【文献】
MAO, Z. et al.,Comparison of nonhomologous end joining and homologous recombination in human cells,DNA Repair,2008年,Vol. 7,pp. 1765-1771
【文献】
井上弘一,DNA二本鎖切断修復と遺伝子ターゲッティング,MaLS FORUM,2010年,Vol. 7,pp. 3-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
宿主細胞ゲノムの複数(n個)の標的部位に複数(n個)の外因性の核酸を同時に組み込むためのインビトロでの方法であって、ここで、nは少なくとも2であり、前記方法は:
(a)宿主細胞を、
(i)前記複数の外因性の核酸であって、ここで、xは、1〜nで変動する整数であり、そして、それぞれの整数xにつき、外因性の核酸(ES)xが、それぞれ、第1の相同性領域(HR1)xおよび第2の相同性領域(HR2)xを含み、(HR1)xおよび(HR2)xが、前記宿主細胞ゲノムの前記複数(n個)の標的部位から選択された標的部位(TS)xで(ES)xの宿主細胞媒介性の相同組換えを開始することができる、複数の外因性の核酸;ならびに
(ii)それぞれの前記標的部位(TS)xについて、(TS)xで切断することができるヌクレアーゼ(N)xであって、前記切断が、(TS)xでの(ES)xの相同組換えをもたらす、ヌクレアーゼと同時に接触させるステップ;ならびに
(b)宿主細胞を回収するステップであって、外因性の核酸(ES)xが、それぞれ、その選択された標的配列(TS)xで組み込まれている、ステップ
を含み、前記宿主細胞が酵母細胞である、方法。
前記回収するステップが、前記標的部位で切断することができるヌクレアーゼと前記宿主細胞を接触させないことと比較して、より高い頻度で起こる、請求項1および4〜7のいずれか一項に記載の方法。
前記回収するステップが、スクリーニングされた10、9、8、7、6、5、4、3、または2つの接触宿主細胞またはそのクローン集団毎に約1の頻度で起こる、請求項1および4〜7のいずれか一項に記載の方法。
前記エンドヌクレアーゼが、内因性のゲノム配列に特異的に結合するように修飾され、修飾された前記エンドヌクレアーゼが、もはや、その野生型エンドヌクレアーゼ認識配列に結合しない、請求項19に記載の方法。
前記エンドヌクレアーゼが、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、HNHホーミングエンドヌクレアーゼ、His−Cysボックスホーミングエンドヌクレアーゼ、GIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼ、およびシアノバクテリアホーミングエンドヌクレアーゼからなる群から選択されるホーミングエンドヌクレアーゼである、請求項19または20に記載の方法。
前記エンドヌクレアーゼが、H−DreI、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAIIP、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−CrepsbIIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、Pi−PspI、F−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−CphI、F−TevI、F−TevII、I−AmaI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−LlaI、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NclIP、I−NgrIP、I−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−SpomIP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp68031、I−SthPhiJP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I−TevI、I−TevII、I−TevIII、i−UarAP、i−UarHGPAIP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−MgaI、PI−MtuI、PI−MtuHIP PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−TliI、またはPI−TliIIからなる群から選択されるエンドヌクレアーゼに由来する、請求項19または20に記載の方法。
宿主細胞ゲノムの複数(n個)の標的部位に複数(n個)の外因性の核酸を同時に組み込むためのインビトロでの方法であって、ここで、nは少なくとも2であり、前記方法は:
(a)宿主細胞を、
(i)複数のライブラリであって、ここで、xは、1〜nで変動する整数であり、そして、それぞれの整数xにつき、ライブラリ(L)xが、それぞれ、複数の外因性の核酸を含み、各々の外因性の核酸が、5’から3’方向に、第1の相同性領域(HR1)x、群(D)xから選択される目的の任意の核酸、および第2の相同性領域(HR2)xを含み、(HR1)xおよび(HR2)xが、前記宿主細胞ゲノムの標的部位(TS)xで選択された外因性の核酸の宿主細胞媒介性の相同組換えを開始することができる、複数のライブラリ;ならびに
(ii)それぞれの前記標的部位(TS)xについて、(TS)xで切断することができるヌクレアーゼ(N)xであって、前記切断が、(TS)xでの(L)x由来の外因性の核酸の相同組換えをもたらす、ヌクレアーゼと同時に接触させるステップ;
ならびに
(b)宿主細胞を回収するステップであって、それぞれのライブラリ(L)x由来の外因性の核酸が、それぞれの選択された標的配列(TS)xで組み込まれている、ステップを含み、前記宿主細胞が酵母細胞である、方法。
前記エンドヌクレアーゼが、内因性のゲノム配列に特異的に結合するように修飾され、修飾された前記エンドヌクレアーゼが、もはや、その野生型エンドヌクレアーゼ認識配列に結合しない、請求項40に記載の宿主細胞。
前記エンドヌクレアーゼが、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、HNHホーミングエンドヌクレアーゼ、His−Cysボックスホーミングエンドヌクレアーゼ、GIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼ、およびシアノバクテリアホーミングエンドヌクレアーゼからなる群から選択されるホーミングエンドヌクレアーゼである、請求項40または41に記載の宿主細胞。
前記エンドヌクレアーゼが、H−DreI、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAIIP、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−CrepsbIIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、Pi−PspI、F−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−CphI、F−TevI、F−TevII、I−AmaI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−LlaI、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NclIP、I−NgrIP、I−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−SpomIP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp68031、I−SthPhiJP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I−TevI、I−TevII、I−TevIII、i−UarAP、i−UarHGPAIP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−MgaI、PI−MtuI、PI−MtuHIP PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−TliI、またはPI−TliIIからなる群から選択されるエンドヌクレアーゼに由来する、請求項40または41に記載の宿主細胞。
【発明を実施するための形態】
【0032】
6.実施形態の詳細な説明
6.1 定義
本明細書において使用されるように、ヌクレアーゼ、たとえばホーミングエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはTAL−エフェクターヌクレアーゼに関しての用語「切断する」、「切断」、および/または「切断すること」は、特定の核酸において二本鎖切断(DSB)を作り出す作用を指す。DSBは、当業者らによって理解されるように、平滑末端または付着末端(すなわち5’または3’オーバーハング)を残すことができる。
【0033】
本明細書において使用されるように、用語「遺伝子操作された宿主細胞」は、遺伝子工学技術(すなわち組換え技術)を使用して親細胞を遺伝子修飾することによって生成される宿主細胞を指す。遺伝子操作された宿主細胞は、親細胞のゲノムに対するヌクレオチド配列の追加、欠失、および/または修飾を含んでいてもよい。
【0034】
本明細書において使用されるように、用語「異種」は、自然界において通常見つけられないものを指す。用語「異種ヌクレオチド配列」は、自然界において所定の細胞において通常見つけられないヌクレオチド配列を指す。そのため、異種ヌクレオチド配列は、(a)その宿主細胞に対して外来の(すなわち細胞にとって「外因性である」)ものであってもよい;(b)宿主細胞において自然に見つけられる(すなわち「内因性である」)が、細胞において不自然な量で存在してもよい(すなわち宿主細胞において自然に見つけられるよりも多いもしくは少ない量);または(c)宿主細胞において自然に見つけられるが、その自然の遺伝子座の外側に位置づけられてもよい。
【0035】
本明細書において使用されるように、用語「相同性」は、2つ以上の核酸配列または2つ以上のアミノ酸配列の間の同一性を指す。配列同一性は、パーセンテージ同一性(または類似性もしくは相同性)の面から測定することができ、また、パーセンテージが高いほど、配列は互いにより近いまたは同一である。標準的な方法を使用してアライメントした場合、核酸またはアミノ酸配列の相同体またはオルソログは、相対的に高度の配列同一性を有する。比較のための配列のアライメントの方法は、当技術分野においてよく知られている。様々なプログラムおよびアライメントアルゴリズムが、Smith & Waterman、Adv. Appl. Math. 2:482、1981;Needleman & Wunsch、J. Mol. Biol. 48:443、1970;Pearson & Lipman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444、1988;Higgins & Sharp、Gene, 73:237−44、1988;Higgins & Sharp、CABIOS 5:151−3、1989;Corpetら、Nuc. Acids Res. 16:10881−90、1988;Huangら Computer Appls. Biosc. 8、155−65、1992;およびPearsonら、Meth. Mol. Bio. 24:307−31、1994において記載される。Altschulら、J. Mol. Biol. 215:403−10、1990は、配列アライメント方法および相同性計算についての詳細な考察を提供する。NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら、J. Mol. Biol. 215:403−10、1990)は、配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、およびtblastxに関連する使用のために、National Center for Biological Information(NCBI、National Library of Medicine、Building 38 A、Room 8N805、Bethesda、Md. 20894)を含むいくつかの供給源から、またインターネットで入手可能である。さらなる情報は、NCBIウェブサイトで見つけることができる。
【0036】
本明細書において使用されるように、用語「マーカーレス」は、選択マーカーの組み込みを伴わない、宿主細胞ゲノム内の標的部位の中へのドナーDNAの組み込みを指す。いくつかの実施形態において、用語はまた、宿主細胞ゲノムの中への選択マーカーの組み込みに依存する選択手法の利用を伴わない、そのような宿主細胞の回収をも指す。たとえば、ある実施形態において、エピソームまたは染色体外の選択マーカーが、ゲノム標的部位を切断することができるヌクレアーゼをコードするプラスミドを含む細胞を選択するために利用されてもよい。選択マーカーが宿主細胞ゲノムの中に組み込まれない限り、そのような使用は、「マーカーレス」と見なされるであろう。
【0037】
本明細書において使用されるように、用語「ポリヌクレオチド」は、当業者によって理解されるように、ヌクレオチド単位から構成されるポリマーを指す。好ましいヌクレオチド単位は、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、およびウラシル(U)を含むが、これらに限定されない。有用な修飾ヌクレオチド単位は、4−アセチルシチジン、(5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウリジン)、2−O−メチルシチジン、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノ−メチルウリジン、ジヒドロウリジン、2−O−メチルプソイドウリジン、2−O−メチルグアノシン、イノシン、N6−イソペンチルアデノシン、1−メチルアデノシン、1−メチルプソイドウリジン、1−メチルグアノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、3−メチルシチジン、5−メチルシチジン、N6−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、5−メチルアミノメチルウリジン、5−メトキシアミノメチル−2−チオウリジン、5−メトキシウリジン、5−メトキシカルボニルメチル−2−チオウリジン、5−メトキシカルボニルメチルウリジン、2−メチルチオ−N6−イソペンチルアデノシン、ウリジン−5−オキシ酢酸−メチルエステル、ウリジン−5−オキシ酢酸、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、ワイブトシン、プソイドウリジン、キューオシン、2−チオシチジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−チオウリジン、4−チオウリジン、5−メチルウリジン、2−O−メチル−5−メチルウリジン、2−O−メチルウリジン、およびその他同種のものを含むものを含むが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(「DNA」)およびリボ核酸(「RNA」)などのような天然に存在する核酸;ならびに核酸アナログを含む。核酸アナログは、天然に存在しない塩基、天然に存在するホスホジエステル結合以外の他のヌクレオチドとの連結で結合するヌクレオチドまたはホスホジエステル結合以外の連結を通して付加された塩基を含むヌクレオチドを含むものを含む。したがって、ヌクレオチドアナログは、たとえば、また、限定を伴うことなく、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロトリエステル(phosphorotriester)、ホスホロアミデート、ボラノホスフェート(boranophosphate)、メチルホスホネート(methylphosphonate)、キラル−メチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、およびその他同種のものを含む。
【0038】
従来の表示法は、ポリヌクレオチド配列を記載するために本明細書において使用され、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左手末端は、5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向は、5’方向と呼ばれる。
【0039】
本明細書において使用されるように、用語「同時の」は、複数の組み込みに関して使用される場合、宿主細胞が、ヌクレアーゼ、たとえばヌクレアーゼをコードするプラスミドおよび宿主細胞ゲノムの中に組み込まれることとなる1つを超えるドナーDNAにより同時形質転換される時点から始まる時間ならびに形質転換された宿主細胞またはそのクローン集団が、それぞれの標的遺伝子座でのドナーDNAの組み込みの成功についてスクリーニングされる時点で終わる時間を包含する。いくつかの実施形態において、「同時の」によって包含される時間が、少なくとも、ヌクレアーゼが宿主細胞の染色体(複数可)内のその標的配列に結合し、かつ切断するのに必要とされる、時間の長さである。いくつかの実施形態において、「同時の」によって包含される時間が、少なくとも、6、12、24、36、48、60、72、96、または96時間を超える時間であり、宿主細胞が、ヌクレアーゼ、たとえばヌクレアーゼをコードするプラスミドおよび1つを超えるドナーDNAにより同時形質転換される時点から始まる。
【0040】
6.2 外因性の核酸を組み込むための方法
宿主細胞ゲノムの1つ以上の選択される標的部位の中に1つ以上の外因性の核酸を組み込むための方法が、本明細書において提供される。ある実施形態において、方法が、ゲノム標的部位の中に組み込まれることとなる外因性の核酸を含む、1つ以上の組み込みポリヌクレオチド、すなわちドナーDNAおよびゲノム標的部位の近くでまたは標的部位内で二本鎖切断を引き起こすことができる1つ以上のヌクレアーゼと宿主細胞を接触させるステップを含む。ゲノム標的部位の近くでのまたは標的部位内での切断は、切断部位でのまたは切断部位の近くでの相同組換えの頻度を大幅に増加させる。
【0041】
特定の態様において、宿主細胞ゲノムの標的部位の中への外因性の核酸のマーカーレス組み込みのための方法であって、
(a)宿主細胞を、
(i)第1の相同性領域(HR1)および第2の相同性領域(HR2)を含む外因性の核酸(ES)であって、(HR1)および(HR2)が、前記標的部位(TS)で宿主細胞媒介性の相同組換えを開始することができる、外因性の核酸(ES)ならびに
(ii)(TS)で切断することができるヌクレアーゼ(N)であって、前記切断が、(TS)での(ES)の相同組換えをもたらす、ヌクレアーゼ(N)と接触させるステップならびに
(b)(TS)で組み込まれた(ES)を有する宿主細胞を回収するステップであって、前記回収するステップが、選択マーカーの組み込みを必要としない、ステップ、を含む方法が本明細書において提供される。
【0042】
図1は、部位特異的ヌクレアーゼを使用する、外因性の核酸のマーカーレスゲノム組み込みの例示的な実施形態を提供する。ドナーポリヌクレオチドは、宿主細胞に導入され、ポリヌクレオチドが、第1の相同性領域(HR1)および第2の相同性領域(HR2)が側面に位置する目的の核酸(D)を含む。HR1およびHR2は、ゲノム標的部位(TS)の、それぞれ5’および3’領域と相同性を共有する。部位特異的ヌクレアーゼ(N)もまた、宿主細胞に導入され、ヌクレアーゼが、標的部位内の特有の配列を認識し、かつ切断することができる。部位特異的ヌクレアーゼによる標的部位内での二本鎖切断の誘発に際して、内因性の相同組換え機構は、二本鎖切断を含まない標的部位と比較して、より高い頻度で、切断された標的部位で目的の核酸を組み込む。こういった組み込みの頻度の増加は、組換え事象を受けた形質転換体を選択するために選択マーカーを同時組み込む必要性を不要にする。選択マーカーの必要性を排除することによって、たとえば、遺伝子操作された微生物の構築の間に、完全で機能的な生合成経路を含む株を構築するために必要とされる時間は、大幅に減る。さらに、遺伝子操作戦略は、所定の宿主生物について入手可能なマーカーの貯蔵所が限られていることにより、選択マーカーを再利用する必要性によってもはや制限されない。
