(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の蒸留装置では、蒸留コンデンサーから流出した還流流体の温度制御が困難である。例えば、還流流体の温度を所定の温度まで下げる必要がある場合、作動媒体の流量を増やすことによって当該作動媒体が蒸留コンデンサーで第一出力流体から受け取る熱量(蒸留コンデンサーでの第一出力流体の冷却量)を増やすことにより、還流流体の温度を下げることが考えられる。この場合、作動媒体の流量を増やすためには、圧縮機の回転数を増加させるとともに減圧弁の開度を大きくする操作が必要となる。しかしながら、この操作から、実際に作動媒体が蒸留コンデンサーで受け取る熱量が多くなるまでにはタイムラグが生じるので、応答性が悪い。このため、還流流体の温度が前記所定の温度まで低下しない状態で当該還流流体が蒸留塔に流入する流量が多くなるので、蒸留塔での蒸留精度が低下する懸念がある。
【0006】
本発明の目的は、第一出力流体の熱エネルギーを有効に回収することが可能で、かつ還流流体の温度を高い応答性で調整可能な蒸留装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、第一成分及び第二成分を含む入力流体を前記第一成分を含む第一出力流体と前記第二成分を含む第二出力流体とに分離する分離器と、前記分離器から流出した前記第一出力流体を冷却する凝縮器と、前記分離器から流出した前記第二出力流体を加熱する加熱器と、前記凝縮器及び前記加熱器を接続しており作動媒体を循環させるための循環流路と、前記凝縮器で前記第一出力流体と熱交換することによって当該第一出力流体から熱エネルギーを受け取った後の作動媒体を圧縮する圧縮機と、前記加熱器で前記第二出力流体と熱交換することによって当該第二出力流体に前記熱エネルギーを与えた後の作動媒体を膨張させる膨張機構と、前記凝縮器から流出した前記第一出力流体を前記分離器に戻すための還流流路と、前記還流流路に設けられており、前記凝縮器から前記還流流路に流出した前記第一出力流体である還流流体を冷却するための冷却器と、を備える蒸留装置を提供する。
【0008】
本発明では、作動媒体を介して第一出力流体の有する熱エネルギーを加熱器において有効に回収することができ、しかも、還流流路に冷却器が設けられているので、分離器に流入する還流流体の温度を高い応答性で調整することができる。具体的に、還流流路に冷却器が設けられているので、凝縮器から還流流路に流出した還流流体は、還流流路を通じて分離器に流入する前に冷却器で冷却される。このため、圧縮機の回転数の増加及び膨張機構での膨張量(減圧量)の調整という操作をすることによって凝縮器での第一出力流体の冷却量を増やす場合に比べて、還流流体の温度調整の応答性が高まる。さらに、前記操作をする場合に比べて圧縮機の回転数の変動が抑制されるので、当該変動に起因する圧縮機の駆動に必要な動力の増大が抑制される。
【0009】
この場合において、前記冷却器において前記還流流体を冷却するための冷却媒体の前記冷却器への流入量を制御する流入量制御部をさらに備え、前記流入量制御部は、前記分離器に流入する前記還流流体の温度が特定の範囲内に収まるように前記冷却媒体の前記冷却器への流入量を調整することが好ましい。
【0010】
このようにすれば、分離器に流入する還流流体の温度がほぼ特定の範囲内に収まるので、分離器において還流流体から第一成分が適切に分離する。よって、分離器から流出する第一出力流体に含まれる第一成分の純度が高まる。
【0011】
また、本発明において、前記圧縮機の回転数を制御する圧縮機制御部をさらに備え、前記圧縮機制御部は、前記凝縮器に流入する前記第一出力流体の温度と前記還流流路のうち前記凝縮器と前記冷却器との間の部位を流れる前記還流流体の温度との温度差に基づいて前記圧縮機の回転数を調整することが好ましい。
【0012】
この態様では、凝縮器から流出した還流流体の温度を飽和温度よりもわずかに低い温度とすることが可能な量(凝縮器において第一出力流体とほぼ潜熱のみの熱交換を行うことが可能な量)の作動媒体が凝縮器へ流入するように圧縮機の回転数を調整することにより、圧縮機の駆動に必要な動力を低減しつつ凝縮器において有効に熱エネルギーを回収することが可能となる。
【0013】
