特許第6158034号(P6158034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太平洋マテリアル株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158034
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】上水道施設用プライマー
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/71 20060101AFI20170626BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20170626BHJP
   C02F 1/00 20060101ALI20170626BHJP
   E03B 11/00 20060101ALI20170626BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20170626BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20170626BHJP
   C09D 129/04 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   C04B41/71
   E04G23/02 B
   C02F1/00 J
   E03B11/00 Z
   C09D5/00 D
   C09D133/00
   C09D129/04
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-216905(P2013-216905)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-78098(P2015-78098A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】長井 義徳
【審査官】 長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−112583(JP,A)
【文献】 特開2008−156152(JP,A)
【文献】 特開2010−019018(JP,A)
【文献】 特開2010−084354(JP,A)
【文献】 特開2013−082925(JP,A)
【文献】 特開2008−037704(JP,A)
【文献】 特開2007−197301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/00− 41/72
C09D 1/00− 10/00
C09D 101/00−201/10
E03B 1/00− 11/16
E04G 23/00− 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系重合体を保護コロイドとしたアクリル系樹脂エマルションからなる上水道施設用プライマー。
【請求項2】
前記アクリル系樹脂エマルションがオールアクリル樹脂エマルションである請求項1記載の上水道施設用プライマー。
【請求項3】
コンクリート製上水道施設のコンクリート表面に、請求項1又は2に記載の上水道施設用プライマーを被覆し、該上水道施設用プライマーの表面にモルタルを被覆することを特徴とするコンクリート製上水道施設のモルタル被覆方法。
【請求項4】
コンクリート製上水道施設の劣化したコンクリートを除去したコンクリート表面に、請求項1又は2に記載の上水道施設用プライマーを被覆し、該上水道施設用プライマーの表面に補修モルタルを被覆することを特徴とするコンクリート製上水道施設のモルタル補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯水槽や浄水処理施設等の上水道施設のモルタル被覆又はモルタル補修の際に用いる上水道施設用プライマー、及びこれを用いたモルタル被覆又はモルタル補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の表面にモルタルを被覆する場合、モルタル中の水分がコンクリートに吸われてモルタルとコンクリートの界面で剥離が起こることを防ぐために、コンクリート表面にプライマーを塗布することが行われている(例えば特許文献1参照)。プライマーは、吸水調整材とも呼ばれ、アクリル−スチレン共重合体樹脂やエチレン酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂エマルションが多く用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、貯水槽や浄水処理施設等の上水道施設においてもコンクリート構造物は多く用いられている。一般的には、コンクリート製の上水道施設が劣化すると表面から劣化していないコンクリートが露出するまで劣化したコンクリートを除去し、除去したコンクリート部分を補修モルタルで埋め戻すことが行われる。つまり、露出したコンクリート表面に補修モルタルを被覆する。このとき、通常のコンクリート構造物にモルタルを被覆する場合と同様に、プライマーを塗布することが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−019018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上水道施設において上水又は上水となる水(合わせて以下「上水等」という。)が接する資材又は設備の材質は、「水道施設の技術的基準を定める省令(厚生省令第15号)」に従い、水(上水等)と接触する面積が著しく小さいものを除き、厚生労働大臣が定める資機材等の材質に関する試験により供試品について浸出させたときその浸出液が基準(同省令別表第二に定められた基準)に適合する必要がある。
