特許第6158102号(P6158102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6158102-射出成形機 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158102
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/72 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
   B29C45/72
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-9022(P2014-9022)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2015-136841(P2015-136841A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 昌博
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−235120(JP,A)
【文献】 特開平06−339961(JP,A)
【文献】 特開平08−099340(JP,A)
【文献】 特開平08−300127(JP,A)
【文献】 中国実用新案第202528446(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 − 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型装置内に充填される成形材料を加熱するシリンダと、
冷却媒体が通る流路を内部に有し、前記シリンダの成形材料供給口を冷却する冷却ブロックと、
前記冷却ブロックを加熱する加熱部とを備え、
前記加熱部は、前記冷却媒体と接触することにより前記冷却媒体を加熱するヒータを有する射出成形機。
【請求項2】
金型装置内に充填される成形材料を加熱するシリンダと、
冷却媒体が通る流路を内部に有し、前記シリンダの成形材料供給口を冷却する冷却ブロックと、
前記冷却ブロックを加熱する加熱部と、
前記冷却ブロックの外部から前記流路に前記冷却媒体を供給する供給管を備え、
前記加熱部は、前記供給管を加熱することにより前記冷却媒体を加熱するヒータを有し、
前記ヒータは、前記供給管の外周に巻き付けられる、射出成形機。
【請求項3】
金型装置内に充填される成形材料を加熱するシリンダと、
冷却媒体が通る流路を内部に有し、前記シリンダの成形材料供給口を冷却する冷却ブロックと、
前記冷却ブロックを加熱する加熱部とを備え、
前記加熱部は、前記シリンダおよび前記冷却媒体と接触することにより前記シリンダの熱を前記冷却媒体に伝えて前記冷却媒体を加熱するヒートパイプを有する射出成形機。
【請求項4】
金型装置内に充填される成形材料を加熱するシリンダと、
冷却媒体が通る流路を内部に有し、前記シリンダの成形材料供給口を冷却する冷却ブロックと、
前記冷却ブロックを加熱する加熱部と、
前記冷却ブロックの外部から前記流路に前記冷却媒体を供給する供給管を備え、
前記加熱部は、前記シリンダおよび前記供給管と接触することにより前記シリンダの熱を前記供給管を介して前記冷却媒体に伝えて前記冷却媒体を加熱するヒートパイプを有する射出成形機。
【請求項5】
ヒートパイプによって前記シリンダの熱を前記冷却媒体に伝える加熱流路と、該加熱流路を迂回するバイパス流路との間の前記冷却媒体の流量比を調整する流量調整部を備える、請求項またはに記載の射出成形機。
【請求項6】
前記加熱部は、前記冷却ブロックと接触することにより前記冷却ブロックを加熱する部材を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、金型装置内に充填される成形材料を加熱するシリンダ、およびシリンダの成形材料供給口を冷却する冷却ブロックを備える(例えば、特許文献1参照)。冷却ブロックの内部には冷却媒体(例えば冷却水)を流す流路が形成され、シリンダの成形材料供給口の温度は成形材料(例えば樹脂ペレット)が溶融しない温度に保たれる。成形材料供給口の目詰まりが防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−103875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、例えば立ち上げ時に冷却ブロックの温度が設定温度になるのに時間がかかっていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、冷却ブロックの温度が設定温度になるまでの時間を短縮できる、射出成形機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
金型装置内に充填される成形材料を加熱するシリンダと、
冷却媒体が通る流路を内部に有し、前記シリンダの成形材料供給口を冷却する冷却ブロックと、
前記冷却ブロックを加熱する加熱部とを備え、
