特許第6158178号(P6158178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6158178-保液シート及びフェイスマスク 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158178
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】保液シート及びフェイスマスク
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/00 20060101AFI20170626BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20170626BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20170626BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20170626BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20170626BHJP
   A45D 44/22 20060101ALI20170626BHJP
   D04H 1/498 20120101ALI20170626BHJP
   D04H 1/28 20120101ALI20170626BHJP
【FI】
   D06M15/00
   B32B5/26
   D04H1/4374
   A61K8/02
   A61Q19/00
   A45D44/22 C
   D04H1/498
   D04H1/28
【請求項の数】18
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-521346(P2014-521346)
(86)(22)【出願日】2013年6月11日
(86)【国際出願番号】JP2013066069
(87)【国際公開番号】WO2013187404
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2015年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-132780(P2012-132780)
(32)【優先日】2012年6月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307046545
【氏名又は名称】クラレクラフレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(72)【発明者】
【氏名】落合 徹
(72)【発明者】
【氏名】中山 和之
(72)【発明者】
【氏名】清岡 純人
(72)【発明者】
【氏名】新屋 信夫
(72)【発明者】
【氏名】守谷 直晃
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/004834(WO,A1)
【文献】 特開2008−261067(JP,A)
【文献】 特開2008−149484(JP,A)
【文献】 特開2008−289760(JP,A)
【文献】 特開2009−195373(JP,A)
【文献】 特開2009−299211(JP,A)
【文献】 特開2010−022484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 15/00
A45D 44/22
A61K 8/02
A61Q 19/00
B32B 5/26
D04H 1/28
D04H 1/4374
D04H 1/498
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状成分を吸収可能な保液層を含み、かつ前記保液層が透明繊維を含む不織繊維集合体で形成されている保液シートであって、下記に示す透明度が0.27以下であり、かつ前記透明繊維が、着色剤の含有量0.1質量%以下であり、かつ溶剤紡糸セルロース繊維及びエチレン−ビニルアルコール系繊維の少なくとも一方を含む短繊維である保液シート。
透明度=シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)/目付量(g/m
【請求項2】
溶剤紡糸セルロース繊維がカルボキシル基を実質的に含まないセルロース系繊維である請求項1記載の保液シート。
【請求項3】
透明繊維がさらにレーヨン繊維を含む請求項1又は2記載の保液シート。
【請求項4】
溶剤紡糸セルロース繊維の割合が、保液層全体に対して30質量%以上である請求項1〜のいずれかに記載の保液シート。
【請求項5】
透明繊維が、着色剤の含有量0.01質量%以下の短繊維である請求項1〜のいずれかに記載の保液シート。
【請求項6】
着色剤が酸化チタンである請求項1〜5のいずれかに記載の保液シート。
【請求項7】
不織繊維集合体を形成する繊維が平均繊維径1〜15μmの短繊維である請求項1〜のいずれかに記載の保液シート。
【請求項8】
短繊維の平均繊維長が20〜70mmであるとともに、不織繊維集合体の見掛密度が0.08〜0.15g/cmであり、かつ空隙率が90〜95%である請求項1〜7のいずれかに記載の保液シート。
【請求項9】
不織繊維集合体が、セミランダムウェブ、パラレルウェブ又はクロスウェブを水流絡合させたスパンレース不織布である請求項1〜のいずれかに記載の保液シート。
【請求項10】
不織布集合体の目付が30〜100g/mである請求項1〜のいずれかに記載の保液シート。
【請求項11】
保液層の一方の面に、透明樹脂で形成された非多孔性の透明層が積層されている請求項1〜10のいずれかに記載の保液シート。
【請求項12】
保液層の少なくとも一方の面に、メルトブローン不織布で形成された密着層が積層されている請求項1〜11のいずれかに記載の保液シート。
【請求項13】
メルトブローン不織布が、着色剤の含有量0.1質量%以下の透明繊維で形成されている請求項12記載の保液シート。
【請求項14】
JIS L1913に準拠した湿潤時の30%伸長時応力が、少なくとも一方向において1.5N/5cm以上である請求項1〜13のいずれかに記載の保液シート。
【請求項15】
シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)が1〜10%である請求項1〜14のいずれかに記載の保液シート。
【請求項16】
保液層に液状成分を含浸させた請求項1〜15のいずれかに記載の保液シート。
【請求項17】
化粧料を含む液状成分を保液層に含浸させたスキンケアシートである請求項16記載の保液シート。
【請求項18】
フェイスマスクである請求項17記載の保液シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織繊維集合体を含むにも拘わらず、湿潤状態で透明性が高い保液シート及びこの保液シートで形成されたフェイスマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体の肌(皮膚)などに貼付するシートとして、化粧料などの液体を含浸したスキンケアシート(液体含浸生体被膜シート)が使用されている。フェイスマスクに代表されるスキンケアシートは、皮膚を簡便に高い湿潤状態に維持できることから、近年、多種多様な商品が開発されている。なかでも、フェイスマスクは、マスクを構成するシートに含浸された美容液を肌に伝達させる機能を有しているが、美容液の伝達には、シート自身を肌に密着させる必要がある。そのため、フェイスマスクでは、シートを肌に上手く接触させるために、シート自身又は形状に様々な工夫が施されている。
【0003】
特開2010−69287号公報(特許文献1)には、対称形状の左側シート及び右側シートにおける顔面の正中線に対向する前端部を外側に凸となる形状として互いに接着することにより、左側シート及び右側シートの接着されていない部分を互いに離間させて顔面の凹凸に適合した立体形状を有する立体マスクが開示されている。
【0004】
しかし、このような立体マスクでも、密着性は充分でなく、実際の使用場面では、使用者が肌に密着していない部分(シートが浮いた部分)を密着するように指で押し付けて整えている。
【0005】
さらに、フェイスマスクの材料としては、一般的には、繊維で構成される織布や不織布が用いられている。特許文献1でも立体マスクを構成する材料は不織布又は織布であることが記載されているが、不織布又は織布の詳細は記載されていない。これに対して、フェイスマスクに多く用いられるのが、親水性の高いコットンに代表されるセルロース系の繊維を主成分としたスパンレース不織布である。
【0006】
国際公開WO2011/004834号公報(特許文献2)には、不織繊維集合体で構成され、かつ液状成分を吸収可能な保液層と、この保液層の少なくとも一方の面に形成され、前記液状成分を透過可能であり、かつ皮膚と接触させるための密着層とで構成されたフェイスマスクであって、前記密着層が数平均繊維径10μm以下である不織繊維集合体で構成され、かつ密着層と保液層との厚み割合が、密着層/保液層=1/4〜1/100であるフェイスマスクが開示されている。
【0007】
しかし、このフェイスマスクでも、肌に対する密着性は十分ではなかった。さらに、フェイスマスクはスキンケアの目的を果たす以外に、女性などにとって嗜好品となっているため、高い美容効果及び高級感が求められている。高い美容効果及び高級感を充足するためには、高価な美容液を増量し、保液に必要なシートは高目付に設計されている。そのため、このフェイスマスクは不透明であり、使用中に密着しているか否かを視覚で確認するのは困難であった。
【0008】
また、特開2001−170104号公報(特許文献3)には、カルボキシメチル化されたセルロース繊維不織布で形成され、使用に際して水又は水溶液を付与して前記不織布を膨潤させて皮膚の所定箇所を被覆するのに使用する化粧パックが開示されている。
【0009】
