特許第6158049号(P6158049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キャタピラー エス エー アール エルの特許一覧

<>
  • 特許6158049-建設機械のアーム 図000002
  • 特許6158049-建設機械のアーム 図000003
  • 特許6158049-建設機械のアーム 図000004
  • 特許6158049-建設機械のアーム 図000005
  • 特許6158049-建設機械のアーム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158049
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】建設機械のアーム
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/38 20060101AFI20170626BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   E02F3/38 B
   E02F9/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-234220(P2013-234220)
(22)【出願日】2013年11月12日
(65)【公開番号】特開2015-94129(P2015-94129A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2015年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】西本 和史
(72)【発明者】
【氏名】古賀 弘和
(72)【発明者】
【氏名】江川 功
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−241423(JP,A)
【文献】 特開2012−219441(JP,A)
【文献】 実開平05−057038(JP,U)
【文献】 特開2012−241422(JP,A)
【文献】 特開2003−261956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/38
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左,右一対の側板と、該一対の側板の前端に接合された前板と、該一対の側板の後端に接合された後板とから鉛直方向に見て断面が矩形の箱型構造体として形成されており、
該一対の側板の各々の上部後端には左,右一対の半円形状切欠きが形成され、該一対の切欠きにはブーム連結ボスが配設されており、
該ブーム連結ボスは、左,右方向に延びた円筒状ボス部と、該ボス部の左,右方向両端側の外周面から径方向外方に突出して周方向に延び該一対の切欠きに対応して形成された左,右一対の鍔部とを有し、該一対の鍔部の各々は該一対の切欠きの各々に接合されており、
該箱型構造体の内部には外周が該ボス部、該一対の鍔部、該一対の側板及び該前板に接合された補強板が配設されており、
該一対の鍔部の各々の外周縁には左,右方向内方に凹んだ左,右一対の段差部が形成されており、該一対の鍔部の各々は該補強板の前方に位置する前方鍔部と該補強板の後方に位置する後方鍔部とに区画されており、
該一対の段差部の各々の外面は該一対の切欠きの各々の内面に当接され、該一対の段差部の各々の外面は該一対の切欠きの各々の外面に接合され、且つ該後方鍔部において該一対の段差部の各々の内面は該一対の切欠きの各々の内面に接合されており、
該後方鍔部における該一対の段差部の各々の内面と該一対の切欠きの各々の内面との接合部の各々は、該補強板の後面から該後方鍔部の外周縁に沿って該一対の段差部の各々と該一対の切欠きの各々との当接部後端まで延び次いで該一対の側板の各々の後端外縁に沿って下方に延びている、
ことを特徴とする建設機械のアーム。
【請求項2】
該補強板は該ボス部から下方に向かって該後板と略平行に延び次いで前下方に向かって屈曲されて該前板まで延びている、請求項1記載の建設機械のアーム。
【請求項3】
