(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら実施形態に係るX線画像処理装置、X線診断装置およびX線画像処理プログラムを説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0008】
図1は、本実施形態に係るX線診断装置1とマッピングシステム2との接続を示す図である。X線診断装置1とマッピングシステム2とは、典型的には、同一の手術室に設置される。X線診断装置1は、ネットワークを介して、マッピングシステム2に接続される。マッピングシステム2は、電磁場を用いてカテーテル電極の先端の位置を測定することで、心臓の形態情報と電位情報とを同時に3次元的に示した電位マップを発生する。マッピングシステム2は、ネットワークを介して、マッピング法により生成された電位マップをX線診断装置1に送信する。後述するように、マッピングシステム2から発生された電磁場は、X線診断装置1に作用する。電磁場の作用下においてX線診断装置1により発生されたX線画像には、当該電磁場のX線診断装置1への作用に起因するノイズが混入される。
【0009】
図2は、本実施形態に係るX線診断装置1の構成を示す図である。X線診断装置1は、撮像機構3とX線画像処理装置4とを有する。撮像機構3は、X線管5と、高電圧発生部6と、X線検出器7と、支持機構8と、支持機構駆動部9と、X線画像発生部10と、X線制御部11とを有する。
【0010】
X線管5は、高電圧発生部6に接続される。高電圧発生部6は、X線管5に印加する管電圧を発生する。X線管5は、高電圧発生部6からの管電圧の印加とフィラメント電流の供給とを受けてX線を発生する。高電圧発生部6は、X線制御部11からの制御信号に応じて管電圧を印加する。高電圧発生部6は、X線制御部11からの制御信号に応じてフィラメント電流を供給する。
【0011】
X線検出器7は、X線管5において発生され、被検体Pを透過したX線を検出する。X線検出器7は、例えば平面検出器(Flat Panel Detector:以下、FPDと呼ぶ)により実現される。FPDは、光を電気信号に変える光電変換膜を有する。光電変換膜は、入射X線を電気信号に変換する。光電変換膜によって発生された電気信号は、図示しないアナログディジタル変換器(Analog to Digital converter:以下、A/D変換器と呼ぶ)に出力される。A/D変換器は、電気信号をディジタルデータに変換する。A/D変換器は、ディジタルデータをX線画像発生部10に出力する。
【0012】
詳細は後述するが、X線検出器7は、マッピングシステム2により発生された電磁場に曝される。X線画像発生部10により発生されたX線画像は、マッピングシステム2により発生された電磁場のX線検出器7への作用に起因するノイズ成分を含んでいる。このノイズ成分を電磁場ノイズと呼ぶことにする。
【0013】
支持機構8は、X線管5とX線検出器7とを移動可能に支持する。具体的には、支持機構8は、例えば、図示していないCアームとCアーム支持部とを有する。Cアームは、X線管5とX線検出器7とを、互いに向き合うように搭載する。
【0014】
支持機構駆動部9は、後述するシステム制御部29の制御のもとで、支持機構8を駆動する。具体的には、支持機構駆動部9は、X線制御部11からの制御信号に応じた駆動信号をCアーム支持部に供給して、Cアームを所定の方向にスライド、回転させる。X線診断時においては、X線管5とX線検出器7との間に、天板12に載置された被検体Pが配置される。天板12は、後述する入力部25を介した操作者からの指示に従って、寝台により移動可能に支持される。
【0015】
X線画像発生部10は、X線検出器7から出力されたディジタルデータに前処理を施して、X線画像を発生する。前処理とは、X線検出器7におけるチャンネル間の感度不均一の補正、および脱落に関する補正等である。X線画像発生部10は、発生したX線画像を特定部21に出力する。なお、X線画像発生部10は、発生したX線画像を後述する記憶部28に出力してもよい。
【0016】
X線画像処理装置4は、特定部21と、判定部22と、決定部23と、ノイズ低減画像発生部24と、入力部25と、表示部26と、インターフェース部27と、記憶部28と、システム制御部29とを有する。
【0017】