さらに、特開2011−127267号公報(特許文献4)には、グルコース残基中のC−6位の一級水酸基のみを酸化し、カルボキシル基を化学的に導入したセルロース繊維の不織布及びこの不織布に吸収された液体を含むセルロース多孔体ゲルであって、前記酸化されたセルロース繊維の置換度が0.1〜0.6であるセルロース多孔体ゲルが開示されており、この多孔体ゲルを化粧用パック剤などに利用できることが記載されている。
【0010】
しかし、特許文献3及び4に記載の不織布でも、カルボキシル基を有する極度に吸水性の高いセルロース繊維をゲル化させて透明な状態としているため、湿潤状態での強度が低い。そのため、フェイスマスクとして利用すると、湿潤状態で20〜40%程度伸ばすための強度が小さく、貼付のための作業性が低くなり、皮膚に対して充分に密着(フィット)させるのが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−69287号公報(特許請求の範囲、段落[0019][0039])
【特許文献2】国際公開WO2011/004834号公報(請求の範囲)
【特許文献3】特開2001−170104号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献4】特開2011−127267号公報(請求項1、段落[0001][0012]、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、不織繊維集合体を含むにも拘わらず、湿潤状態での透明性を向上できるとともに、湿潤状態で適度な強度を発現できる保液シート及びこの保液シートで形成されたフェイスマスクを提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、含浸させた液状成分に含まれる有効成分の吸収を促進できる保液シート及びこの保液シートで形成されたフェイスマスクを提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、保液性と液体の放出性とのバランスを保てるとともに、液状成分を含浸させた状態で皮膚に対する密着性及びフィット性を向上できる保液シート及びこの保液シートで形成されたフェイスマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、液状成分を吸収可能な保液層を含み、かつ前記保液層が透明繊維を含む不織繊維集合体で形成されている保液シートにおいて、前記不織繊維集合体を特定の繊維で形成し、不織繊維集合体の白度を調整することにより、不織繊維集合体を含むにも拘わらず、湿潤状態での透明性を向上できるとともに、湿潤状態で適度な強度を発現できることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明の保液シートは、液状成分を吸収可能な保液層を含み、かつ前記保液層が透明繊維を含む不織繊維集合体で形成されている保液シートであって、下記に示す透明度が0.27以下である。
【0017】
透明度=シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)/目付量(g/m
前記透明繊維はカルボキシル基を実質的に含まないセルロース系繊維(特に、溶剤紡糸セルロース繊維などの再生セルロース繊維)を含んでいてもよい。前記透明繊維は、溶剤紡糸セルロース繊維に加えて、レーヨン繊維を含んでいてもよい。前記溶剤紡糸セルロース繊維の割合は、保液層全体に対して30質量%以上であってもよい。前記透明繊維は、酸化チタンなどの着色剤の含有量0.1質量%以下の透明繊維であってもよい。前記不織繊維集合体を形成する繊維が平均繊維径1〜15μmの短繊維であってもよい。短繊維の平均繊維長は20〜70mm程度であってもよい。前記不織繊維集合体の見掛密度は0.08〜0.15g/cmであり、かつ空隙率は90〜95%であってもよい。前記不織繊維集合体は、セミランダムウェブ、パラレルウェブ又はクロスウェブを水流絡合させたスパンレース不織布であってもよい。前記不織布集合体の目付が30〜100g/m程度であってもよい。
【0018】
本発明の保液シートは、保液層の一方の面に、透明樹脂で形成された非多孔性の透明層が積層されていてもよい。
【0019】
本発明の保液シートは、保液層の少なくとも一方の面に、メルトブローン不織布で形成された密着層が積層されていてもよい。このメルトブローン不織布が、着色剤の含有量0.1質量%以下の透明繊維で形成されていてもよい。
【0020】
本発明の保液シートは、JIS L1913に準拠した湿潤時の30%伸長時応力が、少なくとも一方向において1.5N/5cm以上であってもよい。
【0021】
本発明の保液シートは、シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)が1〜10%程度であってもよい。
【0022】
本発明の保液シートは、保液層に液状成分を含浸させたシート、例えば、化粧料を含む液状成分を保液層に含浸させたスキンケアシート(特にフェイスマスク)であってもよい。
【0023】
本明細書では、「スキンケア」という用語は、化粧料や乳液などによる皮膚(肌)の手入れ(いわゆる、スキンケア)としての意味だけではなく、皮膚と関連付けることのできる他の行為(皮膚と接触させて使用する行為)を含む広い概念として用いる。従って、スキンケア用シートには、例えば、皮膚を洗浄するためのシート、皮膚の痒みを抑制するためのシート、皮膚を通じて冷却するためのシート、皮膚からの浸透を通じて炎症などを抑制するためのシート(湿布)などの皮膚と接触させて用いられるシートが含まれる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、不織繊維集合体で形成されている保液層を含む保液シートの透明度が高いため、不織繊維集合体を含むにも拘わらず、湿潤状態での透明性を向上できるとともに、湿潤状態で適度な強度を発現できる。そのため、フェイスマスクとして利用すると、使用中に肌に密着しているか否かを視覚で確認するのが容易であるとともに、湿潤状態で20〜40%程度伸ばすための適度な強度を有するため、貼付のための作業性に優れ、肌に対して充分に密着(フィット)させることが容易である。また、前記保液層の一方の面に透明樹脂で形成された非多孔性の透明層を積層することにより、保液層に含浸させた液状成分に含まれる有効成分の吸収を促進できる。さらに、前記保液層の少なくとも一方の面にメルトブローン不織布で形成された密着層を積層することにより、保液性と液体の放出性とのバランスに保てるとともに、液状成分を含浸させた状態で皮膚に対する密着性及びフィット性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施例2及び比較例1で得られた保液シートの湿潤状態を比較した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[保液層]
本発明の保液シートは、液状成分(特に水性液状成分)を吸収可能な保液層を含む。詳しくは、本発明において、保液層とは、美容成分又は薬効(効能)成分(例えば、保湿成分、クレンジング成分、制汗成分、香り成分、美白成分、血行促進成分、冷却成分、紫外線吸収成分、皮膚かゆみ抑制成分など)を含む液状成分(液状化合物)を含浸するのに必要な濡れ性と保液するための空隙を有し、使用時の取り扱いにおいても液だれすることなく、体の所定の部位(例えば顔)を覆うまで保持し、貼付又は静置すると共に液体化粧料を少しずつ肌側に移行させる役割を有している。本発明では、このような特性を有する保液層が不織繊維集合体で形成されている。
【0027】
保液層を構成する不織繊維集合体は、湿潤状態での透明性を向上できる点から、純度の高い透明繊維を含む。透明繊維の純度は99.5質量%以上であってもよく、例えば、99.5〜100質量%、好ましくは99.7〜99.99質量%、さらに好ましくは99.8〜99.98質量%(特に99.9〜99.95質量%)程度であってもよい。純度が低いと、湿潤状態における保液シートの透明性が低下する。
【0028】
さらに、透明繊維は、透明性を向上する点から、純度が高いことに加えて、着色剤(特に不透明な着色剤)を含まないのが好ましく、着色剤の含有量は、透明繊維全体に対して、例えば、0.1質量%以下(例えば、0〜0.1質量%)、好ましくは0.09質量%以下、さらに好ましくは0.08質量%以下であり、0.01質量%以下(例えば、0〜0.01質量%)であってもよい。着色剤の含有量が多すぎると、湿潤状態における保液シートの透明性が低下する。なお、市販されている繊維では、通常、繊維形成性の点から、無機顔料(特に酸化チタン)が含まれているため、前記着色剤の割合は無機顔料(特に酸化チタン)の含有量であってもよい。
【0029】
なお、透明繊維は、凝集などにより透明性を損なわない割合であれば、透明化可能な着色剤(粒子)を含有していてもよく、例えば、可視光線の波長よりも小さい粒径の着色剤を含んでいてもよい。そのため、透明樹脂に含まれない不透明な着色剤の粒径は、例えば、0.01μm以上(例えば、0.01〜1μm)、好ましくは0.1μm以上(例えば、0.1〜0.8μm)、さらに好ましくは0.2μm以上(例えば、0.2〜0.6μm)程度であってもよい。
【0030】
透明繊維としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂などの樹脂成分で形成された繊維などが挙げられる。これらの透明繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0031】
これらの透明繊維のうち、濡れ性や保液性を確保するために、親水性樹脂で構成された繊維を含むのが好ましい。親水性樹脂で構成された繊維は、保液シートに化粧料等の液体を付加した際に液体を繊維集合体内部まで取り込むために重要な役割を担うと共に、一度繊維集合体内に取り込んだ多量の化粧料液体を使用時に取り扱う際に液だれしないよう保持する役割を担う。
【0032】
