特許第6158164号(P6158164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6158164セキュリティ書類の認証のための無線周波数波吸収マーカーの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158164
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】セキュリティ書類の認証のための無線周波数波吸収マーカーの使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/50 20140101AFI20170626BHJP
   B42D 25/36 20140101ALI20170626BHJP
   B42D 25/378 20140101ALI20170626BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20170626BHJP
   G07D 7/06 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   C09D11/50
   B42D15/10 360
   B42D15/10 378
   G06K7/10
   G07D7/06
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-501656(P2014-501656)
(86)(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公表番号】特表2014-517085(P2014-517085A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2012055806
(87)【国際公開番号】WO2012131045
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年1月13日
【審判番号】不服2016-14337(P2016-14337/J1)
【審判請求日】2016年9月26日
(31)【優先権主張番号】11382093.0
(32)【優先日】2011年4月1日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/493,078
(32)【優先日】2011年6月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513246436
【氏名又は名称】ファブリカ、ナシオナル、デ、モネダ、イ、ティンブレ−レアル、カサ、デ、ラ、モネダ
【氏名又は名称原語表記】FABRICA NACIONAL DE MONEDA Y TIMBRE−REAL CASA DE LA MONEDA
(73)【特許権者】
【識別番号】593005895
【氏名又は名称】コンセホ・スペリオール・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス(シーエスアイシー)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ホセ、ロメロ、ファネゴ
(72)【発明者】
【氏名】ビセンテ、ガルシア、フエス
(72)【発明者】
【氏名】ホセ、フランシスコ、フェルナンデス、ロサーノ
(72)【発明者】
【氏名】ハビエル、ガモ、アランダ
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル、アンヘル、ロドリゲス、バルベロ
【合議体】
【審判長】 冨士 良宏
【審判官】 國島 明弘
【審判官】 日比野 隆治
(56)【参考文献】
【文献】 特表10−509815(JP,A)
【文献】 特開2003−248790(JP,A)
【文献】 特表2003−515622(JP,A)
【文献】 特開2010−135567(JP,A)
【文献】 特開2008−98102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00〜11/54
B42D 25/00〜25/485
G06K 7/00〜 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物材料の少なくとも2つのタイプの粒子の組合せを含む組成物の、セキュリティ書類又は物品を調製する又はマーキングするための使用であって、
前記少なくとも2つのタイプの粒子の各々が、異なる平均の大きさ及び/又はモルホロジーを有し、かつ粒径分布の変動が平均粒径の20%未満であり、
前記無機酸化物材料が、少なくとも1種の遷移金属又は1種のランタニド元素と、前記無機酸化物材料のそれぞれに特異的な強度及びバンド幅によって特徴付けられた無線周波数波吸収特性とを有する、使用。
【請求項2】
無機酸化物材料の少なくとも2つのタイプの粒子の組合せを含むセキュリティ組成物であって、
前記少なくとも2つのタイプの粒子の各々が、異なる平均の大きさ及び/又はモルホロジーを有し、かつ粒径分布の変動が平均粒径の20%未満であり、
前記無機酸化物材料が、少なくとも1種のランタニド元素と、前記無機酸化物材料のそれぞれに特異的な強度及びバンド幅によって特徴付けられた無線周波数波吸収特性とを有する、セキュリティ組成物。
【請求項3】
無機酸化物材料の少なくとも2つのタイプの粒子の組合せを含む組成物を含むセキュリティ物品、書類又は要素であって、
前記少なくとも2つのタイプの粒子の各々が、異なる平均の大きさ及び/又はモルホロジーを有し、かつ粒径分布の変動が平均粒径の20%未満であり、
前記無機酸化物材料が、少なくとも1種の遷移金属又は1種のランタニド元素と、前記無機酸化物材料のそれぞれに特異的な強度及びバンド幅によって特徴付けられた無線周波数波吸収特性とを有する、セキュリティ物品、書類又は要素。
【請求項4】
前記少なくとも2つのタイプの粒子が同じ化学組成を有する、請求項3に記載のセキュリティ物品、書類又は要素。
【請求項5】
前記組成物が、3KHz〜300GHzの間の周波数に、少なくとも2つの無線周波数波吸収バンドを有する、請求項3又は4のいずれかに記載のセキュリティ物品、書類又は要素。
【請求項6】
前記無機酸化物材料が結晶構造を有する、請求項3ないし5のいずれかに記載のセキュリティ物品、書類又は要素。
【請求項7】
前記無機酸化物材料が、ウルツ鉱、スピネル、フェライト、ざくろ石(ガーネット)又はペロブスカイト型の構造を有する、請求項3ないし6のいずれかに記載のセキュリティ物品、書類又は要素。
【請求項8】
前記粒子、又は前記粒子の凝集体が、1〜45μmの間の平均の大きさを有する、請求項3ないし7のいずれかに記載のセキュリティ物品、書類又は要素。
【請求項9】
身元確認書類、銀行券、小切手、印紙及び印紙が印刷された紙、ラベル、並びにチケットから選択される、請求項3ないし8のいずれかに記載のセキュリティ物品又は書類。
【請求項10】
セキュリティ・ペーパー、紙パルプ、セキュリティ糸、セキュリティ繊維、セキュリティ・インク、透かし、触感効果体、セルロース・ストリップ、プランシェット、ホログラム、セキュリティ染料又は物質、プラスチック・フィルム、ポリマー基材から選択される請求項3ないし8のいずれかに記載のセキュリティ要素。
【請求項11】
請求項3ないし10のいずれかに記載のセキュリティ書類、物品又は要素の真正性を決定するための方法であって、
無機酸化物材料の少なくとも2つのタイプの粒子の組合せを含み、前記少なくとも2つのタイプの粒子の各々が、異なる平均の大きさ及び/又はモルホロジーを有し、かつ粒径分布の変動が平均粒径の20%未満であり、
前記無機酸化物材料が、少なくとも1種の遷移金属又は1種のランタニド元素と、前記無機酸化物材料のそれぞれに特異的な強度及びバンド幅によって特徴付けられた無線周波数波吸収特性とを有する組成物の存在を決定するために、前記セキュリティ書類、物品又は要素の無線周波数吸収を測定することを含む方法。
【請求項12】
(a)前記セキュリティ書類、物品又は要素を、無線周波数放射により照射すること;及び
(b)前記セキュリティ書類又は物品を横切る無線周波数放射の吸収を決定すること;を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(a)前記セキュリティ書類、物品、又は要素を無線周波数放射により照射すること;
(b)前記セキュリティ書類、物品、又は要素を横切った後の無線周波数放射の強度を測定すること;
(c)自由空間領域を横切った後の無線周波数放射の強度を測定すること;及び
(d)前記セキュリティ書類、物品、又は要素を横切る無線周波数放射の吸収を決定するために、ステップ(b)及び(c)の信号の強度を比較すること;
