
Td<Ta<Te
を満たしていることが好ましい。かかる構成によれば、ステータへの励磁電流の供給を停止して、ロータを所定の位置に停止させようとした際、ロータの永久磁石とステータの極歯との間の磁気吸引力(ディテントトルク)がロータに加わった場合でも、第1摺動負荷によって、ロータが所定位置で停止する。それ故、ロータの停止位置の精度を高めることができる。また、第1摺動負荷は、ロータがステータから受ける動トルクより小さいため、ロータの回転駆動には支障がない。
【0016】
本発明において、前記第1摺動負荷Taのうち、前記環状部材と前記軸受部との間の第2摺動負荷をTbとしたとき、前記第1摺動負荷Ta、前記第2摺動負荷Tb、前記ディテントトルクTd、および前記動トルクTeは、以下の式で示す関係
Td<Tb<Ta<Te
を満たしていることが好ましい。かかる構成によれば、第2摺動負荷を発生させるのに新たな部材を追加する必要がない。また、ロータの反出力側に向く面と固定体において出力側に向く面とを軸線方向で接触させるため、大きな摺動負荷が発生し、しかも摺動負荷のレベルが安定している。それ故、ロータに加わる第1摺動負荷を確実にディテントトルクより大で、動トルクより小さい条件に設定することができる。
【0017】
本発明において、前記付勢部材は、コイルバネからなることが好ましい。かかる構成によれば、バネ定数が小さいので、安定した付勢力を発生させることができる。従って、安定した第2摺動負荷を発生させることができる。
【0018】
本発明において、前記コイルバネは、前記回転軸を前記永久磁石より出力側で支持する出力側軸受部材と前記永久磁石との間に配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、コイルバネを追加しても、モータの軸線方向の寸法を短くすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明において、反出力側ラジアル軸受部材では、反出力側の端部に出力側に向けて凹んだ凹部が形成されており、回転軸の反出力側の端部は、凹部内で軸孔から反出力側に向けて突出している。このため、回転軸の反出力側の端部は、固定体の反出力側の端部より出力側に位置する。しかも、反出力側ラジアル軸受部材の軸受部の出力側の端部は、ステータの反出力側の端部より出力側に位置する。このため、モータの軸線方向の寸法を短くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したモータとして、ステッピングモータを例に説明する。なお、本発明を適用したステッピングモータにおいて、回転軸の軸線方向Lにおいて、回転軸が突出している側が「出力側L1」であり、回転軸が突出している側とは反対側が「反出力側L2」である。
【0022】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したステッピングモータの断面図である。
図2は、本発明を適用したステッピングモータの外観等を示す斜視図であり、
図2(a)、(b)、(c)は、ステッピングモータを出力側からみたときの斜視図、反出力側からみたときの斜視図、およびステッピングモータから反出力側端板を外した状態を反出力側からみたときの斜視図である。
図3は、本発明を適用したステッピングモータの分解斜視図であり、
図3(a)、(b)は、ステッピングモータから反出力側端板と反出力側ラジアル軸受部材とを外した状態を出力側からみたときの分解斜視図、および反出力側からみたときの分解斜視図である。
図4は、本発明を適用したステッピングモータにおいてロータ等を外した状態を反出力側からみたときの分解斜視図である。
【0023】
図1〜
図4に示すように、本形態のステッピングモータ1(モータ)は、回転軸12の外周面に永久磁石11を備えたロータ10と、永久磁石11の外周面に対向する筒状のステータ20を備えた固定体2とを有している。永久磁石11の外周面には、N極とS極が周方向において交互に配置されている。回転軸12において、ステータ20から出力側L1に突出する部分121には歯車等の筒状の従動部材18が圧入により固着されている。永久磁石11の出力側L1の端部には、反出力側L2側から出力側L1に向けて拡径しながら開口する段付きの環状凹部111が回転軸12を囲むように形成されており、かかる環状凹部111の内部に設けられた接着剤13によって、永久磁石11と回転軸12とが固定されている。本形態において、回転軸12の反出力側L2の端部122は、軸線方向Lに直交する平面になっている。