また、本発明において、前記還流流路から分岐しており前記還流流体の一部を外部に抜き出すための抜出流路をさらに備え、前記抜出流路は、前記還流流路のうち前記凝縮器と前記冷却器との間の部位から分岐していることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、凝縮器から流出した還流流体のうち抜出流路から抜き取られた後の残余分(分離器に還流する分)のみを冷却器で冷却すればよいので、冷却器の負荷が低減する。
【0015】
この場合において、前記凝縮器から前記還流流路へ流出した前記還流流体の前記抜出流路への分流量を調整する抜出量制御部と、をさらに備え、前記抜出量制御部は、前記還流流路のうち当該還流流路と前記抜出流路との接続部よりも下流側の部位を流れる前記還流流体の流量を、前記還流流路のうち前記接続部よりも上流側の部位を流れる前記還流流体の流量から前記接続部よりも下流側の部位を流れる前記還流流体の流量を引いた流量差で除した値で表される還流比が基準範囲内に収まるように、前記分流量を調整することが好ましい。
【0016】
このようにすれば、還流比がほぼ基準範囲内に収まるので、分離器から流出する第一出力流体の流量に変動が生じた場合であっても、当該第一出力流体に含まれる第一成分の純度がほぼ一定に保たれる。
【0017】
また、本発明において、前記凝縮器に流入する前記第一出力流体の流量が予め設定された立ち上げ基準値よりも大きくなったときに前記圧縮機を駆動する立ち上げ制御部をさらに備えることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、第一出力流体の流量が立ち上げ基準値よりも大きくなったとき(作動媒体を介して第一出力流体から第二出力流体に与えることが可能な熱エネルギーの量が十分に確保されたとき)に、自動的に第一出力流体の熱エネルギーを回収する回路が立ち上がる(起動する)。よって、圧縮機の不要な駆動を回避しつつ第一出力流体の有する熱エネルギーをより有効に回収することができる。
【0019】
この場合において、前記循環流路のうち前記凝縮器と前記圧縮機との間の部位に設けられた立ち上げ制御弁をさらに備え、前記立ち上げ制御部は、前記凝縮器に流入する前記第一出力流体の流量が前記立ち上げ基準値よりも大きくなり、かつ前記循環流路のうち前記凝縮器と前記立ち上げ制御弁との間の部位の圧力が起動値を超えたときに、前記立ち上げ制御弁を開くとともに前記圧縮機を駆動することが好ましい。
【0020】
このようにすれば、循環流路のうち凝縮器と立ち上げ制御弁との間の部位の圧力が起動値(圧縮機が安定的に駆動可能な圧力)を超えたときに圧縮機が駆動されるので、前記回路が安定的にかつ自動的に立ち上がる。
【0021】
さらにこの場合において、前記循環流路のうち液状の作動媒体が流れる部位に対して並列となるように当該循環流路に接続された並列流路と、前記並列流路に設けられており、前記液状の作動媒体を前記凝縮器に送るポンプと、をさらに備え、前記立ち上げ制御部は、前記凝縮器内における液状の作動媒体の貯留量が予め設定された基準量に達するまで前記ポンプを駆動することが好ましい。
【0022】
このようにすれば、凝縮器内において第一出力流体から熱エネルギーを受け取ることによって蒸発する液状の作動媒体の量、すなわち凝縮器で蒸発した後に当該凝縮器と立ち上げ制御弁との間に溜まるガス状の作動媒体の量が十分に確保されるまで、並列流路及び循環流路の液状の作動媒体がポンプによって凝縮器に送られる。よって、より早期に前記回路を立ち上げることが可能となる。
【0023】
また、本発明において、前記凝縮器に流入する前記第一出力流体の流量が停止基準値よりも小さくなったときに前記圧縮機を停止する停止制御部をさらに備えることが好ましい。
【0024】
このようにすれば、凝縮器に流入する第一出力流体の流量が停止基準値よりも小さくなったとき(作動媒体を介して第一出力流体から第二出力流体に与えることが可能な熱エネルギーの量が十分に確保できなくなったとき)に自動的に圧縮機を停止するので、圧縮機の損傷等が回避される。
【0025】
また、本発明において、前記加熱器は、前記第二出力流体を加熱するための加熱媒体が流れる加熱媒体流路を有していることが好ましい。
【0026】
このようにすれば、作動媒体を介して加熱器に投入される熱量のみでは当該加熱器における第二出力流体の加熱量が不足する場合であっても、この加熱器に外部から加熱媒体を供給することによってその不足分を補うことができる。
【0027】
また、本発明において、前記凝縮器は、前記第一出力流体を冷却するための冷却媒体が流れる冷却媒体流路を有していることが好ましい。