該前板の外面には左,右一対の作業具シリンダブラケットが接合されており、該補強板の下端外周は該一対の作業具シリンダブラケットの後方において該前板の内面に接合されている、請求項1又は2記載の建設機械のアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左,右一対の側板と、各側板の前端に接合された前板と、各側板の後端に接合された後板とから鉛直方向に見て断面が矩形の箱型構造体として形成され、その内部には補強板が配設されている建設機械のアームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回自在に搭載された上部旋回体と、上部旋回体に俯仰動自在に取付けられた作業腕装置とから大略構成されている。土砂等の掘削作業時には、作業腕装置が俯仰動作され、上部旋回体が下部走行体に対し旋回動作されることによって土砂等の掘削作業が行われるようになっている。
【0003】
作業腕装置は、上部旋回体の前部に俯仰動自在に取付けられたブームと、ブームの前部に回動自在に取付けられたアームと、アームの下部に回動自在に取付けられた作業具と、アーム及び作業具の間に配設された作業具リンクと、ブームを俯仰動させるブームシリンダと、アームを回動させるアームシリンダと、作業具を回動させる作業具シリンダとから大略構成されている。
【0004】
アームは、左,右一対の側板と、各側板の前端に溶接により接合された前板と、各側板の後端に溶接により接合された後板とから鉛直方向に見て断面が矩形の箱型構造体として形成されている。
【0005】
各側板の上部後端には、左,右一対の半円形状切欠きが形成されている。この切欠きには、ブームの前部に連結ピンによって連結されるブーム連結ボスが配設されている。ブーム連結ボスは、左,右方向に延びた円筒状ボス部と、ボス部の左,右方向両端側の外周面から径方向外方に突出して周方向に延びた左,右一対の鍔部とを有している。各鍔部は各切欠きに対応して形成されている。そして、各鍔部の外面は、各切欠きの外面に、アームの外方から溶接されて、接合されている。
【0006】
アームの内部には、掘削反力等による曲げ荷重やねじり荷重に対するアームの剛性を高めるために、アームの上部と下部とを仕切るようにして平板からなる矩形の補強板が配設されている。補強板は、その外周がブーム連結ボスのボス部、ブーム連結ボスの各鍔部、各側板及び前板に溶接により接合されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−241423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したとおりの従来の建設機械のアームには、次のとおり解決すべき課題がある。
【0009】
アームは、内部に補強板が配設されていることによって剛性が高められているものの、掘削作業の際に荷重が作用すると、その構造や荷重の方向等からブーム連結ボスの周囲、特に各鍔部の外面と各切欠きの外面とを接合している溶接部、に応力が集中して、この溶接部に亀裂が入るおそれがある。
【0010】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、ブーム連結ボスの周囲に発生する応力を低減して、各鍔部の外面と各切欠きの外面とを接合している溶接部に亀裂が入ることを防止することができる建設機械のアームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、上記技術的課題を達成するアームとして、左,右一対の側板と、該一対の側板の前端に接合された前板と、該一対の側板の後端に接合された後板とから鉛直方向に見て断面が矩形の箱型構造体として形成されており、該一対の側板の各々の上部後端には左,右一対の半円形状切欠きが形成され、該一対の切欠きにはブーム連結ボスが配設されており、該ブーム連結ボスは、左,右方向に延びた円筒状ボス部と、該ボス部の左,右方向両端側の外周面から径方向外方に突出して周方向に延び該一対の切欠きに対応して形成された左,右一対の鍔部とを有し、該一対の鍔部の各々は該一対の切欠きの各々に接合されており、該箱型構造体の内部には外周が該ボス部、該一対の鍔部、該一対の側板及び該前板に接合された補強板が配設されており、該一対の鍔部の各々の外周縁には左,右方向内方に凹んだ左,右一対の段差部が形成されており、該一対の鍔部の各々は該補強板の前方に位置する前方鍔部と該補強板の後方に位置する後方鍔部とに区画されており、該一対の段差部の各々の外面は該一対の切欠きの各々の内面に当接され、該一対の段差部の各々の外面は該一対の切欠きの各々の外面に接合され、且つ該後方鍔部において該一対の段差部の各々の内面は該一対の切欠きの各々の内面に接合されており、該後方鍔部における該一対の段差部の各々の内面と該一対の切欠きの各々の内面との接合部の各々は、該補強板の後面から該後方鍔部の外周縁に沿って該一対の段差部の各々と該一対の切欠きの各々との当接部後端まで延び次いで該一対の側板の各々の後端外縁に沿って下方に延びている、ことを特徴とする建設機械のアームが提供される。
