(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る核医学診断装置
、および画像処理方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。本発明の一実施形態に係る画像診断装置および画像処理方法は、医用画像の画像処理をあつかう画像診断装置に適用することができ、たとえばX線CT(Computed Tomography)装置や磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置や核医学診断装置などの画像診断装置に適用することができる。
【0010】
本実施形態に係る核医学診断装置としては、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)やPET(Positron Emission Tomography)などのガンマ線検出器を備えた各種装置
を用いることが可能である。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る核医学診断装置10の一例を示す概略的なブロック図である。
【0012】
核医学診断装置10は、ガンマ線検出器11、データ収集部12および画像処理装置13を有する。なお、画像処理装置13はデータ収集部12とデータ送受信可能に接続されていればよく、同一の部屋や建屋に設けられずともよい。
【0013】
ガンマ線検出器11は、画像処理装置13に制御されて被検体の所定の撮像領域の放射性同位元素から放射されたガンマ線を検出する。
【0014】
核医学診断装置10としてSPECT装置を用いる場合、ガンマ線検出器11は被検体に薬品に含まれて投与されたテクネシウムなどの放射性同位元素から放射されるガンマ線を検出する検出器である。ガンマ線検出器11としては、シンチレータ型検出器を用いてもよいし、半導体型検出器を用いてもよい。
【0015】
シンチレータ型検出器を用いてガンマ線検出器11を構成する場合は、ガンマ線検出器11は、ガンマ線の入射角度を規定するためのコリメータ、コリメートされたガンマ線が入射すると瞬間的な閃光を発するシンチレータ、ライトガイド、シンチレータから射出された光を検出するための2次元に配列された複数の光電子増倍管、およびシンチレータ用電子回路などを有する。シンチレータは、たとえばタリウム活性化ヨウ化ナトリウムNaI(Tl)により構成される。
【0016】
シンチレータ用電子回路は、ガンマ線が入射する事象(イベント)が発生するごとに、複数の光電子増倍管の出力にもとづいて複数の光電子増倍管により構成される検出面内におけるガンマ線の入射位置情報(位置情報)および強度情報を生成しデータ収集部12に出力する。この位置情報は、検出面内の2次元座標の情報であってもよいし、あらかじめ検出面を複数の分割領域(以下、1次セルという)に仮想的に分割しておき(たとえば1024×1024個に分割しておき)、どの1次セルに入射があったかを示す情報であってもよい。
【0017】
一方、半導体型検出器を用いてガンマ線検出器11を構成する場合は、ガンマ線検出器11は、コリメータ、コリメートされたガンマ線を検出するための2次元に配列された複数のガンマ線検出用半導体素子(以下、半導体素子という)および半導体用電子回路などを有する。半導体素子は、たとえばCdTeやCdZnTe(CZT)により構成される。
【0018】
半導体用電子回路は、ガンマ線が入射する事象(イベント)が発生するごとに、半導体素子の出力にもとづいて位置情報および強度情報を生成しデータ収集部12に出力する。この位置情報は、複数の半導体素子(たとえば1024×1024個)のうちのどの半導体素子に入射したかを示す情報である。
【0019】
また、核医学診断装置10としてPET装置を用いる場合、ガンマ線検出器11はFDG(フルオロデオキシグルコース)などの薬品に含まれて被検体に投与された放射性同位元素から放射されるガンマ線を検出する検出器である。この場合も、ガンマ線検出器11としては、シンチレータ型検出器を用いてもよいし、半導体型検出器を用いてもよく、シンチレータ型検出器および半導体型検出器の構成は核医学診断装置10としてSPECT装置を用いる場合と同様である。
【0020】