【0024】
ステータ20は、軸線方向Lに重ねて配置された一対のステータ組21、22を有しており、ステータ組21、22は各々、インシュレータ216、226に巻回されたコイル213、223と、インシュレータ216、226の軸線方向Lの両側に配置されたステータコア211、212、221、222とを備えている。ステータコア211は、インシュレータ216の出力側L1の面に被さる外ステータコアであり、ステータコア212は、インシュレータ216の反出力側L2の面に被さる内ステータコアであり、ステータコア221は、インシュレータ226の反出力側L2の面に被さる外ステータコアであり、ステータコア222は、インシュレータ216の出力側L1の面に被さる内ステータコアである。ステータコア211、221は、断面U字形状を有しており、外周側の筒状部によってモータケースが構成されている。
【0025】
ステータ20において、ステータコア211、212、221、222は各々、インシュレータ216、226の内周面に沿って起立する複数の極歯217、227を備えている。ステータ組21を構成した状態で、ステータコア211に形成された極歯217は、ステータコア212に形成された極歯217の間に入り込み、ステータコア211に形成された極歯217とステータコア212に形成された極歯217とは、周方向に交互に配置された状態となる。また、ステータ組22を構成した状態で、ステータコア221に形成された極歯227は、ステータコア222に形成された極歯227の間に入り込み、ステータコア221に形成された極歯227とステータコア222に形成された極歯227とは、周方向に交互に配置された状態となる。
【0026】
インシュレータ216、226には端子台218、228が一体に形成され、かかる端子台218、228には端子219、229が設けられている。
【0027】
固定体2において、ステータ20の両端部のうち、出力側L1の端部23には出力側端板25が固定され、反出力側L2の端部24には反出力側端板9が固定されている。本形態において、ステータ20の出力側L1の端部23は、ステータコア211の円環部からなり、ステータ20の反出力側L2の端部24は、ステータコア221の円環部からなる。
【0028】
(出力側L1の軸受構造)
本形態では、出力側端板25を利用して回転軸12を出力側L1で回転可能に支持する出力側ラジアル軸受部材7が保持されており、出力側ラジアル軸受部材7は、回転軸12において永久磁石11より出力側L1に位置する部分を回転可能に支持している。より具体的には、出力側端板25には穴251が形成されており、出力側ラジアル軸受部材7は、穴251に嵌った状態で出力側端板25に保持されている。出力側ラジアル軸受部材7は、穴251に嵌った筒部71と、筒部71に対して出力側L1で拡径して筒部71より大径のフランジ部72とを有している。かかる出力側ラジアル軸受部材7は、フランジ部72の反出力側L2の面が出力側端板25の出力側L1の面に重なった状態で、筒部71のうち、出力側端板25の反出力側L2の面よりもさらに反出力側L2に突出した筒部71の外縁を出力側端板25の反出力側L2の面にかしめることにより固定されている。出力側ラジアル軸受部材7は、焼結含油軸受からなる。
【0029】
(反出力側L2の軸受構造)
本形態では、反出力側端板9を利用して回転軸12を反出力側L2で回転可能に支持する反出力側ラジアル軸受部材8が保持されており、反出力側ラジアル軸受部材8は、回転軸12において永久磁石11より反出力側L2に位置する部分を回転可能に支持している。
【0030】
より具体的には、まず、反出力側ラジアル軸受部材8には、回転軸12の外周面をラジアル方向で支持する軸孔85を備えた軸受部83と、軸受部83より反出力側L2でラジアル方向外側に向けて突出してステータ20の反出力側の端部24に重なるフランジ部82とが形成されている。
【0031】
また、反出力側ラジアル軸受部材8には、軸受部83の反出力側L2の端部で拡径する円盤部81が形成されており、フランジ部82は、円盤部81の反出力側L2の端面810からラジアル方向外側に向けて突出している。
【0032】
本形態において、フランジ部82は、円盤部81の反出力側L2の端面810からラジアル方向外側に向けて突出した3つの矩形板部821、822、823からなり、矩形板部821、822、823のラジアル方向内側部分は、円盤部81の反出力側L2の端面810に形成された環状部87によって繋がっている。
【0033】