【0028】
このようにすれば、作動媒体を介して凝縮器で回収される熱量のみでは当該凝縮器における第一出力流体の冷却量が不足する場合であっても、この凝縮器に外部から冷却媒体を供給することによってその不足分を補うことができる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明によれば、第一出力流体の熱エネルギーを有効に回収することが可能で、かつ還流流体の温度を高い応答性で調整可能な蒸留装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の一実施形態の蒸留装置について、
図1〜
図4を参照しながら説明する。
【0032】
図1に示されるように、蒸留装置は、分離器22と、分離器22から流出した第一出力流体を冷却する凝縮器24と、分離器22から流出した第二出力流体を加熱する加熱器26と、凝縮器24から流出した第一出力流体(以下、「還流流体」という。)を分離器22に戻すための還流流路13と、還流流路13に設けられた冷却器28と、作動媒体を介して第一出力流体から回収した熱エネルギーを第二出力流体に与える熱回収回路30と、各種制御を行う制御部50と、を備えている。
【0033】
分離器22は、第一成分及び第一成分とは異なる第二成分を含む入力流体を、第一成分を含む第一出力流体と第二成分を含む第二出力流体とに分離する。例えば、第一出力流体は、第一成分として沸点の低い(揮発性の高い)成分を多く含んだ留出蒸気(留出液)であり、第二出力流体は、第二成分として第一成分の沸点よりも高い沸点を有する(第一成分の揮発性よりも低い揮発性を有する)成分を多く含んだ缶出液である。なお、入力流体は、入力流路11を通じて分離器22に流入する。第一出力流体は、出力流路12を通じて凝縮器24に流入し、第二出力流体は、出力流路16を通じて加熱器26に流入する。
【0034】
凝縮器24は、第一出力流体と熱回収回路30の作動媒体とを熱交換させることにより第一出力流体を冷却する。本実施形態では、凝縮器24は、外部の冷却源(図示略)から供給される冷却媒体(冷却水等)によっても第一出力流体を冷却することができるように構成されている。具体的に、凝縮器24は、冷却源から供給される冷却媒体が流れる冷却媒体流路25を有している。冷却媒体流路25には、開度調整可能な冷却媒体量調整弁V2が設けられている。なお、冷却媒体流路25は省略されてもよい。
【0035】
凝縮器24で作動媒体又は冷却媒体と熱交換することにより凝縮した第一出力流体は、還流流体として還流流路13に流出する。本実施形態では、還流流路13から抜出流路14が分岐している。抜出流路14は、還流流体の一部を外部に抜き出すための流路である。このため、凝縮器24から還流流路13に流出した還流流体の一部は、抜出流路14を通じて外部に抜き出され、前記還流流体の残りが分離器22の上部(還流流体から第一成分が有効に分離される温度領域)に戻される。
【0036】
加熱器26は、第二出力流体と熱回収回路30の作動媒体とを熱交換させることにより第二出力流体を加熱する。本実施形態では、加熱器26は、外部の熱源(図示略)から供給される加熱媒体(蒸気等)によっても第二出力流体を加熱することができるように構成されている。具体的に、加熱器26は、熱源から供給される加熱媒体が流れる加熱媒体流路27を有している。加熱媒体流路27には、開度調整可能な加熱媒体量調整弁V3が設けられている。なお、加熱媒体流路27は省略されてもよい。
【0037】
加熱器26に流入した第二出力流体の一部は、抜出流路18を通じて外部に抜き出され、前記第二出力流体の残りは、加熱器26で作動媒体又は加熱媒体と熱交換することにより加熱された後、戻し流路17を通じて分離器22の下部に戻される。
【0038】
冷却器28は、還流流路13に設けられている。より具体的には、冷却器28は、還流流路13のうち当該還流流路13と抜出流路14との接続部よりも下流側の部位に設けられている。冷却器28は、還流流体と外部の冷却源から供給される冷却媒体(冷却水等)とを熱交換させることによって還流流体を冷却する。具体的に、冷却器28は、冷却源から供給される冷却媒体が流れる冷却媒体流路29を有している。冷却媒体流路29には、開度調整可能な冷却媒体量調整弁V1が設けられている。
【0039】
凝縮器24から還流流路13に流出した還流流体は、冷却器28で所定の温度領域(分離器22で還流流体から第一成分が有効に分離される温度領域)まで冷却された後に分離器22に流入する。
