(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158134
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】放電位置特定装置、放電位置計測装置および放電位置特定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/12 20060101AFI20170626BHJP
G01R 31/06 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
G01R31/12 A
G01R31/06
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-90413(P2014-90413)
(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公開番号】特開2015-210130(P2015-210130A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2015年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 達也
(72)【発明者】
【氏名】廣島 聡
(72)【発明者】
【氏名】坪井 雄一
(72)【発明者】
【氏名】吉満 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄司
【審査官】
續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−098270(JP,A)
【文献】
特開2012−127687(JP,A)
【文献】
特開2004−226300(JP,A)
【文献】
特開2011−095036(JP,A)
【文献】
特開平08−122392(JP,A)
【文献】
特開平05−223882(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0163743(US,A1)
【文献】
特開2009−115505(JP,A)
【文献】
特開2011−215067(JP,A)
【文献】
特開2005−098800(JP,A)
【文献】
特開2013−238581(JP,A)
【文献】
特開2013−190342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/12
G01R 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に電圧が印加されたときの部分放電の発生位置を特定する放電位置特定装置において、
所定の継続時間にわたり連続して印加電圧を前記測定対象物に供給する電圧印加部と、
前記印加電圧の電圧値を連続して測定し電圧信号を出力する電圧検出部と、
前記印加電圧が加えられたことにより前記測定対象物において発生する部分放電を前記所定の継続時間にわたり連続して電気的または磁気的に検出する放電検出部と、
前記所定の継続時間にわたり連続して前記部分放電により前記測定対象物から発せられる光を所定の時間にわたり撮影し映像信号を出力する撮像部と、
前記電圧検出部からの電圧信号と、前記放電検出部からの放電検出部信号と、前記撮像部からの映像信号とを受け入れて前記部分放電の発生箇所を表示する信号処理表示部と、
を備え、
前記信号処理表示部は、
前記電圧検出部からの電圧信号と、前記放電検出部からの放電検出部信号と、前記撮像部からの映像信号とを受け入れて、前記映像信号については前記測定対象物の画像に重ねて、表示信号を生成する表示処理部と、
前記表示信号に基づいて、前記部分放電の発生箇所と前記部分放電の検出結果とを同一画面に表示する表示画面と、
前記放電検出部からの放電検出部信号が所定のしきい値を超える回数の前記電圧の印加回数に対する割合が基準値を超えたときに前記部分放電が発生したと判定する放電レベル判定部と、
前記放電レベル判定部で、前記部分放電が発生したと判定された場合に、前記表示画面に再現可能なように、前記電圧検出部からの電圧信号と、前記放電検出部からの放電検出部信号と、前記撮像部からの映像信号とを保存するファイル保存部と、
を有することを特徴とする放電位置特定装置。
【請求項2】
前記印加電圧は、インパルス電圧であることを特徴とする請求項1に記載の放電位置特定装置。
【請求項3】
前記印加電圧は、正弦波電圧であることを特徴とする請求項1に記載の放電位置特定装置。
【請求項4】
前記撮像部は、紫外線カメラであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の放電位置特定装置。
【請求項5】
前記表示処理部は、前記放電レベル判定部で前記部分放電が発生したと判定された場合に、部分放電が発生した旨の表示内容を前記信号処理表示部に出力することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の放電位置特定装置。
