(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0019】
〔樹脂組成物〕
本実施形態に係る樹脂組成物は、
ポリオキシメチレン樹脂100質量部と、中空状粒子5〜70質量部と、を含み、密度が1.4g/cm
3以下である。
【0020】
本実施形態におけるポリオキシメチレン樹脂組成物の密度は、ベース樹脂のポリオキシメチレン樹脂の密度である1.41g/cm
3を下回る1.4g/cm
3以下であり、1.3g/cm
3以下が好ましく、1.2g/cm
3以下がより好ましく、1.1g/cm
3以下がさらに好ましい。密度が1.4g/cm
3以下であることにより、軽量性により優れる。また、密度の下限は特に制限されないが、実用に耐える物性を維持するためには0.8g/cm
3とすることが好ましい。
【0021】
〔ポリオキシメチレン樹脂〕
本実施形態において使用可能なポリオキシメチレン樹脂(以下、「POM」ともいう。)としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシメチレンホモポリマー及びポリオキシメチレンコポリマーが挙げられる。ポリオキシメチレンホモポリマーは、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られるものである。したがって、ポリオキシメチレンホモポリマーは、実質的にオキシメチレン単位からなる。
【0022】
また、ポリオキシメチレンコポリマーは、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール等のグリコール、ジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル、環状ホルマールと、を共重合させて得られるものである。また、ポリオキシメチレンコポリマーとして、ホルムアルデヒドの単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる分岐を有するポリオキシメチレンコポリマー、又は、多官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる架橋構造を有するポリオキシメチレンコポリマーを用いることもできる。
【0023】
さらには、ポリオキシメチレン樹脂は、両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有する化合物、例えばポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒドの単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリオキシメチレンホモポリマーであってもよい。同じく、ポリオキシメチレン樹脂は、両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、環状エーテルや環状ホルマールと、を共重合させて得られるブロック成分を有するポリオキシメチレンコポリマーであってもよい。以上のように、本実施形態におけるポリオキシメチレン樹脂としては、ポリオキシメチレンホモポリマー及びポリアセタールコポリマーのいずれも用いられ得る。また、ポリオキシメチレン樹脂は、1種を単独で用いても又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリオキシメチレン樹脂は、ポリアセタールコポリマーを含むことが好ましい。
【0024】
トリオキサンを用いてポリオキシメチレンコポリマーを得る場合、上記1,3−ジオキソラン等のコモノマーの使用量は、一般的には、トリオキサン100molに対して0.1〜60molが好ましく、0.1〜20molがより好ましく、0.13〜10molがさらに好ましい。本実施形態において、ポリオキシメチレンコポリマーの融点は、162℃〜173℃が好ましく、167℃〜173℃がより好ましく、167℃〜171℃がさらに好ましい。融点が162℃〜173℃であるポリオキシメチレンコポリマーは、トリオキサン100molに対して1.3〜3.5mol程度のコモノマーを用いることにより得ることができる。なお、融点はDSCにより測定することができる。
【0025】
ポリオキシメチレンコポリマーの重合に用いられる重合触媒としては、特に限定されないが、例えば、ルイス酸、プロトン酸、及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。ルイス酸としては、特に限定されないが、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、より具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン、及びその錯化合物又は塩が挙げられる。また、プロトン酸、そのエステル又は無水物としては、特に限定されないが、例えば、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。これらの中でも、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素水和物、及び、酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、より具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルを好適な例として挙げることができる。
【0026】
ポリオキシメチレンコポリマーの製造方法としては、特に限定されず従来公知の方法を用いることができ、例えば、米国特許第3027352号明細書、同第3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、同第1495228号明細書、同第1720358号明細書、同第3018898号明細書、特開昭58−98322号公報及び特開平7−70267号公報に記載の方法が挙げられる。上記の重合により得られたポリオキシメチレンコポリマーには、熱的に不安定な末端部〔−(OCH
2)
n−OH基〕が存在するため、不安定な末端部の分解除去処理を実施することが好ましい。