コンクリート製貯水槽等に用いる補修モルタルは、上記厚生省令に従い浸漬させたときの浸漬液が上記基準に適合する必要がある。
一方、プライマーに関しては、通常は直接上水等には接することなく補修モルタルに被覆されていることから浸漬液が上記基準に適合する必要性については考えられてこなかった。
しかし、何らの原因で補修モルタルが剥落することや補修モルタルにプライマーまで達するひび割れが発生すると、上水等がプライマーに接することになることから、プライマーについてもその浸漬液が上記基準に適合することが望ましい。
従って、本発明の課題は、浸漬液が上記基準(「水道施設の技術的基準を定める省令(厚生省令第15号)」の別表第二に定められた基準)に適合するプライマー、即ち厚生省令第15号に適合するプライマーを提供することにある。
また、本発明の課題は、安全な上水等が得られるモルタルで被覆したコンクリート製上水道施設のモルタル被覆方法及びモルタル補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、前記厚生省令の基準に適合するプライマーについて種々検討したところ、通常のアクリル系樹脂エマルションを用いたプライマーを使用すると前記基準に適合せず、ポリビニルアルコール系重合体を保護コロイドとしたアクリル系樹脂エマルションからなるプライマーを採用すると前記基準の全ての項目に適合し、上水道施設用プライマーとして使用できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔4〕を提供するものである。
【0008】
〔1〕ポリビニルアルコール系重合体を保護コロイドとしたアクリル系樹脂エマルションからなる上水道施設用プライマー。
〔2〕前記アクリル系樹脂エマルションがオールアクリル樹脂エマルションである〔1〕記載の上水道施設用プライマー。
〔3〕コンクリート製上水道施設のコンクリート表面に、〔1〕又は〔2〕に記載の上水道施設用プライマーを被覆し、該上水道施設用プライマーの表面にモルタルを被覆することを特徴とするコンクリート製上水道施設のモルタル被覆方法。
〔4〕コンクリート製上水道施設の劣化したコンクリートを除去したコンクリート表面に、〔1〕又は〔2〕に記載の上水道施設用プライマーを被覆し、該上水道施設用プライマーの表面に補修モルタルを被覆することを特徴とするコンクリート製上水道施設のモルタル補修方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、浸漬液が上記基準(「水道施設の技術的基準を定める省令(厚生省令第15号)」の別表第二に定められた基準)に適合するプライマー、即ち厚生省令第15号に適合する上水道施設用プライマーが得られる。
また、本発明によれば、もしも補修モルタルが剥落することや補修モルタルにプライマーまで達するひび割れが発生しても、上記基準に適合する上水等が得られる。
また、接触する上水等が上記基準値以下であるので、安全な上水等が得られる。
また、本発明によれば、安全な上水等が得られる、コンクリート製上水道施設のモルタル被覆方法、及びモルタル補修方法が得られる。
また、本発明によれば、安全な上水等が得られるモルタルで被覆したコンクリート製上水道施設が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の上水道施設用プライマーは、ポリビニルアルコール系重合体を保護コロイドとしたアクリル系樹脂エマルションからなることを特徴とする。界面活性剤によりエマルション化したものではなく、ポリビニルアルコール系重合体を保護コロイドとしたアクリル系樹脂のポリマー粒子が水中にコロイド上に懸濁した水中油滴型乳濁液からなる。本発明の上水道施設用プライマーは、上水道施設を被覆するモルタル用のプライマーである。特に、コンクリート製上水道施設の上水等に接するコンクリートを被覆するモルタル用のプライマーである。
【0011】
本発明の上水道施設用プライマーに含まれるアクリル系樹脂としては、原料モノマーにホルムアルデヒドや酢酸ビニル等の厚生省令第15号別表第二に定められた項目の物質が含まれていないことからオールアクリル樹脂が好ましい。オールアクリル樹脂としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ヒドロキシエチルアクリレート、N,N’−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、ヒドロキシエチルメタクリレート、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系等の(メタ)アクリル酸又はその誘導体より選択されるモノマーからなる重合体、共重合体が挙げられる。このうち、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミドから選ばれるモノマーからなる重合体又は共重合体が好ましい。
【0012】
本発明で用いるアクリル系樹脂のポリマー粒子の平均粒径が0.1〜2μmの範囲であると緻密なポリマーフィルムが形成され易く、接着性に優れることから好ましい。また、アクリル系樹脂のポリマー粒子が粒径0.1〜2μmの粒子を90容積%以上含むアクリル系樹脂エマルションであると、緻密なポリマーフィルムが形成され易く、接着性に優れることから好ましい。より好ましくは、アクリル系樹脂のポリマー粒子が粒径0.1〜2μmの粒子を90容積%以上含み且つ粒径0.1〜1μmの粒子を95容積%以上含むアクリル系樹脂エマルションである。