円盤部81は、外径寸法がステータ20の内径寸法よりわずかに小さく設定されている。このため、反出力側ラジアル軸受部材8に形成されたフランジ部82の矩形板部821、822、823をステータ20の反出力側L2の端部24に重ねると、円盤部81は、ステータ20の反出力側L2の端部の内側に圧入されて嵌った状態となり、軸受部83は、ステータ20の内側のうち、円盤部81よりさらに出力側L1に入り込む。
【0034】
円盤部81の外周縁には、周方向の2個所にラジアル方向外側に向けて小さく突出した凸部811が形成されており、円盤部81をステータ20の内側に嵌めた際、凸部811は、ステータコア221の極歯227の根元部分に形成された切り欠き208に嵌る。従って、反出力側ラジアル軸受部材8は、ステータコア221によって周方向で位置決めされる。
【0035】
このように構成した反出力側ラジアル軸受部材8の反出力側L2の端面の中央には、出力側L1に向けて凹んだ円形の凹部80が形成されており、かかる凹部80の内径寸法は、軸孔85の内径寸法より大である。このため、軸受部83は、凹部80の底部801に相当する円形の板状部分に貫通孔からなる軸孔85が形成された構造になっており、軸孔85は、凹部80の底部801の中央で反出力側L2に向けて開口している。従って、本形態において、軸受部83は、反出力側ラジアル軸受部材8において軸孔85が形成されている部分を意味し、軸受部83の軸線方向Lの位置や寸法は、反出力側ラジアル軸受部材8において軸孔85が形成されている範囲の位置や寸法によって規定されている。本形態において、反出力側ラジアル軸受部材8は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、LCP(液晶ポリマー)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンの共重合樹脂)、PC(ポリカーボネート)等の樹脂成形品からなる。なお、凹部80は円形に限らず、矩形等であってもよい。
【0036】
反出力側端板9は、外径寸法がステータ20の外径寸法よりやや小さい円板状であり、反出力側ラジアル軸受部材8のフランジ部82(矩形板部821、822、823)および環状部87が嵌る開口部90が形成されている。具体的には、開口部90は、矩形板部821、822、823が嵌る矩形の開口部901、902、903が、環状部87が嵌る円形の開口部904によって繋がった1つの開口部として形成されている。反出力側端板9において、開口部904の周りに位置する部分は、反出力側ラジアル軸受部材8の円盤部81の反出力側L2の端面810に重なる。従って、反出力側端板9の外縁をステータ20の反出力側L2の端部24に溶接すると、反出力側ラジアル軸受部材8は、フランジ部82がステータ20の反出力側L2の端部24に当接することによって出力側L1への移動が阻止される。また、反出力側ラジアル軸受部材8は、円盤部81の反出力側L2の端面810が反出力側端板9の出力側L1の面に当接することによって反出力側L2への移動が阻止される。それ故、反出力側ラジアル軸受部材8は、反出力側端板9とステータ20との間に挟まれて移動不能に保持された状態となる。
【0037】
この状態で、反出力側ラジアル軸受部材8の反出力側L2の端面と、反出力側端板9の反出力側L2の端面とは、軸線方向Lにおいて同一の位置にあり、固定体2の反出力側L2の端部を規定する。また、
図1に示すように、軸受部83の出力側L1の端部830は、軸線方向Lにおいて、ステータ20の反出力側L2の端部24より寸法t11分だけ出力側L1に位置する。また、軸受部83を構成する突部の根元部分(円盤部81の出力側L1の面)は、軸線方向Lにおいて、ステータ20の反出力側L2の端部24より寸法t12分だけ出力側L1に位置する。また、軸受部83において、軸孔85の反出力側L2の端部(凹部80の底部801)は、軸線方向Lにおいて、ステータ20の反出力側L2の端部24より寸法t13分だけ出力側L1に位置する。従って、本形態では、軸受部83の全体が、軸線方向Lにおいて、ステータ20の反出力側L2の端部24より出力側L1に位置する。
【0038】
また、回転軸12の反出力側L2の端部122は、凹部80内で軸孔85から反出力側L2に向けて突出し、軸線方向Lにおいて、固定体2の反出力側L2の端部(反出力側ラジアル軸受部材8の反出力側L2の端部、および反出力側端板9の反出力側L2の端部)より寸法t2分だけ出力側L1に位置する。このため、回転軸12の反出力側L2の端部122は、固定体2の反出力側L2の端部から反出力側L2に突出していない。本形態において、回転軸12の反出力側L2の端部122は、軸線方向Lにおいて、ステータ20の反出力側L2の端部24と略同一の位置にある。
