(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158151
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】パラシュート
(51)【国際特許分類】
B64D 17/02 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
B64D17/02
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-167431(P2014-167431)
(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公開番号】特開2016-43730(P2016-43730A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】514186216
【氏名又は名称】三木 康至
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木 康至
【審査官】
前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0114332(US,A1)
【文献】
実開昭63−44899(JP,U)
【文献】
実開昭62−201189(JP,U)
【文献】
特開昭52−118791(JP,A)
【文献】
特開2000−344199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 17/00
A63H 33/20
B63B 21/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の抵抗を受ける袋状の抵抗体と、それぞれの一端が前記抵抗体に接続され、それぞれの他端が制動対象に接続可能な2本の吊索とを備えるパラシュートであって、
前記抵抗体が、前記空気が通過する開口部と、該開口部と対向する側に設けられる底部と、該底部から前記開口部の周縁に向けて拡開しながら延びて設けられる側部とを備え、
前記側部が、全体に亘って前記底部から略一定の高さを有する基部と、前記開口部の前記周縁のうち前記開口部の中心に対して互いに対称位置にある2つの端部のそれぞれを頂点にして、前記基部からそれぞれ縮幅しながら延びるテーパー状の2つの延出部とを備え、
前記2本の吊索のそれぞれの一端が、前記2つの延出部のそれぞれの端部に接続されるパラシュート。
【請求項2】
前記抵抗体が、前記開口部を閉じた状態の正面視において、略台形状に形成される請求項1記載のパラシュート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中や地上を移動する物体に接続されて、空気抵抗を利用して物体の移動速度を低下させるパラシュートに関する。
【背景技術】
【0002】
空中を降下する物体を、その降下速度をゆるやかにして安全に地上に着地させるために、たとえば特許文献1に開示されたパラシュートが用いられる。特許文献1のパラシュート100は、
図5に示されるように、空気抵抗で開き、空気抵抗を受けて物体104の降下速度を低下させる円形状の傘体101を備えている。パラシュート100は、円形状の傘体101を均等に開かせるために、傘体101の円周上縁部102にほぼ等間隔に複数の吊索103のそれぞれの一端が接続され、複数の吊索103のそれぞれの他端が、物体104に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−344199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のパラシュート100は、上述したように、円形状の傘体101を均等に開かせるために、非常に多くの吊索103を必要としている。特に、吊索103は、
図5(特許文献1の
図1参照)では7本描かれているが、図示するのに省略された吊索も含めると少なくとも12本設けられている計算になる。このように多数の吊索103があることによって、パラシュート100の使用時に吊索103が絡み合い、傘体101が均等に開かずに、降下速度が低下せずに物体104が落下してしまうという問題が生じる可能性がある。また、パラシュート100を収納する際に吊索103同士が絡み合ってしまうので、次に使用する際に絡み合った吊索103を解く必要が生じ、その作業が極めて煩雑となる。
【0005】