特定部21は、X線画像に画像処理を施し、マッピングシステム2により発生された電磁場のX線検出器7への作用に起因する電磁場ノイズに特徴的なノイズ特性を特定する。ノイズ特性は、決定部23による、電磁場ノイズを低減するためのフィルタ(以下、ノイズ低減フィルタと呼ぶ)のフィルタ特性の決定に用いられる。また、ノイズ特性は、判定部22によるノイズ低減フィルタの適用の有無の判定に用いられる。
【0018】
判定部22は、特定部21により特定されたノイズ特性に基づいて、X線画像へのノイズ低減フィルタの適用の有無を決定する。
【0019】
決定部23は、特定部21により特定されたノイズ特性に基づいて、ノイズ成分を低減するためのフィルタ特性を決定する。
【0020】
ノイズ低減画像発生部24は、決定部23により決定されたフィルタ特性を有するノイズ低減フィルタをX線画像に適用し、電磁場ノイズ成分が低減されたX線画像を発生する。以下、電磁場ノイズ成分が低減されたX線画像を、電磁場ノイズ低減画像と呼ぶことにする。
【0021】
入力部25は、操作者が所望するX線条件、X線撮影位置、X線透視位置、X線撮影あるいはX線透視の開始および終了などを入力する。入力部25は、操作者などからの各種指示、命令、情報、選択、設定などを後述するシステム制御部29に入力する。入力部25は、上記各種指示、命令、情報、選択、設定などを入力するためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、マウス・ホイール、キーボード等の入力デバイスを有する。なお、入力デバイスは、表示部26における表示画面を覆うタッチパネルでもよい。
【0022】
表示部26は、X線画像等の種々の情報を表示する。例えば、表示部26は、電磁場ノイズ低減画像を表示する。また、表示部26は、後述するインターフェース部27を介してマッピングシステム2から取り込まれた電位マップを表示する。なお、表示部26は、ノイズ低減フィルタが適用されていないX線画像を表示してもよい。
【0023】
インターフェース部27は、ネットワークを介してマッピングシステム2や、図示していないPACS(Picture Archiving and Communication Systems)や他のコンピュータに接続される。インターフェース部27は、マッピングシステム2から電位マップを取り込む。取り込まれた電位マップは、表示部26に出力される。
【0024】
記憶部28は、後述する入力部25から供給される操作者の指示を記憶する。例えば、記憶部28は、下限周波数、判定定数、ノイズ閾値およびフィルタ幅を記憶する。なお、下限周波数、ノイズ閾値およびフィルタ幅は、入力部25で操作者の指示により変更されてもよい。なお、記憶部28は、電磁場ノイズ低減画像を発生するためのプログラム(以下、ノイズ低減処理プログラムと呼ぶ)を記憶してもよい。
【0025】
システム制御部29は、本実施形態に係るX線診断装置1の中枢として機能する。システム制御部29は、記憶部28からノイズ低減処理プログラムを読み出して展開し、ノイズ低減処理プログラムに従ってX線診断装置1の各部を統括的に制御する。当該統括的制御により、電磁場ノイズ低減処理が実行される。
【0026】
以下、システム制御部29の制御のもとに行われる電磁場ノイズ低減処理について説明する。なお、以下の説明を具体的に行うため、X線診断装置1とマッピングシステム2とを利用したカテーテル・アブレーション治療を具体例に挙げて説明する。
【0027】
カテーテル・アブレーション治療は、心臓の治療手法の一つである。カテーテル・アブレーション治療は、不整脈の発生部位や頻脈の原因となる副伝送路を探し出し、高周波エネルギーを電極カテーテルに設けられた電極に通電して心筋の一部を焼灼する手法である。マッピングシステム2は、電磁場を利用して電極の位置を検出する。マッピングシステム2は、検出された電極の位置と電極により検出された電位とに基づいて電位マップを発生する。電位マップは、心臓の形態情報と電位情報とを同時に3次元的に示す画像である。このような電位マップの発生方法は、マッピング法と呼ばれている。
【0028】
一方、カテーテル・アブレーション治療においてX線診断装置によりX線透視が行われる。X線透視によりX線画像がリアルタイムで発生される。ユーザは、電位マップとX線画像とを観察しながら電極カテーテルを焼灼部位まで移動させ、電極カテーテルを操作して焼灼部位を焼灼する。