親水性繊維としては、親水性を有する限り、特に限定されず、合成繊維、天然繊維、天然の植物繊維や動物性のタンパク質繊維などを一旦溶解してから化学的に処理して繊維化した再生繊維などが選択できる。さらに、親水性繊維は、少なくとも表面が親水性樹脂で構成されていればよく、例えば、疎水性樹脂の表面を親水化処理した繊維や、内部が疎水性樹脂で構成された複合繊維などであってもよい。
【0033】
合成繊維としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基などの親水性基(特に水酸基)を分子中に有する樹脂、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ乳酸などのポリエステル系樹脂、(メタ)アクリルアミド単位を含む(メタ)アクリル系共重合体などで構成された合成繊維が挙げられる。これらの合成繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの合成繊維のうち、モノマー単位に水酸基を有する親水性樹脂が好ましく、特に、分子内に均一に水酸基を有する点から、エチレン−ビニルアルコール系共重合体で構成された繊維が好ましい。
【0034】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体において、エチレン単位の含有量(共重合割合)は、例えば、10〜60モル%、好ましくは20〜55モル%、さらに好ましくは30〜50モル%程度である。ビニルアルコール単位のケン化度は、例えば、90〜99.99モル%程度であり、好ましくは95〜99.98モル%、さらに好ましくは96〜99.97モル%程度である。粘度平均重合度は、例えば、200〜2500、好ましくは300〜2000、さらに好ましくは400〜1500程度である。後述するように、エチレン−ビニルアルコール系共重合体などの湿熱接着性樹脂を用いると、スチームジェット法により嵩高で安定な保液層も形成できる。
【0035】
天然繊維としては、例えば、綿又はコットン、絹、麻、シルク、ウールなどが挙げられる。これらの天然繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、綿などが汎用される。
【0036】
再生繊維としては、例えば、ビスコースレーヨンなどのレーヨン、アセテート、テンセル(登録商標)などのリヨセル、キュプラ、ポリノジックなどのセルロース系繊維が挙げられる。これらの天然繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、レーヨン繊維やテンセル繊維などが汎用される。
【0037】
表面が親水性樹脂で構成された繊維において、繊維の表面に親水性を付与する方法としては、繊維形成性樹脂と共に親水性樹脂を繊維化し、繊維表面の少なくとも一部を親水性樹脂で覆う方法であってもよい。親水性樹脂で繊維の表面を覆う方法で形成された複合繊維は、長時間に亘り使用しても親水性能の劣化が少ないので好ましい。また、繊維形成性樹脂と共に親水性樹脂を繊維化する方法は製造工程が短くなるとともに均一に高い親水性を付与できるので好ましい。特に、親水性が高い点から、繊維の全表面を親水性樹脂で鞘状に覆う繊維、すなわち、鞘部が親水性樹脂で構成された芯鞘型構造の複合繊維が好ましい。
【0038】
芯鞘型複合繊維は、鞘部が親水性樹脂で構成されていれば特に限定されないが、芯部は、液状成分を含浸しても繊維形状を保持し、浸水性能の劣化が抑制できる点から、後述する疎水性繊維を構成する疎水性樹脂で構成されているのが好ましい。さらに、疎水性樹脂のなかでも、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、特に、耐熱性や繊維形成性などのバランスに優れる点から、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂が好ましい。なお、鞘部の親水性樹脂は、嵩高で安定な不織布を生産できる点などから、合成繊維を構成する樹脂、特に、エチレン−ビニルアルコール系共重合体などのポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。芯鞘型複合繊維において、芯部と鞘部との割合(質量比)は、例えば、鞘部/芯部=90/10〜10/90(例えば、80/20〜10/90)、好ましくは80/20〜15/85、さらに好ましくは60/40〜20/80程度である。
【0039】
また、これらの親水性繊維のうち、レーヨンやテンセルなどのセルロース系繊維は、化粧料などの液状成分を構成する水や水溶液、極性溶媒、これらのエマルジョンなどが繊維内部にまで浸透し吸収性が良く、保液性能が高い点で特に好ましい。一方、エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維(特に、鞘部がエチレン−ビニルアルコール系共重合体で構成された芯鞘型複合繊維)は、保液性能についてはセルロース系繊維より低いものの、化粧料などの液状成分との馴染みが良く、かつ繊維自身が液状成分の液体を吸収せず、圧力などで容易に放出できる点で特に好ましい。従って、セルロース系繊維とエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維とを、化粧料などの液状成分の粘度や量に応じて選択してもよく、さらに両者を混合することにより保液性と液体の放出性とを制御してもよい。更には必要に応じて他の繊維を配合してもよい。
【0040】
本発明では、特に、湿潤状態における透明性と保液性とのバランスに優れる点から、セルロース系繊維が好ましく、溶剤紡糸法(セルロースを一旦化学的に変換することのない直接法)で得られた溶剤紡糸セルロース繊維(テンセルなどのリヨセルなど)が特に好ましい。
【0041】
セルロース系繊維は、湿潤時に適度な強度を保持するために、適度な親水性を有しているのが好ましく、カルボキシル基(又はカルボキシメチル基)を実質的に含まないセルロース系繊維が好ましい。具体的には、セルロース系繊維を構成するセルロース骨格のカルボキシル基(又はカルボキシメチル基)の平均置換度が0.05未満であってもよく、例えば、0.03以下、好ましくは0.01以下(例えば、0〜0.01程度)、さらに好ましくは0.001以下(特に略0)であってもよい。カルボキシル基含量が多すぎると、湿潤時に不織布がゲル化するため、湿潤時の強度が低下する。
【0042】
親水性繊維は、保液性に優れており、目付50g/mにおける保水率は500%以上であってもよく、例えば、500〜3000%、好ましくは800〜2500%、さらに好ましくは1000〜2000%(特に1100〜1500%)程度である。
【0043】
なお、本明細書では、保水率は、目付50g/mであり、サイズ5cm×5cmのシート状不織布の一端をクリップで挟み、30秒間水に浸漬した後、シート面が重力方向と平行な状態で1分間放置して水を垂らした後、重量を測定し、以下の式に基づいて、保水率を測定した。
【0044】
保水率=[(B−A)/A]×100
(式中、Aは、浸漬前の不織布の重量であり、Bは、水を垂らした後の不織布の重量である)。
【0045】
親水性繊維は、保液性と液体の放出性とのバランスに優れ、保液層の形体の安定性を向上できる点から、疎水性繊維又は非親水性繊維(極性がそれほど高くなく、疎水性が比較的強い繊維)と組み合わせてもよい。疎水性繊維は、保液層が湿潤状態にあっても繊維自体のヤング率の低下がほとんど無いことから、保液層の嵩やコシを維持する方向に働く。
【0046】
疎水性繊維としては、特に限定されないが、標準状態(20℃、65%RH)における公定水分率が2.0%未満の樹脂、例えば、一般的に不織布に使用されるポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6などのポリアミド系樹脂、ポリエステルポリオール型ウレタン系樹脂などのポリウレタン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂などで形成された繊維などが挙げられる。これらの疎水性繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、汎用性が高く、機械的特性などに優れる点から、ポリエステル繊維が好ましい。
【0047】
親水性繊維と疎水性繊維との割合(質量比)は、前者/後者=100/0〜1/99程度の範囲から選択できるが、保液性の点から、親水性繊維(特にセルロース系繊維)を少なくとも30質量%以上含むのが好ましい。両繊維を組み合わせる場合、親水性繊維と疎水性繊維との割合(質量比)は、前者/後者=99/1〜30/70、好ましくは90/10〜35/65、さらに好ましくは80/20〜30/70(特に70/30〜40/60)程度である。親水性繊維の割合が少なすぎると、保液シートが液状成分と馴染みにくく、保液シート中で液量に斑が生じたり、保液シートの液状成分の保持能力が低く、使用時に液だれが生じやすくなる。一方で親水性繊維の割合が多すぎると、保液シートの液状成分の保持能力が高くなり、使用時に化粧料液体を肌側に放出し難くなったり、必要な放出量を得るために予め過剰な液状成分が必要となり、無駄が生じ易い。
【0048】
透明繊維は、透明性を損なわない範囲で、さらに慣用の添加剤、例えば、安定剤(銅化合物などの熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤など)、分散剤、微粒子、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤などを含有していてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤は、保液層表面に担持されていてもよく、繊維中に含まれていてもよい。
【0049】
保液層は、透明性を損なわない範囲で、透明繊維に加えて不透明繊維(酸化チタンなどの無機顔料を含む繊維など)を含んでいてもよい。透明繊維(特に溶剤紡糸セルロース繊維)の割合は、保液層全体に対して70質量%以上であってもよく、例えば、70〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%(特に95〜100質量%)であってもよく、透明繊維単独であってもよい。透明繊維の割合が少なすぎると、湿潤状態での透明性が低下する。