【0043】
いくつかの実施形態において、組み込みに成功した外因性の核酸を含む形質転換細胞のマーカーレス回収が、スクリーニングされた1000、900、800、700、600、500、400、300、200、または100の接触宿主細胞またはそのクローン集団毎に約1の頻度の範囲内で起こる。特定の実施形態において、組み込みに成功した外因性の核酸を含む形質転換細胞のマーカーレス回収が、スクリーニングされた90、80、70、60、50、40、30、20、または10の接触宿主細胞またはそのクローン集団毎に約1の頻度の範囲内で起こる。特定の実施形態において、組み込みに成功した外因性の核酸を含む形質転換細胞のマーカーレス回収が、スクリーニングされた9、8、7、6、5、4、3、または2つの接触宿主細胞またはそのクローン集団毎に約1の頻度の範囲内で起こる。特定の実施形態において、宿主細胞が、酵母細胞であり、組み込みの頻度の増加が、他の宿主細胞型と比べた、相同組換えについての酵母の能力の増加に由来する。
【0044】
様々な方法は、選択マーカーの使用を伴うことなく標的部位にまたは標的部位の近くに改変されたゲノムを有するそれらの細胞を同定するのに利用可能である。いくつかの実施形態において、そのような方法が、標的部位における任意の変化を検出しようと試み、PCR法、配列決定法、ヌクレアーゼ消化、たとえば制限マッピング、サザンブロット、およびその任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0045】
他の態様において、宿主細胞ゲノムの中に複数の外因性の核酸を組み込むための方法であって、
(a)宿主細胞を、
(i)複数の外因性の核酸であって、外因性の核酸(ES)
xが、それぞれ、第1の相同性領域(HR1)
xおよび第2の相同性領域(HR2)
xを含み、(HR1)
xおよび(HR2)
xが、前記宿主細胞ゲノムの標的部位(TS)
xで(ES)
xの宿主細胞媒介性の相同組換えを開始することができる、複数の外因性の核酸;ならびに
(ii)それぞれの前記標的部位(TS)
xについて、(TS)
xで切断することができるヌクレアーゼ(N)
xであって、前記切断が、(TS)
xでの(ES)
xの相同組換えをもたらす複数のヌクレアーゼと接触させるステップ
ならびに
(b)宿主細胞を回収するステップであって、選択された外因性の核酸(ES)
xが、それぞれ、それぞれの選択された標的配列(TS)
xで組み込まれる、ステップを含み、
xが、1〜nの任意の整数であり、nが、少なくとも2である、方法が、本明細書において提供される。
【0046】
図2は、複数の部位特異的ヌクレアーゼを使用する、複数の外因性の核酸の同時のゲノム組み込みの例示的な実施形態を提供する。本実施例において、3つのポリヌクレオチドが、宿主細胞に導入され、ポリヌクレオチドが、それぞれ、目的の核酸(D)
xを含む外因性の核酸(ES)
xを含み、x=1、2、または3である。(D)
xは、それぞれ、第1の相同性領域(HR1)
xおよび第2の相同性領域(HR2)
xが側面に位置する。(HR1)
xおよび(HR2)
xは、ゲノムにおける合計3つの特有の標的部位の、選択される標的部位(TS)
xの、それぞれ5’および3’領域と相同性を共有する。複数の部位特異的ヌクレアーゼ(N)
xもまた、宿主細胞に導入され、(N)
xが、それぞれ、その対応する標的部位(TS)
x内の特有の配列を認識し、かつ切断することができる。その対応する部位特異的ヌクレアーゼ(N)
xによる標的部位(TS)
xの切断に際して、内因性の相同組換え機構は、(TS)
xでの、対応する目的の核酸(D)
xの組み込みを促進する。
【0047】
特定の実施形態において、目的の核酸(D)
xを任意選択で含む外因性の核酸(ES)
xが、それぞれ、そのそれぞれのゲノム標的部位(TS)
xの中に同時に、すなわち、複数の組み込みポリヌクレオチドおよび複数のヌクレアーゼによる宿主細胞の1回の形質転換により、組み込まれる。いくつかの実施形態において、方法が、任意の複数の外因性の核酸(ES)
xを同時に組み込むのに有用である、すなわち、上記に記載される方法について記載される変数に従って、xが、1〜nの任意の整数であり、nが、少なくとも2である。いくつかの実施形態において、本明細書において提供される同時の組み込みの方法が、10の選択される標的部位(TS)
xの中に10までの外因性の核酸(ES)
xを同時に組み込むのに有用である、すなわち、xが、1〜nの任意の整数であり、n=2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。いくつかの実施形態において、本明細書において提供される同時の組み込みの方法が、20の選択される標的部位(TS)
xの中に20までの外因性の核酸(ES)
xを同時に組み込むのに有用である、すなわち、xが、1〜nの任意の整数であり、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20である。いくつかの実施形態において、n=2である。いくつかの実施形態において、n=3である。いくつかの実施形態において、n=4である。いくつかの実施形態において、n=5である。いくつかの実施形態において、n=6である。いくつかの実施形態において、n=7である。いくつかの実施形態において、n=8である。いくつかの実施形態において、n=9である。いくつかの実施形態において、n=10である。いくつかの実施形態において、n=11である。いくつかの実施形態において、n=12である。いくつかの実施形態において、n=13である。いくつかの実施形態において、n=14である。いくつかの実施形態において、n=15である。いくつかの実施形態において、n=16である。いくつかの実施形態において、n=17である。いくつかの実施形態において、n=18である。いくつかの実施形態において、n=19である。いくつかの実施形態において、n=20である。いくつかの実施形態において、本明細書において提供される同時の組み込みの方法は、20を超える外因性の核酸を同時に組み込むのに有用である。
【0048】
単一の標的部位での単一の外因性の核酸の組み込みと同様に、複数の外因性の核酸の同時の複数の組み込みは、二本鎖切断を誘発することができるヌクレアーゼと標的部位を接触させないことと比較して、実質的により高い頻度で起こる。いくつかの実施形態において、複数の遺伝子座での複数の外因性の核酸の同時の組み込みの間に、すなわち複数のヌクレアーゼの存在下において、任意の単一の遺伝子座の組み込みの頻度が、1回の組み込み事象の間の、すなわち、単一のヌクレアーゼの存在下における、同じ遺伝子座での組み込みの頻度と比較して、実質的により高い。そのような利点は、実施例6(セクション7.5.2)において下記に実証される。理論によって拘束されないが、複数の標的部位で二本鎖切断(DSB)を引き起こす、複数のヌクレアーゼの存在および活性が、カット部位でドナーDNA(複数可)を組み込むことによってDSBを修復することに成功する形質転換体を富ませるおよび/またはDSBを修復することができない形質転換体に対して選択すると考えられる。DSBが細胞に対して毒性であるので、ヌクレアーゼの数の増加が、DSBを多くし、相応して、ドナーDNA(複数可)のHR媒介性の組み込みを通してDSBを修復することができる細胞が富むと考えられる。
【0049】
いくつかの実施形態において、組み込みのこの頻度の増加が、複数の組換え事象の同定のための1つ以上の選択マーカーの同時組み込みの必要性を不要にする。いくつかの実施形態において、組み込みに成功した複数の外因性の核酸を含む形質転換細胞のマーカーレス回収が、スクリーニングされた1000、900、800、700、600、500、400、300、200、または100の接触宿主細胞またはそのクローン集団毎に約1の頻度の範囲内で起こる。特定の実施形態において、マーカーレス回収が、スクリーニングされた90、80、70、60、50、40、30、20、または10の接触宿主細胞またはそのクローン集団毎に約1の頻度の範囲内で起こる。より特定の実施形態において、マーカーレス回収が、スクリーニングされた9、8、7、6、5、4、3、または2つの接触宿主細胞またはそのクローン集団毎に約1の頻度の範囲内で起こる。特定の実施形態において、宿主細胞が、酵母細胞であり、組み込みの頻度の増加が、他の宿主細胞型に比べて、相同組換えについての酵母の能力の増加に由来する。
【0050】
6.2.1. 代謝経路工学のための方法
本明細書において記載される方法および組成物は、たとえば、バイオ燃料、医薬品、またはバイオマテリアルへのバイオマスの変換に向けて、最適化された生合成経路を含む組換え生物を構築するための特定の利点を提供する。機能的な、本来のものではない生物学的経路は、抗マラリア薬アルテミシニンに対する前駆体(たとえばMartinら、Nat Biotechnol 21:796−802(2003);脂肪酸誘導体燃料および化学物質(たとえば脂肪酸エステル、脂肪族アルコール、およびワックス;たとえばSteenら、Nature 463:559−562(2010)を参照されたい;ハロゲン化メチル誘導燃料および化学物質(たとえばBayerら、J Am Chem Soc 131:6508−6515(2009)を参照されたい;コレステロール降下薬を生成するポリケチドシンターゼ(たとえばMaら、Science 326:589−592(2009)を参照されたい;ならびにポリケチド(たとえばKodumal、Proc Natl Acad Sci USA 101:15573−15578(2004)を参照されたい、の産生のための微生物宿主における構築に成功した。
【0051】
従来より、代謝工学、特に、生合成経路の構築は、1度に1つずつという一連の様式で進行し、それによって、経路構成成分は、導入されてきた、すなわち、一度に単一の遺伝子座で、宿主細胞ゲノムの中に組み込まれてきた。本明細書において提供される組み込みの方法は、新しい代謝経路、すなわち、宿主細胞によって内因的に産生されない代謝物質を産生する代謝経路の酵素をコードする1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含むように、宿主細胞、たとえば微生物細胞を遺伝子操作するのに典型的に必要とされる時間を減らすために利用することができる。他の特定の実施形態において、本明細書において提供される組み込みの方法は、宿主細胞にとって内因性である代謝経路、すなわち、宿主細胞によって内因的に産生される代謝物質を産生する代謝経路の酵素をコードする1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含むように、宿主細胞を効率的に遺伝子操作するために使用することができる。一実施例において、設計戦略は、宿主細胞の3つの本来の遺伝子を補足的な外因性の経路と交換することを試みるものであってもよい。現状の技術を使用すると、これらの内因性の3つの遺伝子座を修飾するのに、3つの別々の形質転換を必要とする。対照的に、本明細書において提供される同時の複数の組み込みの方法は、3つの組み込みがすべて、1回の形質転換において実行されるのを可能にし、したがって、必要とされる遺伝子操作の回数を3分の1に減らす。さらに、方法は、ある宿主細胞シャーシ(chassis)における複数の部位に組み込まれた、最適化された経路構成成分を含むDNAアセンブリの、第2の宿主細胞シャーシにおける類似の部位への運搬を可能にする。所望の遺伝子型を遺伝子操作するのに必要とされる回数の数を低下させることによって、代謝経路の構築のペースは、実質的に増加する。
【0052】
6.2.1.1 イソプレノイド経路工学
いくつかの実施形態において、本明細書において提供される方法は、遺伝子操作された宿主細胞の産物プロファイルを修飾するために、生合成経路の1つ以上の構成成分を同時に導入するまたは交換するために利用することができる。いくつかの実施形態において、生合成経路が、イソプレノイド経路である。
【0053】
テルペンは、多くの生物において産生される大きなクラスの炭化水素である。テルペンが化学的に修飾された(たとえば炭素骨格の酸化または転位を介して)場合、結果として生じる化合物は、一般に、テルペノイドと呼ばれ、これはまた、イソプレノイドとしても知られている。イソプレノイドは、たとえば、電子伝達系におけるキノンとして、タンパク質プレニル化を介しての細胞内ターゲティングおよび調節における膜の構成成分として、カロテノイドおよびクロロフィルを含む光合成色素として、ホルモンおよび補助因子として、ならびに様々なモノテルペン、セスキテルペン、およびジテルペンと共に植物防御化合物として、多くの重要な生物学的役割を果たす。それらは、抗生物質、ホルモン、抗癌薬、殺虫剤、および化学物質として工業的に有用である。
【0054】
テルペンは、イソプレン(C
5H
8)の単位を連結することによって誘導され、存在するイソプレン単位の数によって分類される。ヘミテルペンは、単一のイソプレン単位からなる。イソプレンは、それ自体、単にヘミテルペンと考えられる。モノテルペンは、2つのイソプレン単位からできており、分子式C
10H
16を有する。モノテルペンの例は、ゲラニオール、リモネン、およびテルピネオールである。セスキテルペンは、3つのイソプレン単位から構成され、分子式C
15H
24を有する。セスキテルペンの例は、ファルネセンおよびファルネソールである。ジテルペンは、4つのイソプレン単位からできており、分子式C
20H
32を有する。ジテルペンの例は、カフェストール、カーウェオール、センブレン、およびタキサジエンである。セスタテルペンは、5つのイソプレン単位からできており、分子式C
25H
40を有する。セスタテルペンの例は、ゲラニルファルネソールである。トリテルペンは、6つのイソプレン単位からなり、分子式C
30H
48を有する。テトラテルペンは、8つのイソプレン単位を含有し、分子式C
40H
64を有する。生物学的に重要なテトラテルペンは、非環式リコピン、単環式ガンマ−カロテン、ならびに二環式アルファ−およびベータ−カロテンを含む。ポリテルペンは、多くのイソプレン単位の長い鎖からなる。天然ゴムは、二重結合がシスであるポリイソプレンからなる。
【0055】
テルペンは、イソペンテニルピロリン酸(イソペンテニル二リン酸またはIPP)およびその異性体ジメチルアリルピロリン酸(ジメチルアリル二リン酸またはDMAPP)の縮合を通して生合成される。2つの経路、すなわち、真核生物のメバロン酸依存性(MEV)経路(
図3)および原核生物のメバロン酸非依存性またはデオキシキシルロース5リン酸(DXP)経路が、IPPおよびDMAPPを生成することで知られている。植物は、MEV経路およびDXP経路の両方を使用する。IPPおよびDMAPPは、プレニル二リン酸シンターゼ(たとえば、それぞれ、GPPシンターゼ、FPPシンターゼ、およびGGPPシンターゼ)の作用を通して、ポリプレニル二リン酸(たとえばゲラニル二リン酸またはGPP、ファルネシル二リン酸またはFPP、およびゲラニルゲラニル二リン酸またはGGPP)に順番に縮合される。ポリプレニル二リン酸中間体は、テルペンシンターゼによって、より複雑なイソプレノイド構造に変換される。
【0056】
テルペンシンターゼは、複数の産物を形成する大きな遺伝子ファミリーにまとめられる。テルペンシンターゼの例は、GPPをモノテルペンに変換するモノテルペンシンターゼ;GGPPをジテルペンに変換するジテルペンシンターゼ;およびFPPをセスキテルペンに変換するセスキテルペンシンターゼを含む。セスキテルペンシンターゼの例は、FPPをファルネセンに変換するファルネセンシンターゼである。テルペンシンターゼは、それらが代謝分岐点で働き、細胞によって産生されるイソプレノイドのタイプを決定するので、イソプレノイドへの経路のフラックス(flux)の調節において重要である。さらに、テルペンシンターゼは、そのようなテルペンの高収率産生の鍵を握る。そのため、異種イソプレノイド産生のために遺伝子操作された宿主における経路のフラックスを改善するための1つの戦略は、テルペンシンターゼをコードする核酸の複数のコピーを導入することである。たとえば、ファルネセンなどのようなセスキテルペンの産生が所望されるMEV経路を含む、遺伝子操作された微生物において、セスキテルペンシンターゼ、たとえばファルネセンシンターゼは、経路の末端酵素として利用され、ファルネセンシンターゼ遺伝子の複数のコピーは、ファルネセン産生のために最適化された株の生成に向けて宿主細胞の中に導入されてもよい。
【0057】
あらゆるイソプレノイドの生合成が、プレニル二リン酸シンターゼおよびテルペンシンターゼの上流の同じ経路構成成分に依存するので、これらの経路構成成分は、宿主「プラットフォーム(platform)」株の中に一度遺伝子操作されたら、任意のセスキテルペンの産生に向けて利用することができ、セスキテルペンの特徴は、宿主細胞の中に導入される特定のセスキテルペンシンターゼによって決定することができる。さらに、異なるイソプレン単位を有するテルペン、たとえばセスキテルペンの代わりにモノテルペンの産生が所望される場合、プレニル二リン酸シンターゼおよびテルペンシンターゼの両方は、経路の上流の構成成分をなお利用しながら、異なるテルペンを産生するために交換することができる。
【0058】
したがって、本明細書において提供される方法および組成物は、所望のイソプレノイドを産生するために、イソプレノイド産生経路、たとえばMEV経路を含む宿主細胞を効率的に修飾するために利用することができる。いくつかの実施形態において、宿主細胞が、MEV経路を含み、本明細書において提供される同時の複数の組み込みのための方法は、プレニル二リン酸シンターゼおよび/またはテルペンシンターゼの複数のコピーを同時に導入するために利用して、宿主細胞のテルペン産物プロファイルを決定することができる。いくつかの実施形態において、プレニル二リン酸シンターゼが、GPPシンターゼであり、テルペンシンターゼが、モノテルペンシンターゼである。いくつかの実施形態において、プレニル二リン酸シンターゼが、FPPシンターゼであり、テルペンシンターゼが、セスキテルペンシンターゼである。いくつかの実施形態において、プレニル二リン酸シンターゼが、GGPPシンターゼであり、テルペンシンターゼが、ジテルペンシンターゼである。他の実施形態において、宿主細胞が、MEV経路ならびに第1のタイプのテルペン、たとえばファルネセンの産生のためのプレニル二リン酸シンターゼおよび/またはテルペンシンターゼを含み、本明細書において提供される同時の複数の組み込みのための方法は、第2のタイプのテルペン、たとえばアモルファジエンを産生するためのプレニル二リン酸シンターゼおよび/またはテルペンシンターゼの1つ以上のコピーを同時に交換するために利用することができる。これらの実施形態は、実施例3および4において下記に例証される。本明細書において提供される方法は、経路構成成分の複数のコピーを利用する、任意の生合成経路の構築および/または修飾に向けて同様に利用することができ、また、単一の経路構成成分の複数のコピーの追加または交換によりその産物プロファイルを容易に修飾することができる宿主細胞を遺伝子操作するのに特に有用である。
【0059】
6.2.1.2 コンビナトリアル組み込みライブラリを生成するための方法
一度生合成経路が構築されたら、代謝フラックスを最適化し、かつ高産物力価を達成するために、すべての構成成分の発現レベルを調整する必要がある。フラックスを最適化するための共通のアプローチは、経路構成成分遺伝子の特徴、遺伝子のコドン最適化、溶解性タグの使用、切断または既知の突然変異の使用、ならびに遺伝子の発現状況(すなわちプロモーターおよびターミネーターの選択)を多様化することを含む。株を構築する過程においてこの多様性をサンプリングするために、従来の方法の使用は、非実用的に多くの株を生成し、かつアーカイブすることを必要とする。たとえば、株のエンジニアが3つの遺伝子座の構築物を組み込むことを計画し、それぞれの遺伝子座について10の変異体を考案した場合、コンビナトリアルな多様性を完全にサンプリングするために1,000株が生成される必要があるであろう。経路遺伝子が協力して作用し、すべての代謝物質中間体を容易にスクリーニングすることができるとは限らないので、それぞれの組み込みサイクルの後に経路遺伝子の個々の寄与を評価することができないことが多い。したがって、株のエンジニアらは、新規な代謝経路を構築する場合に彼らがサンプリングするデザインスペース(design space)を厳重に制限する選択をルーチン的になす。
【0060】