【0013】
本発明で用いるアクリル系樹脂エマルションの最低造膜温度(MFT)は、常温での造膜性の点から、好ましくは0〜20℃、更に好ましくは0〜10℃である。
本発明で用いるアクリル系樹脂エマルションのガラス転移点(Tg)は、ポリマー皮膜自体の引張強度の確保及びモルタルとコンクリートの付着強度を高くする点から、好ましくは−10〜20℃、更に好ましくは−5〜10℃が好ましい。
【0014】
本発明のアクリル系樹脂エマルションは、ポリビニルアルコール系重合体を保護コロイドとしたエマルションである。
本発明におけるポリビニルアルコール系共重合体(以下、単にPVAという)としては、ポリビニルアルコールとその誘導体が含まれる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、各種官能基等により変性されたポリビニルアルコールを用いることができ、例えば、カルボン酸、スルホン酸、リン酸をはじめとするアニオン基変性、4級アンモニウム基を含むカチオン基変性、アセトアセチル基、ジアセトンアクリルアミド基、メルカプト基、シラノール基等により変性されたポリビニルアルコールを用いることができる。
【0015】
PVAの平均ケン化度としては、安定に重合を進行させる点、エマルションの保存安定性、及び再分散性の点から、80〜99.9モル%であることが好ましく、より好ましくは、90〜99.9モル%である。
なお、平均ケン化度は、JIS K 6726に規定されるケン化度の算出方法に従って求めることができる。
【0016】
また、PVAの平均重合度としては、十分な保護コロイド能を得る点、安定なエマルションを得る点、及び適度な粘性を得る点から通常10〜1000であることが好ましく、より好ましくは、10〜500である。
なお、平均重合度は、JIS K 6726に規定される平均重合度の算出方法に従って求めることができる。
【0017】
本発明のコンクリート製上水道施設のモルタル被覆方法は、コンクリート製上水道施設のコンクリート表面に、上記の上水道施設用プライマーを被覆し、該上水道施設用プライマーの表面にモルタルを被覆することを特徴とする。
上水道施設用プライマーをコンクリート表面に被覆する方法としては、布、スポンジ、刷毛又はローラー等による塗布、噴霧器による噴霧等が好ましい例として挙げられ、ローラー等による塗布又は噴霧器による噴霧が広い面積を短時間に被覆できることから更に好ましい。尚、噴霧器を用いる場合は、エアー式の噴霧器でもエアーレス式の噴霧器でも使用可能である。
【0018】
コンクリート表面に被覆する上水道施設用プライマーの量、即ち、塗布量は、良好な吸水調整性能を得る点、乾燥したコンクリートへモルタル中の水分が移動しモルタルの水和反応を阻害して付着強さが低下するのを防ぐ点、プライマーの皮膜厚さが厚くなりモルタルのコンクリートへの投錨効果を阻害して付着強さが低下するのを防ぐ点から、5〜40g/m2(不揮発分換算)が吸水調整性と付着強さの点で好ましい。
【0019】
コンクリート製上水道施設としては、コンクリートが上水等に接する上水道施設であればよい。
【0020】
本発明に用いるモルタルとしては、結合材としてセメントが含まれ、骨材が含まれていれば特に限定されずに用いることができる。結合材としてセメント用ポリマー、石膏、スラグ、ポゾラン等のセメント以外の結合材が含まれていてもよい。本発明に用いるモルタルに含まれるセメントとしては、ポルトランドセメントやアルミナセメント等の水硬性セメント、気硬セメント等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。耐水性があることから、好ましくは水硬セメントを用いる。
【0021】
また、本発明に用いるモルタルに含まれる骨材としては、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、川砂利、陸砂利、砕石、パーライトや発泡ガラス粒(ガラスバルーン)等の人工骨材、スラグ骨材等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0022】
本発明に用いるモルタルには、セメント及び骨材の他に、各種混和材料から選ばれる1種又は2種以上を本発明の効果を実質損なわない範囲で併用することができる。この混和材料としては、例えば膨張材、セメント分散剤(減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、高性能減水剤、流動化剤を含む。)、防水材、防錆剤、収縮低減剤、増粘剤、保水剤、顔料、繊維、撥水剤、白華防止剤、急結剤(材)、急硬剤(材)、凝結遅延剤、消泡剤、発泡剤、高炉スラグ微粉末、石粉、シリカフューム、火山灰、空気連行剤、表面硬化剤等が挙げられる。
【0023】
本発明に用いるモルタルとして好ましくは、厚生省令第15号に適合するモルタルである。本発明に用いるモルタルとして厚生省令第15号に適合するモルタルを用いると、モルタルの表面に厚生省令第15号に適合する仕上材で被覆しなくともよい。
【0024】
本発明のコンクリート製上水道施設のモルタル補修方法は、コンクリート製上水道施設の劣化したコンクリートを除去したコンクリート表面に、上記の上水道施設用プライマーを被覆し、該上水道施設用プライマーの表面に補修モルタルを被覆することを特徴とする。
コンクリート製上水道施設としては、コンクリートが上水等に接する上水道施設であればよい。
【0025】