【0040】
熱回収回路30は、凝縮器24での第一出力流体と作動媒体との熱交換によって当該作動媒体が第一出力流体から受け取った熱エネルギーを、加熱器26での作動媒体と第二出力流体との熱交換によって当該第二出力流体に与える回路である。つまり、熱回収回路30は、相対的に低温の第一出力流体から相対的に高温の第二出力流体に対し、作動媒体を介して熱を運ぶいわゆるヒートポンプとして機能する。具体的に、熱回収回路30は、作動媒体が循環する循環流路32と、作動媒体を圧縮する圧縮機34と、作動媒体を膨張させる膨張機構36と、を有している。
【0041】
循環流路32は、凝縮器24、圧縮機34、加熱器26及び膨張機構36をこの順に直列に接続している。この循環流路32における凝縮器24と圧縮機34との間の部位には、立ち上げ制御弁V5が設けられている。
【0042】
圧縮機34は、循環流路32のうち凝縮器24の下流側でかつ加熱器26の上流側の部位に設けられている。圧縮機34は、凝縮器24から流出したガス状の作動媒体を圧縮することにより昇温させる。圧縮機34から流出したガス状の作動媒体は、加熱器26に流入し、当該加熱器26において第二出力流体と熱交換を行うことにより液状となる。
【0043】
膨張機構36は、循環流路32のうち加熱器26の下流側でかつ凝縮器24の上流側の部位に設けられている。膨張機構36は、加熱器26から流出した液状の作動媒体を膨張させることにより減圧させる。膨張機構36から流出した作動媒体は、凝縮器24に流入し、当該凝縮器24において第一出力流体と熱交換を行うことによりガス状となる。
【0044】
本実施形態では、熱回収回路30は、循環流路32に接続された並列流路37と、並列流路37に設けられたポンプ38と、開閉弁V6と、をさらに有している。
【0045】
並列流路37は、循環流路32のうち液状の作動媒体が流れる部位に対して並列となるように当該循環流路32に接続されている。具体的に、並列流路37は、循環流路32のうち加熱器26と膨張機構36との間の部位に対して並列となるように循環流路32に接続されている。
【0046】
ポンプ38は、液状の作動媒体を凝縮器24に送る。
【0047】
開閉弁V6は、循環流路32のうちポンプ38と並列となる部位(循環流路32のうち当該循環流路32と並列流路37の上流側の端部との接続部よりも下流側で当該循環流路32と並列流路37の下流側の端部との接続部よりも上流側の部位)に設けられている。この開閉弁V6は、ポンプ38の運転中には閉じられる。なお、開閉弁V6は、作動媒体の加熱器26から膨張機構36に向かう方向への通過を許容する一方でその逆方向の通過を規制する逆止弁であってもよい。
【0048】
制御部50は、流入量制御部51と、圧縮機制御部52と、抜出量制御部53と、立ち上げ制御部54と、停止制御部55と、を含む。
【0049】
流入量制御部51は、分離器22に流入する還流流体の温度が特定の範囲内に収まるように冷却媒体の冷却器28への流入量を調整する。具体的に、流入量制御部51は、還流流路13のうち冷却器28と分離器22との間の部位に設けられた温度センサ41の検出値T1が特定の範囲内に収まるように、冷却媒体量調整弁V1の開度を調整する。より好ましくは、流入量制御部51は、検出値T1が指定還流温度Trとなるように冷却媒体量調整弁V1の開度を調整する。
【0050】
圧縮機制御部52は、凝縮器24に流入する第一出力流体の温度と凝縮器24から還流流路13に流出した還流流体の温度との温度差に基づいて圧縮機34の回転数を調整する。具体的に、圧縮機制御部52は、出力流路12に設けられた温度センサ42の検出値T2から還流流路13のうち凝縮器24と冷却器28との間の部位に設けられた温度センサ43の検出値T3の値を引いた温度差ΔTが規定値αとなるように、圧縮機34の回転数を調整する。規定値αは、0℃よりも大きく、かつ5℃以下の任意の温度に設定されることが好ましい。換言すれば、規定値αは、凝縮器24において第一出力流体が作動媒体と実質的に潜熱のみの熱交換を行う値に設定されることが好ましい。すなわち、圧縮機制御部52は、ガス状で凝縮器24に流入した第一出力流体が飽和温度よりもわずかに低い温度の液状で凝縮器24から流出するように、圧縮機34の回転数を調整する。
【0051】