最適な経路設計をよりよく同定するために、本明細書において提供されるゲノム修飾のための方法は、合理的に設計された組み込み構築物のコンビナトリアルライブラリーを含む株を生成するために利用することができる。方法は、ゲノムにおける特定の位置でのドナーDNAの複数の同時の組み込みを促進するための、細胞の中への1つ以上のヌクレアーゼおよび1つ以上のドナーDNAアセンブリの導入に依存する。しかしながら、遺伝子操作された株の多様性を生成するために、方法は、ドナーDNAのライブラリ、すなわち、それぞれの標的遺伝子座についての組み込み構築物の混合物を同時形質転換するステップを含み、その結果、宿主株のコンビナトリアル組み込みライブラリを生成することができる(
図4)。達成される複数の組み込みの高い頻度は、結果として生じた株が、広範囲なゲノム品質管理を伴うことなく産物を直接、適切にスクリーニングすることができ、最上位の株の特徴は、たとえば配列決定によって、スクリーニングの後に決定することができることを意味する。この方法は、個々の株生成、品質管理、およびアーカイブの負荷を除き、エンジニアが単一のチューブにおいて多様な組み込みの組み合わせを生成し、たとえば、経路の末端産物をスクリーニングすることによって、最善に機能する株を分類することを可能にする。
【0061】
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書において提供される宿主細胞ゲノムの中に複数の外因性の核酸を組み込むための方法は、
(d)宿主細胞を、
(i)複数のライブラリであって、ライブラリ(L)
xが、それぞれ、複数の外因性の核酸を含み、選択された外因性の核酸が、5’から3’方向に、第1の相同性領域(HR1)
x、群(D)
xから選択される目的の任意の核酸、および第2の相同性領域(HR2)
xを含み、(HR1)
xおよび(HR2)
xが、前記宿主細胞ゲノムの標的部位(TS)
xで前記選択された外因性の核酸の宿主細胞媒介性の相同組換えを開始することができる、複数のライブラリならびに
(ii)それぞれの前記標的部位(TS)
xについて、(TS)
xで切断することができるヌクレアーゼ(N)
xであって、前記切断が、(TS)
xでの前記選択された外因性の核酸の相同組換えをもたらす、ヌクレアーゼと接触させるステップ
ならびに
(e)宿主細胞を回収するステップであって、それぞれのライブラリ(L)
x由来の外因性の核酸が、それぞれの選択された標的配列(TS)
xで組み込まれているステップを含み、
xが、1〜nの任意の整数であり、nが、少なくとも2である。
【0062】
この方法の略図は、
図4において提供される。
【0063】
(a)複数のライブラリであって、ライブラリ(L)
xが、それぞれ、複数の外因性の核酸を含み、選択された外因性の核酸が、5’から3’方向に、第1の相同性領域(HR1)
x、群(D)
xから選択される目的の任意の核酸、および第2の相同性領域(HR2)
xを含み、(HR1)
xおよび(HR2)
xが、前記宿主細胞ゲノムの標的部位(TS)
xで前記選択された外因性の核酸の宿主細胞媒介性の相同組換えを開始することができる、複数のライブラリならびに
(b)それぞれの前記標的部位(TS)
xについて、(TS)
xで切断することができるヌクレアーゼ(N)
xであって、前記切断が、(TS)
xでの前記選択された外因性の核酸の相同組換えをもたらす、ヌクレアーゼ(N)
xを含み、
xが、1〜nの任意の整数であり、nが、少なくとも2である、宿主細胞もまた、本明細書において提供される。
【0064】
いくつかの実施形態において、ライブラリ(L)
xが、それぞれ、共通の生合成経路の酵素をコードする外因性の核酸を含む。いくつかの実施形態において、群(D)
xが、少なくとも10
1、10
2、10
3、10
4、10
5、10
6、または10
6を超える、目的の特有の核酸を含む。いくつかの実施形態において、ライブラリ(L)
xが、それぞれ、生合成経路の酵素の変異体をコードする複数の外因性の核酸を含む。本明細書において使用されるように、用語「変異体」は、選択された酵素と比較して、異なるヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を有する、生合成経路の酵素を指す。たとえば、いくつかの実施形態において、ライブラリ(L)
xが、セスキテルペンシンターゼ変異体を含み、選択されたセスキテルペンシンターゼの野生型バージョンと比較して、セスキテルペンシンターゼ変異体が、対応するアミノ酸配列に対する変化をもたらしてもよいまたはもたらさなくてもよいヌクレオチドの追加、欠失、および/または置換を含んでいてもよい。他の実施形態において、酵素変異体が、参照酵素、たとえば野生型バージョンに比べて、アミノ酸の追加、欠失、および/または置換を含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、宿主細胞が、前記接触の前に、生合成経路の1つ以上の酵素をコードする1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、生合成経路の1つ以上の酵素をコードする1つ以上の異種ヌクレオチド配列が、ゲノムで組み込まれる。
【0066】
6.3 組み込みポリヌクレオチド
好都合にも、組み込みポリヌクレオチド、すなわちドナーDNAは、宿主細胞ゲノムの選択された標的部位の中への1つ以上の外因性の核酸構築物の組み込みを促進する。好ましい実施形態において、組み込みポリヌクレオチドが、第1の相同性領域(HR1)
xおよび第2の相同性領域(HR2)
xを含む外因性の核酸(ES)
xならびに任意選択で、(HR1)
xおよび(HR2)
xの間に位置づけられる目的の核酸を含む。いくつかの実施形態において、組み込みポリヌクレオチドが、線状DNA分子である。他の実施形態において、組み込みポリヌクレオチドが、環状DNA分子である。
【0067】
組み込みポリヌクレオチドは、当業者に明らかな任意の技術によって生成することができる。ある実施形態において、組み込みポリヌクレオチドが、当技術分野においてよく知られているポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および分子クローニング技術を使用して生成される。たとえばPCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification、HA Erlich編、Stockton Press、New York、N.Y.(1989);Sambrookら、2001、Molecular Cloning−A Laboratory Manual、3
rd edition、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY;PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification、HA Erlich編、Stockton Press、New York、N.Y.(1989);米国特許第8,110,360号明細書を参照されたい。
【0068】
6.3.1. ゲノム組み込み配列
好ましい実施形態において、組み込みポリヌクレオチドが、第1の相同性領域(HR1)
xおよび第2の相同性領域(HR2)
xを含む外因性の核酸(ES)
xを含み、(HR1)
xおよび(HR2)
xが、宿主細胞ゲノム内の選択された標的部位(TS)
xで宿主細胞媒介性の相同組換えを開始することができる。相同組換えによってゲノムの中に外因性の核酸を組み込むために、組み込みポリヌクレオチドは、好ましくは、一方の末端に(HR1)
xおよび他方の末端に(HR2)
xを含む。いくつかの実施形態において、(HR1)
xが、選択されたゲノムの標的部位(TS)
xの5’領域に対して相同であり、(HR2)
xが、選択された標的部位(TS)
xの3’領域に対して相同である。いくつかの実施形態において、(HR1)
xが、選択されたゲノムの標的部位(TS)
xの5’領域に対して約70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%相同である。いくつかの実施形態において、(HR2)
xが、選択された標的部位(TS)
xの3’領域に対して約70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%相同である。
【0069】
ある実施形態において、(HR1)
xが、目的の核酸(D)
xに対して5’に位置づけられる。いくつかの実施形態において、(HR1)
xが、(D)
xの5’末端に対して直接隣接して位置づけられる。いくつかの実施形態において、(HR1)
xが、(D)
xの5’の上流に位置づけられる。ある実施形態において、(HR2)
xが、目的の核酸(D)
xに対して3’に位置づけられる。いくつかの実施形態において、(HR2)
xが、(D)
xの3’末端に対して直接隣接して位置づけられる。いくつかの実施形態において、(HR2)
xが、(D)
xの3’の下流に位置づけられる。
【0070】
特定のゲノム遺伝子座での組み込みポリヌクレオチドの組み込みに影響を及ぼし得る特性は、ゲノム組み込み配列の長さ、切り取ることができる核酸構築物の全長、およびゲノム組み込み遺伝子座のヌクレオチド配列または位置を含むが、これらに限定されない。たとえば、ゲノム組み込み配列の1つの鎖および宿主細胞ゲノムにおける特定の遺伝子座の1つの鎖の間の有効なヘテロデュプレックス形成は、ゲノム組み込み配列の長さに依存してもよい。ゲノム組み込み配列の長さについての有効範囲は、50〜5,000ヌクレオチドである。ゲノム組み込み配列およびゲノム遺伝子座の間の相同性についての有効長の議論については、Hastyら、Mol Cell Biol 11:5586−91(1991)を参照されたい。
【0071】
いくつかの実施形態において、(HR1)
xおよび(HR2)
xが、任意の酵母ゲノム遺伝子座での外因性の核酸(ES)
xのゲノム組み込みを可能にする、十分な長さおよび配列同一性の任意のヌクレオチド配列を含むことができる。ある実施形態において、(HR1)
xおよび(HR2)
xのそれぞれが、独立して、約50〜5,000ヌクレオチドからなる。ある実施形態において、(HR1)
xおよび(HR2)
xのそれぞれが、独立して、約100〜2,500ヌクレオチドからなる。ある実施形態において、(HR1)
xおよび(HR2)
xのそれぞれが、独立して、約100〜1,000ヌクレオチドからなる。ある実施形態において、(HR1)
xおよび(HR2)
xのそれぞれが、独立して、約250〜750ヌクレオチドからなる。ある実施形態において、(HR1)
xおよび(HR2)
xのそれぞれが、独立して、約100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500、4600、4700、4800、4900、または5,000ヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態において、(HR1)
xおよび(HR2)
xのそれぞれが、独立して、約500ヌクレオチドからなる。
【0072】
6.3.2. 目的の核酸
いくつかの実施形態において、組み込みポリヌクレオチドが、目的の核酸(D)
xをさらに含む。目的の核酸は、当業者によって有用であると見なされる任意のDNAセグメントとすることができる。たとえば、DNAセグメントは、宿主ゲノムに対して「ノックイン」することができる目的の遺伝子を含んでいてもよい。他の実施形態において、DNAセグメントが、宿主細胞ゲノムの標的部位の中への構築物の組み込みに際して標的遺伝子を特異的に破壊し、それによって、破壊された遺伝子を非機能的にすることができる「ノックアウト」構築物として機能する。目的の核酸(D)
xの有用な例は、タンパク質コード配列、レポーター遺伝子、蛍光マーカーコード配列、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、転写活性化因子、転写リプレッサー、転写活性化因子結合部位、転写リプレッサー結合部位、イントロン、エクソン、ポリAテイル、マルチクローニングサイト、核移行シグナル、mRNA安定化シグナル、組み込み遺伝子座、エピトープタグコード配列、分解シグナル、または任意の他の天然に存在する分子もしくは合成DNA分子を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、(D)
xが、天然起源のものとすることができる。その代わりに、(D)
xは、インビトロにおいて産生された、完全に合成起源のものとすることができる。さらに、(D)
xは、単離された天然に存在するDNA分子の任意の組み合わせまたは単離された天然に存在するDNA分子および合成DNA分子の任意の組み合わせを含むことができる。たとえば、(D)
xは、タンパク質コード配列に作動可能に連結された異種プロモーター、ポリAテイルに連結されたタンパク質コード配列、エピトープタグコード配列とインフレームで連結されたタンパク質コード配列、およびその他同種のものを含んでいてもよい。目的の核酸(D)
xは、クローニングされたDNA(たとえばDNA「ライブラリ」)から当技術分野において知られている標準的な手順によって、化学合成によって、cDNAクローニングによって、または所望の細胞から精製されたゲノムDNAもしくはその断片のクローニングによって、またはPCR増幅およびクローニングによって得られてもよい。たとえばSambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3d. ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York(2001);Glover, D.M.(ed.)、DNA Cloning:A Practical Approach, 2d. ed.、MRL Press, Ltd.、Oxford、U.K.(1995)を参照されたい。
【0073】
特定の実施形態において、目的の核酸(D)
xは、選択マーカーをコードする核酸を含まない。これらの実施形態において、本明細書において記載される方法によって提供される組み込みの高い効率は、選択培地上での形質転換細胞の成長の必要性を伴うことなく、組み込み事象のスクリーニングおよび同定を可能にする。しかしながら、選択培地上での成長がそれにもかかわらず所望される他の実施形態において、目的の核酸(D)
xが、宿主ゲノムの中への外因性の核酸の組み込みを選択するために使用されてもよい選択マーカーを含むことができる。
【0074】
多種多様の選択マーカーが、当技術分野において知られている(たとえばKaufinan、Meth. Enzymol., 185:487(1990); Kaufman、Meth. Enzymol., 185:537(1990); Srivastava and Schlessinger、Gene, 103:53(1991); Romanosら、in DNA Cloning 2:Expression Systems, 2nd Edition、pages 123−167(IRL Press 1995); Markie、Methods Mol. Biol., 54:359(1996); Pfeiferら、Gene, 188:183(1997); Tucker and Burke、Gene, 199:25(1997); Hashida−Okadoら、FEBS Letters, 425:117(1998)を参照されたい)。いくつかの実施形態において、選択マーカーが、薬剤抵抗性マーカーである。薬剤抵抗性マーカーは、そうでなければ細胞を死滅させるであろう外因性の薬剤を細胞が解毒するのを可能にする。薬剤抵抗性マーカーの例証となる例は、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、ブレオマイシン、ストレプトマイシン、ヒグロマイシン、ネオマイシン、Zeocin(商標)、およびその他同種のものなどのような抗生物質に対する抵抗性を付与するものを含むが、これらに限定されない。他の実施形態において、選択マーカーが、栄養要求性マーカーである。栄養要求性マーカーは、細胞が本質的な構成成分(通常アミノ酸)を合成するのを可能にし、同時に、その本質的な構成成分を欠く培地において成長する。選択栄養要求性遺伝子配列は、たとえばhisDを含み、これは、ヒスチジノールの存在下において、ヒスチジンなしの培地における成長を可能にする。他の選択マーカーは、ブレオマイシン抵抗性遺伝子、メタロチオネイン遺伝子、ヒグロマイシンB−ホスホトランスフェラーゼ遺伝子、AURI遺伝子、アデノシンデアミナーゼ遺伝子、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子、チミジンキナーゼ遺伝子、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子、およびその他同種のものを含む。他の実施形態において、選択マーカーが、栄養要求性突然変異を救出するもの以外のマーカーである。たとえば、宿主細胞株は、突然変異が、知られている選択方法によって同定することができる限り、栄養要求性突然変異以外の突然変異、たとえば、宿主に対して致命的ではなく、また、株の意図される使用、たとえば工業用の発酵に対して副作用をも引き起こさない突然変異を含むことができる。
【0075】
染色体で組み込まれたポリヌクレオチドを含む宿主細胞形質転換体はまた、個々のDNAセグメントによってもしくはDNAセグメントの組み合わせによってコードされる他の形質、たとえば、光を放射するペプチドの発現を示す宿主細胞形質転換体を選択することによってまたは個々の宿主細胞コロニーの分子的分析によって、たとえば、制限酵素マッピング、PCR増幅、または単離され、アセンブルされたポリヌクレオチドもしくは染色体組み込み部位の配列分析によって同定することもできる。
【0076】
6.4 ヌクレアーゼ
本明細書において記載される方法のいくつかの実施形態において、宿主細胞ゲノムが、切断する、すなわち、選択された標的部位内の指定された領域で二本鎖切断を引き起こすことができる1つ以上のヌクレアーゼと接触させられる。いくつかの実施形態において、二本鎖切断誘発剤が、認識配列でまたはその近くでブレークをもたらすように、特異的なポリヌクレオチド認識配列を認識するおよび/またはそれに結合する任意の作用物質である。二本鎖切断誘発剤の例は、エンドヌクレアーゼ、部位特異的レコンビナーゼ、トランスポザーゼ、トポイソメラーゼ、およびジンクフィンガーヌクレアーゼを含むが、これらに限定されず、修飾誘導体、変異体、およびその断片を含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、1つ以上のヌクレアーゼのそれぞれが、選択された標的部位(TS)
x内の指定される領域で二本鎖切断を引き起こすことができる。いくつかの実施形態において、ヌクレアーゼが、(HR1)
xおよび(HR2)
xがそれぞれ相同性を共有する、(TS)
xの5’および3’領域の間に位置づけられる領域で二本鎖切断を引き起こすことができる。他の実施形態において、ヌクレアーゼが、(TS)
xの5’および3’領域の上流または下流に位置づけられる領域で二本鎖切断を引き起こすことができる。
【0078】
認識配列は、二本鎖切断誘発剤が特異的に認識するおよび/または結合する、任意のポリヌクレオチド配列である。認識部位配列の長さは、多様化することができ、たとえば、長さが、少なくとも10、12、14、16、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、またはそれより多いヌクレオチドである配列を含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、認識配列が、パリンドロームである、すなわち、ある鎖上の配列が、相補鎖上で反対方向で同様に読まれる。いくつかの実施形態において、ニック/切断部位が、認識配列内にある。他の実施形態において、ニック/切断部位が、認識配列の外側にある。いくつかの実施形態において、切断が、平滑末端をもたらす。他の実施形態において、切断が、5’オーバーハングまたは3’オーバーハングのいずれかとすることができる一本鎖オーバーハング、すなわち「付着末端」をもたらす。
【0080】