【0027】
具体的には、不安定末端部の分解除去処理では、下記式(1)で表わされる少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下に、ポリオキシメチレンコポリマーの融点以上260℃以下の温度で、ポリオキシメチレンコポリマーを溶融させた状態で加熱処理を施す。
[R
1R
2R
3R
4N
+]
nX
-n ・・・ (1)
【0028】
ここで、式(1)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、各々独立して、炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基における少なくとも1個の水素原子が炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は、炭素数6〜20のアリール基における少なくとも1個の水素原子が炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基で置換されたアルキルアリール基を示し、置換又は非置換のアルキル基は直鎖状、分岐状、若しくは環状である。上記置換アルキル基における置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、上記非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基において水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1〜3の整数を示す。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を示す。
【0029】
第4級アンモニウム化合物は、上記式(1)で表わされるものであれば特に限定されないが、本実施形態による上記効果をより有効かつ確実に奏する観点から、式(1)におけるR
1、R
2、R
3、及びR
4が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、さらに、R
1、R
2、R
3、及びR
4の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものが特に好ましい。このような第4級アンモニウム化合物としては、特に限定されないが、具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物;上記第4級アンモニウムの、塩酸、臭酸、フッ酸等の水素酸塩;上記第4級アンモニウムの、硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;上記第4級アンモニウムのチオ硫酸等のチオ酸塩;上記第4級アンモニウムの、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸等のカルボン酸塩が挙げられる。これらの中でも、水酸化物(OH
-)、硫酸(HSO
4-、SO
42-)、炭酸(HCO
3-、CO
32-)、ホウ酸(B(OH)
4-)、及びカルボン酸の塩が好ましい。カルボン酸の中では、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。第4級アンモニウム化合物は、1種を単独で用いてもよく又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類を併用してもよい。
【0030】
第4級アンモニウム化合物の使用量は、ポリオキシメチレンコポリマーと第4級アンモニウム化合物との合計質量に対する、下記式(2)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素量に換算して、0.05〜50質量ppmが好ましく、1〜30質量ppmがより好ましい。
第4級アンモニウム化合物の使用量=P×14/Q ・・・ (2)
【0031】
ここで、式(2)中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリオキシメチレンコポリマーに対する濃度(質量ppm)を示し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を示す。
【0032】
第4級アンモニウム化合物の使用量が0.05質量ppm以上であることにより、不安定末端部の分解除去速度がより向上する傾向にある。また、50質量ppm以下であることにより、不安定末端部の分解除去後のポリオキシメチレンコポリマーの色調により優れる傾向にある。
【0033】
本実施形態におけるポリオキシメチレン樹脂の不安定末端部は、融点以上260℃以下の温度でポリオキシメチレンコポリマーを溶融させた状態で熱処理すると、分解除去することができる。この分解除去処理に用いる装置としては特に限定されないが、押出機、ニーダー等が好適である。分解により発生したホルムアルデヒドは通常、減圧下で除去される。第4級アンモニウム化合物とポリオキシメチレンコポリマーとを混合する方法としては、特に限定されないが、例えば、重合触媒を失活する工程において水溶液として添加する方法、重合により生成したポリアセタールコポリマーパウダーに吹きかける方法が挙げられる。いずれの方法を用いても、ポリオキシメチレンコポリマーを加熱処理する工程において、そのコポリマー中に第4級アンモニウム化合物が存在していればよい。例えば、ポリオキシメチレンコポリマーが溶融混練及び押し出される押出機の中に第4級アンモニウム化合物を注入してもよい。あるいは、その押出機等を用いて、ポリオキシメチレンコポリマーにフィラーやピグメントを配合する場合、ポリオキシメチレンコポリマーの樹脂ペレットに第4級アンモニウム化合物をまず添着し、その後のフィラーやピグメントの配合時に不安定末端部の分解除去処理を行ってもよい。
【0034】