抜出量制御部53は、還流比Rが基準範囲内に収まるように抜出量調整弁V4の開度を調整する。還流比Rは、還流流路13のうち当該還流流路13と抜出流路14との接続部よりも上流側の部位に設けられた流量センサ44の検出値Q1と、還流流路13のうち前記接続部よりも下流側の部位に設けられた流量センサ45の検出値Q2と、に基づいて算出される。具体的に、還流比Rは、検出値Q2を、検出値Q1から検出値Q2を引いた流量差(Q1−Q2)で除した値(Q2/(Q1−Q2))で表される。本実施形態では、抜出量制御部53は、還流比Rが指定還流比R0となるように抜出量調整弁V4の開度を調整する。
【0052】
立ち上げ制御部54は、熱回収回路30の立ち上げ時(起動時)に各種制御を行う。立ち上げ制御部54は、分離器22から流出した第一出力流体の流量が予め設定された立ち上げ基準値Q0よりも大きくなったときに圧縮機34を駆動する。つまり、前記第一出力流体の流量が立ち上げ基準値Q0以下のときは、圧縮機34の起動が禁止されている。本実施形態では、分離器22から流出した第一出力流体の流量は、流量センサ44により検出される。立ち上げ基準値Q0は、作動媒体を介して第一出力流体から第二出力流体に与えることが可能な熱エネルギーの量が十分に確保可能な第一出力流体の流量に設定される。本実施形態では、立ち上げ制御部54は、流量センサ44の検出値Q1が立ち上げ基準値Q0よりも大きくなり、かつ循環流路32のうち凝縮器24と立ち上げ制御弁V5との間の部位に設けられた圧力センサ33の検出値P1が稼働値P0を超えたときに、立ち上げ制御弁V5を開くとともに圧縮機34を駆動する。さらに、立ち上げ制御部54は、凝縮器24内における液状の作動媒体の貯留量が予め設定された基準量L0に達するまで開閉弁V6を閉じるとともにポンプ38を駆動する。凝縮器24内における液状の作動媒体の貯留量は、凝縮器24に設けられた液面センサ40によって検出される。基準量L0は、凝縮器24内の液状の作動媒体が第一出力流体から熱エネルギーを受け取ることによって蒸発した後に凝縮器24と立ち上げ制御弁V5との間にガス状の作動媒体として溜まったときに、圧力センサ33の検出値P1を稼働値P0以上にすることが可能な量に設定される。
【0053】
停止制御部55は、熱回収回路30の停止時に各種制御を行う。停止制御部55は、分離器22から流出した第一出力流体の流量(流量センサ44の検出値Q1)が停止基準値よりも小さくなったときに圧縮機34を停止する。本実施形態では、停止基準値は、立ち上げ基準値Q0と同じ値に設定されている。
【0054】
以下、制御部50の具体的な制御内容を、
図2〜
図4を参照しながら説明する。
図2は定常運転時の制御内容を示しており、
図3は熱回収回路30の立ち上げ時の制御内容を示しており、
図4は熱回収回路30の停止時の制御内容を示している。
【0055】
まず、
図2を参照しながら、定常運転時の制御部50の制御内容について説明する。
【0056】
制御部50は、温度センサ42の検出値T2から温度センサ43の検出値T3を引いた温度差ΔTが規定値αよりも大きいか否かを判定する(ステップST11)。
【0057】
この結果、温度差ΔTが規定値αよりも大きい場合(ステップST11でYES)、すなわち、作動媒体による第一出力流体の冷却量が多すぎる場合、制御部50は、凝縮器24への作動媒体の流入量を減らすために圧縮機34の回転数を下げる(ステップST12)。一方、温度差ΔTが規定値α以下の場合(ステップST11でNO)、制御部50は、温度差ΔTが規定値αよりも小さいか否かを判定する(ステップST13)。
【0058】
この結果、温度差ΔTが規定値αよりも小さい場合(ステップST13でYES)、すなわち、作動媒体による第一出力流体の冷却量が少なすぎる場合、制御部50は、凝縮器24への作動媒体の流入量を増やすために圧縮機34の回転数を上げる(ステップST14)。
【0059】
そして、制御部50は、ステップST12又はステップST14の後、温度差ΔTが規定値αと等しいか否かを判定する(ステップST15)。この結果、温度差ΔTが規定値αと等しくない場合(ステップST15でNO)、ステップST11に戻る。一方、温度差ΔTが規定値αと等しい場合(ステップST15でYES)、及び、ステップST13でNOの場合(温度差ΔTが規定値αと等しい場合)、制御部50は、温度センサ41の検出値T1が指定還流温度Trよりも大きいか否かを判定する(ステップST16)。
【0060】
