特許第6157984号(P6157984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6157984
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】列車制御システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 3/08 20060101AFI20170626BHJP
   B61L 23/16 20060101ALI20170626BHJP
   B60L 15/40 20060101ALI20170626BHJP
   H04L 27/18 20060101ALI20170626BHJP
   H04L 27/02 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   B61L3/08 A
   B61L23/16
   B60L15/40 A
   H04L27/18 Z
   H04L27/02 Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-167162(P2013-167162)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-36249(P2015-36249A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】岩上 顕夫
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−013043(JP,A)
【文献】 特開平11−291908(JP,A)
【文献】 特開平11−298373(JP,A)
【文献】 特開2013−102618(JP,A)
【文献】 特開2007−223447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 3/08
B60L 15/40
B61L 23/16
H04L 27/02
H04L 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上装置と、
前記地上装置から送信された列車制御信号を受信する車上装置と、を備え、
前記地上装置は、前記列車制御信号を構成する振幅変調波を、変調波周波数にかかわらず振幅変調波の信号部の間隔より短い間隔の位相変調タイミングで位相変調して前記車上装置に送信することを特徴とする列車制御システム。
【請求項2】
前記車上装置は、前記地上装置からの振幅変調波と振幅変調波を遅延させた信号とにより振幅変調波の位相変化量を求めることを特徴とする請求項1に記載の列車制御システム。
【請求項3】
前記車上装置は、前記地上装置から位相変調して送られる振幅変調波を所定位相分遅延させる遅延回路と、前記地上装置から位相変調して送られる振幅変調波と前記遅延回路により遅延された信号とを乗算して振幅変調波の位相変化量を求める乗算回路と、を備えていることを特徴とする請求項に記載の列車制御システム。
【請求項4】
前記車上装置は、前記乗算回路による波形から変調波周波数成分を除去して直流成分を抽出して振幅変調波の位相変化量を求めるフィルタ回路をさらに備えていることを特徴とする請求項に記載の列車制御システム。
【請求項5】
前記車上装置は、前記地上装置から位相変調して送られる振幅変調波を1サンプル分遅延させる他の遅延回路をさらに備え、前記遅延回路による波形と、前記他の遅延回路による波形とに基づいて振幅変調波の位相変化量を求めることを特徴とする請求項または請求項に記載の列車制御システム。
【請求項6】
前記車上装置は、前記地上装置から位相変調して送られる振幅変調波をヒルベルト変換により遅延させる波形を生成し、元の振幅変調波の波形と前記遅延された波形とに基づいて振幅変調波の位相変化量を求めることを特徴とする請求項または請求項に記載の列車制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は列車制御システムに係り、特に、サンプリング周波数を高めることなく、振幅変調波の位相を正しく検出することを可能とした列車制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ATCに係る列車制御システムにおいて、地上側に設けられる地上装置と、列車側に搭載される車上装置とから構成され、地上装置から列車に向けて所定の列車制御信号を送信し、送信された列車制御信号を車上装置で受信して速度制御等の所定の列車制御を行うように構成されている。
【0003】