核医学診断装置10としてPET装置を用いる場合、ガンマ線検出器11を構成する複数の検出素子は、たとえば被検体の周囲を囲むように、六角形または円形に検出器カバー内に配置される。なお、複数の検出素子の配置態様はリング配列型に限られず、たとえば平板上に配列された複数の検出素子が2つ被検体を挟んで対向配置されつつ被検体の周りに回転可能に保持される2検出器対向型に配置されてもよい。また、複数の検出素子は多層のリングに配列されて隣接する層間の画像を取得可能に構成されてもよい。
【0021】
すなわち、ガンマ線検出器11は、画像処理装置13に制御されて被検体の所定の撮像領域の放射性同位元素から放射されたガンマ線を検出し、イベントごとに位置情報および強度情報を出力する。また、位置情報は、1次セルのどの位置にガンマ線が入射したかを示す情報および検出面内の2次元座標の情報の少なくとも一方である。以下の説明では、ガンマ線検出器11が位置情報として検出面内のどの位置にガンマ線が入射したかを示す情報を出力する場合の例について示す。
【0022】
データ収集部12は、ガンマ線検出器11の出力をたとえばリストモードで収集する。リストモードでは、ガンマ線の検出位置情報、強度情報、ガンマ線検出器11と被検体との相対位置を示す情報(ガンマ線検出器11の位置や角度など)、およびガンマ線の検出時刻がガンマ線の入射イベントごとに収集される。
【0023】
画像処理装置13は、
図1に示すように、表示部21、入力部22、記憶部23、ネットワーク接続部24および制御部25を有する。
【0024】
表示部21は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成され、制御部25の制御に従って核医学診断画像などの各種情報を表示する。
【0025】
入力部22は、たとえばキーボード、タッチパネル、テンキーなどの一般的な入力装置により構成され、ユーザの操作に対応した操作入力信号を制御部25に出力する。
【0026】
記憶部23は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、CPUにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、これら記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるように構成してもよい。記憶部23は、制御部25により制御されて表示画素ごとの計数値や、計数値と画素値とを関連付ける複数種類のカラールックアップテーブル(LUT)を記憶する。
【0027】
ネットワーク接続部24は、ネットワーク30の形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワーク接続部24は、この各種プロトコルに従ってネットワーク30を介して画像処理装置13と他の電気機器とを接続する。ここで、ネットワーク30とは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、病院基幹LANなどの無線/有線LANやインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワークなどを含む。
【0028】
画像サーバ31は、たとえばPACS(Picture Archiving and Communication System:医用画像保管通信システム)に備えられる画像の長期保管用のサーバであり、核医学診断装置10により生成された核医学画像を記憶する。また、画像サーバ31は、ネットワーク30を介して接続されたX線CT(Computed Tomography)装置32、磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置33、X線診断装置34などの他のモダリティで生成された医用画像を記憶する。また、ネットワーク30には、たとえば人体アトラスデータなどを記憶した外部のデータベース35などが接続される。
【0029】
制御部25は、CPU、RAMおよびROMをはじめとする記憶媒体などにより構成され、この記憶媒体に記憶されたプログラムに従って画像処理装置13の処理動作を制御する。
【0030】
制御部25のCPUは、ROMをはじめとする記憶媒体に記憶された画像処理プログラムおよびこのプログラムの実行のために必要なデータをRAMへロードし、このプログラムに従って核医学画像の部分領域の視認性を向上させるための処理を実行する。
【0031】