【請求項6】
測定対象物に所定の継続時間にわたり連続して電圧が印加されたときの部分放電の発生位置を計測する放電位置計測装置において、
前記印加電圧の電圧値を連続して測定し電圧信号を出力する電圧検出部と、
前記印加電圧が加えられたことにより前記測定対象物において発生する部分放電を前記所定の継続時間にわたり連続して電気的または磁気的に検出する放電検出部と、
前記所定の継続時間にわたり連続して前記部分放電により前記測定対象物から発せられる光を所定の時間にわたり撮影し映像信号を出力する撮像部と、
前記電圧検出部からの電圧信号と、前記放電検出部からの放電検出部信号と、前記撮像部からの映像信号とを受け入れて前記部分放電の発生箇所を表示する信号処理表示部と、
を備え、
前記信号処理表示部は、
前記電圧検出部からの電圧信号と、前記放電検出部からの放電検出部信号と、前記撮像部からの映像信号とを受け入れて、前記映像信号については前記測定対象物の画像に重ねて、表示信号を生成する表示処理部と、
前記表示信号に基づいて、前記部分放電の発生箇所と前記部分放電の検出結果とを同一画面に表示する表示画面と、
前記放電検出部からの放電検出部信号が所定のしきい値を超える回数の前記電圧の印加回数に対する割合が基準値を超えたときに前記部分放電が発生したと判定する放電レベル判定部と、
前記放電レベル判定部で、前記部分放電が発生したと判定された場合に、前記表示画面に再現可能なように、前記電圧検出部からの電圧信号と、前記放電検出部からの放電検出部信号と、前記撮像部からの映像信号とを保存するファイル保存部と、
を有することを特徴とする放電位置計測装置。
【請求項7】
測定対象物に所定の継続時間にわたり電圧が印加されたときの部分放電の発生箇所を特定する放電位置特定方法において、
信号処理表示部が、前記所定の継続時間にわたり連続して電圧検出部からの電圧信号を取り込む電圧データ取り込みステップと、
信号処理表示部が、前記所定の継続時間にわたり連続して放電検出部からの部分放電データを取り込む部分放電データ取り込みステップと、
信号処理表示部が、前記所定の継続時間にわたり連続して撮像部が撮影した映像信号を前記撮像部から取り込む映像信号取り込みステップと、
前記電圧データ取り込みステップ、部分放電データ取り込みステップおよび映像信号取り込みステップの後に、
信号表示処理部の放電レベル判定部が、前記放電検出部からの放電検出部信号が所定のしきい値を超える回数の前記電圧の印加の回数に対する割合が基準値を超えたときに前記部分放電が発生したと判定する判定ステップと、
前記信号表示処理部のファイル保存部が、前記放電レベル判定部で前記部分放電が発生したと判定された場合に、表示画面に再現可能なように、前記電圧検出部からの電圧信号と、前記放電検出部からの放電検出部信号と、前記撮像部からの映像信号とを保存する保存ステップと、
表示処理部が、前記電圧検出部からの電圧信号と、前記放電検出部からの放電検出部信号と、前記撮像部からの映像信号とを受け入れて、前記映像信号については前記測定対象物の画像に重ねて、表示信号を生成する表示処理ステップと、
を有することを特徴とする放電位置特定方法。
【請求項8】
前記表示処理ステップにおいては、前記判定ステップで前記部分放電が発生したと判定した場合に、前記表示処理部がさらに部分放電が発生した旨の表示内容を表示画面に出力することを特徴とする請求項7に記載の放電位置特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物に電圧が印加されたときの部分放電の発生位置を特定する放電位置特定装置、そのための放電位置計測装置およびこれらを用いた放電位置特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機をインバータ駆動する場合、インバータの高速スイッチングに起因したサージ電圧が発生し、電動機巻線の絶縁に影響を与えることが知られている。このようなサージ電圧はインバータサージと呼ばれ、その電圧値は電動機の定格電圧の2倍以上に及ぶこともある。インバータサージが電動機の巻線に加わる場合、巻線の内外において部分放電の発生が懸念される。部分放電は巻線を構成するエナメル線皮膜を劣化させる原因となる。皮膜が劣化するとやがては絶縁破壊に至ることから、電動機においては、その巻線にインバータサージが加わったとしても部分放電が発生しないような絶縁設計を行う必要がある。
【0003】
従来、電動機の巻線の絶縁性能は、アローペアやモータレットなどの模擬サンプル、あるいはステータコイルを用いて、所定のインパルス電圧を印加して部分放電発生の有無の検知による部分放電試験に基づいて評価されていた。部分放電は、ボイドや導体間距離不十分など絶縁上の弱点で生じるので、部分放電発生個所が特定できれば弱点の位置が明確になり、効果的な絶縁補強を図ることができる。
【0004】
部分放電発生個所を検出する方法として、特許文献1に示す方法が提案されている。部分放電センサであるアンテナを測定対象ステータの周方向に移動させ、最も強いアンテナ信号を検出するまでの時間を計測して、最も短い時間に対応するアンテナ位置を部分放電発生個所として特定している。