【0039】
(付勢部材44および環状部材15の構成)
本形態のステッピングモータ1において、出力側ラジアル軸受部材7とロータ10との間には、回転軸12を反出力側L2に付勢する付勢部材44が配置されている。本形態において、付勢部材44はコイルバネからなり、回転軸12の周りに配置されている。付勢部材44(コイルバネ)を配置するにあたって、本形態では、付勢部材44の反出力側L2の端部は、永久磁石11の環状凹部111の内部に収容されている。ここで、付勢部材44の出力側L1の端部と出力側ラジアル軸受部材7の反出力側L2の端部75との間には、回転軸12に装着された環状のワッシャ41が配置され、付勢部材44の反出力側L2の端部と環状凹部111の段部との間には、回転軸12に装着された環状のワッシャ42が配置されている。従って、回転軸12が回転したとき、ワッシャ41と付勢部材44の出力側L1の端部との間、およびワッシャ42と付勢部材44の反出力側L2の端部との間のうちの一方あるいは双方が摺動部分となる。本形態において、ワッシャ41はワッシャ42より大径である。ワッシャ41は、回転軸12に対して軸線方向Lに移動可能な状態で嵌められている。ワッシャ42は、回転軸12に対して軸線方向Lに移動可能な状態で嵌められている構成、および回転軸12に対して圧入されて軸線方向Lに移動不能な状態で嵌められている構成のいずれであってもよく、本形態において、ワッシャ41、42は、回転軸12に対して軸線方向Lに移動可能な状態で嵌められている。
【0040】
本形態のステッピングモータ1において、ロータ10では、回転軸12の永久磁石11と反出力側ラジアル軸受部材8との間に位置する部分に環状部材15が装着されている。かかる環状部材15を配置するにあたって、永久磁石11の反出力側L2の端部115の中央には、回転軸12の周りに環状凹部118が形成されており、かかる環状凹部118の内側に環状部材15が配置されている。環状部材15の厚さは、環状凹部118の深さより小であるため、環状部材15は、完全に環状凹部118の内側に位置し、永久磁石11の反出力側L2の端部115から突出していない。
【0041】
永久磁石11の環状凹部118の内径寸法は、反出力側ラジアル軸受部材8の軸受部83の出力側L1の端部830の外径寸法より大であり、反出力側ラジアル軸受部材8の軸受部83の出力側の端部は、永久磁石11の環状凹部118の内側に位置している。また、環状凹部118の底部119は、軸線方向Lに直交する平面になっており、反出力側ラジアル軸受部材8の軸受部83の出力側L1の端部830も、軸線方向Lに直交する平面になっている。また、ロータ10は、付勢部材44によって反出力側L2に付勢されている。このため、環状部材15の出力側L1の面151は、永久磁石11の環状凹部118の底部119に接し、環状部材15の反出力側L2の面152は、軸受部83の出力側L1の端部830に接している。環状部材15としては、金属製の部材を用いることができる他、樹脂製の部材を用いてもよい。本形態において、環状部材15は樹脂製である。本形態において、環状部材15の外径寸法は、永久磁石11の環状凹部118の内径寸法、および反出力側ラジアル軸受部材8の軸受部83の出力側L1の端部830の外径寸法より小である。また、環状凹部118の底部119は、軸受部83の出力側L1の端部830より面積が広い。
【0042】
このように構成したステッピングモータ1において、環状部材15の出力側L1の面151は永久磁石11の環状凹部118の底部119に接しており、摺動不能であるのに対して、環状部材15の反出力側L2の面152は、反出力側ラジアル軸受部材8の軸受部83の出力側L1の端部830に対して摺動可能である。従って、本形態では、環状部材15の反出力側L2の面152によって、ロータ10において軸線方向Lの反出力側L2に向く被支持面19が構成され、固定体2には、反出力側ラジアル軸受部材8の軸受部83の出力側L1の端部830によって、ロータ10の被支持面19を、被支持面19より反出力側L2で摺動可能に支持する支持面29が構成されている。
【0043】
なお、環状部材15は、回転軸12に対して軸線方向Lに移動可能な状態で嵌められている構成、および回転軸12に対して圧入されて軸線方向Lに移動不能な状態で嵌められている構成のいずれであってもよく、本形態において、環状部材15は、回転軸12に対して圧入されて軸線方向Lに移動不能な状態にある。