そして、近年、アナログATC信号(振幅変調波)に位相変調を加え、従来のATC信号と互換性を保ちながら情報量を増やすようにしたe−ATCと呼ばれるATCシステムが開発されている。そして、このe-ATCにおいては、振幅変調波の各信号部間の位相差が情報として送られるものであるため、ATC受信部において信号の位相差を復調する際に、信号部と無信号部とを正しく判別する必要がある。
【0004】
このような信号部と無信号部とを正しく判別する手段として、従来、例えば、第1の情報に応じて第1の符号化を行い、区間内に極性反転を持つ平衡符号を出力する第1の符号化手段と、当該平衡符号に応じて搬送波を変調する第1の変調手段と、第2の情報に応じて第2の符号化を行い、所定方式の第2の符号を出力する第2の符号化手段と、当該第2の符号に応じて搬送波を変調する第2の変調手段とを備えた技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−024718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の技術においては、計測した振幅変動または位相誤差を用いて周波数領域の信号に含まれる非希望信号を補正し、非希望信号が抑制された受信信号を増幅することにより、信号の受信を行うことができるものであるが、e−ATCにおいて、位相検出結果の精度を高めるためには、サンプリング周波数を高くしなければならず、サンプリング周波数を低くすると振幅変調波の位相検出の誤差が大きくなってしまうという問題がある。そのため、従来のように非希望信号を抑制するだけでは、サンプリング周波数が低い場合に、e-ATCにおける振幅変調波の位相を正しく検出することができないという問題を有している。
【0007】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、サンプリング周波数を高めることなく、振幅変調波の位相を正しく検出することのできる列車制御システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係る列車制御システムは、上装置と、
前記地上装置から送信された列車制御信号を受信する車上装置と、を備え、
前記地上装置は、前記列車制御信号を構成する振幅変調波を、変調波周波数にかかわらず振幅変調波の信号部の間隔より短い間隔の位相変調タイミングで位相変調して前記車上装置に送信することを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記車上装置は、前記地上装置からの振幅変調波と振幅変調波を遅延させた信号とにより振幅変調波の位相変化量を求めることを特徴とする。
【0009】
請求項に係る発明は、請求項において、前記車上装置は、前記地上装置から位相変調して送られる振幅変調波を所定位相分遅延させる遅延回路と、前記地上装置から位相変調して送られる振幅変調波と前記遅延回路により遅延された信号とを乗算して振幅変調波の位相変化量を求める乗算回路と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項に係る発明は、請求項において、前記車上装置は、前記乗算回路による波形から変調波周波数成分を除去して直流成分を抽出して振幅変調波の位相変化量を求めるフィルタ回路をさらに備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項に係る発明は、請求項または請求項において、前記車上装置は、前記地上装置から位相変調して送られる振幅変調波を1サンプル分遅延させる他の遅延回路をさらに備え、前記遅延回路による波形と、前記他の遅延回路による波形とに基づいて振幅変調波の位相変化量を求めることを特徴とする。
【0012】
請求項に係る発明は、請求項または請求項において、前記車上装置は、前記地上装置から位相変調して送られる振幅変調波をヒルベルト変換により遅延させる波形を生成し、元の振幅変調波の波形と前記遅延された波形とに基づいて振幅変調波の位相変化量を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、地上装置により、列車制御信号を構成する振幅変調波を、変調波周波数にかかわらず振幅変調波の信号部の間隔より短い間隔の位相変調タイミングで位相変調して車上装置に送信するようにしているので、振幅変調波のサンプリング周波数を高めることなく、振幅変調波の位相を正確に検出することができ、この振幅変調波の位相差に基づいて列車の制御情報を得ることができる。
【0014】
請求項に係る発明によれば、車上装置に、地上装置から位相変調して送られる振幅変調波を所定位相分遅延させる遅延回路と、地上装置から位相変調して送られる振幅変調波と遅延回路により遅延された信号とを乗算して振幅変調波の位相変化量を求める乗算回路とを設けるようにしているので、この乗算回路により、振幅変調波と遅延回路により遅延された振幅変調波とを乗算することにより、振幅変調波から直流成分を抽出して振幅変調波の位相差を判定することができ、振幅変調波のサンプリング周波数を高めることなく、振幅変調波の位相を正確に検出することができ、この振幅変調波の位相差に基づいて列車の制御情報を得ることができる。