を含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記セキュリティ書類、物品、又は要素を照射するために用いられる無線周波数放射が、3KHz〜300GHzの間の周波数を有する、請求項11ないし13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
− 無線周波数放射送信アンテナ(2)、
− 第1の無線周波数放射信号受信アンテナ(3)、
− 第2の基準無線周波数放射受信アンテナ(1)、
を含み、
前記第1及び第2の受信アンテナ(1、3)が前記送信アンテナ(2)の両側に配置され、前記送信アンテナ(2)と前記第1の受信アンテナ(3)との間に、分析される書類(5)を支持するための支持手段(4)が存在し、このため、運転モードにおいて前記書類(5)が前記支持(4)に存在する場合、前記書類(5)は、前記送信アンテナ(2)と前記第1の受信アンテナ(3)との間に置かれ、さらに、
− 計算手段(6)、
− 前記第1の受信アンテナ(3)に接続され、測定された信号の値を前記計算手段(6)に送るのに適する、第1の信号読み取り手段(7)、
− 前記第2の受信アンテナ(1)に接続され、測定された基準値を前記計算手段(6)に送るのに適する、第2の信号読み取り手段(8)、
を有し、
前記計算手段(6)が、出力(9)を有し、前記第1の受信アンテナ(3)において測定された信号の値と、前記第2の受信アンテナ(1)において測定された基準信号の値との間の値の差が、予め決められた範囲にあるかどうかを決定し、その結果を前記出力(9)に送るように構成されている、請求項3ないし10のいずれかに記載のセキュリティ書類、物品、又は要素の真正性を決定するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ書類又は物品(articles)における認証又は偽造防止特質の担体として使用され得る、不活性化できない(non-deactivatable)セキュリティ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティ書類又はセキュリティ・ペーパーは、その由来、したがってその真正性を確信させる特定の特質を有するものと定義され得る。これらのセキュリティ書類は、特に、渡航及び身元確認書類、銀行券、小切手、印紙(stamp)及び印紙が印刷された紙(stamped paper)、ラベル又はチケットを含む。
【0003】
セキュリティ要素(security element)は、セキュリティ書類に、そのパルプ中で(例えば、セキュリティ糸、セキュリティ繊維、透かし、触感効果体(tactile effect)、若しくは一般的に用いられる他の要素)、又はその表面上で(例えば、様々な紙幣及びクレジットカードに付加されるホログラム、セキュリティ・インク、プラスチック・フィルム若しくは一般的に用いられる他の要素)、一体化され、ランダムに分布されるか、又は書類の特定の位置に固定され、それを含む書類にセキュリティ上の特質を付与するものとして定義でき、これらの特質は、それらの目的が、セキュリティ書類の偽造を防ぐこと、又はセキュリティ書類の認証を容易にすることであるという条件で、非常に様々であることが可能である。
【0004】
様々なセキュリティ要素の使用が、この分野における特許の数によって分かるように、近年、拡大している。
【0005】
これらの要素のいくつかは、人が直接感知できるのに対して、書類に組み入れられている他のセキュリティ要素は、それらの検知に、特殊な道具の使用を必要とする。分りやすい例は、認知のために特殊な光(例えば、紫外線)の使用を必要とし、様々なセキュリティ書類に存在するルミネセンス物質又は染料である。
【0006】
セキュリティ書類の真正性を保証するための、ルミネセンス物質又は染料の使用は、これまで長い間知られている(例えば、1925年のドイツ特許第449133号)。
【0007】
書類の真正性を保証するための、この種のルミネセンス物質又は染料の使用は、いくつかの欠点を示す。最大の欠点の1つは、この用途に適する特性を有する光学的遷移(吸収及び放出)の総数が限られていることである。特許US 4451530に記載されているように、セキュリティ染料又は物質は、好ましくは狭いバンドの、明確に定まった周波数に中心がある光放出を示さなければならない。これらの特性は、書籍「An introduction to the Optical Spectroscopy of Inorganic Solids」(J.Garcia Sole、L.E.Bausa、D.Jaque、(C)2005 John Wiley & Sons,Ltd ISBNs:0−470−86885−6(HB);0−470−86886−4(PB))に示されているように、いわゆる希土類元素(3+の原子価を有するランタニド)のファミリーにある。全ての希土類元素の光学的特性は、Diekeのダイヤグラム[Dieke,G.H.、「Spectra and Energy Levels of Rare Earth Ions in Crystals」(Interscience、New York(1968))]として一覧表にされており、このように、それらは、知られており、限られていて、それらの特質は、それらはコード化される要素として使用され得ないので、脆弱性による高いリスクを含み、応用の範囲を制限する。
【0008】
品物をマーキングするための、特定の磁気応答を有する材料の使用もまた、よく知られている。可能な用途の1つは、大きなバルクハウゼン不連続を有するヒステリシスサイクルを示す軟磁性材料、例えば特許US 7336215 B2に記載されているもの、の使用である。この場合、それらは、通常は金属又は金属合金をベースとする、軟磁性材料から製造されるワイヤであり、数十分の一ミリメートルの直径を有する。
【0009】
磁気応答に基づく盗難防止マーカーは、通常、かなり大きく、数ミリメートル又は数センチメートルの大きさを有し、保護される製品に様々な方法で結び付けられる。特許US 4484184は、決められた周波数で振動する磁場に特別な応答をする軟磁性材料の使用に基づくこれらの盗難防止マーカーの1つを記載する。このマーカーは、数ミリメートルの大きさを有するので、その存在は肉眼で検知できる。さらに、一般に、これらの盗難防止マーカーは、通常、それらの形状に大いに頼る性能を有し、その結果、それらが形を損ねられた時、それらは、それらの機能を失い得る。
【0010】
盗難防止磁性マーキング・システムは、呼びかけ交番電磁場に応答して、決められた周波数を有する電磁場を生成することに基づいており、それは、簡単な方法で遠隔検知することを可能にする。これらのマーカーは、その目的のための適切な磁場を印加することによって、活性化及び不活性化され得る。この特質は、店舗において製品をマーキングし、盗難を防止するために非常に有用であるが、セキュリティ書類におけるマーカーとしてのその使用を制限する。
【0011】
マイクロ波領域で動作するセキュリティ要素のための検知システムに関する様々な特許が存在する。この意味で、特許WO 9927502は、電気双極子として振る舞う粒子のための、携帯用の大きさのマイクロ波検知器を記載する。このデバイスは、前記粒子を含む書類に当たる無線周波数波(radiofrequency wave)の反射及び透過を測定し、得られる測定値を用いて、書類の真正性を決定するために、前もって基準値として保存されていることを必要とする値と比較する、別の動作を行う。しかし、この検知システムは、十分にロバストでなく、フォールスポジティブを生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、肉眼によっては知覚されず、コード化でき、不活性化できない新しいタイプのセキュリティ・マーカー、さらには、それらの検知のためのロバストなシステム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、異なる大きさ及び/又はモルホロジー(morphology)を有する無機酸化物材料の少なくとも2つのタイプの粒子の組合せは、無機酸化物材料が、少なくとも1種の遷移金属又は1種のランタニド元素を含む場合、無線周波数の電磁波を吸収する一定の能力を有する、安定で不活性化できないセキュリティシステムを提供することを見出した。
【発明の効果】
【0014】