制御部25のRAMは、CPUが実行するプログラムおよびデータを一時的に格納するワークエリアを提供する。制御部25のROMをはじめとする記憶媒体は、画像処理装置13の起動プログラム、画像処理プログラムや、これらのプログラムを実行するために必要な各種データを記憶する。なお、ROMをはじめとする記憶媒体は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、CPUにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、これら記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるように構成してもよい。
【0032】
図1に示すように、制御部25のCPUは、画像処理プログラムによって、少なくとも計数割当部41、画像データ取得部42、注目領域設定部43、正規化部44および画像生成部45として機能する。この各部41〜45は、RAMの所要のワークエリアをデータの一時的な格納場所として利用する。なお、これらの機能実現部は、CPUを用いることなく回路などのハードウエアロジックによって構成してもよい。
【0033】
計数割当部41は、所定の撮像領域から放射されたガンマ線の入射位置情報をガンマ線検出器11から受ける。そして、所定の撮像領域内の位置と表示部21の表示画素とを対応させ、入射位置情報にもとづいて所定の撮像領域全体が画像表示されるよう表示画素のそれぞれについて入射ガンマ線を光子数として計数した計数値を割り当てる(分配する)。
【0034】
より具体的には、核医学診断装置10としてSPECT装置を用いる場合、計数割当部41は、データ収集部12から少なくとも位置情報および強度情報を取得し、波高弁別を用いて所定の強度を有するイベントのみを抽出するとともに所定のエネルギーウインドウ内のエネルギーを有するイベントのみを抽出する。そして、抽出したイベントの位置情報にもとづいて、所定の撮像領域全体が画像表示されるよう表示画素のそれぞれに対して計数値を割り当てる。
【0035】
また、核医学診断装置10としてPET装置を用いる場合、計数割当部41は、ガンマ線の入射時間差(対消滅ガンマ線の検出時間の差)が所定の時間ウインドウ幅(たとえば1ns以内など)にあり、かつ対消滅ガンマ線2つのそれぞれの入射エネルギーがともに所定のエネルギーウインドウ幅内にある組み合わせを抽出する。計数割当部41は、この抽出した組み合わせのリストモードデータ(同時計数情報)にもとづいて、所定の撮像領域全体が画像表示されるよう表示画素のそれぞれに対して計数値を割り当てる。
【0036】
図2は、所定の撮像領域全体を示す核医学画像が表示部21に表示された様子の一例を示す説明図である。また、
図3は、記憶部23に記憶された複数のLUTの1つを例示する説明図である。なお、本実施形態において画素値とは色相、輝度、彩度の少なくとも1つを指すものとし、LUTに記述される画素値(色数値)は、色相、輝度、彩度の少なくとも1つを指定するための数値であるものとする。
【0037】
画像生成部45は、計数割当部41から所定の撮像領域全体が画像表示されるように割り当てられた表示画素のそれぞれの計数値の情報を受ける。画像生成部45は、この計数値を用いて記憶部23に記憶されたLUTの1つ(たとえば特にユーザ指示がない場合に用いられるようデフォルト設定されたLUT)にもとづいて各表示画素の画素値を求めることにより、所定の撮像領域全体の核医学画像を生成して表示部21に表示させる(
図2参照)。
【0038】
たとえば、所定の撮像領域全体の計数値が最小値sig_minから最大値sig_maxの範囲にある場合には、画像生成部45は、最小値sig_minおよび最大値sig_maxがLUTの画素値(色数値)の最小値col_minおよびcol_maxにそれぞれ対応するように、各表示画素の計数値に応じて各表示画素の画素値を求める(
図3参照)。
【0039】
しかし、
図2に示すように、所定の撮像領域全体の核医学画像について1つのLUTを用いて各表示画素の画素値を決定すると、RIが集まりやすい領域の輝度ばかりが高くなり、たとえば肝臓などのRIが集まりにくい領域のコントラストが悪くなってしまう。
図3には、RIが集まりにくい領域の計数値がsig_minからsig_maxの範囲に比べて非常に狭い最小値reg_minから最大値reg_maxの範囲にある場合の一例を示した。この場合、最小値reg_minから最大値reg_maxの範囲に対応するLUTの範囲の最小値raw_minから最大値raw_maxの範囲も狭くなってしまい、この領域内はコントラストが低い画像となってしまう。
