特許第6158082号(P6158082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6158082-浸透と作用の増強 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158082
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】浸透と作用の増強
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
   A61N5/06 Z
【請求項の数】15
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-519975(P2013-519975)
(86)(22)【出願日】2011年6月20日
(65)【公表番号】特表2013-532497(P2013-532497A)
(43)【公表日】2013年8月19日
(86)【国際出願番号】EP2011003031
(87)【国際公開番号】WO2012010238
(87)【国際公開日】20120126
【審査請求日】2014年6月19日
【審判番号】不服2016-3398(P2016-3398/J1)
【審判請求日】2016年3月4日
(31)【優先権主張番号】10007426.9
(32)【優先日】2010年7月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】ブフホルツ、ヘルビヒ
(72)【発明者】
【氏名】アイド、エバルト
(72)【発明者】
【氏名】パン、ジュンヨウ
【合議体】
【審判長】 内藤 真徳
【審判官】 高木 彰
【審判官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−536045(JP,A)
【文献】 特開2004−358063(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/078581(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの光源と少なくとも一つの薬事的および/または美容的有効成分とを備えている、前記少なくとも一つの薬事的および/または美容的有効成分の浸透の増強に使用される、光力学治療(PDT)を除く皮膚システムにおいて、少なくとも一つの前記光源が、少なくとも一つの有機発光装置を備えている薄い光源であり、前記光源が700nmと3mmの間の帯域中に最大放射をもつ赤外放射を発することを特徴とする皮膚システム。
【請求項2】
前記有機発光装置が、有機発光ダイオード(OLED)とポリマー発光ダイオード(PLED)と有機発光電気化学セル(OLEC)から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の皮膚システム。
【請求項3】
前記光源がさらに、前記有機発光装置からの光を吸収し、700nmと3mmの間の帯域中に最大放射をもつ赤外放射を再び発するダウン変換媒体を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の皮膚システム。
【請求項4】
前記少なくとも一つの光源と前記少なくとも一つの薬事的および/または美容的有効成分の両方が同じ装置に組み込まれていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の皮膚システム。
【請求項5】
前記少なくとも一つの光源がある装置上に配置され、前記少なくとも一つの薬事的および/または美容的有効成分が空間的に異なる実体を表わすことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の皮膚システム。
【請求項6】
前記装置が、フラットパネル、湾曲パネル、絆創膏、包帯、毛布、寝袋、スリーブ、埋込可能プローブ、経鼻胃管、チェストドレイン、パッド、ステント、膏薬、あらゆる種類の衣服、口の中の少なくとも一つの歯を覆う装置から選ばれることを特徴とする請求項4または5に記載の皮膚システム。
【請求項7】
人間および動物皮膚を通した薬事的および/または美容的有効成分の浸透の増強体としての使用のための請求項1ないし6のいずれか一つに記載の皮膚システム。
【請求項8】
薬事的および/または美容的有効成分の作用の増強体としての使用のための請求項1ないし7のいずれか一つに記載の皮膚システム。
【請求項9】
急性および慢性的疼痛、筋肉痛、関節硬直、筋肉緊張および硬直、気分障害、閉経期、骨粗鬆症、アンギナ、急性損傷、関節炎、ニコチン中毒、ウイルス感染、炎症、腫瘍および癌の治療および/または予防のための請求項1ないし8のいずれか一つに記載の皮膚システム。
【請求項10】
前記皮膚システムが経皮システムであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一つに記載の皮膚システム。
【請求項11】
前記皮膚システムが皮膚膏薬であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一つに記載の皮膚システム。
【請求項12】
求項1ないし8のいずれか一つに記載の皮膚システムの美容的使用であって、前記少なくとも一つの有効成分は美容的有効成分である、皮膚システムの美容的使用
【請求項13】
皮膚または毛の時間および/または光および/または環境に誘発された老化過程の改善および/または予防のための請求項12に記載の美容的使用
【請求項14】
平らでない皮膚の改善および/または予防のための請求項12または13に記載の美容的使用
【請求項15】
しわ、細かな線、肌荒れ、大きい毛穴の皮膚、セルライトの改善および/または予防のための請求項14に記載の美容的使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、人間および/または動物皮膚を通した薬事的および/または美容的有効成分の浸透および/または作用を増強するために光源を備えている皮膚システムに関する。
【背景技術】
【0002】
有効成分は、様々な方法で人間または動物身体に投与される。三つのよく確立された投与経路は、経口、(たとえば静脈)注射、局所的および経皮などの皮膚経由である。有効成分の経口投与はしばしば、患者にとって最も便利なものであると考えられる。しかしながら、希望の効果を達成するために、しばしば高い服用量の有効成分が投与されなければならない。これは主に、たとえば胃腸(GI)路中の低い吸収と第一の通過効果のために有効成分の損失のために経口の生物学的利用能が非常に低いという事実による。このように、適用される服用量は、作用の面で希望の効果を達成するために高くなければならない。これら、少なくとも主として、不必要に高い濃度の有効成分やその代謝産物の発生は、それらがGI路に吸収されなくても、不所望な副作用を引き起こすこともある。有効成分の高い生物学的利用能は、その不所望な副作用を低減することができる。いくつかのわずかな例外(たとえば糖尿病の治療)を除いて、注射による投与はまだ主に、病院や診療所の医療専門家によって実行される治療に焦点が置かれている。さらに、注射による投与は、まだよく患者に受け入れられていない。多くの患者は、注射によって有効成分を摂取することに不快に感じる。経皮膏薬や絆創膏がまた、全身的治療方法のために用いられることができる。皮膚は、選択的な浸透障壁として非常に有効である。経皮は、濃度勾配の影響下での皮膚表面から角質層(SC)の中への有効成分の通過と、SCと下にある表皮を通して真皮を通して血液循環の中への続いて起こる拡散を意味する。皮膚は、浸透する分子に対する受動的障壁として作用し、SCは、最大の浸透抵抗を提供するとともに、経皮の進度制限段階である。様々な疾病の治療において、経皮治療システム(TTS)が市場に紹介された。例は、疼痛の治療のためのフェンタニル絆創膏、アンギナの治療のためのニトログリセロール絆創膏、ホルモン補充療法のためのエストロゲンおよびテストステロンを備えている絆創膏、ニコチン補充療法で使用されるニコチンを備えている絆創膏である。しかしながら、適用の経皮経路は、SCに浸透することができる比較的少数の有効成分に限られる。同じことは、局所的の有効成分の皮膚適用にあてはまる。SCを通した低い浸透進度の有効成分の配達は、浸透増強剤の使用によって、少なくとも部分的に増強されることができる。
【0003】
浸透増強剤は、皮膚の不浸透性を一時的に低下させることによって皮膚を通した浸透剤の吸収を促進する物質である。理想的には、これらの材料は、薬理学的に不活性、無害、非刺激性、非アレルギー性であるべきである。使用される浸透増強剤の少なくともいくらかはこれらの必要条件を満たすけれども、浸透増強剤は比較的少数の有効成分と共に働くだけであり、したがって、一般に使用され得ない。
【0004】
経皮システムを備えた主な利点の一つは、全身的濃度の急な減少に続いて不必要な高い全身的濃度ピークなしに遅い放出が達成され得ることである。このように、経皮システムは、有効成分の全身的レベルが比較的に一定のレベルであることを可能にする。さらに、一定のレベルを達成するのに必要な有効成分の服用量は、多くの場合、非常にある、経口経路の投与に必要な服用量と比較して低い。
【0005】
W.-R. Leeらは、2940nmの波長を有する放射で皮膚が事前に治療された場合、三つの麻薬性鎮痛薬の浸透が10〜35倍に増強され得ることを示した(Lasers Med. Sci. 2007, 22:271-278)。著者は、エルビウム:イットリウム・アルミニウム・ガーネット(ER:YAG)レーザーによって発せられたパルス・レーザー光の作用を評価する生体外豚皮膚浸透実験をおこなった。皮膚は、レーザーでの事前の治療に続いてモルヒネとナルブフィンとブプレノルフィンのいずれかで治療された。著者は、レーザーによってSCの一部を削除することによって経皮配達が非常に増強されたことを示している。したがって、この方法は、携帯可能でユーザー・フレンドリーな適用に適しておらず、医療専門家の介在と監視を必要とするのがもっともらしい。
【0006】
N. Otbergらは、GMS German Medical Science 2008, 6, 1-14において、水ろ過赤外A(wIRA)が局所的に投与された物質のための浸透増強剤として作用し得ることを示した。12人の試験者の検査に基づいて、著者らは、いっそうの親水性物質のための浸透増強剤としてwIRAの照射を示唆している。彼らはまた、より広範囲の物質に適用される方法を示唆している。しかしながら、著者らは、ユーザー・フレンドリーな携帯可能な装置のために技術的解決策を提供していない。著者は、非携帯可能な適用だけに適した大型装置(hydrosun(登録商標))を使用する。
【0007】