【0005】
また、光を透過しない筐体で覆われた回転電機の温度の異常を監視するために、カメラで輻射光を撮影し正常な画像と比較する技術が特許文献2で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−69745号公報
【特許文献2】国際公開第WO2008/044263号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
部分放電に伴う電磁波は不安定であるうえに、ステータの径が小さい場合、ステータ周方向に対してアンテナ位置を変更しても部分放電によるアンテナ信号の強度や検出時間差に明確な差がみられず、部分放電発生個所を特定することが困難な場合がある。
【0008】
また、電動機等の対象物に印加する電圧レベルによっては、部分放電は、印加した直後に発生しないで数分から数時間後に発生する場合がある。このような場合、部分放電発生を見逃す可能性がある。
【0009】
また、カメラで輻射光を撮影し正常な画像と比較することにより異常を監視する方法の場合、温度上昇による光と部分放電による光を同時に測定しているため、両者の区別が難しい。
【0010】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであって、その目的は、測定対象物に電圧が印加されたときの部分放電の発生位置を特定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明は、測定対象物に電圧が印加されたときの部分放電の発生位置を特定する放電位置特定装置において、所定の継続時間にわたり
連続して印加電圧を前記測定対象物に供給する電圧印加部と、前記印加電圧の電圧値を
連続して測定し電圧信号を出力する電圧検出部と、前記印加電圧が加えられたことにより前記測定対象物において発生する部分放電を前記所定の継続時間にわたり
連続して電気的または磁気的に検出する放電検出部と、前記所定の継続時間にわたり
連続して前記部分放電により前記測定対象物から発せられる光を所定の時間にわたり撮影し映像信号を出力する撮像部と、前記電圧検出部からの電圧信号と、前記放電検出部からの放電検出部信号と、前記撮像部からの映像信号とを受け入れて前記部分放電の発生箇所を表示する信号処理表示部と、を備え、前記信号処理表示部は、前記電圧検出部からの電圧信号と、前記放電検出部からの放電検出部信号と、前記撮像部からの映像信号とを受け入れて、
前記映像信号については前記測定対象物の画像に重ねて、表示信号を生成する表示処理部と、前記表示信号に基づいて、前記部分放電の発生箇所と前記部分放電の検出結果とを同一画面に表示する表示画面と、前記放電検出部からの放電検出部信号が所定のしきい値を超える回数の前記電圧の印加回数に対する割合が基準値を超えたときに前記部分放電が発生したと判定する放電レベル判定部と、前記放電レベル判定部で、前記部分放電が発生したと判定された場合に、前記表示画面に再現可能なように、前記電圧検出部からの電圧信号と、前記放電検出部からの放電検出部信号と、前記撮像部からの映像信号とを保存するファイル保存部と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、測定対象物に所定の継続時間にわたり
連続して電圧が印加されたときの部分放電の発生位置を計測する放電位置計測装置において、前
記印加電圧の電圧値を
連続して測定し電圧信号を出力する電圧検出部と、前記印加電圧が加えられたことにより前記測定対象物において発生する部分放電を前記所定の継続時間にわたり
連続して電気的または磁気的に検出する放電検出部と、前記所定の継続時間にわたり
連続して前記部分放電により前記測定対象物から発せられる光を所定の時間にわたり撮影し映像信号を出力する撮像部と、前記電圧検出部からの電圧信号と、前記放電検出部からの放電検出部信号と、前記撮像部からの映像信号とを受け入れて前記部分放電の発生箇所を表示する信号処理表示部と、を備え、前記信号処理表示部は、前記電圧検出部からの電圧信号と、前記放電検出部からの放電検出部信号と、前記撮像部からの映像信号とを受け入れて、
前記映像信号については前記測定対象物の画像に重ねて、表示信号を生成する表示処理部と、前記表示信号に基づいて、前記部分放電の発生箇所と前記部分放電の検出結果とを同一画面に表示する表示画面と、前記放電検出部からの放電検出部信号が所定のしきい値を超える回数の前記電圧の印加回数に対する割合が基準値を超えたときに前記部分放電が発生したと判定する放電レベル判定部と、前記放電レベル判定部で、前記部分放電が発生したと判定された場合に、前記表示画面に再現可能なように、前記電圧検出部からの電圧信号と、前記放電検出部からの放電検出部信号と、前記撮像部からの映像信号とを保存するファイル保存部と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、測定対象物に所定の継続時間にわたり電圧が印加されたときの部分放電の発生箇所を特定する放電位置特定方法において、信号処理表示部が、前記所定の継続時間にわたり