このような問題を解消するために、たとえば吊索103の数を減らして2本にすることも考えられる。しかし、上述したように、特許文献1のパラシュート100では、傘体101を均等に開かせるために吊索103は複数本あることが必須の要件であり、吊索103を2本にしてしまうと傘体101を均等に開かせることができない。具体的には、
図6に示されるように、傘体101には、傘体101内部の空気の抵抗によって円周上縁部102を均等に押し広げようとする力が働く一方で、円周上縁部102に接続された2本の吊索103の張力によって2本の吊索103が接続された箇所にのみ円周上縁部102を閉じる方向の力が働くので、その2箇所を結ぶ方向でのみ円周上縁部102が縮径し、円周上縁部102が8の字状に潰れてしまう(
図6(b))。
図5に示されるように円周上縁部102が均等に開いていれば、傘体101に向かって流れる空気はすべて円周上縁部102の内側を通って傘体101の内部に流れ込み、傘体101の外側が、傘体101に向かって流れる空気の抵抗を受けることはない。しかし、
図6に示されるように円周上縁部102が8の字状に潰れてしまうと、傘体101の円周上縁部102が縮径した外側部分が、傘体101に向かって流れる空気の抵抗を受けることになり(
図6(a)中、左右の矢印)、この空気の抵抗によって傘体101はさらに円周上縁部102を閉じる方向に力を受けることになる。結果的に、円周上縁部102がさらに歪に変形して開口面積が小さくなった傘体101は、十分な空気の抵抗を受けることができず、物体104の降下速度を十分に低下させることができない。
【0006】
また、吊索103が絡み合うことなく傘体101を均等に開かせるために、トレーニング用のパラシュートのように、布と一体となった吊索103を傘体101に接続するという方法もあるが、このような方法では、多量の布を用いるため、重量増をもたらすだけでなく、収納性の低下と製造コストの増加を招いてしまう。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであって、2本の吊索であっても十分な抵抗力を受けることができるパラシュートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパラシュートは、空気の抵抗を受ける袋状の抵抗体と、それぞれの一端が前記抵抗体に接続され、それぞれの他端が制動対象に接続可能な2本の吊索とを備えるパラシュートであって、前記抵抗体が、前記空気が通過する開口部と、該開口部と対向する側に設けられる底部と、該底部から前記開口部の周縁に向けて拡開しながら延びて設けられる側部とを備え、前記側部が、全体に亘って前記底部から略一定の高さを有する基部と、前記開口部の前記周縁のうち前記開口部の中心に対して互いに対称位置にある2つの端部のそれぞれを頂点にして、前記基部からそれぞれ縮幅しながら延びるテーパー状の2つの延出部とを備え、前記2本の吊索のそれぞれの一端が、前記2つの延出部のそれぞれの端部に接続されることを特徴とする。
【0009】
また、前記抵抗体が、前記開口部を閉じた状態の正面視において、略台形状に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2本の吊索であっても十分な抵抗力を受けることができるパラシュートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のパラシュートが制動対象である物体に接続された状態を模式的に示す図である。
【
図2】本発明のパラシュートの開口部が閉じた状態を模式的に示す図であり、(a)はパラシュートの正面図であり、(b)は抵抗体の底面図である。
【
図3】本発明のパラシュートの開口部が開口した状態を模式的に示す図であり、(a)はパラシュートの正面図であり、(b)は抵抗体の底面図である。
【
図4】本発明のパラシュートの開口部が開口した状態において、抵抗体が受ける力を模式的に示す図であり、(a)はパラシュートの正面図であり、(b)は抵抗体の底面図である。
【
図5】従来のパラシュートが物体に接続された状態を模式的に示す図である。
【
図6】従来のパラシュートの傘体に2本の吊索が接続されて使用されることを想定した状態を模式的に示す図であり、(a)は傘体の正面図であり、(b)は傘体の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明のパラシュートを説明する。
【0013】