しかしながら、有効成分を全身的循環に配達するのではなく、皮膚の中へ配達するように意図された現在の経皮システムと皮膚膏薬(ここでは共に皮膚システムと呼称される)は、いくつかの問題をかかえている。すでに上に述べられたように、それらは、皮膚障壁を横切ることができる比較的少数の有効成分に限られる。さらに、皮膚システムに基づいた現在の治療に適用される有効成分の服用量は、皮膚を通るまたはその中への有効成分の移動の間の有効成分の損失を償うために、しばしばやや高い。したがって、適用される服用量が十分に高ければ、有効成分の作用部位における必要濃度が多くの場合に得られ得る。比較的高い服用量は、次に、皮膚上(たとえば皮膚の刺激)、皮膚中および/または他の組織中に不所望な副作用をもたらすことがある。さらに、使用軟膏、油、ゲル、クレーム、エマルジョン、ミニエマルジョン、ローションおよび他の製剤形態によって、すなわち皮膚膏薬や経皮絆創膏/システムを用いずに、現在局所的に投与される有効成分は、治療される被験体の領域に適用されるとき高い損失を示す。損失の理由は様々である。第一に、低い浸透性は、有効成分の高い損失を引き起こし得る。さらに、局所的に投与された有効成分は、たとえば衣服によってすぐに拭き取られることがある。
【0008】
本発明の一つの目的は、従来技術で知られているようなより薬事的および/または美容的有効成分(ここでは共に有効成分と呼称される)の投与ための局所的/皮膚および経皮投与経路のより広い適用を可能にする新しい皮膚システムを提供することである。本発明の別の目的は、取り扱いが簡単であり、医療専門家による制御なしで使用され得るユーザー・フレンドリーなシステムを提供することである。本発明のまた別の目的は、既存の治療の不所望な副作用を低減する方法を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
驚いたことに、広範囲の薬事的および/または美容的有効物質または成分の浸透を増強するために、無機発光ダイオード(LED)と有機発光ダイオード(OLED)とポリマー発光ダイオード(PLED)と有機発光電気化学セル(OLECまたはLEC)から選択された薄い光源を備えている光源を備えている皮膚システムが使用され得ることが分かった。ここで、用語「皮膚システム」は、皮膚を通ってたとえば血液循環の中への有効成分の移動と、皮膚中の局所的に適用された有効成分の濃縮の両方を示す。したがって、用語「皮膚システム」は、経皮システムおよび皮膚膏薬(皮膚用膏薬剤)として知られたものを有している。用語皮膚システムはまた、皮膚膏薬または経皮絆創膏/システムを用いずに有効成分が局所的に投与されるあらゆる現在の既知の治療方法を有している。局所的に適用された有効成分の濃縮を達成する効果も皮膚上の有効成分の服用量を低下させる間に有効成分の希望の治療または化粧濃度を得るために用いることができる。したがって、本発明による皮膚システムは、作用の面における濃度を高めることを、または作用の面における濃度を所望のレベルに保つために適用される服用量を低減することを、または、かつては経皮用途に使用されなかった非常に広範囲の新しい有効成分に皮膚経路を開くことのいずれかを可能にする。
【0010】
ここにおいて使用される用語「皮膚適用」は、投与および局所的な経皮経路または皮膚適用を備えている。
【0011】
用いられる薄い光源は、据え付けおよび好ましくは移動性のいずれかで使用される非常に薄い装置の生産を可能にする。薄い光源を備えている絆創膏などの装置は、治療される皮膚上に衣服の下でじかに配置されてよい。装置はさらに、治療される領域の均一な照明を示す。放射の強度は、据え付けの装置に比べて低いレベルで正確に調節され得る。装置はさらに、可撓性であり、したがって、大きいしわおよび/または丸まりなどの湾曲領域の最適な放射を可能にしてもよい。さらに、放射の強度、期間および放射波長は、医師などの専門家に意見を求める必要なく、最低限の人間相互作用で容易に調節され得る。
【0012】
本発明は、少なくとも一つの光源と薬事的および/または美容的有効成分の少なくとも一つの浸透および/または作用の増強に使用される少なくとも一つの薬事的および/または美容的有効成分を備えている皮膚システムに関する。
【0013】
本発明はまた、薬事的および/または美容的有効成分の少なくとも一つの浸透の増強に使用された少なくとも一つの光源および少なくとも一つの薬事的および/または美容的有効成分を備えている皮膚システムに関する。
【0014】
好ましくは、光源は薄い光源である。特に好ましくは、薄い光源は、少なくとも一つの発光ダイオード(LED)を備えている。発光ダイオードは、無機LEDまたは有機LEDであってよい。ある好適な実施形態では、前記少なくとも一つのLEDは、有機LED(OLED)および/またはポリマー発光ダイオード(PLED)である。
【0015】
好ましくは、皮膚システムは、3つの、特に好ましくは2つの、非常に特に好ましくは1つの薄い光源を備えている。
【0016】
好ましくは、光源は、3つの、特に好ましくは2つの、非常に特に好ましくは1つの発光ダイオードまたは有機発光装置を備えている。
【0017】
本発明の特に好ましい実施形態では、皮膚システムは、一つの有機発光装置、好ましくはOLEDを備えているちょうど一つの薄い光源を備えている。
【0018】
本発明の特に好ましい実施形態では、皮膚システムは、一つの有機発光装置、好ましくはOLECを備えているちょうど一つの薄い光源を備えている。
【0019】
有効成分および薬事的および/または美容的有効成分との用語は、特に他の方法で述べられないならば、ここでは同義的に使用される。
【0020】
皮膚システムは、薬事的および/または美容的成分の浸透とそれらの作用の両方を増強することができる。皮膚システムによって発せられた放射は、皮膚の完全な状態を妨害することなく、薬事的および/または美容的成分の増強された浸透をもたらし、それは、保護機能を満たすために重要である。さらに、皮膚システムがどのように浸透を増強するかについてのさらなる機構は可能であり、本発明はどのような機構にも限定されない。浸透の増強を通して薬物作用も増強される。これは、たとえば、組織中のより高い濃度および/または組織の中への浸透へのより深い浸透をもたらすより高い浸透進度による。薬物作用の増強はまた、皮膚への赤色光または赤外放射のよく知られた有益な効果と、有効成分の有益な薬事的および/または美容的作用の間の相乗効果に基づき得る。このように皮膚システムは、皮膚の特定の領域の作用の面にある薬事的および/または美容的成分の高められた濃度、および/または、皮膚を通って例えば全身的循環や他の組織の中への薬事的および/または美容的成分のより深い浸透の両方をもたらすことができる。
【0021】
作用の面において必要な濃度を得るために必要とされる服用量を減らすことによって、上に概説されたように、薬事的および/または美容的成分の副作用を低減するために、皮膚システムがまた使用されてもよい。他の場合では、薬事的および/または美容的成分の全身的レベルを高めるために、および/または、必要な全身的濃度を得るために必要とされる投与服用量を減少させるために、皮膚システムが使用されてもよい。
【0022】
このように本発明による皮膚システムは、全身的および/または局所的有効成分の浸透進度を高めるために使用されてもよい。
【0023】
皮膚システムは主に、経皮または局所的適用に現在使用されていようがいまいが、あらゆる薬事的および/または美容的有効成分に適用されてよい。したがって、前記皮膚システムは、経皮または局所的適用のために以前に考慮されなかった疎水性および親水性有効成分の両方に利用できる投与の経皮または局所的経路を得るために使用され得る。
【0024】
好ましくは、前記皮膚システムは、経皮または局所的適用によって投与されることが既に知られている少なくとも一つの薬事的および/または美容的有効成分を備えている。
【0025】
確かに、前記皮膚システムは、広範囲の有効成分に使用されることが可能である。有効成分は、自然源からの油を含む薬事的有効成分および/または美容的有効成分から選ばれてよい。
【0026】
好ましくは、本発明による皮膚システムは、コンフリー根の植物抽出液、特にシムフィタム・オフィチナーレ(symphytum officinale)根の植物抽出液(Kytta軟膏(登録商標)、Kyttaバルサム(登録商標)、Kytta血漿(登録商標)、Kyttaローション(登録商標))から選ばれた少なくとも一つの有効成分を有している。
【0027】
たとえば、本発明による皮膚システムのためのさらに好ましい有効成分は、一般に局所的に投与されるもの、たとえば、ジクロフェナク、ケトロラク(ketorolac)、ケトプロフェン、イブプロフェン、ケトフィフェン(ketofifen)、メチルフェニデート、アセクロフェナク(aceclofenac)、カプサイシン、ヘパリン、オキシブチニエン(oxybutynine)、エピネフリン、カンファー(campher)、ビペラ・アモジテス・トキシン(vipera ammodytes toxin)、アルニカモンターナ(arnica montana)からの抽出物、インドメタシン、ビタミン、好ましくはビタミンDおよびビタミンB12、エストロゲン、テストステロン、プロゲステロン、エストラジオール、エチニルエストラジオール、コンドイチンポリスルファート(chondoitinpolysulfate)、エトフェナマト(etofenamat)、フルフェナム酸、カフェイン、ニコチン、ニトログリセロール、スコポラミン、ロチゴチン(rotigotine)、ラサチリン(rasagiline)、アルプラゾラム、ビソプロロ(bisoprolol)、エストロゲン、リバスチグミン(rivastigmine)、クロニジン、ブプレノルフィン、フルドロキシコルチド、ヤドリギ・アルバム、マンダラゲ、アピジナム(apisinum)、ブフェキサマク、アセメタシン、アザプロパゾン、チェレコキシブ(celecoxib)、デキシケトプロフェン(dexketoprofen)、ジフルニサル、エトドラク、エトリコキシブ(etoricoxib)、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、スリンダク、テノキシカム、チアプロフェン酸、バルデコキシブ(valdecoxib)、トリニトログリセリン、フェンタニル・ブプレノルフィンなどのオピオイド、サリチル酸および関連するサリチラート;または局所麻酔として使用されるあらゆる薬剤、例えばリグノカイン、リドカインとプリロカイン、ブピカイン、レヴォブピバカイン(levobupivacaine)、プロカイン、ロピバカイン(ropivacaine)、テトラカイン、ベンゾカインまたはアメソカイン塩酸塩、フシジン酸、ベータメタゾンおよび派生物および/またはそれらの組み合わせを有している。
【0028】
本発明による皮膚システムの有効成分として使用され得る天然オイルの例は、限定なく、ハッカ油、ユーカリ油、ローズマリーからの油およびラベンダー油である。
【0029】
本発明の開示に基づいて、さらに多くの有効成分が、発明性なしで、ここでリストに追加されてよい。
【0030】
既に概説されたように、皮膚およびしたがってまた経皮システムは、一つよりも多くの有効成分を備えていてもよく、それらは、保管と使用の条件下で互いに互換性をもって提供される。
【0031】