吸収特性は、粒子の大きさ及びモルホロジーにより変わるので、セキュリティシステムは、それが、異なる大きさ及び/又はモルホロジーの粒子のタイプ数を有するのと同じだけ多くの信号を有するであろう。このことにより、セキュリティシステムの信頼性を、それらが少なくとも2つの特定の吸収バンドを有するであろうという理由で、増大させること、さらには、偽造者がセキュリティシステムを特定することを、用いられている粒子タイプのそれぞれの化学組成並びに特定の大きさ及び/又はモルホロジーを明らかにすることが必要であると思われるという理由で、妨げること、が可能になる。さらに、組合せの吸収特性を定める多数の変数を考慮に入れると、このシステムは、実質的に無数の、唯一であるセキュリティ・マーカーを生じる。
【0015】
さらに、無線周波数(RF)放射は、UV放射のような他の種類の放射より大きな侵入力を有するので、無線周波数波吸収特性を有する無機酸化物材料を用いることは、セキュリティ書類の内部のマーカーを、より正確な仕方で検知することを可能にし得る。無線周波数は、簡単な非接触システムによって検知され得るし、数メートルまで離れて使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
結果として、一態様において、本発明は、無機酸化物材料の少なくとも2つのタイプの粒子の組合せを含み、少なくとも2つのタイプの粒子のそれぞれが、異なる大きさ及び/又はモルホロジーを有し、また、無機酸化物材料が、少なくとも1種の遷移金属又は1種のランタニド元素を含む、組成物を含むセキュリティ要素、物品又は書類に関する。
【0017】
本発明のセキュリティ組成物は、RF波吸収特性を有し、その結果、セキュリティ物品又は書類の真正性を決定するために使用され得る。
【0018】
第2の態様において、本発明は、セキュリティ物品又は書類を調製(prepare)する又はマーキングするための、本発明のセキュリティ組成物の使用に関する。
【0019】
別の態様において、本発明は、本発明のセキュリティ組成物を含む、セキュリティ書類、物品又は要素に関する。
【0020】
別の態様において、本発明は、無機酸化物材料の少なくとも2つのタイプの粒子の組合せを含み、少なくとも2つのタイプの粒子のそれぞれが、異なる大きさ及び/又はモルホロジーを有し、また、無機酸化物材料が、少なくとも1種の遷移金属又は1種のランタニド元素を含む、組成物の、RF吸収を測定することを含む、セキュリティ書類又は物品を認証するための方法に関する。
【0021】
別の態様において、本発明は、セキュリティ書類又は物品における本発明のセキュリティ組成物の存在を検知するための装置に関する。
【0022】
本発明の特徴を、その好ましい実施形態により、より良く理解する助けとなるように、以下の1組の図の記述がなされ、以下は、説明のために記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の検知対象のためのシステムの概略図を示す。
図2】基準アンテナ、試料アンテナで検知される信号、及び2つの信号の間の差をそれぞれ示す3つのグラフを示す。
図3】3つの異なる周波数に3つの吸収ピークを有するマーカーを有する書類に適用された、本発明のシステムを用いる測定の例を示す。
【0024】
組成物
本発明は、無機酸化物材料の少なくとも2つのタイプの粒子の組合せを含み、少なくとも2つのタイプの粒子のそれぞれが、異なる大きさ及び/又はモルホロジーを有し、また、無機酸化物材料が、少なくとも1種の遷移金属又は1種のランタニド元素、及び無線周波数波吸収特性を有する、セキュリティ組成物に関する。
【0025】
用語「セキュリティ組成物」又は「本発明の組成物」は、無機酸化物材料の少なくとも2つのタイプの粒子の組合せを含み、少なくとも2つのタイプの粒子のそれぞれが、異なる大きさ及び/又はモルホロジーを有し、また、無機酸化物材料が、少なくとも1種の遷移金属又は1種のランタニド元素を有し、及び無線周波数波吸収特性を示す、組成物に関する。
【0026】
本出願における用語「組合せ」は、少なくとも2つのタイプの粒子の物理的混合物に関する。
【0027】
本発明によれば、用語「酸化物材料」は、−2の酸化状態の1個又はいくつかの酸素原子、及び他の元素を含む任意の無機化合物に関する。
【0028】
特定の実施形態によれば、無機酸化物材料の少なくとも2つのタイプの粒子は、同じ化学組成を有し、そのため、それらは、前記粒子の大きさ及び/又はモルホロジーにおいてのみ異なる。
【0029】
別の実施形態によれば、組成物のそれぞれのタイプの粒子は、異なる化学組成を有する。
【0030】
本発明の特定の実施形態において、セキュリティ組成物は、異なる大きさ及び/又はモルホロジーを有する、2つ、3つ又は4つのタイプの粒子を含む。
【0031】
用語「無線周波数」(RF)は、約3KHz〜約300GHzの範囲の電磁波に関する。
【0032】
本発明のセキュリティ組成物を構成する酸化物材料粒子は、好ましくは約3KHz〜約300GHzの間に限定されたRF波吸収特性を有する。特定の実施形態によれば、それらは、約1MHz〜約100GHzの間、好ましくは約1〜100GHzの間の無線周波数で、電磁波を吸収する。
【0033】
特定の実施形態において、本発明のセキュリティ組成物は、特定の周波数に限定された少なくとも2つの放出バンドを有する。
【0034】
本発明の組成物の粒子を構成する酸化物材料は、好ましくはそれらの組成中に、少なくとも1種の遷移金属及び/又は1種のランタニド元素を有する。
【0035】
遷移金属、又は遷移元素は、d軌道に収容された電子を有するもの、例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt又はAuである。本発明の特定の実施形態によれば、遷移金属は、Co、Fe、Zn、V、Nb、Cr、Ni、Pt及びTiから選択される。
【0036】
ランタニド元素は、周期表の第6周期の一部を構成するものであり、原子番号57〜71、すなわち、Ln、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuを含む。本発明の特定の実施形態によれば、ランタニド元素は、Sm、Nd、Ho、Ce及びPrから選択される。
【0037】
明確に定まったRF波吸収特性を有する、前もって合成された酸化物材料が、本発明において使用され得る。本発明において用いられる酸化物材料は、好ましくは、結晶構造を有する。特定の実施形態において、本発明に用いられる酸化物材料は、ウルツ鉱、スピネル、フェライト、ざくろ石(garnet)又はペロブスカイト(perovskite)型の構造体から独立に選択される。
【0038】
特定の実施形態において、酸化物材料は、それらの組成中に、少なくとも1種の遷移金属及び/又は1種のランタニド元素を含み、好ましくは、ウルツ鉱、スピネル、フェライト、ざくろ石又はペロブスカイト型の結晶構造を有する。
【0039】
ウルツ鉱構造を有する材料は、一般化学式MO(式中、Mは、遷移金属を表す)を有するもの、例えば、ZnO、FeO、TiOに関する。
【0040】
スピネル構造を有する材料は、一般化学式ABを有するものに関し、式中、Aは、2価の元素、例えば、アルカリ土類元素、ランタニド又は遷移金属(例えば、Mg、F、Mn、Zn)を表し、Bは、3価の元素、例えば、周期表の13族の元素、遷移金属又は希土類元素(例えば、Al、Cr、Fe)を表す。この型の材料の特別な例は、CoFe、FeCrである。
【0041】
フェライト型構造を有する材料は、一般化学式(XO)(Yを有するものに関し、式中、Xは、2価の元素、例えば、アルカリ土類元素、遷移金属若しくは希土類元素又はこれらの混合であり;Yは、3価の元素、例えば、周期表の13族の元素、遷移金属又は希土類元素(例えば、Fe、Al)であり;m及びnは、任意の整数値(好ましくは1〜20の間)を有することができる。この型の材料の例として、BaCoZnFe1627が挙げられ得る。
【0042】
ざくろ石型構造を有する材料は、一般式A(DOを有するものに関し、式中、Aは、アルカリ元素、アルカリ土類元素、遷移金属若しくはランタニド又はこれらの混合を表し;Bは、遷移金属、ランタニド若しくはケイ素又はこれらの混合を表し;また、Dは、ケイ素、バナジウム、アルミニウム若しくは鉄又はこれらの混合を表す。この型の材料の可能な例として、(Bi0.75Ca1.21.05)(V0.6Fe4.4)O12が挙げられ得る。
【0043】
ペロブスカイト型構造を有する材料は、一般式ABOを有するものに関し、式中、Aは、アルカリ元素、アルカリ土類元素又はランタニドを表し、Bは、Si、Ge、Sn、I又は遷移金属を表す。この型の材料の可能な例は、固溶体(1−x)NaNbO・xPbTiOの部分を構成するものである。
【0044】