この結果、検出値T1が指定還流温度Trよりも大きい場合(ステップST16でYES)、制御部50は、冷却器28での還流流体の冷却量を増やすために冷却媒体量調整弁V1の開度を上げる(ステップST17)。一方、検出値T1が指定還流温度Tr以下の場合(ステップST16でNO)、制御部50は、検出値T1が指定還流温度Trよりも小さいか否かを判定する(ステップST18)。
【0061】
この結果、検出値T1が指定還流温度Trよりも小さい場合(ステップST18でYES)、制御部50は、冷却器28での還流流体の冷却量を減らすために冷却媒体量調整弁V1の開度を下げる(ステップST19)。
【0062】
そして、制御部50は、ステップST17又はステップST19の後、検出値T1が指定還流温度Trと等しいか否かを判定する(ステップST20)。この結果、検出値T1が指定還流温度Trと等しくない場合(ステップST20でNO)、ステップST16に戻る。一方、検出値T1が指定還流温度Trと等しい場合(ステップST20でYES)、及び、ステップST18でNOの場合(検出値T1が指定還流温度Trと等しい場合)、制御部50は、流量センサ44の検出値Q1及び流量センサ45の検出値Q2を読み取り、両検出値に基づいて還流比Rを算出する(ステップST21)。
【0063】
次に、制御部50は、還流比Rが指定還流比R0よりも大きいか否かを判定する(ステップST22)。この結果、還流比Rが指定還流比R0よりも大きい場合(ステップST22でYES)、制御部50は、抜出流路14からの還流流体の抜出量を増やすために(分離器22に還流する還流媒体の流量を減らすために)抜出量調整弁V4の開度を上げる(ステップST23)。一方、還流比Rが指定還流比R0以下の場合(ステップST22でNO)、制御部50は、還流比Rが指定還流比R0よりも小さいか否かを判定する(ステップST24)。
【0064】
この結果、還流比Rが指定還流比R0よりも小さい場合(ステップST24でYES)、制御部50は、抜出流路14からの還流流体の抜出量を減らすために(分離器22に還流する還流媒体の流量を増やすために)抜出量調整弁V4の開度を下げる(ステップST25)。
【0065】
そして、制御部50は、ステップST23又はステップST25の後、還流比Rが指定還流比R0と等しいか否かを判定する(ステップST26)。この結果、還流比Rが指定還流比R0と等しくない場合(ステップST26でNO)、ステップST21に戻る。
一方、還流比Rが指定還流比R0と等しい場合(ステップST26でYES)、及び、ステップST24でNOの場合(還流比Rが指定還流比R0と等しい場合)、制御部50は、加熱器26に供給する加熱媒体の流量を決定し、その開度にて加熱媒体量調整弁V3を開く(ステップST27)。その後、ステップST11に戻る。このようにして、温度差ΔT、検出値T1及び還流比Rが一定となるように制御される。
【0066】
次に、熱回収回路30の立ち上げ時(起動時)の制御部50の制御内容について、
図3を参照しながら説明する。熱回収回路30の立ち上げ前の状態では、圧縮機34及びポンプ38は停止しており、立ち上げ制御弁V5は閉じている。また、凝縮器24において第一出力流体を冷却するために冷却媒体量調整弁V2は開いている。
【0067】
この状態において、制御部50は、まず、流量センサ44の検出値Q1を読み取り(ステップST31)、この検出値Q1が立ち上げ基準値Q0よりも大きいか否かを判定する(ステップST32)。
【0068】
そして、検出値Q1が立ち上げ基準値Q0以下の場合(ステップST32でNO)、ステップST31に戻る。一方、検出値Q1が立ち上げ基準値Q0よりも大きい場合(ステップST32でYES)、制御部50は、冷却媒体量調整弁V2を閉じる(ステップST33)。冷却媒体量調整弁V2を閉じるのは、凝縮器24内の液状の作動媒体によって第一出力流体の冷却が可能となるからである。そして、液面センサ40の検出値L1を読み取るとともに(ステップST34)、検出値L1が基準量L0よりも大きいか否かを判定する(ステップST35)。
【0069】
この結果、検出値L1が基準量L0以下の場合(ステップST35でNO)、制御部50は、凝縮器24内の液状の作動媒体の量を増やすために開閉弁V6を閉じるとともにポンプ38を駆動する(ステップST36)。開閉弁V6を閉じることにより、ポンプ38から吐出された作動媒体は、確実に凝縮器24に流入する。一方、検出値L1が基準量L0よりも大きい場合(ステップST35でTES)、制御部50は、ポンプ38を停止して開閉弁V6を開き(ステップST37)、圧力センサ33の検出値P1を読み取る(ステップST38)。その後、制御部50は、検出値P1が稼働値P0よりも大きいか否かを判定する(ステップST39)。
