特許第6158188号(P6158188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158188
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】抗生物質としての新規なペプチド誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20170626BHJP
   C12P 1/04 20060101ALI20170626BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20170626BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20170626BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20170626BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20170626BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20170626BHJP
   C12R 1/01 20060101ALN20170626BHJP
【FI】
   C07K7/06ZNA
   C12P1/04 A
   C12N1/20 A
   C12N1/20 Z
   C12P21/02 A
   A61K37/02
   A61P31/04
   A61K31/702
   C12P21/02 A
   C12R1:01
【請求項の数】12
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2014-532400(P2014-532400)
(86)(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公表番号】特表2014-534173(P2014-534173A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】EP2012069166
(87)【国際公開番号】WO2013045600
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年9月28日
(31)【優先権主張番号】11183034.5
(32)【優先日】2011年9月28日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/540,085
(32)【優先日】2011年9月28日
(33)【優先権主張国】US
【微生物の受託番号】CNCM  I-4530
(73)【特許権者】
【識別番号】514076847
【氏名又は名称】ノソファルム
【氏名又は名称原語表記】NOSOPHARM
(73)【特許権者】
【識別番号】509045335
【氏名又は名称】アンスティテュ ナショナール ド ラ ルシェルシュ アグロノミク
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA RECHERCHE AGRONOMIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】マキシム、グアルティエリ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、ビラン−ギヨ
(72)【発明者】
【氏名】アラン、ジボダン
(72)【発明者】
【氏名】シルビー、パジュ
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/055545(WO,A1)
【文献】 特開平01−151598(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/136532(WO,A1)
【文献】 The Journal of Antibiotics,2009年,Vol.62,p.295-302
【文献】 Bioresource Technology,2010年,Vol.101,p.7529-7536
【文献】 Journal of Applied Microbiology,2008年,Vol.104,p.745-758
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
C12P 1/00−41/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa10−NH−(CH−R (I)
(式中、
Xaaが、リジンであり;
XaaおよびXaaが、各々、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸であり;
Xaaが、グリシンであり;
Xaaが、オルニチンであり;
Xaaが、プロリンであり;
Xaaが、ヒスチジンであり;
Xaaが、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり;
Xaaが、2,3‐デヒドロアルギニンであり;
Xaa10が、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり;
nが4であり;ならびに、
Rが、NHである)。
【請求項2】
前記化合物が式(Ia)の化合物である、請求項1に記載の化合物:
【化1】
【請求項3】
前記化合物が式(Ib)の化合物である、請求項1に記載の化合物:
【化2】
【請求項4】
前記化合物が式(Ic)の化合物である、請求項1に記載の化合物:
【化3】
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物を含んでなる医薬。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物を含み、さらに第二の抗生物質化合物を含んでなる、組成物。
【請求項7】
前記第二の抗生物質化合物が、アミノグリコシド系抗生物質である、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記第二の抗生物質化合物が、カナマイシンおよび/またはゲンタマイシンである、請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物、および薬学的に許容可能なキャリアを含んでなる、医薬組成物。
【請求項10】
以下の工程:
a)ゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株CNCM I‐4530を液体培地中にて成育させること;および、
b)請求項のいずれか一項に記載の化合物を精製すること
を含んでなる、請求項のいずれか一項に記載の化合物を産生する方法。
【請求項11】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の化合物を産生するための、2011年9月21日にCNCMに寄託された、CNCM I‐4530の受託番号を有するゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株を含んでなる組成物
【請求項12】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の化合物を含んでなる、請求項11に記載のゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株からの培養上清。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な抗生物質化合物およびそれを含む組成物、前記抗生物質化合物を産生する能力を有するゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)の菌株、ならびに微生物疾患の治療におけるそのような化合物およびその組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗微生物剤耐性は、罹患率、死亡率、および医療関連コストに著しい影響を与える大きな公衆衛生上の問題である。この問題は、抗生物質の創薬研究開発プログラムの制限によって悪化してきている。現在、最も関連する多耐性病原性細菌は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(enterococci)(VRE)、広域スペクトルβ‐ラクタマーゼ産生菌(ESBL)、多耐性シュードモナス菌(Pseudomonas)およびアシネトバクター菌(Acinetobacter)種である。これらの細菌に対しては、既存の抗生物質のうちの僅かに数種類のみが有効である。細菌感染を今後確実に効果的に治療可能とするために、新規な抗菌化合物が緊急に求められている。生物は、抗微生物活性を有する生物活性化学物質の確かな入手源であることが証明されている(Berdy J., J. Antibiot. 58, 1-26 (2005))。環境微生物は、新規分子を同定するための有望な資源であり続けている。
【発明の概要】
【0003】
1つの面では、本発明は、式(I)の化合物に関する:
Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa10−NH−(CH−R (I)
(式中、
Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、およびXaa10は、リジン、3‐ヒドロキシリジン、4‐ヒドロキシリジン、5‐ヒドロキシリジン、3,4‐ジヒドロキシリジン、3,5‐ジヒドロキシリジン、4,5‐ジヒドロキシリジン、オルニチン、3‐ヒドロキシオルニチン、4‐ヒドロキシオルニチン、3,4‐ジヒドロキシオルニチン、2,4‐ジアミノブタン酸、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸、アルギニン、ヒスチジン、セリン、およびスレオニンからなる群より独立して選択され;
Xaaは、グリシン、3‐アミノプロパン酸、または4‐アミノブタン酸であり;
Xaaは、プロリン、3‐ヒドロキシプロリン、4‐ヒドロキシプロリン、アジリジン‐2‐カルボン酸、アゼチジン‐2‐カルボン酸、ピペコリン酸、4‐オキサプロリン、3‐チアプロリン、4‐チアプロリン、3,4‐デヒドロプロリン、4‐アミノプロリン、4‐フルオロプロリン、α‐メチルプロリン、またはα‐アリルプロリンであり;
Xaaは、アルギニン、2,3‐デヒドロアルギニン、シトルリン、2,3‐デヒドロシトルリン、カナバニン、または2,3‐デヒドロカナバニンであり;
nは、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;ならびに、
Rは、−OH、−NH、または−COOHである)。
【0004】
1つの実施態様では、Xaaは、リジンであり;XaaおよびXaaは、各々、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸であり;Xaaは、グリシンであり;Xaaは、オルニチンであり;Xaaは、プロリンであり;Xaaは、ヒスチジンであり;ならびにXaaは、2,3‐デヒドロアルギニンである。
【0005】
別の実施態様では、Xaaは、リジンであり;XaaおよびXaaは、各々、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸であり;Xaaは、グリシンであり;Xaaは、オルニチンであり;Xaaは、プロリンであり;Xaaは、ヒスチジンであり;Xaaは、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり;Xaaは、2,3‐デヒドロアルギニンであり;ならびにXaa10は、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンである。
【0006】
別の実施態様では、Xaaは、リジンであり;XaaおよびXaaは、各々、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸であり;Xaaは、グリシンであり;Xaaは、オルニチンであり;Xaaは、プロリンであり;Xaaは、ヒスチジンであり;Xaaは、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり;Xaaは、2,3‐デヒドロアルギニンであり;Xaa10は、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり;nは4であり;ならびにRは、NHである。