不安定末端部の分解除去処理は、重合により得られたポリオキシメチレンコポリマーと共存する重合触媒を失活させた後に行うことも可能であり、重合触媒を失活させずに行うことも可能である。重合触媒の失活処理としては、アミン類等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法が挙げられる。重合触媒の失活を行わない場合、ポリオキシメチレンコポリマーの融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下にてそのコポリマーを加熱し、重合触媒を揮発により減少させた後、不安定末端部の分解除去操作を行うことも有効な方法である。
【0035】
上述のような不安定末端部の分解除去処理により、不安定末端部がほとんど存在しない非常に熱安定性に優れたポリオキシメチレンコポリマーを得ることができる。
【0036】
本実施形態で使用するPOMは、ISO1133に準拠して190℃、2.16kg荷重で測定したメルトマスフローレイト(以下、単に「MFR」ともいう。)が、5g/10分以上であることが好ましく、7g/10分以上がより好ましく、9g/10分以上がさらに好ましく、12g/10分以上がさらにより好ましく、25g/10分以上が最も好ましい。POMのMFRが5g/10分以上であることにより、本実施形態に係る樹脂組成物中に含まれる中空状粒子が破砕されることを抑制することができ、低密度の成形体を得ることができ、またミクロボイドのない、押出成形体を得ることができる。MFRの上限は特に制限されないが、クリープ特性等の悪化を抑制する観点より、100g/10分以下とすることが好ましい。
【0037】
〔中空状粒子〕
本実施形態に係る樹脂組成物は、中空状粒子を含む。樹脂組成物中に含まれる中空状粒子としては、特に限定されないが、例えば、ケイ酸塩を主成分とする球状の中空構造を有する粒子が挙げられる。
【0038】
本実施形態における中空状粒子の含有量は、ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対して、5〜70質量部である。含有量が5質量部以上であることにより、充分な密度低減効果を発現させることができる。含有量の下限は、8質量部が好ましく、10質量部がより好ましい。また、含有量が70質量部以下であることにより、加工時の中空状粒子同士の接触による中空状粒子の破壊をより抑制することができる。含有量の上限は、60質量部が好ましく、50質量部がより好ましく、45質量がさらに好ましい。
【0039】
本実施形態にかかる樹脂組成物に含まれる中空状粒子の円相当最大粒子径は、15〜120μmであることが好ましい。円相当最大粒子径の下限は、15μmが好ましく、18μmがより好ましく、20μmがさらに好ましく、25μmがさらにより好ましい。円相当最大粒子径の下限が15μmであることにより、充分な密度低減効果と、押出成形時のミクロボイドの発生を抑制することができる。また、円相当最大粒子径の上限は、120μmが好ましく、100μmがより好ましく、80μmがさらに好ましく、60μmがさらにより好ましい。上限が120μmであることにより、破砕による表面外観の悪化を抑制することができる。なお、ここでいう中空状粒子の円相当最大粒子径とは、樹脂の加工段階で破砕されなかった原材料としての中空状粒子の円相当最大粒子径と同じである。中空状粒子の円相当最大粒子径は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0040】
また、本実施形態にかかる樹脂組成物中に含まれる中空状粒子のうち1.4以下のアスペクト比を有する粒子の残存率は、40質量%以上が好ましい。残存率の下限は、40質量%が好ましく、より好ましくは45質量%であり、さらに好ましくは50質量%であり、さらにより好ましくは55質量%である。残存率の上限は特に制限されず、100質量%が、好ましいが、破砕することは免れないので、実質的には95質量%である。本実施形態にかかる樹脂組成物を製造するにあたり、ポリオキシメチレン樹脂と中空状粒子とを混合する際に、中空状粒子の一部が破砕される場合があり、破砕された中空状粒子はアスペクト比が球状(アスペクト比=1)から外れる。破砕される中空状粒子の割合が少ないほど密度の低い樹脂組成物を得ることができる傾向にあるため、残存率が上記範囲内であることにより密度のより低い樹脂組成物を得ることができる。なお、残存率は実施例に記載の方法により測定することができる。樹脂組成物中に含まれる中空状粒子の残存率を40質量%以上とすることで、樹脂組成物の密度を低く抑え、良好な艶消し表面を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0041】
本実施形態にかかるポリアセタール樹脂組成物中に含まれる中空状粒子の円相当最大粒子径やアスペクト比を測定するためには、ポリアセタール樹脂組成物から中空状粒子を分離し、粒度・形状分布測定機を用いて、粒子1つ1つの形状を測定することで可能となる。粒度・形状分布測定機としては、例えば株式会社セイシン企業製のPITA−3が挙げられる。この場合、測定時のキャリア液としては、例えばイソプロピルアルコールが好ましく使用できる。
【0042】
また、ポリアセタール樹脂組成物から中空状粒子を分離する手法としては、例えば、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール中に樹脂組成物を浸漬し、ポリアセタール成分を分離する方法、樹脂部分が燃焼する温度以上の条件で、樹脂組成物中の樹脂成分のみを焼却する方法等が挙げられる。いずれも方法でも構わないが、樹脂部分が燃焼する温度以上の条件で、樹脂組成物中の樹脂成分のみを焼却する方法が、その簡便性と、得られるサンプル量の観点より、好ましい。この際、10℃/分以下の昇温・冷却速度とすることが好ましい。昇温・冷却速度が10℃/分以下であることにより、急加熱・急冷却が抑制され、中空状粒子の残存率が低下することをより抑制できる傾向にある。
【0043】
本実施形態で使用可能な中空状粒子としては、特に限定されないが、具体的には、シラスバルーン、フライアッシュ、ガラスバルーン等が挙げられる。このなかでも、中空状粒子としては、シラスバルーン、ガラスバルーンが好ましい。このような中空状粒子は、含有されている金属元素がより少ない傾向にある。また、この中でも特にガラスバルーンが好ましい。ガラスバルーンであれば、その粒子径や分布がより制御しやすい傾向にある。
【0044】