これらの酸化物材料の粒子は、この種の製法及び材料の専門家によって知られている通常の様々な方法によって、特に、セラミック、メカノケミカル、化学若しくは電気化学の方法、又は、物理若しくは化学気相堆積法によって、合成され得る。本発明での粒子のモルホロジー及び大きさは、化学的方法による製造法において、例えば、適切な界面活性剤を用い、合成プロセス自体の間に、又は、制御された粉砕プロセスを実施して、大きな塊の材料から、粒径を小さくすることによって、選択され得る。これらの酸化物材料は、等方的又は異方的モルホロジーを有する、粒子の状態で調製される。
【0045】
本発明の特定の実施形態は、酸化物材料のサブミクロンの大きさの、特にナノメートルの大きさの粒子の使用を含む。この場合、酸化物材料の粒子は、より大きな粒子に担持若しくは固定される(その目的のために、例えば、特許出願WO 2010/010220に記載されている技法を用いて)、又は、対象の領域で電磁波吸収を示さない他の材料に埋め込まれる。
【0046】
本発明の文脈において、用語「粒子」は、平均の大きさがマイクロメートル又はナノメートルであり、好ましくは、平均の大きさが1nm〜50μmの間に含まれる構造物に関する。本発明での粒子は、好ましくは、1μm〜50μmの間の大きさを有し;粒子がナノメートル、すなわち、1〜1000nmの間の平均の大きさを示す場合でも、実際には、このような粒子は、平均の大きさが1μm〜50μmの間である凝集体(aggregate)を生成する。
【0047】
より好ましくは、本発明での酸化物材料の粒子、又は粒子の凝集体は、1〜45マイクロメートルの間、好ましくは2〜20マイクロメートルの間の平均の大きさを有する。代わりに、これらの粒子は、明確に識別できる、より小さい粒子の組合せによって、前記組合せの凝集体の大きさが前記の大きさの範囲内にあるという条件で、構成されていてもよい。
【0048】
好ましくは、粒径分布の変動は、平均粒径の20%未満である。この大きさの変動は、決まった周波数での吸収が、本発明のセキュリティ組成物を構成する酸化物材料のそれぞれに特異的な強度及びバンド幅によって特徴付けられることを保証する。
【0049】
特定の実施形態において、酸化物材料の粒子は、球状、疑似球状、テーパー、ラミナー、疑似ラミナー(pseudolaminar)、微小繊維状(fibrillar)、多面体状及びプレートレットの間から独立に選択されるモルホロジーを有する。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、セキュリティ要素は、2つのタイプの粒子を、1:1〜20:1の間、好ましくは、1:1〜10:1の間、より好ましくは、1:1〜5:1の間、又は1:1〜3:1の間の重量比で含む。
【0051】
セキュリティ要素を構成する酸化物材料は、それらの組成並びにそれらのモルホロジー及び大きさによって決められる、明確に定まったRF波吸収特性を示すことによって特徴付けられる。
【0052】
RF波吸収特性を示す酸化物材料は、当技術分野においてよく知られている。とは言っても、ある酸化物材料がRF波吸収特性を示すかどうかは、当業者に知られている様々な周波数選択性装置(例えば、周波数分析装置又はオシロスコープに接続された、特別設計のアンテナ)を用いる適切な測定によって、容易に決定できる。
【0053】
これらの酸化物材料が電磁場吸収を示す周波数は、それらの特定の組成によって決められ、組成の変更によって、例えば、様々な量の別のイオンを添加することによって、変えられ得る。このように、例えば、前記のペロブスカイトのファミリーである(1−x)NaNbO・xPbTiOの場合、xの値を0.15〜0.24の間で変更することによって、吸収周波数は、8.8GHzから9.2GHzに変えられ得る。
【0054】
同じ組成及び異なる粒径を有する2つの酸化物材料は、異なる吸収特性を有する。こうして、例えば、フェライトであるBaCoZnFe1627の場合、3ミクロンの粒子での14.5GHzから、下は320nmの粒子での11.5GHzまでの、吸収が起こる周波数における変動がある。
【0055】
同様に、異なるモルホロジーの粒子を有する2つの酸化物材料もまた、異なる電磁波吸収を示すであろう。こうして、例えば、ZnOの場合、電磁波吸収周波数は、マイクロ粒子を用いる代わりに、ナノテトラポッドが用いられる時、16から12GHzまで低下する。
【0056】
本発明のさらなる態様は、無機酸化物材料の少なくとも2つのタイプの粒子の組合せを含み、少なくとも2つのタイプの粒子のそれぞれが、異なる大きさ及び/又はモルホロジーを有し、無機酸化物材料が、少なくとも1種の遷移金属又は1種のランタニド元素、及び上で定義されたRF波吸収特性を有する組成物の、セキュリティ書類又は物品を調製する又はマーキングするための、使用に関する。
【0057】
本発明のセキュリティ組成物は、少なくとも2つの無機酸化物材料の組合せを含み、それぞれが、その組成に、少なくとも1種の遷移金属又はランタニド元素を含み、異なる大きさ及び/又はモルホロジーを有し、その結果、明確に識別できる吸収特性を有する。セキュリティ組成物は、異なる大きさを有する粒子、又は異なるモルホロジーを有する粒子、又は異なる大きさ及びモルホロジーを有する粒子のいずれかによって構成され、目標とする、明確に規定され、再現性のある混合物を生じるであろう。酸化物材料の粒子のこの組合せは、コード化できるセキュリティ・マーカーを構成する。こうして、例えば、異なるモルホロジー又は大きさを有する2つの酸化物材料粒子は、それらが、同じ化学組成を有する酸化物材料によって構成されているとしても、異なる吸収特性を有するであろう。これは、セキュリティ・マーカーの複雑さを、それが、その組成と、それを構成する粒子の大きさ及び/又はモルホロジーの両方によって特徴付けられるという理由で、増大させる。
【0058】
セキュリティ組成物の例は、それぞれの粒径が異なる2つ以上の異なる酸化物材料の粒子を含み得る。この例の特定の実施形態は、2ミクロンの粒径を有するスピネルのCoFeと、3ミクロンの粒径を有するざくろ石(Bi0.75Ca1.21.05)(V0.6Fe4.4)O12との50重量%混合物であり得る。このセキュリティ組成物は、2つの明確に識別できる吸収バンドを示す。
【0059】
セキュリティ組成物の別の例は、1つの酸化物材料の粒子と、同じ酸化物材料で、粒径は異なるが、全てのタイプで同じモルホロジーを有する粒子との、2つ以上のタイプの組合せを含み得る。この例の特定の実施形態は、3及び0.3ミクロンの大きさを有するBaCoZnFe1627の球状粒子の組合せであり得る。
【0060】
セキュリティ組成物の別の例は、1つの酸化物材料の粒子と、モルホロジーは異なるが、その最大寸法によれば同じ粒径を有する同じ酸化物材料の粒子との、2つ以上のタイプの組合せを含み得る。この例の特定の実施形態は、3ミクロンの大きさを有するBaCoZnFe1627の球状粒子と、長さが3ミクロンで直径が1ミクロンのBaCoZnFe1627の先細り粒子との組合せであり得る。
【0061】
セキュリティ組成物の別の例は、明確に規定されたモルホロジー及び粒径を有する1種又は複数の特定の酸化物材料の粒子と、明確に規定された2つ以上の粒径及び前記と同じモルホロジーを有する別の酸化物材料の2つ以上の粒子との組合せを含み得る。この例の可能な実施形態は、直径2ミクロンのスピネルCoFeの30重量%の球状粒子と、3ミクロンの大きさ及び球状モルホロジーを有する30重量%のフェライトBaCoZnFe1627並びに0.3ミクロンの大きさ及び球状モルホロジーを有する40重量%のこの同じフェライトBaCoZnFe1627との組合せであり得る。こうして、3つの明確に識別できる吸収バンドが得られる。
【0062】
セキュリティ書類、物品及び要素
一態様において、本発明は、上で定義された本発明の組成物を含むセキュリティ要素に関する。
【0063】
本発明によれば、セキュリティ要素という用語は、認証の目的で、セキュリティ書類又は物品に一体化される要素に関する。セキュリティ要素は、セキュリティ書類又は物品に、そのパルプ中で(例えば、セキュリティ・ペーパー、紙パルプ、セキュリティ糸、セキュリティ繊維、透かし、触感効果体、セルロース・ストリップ、プランシェット(planchet)、若しくは一般的に用いられる他の要素)、又はその表面上で(例えば、様々な紙幣及びクレジットカードに付加されるホログラム、セキュリティ・インク、プラスチック・フィルム若しくは一般的に用いられる他の要素)、一体化され得る。それは、ランダムに分布しても、又は書類若しくは物品の特定の位置に固定されてもよく、それを含む書類若しくは物品にセキュリティ上の特質を付与し、これらの特質は、それらの目的が、セキュリティ書類若しくは物品の偽造を防ぐこと、又はそれらの認証を容易にすることであるという条件で、非常に様々であることが可能である。
【0064】
特定の実施形態によれば、セキュリティ要素は、例えば、セキュリティ・ペーパー、紙パルプ、セキュリティ糸、セキュリティ繊維、セキュリティ・インク、透かし、触感効果体、セルロース・ストリップ、プランシェット、ホログラム、セキュリティ染料又は物質、プラスチック・フィルム、ポリマー基材から選択される。