本発明のパラシュートは、大気中や地上を移動する物体に接続されて、空気抵抗を利用して物体の移動速度を低下させる目的で使用される。本発明のパラシュートが適用され、制動対象となる物体としては、大気中や地上を移動する物体であればいかなるものであってもよいが、たとえば、飛行中の航空機などから大気中を降下する人間や物資、地上を走行するレーシングカー、着陸後の飛行機、ランニングトレーニング中のランナーなどが挙げられる。以下、本発明のパラシュートを、大気中を降下する物体に適用した例をもとに説明する。
【0014】
パラシュート1は、
図1に示されるように、大気中において空気の抵抗を受ける袋状の抵抗体2と、それぞれの一端が抵抗体2に接続され、それぞれの他端が制動対象である物体4に接続可能な2本の吊索3とを備えている。パラシュート1は、抵抗体2が空中で開口して受ける空気の抵抗力が、重力を受けた物体4から2本の吊索3を介して抵抗体2が受ける引張応力に対抗するように構成され、それによって空中を落下(移動)する物体4の落下(移動)速度を低下させる。
【0015】
袋状に形成された抵抗体2は、
図1に示されるように、空気が通過する開口部21と、開口部21と対向する側に設けられる底部22と、底部22から開口部21の周縁24に向けて拡開しながら延びて設けられる側部23とを備えている。
【0016】
開口部21は、
図1に示されるように、抵抗体2の物体4側に設けられ、物体4側を向いて開口している。空気は、開口部21を通過して抵抗体2の内部に流入し、また開口部21を通過して抵抗体2の外部に流出する。
【0017】
底部22は、
図1〜
図3に示されるように、開口部21と対向する側に設けられ、袋状に形成された抵抗体2の底に位置する部位である。底部22は、底部22の接線が開口部21の中心軸Xに対して略垂直になるように配置されており、主に、開口部21の中心軸X方向に平行な空気の抵抗力Dxを受ける(
図4参照)。底部22は、本実施形態では、中心軸Xに対して略垂直に延びる直線状の部位として示されているが、開口部21に対向する側に設けられ、抵抗体2の底に位置すれば、その形状が直線状に限定されることはなく、点状や面状など他の形状であっても構わない。
【0018】
側部23は、
図1に示されるように、底部22から開口部21の周縁24に向けて拡開しながら延びており、
図3に示されるように、開口部21の中心軸Xに対して傾斜して設けられている。中心軸Xに対して傾斜して設けられる側部23は、
図4(a)に示されるように、中心軸X方向と、中心軸Xに対して垂直な方向とに分解される空気の抵抗力Dx、Dyを受ける。側部23が受ける中心軸X方向の抵抗力Dxは、上述した底部22が受ける抵抗力Dxとともに、吊索3を介して物体4から受ける引張応力のうち中心軸X方向の分力Txに対抗する。一方、側部23が受ける中心軸X方向に対して垂直な方向の抵抗力Dyは、開口部21を開口させると同時に、吊索3を介して物体4から受ける引張応力のうち中心軸Xに対して垂直な方向の分力Tyに対抗する。
【0019】
また、側部23は、
図1および
図3に示されるように、開口部21が開口した状態において、全体に亘って底部22から中心軸X方向に略一定の高さを有する基部23aと、開口部21の周縁24のうち開口部21の中心に対して互いに対称位置にある2つの端部のそれぞれを頂点にして、基部23aからそれぞれ縮幅しながら延びるテーパー状の2つの延出部23bとを備えている。なお、
図1および
図3中、基部23aと延出部23bとの境界をわかりやすくするために2点鎖線で示している。側部23は、基部23aから延びる延出部23bを備えることで、その全周のうち延出部23bが設けられた周部分において、他の周部分と比べて、延出部23bの分だけ空気の抵抗を受ける面積が大きくなり、より大きな空気の抵抗を受ける。以下に詳しく述べるが、より大きな空気の抵抗を受けるこの周部分に2本の吊索3が接続されることによって、抵抗体2は、物体4の降下速度を低下させるのに十分な空気の抵抗を受けることができる。なお、側部23は、本実施形態では、開口部21が開口した状態でのみ延出部23bを備えるように構成されているが、開口部21が開口した状態で延出部23bを備えていればよいので、開口部21が閉じた状態でも延出部23bを備えるように構成されていても構わない。
【0020】
上述した側部23を形成するために、抵抗体2は、