【0029】
上記のように、マッピング法を実行するマッピングシステム2は、電磁場を発生する。マッピングシステム2が設置された手術室にはX線診断装置1も設置されている。従ってX線診断装置1のFPD7は、マッピングシステム2により発生された電磁場の作用下にある。電磁場の作用下にあるFPD7により収集されたX線画像は、当該電磁場のFPD7への作用に起因して電磁場ノイズを含んでしまう。
【0030】
図3は、
図2のX線画像発生部10により発生される、電磁場ノイズを含むX線画像の一例を示す図である。
図3に示すように、カテーテル・アブレーション治療において発生されたX線画像には、電極カテーテルやワイヤ等の治療器具に由来する画像領域(以下、治療器具領域と呼ぶ)が描出されている。電磁場ノイズにより治療器具領域の視認性が悪化している。従って操作者は、治療器具の位置を明確に把握することができない。
【0031】
電磁場ノイズは、特徴的なノイズ特性を有する。具体的には、
図3の場合、電磁場ノイズは、縦方向に配列された縞状のアーチファクトとしてX線画像に描出される。電磁場ノイズのノイズ特性は、画像特性と周波数特性とに分類される。画像特性は、X線画像上に描出される電磁場ノイズの画像空間上の性質である。画像特性としては、縞状アーチファクトの配列方向や配列ピッチが挙げられる。配列ピッチは、隣合う縞状アーチファクトの中心間間隔である。周波数特定は、電磁場ノイズの周波数空間上の性質である。周波数特性は、電磁場ノイズ成分が存在する周波数軸(以下、ノイズ周波数軸と呼ぶ)や、ノイズ周波数軸上における電磁場ノイズ成分が存在する周波数範囲(以下、ノイズ存在範囲と呼ぶ)が挙げられる。画像特性と周波数特性とは独立ではなく互いに相関している。例えば、縞状アーチファクトの配列方向は、ノイズ周波数軸の方向に依存する。また、縞状アーチファクトの配列ピッチは、ノイズ存在範囲に依存する。なお、
図3において縞状アーチファクトの配列方向は、X線画像の縦方向であるとしたが、横方向である場合もある。電磁場ノイズの画像パターンは、FPD7のピクセルピッチや読み出し方法などに依存する。
【0032】
本実施形態に係るX線診断装置1は、上記特徴的なノイズ特性を利用して電磁場ノイズ低減処理を行う。
【0033】
以下、電磁場ノイズ低減処理について
図4を参照しながら説明する。
図4は、本実施形態に係るシステム制御部29の制御のもとに行われる電磁場ノイズ低減処理の典型的な流れを模式的に示す図である。
【0034】
なお、本実施形態に係る電磁場ノイズ低減処理は、X線透視のもとに行われるものとする。X線透視の場合、X線管5は、X線制御部11の制御に応じてX線を継続的または間欠的に発生する。X線検出器7は、X線管5において発生されたX線を繰り返し検出する。X線画像発生部10は、X線検出器7から出力されたディジタルデータに基づいて、X線画像を繰り返し発生する。システム制御部29の制御のもと、X線画像発生部10によって発生された複数のX線画像各々に対して、以下の電磁場ノイズ低減処理が施される。
【0035】
まず、システム制御部29は、特定部21に、X線画像にフーリエ変換を施させる(ステップS1)。ステップS1において特定部21は、X線画像にフーリエ変換を施すことで、フーリエ変換画像を発生する。フーリエ変換画像は、実部のフーリエ変換画像と虚部のフーリエ変換画像とを含む。
図5は、
図2の特定部21により発生される実部のフーリエ変換画像の一例を示す図である。
図6は、
図2の特定部21により発生される虚部のフーリエ変換画像の一例を示す図である。
図5および
図6は、色の濃淡で各画像の画素値を表している。
【0036】
ステップS1が行われるとシステム制御部29は、特定部21に、2次元周波数空間におけるX線画像の自己相関関数マップを発生させる(ステップS2)。ステップS2において特定部21は、ステップS1で得られた実部のフーリエ変換画像の画素値の二乗を計算する。特定部21は、ステップS1で得られた虚部のフーリエ変換画像の画素値の二乗を計算する。特定部21は、2次元周波数空間上の各点において、実部のフーリエ変換画像および虚部のフーリエ変換画像の二乗値を加算することにより、2次元周波数空間におけるX線画像の自己相関関数マップを発生する。