クリーム、軟膏またはゲルのための基剤として共通に使用される構成要素は、本発明による有効成分の分散媒として使用されてよい。これらの構成要素は、水、炭化水素油およびワックス、シリコーン油、植物、動物または海洋物脂肪または油、(たとえば、飽和脂肪酸のより多くのグリセリンエステルまたはポリグリコール化された(polyglycolysed)グリセリド、カカオ脂、カカオまたは同様物などの)グリセリドまたはグリセリド派生物、高分子量ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、ラノリンおよび派生物、脂肪酸、脂肪族アルコールまたは脂肪酸エステル(たとえば、オクタン酸、カプリル酸トリグリセリドまたは同様物を含む)、レシチン、多価アルコールまたはエステル、ワックスエステル、ステロール、リン脂質および同様物を有している。ガムや他の形態の親水コロイドなどの増粘剤が含まれてもよい。分散媒は、一つよりも多くの基剤構成要素を備えていてもよい。
【0032】
有効成分がクリームとして調剤される場合、分散媒は、水よりも実質的に多くの油ベース構成要素を備えていてもよい。有効成分が軟膏として調剤される場合、分散媒は、油ベース構成要素よりも実質的に多くの水を備えていてもよい。有効成分がゲルとして調剤される場合、分散媒は、実質的に水を備えていてもよい。
【0033】
さらに、本発明による皮膚システムは、一つ以上のフィルム形成材料を備えていてもよい。
【0034】
本発明による皮膚システムに必要とされ得るような軟化の方法は、WO 02/00203に開示されている。
【0035】
本発明による皮膚システムはさらに、適切なところに、1つ以上の経皮浸透増強剤(それは界面活性剤、アルコール、エステル、グリコールまたは同様物または他の適切な経皮浸透増強剤であってよい)、湿潤剤、界面活性剤(それはカチオン、非イオン、陰イオンまたは重合体であってよい)、乳化剤、酸化防止剤、保存剤、粘土、消泡剤、展着剤、皮膚軟化薬、障壁、有効成分のための可溶性にする薬剤および同様物などの追加成分を備えていてもよい。
【0036】
本発明による皮膚システムはまた、エタノール、メントール、チモール、オイカリプトール、ユーカリ油、ベンジルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、加メチルエタノール、フェノール、シクロデキストリン、エチルオレエート、オイゲノール、グリセリン、レボメノル(levomenol)、モノエタノールアミン・オレアート、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、メチルアルコール、やし油またはシリコーン油などの溶剤を備えていてもよい。
【0037】
本発明による皮膚システム中の溶剤の存在は、治療薬の制御された経皮投与を可能にする。局所的に適用された合成物からの治療薬の局所的および全身的投与が起こる範囲と速度は、皮膚を通る有効成分の浸透の深さと進度に関連する。
【0038】
本発明による皮膚システムはさらに、合成物の感覚受容特性を改善するために感覚受容薬剤を備えていてもよい。そのような薬剤は、アーモンド油、グリセロール、アマニ油、モノエタノールアミン・オレアート、ブドウ油、メース油、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、パーム核油、カカオ脂、羊毛アルコールを含んでいる。感覚受容薬剤の含有が、たとえば、皮膚システムの感触を増強するために使用されてよく、それは、患者コンプライアンスを改善し得る。さらに、そのような薬剤は、特に、たとえば、炎症を起こした関節への適用の場合には、プラスの心理的効果を提供し得る知覚される冷却効果を有し得る。
【0039】
本発明による皮膚システムはさらに、アニス油、シトロネラ油、クローブ油、ユーカリプトール、ユーカリ油、ユージノール、杜松油、レモングラス油、レモン油、テルペンを含まないレモン油、メーラユーカ(melaleuca)油、ネロリ油、ニクズク油、オリーブ油、オレンジ油、テルペンを含まないオレンジ油、ケシ油、パイン油、バラ油、セージ油、スペアミント油、ラベンダー油、タイム油、バニリンなどの知覚のキューを備えていてもよい。
【0040】
皮膚システム中のそのようなキューの含有は、患者に使用上の楽しい知覚のフィードバックを提供することができ、投与がおこなわれたことを患者および/または皮膚システムを適用する人が認識することを可能にし、投与の記憶を支援し得る。そのような要因は、患者コンプライアンスを改善し、プラスの心理的効果を提供することができる。
【0041】
本発明による皮膚システムはさらに、シトロネラまたはレモングラスなどの虫よけ剤を備えていてもよい。
【0042】
保存剤の使用は、敏感な患者にアレルギー反応を引き起こすかもしれないので、不所望であることがあり、本発明は、そのようなアレルギー反応の危険を回避または低減することにおいて有利である。アレルギー反応と関連のあった保存剤は、クロロクレゾール、ヒドロキシベンゾアート(hydroxybenzoates)(パラオキシ安息香酸エステル類)、ポリソルベート、ソルビン酸および同様物を含んでおり、それらの保存剤は、多数の既知の局所的合成物に含まれている。
【0043】
皮膚システムに共通に使用される材料をさらなる詳細は、たとえばWO 2007/066148に開示されている。特にマトリックスシステムに使用されるマトリックス物質は、たとえばWO 87/00042とWO 00/02539に開示されている。
【0044】
さらに、赤色光および/または赤外放射の有益な作用と薬事的および/または美容的有効成分の間の相乗効果が観察されることができ、すなわち、赤色および/または赤外光でのよく知られた有益な放射と薬事的および/または美容的有効成分の有益な作用は、同時に適用されたときに、非線形な相乗効果をもたらすことができる。これによって、併用治療は、光/放射および有効成分での全体的および部分的に平行および連続の治療を含んでおり、すなわち、治療される対象はまた、光/放射のいずれかでの事前の治療に続いて有効成分で治療されてよく、その逆もまた同様である。
【0045】
好ましくは、皮膚システムは、3つの、特に好ましくは2つの、非常に特に好ましくは1つの薬事的および/または美容的成分を備えている。
【0046】
多くの場合、治療および化粧適用の間の境界は曖昧であり、個々の状況および医師の評価に依存する。多くの場合、治療の症状は、美容的考慮と関連がある。たとえば、座瘡の治療または予防は、症状の程度に依存して、治療および化粧成分の両方を有していてもよい。同じことは、乾癬、アトピー性皮膚炎および他の疾病および/または症状についてもいえる。多くの疾病および症状は、たとえば被験体の皮膚の視認性の変化によってしばしば表わされる明白な含みと関連がある。これらの美容的または審美的な変化はしばしば、少なくとも部分的に、重い疾病をもたらす心理的変化を導くことがある。
【0047】
たとえ治療の要素が役割を果たしても、いくらかの症状または疾病は化粧成分に対する強調を有し得る。これらのいくつかは、反老化、反しわ、座瘡および白斑の予防および/または治療から選ばれる。
【0048】
本発明はまた、本明細書中の他のどこかで概説されるような薬事的および/または美容的有効成分の浸透増強剤としての薄い光源の使用に関する。この目的のために好ましく使用され得る光源は、LED、OLED、PLEDおよびOLEC、特に好ましくはOLED、PLEDおよびOLECである。
【0049】
好ましくは、その浸透は、特に好ましくは動物と人間の皮膚を意味する皮膚を経由して起こる。
【0050】
したがって、本発明による皮膚システムはであってよい。
【0051】
本発明による用語皮膚システムは、光力学治療(PDT)の構想を有していない。PDTでは、ほとんど短い波長の放射によって活性化される有効成分が、治療される被験体に適用される。有効成分は、光化学的に活性化されて、化学反応を受ける。多くの場合、前駆体は、薬事的および/または美容的に不活性であるのに、放射が、いくぶん不活性状態から活性状態への変換を開始させる。PDTは、主に癌を治療するために用いられる。
【0052】
好ましくは、前記皮膚システムは、赤外領域の赤色光および/または放射を発する。したがって、前記光源が、580と700nmの間の帯域中に最大放射をもつ赤色光および/または700nmと3mmの間の帯域中に最大放射をもつ赤外放射を発することを特徴とする本発明による皮膚システムも本発明の対象である。特に好ましくは、発せられた放射は、700〜4000nmの間の帯域中に、非常に特に好ましくは700〜1400nmの間の帯域中にその最大波長を有している。本発明の特に好ましい実施形態では、皮膚システムは、780nmと1400nm(赤外A)の間の帯域中に波長をもつ放射を発する。
【0053】
別の好ましい実施形態では、皮膚システムは、赤外放射に加えて、590nmと700nmの間の帯域中に赤外放射可視光も発する。
【0054】
特に好ましくは、本発明による皮膚システムは、590nmと1400nmの間の帯域中の光および放射を発する。
【0055】
ある好適な実施形態では、光源は、IR−OLEDであってよい。この分野の熟練者に知られている、蛍光および燐光エミッターの両方の、あらゆるエミッターが、本発明の光源の放射層中のエミッターとして選ばれてよい。Thin Solid Films (06), 497, p299においてO'Riordan らによって、またSynth.Met. (03), 137, p1013においてSchanzeらによって報告された、放射性ランタニド・イオンへの励起エネルギー伝達を敏感にするために色素体のリガンドでキレート化される三価のランタニド陽イオン(Ln3+)を備えている燐光エミッター、Appl.Phys.Lett. (06), 89, 083506/1においてWilliamらによって報告された、λmax=720nmを有しているサイクロメタレートされた(ピレニル−キノリル)2Ir(acac)(cyclometallated (pyrenyl-quinolyl)2Ir(acac))、Angew.Chem., Int.Ed. (07), 46, 1109においてBorekらによって、Inorg.Chem. (03), 42, 4253においてRozhkovらによって、J.Org.Chem. (05), 70, 4617においてFinikovaらによって、Dig.Tech.Pap.- oc.Inf.Disp.Int.Symp. (08), 39, 1975においてBrooksらによって報告されたPtポルフィリン複合体、J.Fluoresc. (09), 19, 169においてEvansらによって報告されたチオン遠赤色/近IRトリプレット・エミッターが例にあげられる。
【0056】
あらゆる薄い光源が、本発明による皮膚システムで使用されてよい。望ましい薄い光源は、5mm未満の、特に好ましくは2mm未満の、非常に特に好ましくは1mm未満の厚さを有している。ここにおいて、用語光源は、バッテリー、粘着性素子およびスイッチなどのあらゆる周辺電子装置をもたない発光装置を定義するために使用される。皮膚システムがたとえばOLEDを備えている場合、光源の厚さは、たとえば正孔および電子輸送/注入層と放射層と電極とカプセルを含むOLEDの層状構造によって定められる。ある好適な実施形態では、本発明は、前記有機発光装置が、有機発光ダイオード(OLED)とポリマー発光ダイオード(PLED)と有機発光電気化学セル(OLEC、またLECsまたはLEECsとも呼ばれる)から選ばれることを特徴とする皮膚システムに関する。