【0040】
そこで、本実施形態に係る核医学診断装置10は、所定の撮像領域内の任意の部分領域の視認性が向上するよう、部分領域の計数値の分布に応じて部分領域の計数値と表示画素との関連付けを変更するよう構成される。
【0041】
まず、核医学画像内の部分領域の視認性を向上させるための基本的な手順について簡単に説明する。
【0042】
図4は、
図1に示す画像処理装置13の制御部25により核医学画像内の部分領域の視認性を向上させる際の手順を示すフローチャートである。
図4において、Sに数字を付した符号は、フローチャートの各ステップを示す。
【0043】
また、
図5は所定の撮像領域内に注目領域51を設定する様子の一例を示す説明図であり、
図6は設定された注目領域51の正規化画像の一例を示す説明図である。
【0044】
この手順は、画像生成部45により所定の撮像領域の核医学画像が生成された時点でスタートとなる。
【0045】
まず、ステップS1において、画像データ取得部42は、画像生成部45により生成された所定の撮像領域の核医学画像を取得する。また、画像データ取得部42は、必要に応じてX線CT装置やMRI装置などの他のモダリティで生成された医用画像を、ネットワーク30を介して画像サーバ31から取得する。
【0046】
次に、ステップS2において、注目領域設定部43は、自動的に、またはユーザによる入力部22を介した指示に応じて半自動もしくは手動によって、所定の撮像領域内に注目領域51を設定する(
図5参照)。
図5には、注目領域51として肝臓が設定された場合の例について示した。
【0047】
次に、ステップS3において、正規化部44は、注目領域51に対応する表示画素の計数値の分布に応じて、記憶部23に記憶されたLUTを利用して注目領域51用の計数値と画素値との関連付けを決定する。
【0048】
次に、ステップS4において、画像生成部45は、注目領域51用の計数値と画素値との関連付けにもとづいて注目領域51に対応する各表示画素の画素値を求めることにより、注目領域51の正規化画像を生成し、表示部21に表示させる(
図6参照)。なお、本実施形態において、正規化画像とは、注目領域51に対応する表示画素の計数値の分布に応じて決定された注目領域51用の計数値と画素値との関連付けにもとづいて生成された画像をいうものとする。
【0049】
なお、画像生成部45は、注目領域51の正規化画像と他のモダリティで生成された医用画像とを表示部21に重畳表示(フュージョン表示)させてもよい。
【0050】
以上の手順により、所定の撮像領域内の部分領域の視認性を向上させることができる。
【0051】
続いて、注目領域51の設定方法について詳細に説明する。
【0052】
注目領域51の設定方法には、大きく核医学画像のみを用いる方法と、X線CT装置やMRI装置などの他のモダリティで生成された医用画像を利用する方法の2通りがある。
【0053】
まず、核医学画像のみを用いる方法について説明する。この方法では、画像データ取得部42は、
図4のステップS2において、画像生成部45により生成された所定の撮像領域の核医学画像を取得する。
【0054】
自動的に注目領域51を設定する場合、あらかじめユーザにより入力部22を介して指定されて、または初期設定により、注目領域51とする所定の部位の情報(たとえば肝臓など)が注目領域設定部43に与えられる。注目領域設定部43は、所定の撮像領域の核医学画像と外部のデータベース35に記憶された人体アトラスデータとを比較することにより、所定の部位の領域を注目領域51として設定する。また、自動的に注目領域51を設定する場合、注目領域設定部43は、所定の部位の領域を全自動でセグメンテーションすることにより注目領域51を設定してもよい。
【0055】
半自動的に注目領域51を設定する場合、注目領域設定部43は、まずユーザから入力部22を介して注目領域51にしたい部位を指定する操作を受け付ける。この指定操作としては、たとえばユーザが表示部21に表示された所定の撮像領域の核医学画像を見て確認しながら、この核医学画像内の注目領域51にしたい部位の領域内の1点をクリックする操作などがあげられる。ユーザにより所定の部位の領域内の1点がクリックされるなどして注目領域51にしたい部位の指定操作が受け付けられると、注目領域設定部43は、この部位の領域をセグメンテーションすることにより注目領域51を設定する。