【0012】
補強板は該ボス部から下方に向かって該後板と略平行に延び次いで前下方に向かって屈曲されて該前板まで延びているのが好適である。該前板の外面には左,右一対の作業具シリンダブラケットが接合されており、該補強板の下端外周は該一対の作業具シリンダブラケットの後方において該前板の内面に接合されているのが好都合である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアームにおいては、後方鍔部において各段差部の内面は各切欠きの内面に接合されている。このため、掘削作業によってブーム連結ボスの周囲に発生する応力の向きは下方向が支配的であることから、ブーム連結ボスの周囲に発生する応力が各段差部の内面と各切欠きの内面とを接合している溶接部に分散されることとなり、ブーム連結ボスの周囲に発生する応力を効果的に低減することができ、これによって、各鍔部の外面と各切欠きの外面とを接合している溶接部に亀裂が入ることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るアームの左側板を取外した状態での斜視図。
図2図1中のA方向から見た要部拡大図。
図3図2中のB−B方向から見た断面図。
図4図1中のブームシリンダボス及び上部側板等を拡大した斜視図。
図5図1に示す建設機械のアームを備えた油圧ショベルの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に従って構成された建設機械のアームについて、代表的な建設機械である油圧ショベルにおける、図1から図5までに示された実施の形態を参照しながら説明する。
【0016】
図5を参照して説明する。全体を番号2で示す油圧ショベルは、自走可能な下部走行体4と、下部走行体4上に旋回自在に搭載された上部旋回体6と、上部旋回体6に俯仰動自在に取付けられた作業腕装置8とから大略構成されている。土砂等の掘削作業時には、作業腕装置8が俯仰動作され、上部旋回体6が下部走行体4に対し旋回動作されることによって土砂等の掘削作業が行われるようになっている。
【0017】
上部旋回体6は、骨組み構造体をなす旋回フレーム10と、旋回フレーム10の左前部に配設されていて作業員が搭乗する運転室12と、旋回フレーム10の後部に配設されていてエンジン等の機器を収容している機器収容室14と、機器収容室14の後方に配設されているカウンタウエイト16等を有している。なお、本明細書の説明で用いられている前,後方向及び左,右方向は、図5に示すような作業腕装置8の先端が地面に接している状態において、運転室12内に搭乗した作業員から見た前,後方向及び左,右方向である。
【0018】
作業腕装置8は、上部旋回体6の前部に俯仰動自在に取付けられたブーム18と、ブーム18の前部に回動自在に取付けられたアーム20と、アーム20の下部に回動自在に取付けられた作業具22と、アーム20及び作業具22の間に配設された作業具リンク24と、ブーム18の側方の各々に配設されていてブーム18を俯仰動させる左,右一対のブームシリンダ26,26と、ブーム18の上方に配設されていてアーム20を回動させるアームシリンダ28と、アーム20の前方に配設されていて作業具22を回動させる作業具シリンダ30とから大略構成されている。
【0019】
図1を参照して説明する。アーム20は、上,下方向に延びた左,右一対の側板32,32と、各側板32,32の前端に溶接により接合された前板34と、各側板32,32の後端に溶接により接合された後板36とから鉛直方向に見て断面が矩形の箱型構造体として形成されている。
【0020】
また、アーム20は、全長が数メートルにも及ぶ長尺な溶接構造体であることから製造時の取り扱いを容易にするため、各側板32,32、前板34及び後板36の各々は分割された構造となっている。
【0021】
各側板32,32は、ブーム18側に位置する左,右一対の上部側板38,38と、作業具22側に位置する左,右一対の下部側板40,40と、各上部側板38,38及び各下部側板40,40の間に位置する左,右一対の中間部側板42,42とから構成されている。そして、各上部側板38,38の下端と各中間部側板42,42の上端、各中間部側板42,42の下端と各下部側板40,40の上端、の各々は溶接により接合されている。
【0022】
各上部側板38,38の上端は、上方に凸に湾曲して形成されている。各上部側板38,38の上部後端には、左,右一対の半円形状切欠き38a,38aが形成されている。各切欠き38a,38aには、ブーム18の前部に連結ピンによって連結されるブーム連結ボス44が配設されている。
【0023】