【0015】
請求項に係る発明によれば、車上装置に、乗算回路による波形から変調波周波数成分を除去して直流成分を抽出して振幅変調波の位相変化量を求めるフィルタ回路を設けるようにしているので、このフィルタ回路により、乗算後の振幅変調波から直流成分を抽出することにより、振幅変調波の位相差を判定するようにしているので、振幅変調波のサンプリング周波数を高めることなく、振幅変調波の位相を正確に検出することができ、この振幅変調波の位相差に基づいて列車の制御情報を得ることができる。
【0016】
請求項に係る発明によれば、車上装置に、地上装置から位相変調して送られる振幅変調波を1サンプル分遅延させる他の遅延回路を設け、遅延回路による波形と、他の遅延回路による波形とに基づいて振幅変調波の位相変化量を求めるようにしているので、遅延回路による波形と、他の遅延回路による波形とから2種類の位相成分を抽出することができ、これらの値から位相変化量のcos成分、sin成分を求め、逆tan関数を用いることによりで位相変化量を求めることが可能となる。
【0017】
請求項に係る発明によれば、車上装置に、地上装置から位相変調して送られる振幅変調波をヒルベルト変換により遅延させる波形を生成し、元の振幅変調波の波形と遅延された波形とに基づいて振幅変調波の位相変化量を求めるようにしているので、ヒルベルト変換処理を用いることにより、入力信号の位相をπ/2遅らせた信号を生成することができ、振幅変調波をcos成分、ヒルベルト変換処理により生成された信号をsin成分として、逆tan関数を用いることで位相変化量を求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る列車制御システムの実施形態を示す概略構成図である。
図2】本発明に係る列車制御システムの実施形態における車上装置の位相検出処理部を示す概略構成図である。
図3】本発明に係る列車制御システムの実施形態における振幅変調波の例を示す説明図である。
図4】本発明に係る列車制御システムの実施形態における振幅変調波と遅延した振幅変調波の例を示す説明図である。
図5】本発明に係る列車制御システムの実施形態における乗算回路により乗算した結果の例を示す説明図である。
図6】本発明に係る列車制御システムの実施形態におけるローパスフィルタにより処理した結果の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る列車制御システムの実施形態を示す概略構成図であり、図1において、本実施形態の列車制御システムは、地上側に設けられている地上装置1と、列車2に搭載した車上装置3と、を備えて構成されている。そして、地上装置1から、例えば、列車2の許容速度情報などの列車制御情報に対応させた列車制御信号を、図中右方向に進行している列車2が在線する軌道回路Tのレールの図中右端側から送信し、この列車制御信号を車上装置3が受信すると、列車制御信号から列車制御情報を抽出し、抽出した列車制御情報に基づいて列車2の走行を制御するよう構成されている。軌道回路は、レールにより形成されていて、前後の軌道回路T′,T″を形成するレールとは、交流信号に対してそれぞれ電気的絶縁が図られている。
【0021】
また、地上装置1は、所定の周波数を有する基本搬送波を振幅変調処理して変調波を生成し、所定の列車制御情報を示す列車制御信号を形成するように構成されている。そして、このように、振幅変調処理された列車制御信号は、増幅処理されて軌道回路Tを形成するレールに供給されるように構成されている。なお、このような地上装置1は、隣接する軌道回路T′,T″にもそれぞれ設けられているが、ここでは省略する。
【0022】
次に、車上装置3について説明する。
【0023】
図2に示すように、車上装置3には、列車2の前部においてレールに対向して設けられ地上装置1からレールに送信された列車制御信号を受電器4により受信して送られるように構成されている。また、車上装置3は、受電器4からの信号を受信する受信部、論理部、モニタ部など(いずれも図示せず)、各種装置を備えており、受信部は、位相検出処理部を備えている。図2は、この位相検出処理部の詳細を示したものであり、図2に示すように、位相検出処理部は、バンドパスフィルタ5と、乗算回路6と、遅延回路7と、フィルタ回路としてのローパスフィルタ8と、位相変化量算出回路9とをそれぞれ備えている。
【0024】