【0057】
OLEDとPLEDは典型的な層状構造を示し、小分子有機機能性物質を備えている装置中の層の数は一般にポリマー発光装置に比べて少ない。OLEDとPLEDで使用される有機機能性物質は、この分野の熟練者によって一般に用いられるあらゆる材料から選ばれてよい。OLEDとPLEDは、たとえば、有機半導体、有機金属複合体、正孔輸送材料、正孔注入材料、正孔空乏材料、電子輸送材料、電子注入材料、電子空乏材料、励起子空乏材料、ホスト材料、蛍光または燐光エミッター、色素を備えている。さらに、PLEDおよび/またはOLEDは、電極(陰極/陽極)を備えており、カプセル化される。OLEDおよびPLEDの典型的な構造およびそれに共通に使用される材料は、たとえば、OLEDについてはWO 2004/058911に、またPLEDについてはWO 2008/011953に開示されている。
【0058】
さらに、OLECとそれに使用される材料はまた、この分野で熟練者によく知られている。OLEDおよび/またはPLEDに使用される材料に加えて、OLECについてはイオン材料が必要である。OLEDおよび/またはPLEDとは対照的に、OLEC中の移動性イオンによって荷電輸送が起こる。したがって、イオン転移金属複合体(iTMCs)および/またはイオン液体などの材料がOLEC中で使用される。OLECについてのより多くの詳細は、たとえば、PeiらのScience, 1995, 269, 1086の中で見つけることができる。
【0059】
一般に、OLED、PLEDおよび/またはOLECから選ばれた光源は、平らまたはいくぶん平らな層状構造を有している。しかしながら、これらの光源の構造はまた、ファイバーの形態を有していてもよい。有機発光ファイバーが、たとえば、Brenndan O’ConnorらによってUS 6538375 B1, US 2003/0099858において公表された(Adv. Mater. 2007, 19, 3897-3900)。
【0060】
前記ファイバーは、被験体の治療のための可撓性および好ましくはプラスチックまたは延性装置の準備を容易にする。波長は簡単に調整可能であり、また被験体の均一な放射が可能である。さらに、発光OLED、PLEDおよび/またはOLECファイバーを用いることによって、特定の治療に必要とされる光の強度および波長が複数の要因によって仕立てられ得る。強度は、たとえば、使用されるファイバーの数(すなわちファイバーの密度)によって調節され、これらのファイバーは処理または織られ、電圧が印加される。波長も容易に調節され得る。一本のファイバーが、いろいろな波長に放射ピークをもつ複合エミッターを備えていてもよい。ファイバーはまた、いろいろな放射ピークをもつエミッター材料を備えているいろいろなセグメントを備えていてもよい。
【0061】
ここにおいて使用される用語ファイバーは、横断断面直径(または非円形横断面に対する幅または高さ)よりもはるかに大きい長さを有している形を意味する。本発明のある好適な実施形態では、用語ファイバーは、10:1以上などの直径に対する長さの比を有している形を意味する。特に好ましくは、直径に対する長さの比は100:1以上である。
【0062】
ここにおいて使用されるOLEDは一般に次の連続層を備えている電子装置である。
【0063】
・オプションで第一の基層、
・陽極層、
・オプションで正孔注入層(HIL)、
・オプションで正孔輸送層(HTL)および/または電子空乏層(EBL)、
・放射層(EML)、
・電子輸送層(ETL)および/または正孔空乏層(HBL)、
・オプションで電子注入層(EIL)、
・陰極層、
・オプションで第二の基層。
【0064】
さらに、OLEDは、放射層と電極の間に励起子空乏層を備えていてもよい。
【0065】
PLEDは、放射層の中に放射性ポリマーを備えているOLEDであり、それは、通常、溶液から堆積される。典型的なPLED構造は、陽極/HILまたはバッファ層/中間層/EML/陰極である。中間層は、正孔輸送および電子空乏特性の両方を有している。中間層を備えたPLEDについてのより多くの詳細は、WO 2004/084260 A2に開示されている。
【0066】
PeiらによるScience 1995, 269, 1086によって最初に報告されたように、有機発光電気化学セル(OLEC)は、二つの電極と、電解質および光輝性の種の混合物またはブレンドを中間に備えている。OLECは、層状構造に関してはOLEDに似ているが、陽極と陰極の選択の制限を取り除き、OLEDに比べて非常に厚い層を備えることができる。
【0067】
前記光源は、この分野の熟練者がそのような光源の組み立てに一般に考慮するであろうあらゆるさらなる材料を備えていてもよい。これらのさらなる材料は、たとえば、色変換材料および/または色フィルターを含む。したがって、本発明はまた、前記光源がさらに、前記発光装置からの光を吸収し、580と700nmの間の帯域中に最大放射をもつ赤色光および/または700nmと3mmの間の帯域中に最大放射をもつ赤外放射を再び発するダウン変換媒体を備えていることを特徴とする皮膚システムに関する。
【0068】
本発明による皮膚システムに色変換器が用いられる場合、前記皮膚システムによって発せられた赤色光および/または赤外放射を得るためにあらゆる蛍光および/または燐光発光材料が使用されてよい。
【0069】
ある好適な実施形態では、色変換器は、好ましくは600nm未満の、特に好ましくは560nm未満の、非常に特に好ましくは500nm未満の放射ピークをもつ光を発する蛍光および/または燐光発光材料と一緒に使用される。
【0070】
別の好ましい実施形態では、色変換器は、蛍光および/または燐光発光材料と一緒に使用され、全体が590nmと700nmの間の帯域中にある光が発せられる。
【0071】
別の好ましい実施形態では、色変換器は、蛍光および/または燐光発光材料と一緒に使用され、全体が700nmと1400nmの間の帯域中にある光および/または放射が発せられる。
【0072】
別の特に好ましい実施形態では、色変換器は、蛍光および/または燐光発光材料と一緒に使用され、全体が590nmと1400nmの間の帯域中にある光および/または放射が発せられる。
【0073】
光源はまた、色変換に使用され得る無機材料を備えていてもよい。
【0074】
色変換器は、たとえば陰極線管、蛍光ディスプレイまたはランプに使用され得る燐光材料から選ばれてよい。一般に、燐光材料は、酸化イットリウム、イットリウム・タンタライト、フッ化バリウム、フッ化セシウム、ゲルマニウム酸ビスマス、亜鉛ガリウム酸塩、カルシウム・マグネシウム・ピロシリケイト(pyrosilicate)、カルシウム・モリブデン酸塩、カルシウム・クロロバナダート、バリウム・チタン・ピロ燐酸塩、金属タングステン酸塩、セリウムがドープされた燐光体、ビスマスがドープされた燐光体、鉛がドープされた燐光体、タリウムがドープされたヨウ化ナトリウム、ドープされたヨウ化セシウム、レア・アースがドープされたピロシリケイト(pyrosilicate)、ランタニド・ハロゲン化物からから選ばれてよい。
【0075】
ある好適な実施形態では、色変換器は、特にディスプレイ用途のために、狭い放射スペクトルを有している燐光体である。そのような種類の燐光体は、5dおよび6s電子によって電気的によく遮蔽されている4f殻中の放射転移のために帯域の代わりに特有の発光線を示すレア・アース組み換え核を備えている化合物から選ばれてよい。好ましくは、そのような種類の燐光体は、380nm以上の波長において吸収作用を有しており、Lyuji OzawaとMinoru ItohによるChem. Rev. 2003, 103, 3836およびその中の参考文献に開示されているように、たとえばY:Sm、Y:Eu、Y:Dy、Y:Hoから選ばれてよい。さらに好ましい燐光体は、限定されないが、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al、YS:Eu、YS:Eu、ZnSiO:Mn、(KF,MgF):Mn、(KF,MgF):Mn、MgF:Mn、(Zn,Mg)F:Mn、ZnSiO:Mn,As、GdS:Tb、YS:Tb、YAl12:Tb、Y(Al,Ga)12:Tb、Y:Eu、InBO:Tb、InBO:Eu、YSiO:Tbから選ばれてよい。
【0076】
別の好ましい実施形態では、色変換器は、限定されないが、たとえば、YAG:Ce、ZnS:Ag+(Zn,Cd)S:Cu、(Zn,Cd)S:Ag、(Zn,Cd)S:Cu、(Zn,Cd)S:(Cu,Cl)、ZnS:Ag+(Zn,Cd)S:Cu、YS:Tb、(Zn,Cd)S:Cu,Cl+(Zn,Cd)S:Ag,Cl、ZnS:Ag+ZnS:Cu(orZnS:Cu,Au)+YS:Eu、InBO:Tb+InBO:Eu+ZnS:Ag、InBO:Tb+InBO:Euから選ばれる広い放射スペクトルを有する燐光体である。
【0077】
さらなる実施形態では、本発明はまた、アップ変換燐光体に関する。この種の公表された燐光体は、たとえば、NaYF:Yb、Lnを備えているナノ燐光体であり、ここで、Lnは、WO 2009/046392に開示されるように、ErとHoとTmの群から選ばれる。
【0078】
本発明のある好適な実施形態では、前記皮膚システムは、少なくとも一つの薬事的および/または美容的有効成分と、同じ装置中の前記少なくとも一つの薄い光源を備えている。装置は、たとえば、絆創膏、皮膚絆創膏/膏薬または経皮絆創膏であってよいが、この分野の熟練者によく知られたあらゆる他の装置が使用されてもよい。特に好ましい実施形態では、図1a)に描かれた皮膚システムは、バッキング層1と、光源5と電源3を備えている層2と、たぶんにステアリング・ユニット4を備えている装置であり、電源3は、プリントされたバッテリーであってよい。さらに、装置は、自己粘着剤層6を備えている。層6は、好ましくは一つ以上の親水性および/または疎水性ポリマーを備えているポリマーマトリックス中に分散された有効成分を備えているリザーバーである。装置はまた、その使用が意図されたときに取り除かれ得る保護ホイル7を備えている。光源5は、上に概説されたように、好ましくはOLED、PLEDまたはOLECである。好ましくは、マトリックス層6は透明である。
【0079】
本発明のさらに好ましい実施形態では、図1b)に描かれた前記皮膚システムは、バッキング層1と、光源5と電源3を備えている層2と、たぶんにステアリング・ユニット4を備えている装置であり、電源3は、プリントされたバッテリーであってよい。さらに、装置は、有効成分を備えているリザーバーであるポリマー層8と、進度制御マイクロ多孔質膜9と、粘着剤層10と、保護ホイル7を備えている。
【0080】
プリントされたバッテリーは、たとえば、フィンランドのEnfucell Oy社による「ソフト・バッテリー」から選ばれてよい。
【0081】