【0065】
これらのセキュリティ要素は、上で定義されたセキュリティ組成物から、当業者に知られている標準的な方法に従って調製され得る。
【0066】
さらに、これらのセキュリティ要素は、セキュリティ物品又は書類をマーキングするために用いられてもよい。
【0067】
別の態様において、本発明は、また、上で定義されたセキュリティ組成物を含むセキュリティ物品又は書類にも関する。
【0068】
本発明によれば、セキュリティ物品又は書類という用語は、その由来を、したがって、その真正性を保証する独特な特質を有するものに関する。これらのセキュリティ物品又は書類は、身元確認書類、例えば、身分証明書、パスポート、通行証など、及び有価書類、例えば、紙幣、小切手、印紙、証券(certificates)などを含む。
【0069】
セキュリティ物品又は書類は、好ましくは、セキュリティ・ペーパー、身元確認書類、銀行券、小切手、印紙及び印紙が印刷された紙、ラベル及びチケットから選択される。より好ましくは、それはセキュリティ・ペーパーである。
【0070】
本発明のセキュリティ組成物は、セキュリティ物品又は書類に、
(i)前記物品又は書類を作製するために使用される材料の製造の間;又は
(ii)前記物品又は書類に付加される付加物の一部として;又は
(ii)前記物品又は書類の表面に、
組み入れられ得る。
【0071】
本発明のセキュリティ組成物は、乾燥フィラーとして、セキュリティ書類の紙パルプに添加されて、紙パルプ自体の一部を構成してもよい。本発明のセキュリティ組成物は、また、光を当てると目に見えるホログラム又はセキュリティ糸として、又はサイズ剤若しくはラッカー剤の一部を構成して、書類の表面に組み入れられてもよい。セキュリティ組成物は、セキュリティ書類を印刷するために用いられるインクに組み入れられ、画像、図、レジェンド、バーコード又は触覚マーキング要素の気づかれない部分を形作ることができる。
【0072】
本発明において定められる粒径は、紙におけるそれらの組入れ及び永続性を保証する。こうして、セキュリティ書類又は物品は、選択された粒子の組合せに対応するコードを付与される。
【0073】
本発明での粒子の組合せは、それらが、セキュリティ書類又は物品に一体化された時に、肉眼には検知できないことに特徴がある、記載された粒径を有する。特定の実施形態において、セキュリティ書類又は物品に組み入れられるセキュリティ組成物のパーセンテージは、セキュリティ書類又は物品の全重量の5重量%未満、好ましくは1重量%未満で、0.005重量%を超える。この低濃度は、化学分析、X線回折、分光学的方法などのような、用いられる技法による、組成の同定を妨げる。とは言っても、特定の応答は、セキュリティ要素において組み合わせられる1組の要素、セキュリティ要素の各々を唯一のものとし、したがって、コードの担い手にする側面によって実現されるので、組成の同定は、それ自体ではセキュリティ・マーカーを表していない。
【0074】
異なるセキュリティ・マーカーの数は、用いられる異なる吸収性酸化物材料の数と共に増加し、それは、実質的に無限であると見なされ得る。これは、決められたセキュリティ・マーカーが、特定の時間に、又は決められた価値若しくは特定の目的のために、又は決められた組織によって、作り出された書類に対応するような、コード化されたセキュリティ・マーカーを生成すること、それゆえに、セキュリティ書類を追跡可能にすること、そのセキュリティをさらに向上させることを可能にする。
【0075】
これらのセキュリティ組成物は、常に活性であり、別の電磁波、又は別の外部場(電気的、光磁気的若しくは熱的な場であるかどうかにかかわらず)を印加することによって、セキュリティ組成物が、それらを特徴付けるRF放射吸収バンドを示さないことは不可能である。その結果、偽造品はセキュリティ要素に対応する特質を示さないので、セキュリティ書類が偽造品と間違えられることは起こり得ない。同様に、セキュリティ組成物に含まれる材料は、それらが不可分な一部であるセキュリティ書類を破壊することなしに、電磁吸収へのそれらの応答を変更できないので、セキュリティ組成物は、永続的で、不活性化できないことによって特徴付けられる。
【0076】
本発明のセキュリティ組成物を構成する粒子は、酸化物材料によって構成され、これらの無機酸化物材料は、少なくとも1種の遷移金属又は1種のランタニド元素を含む。これらの材料は、非常に安定であり、一般に、酸化又は水和過程の作用を受けにくいという大きな利点を有する。しかし、酸化物材料の粒子は、時には、不活性材料、例えば、アルミナ、ガラス、シリケート、又は環境からそれらを保護するための他の酸化物材料の層によってコーティングされてもよい。同様に、粒子は、また、紙の繊維へのそれらの付着性を向上させるために、又は、それらがインクの一部を構成する場合に、それらをより良く組み入れるために、ポリマー又は他の有機材料によりコーティングされてもよい。さらに、特定の無線周波数波吸収特性を有する無機酸化物材料を用いることは、セキュリティ書類内のマーカーを、より正確な仕方で、検知することを可能にする。
【0077】
本発明に記載されているセキュリティ組成物は、粒子の組成、モルホロジー及び大きさによって定められる吸収特性を示す酸化物材料の粒子の意図的な組合せに基づく安全なコード系を提供し、実質的に無数の可能な唯一のセキュリティ・マーカーを生成し、セキュリティ物品又は書類をマーキングすることを効率よく可能にする。記載されているセキュリティ組成物は、永続的で、不活性化できず、検知の目的のために設計された検知システムの使用を必要とするコード化された応答を有する。
【0078】
認証の方法
別の態様において、本発明は、セキュリティ書類又は物品の真正性を決定するための方法に関し、この方法は、無機酸化物材料の少なくとも2つのタイプの粒子の組合せを含み、少なくとも2つのタイプの粒子の各々は、異なる大きさ及び/又はモルホロジーを有し、無機酸化物材料は、少なくとも1種の遷移金属又は1種のランタニド元素、及びRF波吸収特性を有する組成物の存在を決定するために、前記セキュリティ書類又は物品の無線周波数吸収を測定することを含む。
【0079】
一実施形態において、本発明は、無機酸化物材料の少なくとも2つのタイプの粒子の組合せを含み、少なくとも2つのタイプの粒子の各々は、異なる大きさ及び/又はモルホロジーを有し、無機酸化物材料は、少なくとも1種の遷移金属又は1種のランタニド元素、及び無線周波数波吸収特性を有する組成物を含むセキュリティ書類又は物品の真正性を決定するための方法に関し、この方法は、
(a)セキュリティ書類又は物品をRF放射により照射すること;及び
(b)セキュリティ書類又は物品を横切るRF放射の吸収を決定すること;
を含む。
【0080】
特定の実施形態において、セキュリティ書類又は物品を横切るRF放射の吸収は、セキュリティ書類又は物品を横切った後のRF放射の強度を、同じRF放射が自由空間領域を横切る時のその強度と比較することによって求められる。
【0081】
したがって、本発明の一実施形態において、上で定義されたセキュリティ書類又は物品の真正性を決定するための方法は、
(a)セキュリティ書類又は物品をRF放射により照射すること;
(b)セキュリティ書類又は物品を横切った後のRF放射の強度を測定すること;
(c)自由空間領域を横切った後のRF放射の強度を測定すること;及び
(d)セキュリティ書類又は物品を横切るRF放射の吸収を決定するために、ステップ(b)及び(c)の信号の強度を比較すること;
を含む。
【0082】
セキュリティ書類又は物品の真正性は、セキュリティ書類又は物品を横切るRF放射の吸収が、決められた限界内にあれば、立証される。したがって、特定の実施形態において、本発明の方法は、測定された吸収が決められた限界内にあるかどうかで、セキュリティ書類又は物品の真正性を立証する追加のステップを含む。一定数の個々の要素の集団の吸収は、これらの全ての要素の吸収の和に相当することを考慮に入れて、セキュリティ要素の特性評価のための、ここに記載される方法は、一定数のセキュリティ書類又は物品を同時に評価するために使用され得る。この場合、X個のセキュリティ書類又は物品の集団に対応する吸収は、X×(それぞれの個別品目の吸収)に相当すると推定される。このようにして、要素の集団におけるたった1つの偽造要素の存在を、それぞれの要素を個別に測定することなく、決定することが可能である。
【0083】
本発明の一実施形態によれば、セキュリティ書類又は物品を照射するために用いられる電磁放射は、3KHz〜300GHzの間の周波数を有する。
【0084】
別の特定の実施形態によれば、セキュリティ書類又は物品を横切った後の電磁放射吸収バンドは、コーディングを表す。