【0056】
また、手動で注目領域51を設定する場合、注目領域設定部43は、ユーザによる入力部22を介したROI(Region of Interest)の配置指示やマウスのドラッグによる領域指定指示に応じて注目領域51を設定する。
【0057】
次に、X線CT装置やMRI装置などの他のモダリティで生成された医用画像を利用する方法について説明する。この方法では、画像データ取得部42は、
図4のステップS2において、画像生成部45により生成された所定の撮像領域の核医学画像を取得するとともに、X線CT装置やMRI装置などの他のモダリティで生成された医用画像を、ネットワーク30を介して画像サーバ31から取得する。なお、この医用画像には少なくとも注目領域51として設定される領域の画像が含まれるものとする。以下の説明では、この医用画像に所定の撮像領域の画像が含まれる場合の例について示す。
【0058】
自動的に注目領域51を設定する場合、核医学画像のみを用いる方法と同様に、あらかじめユーザにより入力部22を介して、または初期設定により、注目領域51とする所定の部位の情報(たとえば肝臓など)が注目領域設定部43に与えられる。
【0059】
注目領域設定部43は、他のモダリティで生成された所定の撮像領域の医用画像と外部のデータベース35に記憶された人体アトラスデータとを比較することにより、所定の部位の領域を抽出する。そして、注目領域設定部43は、医用画像内で抽出された所定の部位の領域に対応する核医学画像内の領域を注目領域51として設定する。また、自動的に注目領域51を設定する場合、注目領域設定部43は、所定の部位の領域を他のモダリティで生成された医用画像内において全自動でセグメンテーションし、核医学画像内の対応する領域を注目領域51として設定してもよい。
【0060】
半自動的に注目領域51を設定する場合、注目領域設定部43は、まずユーザから入力部22を介して注目領域51にしたい部位を、医用画像内で指定する操作を受け付ける。この指定操作は、核医学画像のみを用いる方法と同様、たとえばユーザが表示部21に表示された所定の撮像領域の医用画像を見て確認しながら、この医用画像内の注目領域51にしたい部位の領域内の1点をクリックする操作などがあげられる。ユーザにより他のモダリティで生成された医用画像内の所定の部位の領域内の1点がクリックされるなどして、医用画像内で注目領域51にしたい部位の指定操作が受け付けられると、注目領域設定部43は、この部位の領域を医用画像内でセグメンテーションし、核医学画像内の対応する領域を注目領域51として設定する。
【0061】
また、手動で注目領域51を設定する場合、注目領域設定部43は、ユーザにより入力部22を介して他のモダリティで生成された医用画像内に対するROI(Region of Interest)の配置指示やマウスのドラッグによる領域指定指示を受け、この指示された領域に対応する核医学画像内の領域を注目領域51として設定する。
【0062】
なお、注目領域51の設定方法は上述した方法に限られない。たとえば、他のモダリティで生成された医用画像を利用する場合、ユーザにより他のモダリティで生成された医用画像内の所定の部位の領域内の1点がクリックされるなどして、医用画像内で注目領域51にしたい部位の指定操作が受け付けられると、このクリックされた箇所に対応する核医学画像内の位置を求め、この核医学画像内の位置を含む領域をセグメンテーションすることにより注目領域51を設定してもよい。また、ユーザにより核医学画像内の所定の部位の領域内の1点がクリックされるなどして、核医学画像内で注目領域51にしたい部位の指定操作が受け付けられると、このクリックされた箇所に対応する他のモダリティで生成された医用画像内の位置を求め、この医用画像内の位置を含む領域をセグメンテーションし、セグメンテーションした医用画像内の領域に対応する核医学画像内の領域を注目領域51としてもよい。
【0063】
続いて、注目領域51用の計数値と画素値との関連付け(以下、注目領域用関連付けという)の決定方法(以下、正規化方法)について詳細に説明する。
【0064】
正規化方法としては、大きく次の4つの方法があげられる。なお、以下の説明では、注目領域51に対応する表示画素の計数値の最小値をreg_min、最大値をreg_maxとし、所定の撮像領域全体の画像(