図2から図4までを参照して説明する。ブーム連結ボス44は、左,右方向に延び連結ピンが挿入される円筒状ボス部44aと、ボス部44aの左,右方向両端側の外周面から径方向外方に突出して周方向に延びた左,右一対の扇形状鍔部44b,44bとを有している。各鍔部44b,44bの半径部外周は、鈍角をなしている。また、各鍔部44b,44bの円弧部外周は、各切欠き38a,38aに対応して形成されている。
【0024】
各鍔部44b,44bの円弧部外周縁には、左,右方向内方に凹んだ左,右一対の段差部44c,44cが形成されている。また、各鍔部44b,44bは、後述する補強板64の前方に位置する前方鍔部44d,44dと、補強板64の後方に位置する後方鍔部44e,44eとに区画されている。
【0025】
各段差部44c,44cの外面は、各切欠き38a,38aの内面に当接されている。そして、各段差部44c,44cの外面は、円弧部外周縁に亘って、各切欠き38a,38aの外面に、アーム20の外方から溶接されて、接合されている。且つ、各段差部44c,44cの内面は、各後方鍔部44e,44eの円弧部外周縁において、各切欠き38a,38aの内面に、アーム20の内方から溶接されて、接合されている。各後方鍔部44e,44eの円弧部外周縁における各段差部44c,44cの内面と各切欠き38a,38aの内面との溶接による接合部45,45の各々は、補強板64の後面から各後方鍔部44e,44eの円弧部外周縁に沿って各段差部44c,44cと各切欠き38a,38aとの当接部後端まで延び、次いで各上部側板38,38の後端外縁に沿って下方に延びている。
【0026】
各下部側板40,40の下端は、図1に示すように、上方に凸に湾曲して形成されており、作業具22が連結ピンによって連結される作業具連結ボス46が配設されている。作業具連結ボス46は、左,右方向に延びた円筒状に形成されており、左,右方向両端側の外周面が各下部側板40,40の下端に溶接により接合されている。
【0027】
各下部側板40,40の上部には、左,右一対の円形孔40a,40aが開けられている。各円形孔40a,40aには、作業具リンク24が連結ピンによって連結される作業具リンク連結ボス48が配設されている。作業具リンク連結ボス48は、左,右方向に延びた円筒状に形成されており、左,右方向両端側の外周面が各円形孔40a,40aに溶接により接合されている。
【0028】
各中間部側板42,42の後端は、上端から下端まで鉛直に延びている。また、各中間部側板42,42の前端は、上部から下部に向かって前方に傾斜して延び、次いで後方に傾斜して延びており、側面視く字型に形成されている。
【0029】
前板34は、ブーム18側に位置する上部前板50と、作業具22側に位置する下部前板52と、上部前板50及び下部前板52の間に位置する中間部前板54とから構成されている。そして、上部前板50の前部下端と中間部前板54の上端、中間部前板54の下端と下部前板52の上端、下部前板52の下端と作業具連結ボス46の前部外周面、の各々は溶接により接合されている。
【0030】
上部前板50は、各上部側板38,38の上端に沿って上方に凸に屈曲されている。上部前板50の外面には、アームシリンダ28が連結ピンによって連結される左,右一対のアームシリンダブラケット56,56が配設されている。各アームシリンダブラケット56,56は、略三角形状に形成されており、その上部には連結ピンが挿入されるピン孔56a,56aが開けられている。各アームシリンダブラケット56,56は、左,右方向に所定の間隔をおいて上部前板50に溶接により接合されている。
【0031】
中間部前板54は、各中間部側板42,42の前端に沿って側面視く字型に屈曲されている。屈曲部の下方に位置する中間部前板54の下部の外面には、作業具シリンダ30が連結ピンによって連結される左,右一対の作業具シリンダブラケット58,58が配設されている。各作業具シリンダブラケット58,58は、略三角形状に形成されており、その下部には連結ピンが挿入されるピン孔58a,58aが開けられている。各作業具シリンダブラケット58,58は、左,右方向に所定の間隔をおいて中間部前板54に溶接により接合されている。
【0032】
後板36は、ブーム18側に位置する上部後板60と、作業具22側に位置する下部後板62とから構成されている。そして、上部前板50の後部下端と上部後板60の上端、上部後板60の下端と下部後板62の上端、下部後板62の下端と作業具連結ボス46の後部外周面、の各々は溶接により接合されている。
【0033】