【0085】
検知器
本発明の別の態様は、セキュリティ書類又は物品におけるセキュリティ組成物の存在を検知する装置に関し、この装置は、
− RF放射送信アンテナ又はアンテナアレイ(2)、
− 第1のRF放射信号受信アンテナ(3)、
− 第2の基準RF放射受信アンテナ(1)、
を含み、
ここで、第1及び第2の受信アンテナ(1、3)は、送信アンテナ(複数可)(2)の両側に配置され、送信アンテナ(2)と第1の受信アンテナ(3)との間に、分析される書類(5)を支持するための支持手段(4)が存在し、このため、書類(5)が、運転モードにおいて、前記支持(4)に存在する場合、書類(5)は、送信アンテナ(複数可)(2)と第1の受信アンテナ(3)との間に置かれ、前記装置は、さらに、
− 計算手段(6)、
− 第1の受信アンテナ(3)に接続され、測定された信号の値を計算手段(6)に送るのに適する、第1の信号読み取り手段(7)、
− 第2の受信アンテナ(1)に接続され、測定された基準値を計算手段(6)に送るのに適する、第2の信号読み取り手段(8)、
を有し、
ここで、計算手段(6)は、出力(9)を有し、第1の受信アンテナ(3)において測定された信号の値と、第2の受信アンテナ(1)において測定された基準信号の値との間の値の差が、予め決められた範囲にあるかどうかを決定し、その結果を出力(9)に送るのに適している。本発明の検知ためのシステムは、セキュリティ物品又は書類に効果的に組み入れられている前記セキュリティ要素のRF吸収応答を検知することを可能にする。
【0086】
本発明の検知のためのシステムは、非常に広い範囲の様々な周波数で働くことを可能にする。前記の検知装置は、本発明において記載されているセキュリティ要素の存在を決定するために用いられ、前記セキュリティ要素のために特別に設計される。この装置は、決められた周波数で、各セキュリティ要素を特徴付ける特定の吸収バンドの存在を決定することが可能である。装置(図1)は、好ましくは3kHz〜300GHzの間の範囲における、様々な周波数で、放射を発する、少なくとも1つの送信アンテナ(2)、及び、送信アンテナによって発せられた周波数で、記載されたセキュリティ要素を含むセキュリティ書類又は物品を横切った後、又は自由空間領域を横切った後で、放射の強度を測定する、少なくとも2つの受信アンテナ(1,3)を備える。セキュリティ書類又は物品、及び自由空間領域を横切って測定される信号の間の比較は、吸収値を与え、これらは、特別に設計された要素の存在又は不在を、したがって書類又は物品の真正性を、識別することを可能にする。特定の実施形態において、1対の受信アンテナのそれぞれを構成するアンテナは、送信アンテナに関して対称に配置される。受信アンテナは、それぞれ、信号受信アンテナ(3)及び基準アンテナ(1)と呼ばれる。セキュリティ要素を含むセキュリティ書類又は物品(5)は、送信アンテナ(2)と試料アンテナと呼ばれる受信アンテナ(3)との間に置かれる。送信アンテナ(2)と基準アンテナ(1)との間の空間は、何もない状態のままでなければならず、変えられることはできない。
【0087】
最終測定値は、信号受信アンテナ(3)及び基準アンテナ(1)において測定された電磁場強度の比較から生じる。図2に示されるように、アンテナ(3)及び(1)により得られる測定値の間の差は、セキュリティ書類又は物品に存在するセキュリティ要素によって生じる吸収に比例する。この図において、(10)に示されるスペクトルは、基準アンテナ(1)において得られる測定に対応し、(11)に示されるものは、信号受信アンテナ(3)により得られる測定に対応する。例えば、それらの差によって、2つの信号を比較すると、セキュリティ要素のコード化された信号に対応する、(12)に示される吸収バンドが得られる。セキュリティ要素の検知のためのシステムは、極めて信頼できる結果を有し、セキュリティ要素によって付与されるコードの同定は、送信アンテナに対する、測定される要素の位置に依存しないという理由で、フォールスポジティブ又は誤った拒否(false rejection)の確率を最小限度に抑える。
【0088】
吸収測定は、広周波数範囲で行われ、セキュリティ要素のコードは、図3に示されるように、特定の周波数範囲における様々な吸収値を要求する。この方法は、たった一つの吸収バンドの測定より安全であることによって特徴付けられる。検知システムの設計は、本発明において記載されているもののような様々なセキュリティ要素に対して、それらの各々に対する事前の較正を必要とすることなく、システムが用いられることを可能にする。
【0089】
一実施形態において、真正性の規準は、セキュリティ組成物のコードの認証に基づいており、それは、以下の条件で満たされるであろう。
1.各バンド(図3における13、14及び15)に対して、決められた吸収値が、特定の各セキュリティ要素に対して定められる周波数で、排他的に得られる。この条件は、セキュリティ書類又は物品に、決められた量のセキュリティ要素が存在しなければならないことを意味する。
2.異なる吸収バンドの吸収強度の間の、又は面積の間の、決められた相対的係数の条件が、満たされていなければならない。
3.1組の係数が、各セキュリティ要素に特異的なアルゴリズムに対応する。
【0090】
こうして、例えば、図3に概略的に示されているように、13/15、14/15、及び13/14の吸収の比は、定められた値を示さなければならない。これらの値は、決められた周波数での吸収値、又は決められた周波数範囲(これらは、異なるバンドで等しいか、又は異なり得る)で積分された吸収値に対応し得る。
【0091】
この確認システムは、可能性のある偽造に対する認証のロバスト性を増大させるが、その理由は、意図が、本来のセキュリティ要素とは異なる材料を用い、システムを欺くことである場合、前記「偽の」材料が、照合周波数/バンドのいずれかで、何らかの応答を示し得る時でさえ、それが、上で示された真正性規準の全てを満たすことは、実質的に不可能であろうからである。
【0092】
したがって、セキュリティ組成物と提案された検知システムの一式は、実施され検知され得るコーディングの運用数のほとんど無限の増加を、実際には、可能にし、それゆえに、一覧表で表されず、また、吸収の特質が、それらを構成する酸化物材料の物理化学的特性を変更することによって変えられ得る、セキュリティ組成物を用いることができる。セキュリティ組成物の特性の全般的知識及びそれらの偽造が、こうして避けられ、セキュリティ書類をコーディングすることに基づき、それがそれぞれのタイプの書類に対して独特であり得るような、セキュリティにおける新しい道筋が開けてくる。
【実施例】
【0093】
(実施例1)
法的有効紙幣(legal tender note)を印刷するためのセキュリティ・ペーパーの表面に適用されるセキュリティ・マーカーとしての、50wt%のLa0.7Sr0.3MnO8±δ、及び50wt%のLa0.7Sr0.3Mn0.8Co0.28±δからなる粒子の組合せ。
【0094】
材料:
− Panday−Graphによって製造されたグラビア印刷機、
− Zirabaによって製造されたグラビア・シリンダー、
− FNMTにおける円網(round)抄紙機で製造された天然細胞系(cellular−based)繊維紙、
− Sicpaによって製造された長期安定ワニス及び架橋剤、及び
− 4μmの平均粒径を有する、50wt%のLa0.7Sr0.3MnO8±δ、及び50wt%のLa0.7Sr0.3Mn0.8Co0.28±δからなる粒子の組合せの水性分散体、この組成物は、15.87GHz及び11.31GHzの周波数で、それぞれ、吸収極大を示す。
【0095】
用いられる設備及び材料の特性:
− 紙の各面での印刷機の条件:
巻出機張力:125N
巻取機張力:120N
巻取り硬さ:14%
乾燥トンネル温度:145℃
機械速度:90m/min
サクション速度:2500rpm
送風速度:2400rpm
乾燥後の紙の残留湿分:6.1〜6.8%
− グラビア・シリンダーの条件
エッチング方式:化学的
線数(lineature):60線/cm
セル深さ:54ミクロン
版胴面長(table):910mm
直径:200mm
− ワニス及び架橋剤の条件:
ワニスの商用名:Primer 803696W
架橋剤の商用名:First additive 370010
架橋剤を加えた後のワニスの粘度:20sCP4
塗布のためのワニスの粘度:18sCP4
− 紙の特性:
繊維組成:100%セルロース
坪量:90g/m
ワニス塗工後の坪量:96g/m
厚さ:115ミクロン
フェルト側のベントセン(Bendtsen)平滑度:<700ml/min
ファブリック側のベントセン平滑度:<800ml/min
ベントセン多孔度:<20ml/min