また、本実施形態で使用可能な中空状粒子は、その表面が表面処理されていてもよい。表面処理としては、特に限定されないが、具体的には、有機シラン化合物、有機チタネート化合物又は有機アルミネート化合物の表面処理剤による表面処理が挙げられる。表面処理されている中空状粒子を用いることで、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性の向上(特に、成形機内での限界滞留時間の改善)に大きく寄与する傾向にある。
【0045】
表面処理剤に使用可能な有機シラン化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス−(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタアクリロキシプロピルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス−(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタアクリロキシプロピルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシシランが好ましく使用可能である。このなかでも、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシシランが、成形体の変色を抑制する観点より好ましく使用可能である。
【0046】
また、有機チタネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラステアリルチタネート、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセトネート、チタニウムラクチート、オクチレンブリコールチタネート、イソプロピル(N−アミノエチルアミノエチル)チタネートが挙げられる。また、有機アルミネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピネート等が挙げられる。これらの表面処理剤は一種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0047】
本実施形態で適用可能な表面処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、上述の表面処理剤を、水や各種有機溶媒に溶解又は分散させた液を中空状粒子に接触させ、高温条件下で所定時間乾燥することにより得られる。この場合の溶液又は分散液中の表面処理剤の濃度は、好ましくは0.0001〜10質量%の範囲で使用可能である。液と中空状粒子との接触回数を増やすことで、その表面処理率を向上させることができる。
【0048】
〔樹脂組成物の製造方法〕
次に本実施形態における樹脂組成物の製造方法について説明する。本実施形態における樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、中空状粒子と、溶融したポリオキシメチレン樹脂と、を混合する混合工程を有する方法が挙げられる。混合工程を有することにより、中空状粒子の破砕を抑制より抑制でき、残存率を高めることが可能となる。具体的な操作としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシメチレン樹脂と中空状粒子をドライブレンドした後、単軸もしくは二軸押出機を用いて溶融混練する方法等が挙げられる。
【0049】
この際、中空状粒子のすべてをポリオキシメチレン樹脂とドライブレンドする方法ではなく、中空状粒子の少なくとも一部を、溶融したポリオキシメチレン樹脂と混合する方法が好ましい。すなわち、混合工程において、溶融したポリオキシメチレン樹脂と混合する中空状粒子の比率は、使用する中空状粒子の総量100質量%に対して、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がよりさらに好ましく、90質量%以上がさらにより好ましい。溶融したポリオキシメチレン樹脂と混合する中空状粒子の比率の上限は、特に限定されず、100質量%以下が好ましい。具体的な方法としては、上流側以外の下流側に第二の供給口を有する二軸押出機を用いて、上流よりポリオキシメチレン樹脂を供給し溶融させたのち、下流側供給口より、中空状粒子の一部、例えば少なくとも50質量%以上を供給する手法が挙げられる。
【0050】
また、この中空状粒子と混合される溶融ポリオキシメチレン樹脂の温度は、中空状粒子の破砕を抑制するため、180℃以上が好ましく、190℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましい。上限は、ポリオキシメチレン樹脂の熱分解抑制の観点より240℃が好ましく、230℃がより好ましく、225℃がさらに好ましい。
【0051】
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂と混合する中空状粒子の真比重は、0.4〜1.4g/cm
3であることが好ましい。樹脂組成物の密度を低下させるためには、真比重はPOMの密度である1.41g/cm
3を下回る1.4g/cm
3を上限とすることが好ましい。真比重の上限は低い方が好ましく、1.2g/cm
3がより好ましく、1.0g/cm
3がさらに好ましく、0.8g/cm
3がよりさらに好ましい。また、真比重の下限は、特に限定されないが、工業的に生産可能な範囲として0.4g/cm
3が例示できる。より好ましい下限は特に制限されない。
【0052】
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂と混合する中空状粒子の耐圧強度は、20〜300MPaであることが好ましい。「耐圧強度」とは、5%の中空状粒子が破壊する負荷荷重をもって表す。耐圧強度は、20MPa以上が好ましく、30MPaがより好ましく、50MPaがさらに好ましく、70MPaがよりさらに好ましく、80MPaがさらにより好ましい。耐圧強度が20MPa以上であることにより、加工時の破壊をより抑制できる傾向にある。また、耐圧強度の上限は、300MPaが好ましく、250MPaがより好ましく、230MPaがさらに好ましく、200MPaがよりさらに好ましい。耐圧強度が300MPa以下であることにより、配合量に対する密度低減効果がより高くなる傾向にある。なお、耐圧強度は、タルクと混合した中空状粒子を乾燥窒素ガスにより加圧したときの中空状粒子の残存率が90%以上である圧力であり、中空状粒子の真比重の変化率から計算することができる。