図7は、
図2の特定部21により発生される、2次元周波数空間におけるX線画像の自己相関関数マップの一例を示す図である。
図7は、色の濃淡で画素値を表している。なお、自己相関関数マップのマトリクスサイズはX線画像と同一であってもよいし、微分計算範囲に制限されてもよい。ここで、微分計算範囲は、ステップS3からS7において、ノイズ特性を特定するための演算処理に用いる計算範囲である。微分計算範囲は、水平周波数軸上の微分計算範囲と、垂直周波数軸上の微分計算範囲から成る。以下の説明を具体的にするために、水平周波数軸上の微分計算範囲は、
図7に図示したように、水平周波数軸上の0以上かつ所定値以下で規定される範囲とする。所定値は、例えば、水平方向のX線画像マトリクスサイズを2で除した値である。垂直水平周波数軸上の微分計算範囲は、
図7に図示したように、垂直周波数軸上の0以上かつ所定値以下で規定される範囲とする。所定値は、例えば、垂直方向のX線画像マトリクスサイズを2で除した値である。以下の説明を具体的にするために、水平方向のX線画像マトリクスサイズと垂直方向のX線画像マトリクスサイズは等しいとする。すなわち、水平周波数軸上の微分計算範囲と垂直水平周波数軸上の微分計算範囲も等しい。
【0037】
ステップS2が行われるとシステム制御部29は、特定部21に、第1範囲および第2範囲におけるノイズを判定するための関数(以下、ノイズ判定関数と呼ぶ)を決定させる(ステップS3)。ここで、第1範囲および第2範囲は、記憶部28に記憶された下限周波数に基づいて規定される。第1範囲および第2範囲は、下限周波数以上かつ所定値以下で規定される範囲である。所定値は、例えば、マトリクスサイズを2で除した値である。なお、下限周波数は、ノイズ成分よりも画像の信号成分を多く含む周波数0近傍の周波数範囲を後述するノイズ低減フィルタによる遮断対象から除外することで、周波数0近傍の周波数の振幅を低減させないために設定される。具体的には、下限周波数は、ノイズ成分よりも画像の信号成分を多く含む周波数0近傍の周波数範囲の値より大きく、かつ所定値より小さい正数に設定されるとよい。第1範囲および第2範囲は、ステップS3からS7によってノイズを判定し、ノイズ特性を特定するために用いられる。
【0038】
ステップS3において特定部21は、自己相関関数マップの第1範囲に沿った画素値変化に演算を施すことにより、第1範囲におけるノイズ判定関数を決定する。特定部21は、自己相関関数マップの第2範囲に沿った画素値変化に演算を施すことにより、第2範囲におけるノイズ判定関数を決定する。
図8は、
図2の特定部21により発生される、第1範囲および第2範囲におけるノイズ判定関数の一例を示す図である。第1範囲におけるノイズ判定関数の値は、自己相関関数マップの第1範囲に沿った画素値変化の水平周波数に関する微分値の絶対値である。第2範囲におけるノイズ判定関数の値は、自己相関関数マップの第2範囲に沿った画素値変化の垂直周波数に関する微分値の絶対値である。
【0039】
ステップS3が行われるとシステム制御部29は、判定部22に、X線画像へのノイズ低減フィルタの適用の有無を判定させる(ステップS4)。ステップS4において判定部22は、第1範囲におけるノイズ判定関数の最大値と第2範囲におけるノイズ判定関数の最大値とに基づいて、X線画像へのノイズ低減フィルタの適用の有無を判定する。判定部22は、第1範囲におけるノイズ判定関数の最大値および第2範囲におけるノイズ判定関数の最大値のうちの大きい方の値を、他方(小さい方の値)で除した商を決定する。
図8の場合、第2範囲におけるノイズ判定関数は、図示した最大値を持つ。一方、第1範囲におけるノイズ判定関数は第1範囲においてほぼ0の値であり、最大値もほぼ0である。すなわち、
図8では、第2範囲におけるノイズ判定関数の最大値の方が、第1範囲におけるノイズ判定関数よりも大きい。従って、判定部22は、第2範囲におけるノイズ判定関数の最大値を第1範囲におけるノイズ判定関数の最大値で除した商を決定する。決定された商が大きいということは、第1範囲あるいは第2範囲のうち一方に、強いノイズ成分が存在するということを示す。ここで、第1範囲あるいは第2範囲のうち一方に存在する強いノイズ成分とは、電磁場ノイズである。決定された商に対して判定処理を施すことによって、電磁場ノイズが存在するか否かを判断する。電磁場ノイズが存在するか否かによって、ノイズ低減フィルタの適用の有無を判定する。具体的には、判定部22は、商が判定定数よりも大きい場合、ノイズ低減フィルタの適用有りと判定する。判定部22は、商が判定定数よりも小さい場合、ノイズ低減フィルタの適用無しと判定する。判定部22がノイズ低減フィルタの適用無しと判定した場合、ステップS5に進む。