いくつかの実施形態において、選択された標的部位内の認識配列が、宿主細胞ゲノムに対して内因性かであってもよいまたは外因性であってもよい。認識部位が内因性の配列である場合、それは、天然に存在するまたは天然の二本鎖切断誘発剤によって認識される認識配列であってもよい。その代わりに、内因性の認識部位は、二本鎖切断をもたらすように内因性の認識配列を特異的に認識するように設計されたまたは選択された、修飾されたまたは遺伝子操作された二本鎖切断誘発剤が認識するおよび/または結合することができる。いくつかの実施形態において、修飾された二本鎖切断誘発剤が、天然の、天然に存在する二本鎖切断誘発剤から誘導される。他の実施形態において、修飾された二本鎖切断誘発剤が、人工的に作り出されるまたは合成される。そのような修飾されたまたは遺伝子操作された二本鎖切断誘発剤を選択するための方法は、当技術分野において知られている。たとえば、タンパク質(複数可)のアミノ酸配列変異体は、DNAにおける突然変異によって調製することができる。突然変異誘発およびヌクレオチド配列改変のための方法は、たとえば、Kunkel(1985)Proc Natl Acad Sci USA 82:488−92;Kunkelら(1987)Meth Enzymol 154:367−82;米国特許第4,873,192号明細書;Walker and Gaastra編(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company、New York)、およびその中に引用される参考文献を含む。タンパク質の生物学的活性に影響を及ぼす可能性が低いアミノ酸置換に関する手引きは、たとえば、Dayhoffら(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl Biomed Res Found、Washington, D.C.)のモデルにおいて見つけられる。同様の特性を有する他のアミノ酸とのあるアミノ酸の交換などのような保存的置換は、好ましい場合がある。保存的欠失、挿入、およびアミノ酸置換は、タンパク質の特徴における根本的な変化をもたらすとは予想されず、任意の置換、欠失、挿入、またはその組み合わせの効果は、ルーチン的なスクリーニングアッセイによって評価することができる。ダブルストランドブレーク誘発活性についてのアッセイは、知られており、一般に、認識部位を含有するDNA基質に対する作用物質の全体的な活性および特異性を測定する。
【0081】
本明細書において提供される方法のいくつかの実施形態において、1つ以上のヌクレアーゼが、エンドヌクレアーゼである。エンドヌクレアーゼは、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合を切断する酵素であり、塩基を損傷することなく、特異的な部位としてDNAを切断する制限エンドヌクレアーゼを含む。制限エンドヌクレアーゼは、I型、II型、III型、およびIV型エンドヌクレアーゼを含み、これらは、サブタイプをさらに含む。制限エンドヌクレアーゼは、さらに記載され、たとえばREBASEデータベースにおいて分類されている(rebase.neb.comのウェブページ;Robertsら(2003)Nucleic Acids Res 31:418−20)、Robertsら(2003)Nucleic Acids Res 31:1805−12、およびBelfortら(2002)in Mobile DNA II、pp. 761−783、Craigieら編、ASM Press、Washington, D.C.。
【0082】
本明細書において使用されるように、エンドヌクレアーゼはまた、ホーミングエンドヌクレアーゼをも含み、これは、制限エンドヌクレアーゼのように、特異的な認識配列に結合し、カットする。しかしながら、ホーミングエンドヌクレアーゼについての認識部位は、典型的により長い、たとえば約18bp以上である。メガヌクレアーゼとして知られているホーミングエンドヌクレアーゼは、保存配列モチーフに基づいて以下のファミリーに分類されている:LAGLIDADG(配列番号:50)ホーミングエンドヌクレアーゼ、HNHホーミングエンドヌクレアーゼ、His−Cysボックスホーミングエンドヌクレアーゼ、GIY−YIG(配列番号:51)ホーミングエンドヌクレアーゼ、およびシアノバクテリアホーミングエンドヌクレアーゼ。たとえばStoddard、Quarterly Review of Biophysics 38(1):49−95(2006)を参照されたい。これらのファミリーは、保存ヌクレアーゼ活性部位コアモチーフおよび触媒メカニズム、生物学的およびゲノム分布、ならびに非ホーミングヌクレアーゼ系に対するより広い関係において非常に異なる。たとえばGuhan and Muniyappa(2003)Crit Rev Biochem Mol Biol 38:199−248;Lucasら(2001)Nucleic Acids Res 29:960−9;Jurica and Stoddard(1999)Cell Mol Life Sci 55:1304−26;Stoddard(2006)Q Rev Biophys 38:49−95;およびMoureら(2002)Nat Struct Biol 9:764を参照されたい。これらのファミリー由来の有用な特異的ホーミングエンドヌクレアーゼの例は、I−CreI(Rochaixら、Nucleic Acids Res. 13:975−984(1985)を参照されたい、I−MsoI(Lucasら、Nucleic Acids Res. 29:960−969(2001)を参照されたい、I−SceI(Fouryら、FEBS Lett. 440:325−331(1998)を参照されたい、I−SceIV(Moranら、Nucleic Acids Res. 20:4069−4076(1992)を参照されたい、H−DreI(Chevalierら、Mol. Cell 10:895−905(2002)を参照されたい、I−HmuI(Goodrich−Blairら、Cell 63:417−424(1990); Goodrich−Blairら、Cell 84:211−221(1996)を参照されたい、I PpoI(Muscarellaら、Mol. Cell. Biol. 10:3386−3396(1990)を参照されたい、I−DirI(Johansenら、Cell 76:725−734(1994); Johansen、Nucleic Acids Res. 21:4405(1993)を参照されたい、I−NjaI(Eldeら、Eur. J. Biochem. 259:281−288(1999); De Jonckheereら、J. Eukaryot. Microbiol. 41:457−463(1994)を参照されたい、I−NanI(Eldeら、S. Eur. J. Biochem. 259:281−288(1999); De Jonckheereら、J. Eukaryot. Microbiol. 41:457−463(1994)を参照されたい)、I−NitI(De Jonckheereら、J. Eukaryot. Microbiol. 41:457−463(1994); Eldeら、Eur. J. Biochem. 259:281−288(1999)を参照されたい、I−TevI(Chuら、Cell 45:157−166(1986)を参照されたい、I−TevII(Tomaschewskiら、Nucleic Acids Res. 15:3632−3633(1987)を参照されたい、I−TevIII(Eddyら、Genes Dev. 5:1032−1041(1991)を参照されたい、F−TevI(Fujisawaら、Nucleic Acids Res. 13:7473−7481(1985)を参照されたい、F−TevII(Kadyrovら、Dokl. Biochem. 339:145−147(1994); Kaliman、Nucleic Acids Res. 18:4277(1990)を参照されたい、F−CphI(Zengら、Curr. Biol. 19:218−222(2009)を参照されたい、PI−MgaI(Savesら、Nucleic Acids Res. 29:4310−4318(2001)を参照されたい、I−CsmI(Colleauxら、Mol. Gen. Genet. 223:288−296(1990)を参照されたい、I−CeuI(Turmelら、J .Mol. Biol. 218:293−311(1991)を参照されたい、およびPI−SceI(Hirataら J. Biol. Chem. 265:6726−6733(1990)を参照されたい、を含むが、これらに限定されない。
【0083】
本明細書において記載される方法のいくつかの実施形態において、ホーミングエンドヌクレアーゼの天然に存在する変異体および/または遺伝子操作された誘導体が、使用される。反応速度、補助因子相互作用、発現、最適条件、および/または認識部位特異性を修飾するならびに活性をスクリーニングするための方法が、知られている。たとえばEpinatら(2003)Nucleic Acids Res 31:2952−62;Chevalierら(2002)Mol Cell 10:895−905;Gimbleら(2003)Mol Biol 334:993−1008;Seligmanら(2002)Nucleic Acids Res 30:3870−9;Sussmanら(2004)J Mol Biol 342:31−41;Rosenら(2006)Nucleic Acids Res 34:4791−800;Chamesら(2005)Nucleic Acids Res 33:e178;Smithら(2006)Nucleic Acids Res 34:e149;Gruenら(2002)Nucleic Acids Res 30:e29;Chen and Zhao(2005)Nucleic Acids Res 33:e154;国際公開第2005105989号パンフレット;国際公開第2003078619号パンフレット;国際公開第2006097854号パンフレット;国際公開第2006097853号パンフレット;国際公開第2006097784号パンフレット;および国際公開第2004031346号パンフレットを参照されたい。有用なホーミングエンドヌクレアーゼはまた、国際公開第04/067736号パンフレット;国際公開第04/067753号パンフレット;国際公開第06/097784号パンフレット;国際公開第06/097853号パンフレット;国際公開第06/097854号パンフレット;国際公開第07/034262号パンフレット;国際公開第07/049095号パンフレット;国際公開第07/049156号パンフレット;国際公開第07/057781号パンフレット;国際公開第07/060495号パンフレット;国際公開第08/152524号パンフレット;国際公開第09/001159号パンフレット;国際公開第09/095742号パンフレット;国際公開第09/095793号パンフレット;国際公開第10/001189号パンフレット;国際公開第10/015899号パンフレット;および国際公開第10/046786号パンフレットにおいて記載されるものをも含む。
【0084】
任意のホーミングエンドヌクレアーゼは、H−DreI、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAIIP、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−CrepsbIIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、Pi−PspI、F−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−CphI、F−TevI、F−TevII、I−AmaI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−LlaI、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NclIP、I−NgrIP、I−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−SpomIP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp68031、I−SthPhiJP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I−TevI、I−TevII、I−TevIII、i−UarAP、i−UarHGPAIP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−MgaI、PI−MtuI、PI−MtuHIP PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−TliI、もしくはPI−TliIIまたはその任意の変異体もしくは誘導体を含むが、これらに限定されない二本鎖切断誘発剤として使用することができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、エンドヌクレアーゼが、本来のまたは内因性の認識配列に結合する。他の実施形態において、エンドヌクレアーゼが、本来のものではないまたは外因性の認識配列に結合し、本来のまたは内因性の認識配列に結合しない修飾エンドヌクレアーゼである。
【0086】
本明細書において提供される方法のいくつかの実施形態において、1つ以上のヌクレアーゼが、TAL−エフェクターDNA結合ドメイン−ヌクレアーゼ融合タンパク質(TALEN)である。Xanthomonas属における植物病原細菌のTALエフェクターは、疾患において重要な役割を果たすまたは宿主DNAに結合し、エフェクターに特異的な宿主遺伝子を活性化することによって防御を引き起こす。たとえばGuら(2005)Nature 435:1122−5;Yangら(2006)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:10503−8;Kayら(2007)Science 318:648−51;Sugioら(2007)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104:10720−5;Romerら(2007)Science 318:645−8;Bochら(2009)Science 326(5959):1509−12;およびMoscou and Bogdanove(2009)326(5959):1501を参照されたい。TALエフェクターは、1つ以上のタンデムリピートドメインを通して配列特異的な様式でDNAと相互作用するDNA結合ドメインを含む。反復配列は、典型的に、34アミノ酸を含み、リピートは、典型的に、互いに91〜100%相同である。リピートの多型は、通常、12および13位に位置し、TAL−エフェクターの標的配列における近接ヌクレオチドの特徴との、12および13位のリピート可変二残基(repeat variable−diresidue)の特徴の間に一対一の対応があるように思われる。
【0087】
TAL−エフェクターDNA結合ドメインは、所望の標的配列に結合するように遺伝子操作され、たとえばII型制限エンドヌクレアーゼ由来のヌクレアーゼドメイン、典型的に、FokIなどのようなII型制限エンドヌクレアーゼ由来の非特異的切断ドメインに融合されてもよい(たとえばKimら(1996)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:1156−1160を参照されたい)。他の有用なエンドヌクレアーゼは、たとえばHhaI、HindIII、Nod、BbvCI、EcoRI、BglI、およびAlwIを含んでいてもよい。したがって、好ましい実施形態において、TALENは、共同して、標的DNA配列における特異的なヌクレオチド配列に結合し、その結果、TALENが、特異的なヌクレオチド配列内のまたはそれに隣接する標的DNAを切断する、複数のTALエフェクターリピート配列を含むTALエフェクタードメインを含む。本明細書において提供される方法に有用なTALENは、国際公開第10/079430号パンフレットおよび米国特許出願公開第2011/0145940号明細書において記載されるものを含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、標的DNA内の特異的なヌクレオチド配列に結合するTALエフェクタードメインが、10以上のDNA結合リピート、好ましくは、15以上のDNA結合リピートを含むことができる。いくつかの実施形態において、DNA結合リピートが、それぞれ、標的DNA配列における塩基対の認識を決定するリピート可変二残基(RVD)を含み、DNA結合リピートが、それぞれ、標的DNA配列における1つの塩基対の認識を担い、RVDが、1つ以上の、Cを認識するためのHD;Tを認識するためのNG;Aを認識するためのNI;GまたはAを認識するためのNN;AまたはCまたはGまたはTを認識するためのNS;CまたはTを認識するためのN
*、ここで、
*は、RVDの第2の位置におけるギャップを示す;Tを認識するためのHG;Tを認識するためのH
*、ここで、
*は、RVDの第2の位置におけるギャップを示す;Tを認識するためのIG;Gを認識するためのNK;Cを認識するためのHA;Cを認識するためのND;Cを認識するためのHI;Gを認識するためのHN;Gを認識するためのNA;GまたはAを認識するためのSN;およびTを認識するためのYGを含む。
【0089】
本明細書において提供される方法のいくつかの実施形態において、1つ以上のヌクレアーゼが、部位特異的レコンビナーゼである。レコンビナーゼとも呼ばれる部位特異的レコンビナーゼは、その適合性の組換え部位の間の保存的部位特異的組換えを触媒するポリペプチドであり、天然のポリペプチドならびに活性を保持する誘導体、変異体、および/または断片ならびに天然のポリヌクレオチド、活性を保持するレコンビナーゼをコードする誘導体、変異体、および/または断片を含む。部位特異的レコンビナーゼおよびそれらの認識部位の概説については、Sauer(1994)Curr Op Biotechnol 5:521−7;およびSadowski(1993)FASEB 7:760−7を参照されたい。いくつかの実施形態において、レコンビナーゼが、セリンレコンビナーゼまたはチロシンレコンビナーゼである。いくつかの実施形態において、レコンビナーゼが、インテグラーゼまたはリゾルバーゼファミリー由来のものである。いくつかの実施形態において、レコンビナーゼが、FLP、Cre、ラムダインテグラーゼ、およびRからなる群から選択されるインテグラーゼである。インテグラーゼファミリーの他のメンバーについては、たとえばEspositoら(1997)Nucleic Acids Res 25:3605−14およびAbremskiら(1992)Protein Eng 5:87−91を参照されたい。反応速度、補助因子相互作用および必要性、発現、最適条件、ならびに/または認識部位特異性を修飾するならびにレコンビナーゼおよび変異体の活性をスクリーニングするための方法が、知られており、たとえばMillerら(1980)Cell 20:721−9;Lange−Gustafson and Nash(1984)J Biol Chem 259:12724−32;Christら(1998)J Mol Biol 288:825−36;Lorbachら(2000)J Mol Biol 296:1175−81;Vergunstら(2000)Science 290:979−82;Dorgaiら(1995)J Mol Biol 252:178−88;Dorgaiら(1998)J Mol Biol 277:1059−70;Yaguら(1995)J Mol Biol 252:163−7;Sclimenteら(2001)Nucleic Acids Res 29:5044−51;Santoro and Schultze(2002)Proc Natl Acad Sci USA 99:4185−90;Buchholz and Stewart(2001)Nat Biotechnol 19:1047−52;Voziyanovら(2002)Nucleic Acids Res 30:1656−63;Voziyanovら(2003)J Mol Biol 326:65−76;Klippelら(1988)EMBO J 7:3983−9;Arnoldら(1999)EMBO J 18:1407−14;国際公開第03/08045号パンフレット;国際公開第99/25840号パンフレット;および国際公開第99/25841号パンフレットを参照されたい。認識部位は、約30ヌクレオチドの最小限の部位〜数百ヌクレオチドの範囲にある。天然に存在する部位および変異体を含む、レコンビナーゼについての任意の認識部位を使用することができる。変異体認識部位は、知られており、たとえばHoessら(1986)Nucleic Acids Res 14:2287−300;Albertら(1995)Plant J 7:649−59;Thomsonら(2003)Genesis 36:162−7;Huangら(1991)Nucleic Acids Res 19:443−8;Siebler and Bode(1997)Biochemistry 36:1740−7;Schlake and Bode(1994)Biochemistry 33:12746−51;Thygarajanら(2001)Mol Cell Biol 21:3926−34;Umlauf and Cox(1988)EMBO J 7:1845−52;Lee and Saito(1998)Gene 216:55−65;国際公開第01/23545号パンフレット;国際公開第99/25821号パンフレット;国際公開第99/25851号パンフレット;国際公開第01/11058号パンフレット;国際公開第01/07572号パンフレット、および米国特許第5,888,732号明細書を参照されたい。