【0050】
特に、保液層は、湿潤状態での高度な透明性と、湿潤状態で適度な強度を保持し、フェイスマスクとしての取り扱い性を向上させる点から、溶剤紡糸セルロース繊維の割合を高めるのが好ましい。溶剤紡糸セルロース繊維の割合は、保液層全体に対して30質量%以上であってもよく、例えば、50〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%(特に95〜100質量%)であってもよい。溶剤紡糸セルロース繊維単独(100質量%)であってもよく、保液層を溶剤紡糸セルロース繊維単独で構成すると、湿潤状態の透明性が特に優れている。溶剤紡糸セルロース繊維の割合が少なすぎると、湿潤時の透明性と強度とのバランスが悪くなり、フェイスマスクとしての取り扱い性が低下する。
【0051】
特に、保液層は、柔軟性を調整するために、溶剤紡糸セルロース繊維とレーヨン繊維とを組み合わせてもよい。両繊維を組み合わせる場合、溶剤紡糸セルロース繊維とレーヨン繊維との割合(質量比)は、前者/後者=99/1〜10/90、好ましくは98/2〜30/70、さらに好ましくは97/3〜50/50(特に95/5〜70/30)程度である。溶剤紡糸セルロース繊維の割合が少なすぎると、湿潤状態での透明性が低下する。
【0052】
保液層は、繊維構成の異なる複数の層構造であってもよい。例えば、肌側に近い部分に親水性繊維の繊維比率を高めることで、化粧料含浸シートなどとしての使用時に、より早く肌側を高い湿潤状態にする効果が期待できる。具体的には、肌側に親水性繊維の繊維比率を高めた層を配した保液層を有する保液シートを肌の上に静置した際、保液層中で液状成分が親水性繊維の繊維比率が高い方向に移動し、短時間で肌側を高い湿潤状態にできる。保液層は、例えば、表面側に位置する親水性繊維を30質量%以下(例えば、10〜30質量%)含む層と、肌側に位置する親水性繊維70質量%以上(例えば、70〜90質量%)含む層とで構成された二層構造であってもよい。
【0053】
保液層を構成する繊維(透明繊維、又は透明繊維及び不透明繊維)の断面形状は、特に制限されず、例えば、丸形断面、異形断面(扁平状、楕円状断面など)、多角形断面、多葉形断面(3〜14葉状断面)、中空断面、V字形断面、T字形断面、H字形断面、I字形(ドッグボーン形)断面、アレイ形断面などの各種断面形状であってもよい。これらのうち、丸型断面、楕円状断面などが汎用される。
【0054】
保液層を構成する繊維の繊維長は特に制限はなく、長繊維(連続フィラメント)であってもよいが、繊維同士を三次元的に絡合させて湿潤時の適度な強度を発現し易い点から、短繊維が好ましい。短繊維の平均繊維長は5〜300mm(例えば、10〜100mm)程度の範囲から選択でき、カード法による乾式不織布の場合、例えば、20〜70mm、好ましくは25〜60mm、さらに好ましくは30〜55mm程度であればカード通過性の観点から、均一な地合のウェブが得られ易く、用途に応じて適宜調節できる。
【0055】
保液層を構成する繊維の繊維径(数平均繊維径)は、透明性と保液性とのバランスに優れる点から、例えば、0.1〜30μm、好ましくは0.5〜20μm、さらに好ましくは1〜15μm(特に3〜13μm)程度である。
【0056】
保液層を構成する不織布(不織繊維集合体)の目付は、例えば、20〜200g/m、好ましくは25〜150g/m、さらに好ましくは30〜120g/m(特に30〜100g/m)程度である。さらに、フェイスマスクとして利用する場合、湿潤状態で高度な透明性と、湿潤状態で適度な強度を保持できる点から、不織布の目付は、例えば、20〜60g/m、好ましくは30〜50g/m、さらに好ましくは35〜45g/m程度であってもよい。この目付が小さすぎると、繊維によって形成される保液のための空隙の確保が困難となる。また、この目付が大きすぎると、保液量が多くなり、効能成分の多くが皮膚まで到達せずに保液層に滞留されたままとなり、効能成分が無駄に消費され易い。
【0057】
保液層の密度(見掛密度)は、含浸させる化粧料などの液状成分の粘度にもよるが、例えば、0.03〜0.20g/cm、好ましくは0.05〜0.17g/cm、さらに好ましくは0.08〜0.15g/cm程度である。密度が低すぎると、保液シートの液体保持能力が低くなり、使用時の取り扱いにおいても液だれが生じやすくなる。一方、密度が高すぎると、保液量が低くなる上に、密着層への液の移行が鈍化する傾向にある。
【0058】
保液層の空隙率は、化粧料などの液状成分の含浸量を確保する点から、例えば、80%以上(例えば、80〜99%)、好ましくは85%以上(例えば、85〜98%)、さらに好ましくは90%以上(例えば、90〜95%)であってもよい。
【0059】
保液層の厚みは、100〜3000μm程度の範囲から選択でき、例えば、200〜2000μm、好ましくは300〜1500μm、さらに好ましくは400〜1200μm(特に500〜1000μm)程度である。
【0060】
[保液層の製造方法]
保液層を構成する不織布又は不織繊維集合体は、慣用の方法、例えば、スパンレース法、ニードルパンチ法、スチームジェット法などにより製造できる。これらの方法のうち、価格面を重視する場合であれば、工業的に高速で生産が可能なスパンレース法を用いてもよい。また、嵩高にすることにより保液性能を高める場合には、サーマルボンド法やスチームジェット法(特に、厚み方向で均一な接着を実現でき、形態保持性と嵩高性とを高度に両立できる点から、スチームジェット法)などを用いてもよい。
【0061】
スパンレース法の場合、前記短繊維、例えば、複数種の透明繊維を混綿し、例えば、カード機によるカーディングにて開繊して不織布ウェブを作成してもよい。この不織布ウェブは、ウェブを構成する繊維の種類や配合割合などによりカード機の進行方向に配列されたパラレルウェブ、パラレルウェブがクロスレイドされたクロスウェブ、ランダムに配列したランダムウェブ、あるいはパラレルウェブとランダムウェブとの中間程度に配列したセミランダムウェブのいずれであってもよいが、横方向で繊維の絡みが発生し、横方向への伸びが阻害されるため、使用時に肌への沿い性が低下する傾向のあるランダムウェブやクロスウェブよりも、保液シートの横方向の柔らかさと伸び性を確保できるパラレルウェブ、セミランダムウェブが好ましい。
【0062】
さらに、スパンレース法では、得られた不織布ウェブに水流絡合処理を行う。水流絡合処理では、例えば、径0.05〜0.20mm、間隔0.30〜1.50mm程度の噴射孔を1〜2列に配列したノズルプレートから高圧で柱状に噴射される水流を多孔性支持部材上に載置した不織布ウェブに衝突させて、不織布ウェブを構成する繊維を相互に三次元交絡せしめ一体化させる。不織布ウェブに三次元交絡を施すに際しては、移動する多孔性支持部材上に不織布ウェブを載置して、例えば、水圧10〜150kg/cm(≒1〜15MPa)、好ましくは20〜120kg/cm(≒2〜12MPa)、さらに好ましくは30〜100kg/cm(≒3〜10MPa)程度の水流で1回又は複数回処理する方法が好ましい。噴射孔は不織布ウェブの進行方向と直交する方向に列状に配列し、この噴射孔が配列されたノズルプレートを多孔性支持部材上に載置された不織布ウェブの進行方向に対し直角をなす方向に噴射孔間隔と同一間隔で振幅させて水流を不織布ウェブに均一に衝突させるのが好ましい。不織布ウェブを載置する多孔性支持部材は、例えば、金網などのメッシュスクリーンや有孔板など、水流が不織布ウェブを貫通することができるものであれば特に制限されない。噴射孔と不織布ウェブとの距離は、水圧に応じて選択できるが、例えば、1〜10cm程度である。この範囲外の場合には不織布の地合いが乱れやすくなったり、三次元交絡が不十分だったりする。
【0063】
水流絡合処理を施した後は乾燥処理を施してもよい。乾燥処理としては、まず、処理後の不織布ウェブから過剰水分を除去するのが好ましく、過剰水分の除去は公知の方法を用いることができる。例えば、マングルロールなどの絞り装置を用いて過剰水分をある程度除去し、続いてサクションバンド方式の熱風循環式乾燥機などの乾燥装置を用いて残りの水分を除去してもよい。
【0064】
スチームジェット法の場合、得られた不織布ウェブに高温水蒸気(高圧スチーム)を噴射することにより繊維同士を交絡させてもよい。スチームジェット法では、繊維同士の交絡に加えて、エチレン−ビニルアルコール系共重合体などの湿熱接着性樹脂を少なくとも表面に有する親水性繊維(湿熱接着性繊維)を含むウェブを用いることにより繊維同士を湿熱接着してもよい。すなわち、スチームジェット法では、ベルトコンベアで運搬された繊維ウェブを、蒸気噴射装置のノズルから噴出される高速高温水蒸気流の中を通過する際、吹き付けられた高温水蒸気により、繊維同士を交絡でき、湿熱接着性繊維を含む場合、湿熱接着性繊維が融着し、繊維同士(湿熱接着性繊維同士、又は湿熱接着性繊維と疎水性繊維)が厚み方向で均一に三次元的に接着される。
【0065】
繊維ウェブに水蒸気を供給するためには、慣用の水蒸気噴射装置が用いられる。この水蒸気噴射装置は、繊維ウェブの両面から高温水蒸気を噴射するために、繊維ウェブを挟み込めるように2台のベルトコンベアを組み合わせて、各々ベルトコンベアに水蒸気噴射装置を装着してもよい。コンベアに用いるエンドレスベルトは、通常、概ね90メッシュより粗いネット(例えば、10〜60メッシュ程度のネット)が使用される。
【0066】
高温水蒸気を噴射するためのノズルは、所定のオリフィスが幅方向に1列又は複数列で連続的に並んだプレートやダイスを用い、これを供給される繊維ウェブの幅方向にオリフィスが並ぶように配置すればよい。オリフィスの直径は、例えば、0.05〜2mm(特に0.1〜1mm)程度であり、オリフィスのピッチは、例えば、0.5〜3mm(特に1〜2mm)程度である。
【0067】