【0040】
ステップS4においてノイズ低減フィルタの適用無しと判定された場合、システム制御部29は、表示部26に、X線画像を表示させる(ステップS5)。
【0041】
ステップS4においてノイズ低減フィルタの適用有りと判定された場合、システム制御部29は、特定部21に、電磁場ノイズが存在する特定の周波数軸(ノイズ周波数軸)を特定させる(ステップS6)。ステップS6において特定部21は、第1範囲におけるノイズ判定関数および第2範囲におけるノイズ判定関数に基づいて、ノイズ周波数軸を特定する。具体的には、特定部21は、第1範囲におけるノイズ判定関数と第2範囲におけるノイズ判定関数とのうち最大値の大きい一方のノイズ判定関数が属する周波数軸を特定し、特定された軸をノイズ周波数軸に設定する。以下の説明を具体的に行うため、垂直周波数軸がノイズ周波数軸に設定されたとして説明を進める。ここで、水平周波数軸上にノイズ成分が存在するということは、X線画像において横方向に配列された縞状ノイズが存在することを意味する。垂直周波数軸上にノイズ成分が存在するということは、X線画像において縦に配列された縞状ノイズが存在することを意味する。ステップS6においてノイズ周波数軸を特定することにより、X線画像における縞状ノイズの配列方向が縦横いずれかを特定することができる。
【0042】
ステップS6が行われるとシステム制御部29は、特定部21に、ノイズ成分が存在する特定の周波数範囲(ノイズ存在範囲)を特定させる(ステップS7)。ステップS7において特定部21は、特定されたノイズ周波数軸に沿う第1範囲におけるノイズ判定関数あるいは第2範囲におけるノイズ判定関数に閾値処理を施して、ノイズ存在範囲を特定する。
図9は、ノイズ存在範囲の特定を説明するための図である。
図9は、
図8の一部を拡大したものである。特定部21は、垂直周波数軸上の第2範囲におけるノイズ判定関数を構成する複数の点のうち、絶対値がノイズ閾値より大きく最低の周波数を有する点P1を決定する。特定部21は、点P1の周波数を最低周波数flとして特定する。特定部21は、垂直周波数軸上の第2範囲におけるノイズ判定関数を構成する複数の点のうち、絶対値がノイズ閾値より大きく最高の周波数を有する点P2を決定する。特定部21は、点P2の周波数を最高周波数fhとして特定する。特定部21は、決定された最低周波数fl以上かつ最高周波数fh以下の間の周波数範囲を、ノイズ存在範囲に設定する。なお、ノイズ存在範囲は、絶対値が等しい正と負の周波数範囲を含む。ステップS7においてノイズ存在範囲は、X線画像における縞状ノイズの配列ピッチに対応する。
【0043】
なお、上述の説明において、ノイズ成分に特徴的なノイズ特性として周波数特性の特定について説明を行ったが、特定部21は、上述のステップS1からステップS7の代わりに、画像空間における画像処理によって、ノイズ成分に特徴的なノイズ特性として画像パターンの特定を行ってもよい。
【0044】
ステップS7が行われるとシステム制御部29は、決定部23に、フィルタ特性を決定させる(ステップS8)。ステップS8において決定部23は、ステップS7において特定されたノイズ特性に基づいて、フィルタ特性を決定させる。決定部23は、ステップS7において特定されたノイズ存在範囲と記憶部28に記憶されたフィルタ幅とに基づいて、フィルタ特性を決定する。
【0045】
図10は、ステップS8において決定部23により決定されたフィルタ特性を有するノイズ低減フィルタの一例を示す図である。上記ノイズ低減フィルタは、遮断領域R1と通過領域R2とを有する。遮断領域R1に属する周波数成分は、除去される。通過領域R2に属する周波数成分は、維持される。上記ノイズ低減フィルタをX線画像のフーリエ変換に適用することにより、X線画像における遮断領域の周波数成分を遮断することができる。遮断領域R1の垂直方向の周波数範囲は、ステップS7において特定されたノイズ存在範囲に設定される。遮断領域R1の水平方向の周波数範囲は、記憶部28に記憶されたフィルタ幅に設定される。