前記加熱部は、前記冷却媒体と接触することにより前記冷却媒体を加熱するヒータを有する射出成形機が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、冷却ブロックの温度が設定温度になるまでの時間を短縮できる、射出成形機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態による射出成形機を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。また、充填工程におけるスクリュの移動方向(図1において左方向)を前方、計量工程におけるスクリュの移動方向(図1において右方向)を後方として説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態による射出成形機を示す断面図である。射出成形機10は、シリンダ41、ノズル42、スクリュ43、冷却ブロック44、温度計45、供給管46、排出管47、冷却器48、加熱部50、流量調整部60、制御装置70などを含む。
【0011】
シリンダ41は、金型装置内に充填される成形材料を加熱する。シリンダ41の外周にはヒータなどの加熱源H1〜H4が設けられる。シリンダ41の後部には成形材料供給口41aが形成され、成形材料供給口41aからシリンダ41内に成形材料が供給される。
【0012】
スクリュ43は、シリンダ41内において回転自在に且つ進退自在に配設される。計量工程では、スクリュ43を回転させて、シリンダ41内に供給された成形材料をスクリュ43に形成される螺旋状の溝43aに沿って前方に送り、徐々に溶融させる。溶融させた成形材料がスクリュ43の前方に送られ、シリンダ41の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ43が後退させられる。スクリュ43の前方に所定量の成形材料が蓄積すると、スクリュ43の回転が停止され、計量工程が完了する。その後、充填工程では、スクリュ43を前進させて、スクリュ43の前方に蓄積された成形材料をシリンダ41の前端に設けられるノズル42から射出し、金型装置内に充填する。ノズル42の外周にはヒータなどの加熱源H5が設けられてよい。
【0013】
スクリュ43に形成される螺旋状の溝43aの深さは、一定でもよいし、場所によって異なってもよい。
【0014】
冷却ブロック44は、冷却媒体が通る流路44aを内部に有する。冷却媒体は、冷却水などの液体、空気などの気体のいずれでもよい。冷却ブロック44は、シリンダ41の後部を挿入させる挿入孔を有し、シリンダ41の後部に形成される成形材料供給口41aを冷却する。成形材料供給口41aの温度は成形材料(例えば樹脂ペレット)が溶融しない温度に保たれる。成形材料供給口41aの目詰まりが防止できる。
【0015】
温度計45は、冷却ブロック44の温度を測定する。温度計45は、冷却ブロック44の温度を示す信号を制御装置70に出力する。制御装置70は、メモリなどの記憶部およびCPUなどを有し、記憶部に記憶される制御プロクラムをCPUに実行させることにより、冷却ブロック44の温度が設定温度になるように、冷却器48、加熱部50、および流量調整部60を制御してよい。
【0016】
供給管46は、冷却ブロック44の外部から流路44aに冷却媒体を供給する。排出管47は、流路44aから冷却ブロック44の外部に冷却媒体を排出する。冷却器48は、排出管47から排出される冷却媒体を冷却して供給管46に戻す。冷却器48は、制御装置70による制御下で、冷却媒体の温度が設定温度になるように冷却媒体を冷却してよい。
【0017】
尚、本実施形態では、排出管47から排出される冷却媒体を冷却して供給管46に環流させるが、排出管47から排出される冷却媒体を廃棄してもよい。この場合、冷却器48は、冷却媒体の供給源に接続され、供給源から供給される冷却媒体を冷却して供給管46に供給する。また、供給管46は冷却器48を介さずに供給源に接続されてもよい。
【0018】
加熱部50は、冷却ブロック44を加熱する。シリンダ41の熱だけでなく加熱部50の熱によって冷却ブロック44が加熱できる。よって、射出成形時に冷却ブロック44の温度が設定温度に維持しやすく、成形品の品質が安定化する。また、冷却ブロック44の温度が設定温度になるまでの時間が短縮できる。時間短縮の効果は、シリンダ41と冷却ブロック44との間に断熱材が配設される場合に顕著である。
【0019】
加熱部50は、冷却媒体を加熱してよい。冷却ブロック44の温度が設定温度になるように、冷却媒体を流路44aに連続的に供給しながら冷却媒体の温度が調整できる。冷却ブロック44の温度が設定温度になるように冷却媒体を流路44aに間欠的に供給すると共にその供給時間を調整する場合に比べて、冷却ブロック44の温度の安定性が良く、成形品の品質が安定化する。
【0020】
加熱部50は、冷却媒体を加熱する目的で、冷却媒体加熱ヒータ51、供給管加熱ヒータ52、冷却媒体加熱ヒートパイプ53、および供給管加熱ヒートパイプ54を有してよい。
【0021】