連続して電圧検出部からの電圧信号を取り込む電圧データ取り込みステップと、信号処理表示部が、前記所定の継続時間にわたり
連続して放電検出部からの部分放電データを取り込む部分放電データ取り込みステップと、信号処理表示部が、前記所定の継続時間にわたり
連続して撮像部が撮影した映像信号を前記撮像部から取り込む映像信号取り込みステップと、前記電圧データ取り込みステップ、部分放電データ取り込みステップおよび映像信号取り込みステップの後に、信号表示処理部の放電レベル判定部が、前記放電検出部からの放電検出部信号が所定のしきい値を超える回数の前記電圧の印加の回数に対する割合が基準値を超えたときに前記部分放電が発生したと判定する判定ステップと、前記信号表示処理部のファイル保存部が、前記放電レベル判定部で前記部分放電が発生したと判定された場合に
、表示画面に再現可能なように、前記電圧検出部からの電圧信号と、前記放電検出部からの放電検出部信号と、前記撮像部からの映像信号とを保存する保存ステップと、表示処理部が、前記電圧検出部からの電圧信号と、前記放電検出部からの放電検出部信号と、前記撮像部からの映像信号とを受け入れて、
前記映像信号については前記測定対象物の画像に重ねて、表示信号を生成する表示処理ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、測定対象物に電圧が印加されたときの部分放電の発生位置を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態に係る放電位置特定装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る放電位置計測装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る放電位置計測装置における電圧印加の時間的変化の例を示す概念図である。
【
図4】第1の実施形態に係る放電位置計測装置における信号処理表示部での表示例を示す画面である。
【
図5】第1の実施形態に係る放電位置特定方法の手順を示すフロー図である。
【
図6】第2の実施形態に係る放電位置計測装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】第2の実施形態に係る放電位置計測装置における信号処理表示部での表示例を示す画面である。
【
図8】第2の実施形態に係る放電位置特定方法の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る放電位置特定装置、放電位置計測装置および放電位置特定方法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る放電位置特定装置の構成を示すブロック図である。放電位置特定装置10は、測定対象物1に電圧を印加する電圧印加部11および放電位置計測装置20を有する。
【0018】
ここで、測定対象物1としてツイストペアサンプルを例にとって説明する。なお、ツイストペアサンプルとは、エナメル線を撚り合わせてサンプルとしたものである。ツイストペアサンプルは、エナメル線を10%伸長させた後に撚り合わせる場合があるので、このときの欠陥位置を探る際にも、本実施形態の対象物として適している。
【0019】
電圧印加部11は、電圧印加を開始すると、所定の継続時間、印加状態を継続した後に電圧印加を終了する。印加する電圧は、所定の時間間隔で発生するインパルス電圧である。なお、以下、本実施形態においては、印加電圧a(
図4)がインパルス電圧の場合を例にして説明するが、印加電圧aはインパルス電圧に限定されない。たとえば、正弦波電圧、あるいは、一定の電圧であってもよい。電圧印加部11は、電圧を印加するときは印加開始の信号を後述する信号処理表示部25に出力する。
【0020】
図2は、放電位置計測装置の構成を示すブロック図である。放電位置計測装置20は、高圧プローブ21、放電検出部22、A/D変換部23、撮像部24、および信号処理表示部25を有する。高圧プローブ21は、電圧印加部11によって印加された電圧を測定する電圧検出部である。放電検出部22は、測定対象物1に部分放電が発生した場合にこの部分放電の発生を検出する。放電検出部22は、たとえば、ループアンテナやパッチアンテナなど電磁波を測定する方式のものでもよい。あるいは、高周波CTなどのように測定対象物1の回路内に部分放電により生じた電流を検出する方式のものでもよい。さらには、部分放電により生じた超音波を検出する音響センサ法によるものでもよい。いずれを使用するかは、試験時の環境条件等を考慮して選択することでよい。
【0021】
A/D変換部23は、高圧プローブ21から出力された電圧信号を受けてアナログ−ディジタル変換(A/D変換)する。また、A/D変換部23は、放電検出部22から出力された放電検出部信号b(
図4)を受けてA/D変換する。A/D変換部23でディジタル化された電圧信号および放電検出部信号bは、信号処理表示部25に出力される。