【0007】
好ましい実施態様では、本発明は、式(Ia)の化合物に関する:
【化1】
【0008】
別の好ましい実施態様では、本発明は、式(Ib)の化合物に関する:
【化2】
【0009】
別の好ましい実施態様では、本発明は、式(Ic)の化合物に関する:
【化3】
【0010】
別の面では、本発明は、化合物に関し、その化合物は、(Ia)、(Ib)、または(Ic)ではない。
【0011】
好ましくは、本発明の化合物は、単離される。好ましくは、化合物は、約90%を超える純度である。より好ましくは、化合物は、約95%を超える純度である。なおより好ましくは、化合物は、約98%を超える純度である。なおより好ましくは、化合物は、約99%を超える純度である。
【0012】
本発明はまた、上述の化合物および薬学的に許容可能なキャリアを含む医薬組成物にも関する。
【0013】
好ましくは、医薬組成物は、さらに第二の抗生物質化合物を含む。好ましくは、第二の抗生物質化合物は、アミノグリコシド系抗生物質である。好ましくは、第二の抗生物質化合物は、カナマイシンである。好ましくは、第二の抗生物質化合物は、ゲンタマイシンである。
【0014】
本発明はまた、対象における細菌感染を治療する方法にも関し、その方法は、式(I)の化合物、または式(I)の化合物および薬学的に許容可能なキャリアを含む組成物の治療有効量を、それを必要とする対象へ投与することを含む:
Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa10−NH−(CH−R (I)
(式中、
Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、およびXaa10は、リジン、3‐ヒドロキシリジン、4‐ヒドロキシリジン、5‐ヒドロキシリジン、3,4‐ジヒドロキシリジン、3,5‐ジヒドロキシリジン、4,5‐ジヒドロキシリジン、オルニチン、3‐ヒドロキシオルニチン、4‐ヒドロキシオルニチン、3,4‐ジヒドロキシオルニチン、2,4‐ジアミノブタン酸、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸、アルギニン、ヒスチジン、セリン、およびスレオニンからなる群より独立して選択され;
Xaaは、グリシン、3‐アミノプロパン酸、または4‐アミノブタン酸であり;
Xaaは、プロリン、3‐ヒドロキシプロリン、4‐ヒドロキシプロリン、アジリジン‐2‐カルボン酸、アゼチジン‐2‐カルボン酸、ピペコリン酸、4‐オキサプロリン、3‐チアプロリン、4‐チアプロリン、3,4‐デヒドロプロリン、4‐アミノプロリン、4‐フルオロプロリン、α‐メチルプロリン、またはα‐アリルプロリンであり;
Xaaは、アルギニン、2,3‐デヒドロアルギニン、シトルリン、2,3‐デヒドロシトルリン、カナバニン、または2,3‐デヒドロカナバニンであり;
nは、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;ならびに、
Rは、−OH、−NH、または−COOHである)。
【0015】
本発明の方法において、Xaaは、リジンであり;XaaおよびXaaは、各々、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸であり;Xaaは、グリシンであり;Xaaは、オルニチンであり;Xaaは、プロリンであり;Xaaは、ヒスチジンであり;Xaaは、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり;Xaaは、2,3‐デヒドロアルギニンであり;Xaa10は、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり;nは4であり;ならびにRは、NHであることが好ましい。
【0016】
本発明の方法において、式(I)の化合物は:
【化4】
であることが好ましい。
【0017】
好ましくは、本発明の方法は、第二の抗生物質化合物を投与することを含む。好ましくは、第二の抗生物質化合物は、アミノグリコシド系抗生物質である。好ましくは、第二の抗生物質化合物は、カナマイシンである。好ましくは、第二の抗生物質化合物は、ゲンタマイシンである。
【0018】
本発明の方法において、対象は、好ましくは、哺乳類である。好ましくは、対象は、トリ、ブタ、ウシ、またはヒトである。最も好ましくは、対象は、ヒトである。
【0019】
本発明の方法において、化合物または組成物は、好ましくは、多剤耐性臨床細菌に対して有効である。
【0020】
本発明の方法において、化合物または組成物は、好ましくは、静脈内、非経口、経口、および/または局所投与される。
【0021】
本発明の別の目的は、以下の工程:
− ゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株、CNCM I‐4530を、液体培地中にて成育させること;ならびに、
− 式(I)に従う化合物であって:
Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa10−NH−(CH−R (I)
式中、
Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、およびXaa10は、リジン、3‐ヒドロキシリジン、4‐ヒドロキシリジン、5‐ヒドロキシリジン、3,4‐ジヒドロキシリジン、3,5‐ジヒドロキシリジン、4,5‐ジヒドロキシリジン、オルニチン、3‐ヒドロキシオルニチン、4‐ヒドロキシオルニチン、3,4‐ジヒドロキシオルニチン、2,4‐ジアミノブタン酸、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸、アルギニン、ヒスチジン、セリン、およびスレオニンからなる群より独立して選択され;
Xaaは、グリシン、3‐アミノプロパン酸、または4‐アミノブタン酸であり;
Xaaは、プロリン、3‐ヒドロキシプロリン、4‐ヒドロキシプロリン、アジリジン‐2‐カルボン酸、アゼチジン‐2‐カルボン酸、ピペコリン酸、4‐オキサプロリン、3‐チアプロリン、4‐チアプロリン、3,4‐デヒドロプロリン、4‐アミノプロリン、4‐フルオロプロリン、α‐メチルプロリン、またはα‐アリルプロリンであり;
Xaaは、アルギニン、2,3‐デヒドロアルギニン、シトルリン、2,3‐デヒドロシトルリン、カナバニン、または2,3‐デヒドロカナバニンであり;
nは、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;ならびに、
Rは、−OH、−NH、または−COOHである、
化合物を精製すること、
を含む、式(I)の化合物を産生する方法である。
【0022】
1つの実施態様では、本発明は、式(I)の化合物を産生する方法に関し、式中、Xaaは、リジンであり;XaaおよびXaaは、各々、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸であり;Xaaは、グリシンであり;Xaaは、オルニチンであり;Xaaは、プロリンであり;Xaaは、ヒスチジンであり;ならびにXaaは、2,3‐デヒドロアルギニンである。
【0023】
別の実施態様では、本発明は、式(I)の化合物を産生する方法に関し、式中、Xaaは、リジンであり;XaaおよびXaaは、各々、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸であり;Xaaは、グリシンであり;Xaaは、オルニチンであり;Xaaは、プロリンであり;Xaaは、ヒスチジンであり;Xaaは、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり;Xaaは、2,3‐デヒドロアルギニンであり;ならびにXaa10は、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンである。
【0024】
別の実施態様では、本発明は、式(I)の化合物を産生する方法に関し、式中、Xaaは、リジンであり;XaaおよびXaaは、各々、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸であり;Xaaは、グリシンであり;Xaaは、オルニチンであり;Xaaは、プロリンであり;Xaaは、ヒスチジンであり;Xaaは、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり;Xaaは、2,3‐デヒドロアルギニンであり;Xaa10は、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり;nは4であり;ならびにRはNHである。
【0025】
別の実施態様では、本発明は、式(I)の化合物を産生する方法に関し、ここで、式(I)の化合物は、
【化5】
である。
【0026】
好ましい実施態様では、精製工程は、カチオン交換クロマトグラフィおよび/または逆相クロマトグラフィを含む。
【0027】
本発明の別の目的は、2011年9月21日にCNCMに寄託され、CNCM I‐4530の受託番号を有するゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株である。
【0028】
本発明の別の目的は、抗生物質活性を有するゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株、CNCM I‐4530からの培養上清である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、オジロマイシンA(Odilomycin A)のNMR TOCSYスペクトルを示す。
【0030】
図2図2は、オジロマイシンAのNMR HSQCスペクトルを示す。
【0031】
図3図3は、増殖するS.アウレウス(S. aureus)、ATCC 13709に対するオジロマイシンAの殺菌効果を示す。
【0032】
図4図4は、増殖中のP.エールジノーサ(P. aeruginosa)、ATCC 27853に対するオジロマイシンAの殺菌効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義および略語
「抗生物質の」、「抗生物質活性」、「抗菌の」、「抗菌活性」、「抗微生物の」、または「抗微生物活性」の用語は、本明細書で用いられる場合、微生物の増殖の低下、阻害、または停止が達成される効果全般を意味する。抗生物質活性は、例えば微量希釈法(microdilution method)などの公知のいかなる方法に従って試験されてもよい。
【0034】
「オジロマイシン(ODILOMYCIN)」、「オジロマイシン(Odilomycin)」、「オジロマイシン(odilomycin)」の用語は、本明細書で用いられる場合、式(I)の化合物を意味する。ある実施態様では、式(I)の化合物は、式(Ia)、式(Ib)、および/または式(Ic)の化合物である。この用語は、例えば互変異性体、ジアステレオマー(シス/トランス異性体を含む)、およびエナンチオマーなどのすべての立体異性体の形態を包含する。
【0035】
「医薬組成物」とは、本明細書で述べる化合物またはその薬学的に許容可能な可能な塩の1つ以上と、生理学的に許容可能なキャリアおよび賦形剤などのその他の化学成分との混合物を意味する。医薬組成物の目的は、生物または対象への化合物の投与を容易にすることである。
【0036】
本明細書で用いられる場合、「約」の用語は、およそ、概略で、前後、または範囲内を意味するために本明細書で用いられる。「約」の用語が数値範囲と共に用いられる場合、それは、示された数値の上または下に境界を拡張することによって範囲を修飾する。一般的に、「約」の用語は、10パーセント上または下の(高いまたは低い)変動によって、記載の数値より上および下に数値を修飾するために、本明細書で用いられる。
【0037】