図2に示されるように、平面状の2枚の布またはシートが、開口部21の周縁24に対応する部分を除く外周部分で接合されて作製される。本実施形態では、抵抗体2は、略台形状の2枚の布またはシートが接合されて、開口部21を閉じた状態の正面視において、略台形状に形成される。ここで、抵抗体2は、開口部21が開口した状態において延出部23bを備えるように構成されていれば、開口部21を閉じた状態の正面視の形状は特に限定されることはなく、たとえば正面視が略三角形や略半円形など他の形状に形成されても構わない。ただし、抵抗体2は、正面視が略台形状に形成されることにより、正面視が、中心軸X方向における高さが略台形状と同じ略三角形状や略半円形状の場合と比べて、基部23aの深い領域が増えるので、抵抗体2が全体的に広がる方向により大きな力を受けることになり、正面視の面積が大きい分だけ
図3(b)中における上下左右の揺動がより抑えられる。なお、上述した正面視とは、開口部21の中心軸Xと、2つの延出部23bのそれぞれの端部を結ぶ直線との両方に垂直な方向から抵抗体2を見た状態をいう。
【0021】
抵抗体2の大きさや材質は、物体4の降下速度を低下させるように抵抗体2が空気の抵抗を受けることができれば、いかなる大きさや材質であってもよく、特に限定されることはない。その大きさは、たとえば空中を降下する物体4の大きさや重量に対して必要な抵抗力に応じて設定することができる。また、その材質は、たとえばポリ塩化ビニルなどの公知の合成樹脂を採用することができる。抵抗体2の製造方法もまた、上述した抵抗体2の構成を得ることができれば、上記方法に限定されることはなく、たとえば1枚の布またはシートから作製したり、平面状でない湾曲した布またはシートから作製したりするなど、他の方法を採用しても構わない。
【0022】
2本の吊索3は、
図1および
図3に示されるように、それぞれの一端が、2つの延出部23bのそれぞれの端部に接続されている。そして、2本の吊索3は、それぞれの他端が物体4に接続されることによって、物体4が受ける重力による引張応力を抵抗体2に伝達する。2本の吊索3は、
図4(a)に示されるように、伝達される引張応力から、中心軸Xに平行に物体4側を向く分力Txと、中心軸Xに垂直に抵抗体2の内部側を向く分力Tyとを生じさせるように、抵抗体2に接続されている。2本の吊索3のそれぞれの一端が2つの延出部23bのそれぞれの端部に接続されることによって、側部23の全周のうち延出部23bの設けられた周部分が、物体4による引張応力を集中して受けることになる。その一方で、側部23の全周のうち延出部23bが設けられた周部分は、上述したように、他の周部分と比べてより大きな空気の抵抗力を受ける。したがって、延出部23bが設けられた周部分において、より大きな空気の抵抗力が、集中する物体4の引張応力に対抗することができる。特に、2本の吊索3を介して受ける引張応力のうち中心軸Xに対して垂直な方向の分力Tyに対して、中心軸X方向に対して垂直な方向の空気の抵抗力Dyが抗することにより、開口部21は、歪に変形することなく開口を維持することができる。したがって、抵抗体2は、上述した従来の傘体101に2本の吊索103を接続した場合(
図6参照)とは異なり、開口部21が歪に変形することがないので、吊索3が2本のみであっても、物体4の降下速度を低下させるのに十分な空気の抵抗を受けることができる。
【0023】
2本の吊索3のそれぞれの一端は、本実施形態では抵抗体2に直接接続されているが、抵抗体2に接続されれば接続方法は特に限定されることはなく、たとえば他の補助索等を介して抵抗体2に間接的に接続されても構わない。また、2本の吊索3のそれぞれの他端もまた、本実施形態では物体4に直接接続されているが、物体4に接続可能であればその接続方法は限定されることはなく、たとえばクッションの役割を持たせた1本の吊索等にまとめて接続されても構わない。さらに、2本の吊索3は、抵抗体2が受ける空気の抵抗力や物体4による引張応力によって損傷しない程度の強度を有するものであればいかなるものであってもよく、たとえばポリエステル系やポリエチレン系などの合成樹脂で作製された公知のロープを用いることができる。また、その長さや太さも、特に限定されることはなく、吊索3に接続される抵抗体2や適用される物体4に応じて設定することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 パラシュート
2 抵抗体
21 開口部
22 底部
23 側部
23a 基部
23b 延出部
24 周縁
3 吊索
4 物体(制動対象)
Dx 中心軸方向の空気の抵抗力
Dy 中心軸に対して垂直な方向の空気の抵抗力
Tx 中心軸方向の引張応力
Ty 中心軸に対して垂直な方向の引張応力
X 中心軸