図2参照)を生成する際に適用されたLUTの画素値範囲(色範囲)を最小値col_minおよびcol_maxというものとする。
【0065】
図7は、第1の正規化方法に係る注目領域用関連付けの決定方法を説明するための図である。
【0066】
第1の正規化方法は、注目領域51に対応する表示画素の計数値の最小値reg_minから最大値reg_maxまでの範囲に応じて注目領域用関連付けを決定する方法である。
【0067】
この方法では、正規化部44は、次の式(1)を用いて正規化された計数値nor_valを求める。
【数1】
【0068】
式(1)において、valueは各表示画素の計数値を、nor_valは正規化された(補正後の)計数値を、それぞれあらわす。式(1)は、各表示画素の計数値がポイントするLUTの画素値(色数値)を直接変更するための式である。注目領域51に対応する全ての表示画素の計数値valueに対して式(1)を用いてnor_valを求めることにより、注目領域51に対応する表示画素の計数値の最小値reg_minから最大値reg_maxまでの範囲と所定の撮像領域全体の画像(
図2参照)を生成する際に適用されたLUTの画素値範囲とを対応させることができる(
図7参照)。
【0069】
この第1の正規化方法によれば、所定の撮像領域と同一のLUTを用いて、コントラストを強調した視認性の高い注目領域51の核医学画像を生成することができる。
【0070】
図8は、第2の正規化方法に係る注目領域用関連付けの決定方法を説明するための図である。
【0071】
第2の正規化方法は、注目領域51に対応する表示画素の計数値の平均reg_aveおよび分散reg_σに応じて注目領域用関連付けを決定する方法である。
【0072】
この方法では、正規化部44は、次の式(2)を用いて正規化された計数値nor_valを求める。
【数2】
【0073】
式(2)において、tar_aveは任意に指定される所定の平均値を、tar_σは任意に指定される所定の分散値を、それぞれあらわす。式(2)は、各表示画素の計数値を所定の撮像領域と同一のLUTに適した値に補正するための式である。注目領域51に対応する全ての表示画素の計数値valueに対して式(2)を用いてnor_valを求めることにより、注目領域51に対応する表示画素の計数値の平均reg_aveおよび分散reg_σが所定の平均tar_aveおよび分散tar_σに一致するように各表示画素の計数値valueを正規化した計数値nor_valに補正することができる。したがって、所定の撮像領域と同一のLUTを用い、この正規化した計数値nor_valに対応するLUTの画素値を求めることで各表示画素の画素値を決定することにより、正規化画像を生成することができる。
【0074】
この第2の正規化方法によっても、所定の撮像領域と同一のLUTを用いて、コントラストを強調した視認性の高い注目領域51の核医学画像を生成することができる。
【0075】
図9(9A)は計数値の範囲が狭い領域を第1または第2の正規化方法で正規化する様子を説明するための図であり、(9B)は計数値の範囲が広い領域を第1または第2の正規化方法で正規化する様子を説明するための図である。また、
図9(9C)は(9B)と同一の領域を第3の正規化方法で正規化する様子を説明するための図である。
【0076】
第3の正規化方法は、注目領域51に対応する表示画素の計数値の平均reg_aveおよび分散reg_σに応じて注目領域用関連付けを決定する方法である。この方法は、平均reg_aveおよび分散reg_σに応じて用いるLUTを変更する点で第2の正規化方法と異なる。
【0077】
図9(9A)に示すように注目領域51に対応する表示画素の計数値の範囲が狭い場合は、この計数値の範囲に対応するLUTの範囲(最小値raw_minから最大値raw_max)も狭い。この場合、第1または第2の正規化方法によって対応するLUTの範囲を拡張することにより、十分にコントラストを向上させることができる。
【0078】
しかし、
図9(9B)に示すように注目領域51に対応する表示画素の計数値の範囲が比較的広く、対応するLUTの範囲(最小値raw_minから最大値raw_max)が広い場合には、第1または第2の正規化方法によって同一のLUTを用いて対応するLUTの範囲を拡張しても、あまりコントラストが向上しない。
【0079】
そこで、