本明細書で用いられる場合、「有効量」、「充分量」、または「治療有効量」は、所望される治療レジメンに従って投与された場合に、妥当なベネフィット/リスク比に相応する、臨床結果を含む有益なまたは所望される治療効果を起こすのに充分な化合物の量である。従って、有効量は、例えば、細菌感染、それに関連する病気、もしくはその1つ以上の症状の重篤度および/もしくは継続期間の低減または寛解;細菌感染に関連する病気、それに関連する病気、もしくはその1つ以上の症状に関連する病状または症状の進行の防止(予防的防止を含む);または、別の治療法の(1もしくは複数の)予防的もしくは治療的効果の向上またはそうでなければ改善を行うのに充分であり得る。有効量にはまた、望ましくない副作用を回避または実質的に減弱させる化合物の量も含まれる。
「キャリア」の用語は、化合物が共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または媒体を意味する。薬学的に許容可能な可能なキャリアとしては、生理学的適合性を有するすべての溶媒、分散媒、コーティングなどが挙げられる。そのような医薬キャリアの限定されない例としては、水、およびピーナツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などの、石油、動物、植物、または合成由来のものを含む油などの液体が挙げられる。医薬キャリアはまた、生理食塩水、アカシアガム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、ウレアなどであってもよい。加えて、補助剤、安定化剤、増粘剤、滑沢剤、および着色剤も用いられてよい。適切な医薬キャリアのその他の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Alfonso Gennaro ed., Krieger Publishing Company (1997);Remington's: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed. (Lippincot, Williams & Wilkins (2005);およびModern Pharmaceutics, vol. 121 (Gilbert Banker and Christopher Rhodes, CRC Press (2002)、に記載されている。
【0038】
略語:ATCC(アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection))、CNCM(フランス国立微生物カルチャーコレクション(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes))、INRA(フランス国立農学研究所(Institut National de la Recherche Agronomique))、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)、ESBL(広域スペクトルβ‐ラクタマーゼ産生菌)、NMR(核磁器共鳴)、MS‐MS(質量分析−質量分析)、LC‐MS(液体クロマトグラフィ‐質量分析)、ESI(エレクトロスプレーイオン化)、HPLC(高圧液体クロマトグラフィ)、LB(ルリア‐ベルターニ培地)、NBTA(栄養カンテン(ディフコ(Difco)) 31g/L、ブロモチモールブルー 25mg/L、および塩化2,3,5‐トリフェニルテトラゾリウム 1% 40mg/L)、TFA(トリフルオロ酢酸)、UV(紫外線)、MIC(最小阻止濃度)、MHB(ミューラー‐ヒントンブロス)、MBC(最小殺菌濃度)。
【0039】
詳細な説明
1つの面では、本発明は、受託番号CNCM I‐4530を有し、2011年9月21日にIRNA(フランス国立農学研究所)の名義でCNCM(フランス国立微生物カルチャーコレクション)に寄託されたゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株108に関する。
【0040】
ゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株、CNCM I‐4530は、抗生物質または抗微生物活性を示す化合物を産生することが見出された。ゼノラブダス・ネマトフィラ菌(Xenorhabdus nematophila)株CNCM I‐4530が、液体培地中で増殖される場合、抗生物質化合物が、その培養上清中へ分泌される。
【0041】
別の面では、本発明は、抗生物質または抗菌活性を示す、ゼノラブダス・ネマトフィラ菌株、CNCM I‐4530からの培養上清に関する。抗生物質活性を有する培養上清の調製では、ゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株、CNCM I‐4530が、標準的な条件下にて液体培地中で増殖され、細菌細胞が除去され、上清が回収される。細菌細胞の除去は、例えば、遠心分離またはろ過によって行われてよい。
【0042】
なお別の面では、本発明は、抗生物質活性を示す、ゼノラブダス・ネマトフィラ菌株CNCM I‐4530からの抽出物に関する。ゼノラブダス・ネマトフィラからの細胞抽出物は、当業者に公知の適切ないかなる方法に従って調製されてもよい。
【0043】
ある実施態様では、本発明はまた、医薬として用いるための、ゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株CNCM I‐4530からの培養上清および抽出物も包含する。
【0044】
ある実施態様では、本発明は、ゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株CNCM I‐4530からの抽出物の投与を含む、細菌感染の治療、抑制、および/または予防の方法を含む。
【0045】
ある実施態様では、本発明はまた、抗生物質として用いるための、ゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株、CNCM I‐4530からの培養上清および抽出物も包含する。
【0046】
ゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株CNCM I‐4530、この菌株からの培養上清、およびこの菌株から得られる細胞抽出物は、例えばヒト病原性細菌を含む種々の微生物に対する抗生物質活性を示す。
【0047】
より詳細には、ゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株CNCM I‐4530、この菌株からの培養上清、およびこの菌株から得られる細胞抽出物は、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、エンテロバクター・クロカエ(Enterobacter clocae)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、大腸菌、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミデス(Staphylococcus epidermidis)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、セラチア・マレセンス(Serratia marescens)、およびシュードモナス・エールジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)に対する抗生物質活性を示す。好ましくは、ゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株CNCM I‐4530、この菌株からの培養上清、およびこの菌株から得られる細胞抽出物は、スタフィロコッカス・アウレウス、スタフィロコッカス・エピデルミデス、バチルス・スブチリス、クレブシエラ・ニューモニア(Klebsiella pneumonia)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、アシネトバクター・バウマンニ、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、大腸菌、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、シュードモナス・エルジノース(Pseudomonas aeruginos)、およびステノトロホモナス・マルトフィリアに対する抗生物質活性を示す。
【0048】
本明細書で述べる抗生物質活性を有する代表的な化合物は、ゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株CNCM I‐4530の培養上清から精製された。
【0049】
なお別の面では、本発明は、式(I)の化合物に関し:
Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa10−NH−(CH−R (I)
式中、
Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、およびXaa10は、リジン、3‐ヒドロキシリジン、4‐ヒドロキシリジン、5‐ヒドロキシリジン、3,4‐ジヒドロキシリジン、3,5‐ジヒドロキシリジン、4,5‐ジヒドロキシリジン、オルニチン、3‐ヒドロキシオルニチン、4‐ヒドロキシオルニチン、3,4‐ジヒドロキシオルニチン、2,4‐ジアミノブタン酸、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸、アルギニン、ヒスチジン、セリン、およびスレオニンからなる群より独立して選択され;
Xaaは、グリシン、3‐アミノプロパン酸、または4‐アミノブタン酸であり;
Xaaは、プロリン、3‐ヒドロキシプロリン、4‐ヒドロキシプロリン、アジリジン‐2‐カルボン酸、アゼチジン‐2‐カルボン酸、ピペコリン酸、4‐オキサプロリン、3‐チアプロリン、4‐チアプロリン、3,4‐デヒドロプロリン、4‐アミノプロリン、4‐フルオロプロリン、α‐メチルプロリン、またはα‐アリルプロリンであり;Xaaは、アルギニン、2,3‐デヒドロアルギニン、シトルリン、2,3‐デヒドロシトルリン、カナバニン、または2,3‐デヒドロカナバニンであり;
nは、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;ならびに、
Rは、−OH、−NH、または−COOHである。
【0050】
ある実施態様では、Xaaは、リジンであり、XaaおよびXaaは、各々、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸であり、Xaaは、グリシンであり、Xaaは、オルニチンであり、Xaaは、プロリンであり、Xaaは、ヒスチジンであり、ならびにXaaは、2,3‐デヒドロアルギニンである。
【0051】
ある実施態様では、Xaaは、リジンである。
【0052】
ある実施態様では、Xaaは、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸である。
【0053】
ある実施態様では、Xaaは、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸である。
【0054】
ある実施態様では、Xaaは、グリシンである。
【0055】
ある実施態様では、Xaaは、オルニチンである。
【0056】
ある実施態様では、Xaaは、プロリンである。
【0057】
ある実施態様では、Xaaは、ヒスチジンである。
【0058】
ある実施態様では、Xaaは、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンである。
【0059】
ある実施態様では、Xaaは、2,3‐デヒドロアルギニンである。
【0060】
ある実施態様では、Xaa10は、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンである。
【0061】
ある実施態様では、n=4である。
【0062】
ある実施態様では、Rは−NHである。
【0063】