【0046】
ステップS8が行われるとシステム制御部29は、決定部23に、フィルタ特性を調整させる(ステップS9)。ステップS9において決定部23は、ステップS8で決定されたフィルタ特性に重みづけ処理を施すことにより、ノイズ低減フィルタの遮断領域R1と通過領域R2との境界を滑らかにする。
図11は、ステップS9において決定部23により発生される、遮断領域R1と通過領域R2との境界を滑らかにしたノイズ低減フィルタの一例を示す図である。遮断領域R1と通過領域R2との境界を滑らかにすることで、後述するノイズ低減画像発生部24において発生される電磁場ノイズ低減画像における、アーチファクトを低減することができる。上記アーチファクトは、遮断領域と通過領域との境界の鋭さにより生じる。なお、上記アーチファクトの低減が不要な場合には、ステップS9におけるフィルタ特性の決定は、必ずしも行う必要はない。
【0047】
ステップS9が行われるとシステム制御部29は、ノイズ低減画像発生部24に、フーリエ変換画像にステップS9で決定されたノイズ低減フィルタを適用させる(ステップS10)。フーリエ変換画像にノイズ低減フィルタが適用されることにより、フーリエ変換画像に含まれるノイズ存在範囲に属するノイズ成分が低減される。
【0048】
ステップS10が行われるとシステム制御部29は、ノイズ低減画像発生部24に、電磁場ノイズ低減画像を発生させる(ステップS11)。ステップS10においてノイズ低減画像発生部24は、ノイズ低減フィルタを適用されたフーリエ変換画像に逆フーリエ変換を施すことで、電磁場ノイズ低減画像を発生する。
【0049】
ステップS11が行われるとシステム制御部29は、表示部26に、電磁場ノイズ低減画像を表示させる(ステップS12)。
図12は、ステップS11においてノイズ低減画像発生部24により発生された電磁場ノイズ低減低画像の一例を示す図である。換言すれば、
図12の電磁場ノイズ低減画像は、
図3のX線画像に電磁場ノイズ低減処理を施した後の画像ある。
図12に示すように、フィルタ適用前のX線画像に含まれる電磁場ノイズが電磁場ノイズ低減画像には含まれていない。
図12と
図3とを比較すれば明らかなように、縞状の電磁場ノイズが電磁場ノイズ低減画像から除去されている。
【0050】
上記の通り、本実施形態に係るX線画像処理装置4は、電磁場ノイズに特徴的なノイズ特性を特定し、特定されたノイズ特性に応じたフィルタ特性を持つノイズ低減フィルタを決定する。すなわち、ノイズ低減フィルタは、適用対象のX線画像に含まれる電磁場ノイズに固有のフィルタ特性を有している。このようなノイズ低減フィルタがX線画像に適用された場合、ノイズ低減フィルタは、当該X線画像に含まれる治療器具領域に影響を与えず、電磁場ノイズを除去することができる。従って操作者は、電磁場ノイズ低減画像において治療器具領域を明瞭に視認することができ、治療器具の位置を正確に把握することができる。従って本実施形態に係るX線画像処理装置4は、カテーテル・アブレーション治療の手技効率を向上させることができる。
【0051】
次に、本実施形態に係る変形例について説明する。
【0052】
(変形例1)
上記の実施形態においてX線画像処理装置4は、X線画像ごとにノイズ特性を特定し、ノイズ低減フィルタを決定した。より詳細には、X線透視において発生されたX線画像毎に当該X線画像に含まれる電磁場ノイズのノイズ特性を特定し、特定されたノイズ特性に応じたフィルタ特性を決定し、決定されたフィルタ特性を有するノイズ低減フィルタを、当該X線画像に適用していた。換言すれば、ノイズ特定を特定するためのX線画像とノイズ低減フィルタの適用対象のX線画像とが同一であった。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。変形例1に係るX線画像処理装置4は、1枚のX線画像に基づいて特定したノイズ特性を用いてフィルタ特性を決定し、決定されたフィルタ特性を有するノイズ低減フィルタを複数のX線画像に適用する。換言すれば、変形例1においては、ノイズ特性を特定するためのX線画像とノイズ低減フィルタの適用対象のX線画像とが同一である必要はない。以下、変形例1に係るX線画像処理装置4の動作例について説明する。