高温水蒸気の圧力は、例えば、0.1〜2MPa、好ましくは0.2〜1.5MPa、さらに好ましくは0.3〜1MPa程度である。高温水蒸気の温度は、例えば、70〜150℃、好ましくは80〜120℃、さらに好ましくは90〜110℃程度である。高温水蒸気の処理速度は、例えば、200m/分以下、好ましくは0.1〜100m/分、さらに好ましくは1〜50m/分程度である。
【0068】
[非多孔性透明層]
本発明の保液シートは、前記保液層単独で形成されていてもよいが、保液層の一方の面に、透明樹脂で形成された非多孔性の透明層がさらに積層されていてもよい。前記非多孔性透明層は、皮膚と接触する側とは反対側に積層され、非多孔性であるため、保液層を皮膚に接触すると、保液層の液状成分が密封され、温度が上昇して毛穴が拡がるため、有効成分の吸収を促進できる。また、液状成分の乾燥も抑制でき、長時間に亘り、皮膚に対して有効成分を供給できる。
【0069】
透明樹脂としては、前記透明繊維の項で例示された樹脂成分が挙げられる。前記樹脂成分のうち、透明性や成形性などの点から、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンアリレート系樹脂など)、ポリアミド系樹脂(例えば、ポリアミド6などの脂肪族ポリアミドなど)、ポリウレタン系樹脂(ポリエステル系ウレタン樹脂など)が好ましく、簡便に保液層に積層できる点から、ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂が特に好ましい。
【0070】
非多孔性透明層は、透明性を損なわない範囲で、前記保液層と同様の慣用の添加剤を含有していてもよい。
【0071】
非多孔性透明層は、用途に応じて、延伸フィルムであってもよく、複数種の透明層を重ねて積層してもよい。
【0072】
非多孔性透明層の厚みは、例えば、3〜200μm、好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは10〜50μm(特に10〜30μm)程度である。非多孔性透明層と保液層との厚み割合は、非多孔性透明層/保液層=1/5〜1/300程度であり、好ましくは1/10〜1/200、さらに好ましくは1/20〜1/150(特に1/30〜1/100)程度である。非多孔性透明層の厚みが大きすぎると保液シートの柔軟性が低下し、小さすぎると、成形が困難となり、ピンホールなどの発生により、液状成分の乾燥を抑制する効果が低下する。
【0073】
非多孔性透明層は、均一な厚みを有するフィルム状に成形できれば、特に制限されず、慣用の方法を利用できるが、生産性などの点から、押出成形、インフレーション成形などが好ましい。
【0074】
非多孔性透明層と保液層との一体化方法としては、接着剤を用いて一体化してもよいが、高い生産性で透明で強固な接着力が得られる点から、保液層上に押出成形などにより熱融着可能な状態の透明樹脂を積層する押出コーティング(押出ラミネーション)が好ましい。さらに、複数の非多孔性透明層を積層する場合は、加熱ロールで熱圧着する方法であってもよいが、一方の非多孔性透明層を形成するための樹脂を熱融着可能な状態としてホットメルト剤として用いる熱ラミネートが好ましい。
【0075】
[密着層]
本発明の保液シートは、保液層の少なくとも一方の面に、メルトブローン不織布で形成された密着層がさらに積層されていてもよい。特に、保液シートの一方の面に前記非多孔性透明層が形成されている場合、密着層は他方の面に積層してもよく、非多孔性透明層と保液層との間に介在してもよい。
【0076】
密着層は、皮膚と接触する側に積層され、前記保液層から肌へと化粧料を供給する接触面となることから、化粧料などの液状成分の供給を円滑に行える構造である必要がある。従って、密着層は、保液層から肌へと液状成分の供給が可能な連通した多孔質構造体である。
【0077】
さらに、本発明において、密着層(又は緻密層)とは、直接肌に触れる面に位置する層であり、肌に接したときの感触が柔らかく、貼付又は静置と共に肌にしっかり密着し、保液層から供給される液状成分を、密着層を構成する繊維間の空孔や繊維に保持しながら、微細孔を通じて肌に供給する役割を有する。特に、本発明では、密着層をメルトブローン法などにより得られる均一で極細の繊維径を有する不織布(又は不織繊維集合体)で構成しており、このような密着層は、極細繊維で構成された緻密な層を形成するとともに、その表面が平坦で且つ滑らかであるため、繊維が肌に触れてもチクチクした刺激が極めて少ない。さらに、極細繊維による緻密な層を形成するためか、皮膚との接触界面で均一に拡がる液膜を形成し、この均一な液膜によって肌に長時間密着するという優れた役割を有する。
【0078】
密着層を構成する不織布又は不織繊維集合体は、液状成分(液体効能成分)を適度に保持しながら透過可能であればよく、特に限定されないが、熱可塑性樹脂で構成された繊維を含むのが好ましい。熱可塑性樹脂としては、前記透明繊維の項で例示された樹脂成分などを利用できる。前記樹脂成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが好ましい。さらに、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、脂肪族ポリアミド系樹脂(ポリアミド6など)、ポリアルキレンアリレート樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)が汎用され、低目付でシート化し易く、生産性にも優れる点から、ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂が特に好ましい。
【0079】
密着層を構成する繊維も、保液層を構成する透明繊維と同様の純度及び着色剤の含有量であるのが好ましい。また、密着層を構成する繊維は、前記保液層と同様の慣用の添加剤を含有していてもよい。
【0080】
密着層を構成する繊維の断面形状は、前記保液層を構成する捲縮繊維の断面形状と同様の形状であってもよく、通常、丸型断面、楕円状断面などである。
【0081】
密着層を構成する繊維の繊維径は、皮膚に対する密着性などの点から、保液層を構成する繊維よりも小さい極細径であってもよく、具体的な繊維径(数平均繊維径)は10μm以下程度であればよく、例えば、0.1〜9μm、好ましくは0.5〜8μm(例えば、1〜8μm)、さらに好ましくは1〜7μm(特に1.5〜6μm)程度であり、特に好ましくは2〜6μm(例えば、2〜5μm)程度であってもよい。平均繊維径が小さすぎると、保液層から供給される化粧料などの液状成分(液体効能成分)を肌側に移行させる機能が低下する。また、平均繊維径が大きすぎると、肌に触れたときにガサガサした印象を与える上に肌との界面に形成される液膜が均一に拡がらず、密着性能が低下する。
【0082】
密着層を構成する繊維は、極細繊維であり、かつ均一な繊維径を有している。すなわち、繊維径の標準偏差が5以下であってもよく、例えば、0〜5、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)、さらに好ましくは0〜2.5(特に0〜2)程度であり、例えば、0.1〜5、好ましくは0.5〜3、さらに好ましくは1〜2程度であってもよい。さらに、繊維径の変動率は80%以下程度であり、例えば、0〜80%、好ましくは0〜70%、さらに好ましくは0〜65%(特に0〜60%)程度であり、例えば、1〜80%、好ましくは10〜70%、さらに好ましくは20〜60%程度であってもよい。本発明では、密着層を構成する繊維が、このように極細でかつ均一径であるため、皮膚に対する刺激が少なく、かつ緻密な多孔構造を形成できる。
【0083】
密着層を構成する不織布(又は不織繊維集合体)の目付は、例えば、3〜50g/m、好ましくは4〜30g/m、さらに好ましくは4〜20g/m(特に5〜10g/m)程度である。不織布(特にメルトブローン不織布)の目付が小さすぎると、保液層側の繊維が密着層表面に露出しやすくなり、肌に触れたときにガサガサした感触を与える上に、肌との界面に形成される液膜が均一に拡がらず、密着性能が低下する。不織布の目付が大きすぎると、保液層から供給される化粧料などの液体効能成分を肌側に移行させる機能が低下する。
【0084】
密着層の密度(保液シート中における見掛密度)は、例えば、0.05〜0.35g/cm、好ましくは0.08〜0.25g/cm、さらに好ましくは0.1〜0.2g/cm程度である。密度が小さすぎると、密着層を形成するための肌側の表面繊維量が不足し、肌面に対して均一な極細繊維層を形成することが困難になる。逆に、密度が大きすぎると、保液層から供給される化粧料などの液状成分を肌側に移行させる機能が低下する。
【0085】
密着層の空隙率(保液シート中における空隙率)は、保液層から供給される化粧料等の液体効能成分を肌側に短時間で均一に移行させる点から、例えば、70%以上(例えば、70〜99%)、好ましくは75%以上(例えば、75〜95%)、さらに好ましくは80%以上(例えば、80〜90%)程度であってもよい。
【0086】
密着層となるメルトブローン不織布の厚みは10〜500μm程度の範囲から選択でき、例えば、30〜500μm、好ましくは30〜200μm、さらに好ましくは35〜150μm(特に40〜100μm)である。厚みが小さすぎると、密着層を形成するための繊維量が不足し肌面に対して均一な極細繊維層を形成することが困難になる。逆に、厚みが大きすぎると、保液層から肌への液移動性が低下する。
【0087】
密着層と保液層との厚み割合は、密着層/保液層=1/4〜1/100程度であり、好ましくは1/5〜1/80、さらに好ましくは1/6〜1/50(特に1/7〜1/30)程度である。保液層の厚み比を大きくすることにより、保液層を肌に近接できるとともに、化粧料などの液状成分を含浸するシートとして、シートのより多くの部分が保液に適した空隙を有する構造となる。
【0088】
密着層の製造方法及び保液層との一体化方法としては、国際公開WO2011/004834号公報(特許文献3)に記載の方法などを利用できる。
【0089】
[保液シート]
本発明の保液シートは、少なくとも前記保液層で形成されており、湿潤状態での透明性が高く、下記に示す透明度が0.27以下である。
【0090】