【0090】
本明細書において提供される方法のいくつかの実施形態において、1つ以上のヌクレアーゼが、トランスポザーゼである。トランスポザーゼは、ゲノム中のある位置から他の位置への、トランスポゾンの転移を媒介するポリペプチドである。トランスポザーゼは、典型的に、トランスポゾンを切り取るためにダブルストランドブレークを誘発し、末端近くのリピートを認識し、切り取られたトランスポゾンの末端を引き合わせ、いくつかの系においては、他のタンパク質もまた、転移の間に末端を引き合わせるために必要とされる。トランスポゾンおよびトランスポザーゼの例は、トウモロコシ由来のAc/Ds、Dt/rdt、Mu−M1/Mn、およびSpm(En)/dSpmエレメント、キンギョソウ由来のTamエレメント、バクテリオファージ由来のMuトランスポゾン、細菌トランスポゾン(Tn)および挿入配列(IS)、酵母のTyエレメント(レトロトランスポゾン)、シロイヌナズナ由来のTa1エレメント(レトロトランスポゾン)、ショウジョウバエ由来のP因子トランスポゾン(Gloorら(1991)Science 253:1110−1117)、ショウジョウバエ由来のCopia、Mariner、およびMinosエレメント、イエバエ由来のHermesエレメント、イラクサギンウワバ(Trichplusia ni)由来のPiggyBackエレメント、線虫由来のTc1エレメント、ならびにマウス由来のIAPエレメント(レトロトランスポゾン)を含むが、これらに限定されない。
【0091】
本明細書において提供される方法のいくつかの実施形態において、1つ以上のヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である。ZFNは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインおよびダブルストランドブレーク誘発剤ドメインから構成される、遺伝子操作された二本鎖切断誘発剤である。遺伝子操作されたZFNは、2つのジンクフィンガーアレイ(ZFA)からなり、これらのそれぞれは、二量体化に際して活性になる、FokI酵素由来のヌクレアーゼドメインなどのような非特異的エンドヌクレアーゼの単一サブユニットに融合される。典型的に、単一のZFAは、3つまたは4つのジンクフィンガードメインからなり、これらのそれぞれが、特異的なヌクレオチドトリプレット(GGC、GATなど)を認識するように設計される。したがって、2つの「3−フィンガー」ZFAから構成されるZFNは、18塩基対標的部位を認識することができ、18塩基対認識配列は、ヒトおよび植物のゲノムなどのような大きなゲノム内でさえ、一般に、特有である。2つのFokIヌクレアーゼ単量体の共存および二量体化を導くことによって、ZFNは、標的遺伝子座で、DNAにおける二本鎖切断(DSB)を作り出す機能的部位特異的エンドヌクレアーゼを生成する。
【0092】
有用なジンクフィンガーヌクレアーゼは、知られているものおよび本明細書において記載される1つ以上の標的部位(TS)に対して特異性を有するように遺伝子操作されたものを含む。ジンクフィンガードメインは、たとえば宿主細胞ゲノムの標的部位内の選択されたポリヌクレオチド認識配列に特異的に結合するポリペプチドを設計するために適用可能である。ZFNは、非特異的エンドヌクレアーゼドメイン、たとえばHOまたはFokIなどのようなIIs型エンドヌクレアーゼ由来のヌクレアーゼドメインに連結された、遺伝子操作されたDNA結合ジンクフィンガードメインからなる。その代わりに、操作されたジンクフィンガーDNA結合ドメインは、DNAニッキング/切断活性を保持する他の二本鎖切断誘発剤またはその誘導体に融合することができる。たとえば、このタイプの融合は、異なる標的部位に二本鎖切断誘発剤を導くために、ニックもしくは切断部位の位置を改変するために、より短い標的部位に誘発剤を導くために、またはより長い標的部位に誘発剤を導くために使用することができる。いくつかの実施例において、ジンクフィンガーDNA結合ドメインが、部位特異的レコンビナーゼ、トランスポザーゼ、またはDNAニッキングおよび/もしくは切断活性を保持するその誘導体に融合される。転写活性化因子ドメイン、転写リプレッサードメイン、およびメチラーゼを含むさらなる機能性を、ジンクフィンガー結合ドメインに融合することができる。いくつかの実施形態において、ヌクレアーゼドメインの二量体化が、切断活性に必要とされる。
【0093】
ジンクフィンガーは、それぞれ、標的DNAにおける3つの連続塩基対を認識する。たとえば、3つのフィンガードメインは、9つの近接ヌクレオチドの配列を認識し、ヌクレアーゼの二量体化の必要性と共に、ジンクフィンガートリプレットの2つのセットは、18ヌクレオチド認識配列に結合するように使用される。有用なデザイナージンクフィンガーモジュールは、様々なGNNおよびANNトリプレットを認識するもの(Dreierら(2001)J Biol Chem 276:29466−78; Dreierら(2000)J Mol Biol 303:489−502; Liuら(2002)J Biol Chem 277:3850−6)ならびに様々なCNNまたはTNNトリプレットを認識するもの(Dreierら(2005)J Biol Chem 280:35588−97; Jamiesonら(2003)Nature Rev Drug Discov 2:361−8)を含む。Duraiら(2005)Nucleic Acids Res 33:5978−90;Segal(2002)Methods 26:76−83;Porteus and Carroll(2005)Nat Biotechnol 23:967−73;Paboら(2001)Ann Rev Biochem 70:313−40;Wolfeら(2000)Ann Rev Biophys Biomol Struct 29:183−212;Segal and Barbas(2001)Curr Opin Biotechnol 12:632−7;Segalら(2003)Biochemistry 42:2137−48;Beerli and Barbas(2002)Nat Biotechnol 20:135−41;Carrollら(2006)Nature Protocols 1:1329;Ordizら(2002)Proc Natl Acad Sci USA 99:13290−5;Guanら(2002)Proc Natl Acad Sci USA 99:13296−301;国際公開第2002099084号パンフレット;国際公開第00/42219号パンフレット;国際公開第02/42459号パンフレット;国際公開第2003062455号パンフレット;米国特許出願公開第20030059767号明細書;米国特許出願公開第2003/0108880号明細書;米国特許第6,140,466号明細書、米国特許第6,511,808号明細書、および米国特許第6,453,242号明細書もまた、参照されたい。有用なジンクフィンガーヌクレアーゼはまた、国際公開第03/080809号パンフレット;国際公開第05/014791号パンフレット;国際公開第05/084190号パンフレット;国際公開第08/021207号パンフレット;国際公開第09/042186号パンフレット;国際公開第09/054985号パンフレット;および国際公開第10/065123号パンフレットにおいて記載されるものをも含む。
【0094】
6.5 ゲノム標的部位
本明細書において提供される方法において、ヌクレアーゼは、ゲノム標的部位の近くでまたは標的部位内で二本鎖切断を引き起こすことができる宿主細胞に導入され、これは、切断部位でのまたは切断部位の近くでの相同組換えの頻度を大幅に増加させる。好ましい実施形態において、ヌクレアーゼについての認識配列が、宿主細胞ゲノムにおいて標的部位にのみ存在し、それによって、ヌクレアーゼによるあらゆるオフターゲットゲノム結合および切断を最小限にする。
【0095】
いくつかの実施形態において、ゲノム標的部位が、天然の遺伝子座などのように、宿主細胞にとって内因性である。いくつかの実施形態において、天然のゲノム標的部位が、本明細書において提供される組み込みの方法において利用されることとなるヌクレアーゼのタイプに従って選択される。利用されることとなるヌクレアーゼがジンクフィンガーヌクレアーゼである場合、最適な標的部位は、多くの公的に入手可能なオンラインリソースを使用して選択されてもよい。たとえば、その全体が参照によってこれによって組み込まれるReyonら、BMC Genomics 12:83(2011)を参照されたい。たとえば、Oligomerized Pool Engineering(OPEN)は、非常に頑健であり、高い特異性およびインビボにおける機能性を有するジンクフィンガーアレイを遺伝子操作するための公的に入手可能なプロトコールであり、植物、ゼブラフィッシュ、ならびにヒト体細胞および多能性幹細胞において効率的に機能するZFNの生成の使用に成功してきた。OPENは、候補ZFAについての、あらかじめ構築され、無作為化されたプールが、所望の標的配列に対して高い親和性および特異性を有するものを同定するためにスクリーニングされる選択ベースの方法である。ZFNGenomeは、OPENにより生成されたZFNについての可能性のある標的部位を同定し、可視化するためのGBrowseベースのツールである。ZFNGenomeは、モデル生物の、配列決定され、アノテートされたゲノムにおける、可能性のあるZFN標的部位の一覧を提供する。ZFNGenomeは、現在、7つのモデル生物;S.cerevisiae、コナミドリムシ、シロイヌナズナ、キイロショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ、線虫、およびヒトの完全に配列決定されたゲノム内にマッピングされた、合計11.6百万を超える可能性のあるZFN標的部位を含む。3つの植物種;ダイズ(大豆)、イネ(米)、トウモロコシ(とうもろこし)および3つの動物種コクヌストモドキ(こくぬすともどき)、ハツカネズミ(マウス)、ドブネズミ(どぶねずみ)を含むさらなるモデル生物が、近い将来、追加されるであろう。ZFNGenomeは、その染色体位置および転写開始部位(複数可)に関する位置を含む、それぞれの可能性のあるZFN標的部位についての情報を提供する。ユーザは、いくつかの異なる基準(たとえば遺伝子ID、転写物ID、標的部位配列)を使用して、ZFNGenomeに照会することができる。
【0096】
利用されることとなるヌクレアーゼが、TAL−エフェクターヌクレアーゼである場合、いくつかの実施形態において、最適な標的部位が、その全体が参照によってこれによって組み込まれるSanjanaら、Nature Protocols, 7:171−192(2012)によって記載される方法に従って選択されてもよい。手短に言えば、TALENは、二量体として機能し、左および右のTALENと呼ばれる1対のTALENは、DNAの反対の鎖上の配列を標的にする。TALENは、TALEN DNA結合ドメインおよび単量体FokI触媒ドメインの融合物として遺伝子操作される。FokI二量体化を促進するために、左および右のTALEN標的部位は、およそ14〜20塩基の間隔で選ばれる。そのため、それぞれ20bp配列を標的にする1対のTALENについて、最適な標的部位は、形態5’−TN
19N
14−20N
19A−3’を有するはずであり、左のTALENは、5’−TN
19−3’を標的にし、右のTALENは、5’−N
19A−3’のアンチセンス鎖を標的にする(N=A、G、T、またはC)。
【0097】
本明細書において提供される方法の他の実施形態において、ゲノム標的部位が、宿主細胞にとって外因性である。たとえば、1つ以上のゲノム標的部位は、本明細書において記載される組み込みの方法を実行する前に、従来の方法、たとえば遺伝子ターゲティングを使用して、宿主細胞ゲノムにおいて遺伝子操作することができる。いくつかの実施形態において、同じ標的配列の複数のコピーが、宿主細胞ゲノムにおいて、異なる遺伝子座で遺伝子操作され、それによって、標的配列を特異的に認識する単一のヌクレアーゼのみの使用により、同時の複数の組み込み事象を促進する。他の実施形態において、複数の異なる標的配列が、宿主細胞ゲノムにおいて、異なる遺伝子座で遺伝子操作される。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された標的部位が、宿主細胞の天然のゲノムにおいてそうでなければ示されない標的配列を含む。たとえば、ホーミングエンドヌクレアーゼは、イントロンまたはインテイン中に通常埋め込まれている、大きな認識部位(12〜40bp)を標的にし、そのため、それらの認識部位は、非常にまれであり、哺乳動物サイズのゲノム中に存在するこれらの部位は、ないかまたはわずかである。したがって、いくつかの実施形態において、外因性のゲノム標的部位が、ホーミングエンドヌクレアーゼについての認識配列である。いくつかの実施形態において、ホーミングヌクレアーゼが、H−DreI、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAIIP、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−CrepsbIIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、Pi−PspI、F−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−CphI、F−TevI、F−TevII、I−AmaI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−LlaI、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NclIP、I−NgrIP、I−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−SpomIP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp68031、I−SthPhiJP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I−TevI、I−TevII、I−TevIII、i−UarAP、i−UarHGPAIP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−MgaI、PI−MtuI、PI−MtuHIP PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−TliI、もしくはPI−TliIIまたはその任意の変異体もしくは誘導体からなる群から選択される。特定の実施形態において、外因性のゲノム標的部位は、I−SceI、VDE(PI−SceI)、F−CphI、PI−MgaI、またはPI−MtuIIについての認識配列であり、これらのそれぞれは、下記に提供される。
【0098】
【表1】
6.6 送達
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される方法に有用な1つ以上のヌクレアーゼが、精製タンパク質として宿主細胞に提供される、たとえば送達される。他の実施形態において、1つ以上のヌクレアーゼがヌクレアーゼをコードする核酸を含むポリヌクレオチド(複数可)を介して提供される。他の実施形態において、1つ以上のヌクレアーゼが宿主細胞核において直接翻訳することができる、精製RNAとして宿主細胞の中に導入される。
【0099】
ある実施形態において、上記に記載される組み込みポリヌクレオチド、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、もしくは精製ヌクレアーゼタンパク質またはその任意の組み合わせが、当技術分野において知られている、細胞の中に外因性のタンパク質および/または核酸を導入するための任意の従来の技術を使用して、宿主細胞の中に導入されてもよい。そのような方法は、溶液からの細胞による分子の直接的な取込みまたはたとえばリポソームもしくは免疫リポソームを使用するリポフェクションを通して促進される取込み;粒子媒介性のトランスフェクションなどを含むが、これらに限定されない。たとえば、米国特許第5,272,065号明細書;Goeddelら編、1990、Methods in Enzymology、vol. 185、Academic Press, Inc.、CA;Krieger、1990、Gene Transfer and Expression−−A Laboratory Manual、Stockton Press、NY;Sambrookら、1989、Molecular Cloning−−A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、NY;およびAusubelら編、Current Edition, Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates and Wiley Interscience、NYを参照されたい。細胞を形質転換するための特定の方法は、当技術分野においてよく知られている。Hinnenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:1292−3(1978);Creggら、Mol. Cell. Biol. 5:3376−3385(1985)を参照されたい。例示的な技術は、スフェロプラスティング(spheroplasting)、エレクトロポレーション、PEG 1000媒介性の形質転換、および酢酸リチウムまたは塩化リチウム媒介性の形質転換を含むが、これらに限定されない。
【0100】
いくつかの実施形態において、微粒子銃が、宿主細胞、特に、植物などのような、従来の技術を使用して形質転換する/トランスフェクトするのがそうでなければ困難である宿主細胞の中に組み込みポリヌクレオチド、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、精製ヌクレアーゼタンパク質、またはその任意の組み合わせを導入するために利用される。微粒子銃は、形質転換反応を微視的な金粒子に結び付け、その後、標的細胞に圧縮ガスを使用して粒子を押し込むことによって作用する。
【0101】
いくつかの実施形態において、ヌクレアーゼをコードする核酸を含むポリヌクレオチドが、宿主細胞内でのヌクレアーゼの発現を可能にする発現ベクターである。適した発現ベクターは、大腸菌、酵母、または哺乳動物細胞において遺伝子を発現させる際の使用で知られているものを含むが、これらに限定されない。大腸菌発現ベクターの例は、pSCM525、pDIC73、pSCM351、およびpSCM353を含むが、これらに限定されない。酵母発現ベクターの例は、pPEX7およびpPEX408を含むが、これらに限定されない。適した発現ベクターの他の例は、CEN.ARS配列および酵母選択マーカーを含むシャトルベクターの酵母−大腸菌pRSシリーズ;ならびに2μプラスミドを含む。いくつかの実施形態において、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドが、天然に存在するポリヌクレオチド配列と比較して、宿主細胞においてより高い使用頻度を有するコドンに置換するために修飾することができる。たとえば、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、天然に存在するポリヌクレオチド配列と比較して、S.cerevisiaeにおいてより高い使用頻度を有するコドンに置換するために修飾することができる。
【0102】
ジンクフィンガーヌクレアーゼおよびTAL−エフェクターヌクレアーゼについての場合のように、それぞれの単量体の別々の発現を必要とするヘテロ二量体としてヌクレアーゼが機能するいくつかの実施形態において、ヘテロ二量体の単量体は、それぞれ、同じ発現プラスミドまたは異なるプラスミドから発現されてもよい。複数のヌクレアーゼが異なる標的部位での二本鎖切断を達成するために細胞に導入される実施形態において、ヌクレアーゼが、単一のプラスミドまたは別々のプラスミド上にコードされてもよい。
【0103】