【0053】
変形例1に係るX線画像処理装置4は、マッピングシステム2から発生される電磁場の作用下において、X線透視を開始する前に、電磁場ノイズのノイズ特性特定処理を実行するためのX線画像(以下、暗示画像と呼ぶ)を発生するためにX線撮影又はX線透視を事前に行う。当該暗示画像は、電磁場ノイズが描出されていれば良いため、事前のX線撮影又はX線透視は、必ずしも被検体を撮像対象とする必要は無い。発生された暗示画像に基づいて、上記実施形態と同様に、当該暗示画像に含まれる電磁場ノイズのノイズ特定が特定され、特定されたノイズ特性に応じたノイズ低減フィルタのフィルタ特性が決定される。決定されたフィルタ特性は、記憶部28に記憶される。
【0054】
X線透視開始後、システム制御部29の制御のもとX線透視が行われる。X線透視下においてX線画像発生部10は、繰り返しX線画像を発生する。ノイズ低減画像発生部24は、記憶部28に記憶されたフィルタ特性を読み出す。ノイズ低減画像発生部24は、X線画像発生部10により発生された各X線画像にフーリエ変換を施し、フーリエ変換画像を発生する。ノイズ低減画像発生部24は、各フーリエ変換画像に、読み出されたフィルタ特性を有するノイズ低減フィルタを個別に適用する。
【0055】
上記の通り、変形例1に係るX線画像処理装置4は、X線透視を開始する前にノイズ低減フィルタを決定する。従って、X線透視時に画像処理にかかる計算量を低減できる。
【0056】
(変形例2)
上記の変形例1においてX線画像処理装置4は、2次元周波数空間上でフーリエ変換画像にノイズ低減フィルタを適用し、逆フーリエ変換を施すことで、電磁場ノイズ低減画像を発生した。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。変形例2に係るX線画像処理装置4は、ノイズ低減フィルタに逆フーリエ変換を施し、実空間でX線画像にノイズ低減フィルタを適用する。以下、変形例2に係るX線画像処理装置4の動作例について説明する。
【0057】
変形例2において、決定部23は、事前のX線撮影又はX線透視により発生された暗示画像に基づいて決定されたノイズ低減フィルタに、逆フーリエ変換を施し、実空間フィルタを発生する。
【0058】
X線透視開始後、システム制御部29の制御のもとX線透視が行われる。X線透視下においてX線画像発生部10は、繰り返しX線画像を発生する。ノイズ低減画像発生部24は、各X線画像を、事前に決定部23により決定された実空間フィルタでコンボリューション積分し、電磁場ノイズ低減画像を発生する。
【0059】
図13は、変形例2に係る電磁場ノイズ低減画像の一例を示す図である。表示部26に1枚のX線画像を構成する全ての画素が表示されたとき、画像全体における上から半分ほどの範囲はノイズ低減フィルタが適用され、電磁場ノイズが低減されていることを示している。
【0060】
上記の通り、変形例2に係るX線画像処理装置4は、ノイズ低減フィルタに逆フーリエ変換を施し、実空間でX線画像に実空間フィルタを適用する。1枚のX線画像全体を入手しなくても、実空間フィルタの適用を開始することができる。従って、変形例1に比べ、ノイズ低減フィルタの適用を早く終了することができ、リアルタイムなノイズ低減フィルタの適用が実現できる。
【0061】
上記説明において、本実施形態に係る電磁場ノイズ低減処理はX線透視のもとで行われるとした。しかしながら、本実施形態に係る電磁場ノイズ低減処理は、X線撮影のもとに行われてもよい。
【0062】
上述のように、本実施例に係るX線診断装置は、マッピングシステム2が発生する電磁場によって生じたX線画像上のノイズ成分に特徴的なノイズ特性を、画像処理により特定する。特定されたノイズ特性に基づいて、上記ノイズ成分を低減するためのフィルタを決定する。決定されたノイズ低減フィルタをX線画像に適用することで、電磁場ノイズ低減画像を発生することができる。
【0063】
かくして、本実施形態によれば、マッピング法を実行するマッピングシステム2が発生する電磁場によって生じたX線画像上のノイズを低減することができるX線画像処理装置、X線診断装置およびX線画像処理プログラムを提供することができる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。