透明度=シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)/目付量(g/m
前記透明度は0.01〜0.27程度であってもよく、例えば、0.02〜0.25、好ましくは0.03〜0.2、さらに好ましくは0.05〜0.15(特に0.06〜0.1)程度である。
【0091】
本発明の保液シートは、シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度が35%以下であってもよく、例えば、1〜35%、好ましくは3〜30%、さらに好ましくは5〜25%(特に8〜20%)程度であってもよい。フェイスマスクに適した高度な透明性が必要な場合、この白度は1〜15%程度であってもよく、例えば、1〜10%、好ましくは1.5〜8%、さらに好ましくは2〜5%(特に2〜4%)程度であってもよい。本発明では、保液シート(特にフェイスマスク)に必要な透明性は、この白度で評価できる。
【0092】
透明度及び前記白度が大きすぎると、湿潤状態での透明性が低下する。なお、本発明において、前記白度及び透明度の詳細な測定方法は、後述する実施例に記載されている。
【0093】
本発明の保液シートは、保液層に液状成分を含浸させたシート、例えば、化粧料を含む液状成分を保液層に含浸させたスキンケアシート(特にフェイスマスク)であってもよい。
【0094】
本発明の保液シートの目付は、200g/m以下程度の範囲から選択でき、例えば、20〜180g/m、好ましくは23〜150g/m(例えば、30〜120g/m)、さらに好ましくは35〜100g/m(特に50〜90g/m)程度である。目付が大きすぎると、湿潤状態での透明性が低下する。
【0095】
本発明の保液シートは、顔面などの皮膚に密着させて貼付し易いように、短繊維が適度に交絡することなどにより湿潤時に適度な強度を有しており、JIS L1913に準拠した湿潤時の30%伸長時応力が、少なくとも一方向において、1.5N/5cm以上(例えば、1.5〜10N/5cm)であってもよく、例えば、1.8〜8N/5cm、好ましくは2〜7N/5cm(例えば、2.5〜6N/5cm)、さらに好ましくは3〜5N/5cm(特に3.5〜4.5N/5cm)程度である。伸張時応力がこの範囲にあると、フェイスマスクとしてのフェイスマスクとしての取り扱い性を向上できる。伸長時応力が小さすぎると、顔面などの皮膚に装着時に伸び過ぎて扱い難く、大きすぎると、皮膚に対する密着性が低下する。なお、湿潤状態における30%伸長時応力の測定方法は、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0096】
本発明の保液シートは、液状成分を吸収させて使用するための用途、例えば、ナプキンやおむつなどの表面材、おむつライナー、ウエットティッシュなどの体液吸収用シート(又は皮膚洗浄用シート)などにも用いることができるが、保液性と液体の放出性とのバランスに優れ、湿潤状態で透明であり、容易に皮膚に密着できるため、美容成分や薬効成分などの液状成分を含浸させたシートを皮膚に密着させる用途、例えば、フェイスマスク、メイク除去シート又はクレンジングシート、身体洗浄用シート(汗拭きシート、油取りシートなど)、冷却シート、薬用又は治療用シート(かゆみ抑制シート、湿布など)などの各種スキンケアシートに用いるのが好ましい。
【0097】
本発明のスキンケア用シートは、使用時にこれらの液状成分を含浸させて使用するシートであってもよく、予め液状成分を含浸させて使用するシート(いわゆるウエットシート)であってもよい。
【0098】
本発明において、液状成分には、溶媒や液状油などの液状物質の他、美容成分又は薬効(効能)成分などの有効成分を前記液状物質に含有させた溶液又は分散液(化粧料や乳液など)も含まれる。溶媒は、親油性溶媒であってもよいが、人体への安全性などの点から、親水性溶媒が好ましい。親水性溶媒としては、例えば、水、低級脂肪族アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノールなどのC1−4アルキルアルコールなど)、アルキレングリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなど)などが挙げられる。これらの親水性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。液状油としては、例えば、不飽和高級脂肪酸類(例えば、オレイン酸、オレイルアルコールなど)、動植物系油(例えば、ホホバ油、オリーブ油、やし油、つばき油、マカデミアンナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、ゴマ油、小麦胚芽油、アマニ油、ひまし油、スクワランなど)、鉱物系油(例えば、流動パラフィン、ポリブテン、シリコーン油など)、合成系油(例えば、合成エステル油、合成ポリエーテル油など)などが挙げられる。これらの液状油は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0099】
これらの液状物質は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。例えば、水やエタノールなどの親水性溶媒に対して、添加剤(油分)として液状油を組み合わせて使用してもよい。これらの液状物質のうち、通常、水、低級アルコール又はこれらの混合物が使用され、好ましくは水及び/又はエタノール(特に水)が使用される。例えば、水と低級アルコール(特にエタノール)とを組み合わせて使用する場合、両者の割合(体積比)は、水/低級アルコール=100/0〜30/70、好ましくは100/0〜50/50、さらに好ましくは100/0〜70/30程度であり、例えば、99/1〜80/20程度であってもよい。
【0100】
有効成分としては、慣用の添加剤、例えば、生理活性成分(皮膚軟化剤、美白剤、制汗剤、肌荒れ防止剤、抗炎症剤、皮膚かゆみ抑制剤、血行促進剤、細胞賦活剤など)、保湿剤、エモリエント剤、クレンジング剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、収斂剤、酵素類、清涼化剤、殺菌剤又は抗菌剤、抗酸化剤、アミノ酸、冷却剤、香料、着色剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤のうち、スキンケア用シートには、例えば、保湿剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、清涼化剤、酵素類、収斂剤、殺菌剤又は抗菌剤などが汎用される。特に、フェイスマスク(フェイスパック)やクレンジングシートでは、例えば、親水性溶媒中に保湿剤やエモリエント剤などが配合されていてもよい。保湿剤又はエモリエント剤としては、例えば、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンショ糖脂肪酸エステル、グリセリン、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリオキシメチルグリコシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロースエーテル(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)などが挙げられる。保湿剤及びエモリエント剤の合計割合は、例えば、溶液中0.1〜50質量%、好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%程度である。
【0101】
これらの添加剤の割合は、用途に応じて適宜選択でき、例えば、水やエタノールなどの液状物質の割合は、通常、添加剤を含む全液状成分中30〜99質量%、好ましくは40〜95質量%、さらに好ましくは50〜90質量%程度である。
【0102】
本発明の保液シートは、湿潤状態で透明であり、皮膚に対して容易に密着できるため、フェイスマスクや湿布などの皮膚に固定するシートとして特に適している。例えば、湿潤状態で透明であるため、密着せずに浮いた部分を容易に矯正できるため、鼻の付け根など、微細な隙間にもシートが密着可能であり、フェイスマスクの有効成分を皮膚に有効に浸透できる。
【0103】
本発明の保液シートは、クレンジングシートや皮膚洗浄用シートなどにも適している。すなわち、本発明の保液シートは、顔の微細な隙間にもシートを密着できるため、メイク(ファウンデーション、白粉、口紅、アイメイクアップなどのメイクアップ化粧品など)を有効に除去できる。
【0104】
このように、本発明の保液シートは、液体含浸生体被膜シート(フェイスマスク、クレンジングシートなど)として利用する場合、通常、液状成分を保液シートに含浸させて、生体の皮膚などに貼付又は接触して使用される。
【実施例】
【0105】
以下に、本発明を実施例などによりさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されない。なお、以下の実施例及び比較例における各物性値は、下記の方法により測定または評価した。また、以下の実施例及び比較例で使用した繊維及びフィルムの詳細は下記の通りである。
【0106】
[目付(g/m)]
JIS L1906に準じ、温度20℃、湿度65%の標準状態にサンプルを24時間放置後、幅方向1m×長さ方向1mの試料を採取し、天秤を用いて重量(g)を測定する。得られた重量(g)の小数点以下を四捨五入して目付とした。
【0107】
[厚み(μm)]
剃刀(フェザー安全剃刀(株)製「フェザー剃刃S片刃」)を用いて、サンプルを面に垂直にMD方向に切断し、デジタル顕微鏡[(株)キーエンス(KEYENCE)製デジタルマイクロスコープ(DIGITAL MICROSCOPE) VHX−900]にて試料の断面を観察し厚さを計測した。
【0108】
[密度(g/cm)]
目付(g/m)を厚みで除し見掛密度を求めた。
【0109】
[空隙率(%)]
不織布の重量(g)、繊維比重(g/cm)、不織布の見かけ体積(cm)から、下式で算出した。なお、不織布の見かけ体積とは、不織布をシートとして見たときの面となる部分の面積に前記厚みの測定法で得られる値を高さとして乗して算出した。