図9(9C)に示すように、注目領域51に対応する表示画素の計数値の分布に応じてLUTの範囲を変更し、変更後のLUTを用いて注目領域用関連付けを決定することにより、注目領域51に対応する表示画素の計数値の範囲によらず注目領域51のコントラストを向上させることができる。
【0080】
具体的には、注目領域51に対応する表示画素の計数値の平均がreg_ave、分散がreg_σであるとき、正規化部44は、LUTの中心WLをreg_ave、LUTの幅WWをA*reg_
σに設定する(ただしAは任意の値とする)。
【0081】
この第3の正規化方法によれば、注目領域51に対応する表示画素の計数値の分布に応じてLUTの範囲を変更することにより、コントラストを強調した視認性の高い注目領域51の核医学画像を生成することができる。なお、正規化部44は、注目領域51に対応する表示画素の計数値の平均reg_aveおよび分散reg_σに応じてあらかじめ記憶部23に記憶された複数のLUTのうちLUTの中心WLおよび幅WWがreg_aveおよびA*reg_
σに近いものを注目領域用のLUTとして抽出してもよい。
【0082】
図10は、第4の正規化方法に係る注目領域用関連付けの決定方法を説明するための図である。
【0083】
第4の正規化方法は、注目領域51に関連付けられた血流量と所定の血流量との比に応じて注目領域51に対応する各表示画素の計数値を補正する方法である。
【0084】
この方法では、正規化部44は、次の式(3)を用いて正規化された計数値nor_valを求める。
【数3】
【0085】
式(3)において、base_bvは注目領域51に対応する部位の標準血流量を、tar_bvはユーザにより入力部22を介して指定されて、または初期設定により、設定される所定の血流量を、それぞれあらわす。
【0086】
標準的な血流量は、臓器によって異なる。血流量に応じてRIの集まりやすさが異なり、計数値が異なる。そこで、注目領域51として臓器領域が設定される場合、式(3)を用いることにより、部位ごとに異なる標準血流量base_bvを所定の血流量との比にもとづいて正規化する。
【0087】
たとえば、注目領域51として心臓領域、頭部領域、肝臓領域および腎臓領域の4つの領域が設定される場合を考える。この場合、たとえば所定の血流量tar_bvとして肝臓の標準血流量を用いることにより、頭部や腎臓で高くなっていた輝度値を、肝臓領域の輝度値と同じレベルで観察することができるようになる。なお、tar_bvとしては特定の部位の値を用いてもよいし、任意の値を用いてもよい。
【0088】
この第4の正規化方法によれば、所定の撮像領域と同一のLUTを用いて、注目領域51の血流量を考慮してコントラストを強調した視認性の高い注目領域51の核医学画像を生成することができる。
【0089】
本実施形態に係る核医学診断装置10は、核医学画像の部分領域の視認性を向上させることができる。このため、たとえば撮像領域内にRIが集まりにくい領域がある場合に、このRIが集まりにくい領域を注目領域51として設定することによりこの領域の画像を観察しやすくすることができる。したがって、本実施形態に係る核医学診断装置10によれば、これまで発見しづらかった病変箇所の発見可能性を高めることができるとともに、診断速度を向上させることができる。
【0090】
また、別観察者が同一画像を観察する場合のエラー(interobserver error)や同一観察者が同一画像を複数回観察する場合のエラー(intraobserver error)を低減することができるため、観察者の経験等によらない的確な診断を支援することができる。
【0091】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0092】
たとえば、本発明の一実施形態に係る画像診断装置は、任意の領域について、領域に対応する表示画素の計数値の分布に応じて計数値と画素値との関連付けを適応的に変更することができる装置であればよい。したがって、上記実施形態では本発明の一実施形態に係る画像診断装置として核医学診断装置を用いる場合の例について説明したが、画像診断装置として利用可能なモダリティはX線CT装置や磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置などであってもよく、核医学診断装置に限られない。また、画像診断装置があつかう医用画像は当然核医学画像に限られず、たとえばX線CT装置により生成されるパーフュージョン画像などであってもよい。