ある実施態様では、Xaaは、リジンであり、XaaおよびXaaは、各々、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸であり、Xaaは、グリシンであり、Xaaは、オルニチンであり、Xaaは、プロリンであり、Xaaは、ヒスチジンであり、Xaaは、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり、Xaaは、2,3‐デヒドロアルギニンであり、Xaa10は、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンである。
【0064】
ある実施態様では、Xaaは、リジンであり、XaaおよびXaaは、各々、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸であり、Xaaは、グリシンであり、Xaaは、オルニチンであり、Xaaは、プロリンであり、Xaaは、ヒスチジンであり、Xaaは、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり、Xaaは、2,3‐デヒドロアルギニンであり、Xaa10は、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり、nは4であり、ならびにRは、NHである。
【0065】
アミノ酸残基中のα‐炭素原子における立体配置は、「D」または「L」であってよく、式(I)の化合物中のその他のアミノ酸残基の立体配置とは独立であってよい。従って、ある実施態様では、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、およびXaa10は、各々、アミノ酸残基中のα‐炭素にて、「L」の立体配置を有する。ある実施態様では、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、およびXaa10の1つ以上は、アミノ酸残基中のα‐炭素にて、「D」の立体配置を有する。
【0066】
アミノ酸側鎖中のヒドロキシル基における立体配置は、「R」または「S」であってよく、式(I)の化合物中のその他のヒドロキシル基の立体配置とは独立であってよい。従って、ある実施態様では、1つ以上のヒドロキシル基が、「R」立体配置を有する。ある実施態様では、1つ以上のヒドロキシル基が、「S」立体配置を有する。ある実施態様では、ヒドロキシル基の各々が、「R」立体配置を有する。ある実施態様では、ヒドロキシル基の各々が、「S」立体配置を有する。
【0067】
ある実施態様では、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物である:
【化6】
【0068】
式(Ia)の化合物はまた、Lys−(3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸)−(3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸)−Gly−オルニチン−Pro−His−(5‐ヒドロキシリジン)−(2,3‐デヒドロアルギニン)−(5‐ヒドロキシリジン)−(1,4‐ジアミノブタン)としても定義される。
【0069】
「オジロマイシンA」の用語は、式(Ia)の化合物を意味する。
【0070】
ある実施態様では、式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物である:
【化7】
【0071】
式(IIb)の化合物はまた、Lys−(3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸)−(3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸)−Gly−オルニチン−Pro−His−Lys−(2,3‐デヒドロアルギニン)−(5‐ヒドロキシリジン)−(1,4‐ジアミノブタン)としても定義される。
【0072】
「オジロマイシンB」の用語は、式(Ib)の化合物を意味する。
【0073】
ある実施態様では、式(I)の化合物は、式(Ic)の化合物である:
【化8】
【0074】
式(Ic)の化合物はまた、Lys−(3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸)−(3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸)−Gly−オルニチン−Pro−His−Lys−(2,3‐デヒドロアルギニン)−Lys−(1,4‐ジアミノブタン)としても定義される。
【0075】
「オジロマイシンC」の用語は、式(Ic)の化合物を意味する。
【0076】
ある実施態様では、オジロマイシンには、式(Ia)、(Ib)、および(Ic)の化合物は含まれない。
【0077】
ある実施態様では、オジロマイシンは単離される。
【0078】
ある実施態様では、オジロマイシンは、約50%を超える純度である。ある実施態様では、オジロマイシンは、約60%を超える純度である。ある実施態様では、オジロマイシンは、約70%を超える純度である。ある実施態様では、オジロマイシンは、約80%を超える純度である。ある実施態様では、オジロマイシンは、約85%を超える純度である。ある実施態様では、オジロマイシンは、約90%を超える純度である。ある実施態様では、オジロマイシンは、約95%を超える純度である。ある実施態様では、オジロマイシンは、約98%を超える純度である。ある実施態様では、オジロマイシンは、約99%を超える純度である。ある実施態様では、記載したいずれの純度値も、必要に応じて、または下限値のいずれかが上限値のいずれかと組み合わされ得る場合、純度範囲の下側および/または上側終点を形成し得る。
【0079】
ある実施態様では、オジロマイシンおよび/またはそれを含んでなる組成物は、医薬、抗生物質、抗微生物剤として、または微生物疾患、特に病原性細菌によって例えば引き起こされる細菌感染の治療において有用である。
【0080】
ある実施態様では、オジロマイシンおよび/またはそれを含む組成物は、院内感染(hospital-acquired infection)または医原性細菌感染(nosocomial bacterial infection)の治療を例とする細菌感染の治療に有用である。
【0081】
ある実施態様では、本発明は、院内細菌感染に罹患した対象の治療を行うための、式(I)の化合物の有効量を前記対象へ投与することを含んでなる方法を提供する。
【0082】
ある実施態様では、本発明は、病院内細菌感染に罹患した対象の治療を行うための、式(I)の化合物の有効量を前記対象へ投与することを含んでなる方法を提供する。
【0083】
1つの面では、本発明はまた、微生物感染または微生物疾患の治療のための医薬を製造するための式(I)の化合物の使用にも関する。
【0084】
別の面では、本発明はまた、抗生物質組成物を製造するための式(I)の化合物の使用にも関する。
【0085】
なお別の面では、本発明はまた、式(I)の化合物または式(I)の化合物を含む医薬組成物を、それを必要とする対象へ投与することを含む、治療の方法にも関する。オジロマイシンおよび/またはそれを含む組成物は、例えば、細菌感染および/もしくは疾患の治療、抑制、ならびに/または予防に有用であり得る。
【0086】
ある実施態様では、本発明は、式(I)の化合物または式(I)の化合物を含む組成物の治療有効量を、それを必要とする対象へ投与することを含む、細菌感染を治療、予防、および/または抑制する方法を提供する。
【0087】
ある実施態様では、本発明は、細菌感染に罹患した対象を治療するための、式(I)の化合物を前記対象へ投与することを含む方法を提供する。
【0088】
ある実施態様では、本発明は、対象における細菌感染を抑制するための、式(I)の化合物を対象へ投与することを含む方法を提供する。
【0089】
さらにある実施態様では、本発明は、多剤耐性細菌感染に罹患した対象を治療するための、式(I)の化合物の有効量を前記対象へ投与することを含む方法を提供する。
【0090】
ある実施態様では、本発明の方法は、その他の薬物または抗生物質に対して耐性を有する細菌またはそれに関連する感染の阻止を提供する。ある実施態様では、方法は、多剤耐性細菌からの感染の治療、抑制、および/または予防を提供する。
【0091】
ある実施態様では、細菌感染は、多剤耐性である。ある実施態様では、細菌株は、院内感染である。ある実施態様では、細菌は、医原性である。
【0092】
ある実施態様では、細菌感染は、グラム陰性細菌からの感染を含む。ある実施態様では、細菌感染は、グラム陽性細菌からの感染を含む。ある実施態様では、細菌感染は、2種類以上の細菌株による感染を含む。
【0093】
ある実施態様では、細菌または微生物感染は、そのすべてまたは一部が、アクロモバクター(Achromobacter)、アクチノバチラス(Actinobacillus)、アクチノミセス(Actinomyces)、アシネトバクター(Acinetobacter)、エロモナス(Aeromonas)、アナプラズマ(Anaplasma)、バチルス(Bacillus)、バクテロイデス(Bacteroides)、バルトネラ(Bartonella)、ブデロビブリオ(Bdellovibrio)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ボルデテラ(Bordetella)、ボレリア(Borrelia)、ブルセラ(Brucella)、バークホルデリア(Burkholderia)、カンピロバクター(Campylobacter)、キャプノサイトファーガ(Capnocytophaga)、カルジオバクテリウム(Cardiobacterium)、クラミジア(Chlamydia)、クラミドフィラ(Chlamydophila)、クロモバクテリウム(Chromobacterium)、シトロバクター(Citrobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、コクシエラ(Coxiella)、エーリキア(Ehrlichia)、エンテロバクター(Enterobacter)、エンテロコックス(Enterococcus)、エリシペロスリクス(Erysipelothrix)、エシェリキア(Escherichia)、フランシセラ(Francisella)、フゾバクテリウム(Fusobacterium)、ヘモフィルス(Haemophilus)、ヘリコバクター(Helicobacter)、ヘモバルトネラ(Hemobartonella)、クレブシエラ(Klebsiella)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、レジオネラ(Legionella)、レプトスピラ(Leptospira)、リステリア(Listeria)、マンヘミア(Mannheimia)、モラクセラ(Moraxella)、モルガネラ(Morganella)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、ナイセリア(Neisseria)、
ネオリケッチア(Neorickettsia)、ノカルジア(Nocardia)、パスツレラ(Pasteurella)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)、フォトラブダス(Photorhabdus)、ポルフィロモナス(Porphyromonas)、プレボテラ(Prevotella)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、プロテウス(Proteus)、シュードモナス(Pseudomonas)、リケッチア(Rickettsia)、サルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)、シゲラ(Shigella)、スフェロフォルス(Sphaerophorus)、スピリルム(Spirillum)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)、ストレプトバシラス(Streptobacillus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、トレポネーマ(Treponema)、トロフェリマ(Tropheryma)、ウレアプラズマ(Ureaplasma)、ビブリオ(Vibrio)、またはエルシニア(Yersinia)科(families)の細菌によって引き起こされる感染である。
【0094】