コンクリート製上水道施設の劣化したコンクリートを除去する方法としては、劣化したコンクリートを除去できれば特に限定されず、例えば、ウォータージェットを用いる方法、ハンマードリルや削岩機等を用いて斫り取る方法、サンドブラストを用いる方法、コンクリートカッターやワイヤソー等を用いて切り取る方法、ディスクサンダーやワイヤブラシ等を用いて削り取る方法等が挙げられ、これらの方法を単独又は組み合わせることが好ましい。
【0026】
本発明に用いる補修モルタルとしては、前記と同様のモルタルを用いることができ、好ましくは、厚生省令第15号に適合するモルタルである。本発明に用いる補修モルタルとして厚生省令第15号に適合するモルタルを用いると、上記同様に、モルタルの表面に厚生省令第15号に適合する仕上材で被覆しなくともよい。
【0027】
劣化したコンクリートを除去したコンクリート表面及び/又は露出した金属表面に、防錆剤、硬化剤及び防水剤から選ばれる1種又は2種以上を含む材料を、上水道施設用プライマーで被覆する前に、塗布してもよい。
【0028】
上水道施設用プライマーを劣化したコンクリートを除去したコンクリート表面に被覆する方法としては、布、スポンジ、刷毛又はローラー等による塗布、噴霧器による噴霧等が好ましい例として挙げられ、ローラー等による塗布又は噴霧器による噴霧が広い面積を短時間に被覆できることから更に好ましい。
【0029】
劣化したコンクリートを除去したコンクリート表面に被覆する上水道施設用プライマーの量、即ち、塗布量は、5〜40g/m2(不揮発分換算)が吸水調整性と付着強さの点で好ましい。
【実施例】
【0030】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0031】
実施例1
上水道施設用プライマーとして次の2種類のアクリル樹脂系エマルションを用いた。
(エマルションA)
ポリビニルアルコール(平均ケン化度:98モル%、平均重合度:200)を保護コロイドとしたアクリル酸エステル/メタアクリル酸エステル共重合体の樹脂エマルション、MFT:0℃、Tg:8℃、不揮発分23%、荷電:カチオン、ポリマー粒子が粒径0.1〜2μmの粒子が100容積%且つ粒径0.1〜1μmの粒子を98容積%含む。
(エマルションB)
界面活性剤を用いて乳化させたアクリル/スチレン共重合体の樹脂エマルション、MFT:0℃、Tg:−9℃、不揮発分45%。
【0032】
エマルションAをガラス板に塗布した後に乾燥させエマルションAの塗膜を作製した。作製したエマルションAの塗膜の浸漬液を厚生省令第15号の別表第二に定められた項目について、分析を行った。試験は、JWWA Z 108「水道用資機材−浸漬方法」(コンディショニング操作実施)及びJWWA Z 110「水道用資機材−浸漬液の分析方法」に従って行った。試験結果を表1に示した。
同様に、エマルションBの塗膜を作製し、作製したエマルションAの塗膜の浸漬液を厚生省令第15号の別表第二に定められた項目について、分析を行った。試験結果を表2に示した。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
表1及び表2から明らかなように、界面活性剤を用いて乳化したアクリル系樹脂エマルション(エマルションB)をプライマーとして用いた塗膜からは界面活性剤が浸漬液中に溶けだし、前記基準に適合しなかった。これに対し、本発明のプライマー(エマルションA)を用いた塗膜からは、前記基準に規定する成分は何ら溶けださなかった。
【0036】
実施例2
上水道施設用プライマーとして、下記のエマルションを用い、実施例1と同様にして、界面活性剤の溶けだしの有無を検討した。その結果、実施例1と同様に測定した本発明のエマルションCを用いた塗膜の陰イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の溶出量(浸漬液の濃度)は何れも前記基準の各項目の基準に適合し、それぞれ0.02mg/L未満、0.005mg/L未満であった。それに対し、同様に測定したエマルションD及びエマルションEをプライマーとして用いた塗膜の場合の非イオン界面活性剤の溶出量(浸漬液の濃度)は何れも前記基準の各項目の基準に適合せず、それぞれ0.015mg/L(エマルションDを用いた塗膜)及び0.006mg/L(エマルションEを用いた塗膜)であった。
(エマルションC)
ポリビニルアルコール(平均ケン化度:98モル%、平均重合度:200)を保護コロイドとしたアクリル酸エステル/メタアクリル酸エステル共重合体の樹脂エマルション、MFT:0℃、Tg:8℃、不揮発分45%、荷電:ノニオン、ポリマー粒子が粒径0.1〜2μmの粒子が100容積%且つ粒径0.1〜1μmの粒子を98容積%含む。
(エマルションD)
界面活性剤を用いて乳化させたアクリル/スチレン共重合体の樹脂エマルション、MFT:3℃、Tg:−8℃、不揮発分45%。
(エマルションE)
界面活性剤を用いて乳化させたアクリル/スチレン共重合体の樹脂エマルション、MFT:1℃、Tg:5℃、不揮発分52%、粒径0.15μm。
【0037】
実施例3
コンクリート板(300×300×60mm)の一面(300×300mm)をディスクサンダーを用いて骨材が露出するように削り取った。
骨材が露出したコンクリート面に、エマルションAを塗布量が20g/m2(不揮発分換算)となるように、刷毛で塗布した。塗布したエマルションAが乾燥した後に、補修モルタルを10mmの厚みでエマルションAを塗布したコンクリート表面、即ち塗布したエマルションAの表面に塗布した。このとき用いた補修モルタルは、太平洋マテリアル社製「RSモルタル−NF」(商品名)で、この補修モルタルは厚生省令第15号に適合するモルタルである。