【0070】
この結果、検出値P1が稼働値P0以下の場合(ステップST39でNO)、ステップST38に戻る。一方、検出値P1が稼働値P0よりも大きい場合(ステップST39でYES)、制御部50は、立ち上げ制御弁V5を開くとともに圧縮機34を駆動する(ステップST40)。これにより、熱回収回路30が立ち上がる。
【0071】
そして、制御部50は、加熱器26に供給する加熱媒体の流量を決定し、その開度で加熱媒体量調整弁V3を開く(ステップST41)。その後、ステップST11へ、すなわち定常運転時のフローへ移る。
【0072】
続いて、熱回収回路30の停止時の制御部50の制御内容について、
図4を参照しながら説明する。なお、
図4では、定常運転時の制御内容と同じ内容については、定常運転時の制御内容と同じ符号を付している。
【0073】
定常運転時において、制御部50は、流量センサ44の検出値Q1を読み取り(ステップST51)、この検出値Q1が停止基準値Q0よりも大きいか否かを判定する(ステップST52)。
【0074】
そして、検出値Q1が停止基準値Q0よりも大きい場合(ステップST52でYES)、ステップST31に戻る。一方、検出値Q1が停止基準値Q0以下の場合(ステップST52でNO)、制御部50は、圧縮機34を停止する(ステップST53)。これにより、熱回収回路30が停止する。
【0075】
その後、制御部50は、加熱器26に供給する加熱媒体の流量を決定し、その開度にて加熱媒体量調整弁V3を開く(ステップST54)。これと同時に、制御部50は、凝縮器24に供給する冷却媒体の流量を決定し、その開度にて冷却媒体量調整弁V2を開く(ステップST55)。
【0076】
この後の制御内容については、定常運転時のステップST16〜ステップST26の制御内容と同じであるので、その説明を省略する。ただし、ステップST24でNOの場合及びステップST26でYESの場合、ステップST54に戻る。
【0077】
以上のように、本蒸留装置では、作動媒体を介して第一出力流体の有する熱エネルギーを加熱器26において有効に回収することができ、しかも、還流流路13に冷却器28が設けられているので、分離器22に流入する還流流体の温度を高い応答性で調整することができる。具体的に、還流流路13に冷却器28が設けられているので、凝縮器24から還流流路13に流出した還流流体は、還流流路13を通じて分離器22に流入する前に冷却器28で冷却される。このため、圧縮機34の回転数の増加及び膨張機構36での膨張量(減圧量)の調整という操作をすることによって凝縮器24での第一出力流体の冷却量を増やす場合に比べて、還流流体の温度調整の応答性が高まる。さらに、前記操作をする場合に比べて圧縮機34の回転数の変動が抑制されるので、当該変動に起因する圧縮機34の駆動に必要な動力の増大が抑制される。
【0078】
また、本実施形態では、温度センサ41の検出値T1が指定還流温度Trとなるように流入量制御部51によって冷却媒体量調整弁V1の開度が調整される。このため、分離器22に流入する還流流体の温度がほぼ指定還流温度Trに等しくなるので、分離器22において還流流体から第一成分が適切に分離する。よって、分離器22から流出する第一出力流体に含まれる第一成分の純度が高まる。
【0079】
また、本実施形態では、温度差ΔTが規定値αとなるように圧縮機制御部52によって圧縮機34の回転数が調整される。このため、凝縮器24において第一出力流体と作動媒体とがほぼ潜熱のみの熱交換を行う。換言すれば、ガス状で凝縮器24に流入した第一出力流体は、飽和温度よりもわずかに低い温度の液状で当該凝縮器24から流出する。よって、圧縮機34の駆動に必要な動力を低減しつつ凝縮器24において有効に熱エネルギーを回収することが可能となる。
【0080】
また、本実施形態では、抜出流路14は、還流流路13のうち凝縮器24と冷却器28との間の部位から分岐している。このため、凝縮器24から流出した還流流体のうち抜出流路14から抜き取られた後の残余分(分離器22に還流する分)のみが冷却器28で冷却されればよいので、冷却器28の負荷が低減する。
【0081】
さらに、本実施形態では、還流比Rが指定還流比R0となるように抜出量制御部53によって抜出量調整弁V4の開度が調整される。このため、還流比Rがほぼ指定還流比R0に維持されるので、分離器22から流出する第一出力流体の流量に変動が生じた場合であっても、当該第一出力流体に含まれる第一成分の純度がほぼ一定に保たれる。