少なくとも一つの有効成分を備えている皮膚システムはさらに、追加浸透増強剤を備えていてもよい。原理的に、熟練者に知られている浸透の増強のためのあらゆる技術が用いられてよい。本発明はまた、エタノール、ジメチル・スホキシド(sufoxide)、n−アルキル−アザシクロヘプタノンの派生物(たとえば、ラウロカプラム(laurocapram)、アゾン)、脂肪酸および脂肪酸のエステル(たとえば、オレイン酸、グリセロールモノオレエート(glycerolmonooleat)、ラウリルタクタ(lauryllactat))、1,2−プロピレングリコールなどの化学的浸透増強剤をさらに備えている前記皮膚システムに関する。さらなる浸透増強剤は、一つの層の中で有効成分と混合されてもよく、または、別の層の中、好ましくは同じ層の中にあってもよい。
【0082】
別の好ましい実施形態では、本発明による皮膚システムは、層2と保護ホイル7の間に追加層を備えている。この追加層は、広帯域の波長または特定の波長のいずれかまたは両方の放射を吸収する吸収層として作用する。赤外放射のよく知られた欠点の一つは、それが皮膚乾燥を引き起こすことがあることである。したがって、光源からの赤外BおよびC領域(IRBおよびIRC)の放射はフィルター処理されてよい。さらに、赤外A(IRA)領域のいくつかの特定の波長はまた、医学および/または美容的適用において不所望であることがある。明確には、944nm、1180nmおよび/または1380nmのまたはそれに近い波長を有している放射はフィルター処理されてよい。この目的のために使用され得るいろいろなフィルターが入手可能であり、この分野の熟練者によく知られている。本発明によって使用されてよい好ましい一つのフィルターは水である。水は、IRBおよびIRC放射と、944nm、1180nmおよび1380nmの放射を吸収する。水を備えている層の厚さは、好ましくは5nm未満、特に好ましくは3mm未満、非常に特に好ましくは2mm未満である。フィルター層は、たとえばポリエチレンによって囲まれた純水から成ってもよい。さらに、フィルター層は、ヒドロゲル(たとえば、ポリアクリル酸、メチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースなどのセルロースの派生物、ベントナイト、エーロシル)、親水性軟膏(PEGを備えているマクロゴール(macrogoles)、すなわちポリエチレングリコール(polyethyleneglycole))、(たとえば、Na−硫酸ドデシル、ポリソルベート20,60,80、マクロゴールステアリン酸塩(macrogolstearate)、セチルステアリルアルコール(cetylstearylalcohol)を備えている)親水性クレームを備えている水などの、水を備えている親水性調剤を備えていてもよい。水でフィルター処理されたIR放射は、いっそうの親水性物質の浸透を著しく増強することができる。GMS German Medical Science 2008, 6, 1-14においてN. Otbergらによって示されたように、一つの可能な機構は角質層の水和である。本発明による皮膚システムはまた、熱不安定な有効成分の浸透を増強するために使用されてよい。これは、たとえば、最初に治療される対象を図1c)に描かれた装置で事前に治療し、続いて治療される被験体の同じ領域をさらに放射することなくそこへの有効成分の投与によって、実施されてよい。
【0083】
また別の好ましい実施形態では、本発明による皮膚システムは、赤外帯域、特にIR−A帯域中の希望の波長を明確に発する燐光材料を備えている。したがって、前記皮膚システムは、燐光材料によって吸収され、燐光材料によってIR−A帯域中に再び発せられるスペクトルの可視部分中の光を発するエミッターを備えている。そのような種類のダウン変換は、AlGa1−xAsまたはレア・アース・ガリウム・アルミン酸塩のような燐光材料で実施され得る(図4参照)。
【0084】
本発明による皮膚システムはまた、二つの異なるユニットから構成されてよい。第一のユニットは、好ましくはLED、PLED、OLEDおよびOLECから、特に好ましくはPLED、OLEDおよびOLECから選ばれる薄い発光源を備えている。
【0085】
光源としての選択はOLECに与えられる。光源としてのさらなる選択はOLEDとPLEDに与えられる。第二のユニットは、軟膏、クレーム、ゲル、リポゲル(lipogel)、ヒドロゲル、リポソーム、エマルジョン、ミニエマルジョン、パウダー、油、ペースト、ミルクまたはローションなどの有効成分のあらゆる調剤であってよい。第二のユニットは、治療される対象、特に人間または動物の皮膚に慣習的に投与されてもよい。その後、第一のユニットで治療された対象に第一のユニットが取り付けられてよい。好ましくは、第二のユニットは、以前に第一のユニットで治療された領域と同じ領域に置かれる。したがって、本発明はまた、好ましくは薬事的および/または美容的有効成分の浸透の増強のための薄い光源、好ましくはLED、OLED、PLEDおよびOLEC、特に好ましくはOLED、PLEDおよびOLECの使用に関する。両ユニットでの治療は平行しておこなわれてよい。さらに、最初に、治療される対象を光源で事前に治療し、次に、第二のユニット、すなわち調剤された有効成分を投与することも有利である。さらに、最初に、有効成分を投与し、次に、ある時間の経過後に前記薄い光源を取り付けることも有利である。本発明はまた、好ましくは赤色領域のスペクトル中の光および/または赤外の放射を発する前記少なくとも一つの光源を用いることによって、薬事的および/または美容的有効成分の浸透を増強する方法に関する。有効成分と光源は本発明のどこかに説明されている。
【0086】
本発明のある好適な実施形態は、前記少なくとも一つの光源がある装置上に配置され、前記少なくとも一つの薬事的および/または美容的有効成分が空間的に異なる実体を表わすことを特徴とする皮膚システムに関する。
【0087】
本発明による皮膚システムは、ここに概説されるように意図された使用に適しているあらゆる装置であってよい。好ましくは、前記皮膚システムは、前記装置が、フラットパネル、湾曲パネル、絆創膏、包帯、毛布、寝袋、スリーブ、埋込可能プローブ、経鼻胃管、チェストドレイン、パッド、ステント、膏薬、あらゆる種類の衣服、口の中の少なくとも一つの歯を覆う装置から選ばれることを特徴とする。
【0088】
さらに、本発明は、好ましくは人間および動物皮膚を通した薬事的および/または美容的有効成分の浸透の増強体として使用される前記皮膚システムに関する。
【0089】
確かに、皮膚システムは、治療される被験体の外側または内側に適用されてよく、治療される被験体は、好ましくは人間または動物被験体である。
【0090】
被験体の外側の治療は、たとえば、皮膚、創傷、目、歯肉、粘膜、舌、毛、爪床または爪の治療であってよい。被験体の内側の治療は、たとえば、被験体の血管、心臓、胸、肺または他の器官の治療であってよい。被験体の内側のたいていの適用には特別の装置が必要である。そのような一つの例は、本発明によるステントファイバーであってよい。
【0091】
浸透の増強のほかに、皮膚システムはまた、本発明のどこかで概説されるように、薬事的および/または美容的有効成分の増強された作用をもたらし、したがって、それもまた本発明の対象である。皮膚システムによる、特に薄い光源による作用の増強は、既に浸透している有効成分の増強された浸透進度のおかげであり、皮膚システムによって発せられた光および/または放射とその有効成分の相乗効果によって、以前は浸透しなかった有効成分の浸透を促進することによる。
【0092】
皮膚システムは、あらゆる薬事的および/または美容的症状を治療するために使用されてよい。好ましくは、皮膚システムは、局所的(皮膚的)、経皮的および/または全身的に治療されてよい薬事的(皮膚科学的を含む)および/または美容的症状を治療するために使用するために使用されてよい。ここにおいて使用される全身的治療は、注射と経口投与などの有効成分を全身的に利用可能にするあらゆる治療を含む。有効成分の全身的循環は、作用の面で有効成分を輸送するのに必要かもしれない。
【0093】
あらゆる病気および/または美容的(審美的)症状は、浸透および/または作用を増強する皮膚システムで治療され得る。これは、以前は皮膚適用に使用されなかった有効成分の浸透を皮膚システムが促進し得るという本発明の開示のおかげである。
【0094】
したがって、本発明はまた、疾病および美容的症状の治療および/または予防に使用される前記皮膚システムに関する。ここにおいて用語疾病は、あらゆる薬事的および皮膚科学的疾病を含む。
【0095】
続くリストは、とても完全ではなく、本発明による使用に適した適用および有効成分の可能な薬事的および/または美容的分野の単なる代表的な選択を表わす。実際、この分野の熟練者は、本発明に基づいて、困難なく、発明性なしで、ここにおいて述べられていないあらゆる薬事的および/または美容的適用および/または有効成分を追加することができる。
【0096】
好ましくは、皮膚システムは、炎症性障害および/または症状、線維筋痛、疼痛、帯状疱疹(帯状ヘルペス)の周囲の疼痛、筋肉痛、筋肉硬直、急性および慢性的疼痛(また激しい慢性的疼痛)、いくつかのタイプの神経障害性疼痛の治療、オピオイドの解毒、睡眠障害、関節のケア、急性損傷、創傷治癒、気分障害、精神障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、乗物酔い(車酔い、航空酔い、船酔い、セントリフウジ(centrifguges)、スピニン(spinnin)のための浮動性めまい)、高血圧、低血圧、ニコチン嗜癖、アンギナ、皮膚老化、反しわ、座瘡、面皰、乾癬、アトピー性皮膚炎、セルライトまたは関節炎の治療および/または予防に使用されてよい。
【0097】
前記皮膚システムはまた、避妊薬の適用に、皮膚を通してホルモンを供給するホルモン療法の分野で、麻酔薬の適用に、骨粗鬆症と関連する問題の治療に、虫よけ剤の適用に、消毒および/または滅菌の分野で使用されてよい。
【0098】
さらなる選択が、急性および慢性的疼痛、筋肉痛、関節硬直、筋肉緊張および硬直、気分障害、閉経期、骨粗鬆症、アンギナ、急性損傷、関節炎、ニコチン中毒、ウイルス感染、炎症、腫瘍、癌の治療および/または予防について与えられる。
【0099】
さらなる選択が、疼痛、筋肉痛、関節痛、関節硬直、筋肉緊張および筋硬直の治療および/または予防について与えられる。
【0100】
しかし、特に治療および/または予防が主として美容的/審美的側面を有している場合、別の選択が、座瘡、乾癬、しわおよび皮膚の老化の治療に与えられる。
【0101】
非常にいろいろなクラスの有効成分が、薬事的疾病および/または美容的症状の治療および/または予防のためにそれらの、特に上述したそれらの浸透を増強するために、本発明による皮膚システムの一部として用いられてよい。
【0102】
これらの化合物は、消毒のための化合物(たとえば、抗真菌剤、駆虫性有効成分)、抗炎症性の有効成分(たとえば、ステロイド、非ステロイド性の抗炎症性の有効成分、免疫の選択的な抗炎症性の派生物、ハーブ)、かゆみに対する有効成分、乾癬治療の有効薬剤(たとえば、ジスラノール、プソラレン(psoralene)、タール抽出物を備えている有効成分、カルシポトリオール)、レチノイド(retinoide)、座瘡、皮膚老化、しわ発生またはセルライトの治療および/または予防に使用される有効成分から選ばれるクラスに属してよい。
【0103】