冷却媒体加熱ヒータ51は、冷却媒体と接触することにより冷却媒体を加熱するヒータである。冷却媒体加熱ヒータ51は、例えばマイクロヒータであって、図1に示すように流路44aに配設されてよい。尚、冷却媒体加熱ヒータ51は、供給管46の内部に配設されてもよく、供給管46の内部と流路44aの両方に配設されてもよい。
【0022】
供給管加熱ヒータ52は、供給管46を加熱することにより冷却媒体を加熱するヒータである。供給管加熱ヒータ52は、例えばバンドヒータであって、供給管46の外周に巻き付けられてよい。
【0023】
冷却媒体加熱ヒートパイプ53は、シリンダ41および冷却媒体と接触することによりシリンダ41の熱を冷却媒体に伝えるヒートパイプである。ヒートパイプは、揮発性の作動液を内部に有し、作動液の蒸発および凝縮を利用して熱を移動させる。作動液はヒートパイプ内を循環する。
【0024】
冷却媒体加熱ヒートパイプ53は、シリンダ41と、供給管46内の冷却媒体とを熱的に接続する。尚、冷却媒体加熱ヒートパイプ53は、シリンダ41と、流路44a内の冷却媒体とを熱的に接続してもよい。また、流路44a内の冷却媒体とシリンダ41とを熱的に接続するヒートパイプと、供給管46内の冷却媒体とシリンダ41とを熱的に接続するヒートパイプとが両方用いられてもよい。
【0025】
供給管加熱ヒートパイプ54は、シリンダ41および供給管46と接触することによりシリンダ41の熱を供給管46を介して冷却媒体に伝えるヒートパイプである。
【0026】
供給管46は、冷却媒体加熱ヒートパイプ53および供給管加熱ヒートパイプ54によってシリンダ41の熱を冷却媒体に伝える加熱流路46aと、加熱流路46aを迂回するバイパス流路46bとを有してよい。加熱流路46aとバイパス流路46bとは分岐点と合流点で接続される。
【0027】
尚、冷却媒体加熱ヒートパイプ53がシリンダ41と流路44a内の冷却媒体とを熱的に接続する場合、流路44aが加熱流路とバイパス流路とを有してよい。
【0028】
流量調整部60は、加熱流路46aとバイパス流路46bとの間の冷却媒体の流量比を調整する。例えば、流量調整部60は、ロータリー弁などの方向制御弁で構成され、冷却媒体の経路を加熱流路46aとバイパス流路46bとの間で切り替える。冷却媒体は、加熱流路46aおよびバイパス流路46bのいずれか一方のみを介して冷却ブロック44内に供給される。よって、冷却ブロック44の温度が調整できる。
【0029】
尚、本実施形態の冷却媒体は加熱流路46aおよびバイパス流路46bのいずれか一方のみを介して冷却ブロック44内に供給されるが、冷却媒体は両方を介して冷却ブロック44内に供給されてもよい。この場合、加熱流路46aおよびバイパス流路46bの少なくとも一方の途中に流量調整弁が設けられてよい。加熱流路46aとバイパス流路46bとの間の冷却媒体の流量比が調整でき、冷却ブロック44の温度が調整できる。
【0030】
加熱部50は、冷却ブロック44と接触することにより冷却ブロック44を加熱してよい。加熱部50は、冷却ブロック44を加熱する目的で、冷却ブロック加熱ヒータ55、および冷却ブロック加熱ヒートパイプ56を有してよい。
【0031】
冷却ブロック加熱ヒータ55は、冷却ブロック44と接触することにより冷却ブロック44を加熱するヒータである。
【0032】
冷却ブロック加熱ヒートパイプ56は、シリンダ41および冷却ブロック44と接触することによりシリンダ41の熱を冷却ブロック44に伝えるヒートパイプである。
【0033】
以上、射出成形機の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0034】
例えば、上記実施形態の射出装置は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式でもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。スクリュ・プリプラ方式では可塑化シリンダ内にスクリュが配設され、プランジャ・プリプラ方式では可塑化シリンダ内にプランジャが配設される。プリプラ方式の場合、冷却ブロックは可塑化シリンダを冷却する。
【0035】
また、上記実施形態では、冷却媒体加熱ヒータ51、供給管加熱ヒータ52、冷却媒体加熱ヒートパイプ53、供給管加熱ヒートパイプ54、冷却ブロック加熱ヒータ55、および冷却ブロック加熱ヒートパイプ56が用いられるが、これらの加熱手段は単独または任意の組合せで用いられてもよい。また、同じ種類の加熱手段が複数用いられてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 射出成形機
41 シリンダ
41a 成形材料供給口
43 スクリュ
44 冷却ブロック
44a 流路
45 温度計
46 供給管
47 排出管
48 冷却器
50 加熱部
51 冷却媒体加熱ヒータ
52 供給管加熱ヒータ
53 冷却媒体加熱ヒートパイプ
54 供給管加熱ヒートパイプ
55 冷却ブロック加熱ヒータ
56 冷却ブロック加熱ヒートパイプ
60 流量調整部
70 制御装置
H1〜H5 加熱源
図1