【0082】
また、本実施形態では、流量センサ44の検出値Q1が立ち上げ基準値Q0よりも大きくなり、かつ圧力センサ33の検出値P1が稼働値P0を超えたときに、立ち上げ制御部54によって立ち上げ制御弁V5が開かれるとともに圧縮機34が駆動される。換言すれば、作動媒体を介して第一出力流体から第二出力流体に与えることが可能な熱エネルギーの量が十分に確保され、かつ圧縮機34に流入するガス状の作動媒体の圧力が圧縮機34を安定的に駆動可能な圧力を超えたときに、立ち上げ制御弁V5が開かれるとともに圧縮機34が駆動される。よって、熱回収回路30が安定的にかつ自動的に立ち上がる。また、検出値P1が稼働値P0を超えるまで立ち上げ制御弁V5が閉じているので、検出値P1が稼働値P0を超える前におけるガス状の作動媒体の圧縮機34の上流側から下流側への漏出及びこの漏出に起因して検出値P1が稼働値P0に達する時間が長くなることが回避される。
【0083】
さらに、本実施形態では、立ち上げ制御部54は、液面センサ40の検出値L1が基準量L0に達するまでポンプ38を駆動する。よって、より早期に熱回収回路30が立ち上がる。
【0084】
また、本実施形態では、流量センサ44の検出値Q1が停止基準値Q0よりも小さくなったときに停止制御部55によって圧縮機34が停止される。よって、圧縮機34の損傷等が回避される。
【0085】
また、本実施形態では、加熱器26は、加熱媒体流路27を有している。このため、作動媒体を介して加熱器26に投入される熱量のみでは当該加熱器26における第二出力流体の加熱量が不足する場合であっても、この加熱器26に外部から加熱媒体を供給することによってその不足分を補うことができる。
【0086】
また、本実施形態では、凝縮器24は、冷却媒体流路25を有している。このため、作動媒体を介して凝縮器24から回収される熱量のみでは当該凝縮器24における第一出力流体の冷却量が不足する場合であっても、この凝縮器24に外部から冷却媒体を供給することによってその不足分を補うことができる。
【0087】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0088】
例えば、上記実施形態では、温度センサ41の検出値T1が指定還流温度Trとなるように流入量制御部51が冷却媒体量調整弁V1の開度を調整する例が示されたが、流入量制御部51は、検出値T1が特定の範囲内に収まるように冷却媒体量調整弁V1の開度を調整してもよい。この場合、流入量制御部51は、検出値T1が前記特定の範囲の下限値よりも小さい場合に冷却媒体量調整弁V1の開度を下げ、検出値T1が前記特定の範囲の上限値よりも大きい場合に冷却媒体量調整弁V1の開度を上げる。
【0089】
また、上記実施形態では、還流比Rが指定還流比R0となるように抜出量制御部53が抜出量調整弁V4の開度を調整する例が示されたが、抜出量制御部53は、還流比Rが基準範囲内に収まるように抜出量調整弁V4の開度を調整してもよい。この場合、抜出量制御部53は、還流比Rが前記基準範囲の下限値よりも小さい場合に抜出量調整弁V4の開度を下げ、還流比Rが前記基準範囲の上限値よりも大きい場合に抜出量調整弁V4の開度を上げる。
【0090】
また、上記実施形態では、抜出流路14は、還流流路13のうち冷却器28の上流側に接続された例が示されたが、この抜出流路14は、還流流路13のうち冷却器28の下流側に接続されてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、冷却器28への冷却媒体の流入量の調整は、冷却媒体量調整弁V1の開度の調整により行う例が示されたが、この冷却媒体の流入量の調整方法は、これに限られない。例えば、冷却媒体流路29に回転数の調整が可能なポンプが設けられ、このポンプの回転数の調整により冷却器28への冷却媒体の流入量の調整が行われてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、抜出流路14からの還流流体の抜出量の調整は、抜出量調整弁V4の開度の調整により行う例が示されたが、前記抜出量の調整方法は、これに限られない。例えば、抜出流路14に複数の配管が並列に接続されるとともに、これらの配管に開閉弁が設けられ、各開閉弁を開く数によって前記抜出量が調整されてもよい。