ある実施態様では、細菌または微生物感染は、そのすべてまたは一部が、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、エンテロバクター・クロカエ(Enterobacter clocae)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、大腸菌(Escherichia coli)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミデス(Staphylococcus epidermidis)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、セラチア・マレセンス(Serratia marescens)、またはシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)によって引き起こされる感染である。好ましくは、ゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株CNCM I‐4530、この菌株からの培養上清、およびこの菌株から得られる細胞抽出物は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミデス(Staphylococcus epidermidis)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、クレブシエラ・ニューモニア(Klebsiella pneumonia)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、大腸菌(Escherichia coli)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、シュードモナス・エルジノース(Pseudomonas aeruginos)、およびステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)に対する抗生物質活性を示す。
【0095】
ある実施態様では、本開示は、細菌感染、ならびに/またはそのような細菌感染によって引き起こされるもしくはそれに関連する疾患状態、および/もしくは病状を治療する方法における、式(I)の化合物を含む医薬組成物および/または医薬の使用を提供する。
【0096】
ある実施態様では、方法は、式(I)の化合物を単独で、もしくは第二の抗生物質化合物と組み合わせて、または式(I)の化合物単独、もしくは第二の抗生物質化合物との組み合わせ、および薬学的に許容可能なキャリアを含む組成物を、その有効量で対象へ投与することを含む。薬学的に許容可能なキャリアは、当業者に公知であり、例えば、アジュバント、希釈剤、賦形剤、充填剤、滑沢剤、および媒体が挙げられる。多くの場合、薬学的に許容可能なキャリアは、活性化合物に対して化学的に不活性であり、使用の条件下にて無毒性である。薬学的に許容可能なキャリアの例としては、例えば、水もしくは生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリマー、炭水化物およびその誘導体、油、脂肪酸、またはアルコールが挙げられ得る。
【0097】
ある実施態様では、細菌感染に関連する病状の治療、予防、および/または抑制の方法は:(i)そのような治療を必要とする対象を識別する工程;(ii)式(I)の化合物を単独で、もしくは第二の抗生物質化合物と組み合わせて、または式(I)の化合物単独、もしくは第二の抗生物質化合物との組み合わせ、および薬学的に許容可能なキャリアを含む組成物を提供する工程;ならびに(iii)そのような治療を必要とする対象に、細菌感染を治療、予防、および/または抑制するための治療有効量の(1もしくは複数の)前記化合物または組成物を投与する工程を含む。
【0098】
ある実施態様では、方法は、式(I)の化合物;または式(I)の化合物および薬学的に許容可能なキャリアを含む組成物の有効量を対象へ投与することを含む。
【0099】
ある実施態様では、細菌感染に関連する病状の治療、予防、および/または抑制の方法は:(i)そのような治療を必要とする対象を識別する工程;(ii)式(I)の化合物、または式(I)の化合物、薬学的に許容可能なキャリアを含む組成物を提供する工程;ならびに(iii)そのような治療を必要とする対象に、細菌感染に関連する疾患状態もしくは病状を治療、予防、および/または抑制するための治療有効量の前記化合物または組成物を投与する工程を含む。
【0100】
ある実施態様では、治療とは、一般的に、ヒトであってもまたは動物であっても(例:獣医学での適用)、病状の進行の阻止を例とする何らかの所望される治療効果が達成されるその治療および治療法を意味する。治療としてはまた、これらに限定されないが、進行速度の低下、進行速度の停止、病状の寛解、病状の治癒、疾患もしくは病気の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、疾患もしくは病気の広がりの予防、疾患もしくは病気の進行の遅延もしくは緩徐、疾患もしくは病気状態の寛解もしくは緩和、ならびに緩解(部分的もしくは完全であっても)も挙げられ得るものであり、これらは検出可能であってもまたは検出不可であってもよい。ある実施態様では、治療はまた、治療を受けなかった場合の期待生存期間と比較した生存期間の延長も意味し得る。ある実施態様では、予防措置としての治療(すなわち、予防法)も含まれる。例えば、まだ病状を発症していないが病状発症のリスクを有する対象への使用が、「治療」の用語に包含される。
【0101】
ある実施態様では、治療は、2つ以上の治療または治療法が、例えば順次にまたは同時に組み合わされる併用治療および治療法を含む。例えば、本発明の活性剤はまた、例えばその他の抗微生物剤または抗生物質などを例とするその他の剤と合わせることによるさらなる併用治療法で用いられてもよい。
【0102】
対象は、例えば、単離もしくは培養された細胞または組織を含むインビトロおよびインビボ系、非細胞生体外アッセイ系、ならびに動物(例:両生類、鳥類、魚類、哺乳類、有袋類、ヒト、例えばネコ、イヌ、サル、マウス、もしくはラットなどの家畜動物;または例えばウマ、ウシ(雌ウシなど)、シチメンチョウ、ニワトリ、もしくはブタなどの商業用動物)である。
【0103】
ある実施態様では、対象は、哺乳類である。ある実施態様では、対象は、トリ、ブタ、ウシ、またはヒトである。ある実施態様では、対象は、ヒトである。ある実施態様では、対象は、トリである。ある実施態様では、対象は、ブタ(swine)またはブタ(pig)である。ある実施態様では、対象は、シチメンチョウまたはニワトリである。
【0104】
加えて、組成物または方法は、式(I)の化合物単独と組み合わせて、1つ以上の追加の抗菌剤または抗生物質化合物をさらに含んでよい。そのような化合物の例としては、これらに限定されないが、ダプトマイシン、オキサシリン、ピペラシリン/タゾバクタム、チカリシリン(ticaricillin)/クラブラン酸、アモキシシリン/クラブラン酸、エリスロマイシン、セフェピム、クリンダマイシン、イミペネム、ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、アズトレオナム、バンコマイシン、リネゾリド、リファンピシン、カナマイシン、アンピシリン、テトラサイクリンなどが挙げられる。
【0105】
ある実施態様では、追加の(または第二の)抗生物質は、アミノグリコシド系抗生物質である。アミノグリコシド系抗生物質は、分子の一部がアミノ修飾された糖を含有する抗生物質化合物である。アミノグリコシド系抗生物質の例としては、これらに限定されないが、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、ベカナマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン、エルサミトルシン、G418、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB,イセパマイシン、カナマイシン、カスガマイシン、ミクロノマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、硫酸パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、ストレプトデュオシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、およびベルダマイシン(verdamicin)が挙げられる。
【0106】
従って、ある実施態様では、方法および/または組成物は、式(I)の化合物と組み合わせて、1つ以上の追加の抗菌剤化合物をさらに含む。ある実施態様では、追加の抗菌剤化合物は、ダプトマイシン、オキサシリン、ピペラシリン/タゾバクタム、チカルシリン、クラブラン酸、アモキシシリン/クラブラン酸、エリスロマイシン、セフェピム、クリンダマイシン、イミペネム、ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、アズトレオナム、バンコマイシン、リネゾリド、リファンピシン、カナマイシン、アンピシリン、およびテトラサイクリンからなる群より選択される。ある実施態様では、追加の抗菌剤は、カナマイシンである。ある実施態様では、追加の抗生物質は、アミノグリコシド系抗生物質である。
【0107】
ある実施態様では、本発明は、式(I)の化合物と第二の抗生物質化合物とを組み合わせて対象に用いることによる、細菌感染を治療、抑制、および/または予防する方法を提供し、ここで、式(I)の化合物または第二の抗生物質化合物のいずれかを単独で用いることでは、所望される治療効果は得られない。驚くべきことに、式(I)の化合物と一緒に他の抗生物質化合物が用いられる場合、抗生物質効果の統計的に有意である増加が観察されることが見出された。ある実施態様では、カナマイシンなどの第二の抗生物質と式(I)の化合物との間に相乗効果が存在する。従って、ある実施態様では、カナマイシンおよび式(I)の化合物が、細菌レベルの相乗効果的な低下を示す量で投与される。ある実施態様では、カナマイシンおよび式(I)の化合物が、細菌感染の相乗効果的な治療、抑制、および/または予防を示す量で投与される。
【0108】
本発明の別の面は、式(I)の化合物の有効量を含む医薬組成物である。ある実施態様では、Xaaは、リジンである。
【0109】
ある実施態様では、Xaaは、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸である。
【0110】
ある実施態様では、Xaaは、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸である。
【0111】
ある実施態様では、Xaaは、グリシンである。
【0112】
ある実施態様では、Xaaは、オルニチンである。
【0113】
ある実施態様では、Xaaは、プロリンである。
【0114】
ある実施態様では、Xaaは、ヒスチジンである。
【0115】
ある実施態様では、Xaaは、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンである。
【0116】
ある実施態様では、Xaaは、2,3‐デヒドロアルギニンである。
【0117】
ある実施態様では、Xaa10は、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンである。
【0118】
ある実施態様では、nは、4である。
【0119】
ある実施態様では、Rは、−NHである。
【0120】
ある実施態様では、Xaaは、リジンであり、XaaおよびXaaは、各々、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸であり、Xaaは、グリシンであり、Xaaは、オルニチンであり、Xaaは、プロリンであり、Xaaは、ヒスチジンであり、およびXaaは、2,3‐デヒドロアルギニンである。
【0121】
ある実施態様では、Xaaは、リジンであり、XaaおよびXaaは、各々、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸であり、Xaaは、グリシンであり、Xaaは、オルニチンであり、Xaaは、プロリンであり、Xaaは、ヒスチジンであり、Xaaは、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり、Xaaは、2,3‐デヒドロアルギニンであり、およびXaa10は、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンである。