興味のあるさらなる医療指示および/または美容的分野のより多くの包括的なリストについては、たとえば、E. MutschlerらによるArzneimittelwirkungen, Lehrbuch der Pharmakologie und Toxikologie, Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH, Stuttgart, 9. Auflage, 2008、L. BruntonらによるGoodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, McGraw-Hill Professional, 11 edition, 2005、W. O. FoyeらによるPrinciples of Medicinal Chemistry, Lippincott Williams & Wilkins, fourth edition, 1995に開示されている。
【0104】
好ましくは、本発明による皮膚システムは経皮システムである。経皮吸収は、薬の投与のよく認識された手段であり、患者を薬で治療する非侵入性で便利な方法であることから利益を得る。経皮吸収は、他の方法を困難または不愉快に感じる患者にとって有効成分の投与の特に有用な手段である。たとえば、若者も老人も、経口投与される有効成分に苦労することがあり、注射を特に不愉快に感じることがある。子どもや痴呆の患者も、コンプライアンスの不足のために薬の治療が難しいことがある。そのため、有効成分の経皮投与は、特に若年、老年または精神障害の患者にとって、投与の価値ある方法である。
【0105】
現在、三つ主要なタイプの経皮適用システム、すなわち、膜制御システム(図1b)参照)、粘着性拡散制御システムまたはマトリックスシステム(図1a)参照)がある。
【0106】
膜制御システムは一般に、四つの層:不浸透性バッキング層1、薬剤リザーバーとして役立つポリマー層8、進度制御微孔性膜9、粘着剤層10と、保護ホイル7から成る。薬剤リザーバー8は、有効成分と、皮膚を横切っての薬の吸収を促進する液体添加剤を備えている。皮膚への適用において、有効成分は、膜を通って拡散し、次に粘着剤を通過したのち、皮膚に到達する。有効成分の放出進度は一定であり、したがって、投与の最も効率的な方法を提供するために、放出進度は、皮膚の飽和限度のわずかに下のレベルに維持されなければならない。US 5,683,712は、同毒療法薬の経皮投与のための膜制御システムの例を開示しており、薬剤の放出を制御するためにマイクロ多孔質膜が設けられており、膜の内部には薬剤を包含しているゲルが分散されている。
【0107】
粘着性拡散制御システムは、進度制御微孔性膜がない点を除くと、膜制御システムに非常に似ている。そのシステムは、不浸透性プラスチック障壁の代わりに、有効成分リザーバーと、皮膚の隣の一つ以上の進度制御粘着剤層から成る。DE 19849823は、粘着性拡散制御システムの例を開示しており、絆創膏は、バッキング層と、有効成分を包含しているリザーバーと、皮膚と接触する有効成分の通過を可能にする非粘着性領域を有しているリザーバーに重なっている粘着剤層を備えている。
【0108】
マトリックスシステムでは、有効成分リザーバー6は、皮膚と直接接触する。そのため、有効成分の拡散の進度は、皮膚の吸収進度に依存する。そのシステムは、分散された有効成分を包含している親水性または疎水性ポリマーから成る有効成分リザーバーに取り付けられた不浸透性バッキング層1を備えていてよい。WO 87/00042は、長期間にわたって保持された実質的に均一の進度でのベラパミルの経皮投与のためのそのようなシステムを説明している。あるいは、システムは、バッキングと、粘着剤および有効成分リザーバーの両方としての二重の目的に役立つ粘着剤層を備えていてもよい。そのようなシステムの一例はWO 00/02539に説明されており、それは非ステロイド性のリューマチ治療の薬剤を包含している絆創膏に関している。
【0109】
皮膚システムが二つの空間の異なるユニットを表わすならば、上に説明されたように、皮膚システムは、第一のユニットとして光源を表わし、第二のユニットとして調剤された有効成分を表わす。第一のユニットは、有効成分のリザーバーが直接組み込まれていない(図1c)参照)にもかかわらず、ここにおいて説明される経皮膏薬またはシステムに似ていてもよい。
【0110】
本発明による経皮システムは、前述の経皮膏薬/システムの構成要素に加えて、薄い発光光源5と潜在的に電源3と潜在的にステアリング・ユニット4を備えている層2を備えている(図1a)およびb))。したがって、発光層は、優先的にプリントされたバッテリーである電源を備えていてよい。電力供給はまた、バッテリーなどの外部電源へのアクセスによってもよい。単純な場合では、経皮システムと皮膚膏薬を含め、皮膚システムは、ステアリング・ユニットを備えていなくてもよく、光源の作動は、スイッチによって、または装置を電源に接続する別の方法によってもよい。ステアリング・ユニットはまた、波長、放射の時間または放射の強度を調節する放射プログラムを定めるのに好適であってよい。放射は、たとえば、連続的であっても、パルス状であってもよい。
【0111】
本発明による経皮システムは、あらゆる適切な形をとってもよい。一つの好ましい実施形態では、経皮システムは、粘着包帯(今後「経皮絆創膏」)の形をとってもよい。著名なブランドは、バンドエイド、クラド(Curad)、ネクスケア(Nexcare)、エラストプラストなどであり、それらは参照として取り込まれる。たとえば、経皮絆創膏はバッキング層1を有しており、それは、たとえば、粘着剤を有している織布、プラスチックまたはラテックス・ゴムから選ばれてよく、粘着剤はエポキシから選ばれてよく、それは粘着剤と同じ化合物から作られる。それから、光源、好ましくは薄膜光源が、粘着剤によってバッキング層に接合され、バッキング層は、光源への電気的接触を可能にする小さい開口を有しており、それから、有効成分を吸収する吸収性パッドたとえば綿が光源の表面につけられる。吸収性パッドは、最後に薄い保護プラスチックシートで覆われる。
【0112】
別の好ましい実施形態では、光源は、綿の代わりにファイバーの形の光源、たとえばファイバーOLEDやファイバーOLECを使用することによって、吸収性パッドの中に統合されてよい。
【0113】
経皮絆創膏は、パッドが創傷を覆い、織物またはプラスチックが周囲の皮膚にはり付いて、手当て用品を適所に保持するとともに、汚れが創傷に入るのを防止するように貼付される。
【0114】
ここに説明されるような有効成分はいろいろな方法で作用し得る。それらは、たとえば、皮膚を横切って運ばれ、全身的に作用してよい。局所的に適用され局所的に作用する有効成分の浸透を増強することもまた有益である。本発明はまた、前記皮膚システムが皮膚膏薬であることを特徴とする皮膚システムに関する。ここにおいて皮膚膏薬の意図は、有効成分を全身的に利用可能にすることなく、それを皮膚に配達するものと理解される。したがって、皮膚膏薬は、局所的投与のために使用されると考えられる。よく知られた皮膚膏薬は、リドカインまたはジクロフェナクを備えている。本発明による皮膚膏薬はさらに、上に説明されたように、薄い光源を備えており、図1a)ないしc)に描かれた構造体および同様物をまた有している。
【0115】
本発明はまた、皮膚や毛の一般的な状態のケア、保護または改善のための前記皮膚システムの使用に関する。
【0116】
皮膚や毛の時間および/または光および/または環境に誘発された老化過程、特に乾燥肌、しわ発生および/または色素障害の治療および/または予防のための、および/または皮膚へのUV線の悪影響の治療および/または予防のための前記皮膚システムの使用もまた本発明の対象である。
【0117】
より一般的な用語皮膚の老化は、しわの発生と色素沈着過度の両方をさす。内因性および外因性要因に起因する皮膚への影響に起因する人間の皮膚の老化の兆候は、しわと細かな線の外観によって、色素沈着しみの外観に加えてしわだらけの外観を発現させる皮膚の黄色化によって、一般に角質層と表皮が厚くなり真皮が薄くなる皮膚の厚さの変化によって、弾力性と柔軟性と締まりの損失を引き起こすエラスチンとコラーゲン線維の分裂によって、毛細血管拡張の外観によって定められる。
【0118】
これらの兆候のいくつかは、年齢と関連するいわゆる「正常な」老化である内因性または生理的な老化と特に関連するが、他のものは、いわゆる一般に環境によって引き起こされる老化である外因性の老化に特有であり、そのような老化は特に太陽への露出による光線加齢である。皮膚の老化を引き起こす他の要因は、大気汚染、創傷、感染、外傷性全身傷害、酸素欠乏症、たばこの煙、ホルモン状態、神経ペプチド、電磁場、重力、ライフスタイル(たとえばアルコールの過剰消費)、反復の顔表現、睡眠姿勢または心理的ストレス要因である。
【0119】
内因性の老化のために起こる皮膚の変化は、内生要因を内包する遺伝的にプログラムされたシーケンスの結果である。この内因性の老化は特に、皮膚細胞の再生の速度低下を引き起こし、それは本質的に、皮下脂肪組織の低減、細かな線や小さいしわの外観などの客観的な損傷の外観、弾性線維の数と厚さの増加、弾性組織膜からの垂直線維の損失、この弾性組織の細胞の大きく不規則な線維芽細胞の存在などの組織病理学的な変化に反映される。
【0120】
対照的に、外因性の老化は、厚いしわ、たるんだ風雨に打たれた皮膚の形成などの客観的な損傷、上側真皮中の弾性物質の過度の蓄積、コラーゲン線維の変性などの組織病理学的な変化をもたらす。
【0121】
皮膚の老化について信頼できるいろいろな生物学的および分子的機構があり、プロセスは現在のところ完全には理解されていない。しかしながら、皮膚の老化の内因性および外因性要因の両方は共通の機構を共有することが認められた[P. U. Giacomoni et al., Biogerontology 2004, 2, 219-229]。これらの要因は、細胞接着分子の発現が循環免疫細胞の漸増と漏出を引き起こし、それは、コラゲナーゼとミエロペルオキシダーゼと活性酸素種を分泌することによって細胞外マトリックス(ECM)を消化するので、皮膚老化を招く皮膚の損傷の蓄積をもたらすプロセスのきっかけとなる。
【0122】
これらの細胞溶解のプロセスの活性化は、これらの居住している細胞のランダムな損傷を引き起こし、それは次に、プロスタグランジンとロイコトリエンを分泌する。信号する分子は、オータコイド・ヒスタミンとサイトカインTNFアルファを放出する在住マスト細胞の顆粒消失を誘発し、したがって、P−セレクチンを放出する付近の毛細管を覆っている内皮細胞と、E−セレクチンおよびICAM−1などの細胞接着分子の合成を活性化する。これは、自己に維持されたマイクロ炎症サイクルを閉じ、それは、ECM損傷の蓄積すなわち老化をもたらす。
【0123】
反老化有効成分を備えている本発明による皮膚システムは、それらの浸透を増強するために使用されてよい。これは、同じ結果を達成するために必要とされるより低い服用量のために増強された作用および/または低減された副作用のいずれかをもたらす。
【0124】