【0110】
空隙率(%)=100−[(重量×100)/(繊維比重×不織布の見かけ体積)]
[平均繊維径(μm)]
繊維シートから試験片(縦×横=5cm×5cm)を採取し、試験片の表面における中央部(対角線の交点を中心とする部分)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して1000倍の倍率で写真撮影した。得られた写真の中央部(対角線の交点)を中心として写真上に半径30cmの円を描き、その円内から無作為に100本の繊維を選定し、長さ方向の中央部又はそれに近い箇所での繊維径をノギスにより測定し、その平均値を採って平均繊維径(数平均繊維径)とした。なお、測定に当たっては、写真に撮影されている繊維が繊維シートの最表面に位置する繊維であるか、又は内側に位置する繊維であるかを区別せずに、SEM写真に写っている繊維のすべてを対象として平均繊維径を求めた。
【0111】
[白度及び透明度]
白度及び透明度は、次の手順で測定した。
(1)測定試料を10×10cmに裁断し重量、厚みを測定する。
(2)黒色のアクリル板(メタクリル樹脂押出板、(株)クラレ製「コモグラス」、12.5cm×12.5cm、厚み3mm)の白度(WI値)を色差計(コニカミノルタ(株)製「色彩色差計CR−410」)で測定する。
(3)(2)の黒色のアクリル板の上に試料を載置し、白度(WI値)を色差計で測定する。
(4)試料にスプレーでイオン交換水を含浸させ、700%含水率になるまで水分調整を行う。
(5)試料をハンドローラー(幅4cm×重量280g、線圧70g/cm)で押さえ、試料と黒色のアクリル板との間に溜まった空気を抜き出すとともに、試料を黒色のアクリル板に密着させる。
(6)湿潤状態で黒色のアクリル板に密着した試料の白度(WI値)を色差計で測定する。
【0112】
得られた白度(WI値)に基づいて、以下の式に従って透明度を算出した。
【0113】
透明度=シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)/目付量(g/m
なお、シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)は、黒色のアクリル板のWI値(W)と、試料にイオン交換水を700質量%含浸させ、黒色のアクリル板に密着させたときのWI値(W)との差(W−W)として求めることができる。Wは6.67であった。
【0114】
[湿潤時の伸長時応力]
JIS L1913(一般短繊維不織布)6.3.2(湿潤時の引張強さ及び伸び率試験)に記載の方法に準拠して測定した。具体的には、サンプルを20℃±2℃の水中に自重で沈降するまで置くか、又は1時間以上水中に沈めておいた後、浸漬液から取り出して、定速伸長形引張試験機((株)島津製作所製)を用いて、速やかに30%伸長時応力を不織布の幅(CD)方向について測定した。
【0115】
[保液層の繊維]
(透明繊維)
テンセル bright:テンセル繊維、LENZING社製「TENCEL」、繊度1.7dtex(平均繊維径12μm)×平均繊維長38mm、酸化チタン含有量0.00質量%、目付50g/mの不織布における保水率1183%
レーヨン bright:レーヨン繊維、ダイワボウレーヨン(株)製「コロナBH」、繊度1.7dtex(平均繊維径12μm)×平均繊維長44mm、酸化チタン含有量0.00質量%
ポリエステル bright:ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、繊度1.56dtex(平均繊維径11.4μm)×平均繊維長51mm、酸化チタン含有量0.09質量%
T型ポリエステル brightブライトT型PET:断面形状がT型のPET繊維、繊度2.2dtex(平均繊維径14μm)×平均繊維長51mm、酸化チタン含有量0.09質量%
ソフィスタ bright:芯部がポリエチレンテレフタレートで構成され、鞘部がエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)で構成された芯鞘複合繊維、クラレ(株)製「ソフィスタ」、平均繊維径2.2dtex(平均繊維径13.5μm)×平均繊維長51mm、芯部の酸化チタン含有量0.05質量%
(不透明繊維)
テンセル dull:テンセル繊維、LENZING社製「LENZING Lyocell」、繊度1.7dtex(平均繊維径12μm)×平均繊維長38mm、酸化チタン含有量0.75質量%
レーヨン dull:レーヨン繊維、繊度1.7dtex(平均繊維径12μm)×平均繊維長38mm、酸化チタン含有量0.60質量%
ポリエステル semi dull:PET繊維、繊度1.56dtex(平均繊維径11.4μm)×平均繊維長51mm、酸化チタン含有量0.50質量%
ソフィスタ semi dull:芯部がポリエチレンテレフタレートで構成され、鞘部がエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)で構成された芯鞘複合繊維、クラレ(株)製「ソフィスタ」、平均繊維径2.2dtex(平均繊維径13.5μm)×平均繊維長51mm、芯部の酸化チタン含有量0.50質量%
太繊度レーヨン dull:レーヨン繊維、繊度5.5dtex(平均繊維径21.3μm)×平均繊維長51mm、酸化チタン含有量0.60質量%。
【0116】
[密着層の繊維]
PP−MB:MFR(230℃、2.16kg)=1100g/10分のポリプロピレン
Ny−MB:MFR(230℃、2.16kg)=45g/10分のポリアミド6
[非多孔性透明層のフィルム]
PEラミ:低密度ポリエチレンフィルム(ポリエチレン:東ソー(株)製「LDポリエチレン ペトロセン」)、厚み15μm
PETフィルム:PETフィルム(東レ(株)製「ルミラーPX52」)、厚み12μm。
【0117】
実施例1
テンセル(bright)繊維100質量部を均一に解繊した後、目付100g/mのセミランダムカードウェブを常法により作製し、このカードウェッブを開口率25%、穴径0.3mmのパンチングドラム支持体上に載置して速度10m/分で長手方向に連続的に移送すると同時に、上方から高圧水流を噴射して交絡処理を行って、交絡した繊維ウェブ(不織布)を製造した。この交絡処理に当たっては、穴径0.10mmのオリフィスをウェブの幅方向に沿って0.6mmの間隔で設けてあるノズル2本を使用し(隣接するノズル間の距離20cm)、1列目のノズルから噴射した高圧水流の水圧を2.0MPa、2列目のノズルから噴射した高圧水流の水圧を3.0MPaとして行った。さらに細かい網目を有する全体に平坦な支持体に載置して連続的に移送すると共に高圧水流を噴射して交絡処理を行った。この交絡処理は、穴径0.10mmのオリフィスをウェブの幅方向に沿って0.6mmの間隔で設けてあるノズル2本を使用して、いずれも高圧水流の水圧4.0MPaの条件下で行った。さらに130℃で乾燥して、目付けが100g/mのスパンレース不織布で形成された保液シートを得た。
【0118】
実施例2〜6
表1に示す目付量に変更したセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例1と同様にして保液シートを得た。
【0119】
実施例7〜9
テンセル(bright)繊維を単独で用いる代わりに、テンセル(bright)繊維とレーヨン(bright)繊維とを表1に示す割合で均一に混綿したセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例4と同様にして保液シートを得た。
【0120】
実施例10
テンセル(bright)繊維の代わりに、レーヨン(bright)繊維を用いたセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例4と同様にして保液シートを得た。
【0121】
実施例11
テンセル(bright)繊維の代わりに、ソフィスタ(bright)繊維を用いたセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例4と同様にして保液シートを得た。
【0122】
実施例12
テンセル(bright)繊維の代わりに、ポリエステル(bright)繊維を用いたセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例4と同様にして保液シートを得た。
【0123】
実施例13〜14
表2に示す目付量に変更したセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例10と同様にして保液シートを得た。
【0124】
実施例15
表3に示す目付量に変更したセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例8と同様にして保液シートを得た。
【0125】
実施例16
テンセル(bright)繊維100質量部の代わりに、テンセル(bright)繊維50質量部及びソフィスタ(bright)繊維50質量部を均一に混綿した後、目付50g/mのセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例1と同様にして保液シートを得た。
【0126】
実施例17
テンセル(bright)繊維100質量部の代わりに、テンセル(bright)繊維50質量部及びポリエステル(bright)繊維50質量部を均一に混綿した後、2回目の交絡処理における高圧水流の水圧を3.0MPaとし、目付70g/mのセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例1と同様にして保液シートを得た。
【0127】
実施例18
テンセル(bright)繊維100質量部の代わりに、テンセル(bright)繊維30質量部、ポリエステル(bright)繊維50質量部及びポリエステル(semi dull)繊維20質量部を均一に混綿した後、目付52g/mのセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例1と同様にして保液シートを得た。