【0044】
(ロータ10の摺動負荷)
ステッピングモータ1において、固定体2とロータ10との間には、反出力側ラジアル軸受部材8の軸受部83の出力側L1の端部830とロータ10側の環状部材15の反出力側L2の面152との摺動部分、反出力側ラジアル軸受部材8と回転軸12との摺動部分、出力側ラジアル軸受部材7と回転軸12との摺動部分、ワッシャ41と付勢部材44の出力側L1の端部との摺動部分、およびワッシャ42と付勢部材44の反出力側L2の端部との摺動部分が存在し、ロータ10には全体として第1摺動負荷Taが加わる。
【0045】
ここで、反出力側ラジアル軸受部材8の軸受部83の出力側L1の端部830とロータ10側の環状部材15の反出力側L2の面152との摺動部分での摺動負荷(第2摺動負荷Tb)は、ロータ10に加わる全摺動負荷(第1摺動負荷Ta)に比して小である。このため、第1摺動負荷Taと第2摺動負荷Tbとは、下式で示す関係
第2摺動負荷Tb<第1摺動負荷Ta
にある。
【0046】
また、ステッピングモータ1では、ロータ10に対して、永久磁石11から発生する磁束がステータ20へ流れるときの流れの強弱により、固定体2に設けたステータ20の極歯217、227との間にディテントトルクが作用する。また、ロータ10を回転させる際、ロータ10にはステータ20から発生する起磁力によって動トルクが作用する。
【0047】
かかるトルクに関して、本形態のステッピングモータ1では、第1摺動負荷Taが、ディテントトルクTdおよび動トルクTeに対して、下式で示す関係
Td<Ta<Te
を満たすように設定されている。
【0048】
ここで、第1摺動負荷Taと第2摺動負荷Tbとは、下式で示す関係
第2摺動負荷Tb<第1摺動負荷Ta
にあるため、第1摺動負荷Taおよび第2摺動負荷Tbは、ディテントトルクTdおよび動トルクTeに対して、下式で示す関係
Td<Tb<Ta<Te
を満たすように設定されている。
【0049】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のステッピングモータ1において、固定体2に用いた反出力側ラジアル軸受部材8には、回転軸12の外周面をラジアル方向で支持する軸孔85を備えた軸受部83と、軸受部83より反出力側L2でラジアル方向外側に向けて突出してステータ20の反出力側L2の端部24に重なるフランジ部82と、反出力側ラジアル軸受部材8の反出力側L2の端部で出力側L1に向けて凹み、底部801で軸孔85が開口する凹部80とが形成されている。また、軸受部83の出力側L1の端部830は、回転軸12の軸線方向Lにおいてステータ20の反出力側L2の端部24より出力側L1に位置している。また、回転軸12の反出力側L2の端部122は、凹部80内で軸孔85から反出力側L2に向けて突出し、軸線方向Lにおいて固定体2の反出力側L2の端部(反出力側ラジアル軸受部材8の反出力側L2の端部、および反出力側端板9の反出力側L2の端部)より出力側L1に位置する。また、永久磁石11の反出力側L2の端部115には、回転軸12の周りで出力側L1に向けて凹む環状凹部118が形成され、軸受部83の少なくとも出力側L1の端部は、環状凹部118の内側に位置する。このため、ステッピングモータ1の軸線方向Lの寸法を短くすることができる。
【0050】
また、回転軸12の反出力側L2の端部122は、凹部80の底部で開口する貫通穴からなる軸孔85から反出力側L2に向けて突出しているが、反出力側ラジアル軸受部材8の反出力側L2の端部(端面)からさらに反出力側L2には突出していない。すなわち、回転軸12の反出力側L2の端部122は、凹部80内に位置し、かつ、反出力側L2から見た場合に露出状態にある。このため、回転軸12においてステータ20より出力側L1に向けて突出する部分121にギヤ等の従動部材18を出力側L1の端部から嵌める際、回転軸12の反出力側L2の端部122を治具等によって直接、支持することができる。また、回転軸12の反出力側L2の端部は、軸線方向Lに対して直交する面からなる。このため、回転軸12の反出力側L2の端部122を治具等によって安定した状態で支持することができる。
【0051】