【0053】
〔繊維状粒子〕
本実施形態における樹脂組成物は、付加的成分として機械的特性の強化のため繊維状粒子及び/又は板状粒子を含んでもよい。ここでいう繊維状粒子及び板状粒子とは、樹脂組成物中に存在する繊維状粒子、板状粒子の平均アスペクト比が5以上である粒子である。
【0054】
繊維状粒子としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、チタン酸カリウム繊維、アスベスト繊維、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素繊維、メタケイ酸カルシウム繊維、又はアラミド繊維等が挙げられる。
【0055】
また、板状粒子としては、特に限定されないが、例えば、タルク、マイカ、カオリン、ガラスフレーク、ベントナイト等が挙げられる。これらの中では、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維を用いることにより、機械的強度により優れ、かつ経済的である傾向にある。また、タルク、マイカも好ましい。これらは中空状粒子を破砕しにくい硬度を有するため、タルク、マイカを用いることにより中空状粒子の破砕を抑制できる傾向にある。
【0056】
これら繊維状粒子及び/又は板状粒子の含有量は、ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対し、5〜60質量部が好ましい。含有量が5質量部以上であることにより、補強効果がより優れる傾向にある。下限は、8質量部が好ましく、10質量部がより好ましい。また、60質量部以下であることにより、密度低減効果により優れる傾向にある。上限は40質量部が好ましく、35質量部がより好ましく、30質量部がさらに好ましい。
【0057】
(添加剤)
本実施形態における樹脂組成物には、必要に応じて、ホルムアルデヒド捕捉剤やギ酸の捕捉剤、ポリオレフィン樹脂等の摺動性付与剤、酸化防止剤等の各種添加剤を配合することが可能である。
【0058】
本実施形態で使用可能なホルムアルデヒドの捕捉剤としては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物が挙げられる。ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物を用いることにより、樹脂組成物の熱安定性により優れる傾向にある。
【0059】
ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物としては、特に限定されないが、例えば、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等のポリアミド樹脂が挙げられる。また上記の他にも、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられ、例えばアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体を挙げることができる。その他にも、アミド化合物、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの縮合物、尿素、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物を挙げることができる。
【0060】
アミド化合物としては、特に限定されないが、例えば、イソフタル酸ジアミド等の多価カルボン酸アミド、アントラニルアミドが挙げられる。
【0061】
アミノ置換トリアジン化合物としては、特に限定されないが、例えば、2,4−ジアミノ−sym−トリアジン、メラミン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン等が挙げられる。
【0062】
アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの付加物としては、特に限定されないが、例えば、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミン等が挙げられる。
【0063】
アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物としては、特に限定されないが、例えば、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物等が挙げられる。
【0064】
尿素誘導体としては、特に限定されないが、例えば、N−置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物等が挙げられる。
【0065】
N−置換尿素としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基等の置換基が置換したメチル尿素、アルキレンビス尿素、アリール置換尿素等が挙げられる。
【0066】
尿素縮合体としては、特に限定されないが、例えば、尿素とホルムアルデヒドの縮合体等が挙げられる。
【0067】
ヒダントイン化合物としては、特に限定されないが、例えば、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン等が挙げられる。
【0068】
ウレイド化合物としては、特に限定されないが、例えば、アラントイン等が挙げられる。
【0069】
ヒドラジン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、ヒドラジド化合物が挙げられる。ヒドラジド化合物の具体例としては、ジカルボン酸ジヒドラジドが挙げられ、さらに具体的には、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スペリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド等が挙げられる。