【0122】
ある実施態様では、Xaaは、リジンであり、XaaおよびXaaは、各々、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸であり、Xaaは、グリシンであり、Xaaは、オルニチンであり、Xaaは、プロリンであり、Xaaは、ヒスチジンであり、Xaaは、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり、Xaaは、2,3‐デヒドロアルギニンであり、Xaa10は、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり、nは、4であり、およびRは、NHである。
【0123】
ある実施態様では、本発明は、細菌感染に起因する、もしくはそれに関連する疾患状態および/または病状を治療、抑制、および/または予防する方法における、式(I)の化合物を含む医薬組成物および/または医薬の使用を提供する。
【0124】
ある実施態様では、治療の方法は:(i)そのような治療を必要とする対象を識別する工程;(ii)式(I)の化合物を提供する工程;ならびに(iii)そのような治療を必要とする対象に、疾患状態もしくは病状を治療、抑制、および/または予防するための治療有効量の前記式(I)の化合物を投与する工程を含む。
【0125】
ある実施態様では、治療の方法は:(i)そのような治療を必要とする対象を識別する工程;(ii)式(I)の化合物を含む組成物を提供する工程;ならびに(iii)そのような治療を必要とする対象に、疾患状態もしくは病状を治療、抑制、および/または予防するための治療有効量の前記組成物を投与する工程を含む。
【0126】
ある実施態様では、オジロマイシンは、インビボ投与に適する生体適合性を有する態様で、対象へ投与するための医薬組成物に製剤される。別の面によると、本発明は、薬学的に許容可能な希釈剤および/またはキャリアとの混合物として式(I)の化合物を含む医薬組成物を提供する。薬学的に許容可能なキャリアは、組成物のその他の成分との適合性を有し、そのレシピエントに対して有害ではないという意味で、「許容される」ものである。本明細書で用いられる薬学的に許容可能なキャリアは、医薬製剤用物質として用いられ、鎮痛剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、希釈剤、乳化剤、賦形剤、増量剤(extenders)、流動促進剤、可溶化剤、安定化剤、懸濁剤、等張化剤、媒体、および増粘剤として組み込まれる様々な有機または無機物質から選択され得る。抗酸化剤、芳香剤、着色剤、香味改善剤、保存剤、および甘味剤などの医薬添加剤も添加されてよい。許容可能な医薬キャリアの例としては、中でも、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース、グリセリン、アラビアガム、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、粉末、生理食塩水、アルギン酸ナトリウム、スクロース、デンプン、タルク、および水が挙げられる。ある実施態様では、「薬学的に許容可能な」の用語は、連邦政府もしくは州政府の監督機関によって承認されているか、または米国薬局方、もしくは動物、より詳細にはヒトにおける使用についてのその他の一般的に認識されている薬局方に掲載されていることを意味する。
【0127】
例えば洗浄剤などの界面活性剤も、製剤における使用に適している。
【0128】
対象へ投与される際、本発明の化合物および薬学的に許容可能なキャリアは、滅菌状態であってよい。適切な医薬キャリアとしてはまた、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、水、エタノール、ポリソルベート20などの賦形剤も挙げられ得る。本組成物はまた、所望される場合、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含有してよい。
【0129】
本発明の医薬組成物または製剤は、製薬技術分野にて公知の方法によって作製される。例えば、式(I)の化合物は、懸濁液または溶液として、キャリアおよび/または希釈剤と混合される。所望に応じて、1つ以上の副成分(accessory ingredients)(例:緩衝剤、香味剤、界面活性剤など)も添加されてよい。キャリアの選択は、化合物の溶解性および化学的性質、選択された投与経路、ならびに標準的な製薬手法によって決定される。
【0130】
加えて、オジロマイシンまたはそれを含む組成物は、経口投与、舌下もしくは頬側投与、非経口投与、局所投与、経皮投与、吸入もしくは鼻腔内、経膣、直腸内、および筋肉内を含むがこれらに限定されない公知の手順によって対象へ投与される。化合物または組成物は、非経口、筋膜上、関節内、頭蓋内、皮内、くも膜下腔内、筋肉内、眼窩内、腹腔内、脊髄内、胸骨内(intrasternal)、血管内、静脈内、実質内(parenchymatous)、皮下、もしくは舌下注射、またはカテーテルによって投与される。
【0131】
ある実施態様では、化合物および/または組成物は、経口投与される。ある実施態様では、化合物および/または組成物は、皮下投与される。ある実施態様では、化合物および/または組成物は、静脈内投与される。ある実施態様では、化合物および/または組成物は、筋肉内投与される。ある実施態様では、化合物および/または組成物は、局所投与される。ある実施態様では、化合物および/または組成物は、非経口投与される。
【0132】
ある実施態様では、組成物は、錠剤、カプセル、またはシングルドーズバイアルなどの単位剤形である。適切な単位用量、すなわち、治療有効量は、選択された化合物の投与が必要とされる病状の各々に対して適切に設計された臨床試験の過程で決定され得るものであり、当然、所望される臨床的エンドポイントに応じて様々となる。
【0133】
ある実施態様では、経口用の医薬組成物は、マンニトール、ラクトース、およびソルビトールなどの希釈剤;デンプン、ゼラチン、糖、セルロース誘導体、天然ガム、およびポリビニルピロリドンなどの結合剤;タルク、ステアレート、水素化植物油、ポリエチレングリコール、およびコロイド状二酸化ケイ素などの滑沢剤;デンプン、セルロース、アルギネート、ガム、および網状ポリマーなどの崩壊剤;ならびにその他の着色剤、香味剤、および甘味剤としての通常の賦形剤と一緒にオジロマイシンを含む。
【0134】
ある実施態様では、組成物は、局所投与に適するキャリアまたは賦形剤と共にオジロマイシンを含む。軟膏、ポマード、クリーム、ジェル、およびローションを例とするいかなる局所用製剤も、本発明にて用いられてよい。本発明に従う局所投与用の代表的な組成物としては、軟膏、ポマード、クリーム、ジェル、およびローションが挙げられる。
【0135】
オジロマイシンの用量は、所望される効果、治療の継続期間、および用いられる投与経路に応じて異なる。
【0136】
ある実施態様では、本発明に従う医薬組成物は、抗微生物剤としての使用、抗生物質としての使用、または微生物疾患、特に細菌によって引き起こされる微生物疾患の治療における使用のためのものである。
【0137】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、細菌感染の治療における使用、特に院内感染または医原性細菌感染の治療における使用のためのものである。
【0138】
オジロマイシンは、抗微生物/抗生物質活性を示すその他の活性化合物と組み合わされてよい。本発明に包含される医薬組成物は、細菌疾患または細菌感染の治療のためのさらなる治療剤も含んでよい。
【0139】
ある実施態様では、方法は、オジロマイシンの治療有効用量の投与を含む。投与される用量は、活性成分の薬力学特性、ならびにその投与のモードおよび経路;活性成分の投与の時間;レシピエントの年齢、性別、健康状態、および体重;症状の性質および度合い;併用治療の種類、治療の頻度、および所望される効果;ならびに排出速度などの公知の因子に応じて様々となり得る。これらはすべて容易に特定されるものであり、当業者によって、用量および/もしくは投与計画を調節または調整(titrate)するために用いられ得る。組成物に用いられる正確な用量も、投与経路に依存するものであり、医師の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。
【0140】
化合物および/または組成物のいずれも、化合物および/または組成物を含むキットとして提供されてよい。従って、ある実施態様では、化合物および/または組成物は、キットとして提供される。
【0141】
本発明の別の面は、式(I)の化合物を産生する方法であり、以下の工程を含む:
a)ゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)菌株CNCM I‐4530を液体培地中にて増殖させる工程;および、
b)式(I)の化合物を精製する工程。
【0142】
式(I)の化合物のある実施態様では、Xaaは、リジンである。ある実施態様では、Xaaは、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸である。ある実施態様では、Xaaは、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸である。ある実施態様では、Xaaは、グリシンである。ある実施態様では、Xaaは、オルニチンである。ある実施態様では、Xaaは、プロリンである。ある実施態様では、Xaaは、ヒスチジンである。ある実施態様では、Xaaは、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンである。ある実施態様では、Xaaは、2,3‐デヒドロアルギニンである。ある実施態様では、Xaa10は、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンである。ある実施態様では、n=4である。ある実施態様では、Rは、−NHである。
【0143】
ある実施態様では、Xaaは、リジンであり、XaaおよびXaaは、各々、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸であり、Xaaは、グリシンであり、Xaaは、オルニチンであり、Xaaは、プロリンであり、Xaaは、ヒスチジンであり、Xaaは、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり、Xaaは、2,3‐デヒドロアルギニンであり、およびXaa10は、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンである。
【0144】
ある実施態様では、Xaaは、リジンであり、XaaおよびXaaは、各々、3‐ヒドロキシ‐2,4‐ジアミノブタン酸であり、Xaaは、グリシンであり、Xaaは、オルニチンであり、Xaaは、プロリンであり、Xaaは、ヒスチジンであり、Xaaは、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり、Xaaは、2,3‐デヒドロアルギニンであり、Xaa10は、リジンまたは5‐ヒドロキシリジンであり、nは、4であり、およびRは、NHである。
【0145】
ある実施態様では、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物である。
【0146】
ある実施態様では、式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物である。
【0147】
ある実施態様では、式(I)の化合物は、式(Ic)の化合物である。
【0148】
オジロマイシンは、本発明のゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)細胞から精製することができる。有利には、化合物は、ゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)細胞の除去後の培養上清から精製され得る。抗菌活性を有する培養上清の作製では、ゼノラブダス・ネマトフィラ菌(Xenorhabdus nematophila)株、CNCMI‐4530が、標準的な条件下にて液体培地中で増殖され、細菌細胞が除去され、上清が回収される。細菌細胞は、例えば、遠心分離またはろ過によって除去されてよい。