さらに、平らでない皮膚、好ましくは、しわ、細かな線、肌荒れ、大きい毛穴の皮膚、セルライトの治療および/または予防のための前記皮膚システムの使用もまた、本発明の対象である。しかし、本発明による皮膚システムのためのまた別の使用は、尋常性白斑の治療および/または予防である。
【0125】
本発明はまた、早い皮膚老化の治療および/または予防のための、特に、光または老化に誘発された皮膚のしわの治療および/または予防のための、色素沈着および角化症アクチニカ(actinica)の治療および/または予防のための、正常な皮膚老化または光に誘発された皮膚の老化に関連するすべての疾病の治療および/または予防のための本発明による皮膚のシステムのその使用に関する。
【0126】
本発明はまた、分化と細胞増殖に関する欠陥のある角質化に関連する皮膚疾病の治療および/または予防のための、特に尋常性座瘡、コメドニカ座瘡(acne comedonica)、多形性の座瘡、しゅさ性座瘡、節のある座瘡、集簇性座瘡、年齢関連の座瘡、副作用として生じる座瘡、ソラリス座瘡(acne solaris)、薬物関連の座瘡またはプロフェッショナリス座瘡(acne professionalis)の治療および/または予防のための、角質化の他の障害、特に魚鱗癬、魚鱗癬様の状態、ダリエ病、手掌足底の角化症(keratosis palmoplantaris)、白斑症、白斑症様の状態(leukoplasiform states)、皮膚および粘膜の(バッカル)湿疹(苔癬)の治療および/または予防のための、欠陥のある角質化に関連があり、炎症性および/または免疫アレルギー性成分を有している他の皮膚疾病、特に皮膚、粘膜および手指および足指の爪に関する乾癬の形式、および乾癬のリウマチ、および皮膚アトピー、湿疹または呼吸性アトピー、またはさらに歯肉の肥厚のすべての治療および/または予防のための本発明による皮膚システムのその使用に関する。
【0127】
本発明はまた、ウイルス原因であるかもしれない真皮または表皮の良性または悪性の病的増殖物、尋常性ゆうぜい、青年性扁平ゆうぜい、肬贅状表皮異形成、口の乳頭腫、フロリダ乳頭腫(papillomatosis florida)のすべて、およびUV放射によって引き起こされ得る病的増殖物、特にバーソセルラーレ上皮腫(epithelioma baso-cellulare)およびスピノセルラーレ上皮腫(epithelioma spinocellulare)の治療および/または予防のための本発明による皮膚システムの使用に関する
本発明はまた、本発明による皮膚システムで人間または動物を治療する方法に関する。方法の詳細は、皮膚システムと皮膚システムの使用に関する本発明内に開示されるものから直接転写され得る。
【0128】
本発明はまた、人間および/または動物の皮膚を通した薬事的および/または美容的有効成分の浸透の増強のための薄い光源の使用において、前記薄い光源が、OLED、PLEDおよびOLECから選ばれることを特徴とする使用に関する。
【0129】
ここにおいて使用される皮膚はまた、上に概説されたように、粘膜、歯肉、爪、爪床を含む。
【0130】
本発明はまた、
a)本発明による薄い光源、
b)有効成分または有効成分の合成物またはその調剤
の個別のパッケージから構成されるセット(キット)に関する。
【0131】
本発明内で概説された利点のほかに、本発明による皮膚システムのさらなる利点は以下のように要約することができる。
【0132】
・薄い光源は、外来治療のために使用される薄く携帯可能な装置の準備を可能にする。
【0133】
・前記皮膚システムでの治療は、医療専門家に意見を求める必要なくほとんどあらゆる場所においていつでもおこなわれ得る。
【0134】
・皮膚システムは、使いやすく、衣服の下で皮膚に直接取り付けることができ、したがって、非常にユーザー・フレンドリーである。
【0135】
・治療される対象との直接の接触のため、従来のアプローチに比べて、必要とされる放射強度が低い。
【0136】
・本発明による装置は、可撓性で、したがって、治療される対象のほとんどあらゆる形状に適合することができる。
【0137】
・有効成分の増強された浸透進度は、有効成分のより高い薬事的および/または美容的作用をもたらす。
【0138】
・有効成分の増強された浸透副作用のため、希望の全身的または局所的濃度を達成するために必要とされる服用量が低減され得る。
【0139】
・さらに多くのいっそうの親水性の有効成分が、皮膚および/または経皮経路によって投与され得る。
【0140】
・皮膚システムは、皮膚の完全な状態を妨害しないように考慮されており、それは、保護機能を満たすために重要である。
【0141】
本発明の先の実施形態に対する変更が、本発明の範囲以内においてなされてよいことが認められる。この明細書に示された各特徴は、特に断らない限り、同じ、等価または同様の目的に役立つ代替的特徴と置き換えられてもよい。したがって、特に断らない限り、開示された特徴は、それぞれ、包括的な一連の等価または同様の特徴の一つの例に過ぎない。
【0142】
この明細書に示された特徴はすべて、そのような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが互いに排他的である組み合わせを除き、どのような組み合わせで組み合わせられてもよい。特に、本発明の好ましい特徴は、本発明のすべての側面に特に適用可能であり、どのような組み合わせで使用されてもよい。同様に、必須でない組み合わせにおいて説明された特徴は、別々に(組み合わせずに)使用されてもよい。
【0143】
上に説明された、特に好ましい実施形態の特徴の多くのは、本発明の実施形態の一部としてではなく、それらのそのものの道理において発明性があることが認められる。現在請求されるあらゆる発明に加えてまたはその代わりにそれらの特徴について独立の保護が求められてよい。
【0144】
ここに開示された教示は、開示された他の例から取り出され組み合わされてもよい。
【0145】
本発明の他の特徴は、図面および代表的実施形態の続く説明のうちに明白になるであろう。それらは、本発明の実例のためだけに与えられ、限定するように意図されてない。
【図面の簡単な説明】
【0146】
図1図1は、異なる皮膚システム(aまたはb)または皮膚システムの部分(c)を描いている。
図2図2は、OLEDとOLECなどの発光装置の準備の図解である。
図3図3は、例3によるDev1〜3の電界発光スペクトルである。
図4図4は、赤外燐光体Phos1の励起スペクトル(点線)と発光スペクトル(実線)である。
【発明を実施するための形態】
【0147】
動作例
例1
材料
本発明の絆創膏の光源は、次の装置構造、基層/陽極/バッファ層または正孔注入層/中間層/放射層/陰極およびカプセル層を有している。さらに放射波長を調節するために、オプションで、カプセル層の上に追加ダウン変換層が使用されてもよい。
【0148】
可撓性ポリ(エチレン・ナフタレート)(PEN)が基層として使用される。ITOが透明陽極として使用され、PDEOT (Baytron P AI 4083)がバッファ層または正孔注入層として使用される。Merck KGaAによるHIL-012が中間層として使用される。
【0149】
いろいろな電子放射物質が本発明で使用される。一つの例では、赤色燐光エミッターを備えている放射層が使用され、それは、マトリックス材料(Merck KGaAによるPTM-011)と放射性金属複合物(Merck KGaAによるTER-035)から成る。別の例では、光源は、青色放射層とダウン変換層を備えている。青色エミッターとして、Merck KGaAによる青色ポリマー、SPB-090が使用される。
【0150】
さらに、有機発光電気化学セル(OLEC)を備えている光源については、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)がイオン伝導材料として、LiCFSOがイオン源として使用される。MW=5×10の分子量を有しているPEOが、Aldrichから購入され、受け入れられ使用される。LiCFSO(LiTrf)がAldrichから購入され、受け入れられ使用される。
【0151】
レア・アース・ガリウム・アルミン酸塩中で、青色光を吸収して赤外光を再び発するダウン変換材料Phos1が、イギリスのPhosphor Technologyから購入され、受け入れられ使用される。Phos1の励起(点線)と発光スペクトル(実線)が図4に示される。Phos1は、465nmと620nmに吸収ピークを、885nmと1060nmに放射ピークを有している。
【0152】
例2
発光装置の準備
発光装置、OLEDとOLECの両方の準備が、図2に概略的に示される。
【0153】
1)図2に示されるように、150nmのITOが、マスクを使用して、PEN上にスパッターされる。基層(PEN)と放射領域の寸法は、それぞれ、3×3cmと2×2cmである。
【0154】
2) PDEOT(Baytron P AI 4083)が、スピンコートによって基層上にバッファ層として80nmの厚さで堆積され、それから10分間120℃加熱される。
【0155】
3) それから20nmの中間層が、5mg/mlの濃度のトルエン中のHIL012溶液をスピンコートすることによってPEDOT上に堆積され、中間層はそれから、残留溶剤を取り除くために60分間180℃に加熱される。
【0156】
4)放射層が、スピンコートによってグローブボックス中に堆積される。スピンコートに使用される厚さと溶液は、表1にリストされている。装置は、残留溶剤を取り除くために加熱され、いろいろな装置のための熱処理のための条件も表1にリストされている。
【0157】
5)陰極が、熱真空蒸着によって放射層上に堆積される。いろいろな装置のための陰極も表1にリストされている。
【0158】
6)装置がカプセル化される。発光装置のカプセル化は、UV硬化樹脂と、UV樹脂T-470/UR7114(Nagase Chemtex Corporation)と、PENキャップを使用して達成され、それは、図2のステップ4に示されるように、導体パッドを自由するために基層よりも小さい。UV樹脂がピクセルの端に最初に塗られ、それからその上にキャップが配置される。
それから装置が、30秒間紫外線に露出される。これらのステップはすべてグローブボックスの中でおこなわれる。
【表1】
【0159】
例3
DEV1、DEV2、DEV3の評価
装置Dev1ないしDEV3が、熟練者によく知られた方法によって分析される。VILカーブと電界発光スペクトルが記録される。
【0160】
Dev1〜3の電界発光スペクトルが図3に示される。6Vでの輝度は、VILカーブから読み取ることができ、Dev1は900Cd/m、Dev2は250Cd/m、Dev3は500Cd/mである。
【0161】
例4
赤外(IR)放射装置DEV4ないしDEV6の準備
IR装置は、DEV1〜3とダウン変換燐光体Phos1を使用することによって準備される。
【0162】
Phos1が、シリコーン・バインダー中に分散される。IR装置Dev4〜6が、例2の装置Dev1〜3の放射面上へのPhos1分散液の浸漬被覆によって準備される。Dev4〜6の発光スペクトルが、分光計USB2000 (Ocean Optics)によって記録され、それは、図4に示されたスペクトルに相当する。
【0163】