ある実施形態において、ヌクレアーゼ発現ベクターが、発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能にする選択マーカーをさらに含む。そのような選択は、十分な量のヌクレアーゼの発現が起こるのに必要な時間、たとえば12、24、36、48、60、72、84、96、または96時間を超える期間、宿主細胞においてベクターを保持するのに有用になり得、その後、宿主細胞は、発現ベクターがもはや保持されない条件下で成長させてもよい。ある実施形態において、選択マーカーが、URA3、ヒグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、zeocin抵抗性、およびホスフィノトリシンN−アセチルトランスフェラーゼからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、ヌクレアーゼ発現ベクターベクターが、1つ以上のドナー核酸分子の組み込みに続く、発現ベクターを含有しない宿主細胞の選択を可能にする逆選択(counter−selectable)マーカーを含んでいてもよい。使用されるヌクレアーゼ発現ベクターはまた、選択マーカーを有していないまたは選択されないベクターである一時的なベクターであってもよい。特定の実施形態において、一時的なヌクレアーゼ発現ベクターを含む宿主細胞の子孫は、次第にベクターを失う。
【0104】
ある実施形態において、発現ベクターが、ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列に、適切に作用するように連結された転写終結配列およびプロモーターをさらに含む。いくつかの実施形態において、プロモーターが、恒常的プロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターが、誘発性プロモーターである。酵母細胞における使用に適したプロモーターの例証となる例は、K.lactisのTEF1遺伝子のプロモーター、Saccharomyces cerevisiaeのPGK1遺伝子のプロモーター、Saccharomyces cerevisiaeのTDH3遺伝子のプロモーター、抑制性プロモーター、たとえば、Saccharomyces cerevisiaeのCTR3遺伝子のプロモーター、および誘発性プロモーター、たとえば、Saccharomyces cerevisiaeのガラクトース誘発性プロモーター(たとえばGAL1、GAL7、およびGAL10遺伝子のプロモーター)を含むが、これらに限定されない。
【0105】
いくつかの実施形態において、核局在配列(NLS)を含むさらなるヌクレオチド配列が、ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列の5’に連結される。NLSは、より大きなヌクレアーゼ(>25kD)の核局在を促進することができる。いくつかの実施形態において、核局在配列が、SV40核局在配列である。いくつかの実施形態において、核局在配列が、酵母核局在配列である。
【0106】
ヌクレアーゼ発現ベクターは、当業者に明らかな任意の技術によって生成することができる。ある実施形態において、ベクターが、当技術分野においてよく知られているポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および分子クローニング技術を使用して生成される。たとえばPCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification、HA Erlich編、Stockton Press、New York、N.Y.(1989);Sambrookら、2001、Molecular Cloning−A Laboratory Manual, 3
rd edition、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NYを参照されたい。
【0107】
6.7 宿主細胞
他の態様において、本明細書において記載される1つ以上の外因性の核酸をゲノムで組み込むための方法のいずれかによって生成される修飾宿主細胞が、本明細書において提供される。適した宿主細胞は、染色体またはエピソーム遺伝子座の中への目的の核酸または「ドナーDNA」の組み込みが所望される任意の細胞を含む。いくつかの実施形態において、細胞が、相同組換えを実行する能力を有する生物の細胞である。いくつかの例証となる実施形態が、酵母(S.cerevisiae)において実証されるが、本明細書において提供されるゲノム修飾の方法は、組換え系が酵母ほど熟達していない場合でさえ、機能的な組換え系を有するすべての生物有機体で実施することができると考えられる。機能的な相同組換え系を有する他の細胞または細胞型は、Bacillus subtilisおよび大腸菌などのような細菌(これはRecE RecT組換えに熟達している;Muyrersら、EMBO rep. 1:239−243、2000);原生動物(たとえばプラスモジウム、トキソプラズマ);他の酵母(たとえばSchizosaccharomyces pombe);糸状菌(たとえばAshbya gossypii);植物、たとえばコケであるニセツリガネゴケ(Schaefer and Zryd、Plant J. 11:1195−1206、1997);ならびに哺乳動物細胞およびニワトリDT40細胞などのような動物細胞(Diekenら、Nat. Genet. 12:174−182、1996)を含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、宿主細胞が、原核細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞が、真核細胞である。いくつかの実施形態において、細胞が、真菌細胞(たとえば酵母細胞)、細菌細胞、植物細胞、または動物細胞(たとえばニワトリ細胞)である。いくつかの実施形態において、宿主細胞が、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、Cos−7細胞、マウス線維芽細胞、マウス胚性癌腫細胞、またはマウス胚性幹細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞が、昆虫細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞が、S2細胞、Schneider細胞、S12細胞、5B1−4細胞、Tn5細胞、またはSf9細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞が、単細胞真核生物細胞である。
【0109】
特定の実施形態において、宿主細胞が、酵母細胞である。有用な酵母宿主細胞は、微生物保管所(たとえばIFO、ATCCなど)に委託され、中でも、Aciculoconidium、Ambrosiozyma、Arthroascus、Arxiozyma、Ashbya、Babjevia、Bensingtonia、Botryoascus、Botryozyma、Brettanomyces、Bullera、Bulleromyces、Candida、Citeromyces、Clavispora、Cryptococcus、Cystofilobasidium、Debaryomyces、Dekkara、Dipodascopsis、Dipodascus、Eeniella、Endomycopsella、Eremascus、Eremothecium、Erythrobasidium、Fellomyces、Filobasidium、Galactomyces、Geotrichum、Guilliermondella、Hanseniaspora、Hansenula、Hasegawaea、Holtermannia、Hormoascus、Hyphopichia、Issatchenkia、Kloeckera、Kloeckeraspora、Kluyveromyces、Kondoa、Kuraishia、Kurtzmanomyces、Leucosporidium、Lipomyces、Lodderomyces、Malassezia、Metschnikowia、Mrakia、Myxozyma、Nadsonia、Nakazawaea、Nematospora、Ogataea、Oosporidium、Pachysolen、Phachytichospora、Phaffia、Pichia、Rhodosporidium、Rhodotorula、Saccharomyces、Saccharomycodes、Saccharomycopsis、Saitoella、Sakaguchia、Saturnospora、Schizoblastosporion、Schizosaccharomyces、Schwanniomyces、Sporidiobolus、Sporobolomyces、Sporopachydermia、Stephanoascus、Sterigmatomyces、Sterigmatosporidium、Symbiotaphrina、Sympodiomyces、Sympodiomycopsis、Torulaspora、Trichosporiella、Trichosporon、Trigonopsis、Tsuchiyaea、Udeniomyces、Waltomyces、Wickerhamia、Wickerhamiella、Williopsis、Yamadazyma、Yarrowia、Zygoascus、Zygosaccharomyces、Zygowilliopsis、およびZygozyma属に属する酵母細胞を含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、酵母宿主細胞が、Saccharomyces cerevisiae細胞、Pichia pastoris細胞、Schizosaccharomyces pombe細胞、Dekkera bruxellensis細胞、Kluyveromyces lactis細胞、Arxula adeninivorans細胞、またはHansenula polymorpha(現在Pichia angustaとして知られている)細胞である。特定の実施形態において、酵母宿主細胞が、Saccharomyces cerevisiae細胞である。いくつかの実施形態において、酵母宿主細胞が、Saccharomyces fragilis細胞またはKluyveromyces lactis(以前Saccharomyces lactisと呼ばれた)細胞である。いくつかの実施形態において、酵母宿主細胞が、Candida lipolytica、Candida guilliermondii、Candida krusei、Candida pseudotropicalis、またはCandida utilisなどのように、Candida属に属する細胞である。他の特定の実施形態において、酵母宿主細胞が、Kluveromyces marxianus細胞である。
【0111】
特定の実施形態において、酵母宿主細胞が、パン酵母細胞、CBS 7959細胞、CBS 7960細胞、CBS 7961細胞、CBS 7962細胞、CBS 7963細胞、CBS 7964細胞、IZ−1904細胞、TA細胞、BG−1細胞、CR−1細胞、SA−1細胞、M−26細胞、Y−904細胞、PE−2細胞、PE−5細胞、VR−1細胞、BR−1細胞、BR−2細胞、ME−2細胞、VR−2細胞、MA−3細胞、MA−4細胞、CAT−1細胞、CB−1細胞、NR−1細胞、BT−1細胞、およびAL−1細胞からなる群から選択されるSaccharomyces cerevisiae細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞が、PE−2細胞、CAT−1細胞、VR−1細胞、BG−1細胞、CR−1細胞、およびSA−1細胞からなる群から選択されるSaccharomyces cerevisiae細胞である。特定の実施形態において、Saccharomyces cerevisiae宿主細胞が、PE−2細胞である。他の特定の実施形態において、Saccharomyces cerevisiae宿主細胞が、CAT−1細胞である。他の特定の実施形態において、Saccharomyces cerevisiae宿主細胞が、BG−1細胞である。
【0112】
いくつかの実施形態において、酵母宿主細胞が、工業用の発酵、たとえばバイオエタノール発酵に適した細胞である。特定の実施形態において、細胞が、工業用発酵環境の認識されるストレス条件である高溶媒濃度、高温、基質利用の拡張、栄養素制限、浸透圧ストレス、酸性度、亜硫酸塩、および細菌コンタミネーションまたはその組み合わせ下で存続するように条件付けられる。
【0113】
6.8 キット
他の態様において、本明細書において記載される1つ以上の外因性の核酸をゲノムで組み込むための方法を実行するのに有用なキットが、本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、キットが、
(a)複数の外因性の核酸であって、外因性の核酸(ES)
xが、それぞれ、
(i)第1の相同性領域(HR1)
xおよび第2の相同性領域(HR2)
xであって、(HR1)
xおよび(HR2)
xが、宿主細胞ゲノムの選択される標的部位(TS)
xで(ES)
xの宿主細胞媒介性の相同組換えを開始することができる、第1の相同性領域(HR1)
xおよび第2の相同性領域(HR2)
xならびに
(ii)(HR1)
xの3’および(HR2)
xの5’に位置づけられる目的の核酸(D)
xを含む、複数の外因性の核酸、
(b)複数のヌクレアーゼであって、ヌクレアーゼ(N)
xが、それぞれ、(TS)
xで切断することができ、前記切断が、(TS)
xでの(ES)
xの相同組換えをもたらす複数のヌクレアーゼを含み、
xが、1〜nの任意の整数であり、nが、少なくとも2である。
【0114】
いくつかの実施形態において、(D)
xが、選択マーカー、プロモーター、エピトープタグをコードする核酸配列、目的の遺伝子、レポーター遺伝子、および終止コドンをコードする核酸配列からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、キットが、複数のプライマー対(P)
xをさらに含み、プライマー対が、それぞれ、PCRによって、(TS)
xでの(ES)
xの組み込みを同定することができる。いくつかの実施形態において、(ES)
xが、線状である。いくつかの実施形態において、(ES)
xが、環状である。
【0115】
特定の実施形態において、キットが、酵母ゲノムのおよそ6000の遺伝子の遺伝子座のいずれかの内の特有の標的部位での外因性の核酸の部位特異的組み込みを可能にする。これらの実施形態において、n=≧6000であり、(TS)
xが、それぞれ、酵母細胞ゲノムの単一の遺伝子座に対して特有である。
【0116】
いくつかの実施形態において、キットが、宿主酵母細胞の任意の遺伝子座の中に1つ以上の外因性の核酸を組み込むための方法について説明する、使用のための説明書をさらに含む。
【実施例】
【0117】
7.実施例
7.1 実施例1:複数の外因性の核酸の同時の複数の組み込み
本明細書において記載される方法および組成物は、1回の形質転換ステップにおいて酵母細胞ゲノムの2つの遺伝子座で組み込まれた2つの外因性の核酸を含む修飾酵母細胞を作り出すために実行され、修飾酵母細胞の回収は、選択マーカー(複数可)の使用を必要としない。
【0118】
(a)NDT80遺伝子座内に位置づけられるF−CphIエンドヌクレアーゼについての、あらかじめ導入された認識部位および(b):HO遺伝子座内に位置づけられるI−SceIエンドヌクレアーゼについての、あらかじめ導入された認識部位を含む宿主株が、提供される。宿主細胞は、(1)F−CphIをコードする発現プラスミド;(2)I−SceIをコードする発現プラスミド;(3)NDT80遺伝子座の5’および3’領域に対応する>500bp配列の2つのストレッチが側面に位置する緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする発現カセットを含む線状DNA;ならびに(4)HO遺伝子座の5’および3’領域に対応する>500bp配列の2つのストレッチが側面に位置するlacZをコードする発現カセットを含む線状DNAにより同時に形質転換される。それぞれF−CphIおよびI−SceIをコードする発現プラスミドを包含する代わりとして、精製F−CphIタンパク質および精製I−SceIタンパク質が、形質転換反応に含まれる。非ダブルストランドブレーク対照は、F−CphIおよびI−SceI発現プラスミドまたは精製タンパク質の非存在下において、線状組み込み構築物(3)および(4)のみによる宿主細胞の形質転換によって実行される。
【0119】
実験用および対照形質転換体は、選択なしの培地上で平板培養され、それぞれのプレートからのコロニーは、GFPおよびlacZの発現についてそれぞれ可視化される。コロニーPCRは、それぞれ組み込まれた組み込み構築物(3)または(4)およびそれらのそれぞれの標的配列の間のジャンクションの上流および下流にアニールするプライマー対により独立して実行され、組み込みの忠実度および頻度を確認する。
【0120】
7.2 実施例2:複数の外因性の核酸の同時の複数の組み込み
本実施例は、宿主細胞ゲノムにおける標的二本鎖切断の誘発の後に、S.cerevisiae宿主の3つの異なる遺伝子座での3つの外因性の核酸の同時の組み込みを実証する結果を提供する。手短に言えば、エメラルドグリーン蛍光タンパク質の切断型非機能的コピー(emgfp△)をコードする外因性の「標的」核酸配列を、宿主酵母細胞の、それぞれ、HO、YGR250c、およびNDT80遺伝子座の中に組み込んだ。組換え細胞は、エメラルドグリーン蛍光タンパク質(EmGFP)のインタクトで機能的なコピーをコードする線状「ドナー」DNAおよび(1)空ベクターまたは(2)emgfp△コード配列内の配列を特異的に認識し、かつ切断するジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN.gfp)をコードする発現ベクター、pZFN.gfpのどちらかにより形質転換した。形質転換されたコロニーは、ドナーEmGFPコード配列との、標的emgfp△コード配列の1つ、2つ、または3つのゲノム組み込みコピーの交換について、コロニーPCR(cPCR)によってスクリーニングした。
【0121】
7.2.1. 標的DNAの構築および組み込み
ヌクレアーゼ媒介性の二本鎖切断のための外因性のゲノム標的部位を生成するために、内容についてそれらの全体が参照によってこれによって組み込まれる米国特許第8,110,360号明細書において記載されるように、emgfp△をコードする標的DNAを、RYSE媒介性のアセンブリを使用して構築した。野生型EmGFPコード配列(配列番号:1)のヌクレオチド450〜462を、以下の配列:5’CGTCTAAATCATG3’(配列番号:2)と交換し、(1)EmGFPの152位での成熟前終止コドン(emgfp△)および(2)ZFN.gfpについての認識/切断配列の導入がもたらされた。
【0122】
HO、YGR250c、およびNDT80遺伝子座のそれぞれの中へのemgfp△コード配列の標的組み込みのために、emgfp△コード配列に、それぞれの遺伝子座についての上流および下流の相同配列の約200〜500bp(配列番号:3〜8)が側面に位置した。組み込み事象が成功したコロニーの選択のために、特有の選択マーカーもまた、それぞれの構築物の中に取り込み、emgfp△コード配列の5’に位置づけられた。HO組み込み構築物は、KanRを含み、YGR250c組み込み構築物は、URA3を含み、NDT80組み込み構築物は、NatRを含んだ。組み込み構築物は、それぞれ、ナイーブCEN.PK2一倍体酵母株(株A)に順次、形質転換し、株は、emgfp△コード配列の3つの組み込みコピーを有するかを確認した。
【0123】
7.2.2. ZFN酵母発現プラスミドの構築
ジンクフィンガーヌクレアーゼは、2つの機能的ドメイン:ジンクフィンガータンパク質の鎖から構成されるDNA結合ドメインおよびFokIのヌクレアーゼドメインから構成されるDNA切断ドメインからなる。FokIのエンドヌクレアーゼドメインは、DNAを切断するために、必須のヘテロ二量体として機能し、したがって、1対のZFNが、その標的配列に結合し、切断するために必要とされる。ZFN.gfp(CompoZr(登録商標)ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Sigma−Aldrich、St. Louis、MO)の標的配列は、5’−ACAACTACAACAGCCACAACgtctatATCATGGCCGACAAGCA−3’(配列番号:9)であり、認識配列は、大文字で示し、切断配列は、小文字で示す。