【0149】
オジロマイシンのさらなる精製は、カチオン交換クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、および/または逆相HPLCを含む公知のいかなる方法によって行われてもよい。
【0150】
ある実施態様では、オジロマイシンは、連続するカチオン交換クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、および逆相HPLCによって、ゼノラブダス・ネマトフィラ菌(Xenorhabdus nematophila)株、CNCM I‐4530の培養上清から精製される。
【0151】
オジロマイシンはまた、液相有機合成および固相有機合成を含むがこれらに限定されない本技術分野の標準的技術に従って合成されてもよい。ある実施態様では、固相有機合成は、ペプチド合成機による合成を含む。そのような実施態様およびその実行は、充分に当業者の技術の範囲内である。代表的な合成方法は、Bodanzky, et al. “The Practice of Peptide Synthesis,” Springer-Verlag (1994)、に記載されている。
【0152】
当業者であれば、通常の実験以上のものを用いることなく、本明細書で述べる本発明の具体的な実施態様に対する多くの均等物を認識することになるか、または確認することができるであろう。そのような均等物は、本発明の範囲内であることを意図している。
【0153】
さらに、それ以外が不可能であるというわけではない限りにおいて、本発明の組み合わせ、実施態様、および面のいずれかまたはすべてを、いかなる方法であっても組み合わせて、本発明の範囲内のその他の組み合わせ、実施態様、および面を提供することができることは認識されるであろう。
【0154】
本発明を、以下の限定されない実施例によってさらに記載する。
【実施例】
【0155】
実施例1:産生および発酵
産生性微生物
【0156】
ゼノラブダス・ネマトフィラ菌(Xenorhabdus nematophila)株、CNCM I‐4530(「多様性、ゲノム、および微生物‐昆虫相互作用(Diversite, genomes et interactions microorganisms‐insectes)」コレクション)の増殖を、液体培養の場合はルリア‐ベルターニ培地で(LB、bactoトリプトン 10g/L、酵母エキス 5g/L、およびNaCl 10g/Lからなる)、固体培養の場合はLB‐寒天で行った。この菌株の相状態(IまたはII)は、NBTA(栄養カンテン(ディフコ) 31g/L、ブロモチモールブルー 25mg/L、および塩化2,3,5‐トリフェニルテトラゾリウム 1% 40mg/L)で培養し、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)に対する抗菌活性を測定することで特定した。ゼノラブダス菌は、インビトロで培養した場合、2つのコロニー態様または変異を示す。外膜の修飾によって、変異体による染料の差異的な吸着が誘発される。相Iの変異体は、染料を吸着し、NBTAプレート上で青色であり、一方、相IIのコロニーは、赤色である。菌株の相IおよびIIは、菌株の名称に付与した接尾文字として示す(それぞれ、/1および/2)。この菌株は、NBTA培地上、15℃にて維持した。
【0157】
発酵
【0158】
ゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)CNCM I‐4530を、bactoペプトン 15g/L、MgSO・7HO 2g/L、およびグルコース 2g/Lからなるブロス培地500mLを入れた2Lエルレンマイヤーフラスコ中、28℃にて振とうしながら72時間培養した。この培養物に、0.1%(体積/体積)の同一の培地での24時間前培養物を接種した。抗生物質産生を、分析用HPLCでモニタリングした。
【0159】
実施例2:単離
細菌細胞を、低速遠心分離(6000×g、4℃にて10分間)によって除去し、上清を、0.22μmポアサイズフィルターで滅菌した。上清を、0.1M NaCl‐0.02M Tris緩衝液(pH7)に添加し(1:1;体積/体積)、Sep Pack カルボキシメチルカートリッジ(Accell Plus CM、ウォーターズ(Waters))上にてカチオン交換クロマトグラフィにかけた。未結合の物質を0.1M NaCl‐0.02M Tris緩衝液(pH7)で洗浄することで除去し、抗生物質活性分を1M NaCl‐0.02M Tris緩衝液(pH7)で溶出した。この溶出液を、0.1%(体積/体積)トリフルオロ酢酸(TFA)で酸性化し、次に、Sep Pack C18カートリッジ(Sep‐Pak Plus C18、ウォーターズ)上にて逆相クロマトグラフィにかけた。未結合の物質をHO‐TFA 0.1%で洗浄することで除去し、アセトニトリルによって抗生物質プールを溶出した。この溶出液を凍結乾燥し、次に水に再懸濁させた(1:5;体積/体積)。純粋な化合物を、C18カラム(ウォーターズ;Symmetry Symmetry C18;5μm;4.6×150mm)、0%から開始して30分間で30%までのHO/0.1% TFA‐アセトニトリルによる直線勾配、1mL/分の流速、および200から400nmのUV検出を用いた逆相HPLCによって粗抽出物から単離し、以下のHPLC保持時間でオジロマイシンを得た:オジロマイシンA 14.16分(純度:98% UV)、オジロマイシンB 14.44分(純度:95% UV)、およびオジロマイシンC 14.6分(純度:94% UV)。
【0160】
実施例3:同定および物理化学的特性
NMRおよびMS分析
【0161】
精製した化合物を、質量分析およびNMRで分析して、その化学構造を特定した。
【0162】
NMR分析は、クライオプローブを備え、700MHzで操作するBruker Avance分光器で行った。サンプル(10mM)を、水(95/5 HO/DO 体積/体積)に溶解し、塩酸によってpHを3.5に設定した。データはすべて280゜Kにて記録した。プロトンの化学シフトは、IUPACの推奨に従い、4,4‐ジメチル‐シラペンタン‐1‐スルホン酸ナトリウムに関し表す。二量子フィルター相関分光(Double-quantum filtered-correlated spectroscopy)(DQF‐COSY)、zフィルター全相関分光(z‐filtered total-correlated spectroscopy)(z‐TOCSY)、および核オーバーハウザー効果分光(NOESY)スペクトルを、ステイツ‐TPPI法(States-TPPI method)(Marion D. Et al, J. Magn. Reson. 85, 393-399 (1989))を用い、相検出モードにて得た。z‐TOCSYスペクトルは、混合時間80msで、NOESYスペクトルは、混合時間220msで得た。H‐13C HSQCおよびH‐13C HSQC‐TOCSY実験を、同じサンプルで行った。キャリア周波数に設定された水の共鳴を、ウォーターゲート法(WATERGATE method)(Piotto M. Et al. J. Biomol. NMR 2, 661-665 (1992))によって抑制した。データはすべて、XWINNMRソフトウェアで処理した。同種および異種核データの分析から、非古典的残基を識別した。連鎖帰属は、Wuthrich(Wuthrich K. NMR of Proteins and Nucleic Acids, John Wiley & Sons, New York (1986))によって報告された一般的な方法を用いて得た。
【0163】
すべてのオジロマイシン誘導体のプロトン化された分子のm/z値を得るために、まずLC‐MSを実施した。次に、オジロマイシンA、B、およびCに対してMS‐MSフラグメンテーションを行った。ESI‐LC‐MSデータは、Waters alliance LC‐MSシステム(Waters ZQ質量検出器、Waters光ダイオードアレイ検出器2696、Waters alliance HPLCシステム2790)上にて、陽イオンモードで得た。HPLCカラムとしては、C18カラム(Waters Symmetry C18 5μm 4.6×150mm)を用い、35℃に維持した。溶媒は、(A)水+0.1% TFA、(B)アセトニトリル+0.1% TFAとし、流速は、1mL/分とした。移動相組成は、0分の100%Aから30分の30%Bまでの勾配とした。サンプルは溶媒A(100μL)に溶解した。サンプル注入量は、10μLであった。UV‐可視光検出は、200〜400nmでの吸光度によって行った。塩の蓄積を最小限に抑えるために、最初の5分間は、MSへの溶媒流を廃液側へ流した。MS‐MSフラグメンテーションデータは、Waters Micromass Q‐Tofマイクロ質量分析器上で得た。
【0164】
オジロマイシンの物理化学的特性
【0165】
オジロマイシンA、B、およびCと称する3つの化合物を単離し、白色粉末としての均質物へ精製し、質量分析によって同定した。ESI‐MS実験により、種々のオジロマイシンの分子量が分かった。
【0166】
オジロマイシンA;白色粉末;UV:λmax(MeOH)=214nm;ESI‐MS(m/z):1297[M+H]
【0167】
オジロマイシンB;白色粉末;UV:λmax(MeOH)=214nm;ESI‐MS(m/z):1281[M+H]
【0168】
オジロマイシンC;白色粉末;UV:λmax(MeOH)=214nm;ESI‐MS(m/z):1265[M+H]
【0169】
化学構造の解明
【0170】
オジロマイシンAの化学構造を、NMRと質量分析データとを合わせた分析から確立した。
【0171】
NMRデータは、水中で取得し、DQF‐COSY、TOCSY、NOESY、H‐13C HSQC、およびH‐13C HSQC‐TOCSYの実験を含む一連の実験を記録した(図1および2)。1Dスペクトルから、8.9〜7.0ppmの化学シフト領域にわたる少なくとも6つのアミドシグナル、4.8〜3.7ppmの領域のアルファプロトンシグナル、および3.7〜1.1ppmの領域のベータプロトンシグナルを有するペプチド性化合物の特徴が明らかとなった。高磁場領域にメチルシグナルは観察されず、このことは、Ala、Thr、Leu、Val、およびIle残基が存在しないことを示している。対照的に、9.60ppmのシングレットおよび6.17ppmのトリプレットを含むシグナルが観察され、このことは、非古典的残基の存在を示唆している。同種核データに加えて、H‐13C異種核データも、非古典的残基のスピン系の同定に特に有用であった。
【0172】
これらすべてのデータを合わせて分析することで、4種類の非古典的残基:α,γ‐ジアミノ β‐ヒドロキシ酪酸(Dab(βOH))、δ‐ヒドロキシリジン(Dhl)、α,β‐デヒドロアルギニン(Dha)、およびα,δ‐ジアミノブタン(Dbt)、を含む11のスピン系を識別することができた。これら非古典的残基の不斉炭素の立体配置も、古典的残基のそれも、いずれも特定されなかった。Ornα‐Proδδ NOEの強度が強いことから、Orn‐Proアミド結合がトランスのコンフォメーションをとっていることが示唆される。連続するNOE(sequential NOEs)を用いることにより、この偽ペプチドの配列が以下のように同定された。
【0173】
Lys−Dab(βOH)−Dab(βOH)−Gly−Orn−Pro−His−Dhl−Dha−Dhl10−Dbt11
【0174】
NMRデータを、表1(オジロマイシンA)、表2(オジロマイシンB)、および表3(オジロマイシンC)に報告する。
【0175】
この配列は、質量分析データによって測定された分子量1297Daと完全に一致しており、非古典的残基は、MS/MSフラグメンテーションデータによって確認された。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0176】
実施例4:インビトロ研究
抗菌感受性試験方法
【0177】