【0070】
イミド化合物としては、特に限定されないが、例えば、スクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミド等が挙げられる。
【0071】
これらのホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、メラミンが特に好ましい。
【0072】
ギ酸の捕捉剤としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩が挙げられる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウム等の水酸化物;上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、硼酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。具体的にはカルシウム塩が好ましく、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、硼酸カルシウム、及び脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)が挙げられる。なお、脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。これらの中では、ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等の脂肪酸カルシウム塩がより好ましい。
【0073】
これらホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤の添加量は、ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対し、0.001〜2質量部が好ましい。
【0074】
本実施形態において使用可能なポリオレフィン樹脂等の摺動性付与剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリプロピレン−ブテン共重合体、ポリブテン、ポリブタジエンの水添物、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これら重合体の変性体としては、他のビニル化合物の1種以上をグラフトさせたグラフト共重合体;α,β−不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ナジック酸等)又はその酸無水物で(必要により過酸化物を併用して)変性したもの;オレフィン系化合物と酸無水物を共重合したものが挙げられる。
【0075】
これらの中でも、ポリエチレンが好ましく、高圧法低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm
3以上0.93g/cm
3未満のポリエチレン)がより好ましい。高圧法低密度ポリエチレンの具体例としては、サンテックLD L1850A(融点107℃、旭化成ケミカルズ(株)製)、ペトロセン342(融点102℃、東ソー(株)製)等を挙げることができる。これらのポリオレフィン樹脂の分子量は特に限定されないが、好ましくは重量平均分子量で10,000〜300,000の範囲であり、より好ましくは10,000〜100,000であり、さらに好ましくは15,000〜80,000である。ここで、ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
【0076】
これらポリオレフィン樹脂を添加量は、ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対し、0.5〜5質量部が好ましい。
【0077】
本実施形態において使用可能な酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プリピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレンビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミドが挙げられる。
【0078】
上述したヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンが好ましい。
【0079】
これら酸化防止剤を添加量は、ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対し、0.001〜2質量部が好ましい。
【0080】
また、本実施形態におけるポリオキシメチレン樹脂組成物には、必要に応じて、従来ポリオキシメチレン樹脂組成物に使用されているその他成分も配合可能である。
【0081】
〔成形体〕
本実施形態に係る成形体、板状成形体、及びシートは、上記樹脂組成物を含む。本実施形態における樹脂組成物は各種成形体に成形して使用可能である。かかる成形方法としては特に限定されるものではなく、公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法を用いることができる。
【0082】
押出成形の中でも、固化押出成形と呼ばれる丸棒や肉厚平板を成形可能な特殊な成形方法において、本実施形態の樹脂組成物は有用に使用可能である。固化押出成形は、例えば丸棒であれば、所定直径の丸型に押出機から押し出された溶融物をそのままの形で冷却しながら、固化させていく成形方法である。大径の丸棒や、厚肉の平板が成形可能な成形方法であるが、外部からの冷却、固化されるため、後収縮によるヒケの発生や、内部の真空ミクロボイドといった現象が発生しやすいため、ガイドローラーを取り付け、押出機側に圧力をかけながら冷却するという特殊な手法が取られており、成形条件幅が狭いという課題がある。本樹脂組成物は、中空状粒子により、組成物の収縮を抑制し、かつ、固化が早いという利点があり、固化押出成形に適している。