折り目を付けた(creasing)後のベントセン多孔度:<140ml/min
コッブ値:40〜70g/cm
灰分:<3%
不透明度:84%
実施方法:一旦、印刷機が運転開始されて、決められた機械条件に達したら、グラビア・シリンダーが配置され、紙リールが、巻戻しシャフトに配置され、紙ウェッブが、機械の巡行経路に通され、ワニスが、架橋剤と、前者に対して1.5重量%の後者の割合で、穏やかな撹拌条件下に、ワニスの20kgドラム缶そのものにおいて、混合される。
【0096】
上で定められた粒子の組合せの100mlの水性分散体が、この混合物に添加される。一旦、成分の完全な分散が確実なものにされたら、ドラム缶の内容物が、印刷機のインク入れにポンプで送られる。紙は、印刷シリンダー上に位置しており、片面に、紙ウェッブの全幅にワニスの塗布を開始し、印刷の全工程を通して、紙の最終湿分、ワニスの粘度、及び機械条件を制御する。一旦、紙が機械出口で巻かれると、リールが巻取機から取り外され、反対側にワニスを印刷するのに適切な巻戻し方向で、巻戻し装置に配置される。工程の終了後、リールは、室温(23℃、50%RH)で、24時間の最小養生時間、静置される。
【0097】
(実施例2)
パスポートを印刷することが意図されるセキュリティ・ペーパー本体に適用されるセキュリティ・マーカーとしての、70wt%の実施例1において挙げられた混合物、及び30wt%のNi0.5Zn0.5Fe粒子からなる粒子の組合せ。
【0098】
材料:
− 円網抄紙機、
− 前の製造工程において適切に漂白され、精製されたセルロース繊維の水性分散体、及び
− 70wt%の実施例1において挙げられた混合物、及び平均1μmの粒子を有する30wt%のNi0.5Zn0.5Fe粒子からなる粒子の組合せの水性分散体、ここで、最後に挙げられた粒子は、4.7GHzの周波数で吸収極大を示す。こうして、混合物は、3つの異なる吸収バンドを有する。
【0099】
実施方法:セルロース繊維と、様々な化学製品、例えば、消泡剤、電荷保持剤、色止め剤、鉱物フィラー(例えば、二酸化チタン又はケイ酸アルミニウム)、顔料染め剤(pigment dyes)、イオン及びpH調節剤及び乾燥紙力増強(dry resistance)樹脂(例えば、カルボキシメチルセルロース)との水性分散体が、7〜8の間のpHを有し、用いられる水の量に対して約3重量%のコンシステンシー又は濃度を有する、製紙用のベースパルプを構成する。上で定められた粒子の組合せの水性分散体は、陽イオン性であり、またセルロース繊維のカルボキシル基の酸素原子と共有結合を形成する能力を有するように機能化され、1000kgの希釈タンクに入れられる。機械ヘッド・インクへの、粒子の組合せの水性分散体の計量供給は、最初に、前記の粒子の組合せと、陰イオン性繊維との間の静電引力を生じて、その後、指摘された共有結合を形成する。
【0100】
やはり強い陽イオン性であり、また指摘されたものに類似の共有結合を形成する可能性を有するポリアミド−エピクロルヒドリン系の耐湿(wet resistance)樹脂が、次に、紙パルプに添加され、多くのセルロース繊維が残されているので、この選択肢により、このような結合が形成され、この樹脂は、また、それ自体で、このような結合を形成して、指定される耐湿レベルを紙にもたせるために必要なポリマー格子を形成する。セルロース繊維及び化学添加剤のこの全体は、次に、機械ヘッド・インクから、丸網(round shape)に達し、ここで、紙の層(これは、プレス加工、乾燥、糊付け、及びそれに続く乾燥及びカレンダー加工の後、最終の紙シートを形作る)が形成される。これらの手段によって製造される紙は、次に、パスポートを印刷するために用いられる。
【0101】
(実施例3)
セキュリティ・ラベル用セキュリティ・ペーパーの虹彩ウェッブでシルクスクリーン印刷インクに適用されるセキュリティ・マーカーとしての、50wt%のFeナノワイヤ、及び50wt%のFeナノシートからなる粒子の組合せ。
【0102】
材料:
− Storkによって製造されたシルクスクリーン印刷機、
− Storkによって製造されたシルクスクリーン、
− FNMTにおける円網抄紙機で製造された天然細胞系繊維紙、
− Sicpaによって製造された虹彩インク、消泡剤及び架橋剤、並びに
− 30nmの直径、及び500nmの長さを有する50wt%のFeナノワイヤ、並びに100nmの辺長を有する50wt%のFeナノシートからなる粒子の組合せの水性分散体、この組成物は、8.32GHz及び10.24GHzの周波数で、それぞれ、吸収極大を示す。
【0103】
用いられる設備及び材料の特性:
− 紙の各面での印刷機の条件:
巻出機張力:125N
巻取機張力:120N
巻取り硬さ:14%
乾燥トンネル温度:145℃
機械速度:70m/min
サクション速度:2500rpm
送風速度:2400rpm
乾燥後の紙の残留湿分:6.5%
− シルクスクリーンの条件
参照名:RSI900
ロール1回転当たりの印刷長さ(development):25 2/8インチ
メッシュ:105
開口面積:15%
厚さ:105ミクロン
幅:910mm
− 虹彩インク及び添加剤の条件:
インクの商用名:シルクスクリーン印刷インク5WR1241
消泡剤の商用名:Additive 880775
架橋剤の商用名:Additive 370010
架橋剤を添加した後のインクの粘度:20sCP4
印刷インクの粘度:18sCP4
− 紙の主な条件:
繊維組成:100%綿セルロース
坪量:90g/m
ワニス塗工後の坪量:96g/m
厚さ:115ミクロン
フェルト側のベントセン平滑度:<700ml/min
ファブリック側のベントセン平滑度:<800ml/min
ベントセン多孔度:<20ml/min
折り目を付けた後のベントセン多孔度:<140ml/min
コッブ値:40〜70g/cm
灰分:<3%
不透明度:84%
実施方法:一旦、印刷機が運転開始されて、決められた機械条件に達したら、シルクスクリーンが配置され、紙リールが、巻戻しシャフトに配置され、紙ウェッブが、機械の巡行経路に通され、インクが、架橋剤と、前者に対して1.5重量%の後者の割合で、穏やかな撹拌条件下に、ワニスの20kgドラム缶そのものにおいて、混合される。上で定められた粒子の組合せの100mlの水性分散体及び消泡剤が、泡が発生すれば必要に応じて、この混合物に添加される。一旦、成分の完全な分散が確実なものにされたら、ドラム缶の内容物は、印刷機のインク入れにポンプで送られる。紙は、印刷シルクスクリーン上に位置しており、スクリーンに確立されたグラフィック・デザインに従って、スクリーンの穴を通して、片面に、インクの印刷を開始し、印刷の全工程を通して、紙の最終湿分、インクの粘度、及び機械条件を制御する。
【0104】
(実施例4)
パスポートを印刷することが意図されるセキュリティ・ペーパーの表面に適用されるセキュリティ・マーカーとしての、25wt%のFeナノワイヤ、25wt%のFeナノシート、25wt%のβα−MnOナノワイヤ、及び25wt%のβ−MnOマイクロ・ロッドからなる粒子の組合せ。
【0105】
材料:
− 円網抄紙機、及び
− 前の製造工程において、適切に漂白され、精製されたセルロース繊維の水性分散体、
− 30nmの直径及び500nmの長さを有する25wt%のFeナノワイヤ、100nmの辺長を有する25wt%のFeナノシート、50nmの直径及び3μmの長さを有する25wt%のβα−MnOナノワイヤ、並びに4μmの直径及び8μmの長さを有する25wt%のβ−MnOマイクロ・ロッドからなる粒子の組合せの水性分散体、この組成物は、8.32GHz、10.24GHz、5.3GHz及び1.4GHzの周波数で、それぞれ、吸収極大を示す。
【0106】
実施方法:セルロース繊維と、様々な化学製品、例えば、消泡剤、電荷保持剤、色固定剤、鉱物フィラー(例えば、二酸化チタン又はケイ酸アルミニウム)、顔料染め剤、イオン及びpH調節剤及び乾燥紙力増強樹脂(例えば、カルボキシメチルセルロース)との水性分散体が、7〜8の間のpHを有し、用いられる水の量に対して約3重量%のコンシステンシー又は濃度を有する、製紙用のベースパルプを構成する。
【0107】
やはり強い陽イオン性であり、また指摘されたものに類似の共有結合を形成する可能性を有するポリアミド−エピクロルヒドリン系の耐湿樹脂が、次に、紙パルプに添加され、多くのセルロース繊維が残されているので、この選択肢により、このような結合が形成され、この樹脂は、また、それ自体で、このような結合を形成して、指定される耐湿レベルを紙にもたせるために必要なポリマー格子を形成する。セルロース繊維及び化学添加剤のこの全体は、次に、機械ヘッド・インクから、円網に達し、ここで、紙の層が、プレス、及び乾燥工程の後に、形成される。
【0108】