ここで、列車制御信号は、図3に示すように、振幅に周期性を持たせた振幅変調波であり、信号部と無信号部とから構成されている。そして、振幅の信号部と、次の信号部との位相を、例えば、90°ずつずらして送信することにより、この振幅の位相差を情報として送ることができるようになっている。そして、本実施形態においては、地上装置1により、振幅変調波を、その変調波周波数にかかわらず、一定時間ごとのタイミングで位相変調し、このように位相変調された振幅変調波を車上装置3に送信するように構成されている。なお、この位相変調する一定の時間は、任意に設定することができるものである。
【0025】
バンドパスフィルタ5は、列車制御信号の振幅変調波の周波数帯域外のノイズを除去するものである。また、図4に示すように、遅延回路7は、バンドパスフィルタ5から出力される振幅変調波を、例えば、地上装置1により位相変調される時間など、所定の時間だけ遅延させるように構成されている。また、図5に示すように、乗算回路6は、バンドパスフィルタ5から出力される振幅変調波と、遅延回路7から出力される振幅変調波とを乗算することにより、振幅変調波の位相差に応じた直流成分をもった正弦波を得るように構成されている。
【0026】
ローパスフィルタ8は、図6に示すように、乗算後の振幅変調波から、搬送波、変調波周波数成分を除去し直流成分を抽出するように構成されている。そして、直流成分は、振幅変調波の位相差に比例するものであるから、位相変化量算出回路9は、この直流成分に基づいて、振幅変調波の位相差を判定することができ、この位相差から列車制御情報を得るようになっている。なお、位相変調を行うタイミングによっては、すべての区間が無信号部となる場合もあるが、前述の処理を行うことにより、問題なく列車制御情報を得ることができる。
【0027】
次に、本実施形態の動作について説明する。
【0028】
地上装置1からレールに送信された列車制御信号を受電器4により受信したら、車上装置3のバンドパスフィルタ5により、列車制御信号の周波数帯域外のノイズを除去し、乗算回路6および遅延回路7に送るようになっている。
【0029】
そして、遅延回路7により、バンドパスフィルタ5から出力される振幅変調波を、所定の時間だけ遅延させ、乗算回路6により、バンドパスフィルタ5から出力される振幅変調波と、遅延回路7から出力される振幅変調波とを乗算することにより、振幅変調波の位相差に応じた直流成分をもった正弦波を得る。
【0030】
そして、ローパスフィルタ8により、乗算後の振幅変調波から、搬送波、変調波周波数成分を除去し直流成分を抽出し、この直流成分に基づいて、振幅変調波の位相差を判定して、この位相差から列車制御情報を得るようになっている。
【0031】
以上述べたように、本実施形態においては、地上装置1により、振幅変調波をその変調波周波数にかかわらず、一定時間ごとのタイミングで位相変調して車上装置3に送信し、車上装置3の乗算回路6により、振幅変調波と遅延回路7により遅延された振幅変調波とを乗算して、ローパスフィルタ8により、乗算後の振幅変調波から直流成分を抽出することにより、振幅変調波の位相差を判定するようにしているので、振幅変調波のサンプリング周波数を高めることなく、振幅変調波の位相を正確に検出することができ、この振幅変調波の位相差に基づいて列車2の制御情報を得ることができる。
【0032】
なお、位相変化量を求める他の手段として、地上装置1から位相変調して送られる振幅変調波を1サンプル分遅延させる他の遅延回路(図示せず)を設け、遅延回路7による振幅変調波の波形と、他の遅延回路による振幅変調波の波形とに基づいて振幅変調波の位相変化量を求めるようにしてもよい。すなわち、遅延回路7による遅延量をdとした場合に、遅延dの乗算処理およびローパスフィルタ8の処理結果と合わせて、他の遅延回路による1サンプル分遅延された遅延量d−1の乗算処理およびローパスフィルタ8の処理結果を用いることで、2種類の位相成分を抽出することができ、これらの値から位相変化量のcos成分、sin成分を求め、逆tan関数を用いることによりで位相変化量を求めることが可能となる。
【0033】
また、位相変化量を求めるさらに他の手段として、位相変化量検出回路9を用いて、ヒルベルト変換により、FIR(有限インパルス応答)フィルタを通る振幅変調波の波形と、遅延させる波形に分け、FIRフィルタを通過した波形をsin成分、遅延させた波形をcos成分として逆tan関数により位相変化量を求めるようにしてもよい。すなわち、ヒルベルト変換処理を用いることにより、入力信号の位相をπ/2遅らせた信号を生成することができ、位相変化量を求めることが可能となる。
【0034】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 地上装置
2 列車
3 車上装置
4 受電器
5 バンドパスフィルタ
6 乗算回路
7 遅延回路
8 ローパスフィルタ
9 位相変化量算出回路9
図1
図2
図3
図4
図5
図6