【0083】
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物及び成形体は、耐熱エージング性等のような熱安定性、歯車のような精密機械部品を連続成形したときの寸法安定性にも優れるため、様々な用途の成形品に使用することが可能である。例えば、ギア、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け、及びガイド等に代表される機構部品;アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品;ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ、及びデジタルカメラに代表されるカメラ、またはビデオ機器用部品;カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD(Compact Disk)〔CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む〕、DVD(Digital Video Disk)〔DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−R DL、DVD+R DL、DVD−RAM(Random Access Memory)、DVD−Audioを含む〕、Blu−ray(登録商標) Disc、HD−DVD、その他光ディスクドライブ、MFD、MO、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像または情報機器;携帯電話及びファクシミリに代表される通信機器用部品;電気機器用部品、電子機器用部品、自動車用の部品として、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品;ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品;シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品、コンビスイッチ部品、スイッチ類、及びクリップ類の部品;さらにシャープペンシルのペン先、及びシャープペンシルの芯を出し入れする機構部品;洗面台、排水口、及び排水栓開閉機構部品;自動販売機の開閉部ロック機構、及び商品排出機構部品;衣料用のコードストッパー、アジャスター、及びボタン;散水用のノズル、及び散水ホース接続ジョイント;階段手すり部、及び床材の支持具である建築用品;使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器、及び住宅設備機器に代表される工業部品として好適に使用できる。
【0084】
〔用途〕
本願のポリオキシメチレン樹脂組成物を含む成形体、板状成形体、及びシートは、充分な低密度を実現し、成形体表面を安定した艶消し表面とするだけではなく、固化押出成形時のミクロボイド等の不具合の発生を大幅に抑制するという効果を有しているため、エンジニアリングプラスチックとして、電気機器、自動車部品及びその他精密機械を含めた機構部品を中心に広範囲の用途に使用可能である。
【実施例】
【0085】
以下、実施例及び比較例よって本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はこれらによって何ら限定されるものではない。まず、実施例及び比較例で使用する成分の内容と評価方法を以下に示す。
【0086】
[使用成分の内容]
〔ポリオキシメチレン樹脂〕
ポリオキシメチレン樹脂としては、旭化成ケミカルズ株式会社より入手可能な下記グレードのものを用いた。
・テナックTM 3520 (以下、単に「POM1」ともいう。),
MFR(190℃,2.16kg荷重)=3g/10分
・テナックTM 4520 (以下、単に「POM2」ともいう。),
MFR(190℃,2.16kg荷重)=9g/10分
・テナックTM 8520 (以下、単に「POM3ともいう。),
MFR(190℃,2.16kg荷重)=45g/10分
【0087】
〔中空状粒子〕
ガラスバルーンとしては、住友スリーエム株式会社より入手可能な以下のグレードのものを用いた。
・ガラスバルーン S60HS(以下、単に「GB1」ともいう。),
数平均粒子径=10.2μm,
真比重=0.6
耐圧強度=124MPa
・ガラスバルーン iM16K(以下、単に「GB2」ともいう。),
数平均粒子径=13.5μm,
真比重=0.46
耐圧強度=113MPa
シラスバルーンとしては、株式会社アクシーズケミカルより入手可能な以下のグレードのものを用いた。
・シラスバルーン MSB−3011SS(以下、単に「SB」ともいう。)
数平均粒子径=2.8μm,
真比重=0.7
耐圧強度=10〜15MPa
【0088】
使用した中空状粒子の、数平均粒子径は、粒度・形状分布測定機(PITA−3:株式会社セイシン企業製)を用いて、イソプロピルアルコールをキャリア液とし、超音波を1分かけ、分散させたのち、10,000個の粒子について測定し、数平均粒子径として算出した。
【0089】
(SBの表面処理)
SB100質量部と、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製、KBM−603)1質量部をメタノール3質量部に希釈した液体と、をヘンシェルミキサーで2分間攪拌し、120℃で2時間乾燥した。得られたSBは、熱重量分析(TGA分析)の結果、0.6質量%アミノシランで表面処理されていた。実施例及び比較例では表面処理されたSBを用いた。
【0090】
〈ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法〉
上流側と下流側に1か所ずつ供給口を有する、L/D=58.4(バレル数:13)の2軸押出機(TEM48−SS:東芝機械(株)製、L:押出機の原料供給口から排出口までの距離(m)、D:押出機の内径(m)。以下、同じ。)を用い、シリンダー温度を200℃に設定し、スクリュー回転数400rpm、押出量200kg/hの条件で、溶融混練を行い、実施例及び比較例のポリオキシメチレン樹脂組成物ペレットの押出を行った。