【0124】
高コピーZFN.gfp酵母発現プラスミド、pZFN.gfpは、以下のように構築した。遺伝子ZFN.gfp.1およびZFN.gfp.2は、それぞれ、ZFN.gfpの必須のヘテロ二量体の一方のメンバーをコードするが、哺乳動物発現プラスミドからPCR増幅し、それぞれ、異なるP
GAL1、10プロモーターならびにADH1およびCYC1ターミネーターに融合した。P
GAL10>ZFN.gfp.1−T
ADH1およびP
GAL1>ZFN.gfp.2−T
CYC1の個々のPCR産物を、LEU2選択マーカーを含む直線化ベクター骨格と共に、オーバーラップ末端の相同組換えを介してのインビボにおけるアセンブリのためにナイーブ酵母株の中に同時形質転換した。PCR産物は、pGAL1、10プロモーター配列で組換えられ、末端のプライマーが追加された相同配列を介してベクター骨格の中にアセンブルされた。形質転換体は、ロイシンを欠く最少培地上で選択し、単離し、液体培地中で成長させた。複数のクローン由来のプラスミドは、Zymoprep Yeast Plasmid Miniprep Iキット(Zymo Research)を使用して、酵母から抽出した。その後、抽出プロトコール由来の溶出液を、大腸菌XL−1 blue化学的コンピテント細胞に形質転換した。プラスミドは、大腸菌において一晩増殖させ、ミニプレップした(Qiagen、Valencia、CA)。正確なクローンを制限酵素マッピングによって同定した。
【0125】
7.2.3. ドナーDNAによる形質転換および二本鎖切断の誘発
標準的な酢酸リチウム/SSDNA/PEGプロトコール(Gietz and Woods、Methods Enzymol. 350:87−96(2002))は、EmGFPおよび(1)空ベクターまたは(2)pZFN.gfp発現ベクターのどちらかをコードする線状「ドナー」DNAにより株Aを同時形質転換するために使用した。EmGFPコード配列は、ZFN.gfpについての認識/切断部位内の位置、すなわち、450位(C→G)、456位(A→T)、461位(T→C)、および462位(G→C)でemgfp△コード配列と異なる。したがって、ZFN.gfpは、EmGFP配列内ではなく、emgfp△配列内で認識し、切断することが予想される。
【0126】
1マイクログラムの適切なプラスミドDNAを、70ulの線状EmGFP DNA(約300ng/ul)と共に同時形質転換した。形質転換はすべて、ZFN発現を誘発するためにYP+2%ガラクトース中で一晩回復させた。様々な希釈液を、ロイシンを欠く最少培地寒天プレート上で平板培養し、プラスミドDNAにより形質転換されたコロニーを選択した。プレートは、30℃で3日間培養した。
【0127】
7.2.4. 複数の同時の組み込みについての確認
コロニーPCRは、それぞれの標的遺伝子座での、EmGFPコード配列との、emgfp△コード配列の交換の頻度を決定するために実行した。DNAは、それぞれの形質転換由来の96コロニーから準備し、それぞれ、EmGFPおよびHO、EmGFPおよびNDT80、ならびにEmGFPおよびYGR250cに対して特異的なプライマー対によりプローブし、その結果、それぞれの遺伝子座でのEmGFPコード配列の組み込みの成功により、予測されるサイズの増幅産物が産生されることが予想され、非組み込みによっては、増幅産物を産生しないことが予想された。
【0128】
【表2】
図5において示されるように、線状EmGFPドナーDNA(配列番号:1)および空ベクター対照により形質転換された96コロニーのうち、PCRの間に増幅産物は産生されず、二本鎖切断の非存在下において、標的emgfp△コード配列を含む3つの遺伝子座のいずれにおいても、組み込み事象、すなわち交換が成功しなかったことを示した。対照的に、線状EmGFP DNAおよびpZFN.gfpにより形質転換された96コロニーのうち、2つのコロニーが、EmGFPコード配列と交換された1つの遺伝子座を有し、4つのコロニーが、交換された2つの遺伝子座を有し、23のコロニーが、交換された3つの遺伝子座をすべて有した(
図6)。コロニーPCR結果は、プレート上で、形質転換されたコロニーの蛍光を可視化することによって確証した(データ示さず)。EmGFP DNAおよび空ベクターにより形質転換されたコロニーのいずれも、緑色に見えず、標的emgfp△コード配列のいずれも、機能的EmGFPコード配列と交換されなかったことを示した。対照的に、EmGFP DNAおよびpZFN.gfpにより形質転換されたコロニーの約20%は、緑色に見え、cPCRによって観察された組み込み事象の頻度とおよそ関係した。
【0129】
これらの結果は、宿主細胞のゲノムにおける複数の標的二本鎖切断の誘発が、外因性のドナー核酸の同時の複数の標的組み込みを促進することができることを実証する。
【0130】
7.3 実施例3:アモルファジエン産生株へのファルネセン産生株の変換を促進するためのテルペンシンターゼ遺伝子の同時の複数の組み込み
本実施例は、高メバロン酸経路フラックスのために遺伝子操作されたS.cerevisiae宿主の3つの異なる遺伝子操作された遺伝子座での3つのセスキテルペンシンターゼ遺伝子の同時の組み込みを実証する結果を提供する。その結果として、ファルネセンを産生し、ファルネセンシンターゼ遺伝子のプラスミドベースのコピーを含む親株は、アモルファジエンシンターゼの複数のゲノム組み込みコピーを含むアモルファジエン産生株に変換された。手短に言えば、F−CphI部位が側面に位置するURA3、NatR、およびKanRマーカーカセットを、宿主株の、それぞれ、Gal80、HXT3、およびMatα遺伝子座で組み込ませた。その後、宿主は、F−CphIエンドヌクレアーゼをコードするプラスミドならびにそれぞれ、それらのそれぞれの標的遺伝子座に対する相同性領域が側面に位置する、Gal1プロモーターから発現され、CYC1ターミネーターによって終結するアモルファジエンシンターゼ(ADS)遺伝子(ADSカセット)の別個のコドン最適化を含有する3つの線状「ドナー」DNA構築物により同時形質転換した。形質転換されたコロニーは、ADSカセットとの、1つ、2つ、または3つのゲノム組み込み標的マーカー遺伝子座の交換について、コロニーPCR(cPCR)によってスクリーニングした。三重に組み込まれた株を同定し、第4のADSカセットを組み込むことによってさらに遺伝子操作し、結果として生じる株は、ファルネセンシンターゼをコードするプラスミドの損失を可能にする条件下で培養し、その結果、その産物プロファイルは、ファルネセンからアモルファジエンに完全に変換された。
【0131】
7.3.1. 親ファルネセン産生株の構築
アモルファジエンシンターゼをコードする外因性のドナーDNAの複数の同時の組み込みに有用なファルネセン産生酵母株、Y3639を、以下のように調製した。
【0132】
株Y93(MAT A)およびY94(MATアルファ)は、それぞれ、酵母菌株Y002およびY003(それぞれ、CEN.PK2バックグラウンドMAT AまたはMATアルファ;ura3−52;trp1−289;leu2−3,112;his3△1;MAL2−8C;SUC2;van Dijkenら(2000)Enzyme Microb. Technol. 26:706−714)のERG9遺伝子のプロモーターを、Saccharomyces cerevisiaeのMET3遺伝子のプロモーターと交換することによって生成した。この目的のために、指数関数的に成長しているY002およびY003細胞は、ERG9上流および下流配列が側面に位置する、Kluyveromyces lactisのTef1遺伝子のプロモーターおよびターミネーターが側面に位置するカナマイシン抵抗性マーカー(KanMX)、ERG9コード配列、ERG9プロモーターの切断型セグメント(trunc.PERG9)、ならびにMET3プロモーター(PMET3)を含んだ組み込み構築物i8(配列番号:14)により形質転換した。宿主細胞形質転換体は、0.5μg/mL Geneticin(Invitrogen Corp.、Carlsbad、CA)を含む培地上で選択し、選択されたクローンは、診断用PCRによって確認し、株Y93およびY94が得られた。
【0133】
株Y176(MAT A)およびY177(MATアルファ)は、それぞれ、株Y93およびY94におけるADE1遺伝子のコード配列を、Candida glabrataのLEU2遺伝子(CgLEU2)のコード配列と交換することによって生成した。この目的のために、3.5kb CgLEU2ゲノム遺伝子座は、プライマー61−67−CPK066−G(配列番号:15)および61−67−CPK067−G(配列番号:16)を使用し、Candida glabrataゲノムDNA(ATCC、Manassas、VA)からPCR増幅し、PCR産物を指数関数的に成長しているY93およびY94細胞の中に形質転換した。宿主細胞形質転換体は、CSM−L上で選択し、選択されたクローンは、診断用PCRによって確認し、株Y176およびY177が得られた。
【0134】
株Y188は、株Y176の中に、それぞれ、Saccharomyces cerevisiaeのGAL1またはGAL10遺伝子のガラクトース誘発性プロモーターの調節性の制御下にある、Saccharomyces cerevisiaeのERG13、ERG10、およびERG12遺伝子のコード配列ならびにSaccharomyces cerevisiaeのHMG1遺伝子の切断型コード配列のさらなるコピーを導入することによって生成した。この目的のために、指数関数的に成長しているY176細胞を、PmeI制限エンドヌクレアーゼ(New England Biolabs、Beverly、MA)により消化した、2μgの発現プラスミドpAM491およびpAM495により形質転換した。宿主細胞形質転換体は、ウラシルおよびヒスチジンを欠くCSM(CSM−U−H)上で選択し、選択されたクローンは、診断用PCRによって確認し、株Y188が得られた。
【0135】
株Y189は、株Y177の中に、それぞれ、Saccharomyces cerevisiaeのGAL1またはGAL10遺伝子のガラクトース誘発性プロモーターの調節性の制御下にある、Saccharomyces cerevisiaeのERG20、ERG8、およびERG19遺伝子のコード配列ならびにSaccharomyces cerevisiaeのHMG1遺伝子の切断型コード配列のさらなるコピーを導入することによって生成した。この目的のために、指数関数的に成長しているY188細胞を、PmeI制限エンドヌクレアーゼにより消化した、2μgの発現プラスミドpAM489およびpAM497により形質転換した。宿主細胞形質転換体は、トリプトファンおよびヒスチジンを欠くCSM(CSM−T−H)上で選択し、選択されたクローンは、診断用PCRによって確認し、株Y189が得られた。
【0136】
株Y238は、株Y188およびY189を交配し、それぞれ、Saccharomyces cerevisiaeのGAL1またはGAL10遺伝子のガラクトース誘発性プロモーターの調節性の制御下にある、Saccharomyces cerevisiaeのIDI1遺伝子のコード配列ならびにSaccharomyces cerevisiaeのHMG1遺伝子の切断型コード配列のさらなるコピーを導入することによって生成した。この目的のために、株Y188およびY189のおよそ1×10
7細胞を、室温で6時間YPD培地プレート上で混合し、二倍体細胞をCSM−H−U−T上で選択し、指数関数的に成長している二倍体を、PmeI制限エンドヌクレアーゼにより消化した2μgの発現プラスミドpAM493により形質転換した。宿主細胞形質転換体は、アデニンを欠くCSM(CSM−A)上で選択し、選択されたクローンは、診断用PCRによって確認し、株Y238が得られた。
【0137】
株Y210(MAT A)およびY211(MATアルファ)は、株Y238を胞子にすることによって生成した。二倍体細胞は、2%酢酸カリウムおよび0.02%ラフィノース液体培地中で胞子になり、Singer Instruments MSM300マイクロマニピュレータ(Singer Instrument Co, LTD. Somerset、UK)を使用して、およそ200の遺伝的四分子(genetic tetrad)が単離された。胞子は、CSM−A−H−U−T上で選択し、選択されたクローンは、診断用PCRによって確認し、株Y210(MAT A)およびY211(MATアルファ)が得られた。
【0138】
株Y221は、ベクターpAM178により、指数関数的に成長しているY211細胞を形質転換することによって生成した。宿主細胞形質転換体は、CSM−L上で選択した。
【0139】
株Y290は、株Y221のGAL80遺伝子のコード配列を欠失させることによって生成した。この目的のために、指数関数的に成長しているY221細胞は、GAL80上流および下流配列が側面に位置する、Kluyveromyces lactisのTef1遺伝子のプロモーターおよびターミネーターが側面に位置するヒグロマイシンB抵抗性マーカー(hph)を含んだ組み込み構築物i32(配列番号:17)により形質転換した。宿主細胞形質転換体は、ヒグロマイシンBを含む培地上で選択し、選択されたクローンは、診断用PCRによって確認し、株Y290が得られた。
【0140】
株Y318は、ロイシンリッチ培地における一連の増殖によって、株Y290からpAM178ベクターを除去し、CSM−L上でそれらが成長することができない個々のコロニーを試験することによって生成し、株Y318が得られた。
【0141】
株Y409は、β−ファルネセンシンターゼをコードする異種ヌクレオチド配列を株Y318の中に導入することによって生成した。この目的のために、指数関数的に成長しているY318細胞を、発現プラスミドpAM404により形質転換した。宿主細胞形質転換体は、CSM−L上で選択し、株Y409が得られた。
【0142】
株Y419は、株Y409のGALプロモーターを恒常的に活性にすることによって生成した。この目的のために、指数関数的に成長しているY409細胞は、修飾ERG9プロモーターおよびコード配列の上流および下流配列が側面に位置する、Kluyveromyces lactisのTef1遺伝子のプロモーターおよびターミネーターが側面に位置する、Streptomyces nourseiのノーセオトリシン(nourseothricin)抵抗性マーカー(NatR)ならびにその天然のプロモーターの「適切に作用する恒常的」バージョン(PGAL4oc; Griggs & Johnston(1991)PNAS 88(19):8597−8601)およびGAL4ターミネーター(TGAL4)の調節性の制御下のSaccharomyces cerevisiaeのGAL4遺伝子のコード配列を含んだ組み込み構築物i33(配列番号:18)により形質転換した。宿主細胞形質転換体は、ノーセオトリシンを含む培地上で選択し、選択されたクローンは、診断用PCRによって確認し、株Y419が得られた。
【0143】
株Y677は、株Y419の修飾GAL80遺伝子座に、Saccharomyces cerevisiaeのGAL1遺伝子のプロモーターの調節性の制御下のSaccharomyces cerevisiaeのERG12遺伝子のコード領域のさらなるコピーを導入することによって生成した。この目的のために、指数関数的に成長しているY677細胞は、Kluyveromyces lactisのTef1遺伝子のプロモーターおよびターミネーターが側面に位置する、Streptomyces nourseiのカナマイシン抵抗性マーカー(KanR)ならびにGAL1プロモーター(PGAL1)およびERG12ターミネーター(TERG12)が側面に位置する、Saccharomyces cerevisiaeのERG12遺伝子のコード配列およびターミネーター配列を含んだ組み込み構築物i37(配列番号:19)により形質転換した。宿主細胞形質転換体は、カナマイシンを含む培地上で選択し、選択されたクローンは、診断用PCRによって確認し、株Y677が得られた。
【0144】
株Y1551は、化学的突然変異誘発によって株Y677から生成した。突然変異した株は、β−ファルネセンの産生の増加についてスクリーニングし、株Y1551が得られた。
【0145】
株Y1778は、化学的突然変異誘発によって株Y1551から生成した。突然変異した株は、β−ファルネセンの産生の増加についてスクリーニングし、株Y1778が得られた。
【0146】
株Y1816は、株Y1778のHXT3コード配列を、一方がSaccharomyces cerevisiaeに由来し、他方がC.butylicum由来であるアセトアセチル−CoAチオラーゼコード配列の2つのコピーならびにB.junceaのHMGS遺伝子のコード配列の1つのコピーと交換することによって生成した。この目的のために、指数関数的に成長しているY1778細胞は、Saccharomyces cerevisiaeのHXT3遺伝子の上流および下流配列が側面に位置する、Kluyveromyces lactisのTef1遺伝子のプロモーターおよびターミネーターが側面に位置するヒグロマイシンB抵抗性マーカー(hyg)、切断型TDH3プロモーター(tPTDH3)およびAHP1ターミネーター(TAHP1)が側面に位置するSaccharomyces cerevisiaeのERG10遺伝子のコード配列、YPD1プロモーター(PYPD1)およびCCW12ターミネーター(TCCW12)が側面に位置する、C.butylicumのアセトアセチル−CoAチオラーゼ遺伝子のコード配列(チオラーゼ)、ならびにTUB2プロモーター(PTUB2)が先行する、B.junceaのHMGS遺伝子のコード配列(HMGS)を含んだ組み込み構築物i301(配列番号:20)により形質転換した。宿主細胞形質転換体は、ヒグロマイシンBを含む培地上で選択し、選択されたクローンは、診断用PCRによって確認し、株Y1816が得られた。
【0147】
株Y2055は、化学的突然変異誘発によって株Y1778から生成した。突然変異株は、β−ファルネセンの産生の増加についてスクリーニングし、株Y2055が得られた。
【0148】
株Y2295は、化学的突然変異誘発によって株Y2055から生成した。突然変異株は、β−ファルネセンの産生の増加についてスクリーニングし、株Y2295が得られた。
【0149】
株Y3111は、株Y2295の交配型をMAT AからMATアルファに切り替えることによって生成した。この目的のために、指数関数的に成長しているY2295細胞は、MATアルファ交配遺伝子座およびヒグロマイシンB抵抗性マーカー(hygA)を含んだ組み込み構築物i476(配列番号:21)により形質転換した。宿主細胞形質転換体は、ヒグロマイシンBを含む培地上で選択し、選択されたクローンは、診断用PCRによって確認し、株Y3111が得られた。
【0150】
株Y2168は、化学的突然変異誘発によって株Y1816から生成した。突然変異株は、β−ファルネセンの産生の増加についてスクリーニングし、株Y2168が得られた。
【0151】
株Y2446は、化学的突然変異誘発によって株Y2168から生成した。突然変異株は、β−ファルネセンの産生の増加についてスクリーニングし、株Y2446が得られた。
【0152】
株Y3118は、株Y2446の天然のURA3遺伝子座の中に、Saccharomyces cerevisiaeのGAL80遺伝子のコード配列、プロモーター、およびターミネーターを挿入することによって生成した。この目的のために、指数関数的に成長しているY2446細胞は、オーバーラップURA3配列(これは、相同組換えによるGAL80遺伝子のループアウトによる切り取りおよびもとのURA3配列の復原を可能にする)が側面に位置する、Saccharomyces cerevisiaeのGAL80遺伝子のプロモーター、ターミネーター、およびコード配列(GAL80)を含んだ組み込み構築物i477(配列番号:22)により形質転換した。宿主細胞形質転換体は、5−FOAを含む培地上で選択し、株Y3118が得られた。
【0153】
株Y3215は、株Y3111およびY3118を交配することによって生成した。株Y3111およびY3118のおよそ1×10
7細胞を、交配を可能にするために、室温で6時間YPD培地プレート上で混合し、その後、YPD寒天プレート上での平板培養を続け、単一のコロニーを単離した。二倍体は、hphAによりマークされたMATアルファ遺伝子座および野生型MAT A遺伝子座の両方の存在について、コロニーPCRによってスクリーニングすることによって同定した。
【0154】