また、永久磁石11の環状凹部118の底部119、および反出力側ラジアル軸受部材8の軸受部83の出力側L1の端部830は、軸線方向Lに直交する平面になっている。また、ロータ10は、付勢部材44によって反出力側L2に付勢されている。このため、環状部材15の出力側L1の面151は、永久磁石11の環状凹部118の底部119に接し、環状部材15の反出力側L2の面152は、軸受部83の出力側L1の端部830に接している。また、環状部材15の反出力側L2の面152によって、ロータ10において軸線方向Lの反出力側L2に向く被支持面19が構成され、固定体2には、反出力側ラジアル軸受部材8の軸受部83の出力側L1の端部830によって、ロータ10の被支持面19を、被支持面19より反出力側L2で摺動可能に支持する支持面29が構成されており、かかる摺動面での摺動負荷(第2摺動負荷Tb)、ロータ10に加わる全摺動負荷(第1摺動負荷Ta)、ディテントトルクTdおよび動トルクTeは、下式で示す関係
Td<Tb<Ta<Te
を満たすように設定されている。このため、ステータ20への励磁電流の供給を停止して、ロータ10を所定の位置で停止させようとした際、ロータ10の永久磁石11とステータ20の極歯217、227との間の磁気吸引力(ディテントトルクTd)がロータ10に加わった場合でも、ロータ10がディテントトルクTdによって周方向に引っ張られることがなく、第1摺動負荷Taによって、ロータ10が所定位置で停止する。それ故、ロータ10の停止位置の精度を高めることができる。よって、ステッピングモータ1の極数を増やさずに、ロータ10の停止位置の分解能を高めることができる。また、第1摺動負荷Taは、ロータ10がステータ20から受ける動トルクTeより小さいため、ロータ10の回転駆動には支障がない。
【0052】
さらに、第1摺動負荷Taを適正に設定するにあたって、ロータ10を反出力側L2に付勢する付勢部材44を設けるとともに、ロータ10と固定体2とを軸線方向Lで接触させる。従って、ロータ10と固定体2との間には大きな第2摺動負荷Tbが発生し、かかる第2摺動負荷Tbは、軸線方向Lで面接触する部分で発生する摺動負荷であるため、他の摺動部分での摺動負荷に比して大きいレベルである。すなわち、反出力側ラジアル軸受部材8の軸受部83の出力側L1の端部830(支持面29)とロータ10側の環状部材15の反出力側L2の面152(被支持面19)との摺動部分での摺動負荷(第2摺動負荷Tb)は、反出力側ラジアル軸受部材8と回転軸12との摺動部分、出力側ラジアル軸受部材7と回転軸12との摺動部分、ワッシャ41と付勢部材44の出力側L1の端部との摺動部分、およびワッシャ42と付勢部材44の反出力側L2の端部との摺動部分での各摺動負荷に比して大である。また、支持面29と被支持面19との間に発生する第2摺動負荷Tbは、軸線方向Lで面接触する部分で発生する摺動負荷であるため、他の摺動部分で発生する摺動負荷に比較して安定している。それ故、ロータ10に加わる第1摺動負荷Taを確実にディテントトルクTdより大で、動トルクTeより小さい条件に設定することができる。
【0053】
また、本形態では、永久磁石11より反出力側L2で回転軸12に保持された環状部材15をロータ10に設け、かかる環状部材15の反出力側L2の面152を被支持面19として利用している。このため、回転軸12や永久磁石11の材質や径とは関係なく、所定の第2摺動負荷Tbを得るのに適した被支持面19を構成することができる。
【0054】
また、本形態では、反出力側ラジアル軸受部材8の軸受部83において出力側L1に向く端部830によって支持面29が構成されている。このため、第2摺動負荷Tbを発生させるのに、新たな部材を固定体2の側に追加する必要がない。しかも、反出力側ラジアル軸受部材8は、支持面29の面積が広いので、安定した第2摺動負荷Tbを発生させることができる。また、反出力側ラジアル軸受部材8として、焼結含油軸受を用いれば、安定した第2摺動負荷Tbを発生させることができる。
【0055】
また、付勢部材44は、コイルバネからなるため、バネ定数が小さい。従って、安定した付勢力を発生させることができるので、安定した第2摺動負荷Tbを発生させることができる。また、付勢部材44(コイルバネ)は、永久磁石11と出力側ラジアル軸受部材7との間に配置されているため、付勢部材44を追加しても、ステッピングモータ1が大型化することがない。
【0056】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、付勢部材44として、コイルバネを用いたが、板バネや皿バネ等を用いてもよい。
【0057】
上記実施の形態では、第1摺動負荷Taおよび第2摺動負荷Tbは、ディテントトルクTdおよび動トルクTeに対して、下式で示す関係
Td<Tb<Ta<Te
を有していたが、下式で示す関係
Tb≦Td<Ta<Te
であってもよい。