例5
生体外皮膚浸透および皮膚水和の決定
皮膚浸透分析に使用することができる生体外技術は、L. Simonsen and A. Fullerton, Skin Pharmacology and Physiology 2007, 20, 230-236に詳細に説明されている。本発明による研究の結果を確認し、公表データと比較するために、L. SimonsenとA. Fullertonによって開示されるような技術的セッティングもここにおいて用いられる。ここに概説されるような研究は、このように、当業者によく知られた方法によっておこなわれる。
【0164】
十分な厚さの皮膚が、豚の耳の後部から取り除かれる。皮下組織が取り除かれ、皮膚が、開いた二室のフランツタイプの拡散セルに装着される(拡散面積:3.14cm−2;受容体積:10ml)。皮膚表面の温度が32℃に保たれる。受容相は、0.05Mのアイソトニックの緩衝酢酸溶液、pH4.5、2−プロパノール(80:20%,vol/vol)である。実験は、シンク条件下で実行される。
【0165】
試験調剤は、17−吉草酸塩(Fucicort(登録商標) cream, LEO Pharma)として、フシジン酸(20mg/g)およびベータメタゾン(1mg/g)を包含しているクリームで準備される。両方の有効成分が、アトピー性皮膚炎(AD)を治療するために共通に使用される。試験調剤(4mg/cm)は、皮膚の角質層(SC)面に適用される。その治療は、3、21、27、45、51hで再び適用され、それは、患者の実際の投与計画をシミュレートする。適切な回(3、21、27、45、51、70h)において、特定量の受容相が回収され、サーモステーテッド(thermostated)流体によって置き換えられる。サンプルは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分析まで最大二日の間4℃に保たれる。すべての浸透実験は六つの複製で実行される。Simonsenらによっておこなわれた実験の結果は、統計分散内に再現され得る。
【0166】
上に説明されたのと同じ実験が実行される。しかしながら、皮膚は、例2の装置Dev1でのクリームの各適用の後、2hのあいだ照射される。装置は、SCの上にじかに配置される。クリームが適用または再適用されたならば、そのあとで発光装置がSCの上に5分後に配置される。1hのあいだ皮膚を照射したのち、放射源が皮膚から取り除かれる。再び、受容者のサンプルが取られ、上に与えられた時間間隔でHPLCによって分析される。浸透は、フシジン酸とベータメタゾンの両方のために著しく(p<0.005)改善される。対照実験と比較して、フシジン酸の浸透が16%増強され、ベータメタゾンのそれが14%増強される。
【0167】
上に説明されたのと同じ実験が実行される。再び、皮膚は、クリームの各適用ののち、2hのあいだ照射されるが、例4の装置Dev4〜6は三つ別々に動作し、各装置について一つが動作する。装置は、SCの上にじかに配置される。クリームが適用または再適用されたならば、そのあとで発光装置がSCの上に5分後に配置される。1hのあいだ皮膚を照射したのち、放射源が皮膚から取り除かれる。再び、受容者のサンプルが取られ、上に与えられた時間間隔でHPLCによって分析される。浸透は、フシジン酸とベータメタゾンの両方のために著しく(p<0.005)改善される。対照実験と比較して、すべての三つのIR装置(Dev4〜6)において、フシジン酸の浸透は29%を超えて増強され、ベータメタゾンのそれは27%を超えて増強される。
【0168】
上に説明されたのと同じ実験が実行される。しかしながら、皮膚は、例4の装置Dev5で実験を通して特定の時間間隔で照射される。装置は、SCの上にじかに配置される。クリームの適用の5分後に装置が配置され、皮膚が30分のあいだ照射される。そのあとで、発光装置がSCから取り除かれる。再び、受容者のサンプルが取られ、HPLCによって分析される。短い照射時間にもかかわらず、皮膚浸透は、フシジン酸とベータメタゾンの両方のために著しく(p<0.005)改善される。対照実験と比較して、フシジン酸の浸透が24%増強され、ベータメタゾンのそれが20%増強される。
【0169】
さらに、表皮の水和は、コルネオメトリー(corneometry)によって決定され得る。上に説明されたように、豚の耳の後部の皮膚が、開いた二室のフランツタイプの拡散セルに装着される。実験は、上に説明されたものと同様に、この分野の熟練者によく知られた方法にしたがって、ただし、いかなるクリームも適用することなく、実行された。皮膚の水分の評価は、コルネオメーター(corneometer)でおこなわれ、それによって、SCを通しての容量測定が使用される。コルネオメトリックな(Corneometric)測定は、照射の前と直後におこなわれる。表皮の水和が、30分のあいだ例4の装置Dev5でSCを照射した後に測定される。すべての実験が三回実行される。照射された皮膚の水和が、22%(p<0.005)改善される。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 少なくとも一つの光源と薬事的および/または美容的有効成分の少なくとも一つの浸透および/または作用の増強に使用される少なくとも一つの薬事的および/または美容的有効成分を備えている皮膚システムにおいて、少なくとも一つの前記光源が、少なくとも一つの無機発光ダイオード(LED)および/または少なくとも一つの有機発光装置を備えている薄い光源であることを特徴とする皮膚システム。
[2] 前記光源が、580と700nmの間の帯域中に最大放射をもつ赤色光および/または700nmと3mmの間の帯域中に最大放射をもつ赤外放射を発することを特徴とする[1]に記載の皮膚システム。
[3] 前記有機発光装置が、有機発光ダイオード(OLED)とポリマー発光ダイオード(PLED)と有機発光電気化学セル(OLEC)から選ばれることを特徴とする[1]または[2]に記載の皮膚システム。
[4] 前記光源がさらに、前記発光装置からの光を吸収し、580と700nmの間の帯域中に最大放射をもつ赤色光および/または700nmと3mmの間の帯域中に最大放射をもつ赤外放射を再び発するダウン変換媒体を備えていることを特徴とする[1]ないし[3]の一つ以上に記載の皮膚システム。
[5] 前記少なくとも一つの光源と前記少なくとも一つの薬事的および/または美容的有効成分の両方が同じ装置に組み込まれていることを特徴とする[1]ないし[4]の一つ以上に記載の皮膚システム。
[6] 前記少なくとも一つの光源がある装置上に配置され、前記少なくとも一つの薬事的および/または美容的有効成分が空間的に異なる実体を表わすことを特徴とする[1]ないし[4]の一つ以上に記載の皮膚システム。
[7] 前記装置が、フラットパネル、湾曲パネル、絆創膏、包帯、毛布、寝袋、スリーブ、埋込可能プローブ、経鼻胃管、チェストドレイン、パッド、ステント、膏薬、あらゆる種類の衣服、口の中の少なくとも一つの歯を覆う装置から選ばれることを特徴とする[5]および[6]に記載の皮膚システム。
[8] 人間および動物皮膚を通した薬事的および/または美容的有効成分の浸透の増強体としての使用のための[1]ないし[7]の一つ以上に記載の皮膚システム。
[9] 薬事的および/または美容的有効成分の作用の増強体としての使用のための[1]ないし[8]の一つ以上に記載の皮膚システム。
[10] 急性および慢性的疼痛、筋肉痛、関節硬直、筋肉緊張および硬直、気分障害、閉経期、骨粗鬆症、アンギナ、急性損傷、関節炎、ニコチン中毒、ウイルス感染、炎症、腫瘍および癌の治療および/または予防のための[1]ないし[9]の一つ以上に記載の皮膚システム。
[11] 前記皮膚システムが経皮システムであることを特徴とする[1]ないし[10]の一つ以上に記載の皮膚システム。
[12] 前記皮膚システムが皮膚膏薬であることを特徴とする[1]ないし[10]の一つ以上に記載の皮膚システム。
[13] 皮膚または毛の一般的な状態のケア、保護または改善のための[1]ないし[12]の一つ以上に記載の皮膚システムの使用。
[14] 皮膚または毛の時間および/または光および/または環境に誘発された老化過程、特に皮膚乾燥およびしわ発生および/または色素障害の治療および/または予防のための、および/または、皮膚へのUV線の悪影響の治療および/または予防のための[13]に記載の使用。
[15] 平らでない皮膚、好ましくは、しわ、細かな線、肌荒れ、大きい毛穴の皮膚、セルライトの治療および/または予防のための[13]または[14]に記載の使用。
[16] 早い皮膚の老化の治療および/または予防のための、特に皮膚の光または老化に誘発されたしわの治療および/または予防のための、色素沈着および角化症アクチニカ(actinica)の治療および/または予防のための、正常な皮膚の老化または皮膚の光に誘発された老化に関連するすべての疾病の治療および/または予防のための[13]ないし[15]の一つ以上に記載の使用。
[17] 分化と細胞増殖に関する欠陥のある角質化に関連する皮膚疾病の治療および/または予防のための、特に尋常性座瘡、コメドニカ座瘡(acne comedonica)、多形性の座瘡、しゅさ性座瘡、節のある座瘡、集簇性座瘡、年齢関連の座瘡、副作用として生じる座瘡、ソラリス座瘡(acne solaris)、薬物関連の座瘡またはプロフェッショナリス座瘡(acne professionalis)の治療および/または予防のための、角質化の他の障害、特に魚鱗癬、魚鱗癬様の状態、ダリエ病、手掌足底の角化症(keratosis palmoplantaris)、白斑症、白斑症様の状態(leukoplasiform states)、皮膚および粘膜の(バッカル)湿疹(苔癬)の治療および/または予防のための、欠陥のある角質化に関連があり、炎症性および/または免疫アレルギー性成分を有している他の皮膚疾病、特に皮膚、粘膜および手指および足指の爪に関する乾癬の形式、および乾癬のリウマチ、および皮膚アトピー、湿疹または呼吸性アトピー、またはさらに歯肉の肥厚のすべての治療および/または予防のための[13]ないし[16]の一つ以上に記載の使用。
[18] ウイルス原因であるかもしれない真皮または表皮の良性または悪性の病的増殖物、尋常性ゆうぜい、青年性扁平ゆうぜい、肬贅状表皮異形成、口の乳頭腫、フロリダ乳頭腫(papillomatosis florida)のすべて、およびUV放射によって引き起こされ得る病的増殖物、特にバーソセルラーレ上皮腫(epithelioma baso-cellulare)およびスピノセルラーレ上皮腫(epithelioma spinocellulare)の治療および/または予防のための[13]ないし[17]の一つ以上に記載の使用。
[19] [1]ないし[12]の一つ以上に記載の皮膚システムで人間または動物を治療する方法。
[20] 人間および/または動物の皮膚を通した薬事的および/または美容的有効成分の浸透の増強のための薄い光源の使用において、前記薄い光源が、OLED、PLEDおよびOLECから選ばれることを特徴とする使用。
【先行技術文献】
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図2
図3
図4