最小阻止濃度(MIC)は、表7に詳述する臨床・検査標準協会(Clinical and Laboratory Standards Institute)(CLSI)の条件ガイドラインに従って特定した。アッセイは、3つの反復サンプルで行った。
【表7】
【0178】
接種液の調製. 5から10の良好に単離されたコロニーを取り出し、3mLの滅菌生理食塩水に再懸濁させた。接種液は、ボルテックスミキサー上にて15秒間激しく振とうすることによって再懸濁させた。濁度を、マクファーランド標準で0.5(1‐5×10CFU/mL)に調整した。この接種液を、適切な媒体(表7)でさらに希釈して、各ウェルに約2‐8×10CFU/mLの最終接種液を得た。
【0179】
試験品の添加. オジロマイシンAまたは比較品のストック溶液を適切な媒体で希釈して、このアッセイでの最大開始濃度50μg/mLを得た。50μLの媒体を、96ウェルプレートのカラム2から12の各ウェルに分配した。100μLの適切な試験化合物溶液(100μg/mL)を、カラム1の各ウェルに分配した。M.カタラーリス(M. catarrhalis)、M.ヘモリチカ(M. haemolytica)、およびP.マルトシダ(P. multocida)の場合は、これらの値を2倍にした(最終アッセイ体積200μLを用いた)。カラム1からカラム10において2倍の段階希釈を行い、このアッセイでの各化合物の50から0.1μg/mLの濃度範囲を得た。カラム11および12は、それぞれ、ポジティブ(薬物、試験品なし、接種液添加あり)、およびネガティブ(薬物、試験品、接種液添加なし)増殖コントロールとして用いた。
【0180】
細菌株の添加. 各播種懸濁液の50μLを適切なウェルに添加し、50μLの希釈化合物または希釈剤、および50μLの接種液またはブロス単独からなる最終体積100μLを得た。
【0181】
最小殺菌濃度(MBC)は、MIC手順を殺菌活性の評価にまで拡張することによって確立した。24時間後、10μLをウェルから取り出し、段階希釈し、次に、適切な寒天プレート上に播種した。プレートを37℃にて一晩インキュベートした。MBCは、継代培養にて0.1%の生存率を得た抗生物質の最低濃度として18時間後に読み取った。実験はすべて3つの反復サンプルで行った。
【0182】
また、タンパク質結合を評価するために、50%および95%(体積/体積)のヒト血清存在下でも、MBCの測定を行った。
【0183】
成育するS.アウレウス(S. aureus)およびP.エルジノーサ(P. aeruginosa)に対するオジロマイシンの殺菌効果
【0184】
S.アウレウス(S. aureus)ATCC13709およびP.エルジノーサ(P. aeruginosa)ATCC27853に、MICの4倍に等しい濃度のオジロマイシンAを接種することで、殺菌曲線(Bacterial killing curves)を作成した。バンコマイシンまたはポリミキシンを、それらのMICの4倍にて用いた。S.アウレウス(S. aureus)およびP.エルジノーサ(P. aeruginosa)接種液は、MHB中にて一晩成育させたコロニーから作製した。フラスコ内の抗生物質濃度は、所望される濃度に従ってMHBで調節した。10mLを含有する培養管に、およそ10CFU/mLの接種液にてS.アウレウス(S. aureus)またはP.エルジノーサ(P. aeruginosa)を接種した。37℃でのインキュベーションの0、1、2、3、4、6、および24時間にてサンプルを取り出し、細菌をカウントした。従って、培養管をボルテックス攪拌した後、50μLのサンプル2つを取り出し、MHBで段階希釈した。各希釈工程後に、20μLをLB寒天プレート上に播種し、これを37℃にて24時間インキュベートした。その後、コロニーをカウントし、最初の体積へ逆外挿して、初期濃度(CFU/mL)を決定した。
【0185】
インビトロでの生物学的特性
【0186】
医原性および動物感染に関与する広いスペクトルにわたる細菌に対する抗微生物活性について、オジロマイシンAの試験を行った。それは、グラム陽性およびグラム陰性病原菌に対して広いスペクトルの抗菌活性を有している(表8)。グラム陽性細菌に関しては、オジロマイシンAの抗菌活性は、いくつかの多耐性臨床分離株を含むS.アウレウス(S. aureus)、S.エピデルミデス(S. epidermidis)、およびB.スブチリス(B. subtilis)菌株に対して強く、MICは1μg/mLよりも小さい(表9)。E.フェカリス(E. faecalis)、E.フェシウム(E. faecium)、S.ニューモニエ(S. pneumoniae)、およびS.ピオゲネス(S. pyogenes)に対する抗菌活性は、弱いか、またはまったく観察されなかった。グラム陰性細菌に関しては、オジロマイシンAの抗菌活性は、いくつかの多耐性臨床分離株を含むK.ニューモニエ(K. pneumoniae)およびK.オキシトカ(K. oxytoca)に対しては強く、A.バウマンニ(A. baumannii)、E.クロカエ(E. cloacae)、大腸菌(E. coli)、M.カタラーリス(M. catarrhalis)、P.エルジノーサ(P. aeruginosa)、およびS.マルトフィリア(S. maltophilia)菌株に対しては良好で、MICは10μg/mLよりも小さい(表8、表9)。
【表8】
【表9】
【0187】
オジロマイシンA〜CのMBCを、S.アウレウス(S. aureus)およびP.エルジノーサ(P. aeruginosa)について評価した。これらの分子は、殺菌性を有することが分かった(表9)。
【表10】
【0188】
殺菌時間実験(Time-to-kill experiments)を実施して、成育するS.アウレウス(S. aureus)およびP.エルジノーサ(P. aeruginosa)に対するオジロマイシンAの殺菌効果を評価した。4倍のMICにて、オジロマイシンAは、P.エルジノーサ(P. aeruginosa)およびS.アウレウス(S. aureus)菌の100%を、それぞれ2時間および3時間以内に死滅させており、このことから、この分子は、即効性で強力な殺菌剤である(図3および4)。
【0189】
オジロマイシンAのMBCを、50%(体積/体積)および95%(体積/体積)ヒト血清の存在下にて評価した(表10)。この結果から、この分子の抗菌活性が受ける血清タンパク質の存在による影響は弱いものであることが分かる。
【表11】
【0190】
細胞傷害性試験
【0191】
オジロマイシンA〜Cの細胞傷害性を、ヒト結腸腺癌(HT29)細胞およびヒト正常肺線維芽細胞(MRC‐5)に対して調べた。10%(体積/体積)ウシ胎仔血清を添加したRPMI 1640+1% L‐グルタミン中で調製したHT29(ヒト結腸直腸腺癌)細胞懸濁液の200μL、ならびに25mM グルコースおよび10%(体積/体積)ウシ胎仔血清を添加したダルベッコ改変イーグル培地中で調製したMRC5(ヒト肺線維芽細胞)細胞懸濁液の200μLを、96ウェルプレートへ接種した。
【0192】
接種細胞数は、HT29についてはウェルあたり800細胞であり、MRC‐5についてはウェルあたり2100細胞であった。このマイクロプレートを、5%のCO2で37℃にて24時間インキュベートした。
【0193】
24時間後、水に溶解したオジロマイシンA、B、またはCを72時間添加し、最終濃度を、一定量の水で0.78μg/mLから100μg/mLとした(最終濃度1%)。生細胞数を、MTS試薬(プロメガ(Promega),マジソン,ウィスコンシン州)により490nmで測定し、LD50を、細胞増殖の50%阻害を引き起こす化合物濃度として算出した。実験は、3つの反復サンプルで行った。
【0194】
オジロマイシンA、B、およびCの各々において、LD50は、両細胞株に対して100μg/mLよりも大きかった。100μg/mLまでの用量にて、100%の細胞生存が観察された。
【0195】
実施例5:他の抗微生物剤との相乗効果の研究
リファンピシン、シプロフロキサシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン、およびバンコマイシンとのオジロマイシンAのインビトロでの相互作用について、各組み合わせに対して96ウェルマイクロタイタープレートを用いた微量希釈チェッカーボード法(microdilution checkerboard technique)により調べた。
【0196】
バンコマイシン、リファンピシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、アンピシリン、シプロフロキサシン、およびテトラサイクリン(シグマ‐アルドリッチ(Sigma-Aldrich))は、製造元より標準的な粉末として提供された。
【0197】
抗微生物剤のMHBによる2倍の段階希釈物を、単独で、または組み合わせて、ウェルに配置し、これに適切なS.アウレウス(S. aureus) ATCC 25923接種液またはK.ニューモニエ(K. pneumoniae) ATCC 43816を接種し、各ウェルがおよそ10CFU/mLを含有するようにした。37℃にて16〜20時間のインキュベーションの後、目に見える増殖が観察されなかった2つの薬物の最低濃度を含有するウェルを、MICと見なした。組み合わせとして試験した各抗微生物剤の濃度は、1/8×MICから2×MICであった。
【0198】
他の抗微生物剤との相乗効果
【0199】
種々のクラスからの他の抗生物質とのオジロマイシンAの相互作用を、S.アウレウス(S. aureus)に対して調べた(表11)。アミノグリコシド系抗生物質カナマイシンおよびゲンタマイシンとの相乗的相互作用が観察された。この相乗的相互作用はまた、K.ニューモニエ(K. pneumoniae)に対しても観察された(表12)。
【表12】
【表13】
【0200】
実施例6:インビボでの研究
オジロマイシンAのインビボでの生物活性
【0201】
ハーランラボラトリーズ(Harlan Laboratories)(インディアナポリス,インディアナ州)から注文した体重19〜21gの雌ICRマウスを、急性致死感染(acute lethal infection)の実験に用いた。マウスは、完全に免疫応答性であった。感染は、S.アウレウス(S. aureus) Smith ATCC 13709の細菌懸濁液をマウスに腹腔内接種することによって誘発した。この細菌チャレンジ(約5log10CFU/マウス)は、0.5mLの20%雄ブタムチン中に懸濁させて与えた。チャレンジの1時間後に、処理剤をIV注射によって1回投与した(リネゾリドは、チャレンジの直後に投与した)(表13)。死亡率を、負荷後の5日間まで追跡した。研究終了時に依然として生存していた動物は、人道的に安楽死させた。
【表14】
【0202】
ハーランラボラトリーズ(インディアナポリス,インディアナ州)から注文した体重19〜21gの雌BALB/cマウスを、急性致死感染の実験に用いた。マウスは、完全に免疫応答性であった。感染は、P.エルジノーサ(P. aeruginosa) ATCC 27853の細菌懸濁液をマウスに腹腔内接種することによって誘発した。この細菌チャレンジ(8.6log10CFU/マウス)は、0.1mLの滅菌生理食塩水中に懸濁させて与えた。チャレンジの1時間後に、処理剤をIV注射によって1回投与した(トブラマイシンは、チャレンジの直後にIP注射によって投与した)(表13)。死亡率を、負荷後の2日間まで追跡した。研究終了時に依然として生存していた動物は、人道的に安楽死させた。
【表15】
【0203】
インビボにおける生物学的特性
【0204】
未処理動物は、S.アウレウス(S. aureus)感染後、24〜48時間以内に死亡した。5.0mg/kgおよび2.5mg/kgの用量のリネゾリドおよびオジロマイシンAで処理したマウスはすべて、感染後5日間まで生存した(表14)。1.0mg/kgの用量のオジロマイシンAで処理したマウス1体が、感染の2日後に死亡した。
【表16】
【0205】
未処理動物は、P.エルジノーサ(P. aeruginosa)感染後、24〜48時間以内に死亡した。トブラマイシンで処理したマウスはすべて、感染後5日間まで生存した(表14)。15mg/kgの用量のオジロマイシンAで処理したマウス1体が、第1日に死亡し、7.5mg/kgの用量のオジロマイシンAで処理したマウス4体が、第1日に死亡した。
【表17】
【0206】
図1
図2
図3
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]