【0128】
実施例19〜20
テンセル(bright)繊維を単独で用いる代わりに、表3に示す割合でテンセル(bright)繊維とテンセル(dull)繊維とを均一に混綿したセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例4と同様にして保液シートを得た。
【0129】
実施例21
ポリアミド樹脂(MFR=45g/10分)100質量部を用いて、一般的なメルトブローン製造設備を使用し、紡糸温度280℃、エアー温度280℃、エアー圧力0.4MPa、孔径0.3mmφ、単孔吐出量0.3g/孔・分、速度19m/分で口金における紡糸孔数400個(1列配置)にてメルトブローン紡糸を行い、回転するネットコンベアを支持体として捕集し、目付10g/mのメルトブローン不織布シートを製造し、巻き取った。
【0130】
テンセル(bright)繊維50質量部、ポリエステル(bright)繊維30質量部及びT型ポリエステル(bright)繊維20質量部を均一に混綿した後、目付71g/mのセミランダムカードウェブを常法により作製し、このカードウェブを開口率25%、穴径0.3mmのパンチングドラム支持体上に載置して速度50m/分で長手方向に連続的に移送すると同時に、上方から高圧水流を噴射して交絡処理を行って、交絡した繊維ウェブ(不織布)を製造した。この交絡処理に当たっては、穴径0.10mmのオリフィスをウェブの幅方向に沿って0.6mmの間隔で設けてあるノズル2本を使用し(隣接するノズル間の距離20cm)、1列目のノズルから噴射した高圧水流の水圧を3.0MPa、2列目のノズルから噴射した高圧水流の水圧を4.0MPaとして行った。先に製造した目付10g/mのメルトブローン不織布シートを巻き出し装置から巻き出し、ウェブと重ね合わせ、さらに細かい網目を有する全体に平坦な支持体に載置して連続的に移送すると共に高圧水流を噴射して交絡処理を行って、2つの不織布を構成する繊維を交絡させることによって複合させた。この交絡処理は、穴径0.10mmのオリフィスをウェブの幅方向に沿って0.6mmの間隔で設けてあるノズル2本を使用して、いずれも高圧水流の水圧5MPaの条件下で行った。さらに120℃で乾燥して、目付けが81g/mの保液シートを得た。
【0131】
実施例22
目付を70g/mに変更する以外は実施例1と同様にしてスパンレース不織布を製造した。Tダイ押出し成形機を用いて、ポリエチレンフィルムをスパンレース不織布の上に押出コーティングして保液シートを製造した。
【0132】
実施例23
ポリプロピレン樹脂(MFR=1100g/10分)100質量部を用いて、一般的なメルトブローン製造設備を使用し、紡糸温度260℃、エアー温度270℃、エアー圧力0.4MPa、孔径0.3mmφ、単孔吐出量0.2g/孔・分、口金における紡糸孔数400個(1列配置)にてメルトブローン紡糸を行い、速度50m/分で回転するネットコンベアを支持体として捕集し、目付5g/mのメルトブローン不織布シートを製造し、巻き取った。
【0133】
ソフィスタ(bright)繊維100質量部を均一に解繊した後、目付70g/mのセミランダムカードウェブを常法により作製し、このカードウェブを開口率25%、穴径0.3mmのパンチングドラム支持体上に載置して速度50m/分で長手方向に連続的に移送すると同時に、上方から高圧水流を噴射して交絡処理を行って、交絡した繊維ウェブ(不織布)を製造した。この交絡処理に当たっては、穴径0.10mmのオリフィスをウェブの幅方向に沿って0.6mmの間隔で設けてあるノズル2本を使用し(隣接するノズル間の距離20cm)、1列目のノズルから噴射した高圧水流の水圧を3.0MPa、2列目のノズルから噴射した高圧水流の水圧を4.0MPaとして行った。先に製造した目付5g/mのメルトブローン不織布シートを巻き出し装置から巻き出し、ウェブと重ね合わせ、さらに細かい網目を有する全体に平坦な支持体に載置して連続的に移送すると共に高圧水流を噴射して交絡処理を行って、2つの不織布を構成する繊維を交絡させることによって複合させた。この交絡処理は、穴径0.10mmのオリフィスをウェブの幅方向に沿って0.6mmの間隔で設けてあるノズル2本を使用して、いずれも高圧水流の水圧5MPaの条件下で行った。さらに120℃で乾燥して、目付けが75g/mの保液シートを得た。
【0134】
比較例1
テンセル(bright)繊維の代わりに、テンセル(dull)繊維を用いて、目付91g/mのセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例1と同様にして保液シートを得た。
【0135】
比較例2
テンセル(bright)繊維の代わりに、レーヨン(dull)繊維を用いて、目付70g/mのセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例1と同様にして保液シートを得た。
【0136】
比較例3
テンセル(bright)繊維100質量部の代わりに、レーヨン(bright)繊維50質量部及びレーヨン(dull)繊維50質量部を均一に混綿した後、目付90g/mのセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例1と同様にして保液シートを得た。
【0137】
比較例4
テンセル(bright)繊維の代わりに、ポリエステル(semi dull)繊維を用いて、目付90g/mのセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例1と同様にして保液シートを得た。
【0138】
比較例5
テンセル(bright)繊維100質量部の代わりに、テンセル(dull)繊維30質量部、レーヨン(dull)繊維50質量部及びセミダルPET繊維20質量部を均一に混綿した後、目付70g/mのセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例1と同様にして保液シートを得た。
【0139】
比較例6
テンセル(bright)繊維の代わりに、太繊度レーヨン(dull)繊維を用いて、目付50g/mのセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例1と同様にして保液シートを得た。
【0140】
比較例7
テンセル(bright)繊維の代わりに、ソフィスタ(semi dull)繊維を用いて、目付70g/mのセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例1と同様にして保液シートを得た。
【0141】
比較例8
テンセル(bright)繊維の代わりに、テンセル(dull)繊維を用いて、目付30g/mのセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例1と同様にして保液シートを得た。
【0142】
比較例9
テンセル(bright)繊維の代わりに、ポリエステル(semi dull)繊維を用いて、目付30g/mのセミランダムカードウェブを作製する以外は実施例1と同様にして保液シートを得た。
【0143】
比較例10
市販の綿不織布(旭化成せんい(株)製「ベンコットM−3II」、目付50g/mの不織布における保水率843%)を用いた。
【0144】
比較例11
市販の綿不織布(旭化成せんい(株)製「ベンコットJクロス300」)を用いた。
【0145】
参考例1
目付を202g/mに変更する以外は実施例1と同様にして保液シートを得た。
【0146】
実施例1〜23、比較例1〜11及び参考例1で得られた保液シートの評価結果を表1〜5に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
【表3】
【0150】
【表4】
【0151】
【表5】
【0152】
表1〜5の結果から明らかなように、実施例の保液シートが湿潤状態で透明性に優れるのに対して、比較例1〜9の保液シートは透明性が低かった。また、比較例10及び11の保液シートは、ゲル化して透明性は優れているものの、湿潤時の初期の引張強力が小さいため、フェイスマスクには適していなかった。
【0153】
図1に、実施例2及び比較例1で得られた保液シートの湿潤状態を比較した写真を示す。図1において、左側のシートが比較例1のシートであり、右側のシートが実施例2のシートであり、各シートの右側部が湿潤状態(含水率700%)である。図1から明らかなように、実施例1の保液シートは、比較例1の保液シートよりも、湿潤状態において透明性が高い。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明の保液シートは、液状成分を吸収し、皮膚に接触させる用途、例えば、体液吸収用シート(例えば、ナプキンやおむつなどの表面材、おむつライナー、ウエットティッシュなど)、スキンケアシート(例えば、フェイスマスク、メイク除去シート、クレンジングシート又は身体洗浄用シート(汗拭きシート、油取りシートなど)、冷却シート、薬用シート(痒み抑制シート、湿布など)などに利用できる。特に、本発明の保液シートは、湿潤状態で透明性が高く、皮膚との密着状態を容易に把握できるため、顔全体、鼻、目元、口元、首などの保湿、美白等の効能成分を含浸したマスクや、化粧を浮かせ拭き取るクレンジングシート、血行促進成分や、皮膚かゆみ抑制成分を含浸した薬用又は治療用シート、揮発性の液体を含浸させ気化熱により冷却する冷却シートなどに特に有用である。
【0155】
さらに、本発明の保液シートは、皮膚に接触させる対人用途に限定されず、液体を含浸させても液だれせず、長時間貼付できる効果が有効な他の用途にも利用できる。具体的には、レンジ周りの油汚れを浮かせたり、自動車の窓に付着した鳥の糞を柔らかくして落とし易くしたり、タイル目地のカビを漂白する用途にも利用できる。これらの用途に本発明の保液シートを適用すると、シートの透明性により、除きたい対象物が透けて見えるため、的(まと)を外すことなく、効率的に高い湿潤状態を保持できる。
図1