【0022】
撮像部24は、継続時間の間は露光を継続し、測定対象物1全体を撮影し、部分放電発生による光を捉えてその画像信号を信号処理表示部25に出力する。撮像部24としては、たとえば、紫外線カメラを用いることができる。また、紫外線カメラは1台でもよいが、測定対象物1の紫外線カメラからみて裏側あるいは側面での発光を確実にとらえるために、裏側あるいは側面に鏡を設けることでもよい。あるいは、複数台の紫外線カメラを設けてもよい。
【0023】
信号処理表示部25は、
図2に示すように、表示処理部25aおよび表示画面25bを有する。表示処理部25aは、A/D変換部23でA/D変換された印加電圧aおよび放電検出部信号bと、撮像部24からの画像信号を受けて画像データを生成する。表示画面25bは、表示処理部25aから出力された画像データに基づいて、後述する画像を表示する。なお、表示処理部25aは、電圧印加部11からの印加開始の信号を受けると画面データの生成処理を開始する。
【0024】
図3は、第1の実施形態に係る放電位置計測装置における電圧印加の時間的変化の例を示す概念図である。
図3では、継続時間内に印加されている周期的なインパルス電圧の場合である。インパルス電圧は、所定の継続時間において複数回が連続して印加されており、その後中断し、また、所定の時間継続する。
図3の場合、所定の継続時間内に18回のインパルス電圧が印加されている。印加開始時には、電圧印加部11から表示処理部25に印加開始の信号が発信される。
【0025】
図4は、第1の実施形態に係る放電位置計測装置における信号処理表示部での表示例を示す画面である。表示画面25bに表示されている画像は、2つの部分からなる。左側の画面31の画像は、測定対象物1に撮像部24からの映像信号を重ねたものである。部分放電による発光が映像内にない場合は、左側の画面31の画像は、測定対象物1の画像のみである。映像内に発光が存在する場合は、発光した位置に対応した画像中の位置に発光の画像が表示される。
【0026】
なお、左側の画面31の画像は、すべて紫外線カメラによるものでなくともよい。すなわち、肉眼で見える測定対象物1の実像と、紫外線カメラの紫外線で見える放電発生箇所は、測定波長が異なる。このため、あらかじめ、肉眼で見える測定対象物1の画像を記録しておき、これを表示画面25bに表示しておき、紫外線カメラによる放電箇所の映像を重ねるようにしてもよい。
【0027】
表示画面25b内の右側の画面32の画像は、横軸が時間である。縦軸は、上の部分32aに示すのが印加電圧aである。また、下の部分32bに示すのが放電検出部信号b、およびしきい値cである。
図4では、継続時間におけるインパルス電圧のうちの10回分が画面に表示されている。右側の画面32においては、放電検出部信号bは、10回のインパルス信号に対して7回発生している。このうち1回は、しきい値cを超えている。しきい値cは、放電検出部信号bが発生したときに部分放電が発生したか否かを判定する場合の境界値として設定される。したがって、
図4の場合には、1回部分放電が発生したと解釈できる。
【0028】
図5は、第1の実施形態に係る放電位置特定方法の手順を示すフロー図である。まず、電圧印加部11により測定対象物1に電圧を印加する(ステップS01)。電圧の印加開始と同時に、印加開始信号が信号処理表示部25の表示処理部25aに出力される。電圧の印加は、所定の時間にわたって行う。この場合、所定の時間は、そのときの印加電圧aで部分放電が発生しているか否かを確認できるために必要な時間に余裕を加えた時間である。
【0029】
電圧が印加された状態で測定対象物1であるツイストペアケーブルに部分放電が発生し発光した場合、撮像部24による撮像、得られた映像信号の信号処理表示部25による取り込みが行われる(ステップS02)。また、電圧が印加された状態で、高圧プローブ21による印加電圧aの検出、および信号処理表示部25によるこの印加電圧aの信号の取り込みが行われる(ステップS03)。また、電圧が印加された状態で、放電検出部22による部分放電の検出、および信号処理表示部25によるこの放電検出部信号bの取り込みが行われる(ステップS04)。
【0030】
次に、信号処理表示部25の表示処理部25aは、取り込んだ映像信号、印加電圧信号および部分放電電圧の各データに基づいて、表示データを生成する(ステップS05)。表示処理部25aの表示データの生成処理は、電圧の印加開始信号が電圧印加部11から発せられると同時に開始される。次に、表示画面25bは、表示処理部25aにおいて生成された表示データを表示する(ステップS06)。
【0031】
電圧の印加は所定に時間が経過すると終了する。次に、試験が終了か否かを判定する(ステップS07)。表示画面25bに部分放電箇所が表示されれば、試験の目的は達成されたので試験は終了である。部分放電箇所の表示がなされない場合、あるいは部分放電箇所の表示が不安定で発生位置の特定が難しい場合は、試験の目的が達成されておらず、試験は終了しない。
【0032】