乾燥後、紙は、糊付けエリアに移動し、そこで、それは、ポリビニルアルコール系の糊付け剤(参照名 Air Products & Chemicalによって製造されるAirvol 103)の希釈物の入ったトレイに浸漬され、ここで、糊付け剤のヒドロキシル基の酸素原子と共有結合を形成する能力を有するように適切に機能化された粒子の前記組合せの100mlの水性分散体が、糊付け剤の100リットル毎に添加される。この紙は、次に、5%の紙の絶対湿分を得るまで、乾燥され、カレンダー加工される。これらの手段によって製造される紙は、次に、パスポートを印刷するために用いられる。
【0109】
(実施例5)
自己接着性セキュリティ・ラベルを印刷することが意図される紙のコーティング層に適用されるセキュリティ・マーカーとしての、25wt%のβα−MnOナノワイヤ、及び75wt%のβ−MnOマクロロッドからなる粒子の組合せ。
【0110】
材料:
− 自己接着性セキュリティ・ラベルのために、オフセット印刷法で、コーティングされた紙として用いられるように、特別に指示される下記の配合に従って前もって調製されたコーティング液(coating slip)が供給されるナイフコーティング機、及び
− 50nmの直径及び3μmの長さを有する25wt%のβα−MnOナノワイヤ、並びに4μmの直径及び8μmの長さを有する75wt%のβ−MnOマイクロ・ロッドからなる粒子の組合せの水性分散体、この組成物は、5.3GHz及び1.4GHzの周波数で、それぞれ、吸収極大を示す。
【0111】
用いられる設備及び材料の特性:
− 鉱物フィラー:液の50部を占める、80%の炭酸カルシウム(参照名 Specialty Mineralsによって製造されるAlbacar HOスラリー)及び20%のカオリン(参照名 Imerysによって製造されるSupragloss 95)
− 合成バインダー:10部のブタジエン・スチレン・ラテックス(参照名 BASFによって製造されるStyronal D−517)
− 合成共バインダー:2部(参照名 BASFによって製造されるAcronal 700 L)
− 増粘剤:1部のカルボキシメチルセルロース
− 不溶化剤:1部(参照名 BASFによって製造されるBasocoll OV)
− 添加剤:1部の水酸化ナトリウム
− 上で定められた粒子の水性分散体:1部
− 水:100部にするための残りの部分、
− コーティングされる自己接着紙:
総坪量:200g/m
シリコーン処理された支持材の坪量:82g/m
接着材の坪量:20g/m
− 表面側の繊維組成:機械パルプからの100%セルロース
− コーティング機の条件:
巻戻し張力:1000N
巻取り張力:120N
巻取り固さ:14%
乾燥トンネル温度:145℃
機械速度:150m/min
乾燥後の紙の残留湿分:6.5%
− コーティングされた紙の特性:
総坪量:220g/m
コーティング層の坪量:20g/m
コーティング面のベック平滑度:200秒
灰分:20%
不透明度:84%
実施方法:一旦、コーティング機が運転開始されて、決められた機械条件に達したら、紙リールが、巻戻しシャフトに配置され、紙ウェッブが、機械の巡行経路に通され、コーティング液が、ナイフコーターのトレイに計量供給され、コーティング工程が、決められた機械条件に従って始まり、終には、リールを使い果たす。コーティング工程の後、紙のリールは、決められた平滑度に達するまで、カレンダー加工され、セキュリティ・ラベルのシート又はリール印刷のための次の工程に必要とされる形態に切断される。
【0112】
(実施例6)
郵便切手を印刷することが意図される紙のコーティング層に適用されるセキュリティ・マーカーとしての、10wt%のFeナノシート、及び90wt%のCoZr(POナノ粒子からなる粒子の組合せ。
【0113】
材料:
− 得られるコーティングのタイプ及び特性が、郵便切手のために、グラビア印刷法において、コーティングされた紙として用いられるように、特別に指示されるような、下記の配合に従って前もって調製されたコーティング液が供給されるフィルムプレスコーティング機、
− 100nmの辺長を有する10wt%のFeナノシート、及び40nmの直径を有する90wt%のCoZr(POナノ粒子からなる粒子の組合せの水性分散体、この組成物は、10.24GHz、及び8.5GHzの周波数で、それぞれ、吸収極大を示す。
【0114】
用いられる設備及び材料の特性:
− 鉱物フィラー:50部のカオリン(参照名 Imerysによって製造されるSupragloss 95)
− 合成バインダー:12部のブタジエン・スチレン・ラテックス(参照名 EOC Polymersによって製造されるL−8000)
− 合成共バインダー:2部(参照名 BASFによって製造されるAcronal 700)
− 増粘剤:1部のカルボキシメチルセルロース
− 不溶化剤:1部(参照名 BASFによって製造されるBasocoll OV)
− 添加剤:1部の水酸化ナトリウム
− 上で定められた粒子の水性分散体:1部
− 水:100部にするための残りの部分
− コーティングされる紙支持材:
総坪量:90g/m
厚さ:120ミクロン
繊維組成:機械パルプからの100セルロース
− コーティング機の条件:
巻戻し張力:800N
巻取り張力:120N
巻取り固さ:14%
乾燥トンネル温度:150℃
機械速度:170m/min
乾燥後の紙の残留湿分:5.5%
− コーティングされた紙の特性:
総坪量:110g/m
コーティング層の坪量:20g/m
コーティング面のベック平滑度:1800秒
灰分:15%
不透明度:80%
実施方法:一旦、コーティング機が運転開始されて、決められた機械条件に達したら、紙リールが、巻戻しシャフトに配置され、紙ウェッブが、機械の巡行経路に通され、コーティング液が、紙に接触しているシリンダーに供給するためのトレイに計量供給され、コーティング工程が、決められた機械条件に従って始まり、終にはリールを使い果たす。コーティング工程の後、紙のリールは、決められた平滑度に達するまで、カレンダー加工され、郵便切手のシート又はリール印刷のための次の工程に必要とされる形態に切断される。
【0115】
(実施例7)
裏糊付き(gummed)納税印紙又はセキュリティ・ラベルを印刷することが意図される紙の裏糊層に適用されるセキュリティ・マーカーとしての、10wt%のFeナノシート、及び40wt%のFeナノ粒子、並びに50wt%のBa0.9Co0.2Sm0.1Fe1627粒子からなる粒子の組合せ。
【0116】
材料:
−裏糊付き納税印紙又はセキュリティ・ラベルのために、オフセット印刷法での裏糊付き紙として用いられるように特別に指示される、前もって状態調整された再湿潤性裏糊の液が供給されるフィルムプレスコーティング機、
− ポリ酢酸ビニルをベースとする、用いられる再湿潤性裏糊の液、参照名 Henkel Adhesives & Technologiesによって製造されるA−4524、
− 100nmの辺長を有する10wt%のFeナノシート、及び40nmの直径を有する40wt%のFeナノ粒子、並びにプレートレットのモルホロジーを有し、3μmの直径及び0.25μmの厚さを有する50wt%のBa0.9Co0.2Sm0.1Fe1627粒子からなる粒子の組合せの水性分散体、この組成物は、10.24GHz、8.2GHz及び15GHzの周波数で、それぞれ、吸収極大を示す。
【0117】
用いられる設備及び材料の特性:
− 上で定められた粒子の組合せの1リットルの水性分散体、及び、1部の示される染料と3部の水を混合することによって前もって調製された、1400グラムの緑色食品用染料(Clariantによって製造され、参照名Verde Carta DAM Liquidoを有する)が、裏糊液の1000kgのタンク毎に添加される。
【0118】
− 裏糊が付けられる紙支持材の特性:
総坪量:95g/m
厚さ:98ミクロン
繊維組成:機械パルプからの100%セルロース
− コーティング機の条件:
巻戻し張力:800N
巻取り張力:120N
巻取り固さ:45%
乾燥トンネル温度:130℃
機械速度:140m/min
乾燥後の紙の残留湿分:5.5%
− 裏糊付き紙の特性:
総坪量:105g/m
コーティング層の坪量:10g/m
再湿潤性裏糊接着力:25gF/mm
灰分:10%
不透明度:80%
実施方法:一旦、再湿潤性裏糊を塗布するために用いられるコーティング機が運転開始されて、決められた機械条件に達したら、紙リールが、巻戻しシャフトに配置され、紙ウェッブが、機械の巡行経路に通され、裏糊液が、紙に接触しているシリンダーに供給するためのトレイに計量供給され、裏糊付け工程が、決められた機械条件に従って始まり、終には、リールを使い果たす。裏糊付け工程の後、紙リールは、裏糊付き納税印紙又はセキュリティ・ラベルのシート又はリール印刷のための次の工程に必要とされる形態に切断される。
図1
図2
図3