【0091】
なお、上流側供給口より、ポリオキシメチレン樹脂とその他添加剤の混合物を、下流側供給口より中空状粒子を供給した。この製法を、以下、「製法A」と称する。
また、上流側供給口より、ポリオキシメチレン樹脂とその他添加剤の混合物と、中空状粒子の60質量%(この場合、中空状粒子の総量を100質量%とする)と、を供給し、残余の中空状粒子を下流側供給口より供給した。この製法を、以下、「製法B」と称する。
【0092】
〈表面艶消し性の評価方法〉
実施例及び比較例のポリオキシメチレン樹脂組成物を用いて、東芝機械(株)製EC75NII射出成形機により、シリンダー温度205℃、金型温度を90℃に設定し、射出時間35秒、冷却15秒の射出条件でISO294−3に準拠した小型角板を成形した。この際、表面の艶消し性を公平に評価するため、射出圧は、試験片を充填可能な最少圧力の1.05倍の圧力とした。ここでいう、「試験片を充填可能な最少圧力」とは、同一条件で少なくとも4ショット射出成形したときに、完全に充填している試験片と、充填不足の試験片が混在している射出圧力をいう。その他の条件は、ISO9988−2に準拠した。
【0093】
得られた小型角板の表面状態を目視で確認し、以下のような評価基準で評価した。
(評価基準)
AAA: 試験片全体が艶消し表面となっている。
AA : ゲート部分を除き、艶消し表面となっている。
A : 試験片の過半が艶消し表面となっている。
B : 試験片全体にフローマーク様の外観不良が見られる。
C : 試験片全体が、光沢表面となっている。
【0094】
〈曲げ弾性率、引張破壊ひずみの評価方法〉
実施例及び比較例のポリオキシメチレン樹脂組成物を用いて、東芝機械(株)製EC75NII射出成形機により、シリンダー温度205℃、金型温度を90℃に設定し、射出時間35秒、冷却15秒の射出条件でISO294−1に準拠した多目的試験片を成形した。その他の条件は、ISO9988−2に準拠した。
【0095】
得られた多目的試験片を用いて、ISO178に準拠して曲げ弾性率を測定し、ISO527−1に準拠して、引張破壊ひずみを測定した。
【0096】
〈密度の評価方法〉
表面艶消し性の評価に用いた小型角板を用いて、ISO1183のA法(水中置換法)に準拠し、試験片の密度を測定した。
【0097】
〈対樹脂摺動後の摩耗深さの評価方法〉
曲げ弾性率、引張破壊ひずみの評価に用いた多目的試験片を用いて、往復動摩擦摩耗試験機(東洋精密(株)製、商品名「AFT−15MS型」)により荷重2kg、線速度30mm/sec、往復距離10mmの条件下、環境温度23℃で10000回の往復試験を行った。相手材料としては、POM(テナック4520製の先端が丸い形状の棒、先端R=2.5mm)を用いた。
【0098】
摺動試験後の摩耗深さをOPTELICS H1200(レーザーテック社製)を用いて測定した。深さ測定は、場所の異なる10か所を無作為に選択し測定し、結果は数値の幅で記載した。この値は、摩耗深さであるので、数値が低い方が優れる。
【0099】
〈固化押出品のミクロボイドの発生の有無〉
実施例及び比較例のポリオキシメチレン樹脂組成物の製造により得られたペレットを、引き取り装置と、押出機ダイ部に水冷ゾーンを有した30mm単軸固化押出成形機のシリンダー温度200℃に設定し、直径100mmの丸棒を固化押出した。この際、押出成形体のヒケと、ミクロボイドの発生を抑制するため、押出速度が3mm/分となるよう、引き取り装置をダイ側に向かって駆動させた。
【0100】
得られた、丸棒の断面を切出し、その断面を観察し、ミクロボイドの有無を確認した。ミクロボイドが観察されたものについては、そのボイドが発生している領域の大きさを測定し、発生領域の直径で数値として表した。
【0101】
〈樹脂組成物中粒子の円相当最大粒子径、アスペクト比〉
曲げ弾性率、引張破壊ひずみの評価で用いた多目的試験片を、適当な大きさに切断し、るつぼ中に入れ、150℃設定した電気炉中に入れた後、5℃/分の昇温速度で、500℃に昇温し、約1時間保持した後、ゆっくり冷却し、100℃以下になった時点で取り出した。得られた灰分を観察したところ、有機物の残留は認められなかった。得られた灰を、粒度・形状分布測定機(PITA−3:株式会社セイシン企業製)を用いて、イソプロピルアルコールをキャリア液とし、超音波を1分かけ、分散させたのち、10,000個の中空状粒子について、その円相当最大粒子径とアスペクト比を測定した。
【0102】
〈樹脂組成物中の中空状粒子の残存率〉
測定した10,000個の中空状粒子のアスペクト比の値を用いて、アスペクト比が1.4以下のアスペクト比を有する粒子数を計算し、計測した全中空状粒子数(10,000個)で除し、百分率として残存率を算出した。
【0103】
[実施例1〜4,比較例1〜3及び参考例]
各成分を表1に示す割合で配合し、上記製造方法に従って溶融混練を行い、樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを用い、各種物性を評価した。表中の製法A,Bは、上述の通りである。また、POM1とPOM2のブレンドである実施例3のPOMのMFRを測定したところ6g/10分であった。さらに、製法Aにおいて、下流側供給口付近の溶融したポリオキシメチレン樹脂の温度を測定したところ、182〜188℃の範囲であった。また、製法Bの実施例4の下流側供給口付近の溶融したポリオキシメチレン樹脂の温度を測定したところ、205℃であった。この測定は、下流側供給口の上部のベントインサートを開放型のベントインサートとし、隙間より非接触型赤外線温度計で測定することにより行なった。ここで、参考例として、POM単独の値を載せた。
【0104】
【表1】
【0105】
[実施例5、比較例4]
各成分を表2に示す割合で配合し、上記製造方法に従って溶融混練を行い、樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを用い、各種物性を評価した。製法はすべてAの製法で実施した。また、下流側供給口付近の溶融したポリオキシメチレン樹脂の温度を測定したところ、182〜185℃の範囲であった。表2には理解を助けるため、実施例2の結果も併記した。
【0106】
【表2】