試験終了ではない場合(ステップS07 NO)は、電圧印加部11により印加する電圧を増加させて、ステップS01からステップS06を繰り返す。試験終了の場合(ステップS07 YES)は終了となる。
【0033】
以上のような本実施形態においては、表示画面25b上の左側の画面31で、測定対象物1に生じた部分放電の発生位置を視認することができる。また、表示画面25b上の右側の画面32で、印加電圧aと部分放電検出結果の時間的な変化を視認することができる。
【0034】
左側の画面31のみでは、たとえば温度が上昇したことによる発光が生じた場合も表示されることになり、部分放電との区別をすることが困難である。本実施形態においては、印加電圧aと部分放電検出結果が表示されることにより、部分放電の場合の発光と部分放電ではない場合の発光を明確に区別することができる。
【0035】
また、部分放電検出結果が表示されることにより部分放電がどの程度の頻度で発生しているかを、把握することが可能である。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、測定対象物1に電圧が印加されたときの部分放電の発生位置を特定することができる。
【0037】
[第2の実施形態]
図6は、第2の実施形態に係る放電位置計測装置の構成を示すブロック図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形である。信号処理表示部25は、放電レベル判定部25cおよびファイル保存部25dをさらに有する。
【0038】
図7は、第2の実施形態に係る放電位置計測装置における信号処理表示部での表示例を示す画面である。放電レベル判定部25c(
図6)は、印加電圧aであるインパルス電圧の回数たとえば表示されている10回の印加に対して、しきい値cを超えた放電検出部信号bの回数の割合を、インパルス電圧印加ごとに順次カウントする。この割合が規定値を超えた場合は、放電レベル判定部25cは、印加電圧aが部分放電レベル電圧であると判定し、表示画面25bに部分放電レベル電圧である旨を表示するよう出力する。判定条件としては、これに限定されない。たとえば、印加されたすべてのインパルス電圧に対して放電検出部信号bがしきい値cを超えるような場合の印加電圧aが部分放電レベル電圧であると判定してもよい。
【0039】
ファイル保存部25dは、このときの表示処理部25aから表示画面25bに送られるデータを保存する。すなわち、放電レベル判定部25cが部分放電レベルである旨を出力したときの画面を、ファイル保存部25dに保存されたデータに基づいて再現することが可能である。
【0040】
図8は、第2の実施形態に係る放電位置特定方法の手順を示すフロー図である。ステップS01からステップS05までの流れは第1の実施形態と同様である。ステップS05の後に、部分放電レベルであるか否かの判定を行う(ステップS11)。部分放電レベルと判定されない場合(ステップS11 NO)には、印加電圧aを増加させ(ステップS08)、ステップS01以下を繰り返す。
【0041】
部分放電レベルと判定された場合(ステップS11 YES)には、部分放電レベルの表示を含めて表示する(ステップS12)。また、ファイル保存部25dが、この時点の表示処理部25aから表示画面25bに送られるデータを保存する(ステップS13)。この後、測定を終了するか否かを判定し(ステップS14)、終了でない場合は、印加電圧aを増加させ、ステップS01以下を繰り返す。
【0042】
以上のような本実施形態により、部分放電発生の位置を、より安定した状態で確認することができる。また、その状態の画像を保存することにより、より正確に位置の確認を行うことができる。
【0043】
[その他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。たとえば、実施形態においては、印加電圧aがインパルス電圧の場合を示したが、これには限定されない。たとえば、正弦波電圧の場合でもよい。あるいは、時間的に変化せずに一定の電圧値の場合でもよい。
【0044】
また、実施形態では、ツイストペアサンプルを例にとって示したが、これには限定されない。たとえば、紫外光、赤外光あるいは可視光を遮るものがなく、これらを直接的に観測できる状態であれば、回転電機の一部、たとえば、乱巻き機種のコイルエンドなど、あるいはモータレットなどの他のサンプルを測定対象物として本発明を適用することができる。
【0045】
さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0046】
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
1…測定対象物、10…放電位置特定装置、11…電圧印加部、20…放電位置計測装置、21…高圧プローブ(電圧検出部)、22…放電検出部、23…A/D変換部、24…撮像部、25…信号処理表示部、25a…表示処理部、25b…表示画面、25c…放電レベル判定部、25d…ファイル保存部、a…印加電圧、b…放電検出部信号、c…しきい値