上部後板60は、各鍔部44b,44bの鈍角をなしている半径部外周に沿って側面視逆く字型に屈曲されている。上部後板60は、各上部側板38,38の後端及び各中間部側板42,42の後端のほか、各鍔部44b,44bの半径部外周に、アーム20の外方から溶接されて、接合されている。屈曲部の下方に位置する上部後板60の下部及び下部後板62は鉛直に延びている。
【0034】
アーム20の内部には、長方形状の鋼板が屈曲された補強板64が配設されている。補強板64は、ボス部44aの下端外周面から下方に向かって上部後板60の下部及び下部後板62と略平行に延び、次いで前下方に向かって屈曲されて中間部前板54まで延びている。
【0035】
補強板64の上端外周は、ボス部44aの下端外周面に当接されて溶接により接合されている。補強板64の左,右両端外周は、各鍔部44b,44bの内面、各上部側板38,38の内面及び各中間部側板42,42の内面に当接されて溶接により接合されている。補強板64の下端外周は、各作業具シリンダブラケット58,58の後方において、中間部前板54の下部の内面に当接されて溶接により接合されている。
【0036】
屈曲部の上方に位置する補強板64の上部は、補強板64とボス部44aの下端外周面との当接部が上方に向かって上部後板60の下部及び下部後板62と略平行に延長されると、ボス部44aの軸線を通るように位置付けられている。
【0037】
上述したとおりの、図1から図5までに示されたアーム20の作用を説明する。
【0038】
本発明のアーム20においては、各段差部44c,44cの内面は、各後方鍔部44e,44eの円弧部外周縁において、各切欠き38a,38aの内面に、アーム20の内方から溶接されて、接合されている。このため、掘削作業によってブーム連結ボス44の周囲に発生する応力の向きは下方向が支配的であることから、ブーム連結ボス44の周囲に発生する応力が各段差部44c,44cの内面と各切欠き38a,38aの内面とを接合している溶接部に分散されることとなり、ブーム連結ボス44の周囲に発生する応力を効果的に低減することができ、これによって、各鍔部44b,44bの外面と各切欠き38a,38aの外面とを接合している溶接部に亀裂が入ることを防止することができる。
【0039】
また、本発明のアーム20においては、各後方鍔部44e,44eの円弧部外周縁における各段差部44c,44cの内面と各切欠き38a,38aの内面との溶接による接合部45,45の各々は、補強板64の後面から各後方鍔部44e,44eの円弧部外周縁に沿って各段差部44c,44cと各切欠き38a,38aとの当接部後端まで延び、次いで各上部側板38,38の後端外縁に沿って下方に延びている。このため、専用の治具が用いられなくても、各段差部44c,44cの内面と各切欠き38a,38aの内面との溶接による接合部45,45は、補強板64の後面から各段差部44c,44cと各切欠き38a,38aとの当接部後端まで、のど厚が略一定に保たれ得る。この結果、各段差部44c,44cの内面と各切欠き38a,38aの内面との溶接による接合部45,45は、のど厚が急激に変化する、応力集中が生じやすい部位がなく、所要の強度が確保されることとなる。
【0040】
更に、補強板64がボス部44aの下端外周面から下方に向かって上部後板60の下部及び下部後板62と略平行に延び次いで前下方に向かって屈曲されて中間部前板54の下部の内面まで延びている。このため、掘削作業によってブーム連結ボス44の周囲に発生する応力の向きは下方向が支配的であることから、ブーム連結ボス44の周囲に発生する応力が補強板64に分散されることとなり、ブーム連結ボス44の周囲に発生する応力を効果的に低減することができ、これによって、各鍔部44b,44bの外面と各切欠き38a,38aの外面とを接合している溶接部に亀裂が入ることを防止することができる。
【0041】
更にまた、補強板64は各作業具シリンダブラケット58,58の後方において中間部前板54の下部の内面に当接されて溶接により接合されていることによって、作業具シリンダ30が伸縮動作するときに、中間部前板54を鉛直方向に見て中央部が前方又は後方に凸になるように作用する曲げ荷重に対する剛性も高められる。
【符号の説明】
【0042】
20:アーム
32:側板
34:前板
36:後板
38:上部側板
38a:切欠き
40:下部側板
40a:円形孔
42:中間部側板
44:ブーム連結ボス
44a:ボス部
44b:鍔部
44c:段差部
44d:前方鍔部
44e:後方鍔部
45:各段差部の内面と各切欠きの内面との接合部
50:上部前板
52:下部前板
54:中間部前板
58:作業具シリンダブラケット
58a:ピン孔
60:上部後板
62:下部後板
64:補強板
図1
図2
図3
図4
図5