株Y3000は、株Y3215を胞子にし、GAL80コード配列をループアウトすることによって生成した。二倍体細胞は、2%酢酸カリウムおよび0.02%ラフィノース液体培地中で胞子になった。無作為の胞子を、単離し、YPD寒天上で平板培養し、3日間成長させ、その後、GAL80を欠く(すなわち、機能的URA3遺伝子を有する)細胞のみの成長を可能にするCSM−U上でレプリカ平板培養した(replica−plate)。その後、胞子は、β−ファルネセン産生について試験し、最良の産生株を同定し、組み込み構築物i301の存在は、診断用PCRによって確認し、株Y3000が得られた。
【0155】
株Y3284は、株Y3000からURA3マーカーを除去することによって生成した。この目的のために、指数関数的に成長しているY3000細胞は、Saccharomyces cerevisiaeのURA3遺伝子の上流および下流配列が側面に位置する、Saccharomyces cerevisiaeのGAL1またはGAL10遺伝子のガラクトース誘発性プロモーターの制御下の、SalmonellaのhisGコード配列ならびにSaccharomyces cerevisiaeのERG13遺伝子のコード配列およびHMG1遺伝子の切断型コード配列を含んだ組み込み構築物i94(配列番号:23)により形質転換した。宿主細胞形質転換体は、5−FOAを含む培地上で選択し、選択されたクローンは、診断用PCRによって確認し、株Y3284が得られた。
【0156】
株Y3385は、株Y3284のNDT80コード配列を、Saccharomyces cerevisiaeのアセチル−CoAシンテターゼ遺伝子のコード配列およびZ.mobilisのPDC遺伝子のコード配列のさらなるコピーと交換することによって生成した。この目的のために、指数関数的に成長しているY3385細胞は、上流および下流NDT80配列が側面に位置するURA3マーカー、HXT3プロモーター(PHXT3)およびPGK1ターミネーター(TPGK1)が側面に位置する、Saccharomyces cerevisiaeのACS2遺伝子のコード配列(ACS2)、ならびにGAL7プロモーター(PGAL7)およびTDH3ターミネーター(TTDH3)が側面に位置する、Z.mobilisのPDC遺伝子のコード配列(zmPDC)を含んだ組み込み構築物i467(配列番号:24)により形質転換した。宿主細胞形質転換体は、CSM−U上で選択し、選択されたクローンは、診断用PCRによって確認し、株Y3385が得られた。
【0157】
株Y3547は、化学的突然変異誘発によって株Y3385から生成した。突然変異した株は、β−ファルネセンの産生の増加についてスクリーニングし、株Y3547が得られた。
【0158】
株Y3639は、化学的突然変異誘発によって株Y3547から生成した。突然変異した株は、β−ファルネセンの産生の増加についてスクリーニングし、株Y3639が得られた。
【0159】
7.3.2. 標的DNAの構築および組み込み
FcphIエンドヌクレアーゼ媒介性の二本鎖切断のための外因性のゲノム標的部位を、株Y3639の3つの異なる遺伝子座の中に組み込んだ。3つの標的部位カセットは、それぞれ、FcphIエンドヌクレアーゼについての認識配列ならびにそれぞれ、(1)URA3(修飾Gal80遺伝子座に対する相同性領域が側面に位置する)(配列番号:25);(2)NatR(修飾HXT3遺伝子座に対する相同性領域が側面に位置する)(配列番号:26);および(3)KanR(修飾Matα遺伝子座に対する相同性領域が側面に位置する)(配列番号:27)についてのコード配列を含んだオーバーラップ断片のPCRアセンブリを使用して構築した。標的部位カセットは、それぞれ、Y3639の中に連続的に形質転換し、株は、正確な遺伝子座に、F−CphIが側面に位置するマーカーカセットの3つの組み込みコピーを有することを、コロニーPCRによって確認した(「株B」)。
【0160】
7.3.3. F−CphI酵母発現プラスミドの構築
HygR選択マーカーを含むF−CphI酵母発現プラスミドpAM1799は、その全体が参照によってこれによって組み込まれる米国特許第7,919,605号明細書において以前に記載される。
【0161】
7.3.4. ドナーDNAによる形質転換および二本鎖切断の誘発
標準的な酢酸リチウム/SSDNA/PEGプロトコール(Gietz and Woods、Methods Enzymol. 2002;350:87−96)は、42度での熱ショックの前に、細胞の30分間の30度でのインキュベーションを含むように修飾した。この方法は、FcphIエンドヌクレアーゼをコードするpAM1799ならびにそれぞれ、株Bの、それぞれ、修飾Gal80(配列番号:28)、HXT3(配列番号:29)、およびMatα遺伝子座(配列番号:30)に対する相同性領域が側面に位置するクソニンジンのアモルファジエンシンターゼ(ADS)についてのコドン最適化コード配列を含む3つの線状「ドナー」DNAにより株Bを同時形質転換するために使用した。
【0162】
1マイクログラムのpAM1799を、約100ngのそれぞれのADSドナーDNAと共に同時形質転換した。形質転換はすべて、F−CphI発現を誘発するためにYP+2%ガラクトース中で一晩回復させた。様々な希釈液を、ヒグロマイシンを含有するYPD寒天プレート上で平板培養し、プラスミドDNAにより形質転換されたコロニーを選択した。プレートは、30℃で3日間培養した。
【0163】
7.3.5. 複数の同時の組み込みについての確認
コロニーPCR(cPCR)は、ADSカセットコード配列とのF−CphIが側面に位置するマーカーカセットコード配列の交換の頻度を決定するために実行した。DNAは、それぞれADSおよびGal80遺伝子座、ADSおよびHXT3遺伝子座、ならびにADSおよびMatα遺伝子座に対して特異的なプライマー対によりプローブした20コロニーから準備し、その結果、それぞれの遺伝子座でのADSカセットコード配列の組み込みの成功により、予測されるサイズの増幅産物が産生されることが予想され、非組み込みによっては、増幅産物を産生しないことが予想された。それぞれの遺伝子座の5’および3’末端から増幅産物を産生するためのPCR反応は、マルチプレックスで試みた。いくつかの場合において、5’または3’増幅産物のみが検出に成功したが、ADSカセットの適切な組み込みは、より大きなPCR断片を配列決定することによってこれらの遺伝子座で確認された。
【0164】
【表3】
cPCRによってスクリーニングした20コロニーのうち、14が、Gal80遺伝子座で組み込まれたADSを有し、17が、HXT3遺伝子座で組み込まれたADSを有し、4つが、Matα遺伝子座で組み込まれたADSを有した。Matα遺伝子座での組み込みの低い率は、F−CphI部位の側面に位置する定方向反復塩基配列によって媒介されるこの遺伝子座での自己閉環によって説明することができる。合計で、6つのクローンが、単一の部位で組み込まれたADSを有し、10のクローンが、2つの部位で組み込まれたADSを有し、3つのクローンが、3つの遺伝子座すべてで組み込まれたADSを有した(「株C」)。三重に組み込まれた株は、両方の側面を包含する、より長いPCR産物を配列決定することによってさらに確認した。
【0165】
1.1.5 組み込まれたADS株の完成およびセスキテルペンアッセイ
三重に組み込まれたADS株は、標準的なプロトコールを使用して、His3遺伝子座で、URAカセット(配列番号:40)によりマークされたADSの最終のコピーを組み込むことによってさらに遺伝子操作し、結果として生じる株を、この第4のコピーについて確認した(「株D」)。最終的に、Leu+によりマークされた高コピーファルネセンシンターゼプラスミド(pAM404)を失わせるために、株D細胞を、非選択的培地中で継代培養した(「株E」)。
【0166】
株Eのいくつかの分離株は、株Dおよびもとの親株Bと一緒にセスキテルペン産生についてアッセイした。手短に言えば、株B、D、およびEの分離株は、ウェル当たり2%スクロースと共に360μLのBird Seed Medium(BSM)を含有する96ウェルプレートの別々のウェル中でインキュベートした(前培養)。999rpmの撹拌による33.5℃での3日間のインキュベーションの後に、14.4μLのそれぞれのウェルを、4%スクロースと共に360μLの新鮮なBSMを含有する新しい96ウェルプレートのウェルの中に接種した(産生培養)。999rpmの撹拌による33.5℃でのさらに2日間のインキュベーションの後に、試料は、採取し、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によってセスキテルペン産生について分析した。試料は、メタノール−ヘプタン(1:1 v/v)により抽出し、混合物は、細胞性の物質を除去するために遠心分離した。メタノール−ヘプタン抽出物の一定分量をヘプタン中に希釈し、その後、パルスドスプリット注入を使用して、メチルシリコーン固定相に注入した。ファルネセンおよびアモルファジエンは、水素炎イオン化検出(FID)と共にGCを使用して、沸点によって分離した。トランス−β−カリオフィレンは、特定のGCオーブンプロファイルの間の注入および溶離の成功についてモニターするために、保持時間マーカーとして使用した。
【0167】
図7において示されるように、セスキテルペン産生合計は、すべての株についてほとんど同様のままであった(3〜3.5g/L)が、産物プロファイルは、ファルネセン(株B)〜混合産物(株D)〜アモルファジエン(株E)の変換に成功した。
【0168】
これらの結果は、宿主細胞のゲノムにおける複数の標的二本鎖切断の誘発が、機能的遺伝子カセットの同時の複数の組み込みを促進することができることを実証し、この場合、1回の形質転換におけるアモルファジエン産生株へのファルネセン産生株の変換を促進する。
【0169】
7.4 実施例4:ファルネセンシンターゼの複数の組み込みコピーの、アモルファジエンシンターゼとの同時の交換
本実施例は、4つのゲノムで組み込まれたテルペンシンターゼ遺伝子の同時の交換が、シンターゼコード領域内のデザイナーヌクレアーゼ誘発性の二本鎖切断によって促進されたことを実証する結果を提供する。手短に言えば、株Y3639(実施例3において記載される)から誘導したが、ファルネセンシンターゼ(FS)遺伝子の4つの、染色体外コピーではなく組み込みコピーを含む、既存のファルネセン産生株を、デザイナーTAL−エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)をコードするプラスミドおよび新しいテルペンシンターゼ遺伝子をコードする4つの線状ドナーDNAにより同時形質転換した。デザイナーTALENは、組み込まれたファルネセンシンターゼ遺伝子に対して特有の配列に結合し、切断することができる。形質転換されたコロニーは、コロニーPCR(cPCR)によってスクリーニングし、1、2、3、または4つのゲノムで組み込まれた標的マーカー遺伝子座を有する株を同定した。
【0170】
7.4.1. 標的DNAの構築および組み込み
そのそれぞれの標的遺伝子座に対する相同性領域(約500bp)が側面に位置するテルペンシンターゼコード配列をそれぞれが含む4つのドナーカセットを、オーバーラップPCRによってアセンブルした。ドナーDNAのうちの3つは、ADSコード配列を含み、また選択マーカーを含まなかった(配列番号41〜43)が、最終のドナーDNAは、URA3マーカーカセット(配列番号:44)に融合された、ファルネセンシンターゼ(FS)の新規なコドン最適化を含むカセットとした。ドナーDNAのどれも、FS特異的TALENによって認識される標的部位を含有しなかった(5’−TAGTGGAGGAATTAAAAGAGGAAGTTAAGAAGGAATTGATAACTATCAA−3’(配列番号:45))。
【0171】
株(株F)における4つの組み込みFSカセットの交換のために、hyg+によりマークされたTALENプラスミドは、実施例3において記載されるプロトコールを使用して、約500ngのそれぞれの線状ドナーDNAと共に宿主株の中に同時形質転換した。様々な希釈液を、CSM−URA+Hygプレート上で平板培養し、3日間30度でインキュベートした。
【0172】
7.4.2. 複数の同時の組み込みについての確認
TALENプラスミドの選択およびCSM−URA+Hygプレート上でのURA3によりマークされたコドン−FSカセットの組み込みの後に、コロニーPCRは、3つの遺伝子座でのマークなしのADSカセットとの組み込みFSカセットの交換の頻度を決定するために実行した。DNAは、20コロニーから準備し、NDT80、DIT1、およびERG10遺伝子座でのADSカセットの組み込みについて特異的なプライマー対によりプローブし、その結果、それぞれの遺伝子座でのADSカセットコード配列の組み込みの成功により、予測されるサイズの増幅産物が産生されることが予想され、非組み込みによっては、増幅産物を産生しないことが予想された。
【0173】
【表4-1】
検査した48のクローンのうちの3つのクローンが、URA3によりマークされたFSに加えて単一のADSカセットを組み込み、1つのクローンが、2つのADSカセットを組み込み、1つのクローンが、3つのADSカセットをすべて組み込んだ。複数の組み込み結果は、両方の側面を包含する、より長いPCR産物を配列決定することによってさらに確認した。
【0174】
これらの結果は、生合成経路を含む宿主細胞における部位特異的デザイナーヌクレアーゼの発現が、1回の形質転換ステップにおいて、経路遺伝子の複数の組み込みコピーの、新しい経路遺伝子との同時の交換を促進することができることを実証する。
【0175】
7.5 実施例5:別個のデザイナーヌクレアーゼにより切断された2つの遺伝子座の中へのマーカーレスDNA構築物の同時の複数の組み込み
本実施例は、それぞれの部位が別個のデザイナーヌクレアーゼにより切断される、2つの天然の標的部位での2つのマーカーレスDNA構築物の同時の組み込みを実証する結果を提供する。手短に言えば、ADE
−宿主株は、(1)GFPカセットを含む線状DNA断片(SFC1遺伝子座に対して相同な上流および下流領域が側面に位置する);(2)ADE2カセットを含む線状DNA断片(YJR030c遺伝子座に対して相同な上流および下流領域が側面に位置する);ならびに(3)それぞれ天然のSFC1およびYJR030cオープンリーディングフレームにおける配列を標的にするデザイナーヌクレアーゼをコードするプラスミド(複数可)により同時形質転換した。プラスミド(複数可)についての選択の後に、形質転換されたコロニーは、GFP蛍光および白色について視覚的にスクリーニングし、ADE
−表現型が補完されたことを示した。コロニーPCR(cPCR)もまた、両方の遺伝子座の交換を確認するために実行した。興味深いことには、デザイナーエンドヌクレアーゼを一緒に使用した場合に、単一のデザイナーヌクレアーゼのみを使用した場合の組み込みの率と比較して、両方の標的遺伝子座での組み込みの率における有意な改善が観察された。
【0176】
7.5.1. ドナーDNAカセットの構築
2つのドナーDNAは、オーバーラップ断片:(1)SFC1遺伝子座に対して相同な上流および下流領域の約500bpが側面に位置する、GFPカセットを含む線状DNA断片(配列番号:58)ならびに(2)YJR030c遺伝子座に対して相同な上流および下流領域の約500bpが側面に位置する、ADE2カセットを含む線状DNA断片(配列番号:59)のPCRアセンブリを使用して生成した。
【0177】
7.5.2. ヘテロ二量体ZFN発現プラスミドの構築
YJR030c特異的ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)をコードするプラスミドを、2つの方法で構築した。第1のバージョンにおいて、異なるGal1−10プロモーターの発現下の、Adh1およびCYC1ターミネーターによって終結するヘテロ二量体ZFNの2つのORFを、酵母における3つの部分的なギャップ修復によって、KanによりマークされたCEN−ARSベクターの中にクローニングした(pCUT006)。第2のバージョンもまた、構築し、ヘテロ二量体ZFNの両方のORFを、単一のORFとしてGal10プロモーターから発現させ、単量体は、切断可能なペプチドリンカーをコードするDNA配列によって分離される。この第2のプラスミドは、KanによりマークされたCEN−ARSベクター骨格への、PCR断片のIIS型制限酵素消化物によって産生されるリンカーを使用する、3つの部分のライゲーションによって構築した(pCUT016)。SFC1特異的ZFNをコードするプラスミドもまた、同じリンカー戦略、マーカー、および骨格を使用して、単一のORFとして構築した(pCUT015)。その後、マーカーは、酵母におけるギャップ修復反応の手段によってURAに変更した(pCUT058)。YJR030cおよびSFC1特異的ヌクレアーゼの両方の発現のための単一のプラスミドを構築するために、pCUT16およびpCUT15由来の単一のORFを、新しいCEN−ARS Kan+ベクター骨格の中にサブクローニングし、Cyc1およびAdh1ターミネーターと共に、Gal1−10の異なるプロモーターから発現させた(pCUT032)。
【0178】
7.5.1. ドナーDNAによる形質転換および二本鎖切断の誘発
1マイクログラムのそれぞれのデザイナーヌクレアーゼプラスミドDNAまたは単一のプラスミド上に両方のデザイナーエンドヌクレアーゼを含有するプラスミドを、約1マイクログラムのそれぞれのドナーDNAと共に同時形質転換した。形質転換はすべて、ヌクレアーゼ発現を誘発するためにYP+2%ガラクトース中で一晩回復させた。様々な希釈液は、URA dropout+Kan寒天プレート(2重のプラスミドについて)またはYPD+Kan上で平板培養し、プラスミドDNAにより形質転換されたコロニーを選択した。プレートは、30℃で3〜4日間インキュベートした。
【0179】
7.5.2. 複数の同時の組み込みについての確認
SFC1遺伝子座でのマーカーレス組み込みは、適切なフィルターを使用して、UV光下のGFP蛍光の観察によってスコア化した。ADE2のマーカーレス組み込みは、白いコロニー色の観察によってスコア化し、宿主株におけるADE2欠失表現型(淡紅色のコロニー)が補完されたことを示した。典型的な実験において、50〜150のコロニーをアッセイした。視覚的スコア化戦略は、プライマー、組み込み構築物の5’および内部リバースプライマーを使用して、コロニーPCRによってコロニーのサブセットにおいて確認した。それぞれの遺伝子座での組み込みは、予測されるサイズの増幅産物を産生するが、非組み込みによっては、増幅産物を産生しないことが予想された。cPCR結果により、視覚的スコア化方法の正確性を確認した。
【0180】
【表4-2】
図8において示されるように、SFC1およびYJR030c遺伝子座についての線状ドナーDNAならびにYJR030cエンドヌクレアーゼプラスミド(pCUT006)およびSFC1エンドヌクレアーゼプラスミド(pCUT058)により同時形質転換された細胞において、URA dropout+Kan寒天プレート上で選択されたコロニーの80%が、GFPポジティブであった。これらのコロニーのうち、91%が、ADE2組み込みについてポジティブであった。全体で、コロニーの72.8%が、両方の遺伝子座でドナーDNAを組み込んだ。
【0181】
SFC1遺伝子座についての線状ドナーDNAおよびSFC1を標的にするデザイナーヌクレアーゼプラスミド(pCUT015)により同時形質転換された細胞において、細胞の50%が、GFPについてポジティブであった。細胞がYJR030c遺伝子座についての線状ドナーDNAおよびYJR030c遺伝子座を標的にするデザイナーヌクレアーゼプラスミド(pCUT016)により同時形質転換された場合、細胞の5%のみが、ADE2組み込みについてポジティブであった。宿主細胞が、SFC1およびYJR030c遺伝子座についての線状DNAならびにSFC1/YJR030cデザイナーヌクレアーゼプラスミド(pCUT032)により同時形質転換された場合、細胞の76%がGFPポジティブであり、63%が、ADE2ポジティブであった。それが、複数の部位がデザイナーエンドヌクレアーゼによって標的にされる場合に、組み込み効率における予想外に有意な改善を実証するという点においてこの結果は注目すべきである。
【0182】
これらの結果は、宿主細胞のゲノムにおける天然の遺伝子座での複数の標的二本鎖切断の誘発が、機能的遺伝子カセットの同時の複数のマーカーレスの組み込みを促進することができることを実証する。
【0183】
本明細書において引用される刊行物、特許、および特許出願はすべて、それぞれの個々の刊行物または特許出願が、参照によって組み込まれるように明確にかつ個々に示されるかのように、参照によって本明細書において組み込まれる。前述の発明は、理解の明瞭さのために例証および実施例として詳細に記載されたが、添付の請求項の精神または範囲から逸脱することなく、ある変更および修飾がなされてもよいことは、本発明の教示を考慮して当業者らに容易に明らかになるであろう。